説明

空気圧縮機及び太陽光追尾システム

【課題】水道圧を利用して空気を圧縮できる空気圧縮機を提供する。
【解決手段】第1及び第2流体室(C1,C2)が区画されたシリンダ部材(11)と、各流体室(C1,C2)を水道水が流入する受水室(W1,W2)と空気が流入する空気室(A1,A2)とに区画し、水道水の圧力を受けて変位して空気室(A1,A2)を縮小させるピストン部材(13)と、水道水が流入する水流入路(21)及び水道水が流出する水流出路(22)と、ピストン部材(13)の変位により縮小した空気室(A1,A2)の圧力が作用することによって、水流入路(21)を縮小した受水室(W1,W2)と連通させ且つ水流出路(22)を拡大した受水室(W1,W2)と連通させるように変位する弁体(26)を有する流路切換部(20)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧縮機、及び、それを用いて太陽光パネルを駆動する太陽光追尾システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水道管の水圧によってピストンを駆動し、所定の駆動対象を駆動する装置が知られている。特許文献1には、この種の装置(水圧駆動装置)が開示されている。
【0003】
水圧駆動装置は、シリンダと、このシリンダに収容されるピストンとを有している。ピストンの下側には、水道管と連通する受圧室が形成されている。また、ピストンの下端には、ロッドの一端が連結されている。このロッドの他端は床面に固定される。水道管から受圧室へ水が供給されると、受圧室内の水の圧力が上昇する。その結果、ピストンはロッドに沿うように上方へ変位する。この水圧駆動装置では、このようなピストンの変位によって、器物を上方に押し上げるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−18801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように水道管の水圧を利用する装置では、所定の駆動対象を水圧によって直接的に駆動させるものである。一方、水圧を利用する装置としては、上記の装置以外の用途も考えられる。具体的には、例えば水圧を利用して空気を圧縮できる装置が実現できれば、生成した圧縮空気を様々な用途として利用できる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、水道圧を利用して空気を圧縮できる空気圧縮機、及び、この空気圧縮機を備えた太陽光追尾システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、軸方向に第1及び第2の流体室(C1,C2)が区画された筒状部材(11)と、上記各流体室(C1,C2)において上記軸方向の外方側と内方側の一方に水道水が流入する受水室(W1,W2)が位置し他方に空気が流入する空気室(A1,A2)が位置するように上記各流体室(C1,C2)を上記受水室(W1,W2)と空気室(A1,A2)とに区画し、上記受水室(W1,W2)に流入した水道水の圧力を受けて変位し上記空気室(A1,A2)を縮小させる第1及び第2のピストン部(13a,13b)と、該ピストン部(13a,13b)同士を連結するピストンロッド(13c)とを有するピストン部材(13)と、水道水が流入する水流入路(21)及び水道水が流出する水流出路(22)と、上記ピストン部(13a,13b)の変位により縮小した空気室(A1,A2)の圧力が作用することによって、上記水流入路(21)を上記空気室(A1,A2)が拡大した側の流体室(C1,C2)の受水室(W1,W2)と連通させ、且つ、上記水流出路(22)を上記空気室(A1,A2)が縮小した側の流体室(C1,C2)の受水室(W1,W2)と連通させる流路切換部(20)とを備えている空気圧縮機である。
【0008】
上記第1の発明では、各流体室(C1,C2)において外方側に受水室(W1,W2)が内方側に空気室(A1,A2)が区画され、若しくは外方側に空気室(A1,A2)が内方側に受水室(W1,W2)が区画される。受水室(W1,W2)に水道水が流入する流体室(C1,C2)では、水道水の圧力によってピストン部(13a,13b)が変位し、その結果、受水室(W1,W2)が拡大し空気室(A1,A2)が縮小する。これに伴って、他方の流体室(C1,C2)では、受水室(W1,W2)が縮小し空気室(A1,A2)が拡大する。空気室(A1,A2)が縮小すると、その空気室(A1,A2)の空気が圧縮される。
