説明

空気入りタイヤ

【課題】タイヤ表面に形成されるベントスピューの意図しないちぎれや折れを抑制して、トレッド面やデザイン面の不測の破損を有効に防止できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】本発明の空気入りタイヤは、タイヤ表面1から突出するベントスピュー2を有し、ベントスピュー2を、タイヤ表面1と連続的な曲面を介してつないでなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫モールドのベントホールに生タイヤの一部が入り込んで形成されるベントスピューに関し、特に、タイヤの表面に高温下での強度が低いゴムを採用するタイヤを取り扱う場合に、このベントスピューが意図せずにちぎれたり折れたりすることを抑制できる、ベントスピューを有する空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生タイヤを加硫モールドに装入して加硫するに当たっては、加硫モールドと生タイヤの間の空気を逃がす必要があり、加硫モールドには、この空気を外部に排気する為のベントホールが設けられている。ここでベントホールからは、空気だけが排出されることが好ましいが、タイヤの製造条件によっては、このベントホールに生タイヤの一部が入り込み、この入り込み部分が、タイヤ表面から突出するベントスピューとなる。加硫モールドから製品タイヤを取り出す際に、このベントスピューが製品タイヤからちぎれてしまうと、ベントスピューとともに製品タイヤの一部も剥がれてしまい、タイヤの外観を損なうことがあり、またちぎれたベントスピューがベントホール内に残留し、次に加硫されるタイヤに影響を与えることもあった。このような状況に対応する先行技術しては、例えば特許文献1のように、ベントホールの入口を広げてベントスピューの根元の断面積を増やし、タイヤ本体とベントスピューとの結合強度を高めることで、このベントスピューをちぎれにくくしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−92707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなベントスピューが残ったタイヤであっても、そのタイヤをその後の工程に搬送するに当たっての、例えば加硫モールドから取り出されてベルトコンベヤ上に落下する時の衝撃やベルトコンベヤで運搬中の振動で、ベントスピューが意図せずにちぎれたり折れたりすることがあり、ベントスピューがタイヤ表面のトレッド面やデザイン面と一緒に剥がれて、タイヤの外観が著しく損なわれることがあった。特に加硫モールドから取り出された直後は、タイヤの温度が高いため、例えば転がり抵抗が小さいゴムを用いた場合には、高温下での強度が低いのでベントスピューが折れ易く、このような材料を使用した場合にも対処しうるタイヤの出現が望まれていた。
【0005】
本発明の課題は、タイヤ表面に形成されるベントスピューの意図しないちぎれや折れを抑制して、トレッド面やデザイン面の不測の破損を有効に防止できる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤ表面から突出するベントスピューを有する空気入りタイヤであって、
前記ベントスピューを、前記タイヤ表面と連続的な曲面を介してつないでなる空気入りタイヤである。
【0007】
前記ベントスピューは、前記タイヤ表面と結合する基部と該基部よりも小径となる先端部とを段差を介して結合することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
タイヤ表面とベントスピューとを、連続的な曲面でつないでいるので、外部からの力が加わることがあっても、ベントスピューの基部等への応力集中その他に起因する、ベントスピューの意図しない欠落を効果的に防止することができる。従ってこの空気入りタイヤによれば、タイヤの運搬中の、トレッド面やデザイン面の不測の破損を十分に防止することができる。
【0009】
この一方で、ベントスピューを、前記タイヤ表面と結合する基部と該基部よりも小径となる先端部とを段差を介して結合するものとした場合には、根元より先にこの段差でベントスピューが折れるので、トレッド面やデザイン面の破損をより効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にしたがう空気入りタイヤの実施の形態を示す、ベントスピューの中心線を含む断面図である。
【図2】本発明にしたがう空気入りタイヤの他の実施の形態を示す、ベントスピューの中心線を含む断面図である。
【図3】従来の空気入りタイヤの一例を示す、ベントスピューの中心線を含む断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
【0012】
図1に示すところにおいて、1は、タイヤ表面である。ここでタイヤ表面1とは、タイヤを外側から視認し得る部位であって、具体的にはタイヤのトレッドからサイドウォールを経てビードに至るタイヤの外表面をいうものとする。
【0013】
2は、タイヤ表面1から突出するベントスピューである。ベントスピュー2は、加硫モールド内の空気を外部に逃がす為のベントホールに、生タイヤの一部が入り込んで形成される、製品タイヤと一体となったゴム片である。図1に示す例でベントスピュー2は、略円筒状であって、その中心線CLを含む断面図においては、タイヤ表面1から上方に向けて起立しており、タイヤ表面1とは、タイヤ表面1とベントスピュー2との境界位置となる2aにおいて、例えば円弧となる連続的な曲線2bによってつながっている。これにより、ベントスピュー2とタイヤ表面1との間には角部が形成されることが無く、ベントスピュー2は、連続的な曲面を介して滑らかにタイヤ表面1と結合する。
【0014】
上記のような形状となるベントスピュー2を有する製品タイヤを、加硫モールドから取り出しだして、その後の工程に搬送する場合に当たっては、ベルトコンベヤやローラコンベヤ上に置かれる際の衝撃や運搬中の振動により、ベントスピュー2には、外部から力が加わることになる。この時、ベントスピュー2は、タイヤ表面1と連続的な曲面によって滑らかにつながっているので、応力集中等による意図しないちぎれや折れの発生を抑制することが可能であり、ベントスピュー2とともにタイヤ表面1が剥がれてしまうことを、効果的に防止できる。また例えば低燃費タイヤのように転がり抵抗が小さいゴムにおいては、一般に高温下での強度が低く、加硫直後の高温下では、特にベントスピュー2が欠落しやすくなっているが、上記のように連続的な曲面で相互を結合すれば、ベントスピュー2の欠落に起因するタイヤ表面1の破損を有効に抑えることができる。
【0015】
ところで図2に示すように、ベントスピュー2を、タイヤ表面1と結合する基部2cとこの基部2cよりも小径となる先端部2dとを、段差3を介して結合したものとしてもよい。これによれば、段差3よりも根元側に位置するベントスピュー2の基部2cに対し、段差3よりも先端側に位置するベントスピュー2の先端部2dは、断面積が狭くなるので強度が弱くなり、さらに段差3に応力が集中し易くなるので、例えばベントスピュー2の先端側から力を受けると、先にベントスピュー2の先端部2dが欠落することになる。すなわち、ベントスピュー2が欠落する位置を、段差3に特定することで、この段差3より下方のベントスピュー2の基部2cには外力が伝わりにくくなり、タイヤ表面1の破損をより効果的に抑えることが可能となる。
【0016】
表1に示す形状、寸法となるベントスピューをタイヤ表面に有するタイヤを試作し、このタイヤをローラコンベヤから滑り落として、ベントスピューの欠落と、タイヤ表面の破損についての調査を行った。具体的には、加硫モールドから取り出した直後のタイヤを、高さが約1mで水平方向からの傾斜角度が約35度のローラコンベヤから滑り落とし、下流側に配置したストッパーでこのタイヤを急激に止めて、目視確認を行った。その結果を表1に併せて示す。なお各タイヤのサイズは、ともにLVR195/80R15であり、タイヤ表面に用いたゴムは、高温下での強度が低い、低燃費タイヤ用のゴムであった。
【表1】