【0009】
そして、流路切換部(20)では、縮小した空気室(A1,A2)の空気圧力が作用することで、空気室(A1,A2)が拡大した側の流体室(C1,C2)の受水室(W1,W2)(即ち、縮小した受水室(W1,W2))と水流入路(21)とが連通する。さらに、流路切換部(20)では、縮小した空気室(A1,A2)の空気圧力が作用することで、空気室(A1,A2)が縮小した側の流体室(C1,C2)の受水室(W1,W2)(即ち、拡大した受水室(W1,W2))と水流出路(22)とが連通する。これにより、空気室(A1,A2)が拡大した側の受水室(W1,W2)に水道水が流入し、水道水の圧力によってピストン部(13a,13b)が変位する。これにより、縮小していた受水室(W1,W2)が拡大し、拡大していた空気室(A1,A2)が縮小する。この空気室(A1,A2)の縮小によって、その空気室(A1,A2)の空気が圧縮される。一方、水流出路(22)と連通した受水室(W1,W2)は、縮小するに伴い水道水が水流出路(22)へ流出する。このように、流路切換部(20)では、縮小した空気室(A1,A2)の空気圧力の作用によって、水流入路(21)及び水流出路(22)が2つの受水室(W1,W2)に対して交互に連通する。これにより、ピストン部材(13)が筒状部材(11)の軸方向に往復動して、2つの空気室(A1,A2)が交互に縮小する。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記流路切換部(20)が、上記水流入路(21)が接続された流入側ポート(25a)と、水流出路(22)が接続された第1及び第2の流出側ポート(25d,25e)と、上記各受水室(W1,W2)と連通する第1及び第2の受水室側ポート(25b,25c)とが設けられた弁室(25)と、該弁室(25)に収容され、上記ピストン部(13a,13b)の変位により縮小した空気室(A1,A2)の圧力が作用することによって、上記流入側ポート(25a)と上記第1の受水室側ポート(25b)とを連通させ且つ第1の流出側ポート(25d)と第2の受水室側ポート(25c)とを連通させるように上記弁室(25)を区画する第1位置と、上記流入側ポート(25a)と上記第2の受水室側ポート(25c)とを連通させ且つ上記第2の流出側ポート(25e)と上記第1の受水室側ポート(25b)とを連通させるように上記弁室(25)を区画する第2位置とに変位する弁体(26)とを備えている空気圧縮機である。
【0011】
ここでは、各流体室(C1,C2)において外方側に受水室(W1,W2)が内方側に空気室(A1,A2)が区画された場合について説明する。例えば、縮小した第2の空気室(A2)の空気圧力が弁体(26)に作用すると、弁体(26)は第1位置に変位する。そうすると、流入側ポート(25a)と第1の受水室側ポート(25b)とが連通するので、水道水が弁室(25)を介して第1の受水室(W1)へ流入する。また、第1の流出側ポート(25d)と第2の受水室側ポート(25c)とが連通するので、第2の受水室(W2)から水が流出する。これに伴い、ピストン部材(13)が第2の流体室(C2)側へ変位し、第1の空気室(A1)が縮小する。これによって、第1の空気室(A1)の空気が圧縮される。
【0012】
また、縮小した第1の空気室(A1)の空気圧力が弁体(26)に作用すると、弁体(26)は第2位置に変位する。そうすると、流入側ポート(25a)と第2の受水室側ポート(25c)とが連通するので、水道水が弁室(25)を介して第2の受水室(W2)へ流入する。また、第2の流出側ポート(25e)と第1の受水室側ポート(25b)とが連通するので、第1の受水室(W1)から水流出路(22)へ水が流出する。これに伴い、ピストン部材(13)が第1の流体室(C1)側へ変位し、第2の空気室(A2)が縮小する。これによって、第2の空気室(A2)の空気が圧縮される。このように、ピストン部材(13)が筒状部材(11)の軸方向に往復動して、2つの空気室(A1,A2)が交互に縮小する。
【0013】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記ピストン部(13a,13b)の変位に伴う上記ピストン部材(13)の上記軸方向の往復動によって変位する磁石(32,106)と、該磁石(32,106)の変位によって発電するコイル(31,108)とを有する発電機構(30,100)を備えている空気圧縮機である。
【0014】
上記第3の発明では、発電機構(30,100)において、磁石(32,106)が変位することによってコイル(31,108)に起電力が発生し、発電が行われる。
【0015】
第4の発明は、上記第1または第2の発明において、上記空気室(A1,A2)で該空気室(A1,A2)の縮小によって圧縮され吐出された空気によって回転する風車(111)を有し、該風車(111)の回転によって発電する発電機構(110)を備えている空気圧縮機である。
【0016】
上記第4の発明では、空気室(A1,A2)から吐出された圧縮空気によって風車(111)が回転し、発電が行われる。
【0017】
第5の発明は、回動軸(54)が設けられた太陽光パネル(51)と、第1乃至第4の発明の何れか1つに記載の空気圧縮機(10)と、上記空気圧縮機(10)の圧縮空気によって作動し、太陽の向きに応じて上記太陽光パネル(51)を上記回動軸(54)の軸周りに回動させるアクチュエータ(58,59)とを備えている太陽光追尾システムである。
【0018】
上記第5の発明では、空気圧縮機(10)の圧縮空気によってアクチュエータ(58,59)が作動し、太陽光パネル(51)が太陽の向きに応じて回動する。
【0019】
第6の発明は、回動軸(54)が設けられた太陽光パネル(51)と、第3または第4の発明に載の空気圧縮機(10)と、上記空気圧縮機(10)の圧縮空気によって作動し、太陽の向きに応じて上記太陽光パネル(51)を上記回動軸(54)の軸周りに回動させるアクチュエータ(58,59)と、上記空気圧縮機(10)の発電機構(30,100,110)によって発電した電力を蓄電する蓄電部(83,123,124)とを備えている太陽光追尾システムである。
【0020】
上記第6の発明では、発電機構(30,100,110)によって発電した電力が蓄電部(83,123,124)に蓄電される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、受水室(W1,W2)に流入した水圧によってピストン部材(13)を変位させ、空気室(A1,A2)の容積を縮小させることで、比較的簡易な構造により、圧縮空気を得ることができる。また、受水室(W1,W2)には、水道水の圧力が利用されるため、経済性にも優れている。
【0022】
さらに、縮小した空気室(A1,A2)の空気圧力によって、水流入路(21)及び水流出路(22)を2つの受水室(W1,W2)に交互に連通させるようにしたので、自動でピストン部材(13)を往復動させることができる。したがって、水流入路(21)及び水流出路(22)を切り換えるための制御部が不要となり、空気圧縮機(10)の構成が簡易となる。
【0023】
また、第2の発明によれば、弁室(25)において縮小した空気室(A1,A2)の空気圧力によって第1位置と第2位置とに変位する弁体(26)を備えるようにしたため、確実に水流入路(21)及び水流出路(22)を2つの受水室(W1,W2)に交互に連通させることができる。よって、確実にピストン部材(13)を往復動させることができる。
【0024】
また、第3の発明によれば、ピストン部材(13)の往復動を利用して発電することができ、第4の発明によれば、空気室(A1,A2)から吐出された圧縮空気を利用して発電することができる。
【0025】
また、第5の発明によれば、第1乃至第4の何れか1つの発明の空気圧縮機(10)でアクチュエータ(58,59)を作動させるので、簡易な構成で太陽光パネル(51)を駆動する(回動させる)ことができる。
【0026】
また、第6の発明によれば、空気圧縮機(10)の発電機構(30,100,110)によって発電した電力を蓄電する蓄電部(83,123,124)を備えるようにしたため、停電した際でも、太陽光追尾システム(S)を構成する電機部品を駆動することができる。よって、信頼性の高い太陽光追尾システム(S)を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、実施形態1に係る太陽光追尾システムの構成を示す系統図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る太陽光発電ユニットの縦断面図である。
【図3】図3は、図2のIII-III線断面図であり、(A)は太陽光パネルが東側を向いた状態の一例であり、(B)は太陽光パネルが南側を向いた状態の一例であり、(C)は太陽光パネルが西側を向いた状態の一例である。