【0017】
その結果、図3に示すようにベントスピューの根元にテーパーをつけた、従来例となるタイヤ(基準タイヤ)は、ベントスピューの欠落に伴い、タイヤ表面に破損が発生した。これに対し、タイヤ表面とベントスピューとを連続的な曲面でつないだタイヤ(適合タイヤ1)は、ベントスピューの欠落が見られず、タイヤ表面の破損も認められなかった。また、タイヤ表面とベントスピューとを連続的な曲面でつなぎ、かつベントスピューを、タイヤ表面と結合する基部とこの基部よりも小径となる先端部とを、段差を介して結合したタイヤ(適合タイヤ2)は、ベントスピューの欠落は段差のみで発生し、タイヤ表面には破損が認められなかった。
【符号の説明】
【0018】
1 タイヤ表面
2 ベントスピュー
2a 境界位置
2b 連続的な曲線
2c ベントスピューの基部
2d ベントスピューの先端部
3 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ表面から突出するベントスピューを有する空気入りタイヤであって、
前記ベントスピューを、前記タイヤ表面と連続的な曲面を介してつないでなる空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ベントスピューは、前記タイヤ表面と結合する基部と該基部よりも小径となる先端部とを段差を介して結合したものである請求項1記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−240233(P2012−240233A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109682(P2011−109682)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】