【図4】図4は、実施形態1に係る空気圧縮機の構成を示す縦断面図である。
【図5】図5は、実施形態1に係る空気圧縮機の動作を説明するための縦断面図である。
【図6】図6は、実施形態1に係る空気圧縮機の動作を説明するための縦断面図である。
【図7】図7は、実施形態1に係る空気圧縮機の動作を説明するための縦断面図である。
【図8】図8は、実施形態1に係る空気圧縮機の動作を説明するための縦断面図である。
【図9】図9は、実施形態1に係る空気圧縮機の動作を説明するための縦断面図である。
【図10】図10は、実施形態1に係るパネル制御部の構成を示す図である。
【図11】図11は、実施形態2に係る空気圧縮機の構成を示す縦断面図である。
【図12】図12は、実施形態2に係る空気圧縮機の発電部の構成を示す図である。
【図13】図13は、実施形態3に係る空気圧縮機の発電機構及びパネル制御部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0029】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。実施形態1に係る太陽光追尾システム(S)は、一般家屋等に適用されている。図1に示すように、太陽光追尾システム(S)は、空気圧縮機(10)と、蓄圧タンク(40)と、太陽光によって発電を行う太陽光発電ユニット(50)と、パネル制御部(80)を備えている。
【0030】
太陽光追尾システム(S)では、空気圧縮機(10)と太陽光発電ユニット(50)との間に空気供給路(45)が接続されている。空気供給路(45)の途中には、蓄圧タンク(40)が設けられている。蓄圧タンク(40)は、中空密閉式の容器である。蓄圧タンク(40)には、空気圧縮機(10)で圧縮された空気が貯められる。そして、蓄圧タンク(40)に貯められた圧縮空気は、空気供給路(45)を介して太陽光発電ユニット(50)へ供給される。また、蓄圧タンク(40)には、空気逃がし流路(41)の一端が接続されている。空気逃がし流路(41)の他端は、大気に開口している。空気逃がし流路(41)には、蓄圧タンク(40)の圧力を所定の圧力に維持するように開閉する空気逃がし弁(42)が設けられている。
【0031】
また、空気圧縮機(10)には、接続路(1)と水供給路(3)が接続されている。接続路(1)は上水道管に繋がっており、水供給路(3)は利用側(例えば、貯湯タンク)に繋がっている。接続路(1)は上水道管から水道水が流れ、水供給路(3)は空気圧縮機(10)から水が流れる。接続路(1)には、水の流通を禁止可能な開閉弁としての止水弁(2)が設けられている。空気圧縮機(10)は水道水の圧力を利用して空気を圧縮するものであり、その詳細な構造については後述する。
【0032】
〈太陽光発電ユニット〉
太陽光発電ユニット(50)は、太陽光により直流電力を発生させるものである。図2及び図3に示すように、太陽光発電ユニット(50)は、太陽光パネル(51)と、パネル駆動機構(52)を備えている。太陽光パネル(51)は、一般家屋等の屋根(R)に設置されている。太陽光パネル(51)は、略板状に形成され、その上側に太陽光の受光面(51a)を形成している。太陽光パネル(51)は、太陽光を受光面(51a)によって受けることで、直流電力を発生する。太陽光パネル(51)は、空気圧縮機(10)から吐出された圧縮空気によって駆動される被駆動体を構成している。
【0033】
パネル駆動機構(52)は、太陽光パネル(51)が太陽光を追尾するように、該太陽光パネル(51)を駆動するものである。パネル駆動機構(52)は、太陽光パネル(51)を支持する一対の柱部(53)と、該柱部(53)に回転自在に支持される回動軸(54)と、太陽光パネル(51)に連結する4枚の取付板(55,56)とを有している。
【0034】
一対の柱部(53)は、互いに所定の間隔を空けて屋根(R)に立設している。柱部(53)は、上下に縦長の矩形柱状に形成されている。柱部(53)の上端部には、回動軸(54)を回転自在に支持する軸受け部(53a)が形成されている。回動軸(54)は、柱部(53)に跨るように屋根(R)と平行に延びている。
【0035】
4枚の取付板(55,56)は、太陽光パネル(51)の下端部に固定されている。具体的に、一対の柱部(53)の外側には一対の外側取付板(55)が設けられている。一対の柱部(53)の内側には、一対の内側取付板(56)が設けられている。
【0036】
パネル駆動機構(52)は、一対の空気袋(58,59)と、該空気袋(58,59)に連結する一対のロッド(61,62)とを有している。一対の空気袋(58,59)は、屋根(R)に敷設される台座部(57)の上側に設置される。一対の空気袋(58,59)は、第1空気袋(58)と第2空気袋(59)とで構成されている。また、両者の空気袋(58,59)は、柱部(53)に支持される回動軸(54)を挟むように配置されている。本実施形態では、第1空気袋(58)が第2空気袋(59)よりも西側寄りに配置されている。各空気袋(58,59)は、その内圧の変化によって伸縮変形する。
【0037】
一対のロッド(61,62)は、第1空気袋(58)と内側取付板(56)とを連結する第1ロッド(61)と、第2空気袋(59)と内側取付板(56)とを連結する第2ロッド(62)とで構成されている。具体的に、第1ロッド(61)は、一端が第1空気袋(58)の上端部に連結し、他端が内側取付板(56)に連結している。同様に、第2ロッド(62)は、一端が第2空気袋(59)の上端部に連結し、他端が内側取付板(56)に連結している。各ロッド(61,62)は、対応する空気袋(58,59)及び対応する内側取付板(56,56)に対して回動自在に連結されている。このような構成により、太陽光パネル(51)の自重が各ロッド(61,62)を介して各空気袋(58,59)に作用する。つまり、各空気袋(58,59)は、太陽光パネル(51)を背面側から支持している。
【0038】
パネル駆動機構(52)は、各空気袋(58,59)の内圧を変化させるための給排気機構(65)を備えている。給排気機構(65)は、第1空気袋側流路(66)と、第2空気袋側流路(67)とを有している。
【0039】
第1空気袋側流路(66)は、第1中継流路(66a)、第1給排気流路(66b)、及び第1排出路(66c)を有している。また、第1空気袋側流路(66)には、第1から第3のポートを有する第1給排気切換弁(68)が設けられている。同様に、第2空気袋側流路(67)は、第2中継流路(67a)、第2給排気流路(67b)、及び第2排出路(67c)を有している。また、第2空気袋側流路(67)には、第1から第3のポートを有する第2給排気切換弁(69)が設けられている。
【0040】
第1中継流路(66a)の流入端及び第2中継流路(67a)の流入端は、何れも空気供給路(45)と接続されている。第1中継流路(66a)の流出端は、第1給排気切換弁(68)の第1ポートと接続している。第1給排気流路(66b)の一端は、第1給排気切換弁(68)の第2ポートと接続している。第1給排気流路(66b)の他端は、第1空気袋(58)の給排気ポート(図示せず)と接続している。第1排出路(66c)の流入端は、第1給排気切換弁(68)の第3ポートと接続している。第1排出路(66c)の流出端は、外気側(大気圧側)に開口している。第2中継流路(67a)の流出端は、第2給排気切換弁(69)の第1ポートと接続している。第2給排気流路(67b)の一端は、第2給排気切換弁(69)の第2ポートと接続している。第2給排気流路(67b)の他端は、第2空気袋(59)の給排気ポート(図示せず)と接続している。第2排出路(67c)の流入端は、第2給排気切換弁(69)の第3ポートと接続している。第2排出路(67c)の流出端は、外気側(大気圧側)に開口している。
【0041】
2つの給排気切換弁(68,69)は、第1ポートと第2ポートとを連通させて第3ポートを遮断する第1状態(図2の実線で示す状態)と、第2ポートと第3ポートとを連通させて第1ポートを遮断する第2状態(図2の破線で示す状態)とに切り換わるように構成されている。各給排気切換弁(68,69)は、各空気袋(58,59)への給気、及び各空気袋(58,59)からの排気を切り換えて制御する開閉機構を構成している。
【0042】
パネル駆動機構(52)は、角度センサ(71)と日射センサ(72)とを有している。角度センサ(71)は、回動軸(54)の端部に取り付けられている。角度センサ(71)は、太陽光パネル(51)の角度位置を検出する検出部である。日射センサ(72)は、太陽の方位を検出する検出部である。
【0043】
パネル制御部(80)は、角度センサ(71)及び日射センサ(72)の検出値に基づいて、太陽光パネル(51)の角度を調整するものである。具体的に、パネル制御部(80)は、これらの検出値に応じて第1、第2給排気切換弁(68,69)を切り換えるように構成されている。
【0044】
〈空気圧縮機〉
上述した空気圧縮機(10)の詳細構造について、図4を参照しながら説明する。
【0045】
空気圧縮機(10)は、水道水の水圧によって空気を該水圧よりも高い圧力まで圧縮するものである。空気圧縮機(10)は、筒状部材であるシリンダ部材(11)と、このシリンダ部材(11)の内部に進退自在に収容される1つのピストン部材(13)を有している。シリンダ部材(11)は、中空円筒状に形成されている。シリンダ部材(11)は、筒状胴部(11a)と、筒状胴部(11a)の軸方向の一端を閉塞する第1閉塞部(11b)と、筒状胴部(11a)の軸方向の他端を閉塞する第2閉塞部(11c)とを有している。
【0046】
シリンダ部材(11)の内部には、軸方向の中間部位に仕切部(12)が設けられている。この仕切部(12)により、シリンダ部材(11)の内部は、第1閉塞部(11b)側寄りの第1流体室(C1)と、第2閉塞部(11c)側寄りの第2流体室(C2)とに仕切られている。
【0047】
ピストン部材(13)は、第1流体室(C1)に進退自在に収容される第1ピストン部(13a)と、第2流体室(C2)に進退自在に収容される第2ピストン部(13b)と、両者のピストン部(13a,13b)を連結する1本のピストンロッド(13c)とを有している。第1ピストン部(13a)及び第2ピストン部(13b)は、互いに同じ外径となる円板状に形成されている。ピストンロッド(13c)は、仕切部(12)に形成された貫通口(図示せず)を貫通して両者のピストン部(13a,13b)を連結するロッド部を構成している。ピストンロッド(13c)は、各ピストン部(13a,13b)よりも小径に形成され、シリンダ部材(11)の軸心と同軸となって軸方向に延びている。
【0048】
第1ピストン部(13a)は、第1流体室(C1)を第1受水室(W1)と第1空気室(A1)とに区画している。第1受水室(W1)は、第1閉塞部(11b)と第1ピストン部(13a)との間に形成されている。第1空気室(A1)は、第1ピストン部(13a)と仕切部(12)との間に形成されている。第2ピストン部(13b)は、第2流体室(C2)を第2受水室(W2)と第2空気室(A2)とに区画している。第2受水室(W2)は、第2閉塞部(11c)と第2ピストン部(13b)との間に形成されている。第2空気室(A2)は、第2ピストン部(13b)と仕切部(12)との間に形成されている。つまり、各流体室(C1,C2)において、シリンダ部材(11)の軸方向の外方側に受水室(W1,W2)が位置し、軸方向の内方側に空気室(A1,A2)が位置する。
【0049】
第1空気室(A1)には第1吸入管(15)が接続され、第2空気室(A2)には第2吸入管(16)が接続されている。仕切部(12)には、第1空気室(A1)のための第1吐出ポート(17)と、第2空気室(A2)のための第2吐出ポート(18)が形成されている。そして、仕切部(12)には、第1及び第2吐出ポート(17,18)の双方と連通する1つの吐出管(19)が接続されている。第1及び第2吸入管(15,16)の各流入端は、室内や室外等の空気中(大気中)に開口している。なお、吐出管(19)は空気供給路(45)の一端に接続されている。
【0050】
各吸入管(15,16)の内部には、ボール弁(15a,16a)及びバネ(15b,16b)がそれぞれ設けられている。ボール弁(15a,16a)は、バネ(15b,16b)によって外方側(空気室(A1,A2)側とは反対側)に付勢されている。ボール弁(15a,16a)及びバネ(15b,16b)は、各空気室(A1,A2)内の空気が各吸入管(15,16)を通じてシリンダ部材(11)の外部へ流出するのを禁止する逆止弁を構成している。
【0051】
各吐出ポート(17,18)の内部には、ボール弁(17a,18a)及びバネ(17b,18b)がそれぞれ設けられている。ボール弁(17a,18a)は、バネ(15b,16b)によって内方側(空気室(A1,A2)側)に付勢されている。ボール弁(17a,18a)及びバネ(17b,18b)は、空気室(A1,A2)の内圧が所定圧力以上となると、吐出ポート(17,18)を開放する吐出弁を構成している。
【0052】
ピストン部材(13)は、受水室(W1,W2)に流入した水道水の水圧を受けて変位し、空気室(A1,A2)の容積を縮小させる変位部材を構成している。具体的に、ピストン部材(13)は、第1受水室(W1)の水圧によって変位して第1空気室(A1)の容積を縮小させる第1動作と、上記第2受水室(W2)の水圧によって変位して第2空気室(A2)の容積を縮小させる第2動作とを行うように構成されている。ピストン部材(13)は、第1動作と第2動作とを交互に行って、シリンダ部材(11)の軸方向に往復動するように構成されている。
【0053】
また、各ピストン部(13a,13b)では、各受水室(W1,W2)に臨む受圧面の面積が、空気室(A1,A2)に臨む増圧面の面積よりも大きくなっている。具体的に、第1ピストン部(13a)には、第1空気室(A1)側の端面にピストンロッド(13c)が設けられている。このため、第1ピストン部(13a)では、第1受水室(W1)に面する部位の面積(即ち、受圧面の面積)が、第1空気室(A1)に面する部位の面積(即ち、増圧面の面積)よりも、ピストンロッド(13c)の軸直角断面の面積の分だけ小さくなっている。同様に、第2ピストン部(13b)では、第2空気室(A2)側の端面にピストンロッド(13c)が設けられている。このため、第2ピストン部(13b)では、第2受水室(W2)に面する部位の面積(即ち、受圧面の面積)が、第2空気室(A2)に面する部位の面積(即ち、増圧面の面積)よりも、ピストンロッド(13c)の軸直角断面の面積の分だけ小さくなっている。
【0054】
また、空気圧縮機(10)は、水流入路(21)及び水流出路(22)と、流路切換部(20)とを有している。
【0055】
水流入路(21)は、流入端が上水道管からの接続路(1)に接続され、流出端が後述する流路切換部(20)の弁室(25)に接続されている。水流出路(22)は、流入端が2つに分岐して上記弁室(25)に接続され、流出端が水供給路(3)に接続されている。
【0056】
流路切換部(20)は、上述した弁室(25)と、該弁室(25)内を挿通する弁体(26)と、第1及び第2水連通管(23,24)とを有している。弁室(25)は、仕切部(12)に形成され、且つ、シリンダ部材(11)の軸方向に延びる円柱形の空間である。弁室(25)には、5つのポート(25a,25b,25c,25d,25e)が設けられている。具体的に、弁室(25)には、流入側ポート(25a)、第1受水室側ポート(25b)、第2受水室側ポート(25c)、第1流出側ポート(25d)、第2流出側ポート(25e)が設けられている。流入側ポート(25a)には水流入路(21)の流出端が接続され、第1及び第2流出側ポート(25d,25e)には水流出路(22)の流出端が接続されている。第1受水室側ポート(25b)には第1水連通路(23)の一端が接続され、第1水連通路(23)の他端は第1受水室(W1)に接続されている。第2受水室側ポート(25c)には、第2水連通路(24)の一端が接続され、第2水連通路(24)の他端は第2受水室(W2)に接続されている。
【0057】
弁体(26)は、1つのロッド部(26a)と2つの弁部(26b)を有している。ロッド部(26a)は、両端のそれぞれが第1及び第2空気室(A1,A2)に挿通されている。2つの弁部(26b)は、ロッド部(26a)の途中に互いに所定間隔を置いて形成され、且つ、ロッド部(26a)よりも大径に形成されている。弁体(26)は、縮小した空気室(A1,A2)の空気圧力がロッド部(26a)に作用することで、弁室(25)の軸方向に変位する。具体的に、弁体(26)は、流入側ポート(25a)と第1受水室側ポート(25b)とが連通し且つ第2受水室側ポート(25c)と第2流出側ポート(25e)とが連通するように弁室(25)を区画する第1位置(図4に示す位置)と、流入側ポート(25a)と第2受水室側ポート(25c)とが連通し且つ第1受水室側ポート(25b)と第1流出側ポート(25d)とが連通するように弁室(25)を区画する第2位置とに変位する。
【0058】
弁体(26)のロッド部(26a)には、2つの溝を有するノッチ部(26c)が形成されている。また、シリンダ部材(11)には、ノッチ部(26c)の溝にはまる球状の係止部(27)と、該係止部(27)をノッチ部(26c)側へ付勢するバネ(28)とが設けられている。これらノッチ部(26c)、係止部(27)及びバネ(28)は、弁体(26)の変位方向における位置決め機構を構成している。
【0059】
さらに、空気圧縮機(10)は、発電機構(30)を有している。発電機構(30)は、永久磁石(32)とコイル(31)を有している。永久磁石(32)は、ピストン部材(13)のピストンロッド(13c)の中央部の外周面に取り付けられている。コイル(31)は、永久磁石(32)の外周側に設けられている。発電機構(30)では、ピストン部材(13)の往復動に伴って永久磁石(32)が往復動(変位)する。この永久磁石(32)の往復動によって、コイル(31)に起電力が発生して発電する。
【0060】
〈パネル制御部〉
パネル制御部(80)の構成について、図10を参照しながら説明する。パネル制御部(80)は、太陽光パネル(51)を駆動制御する。パネル制御部(80)は、駆動回路(81)とスイッチ制御部(88)を有している。駆動回路(81)は、ダイオードブリッジ回路(82)と、コンデンサ(83)と、スイッチング回路(84)とを有する。
【0061】
ダイオードブリッジ回路(82)は、4つのダイオード(D1〜D4)がブリッジ状に結線された整流回路である。ダイオードブリッジ回路(82)の入力端間には、発電機構(30)のコイル(31)が接続されている。コンデンサ(83)は、ダイオードブリッジ回路(82)の出力端間に接続されており、蓄電部を構成している。スイッチング回路(84)は、コンデンサ(83)の出力側に接続されており、互いに並列接続された第1及び第2スイッチ(85,86)を有する。また、スイッチング回路(84)は、太陽光発電ユニット(50)の第1及び第2給排気切換弁(68,69)と電気的に接続されている。第1給排気切換弁(68)が第1スイッチ(85)と直列に接続され、第2給排気切換弁(69)が第2スイッチ(86)と直列に接続されている。
【0062】
スイッチ制御部(88)は、角度センサ(71)と日射センサ(72)の検出値に基づいて、第1及び第2スイッチ(85,86)のスイッチング(オン/オフ)を行う。
【0063】
パネル制御部(80)では、発電機構(30)で発電した電力がコンデンサ(83)に蓄電される。スイッチ制御部(88)によって第1及び第2スイッチ(85,86)がオンされると、コンデンサ(83)に蓄電された電力が各給排気切換弁(68,69)へ供給される。これにより、給排気切換弁(68,69)が駆動される。
【0064】
−空気圧縮機の動作−
空気圧縮機(10)の運転動作について、図5〜図9を参照しながら説明する。
【0065】
空気圧縮機(10)の運転動作では、第1空気室(A1)の空気を圧縮する第1動作と、第2空気室(A2)の空気を圧縮する第2動作とが交互に実行される。これにより、空気圧縮機(10)では、圧縮空気が連続的に生成される。空気圧縮機(10)の運転開始時には、第1動作または第2動作のいずれかが行われる。ここでは、第1動作を先に行った場合について説明する。
【0066】
図5に示すように、第1動作では、流路切換部(20)の弁体(26)が第1位置となる。この状態では、水流入路(21)と第1水連通路(23)とが連通し、水流出路(22)と第2水連通路(24)とが連通する。水流入路(21)の水道水は、第1水連通路(23)を介して第1受水室(W1)へ流れる。
【0067】
そうすると、図6に示すように、第1受水室(W1)は拡大し第1空気室(A1)は縮小し、ピストン部材(13)が第2流体室(C2)側へ変位する。第1空気室(A1)が縮小すると、第1空気室(A1)の空気が圧縮される。この状態において、第2空気室(A2)は拡大し第2受水室(W2)は縮小する。そのため、第2空気室(A2)では、第2吸入管(16)が開放されて外気が流入する。第2受水室(W2)では、その内部の水が第2水連通路(24)を介して水流出路(22)へ流出する。
【0068】
さらに、図7に示すように、ピストン部材(13)が第2流体室(C2)側へ変位すると、第1空気室(A1)の空気圧力が所定値以上となり、第1吐出ポート(17)が開放されて、第1空気室(A1)の圧縮空気が吐出管(19)から空気供給路(45)へ吐出される。ここで、第1ピストン部(13a)において、第1受水室(W1)側の受圧面の面積は、第1空気室(A1)側の増圧面の面積よりも大きいため、パスカルの原理により、第1空気室(A1)の空気を第1受水室(W1)側の水道水の圧力よりも高い圧力まで増圧することができる。
【0069】
そして、図8に示すように、第1空気室(A1)で所定値以上となった空気圧力が、流路切換部(20)の弁体(26)の一端(図8のおける左端)に作用すると、弁体(26)は第2流体室(C2)側へ所定距離だけ変位して停止する。つまり、係止部(27)がノッチ部(26c)の左側の溝にはまって、弁体(26)が第2位置となる。この状態では、水流入路(21)と第2水連通路(24)とが連通し、水流出路(22)と第1水連通路(23)とが連通する。したがって、水流入路(21)の水道水は、第2水連通路(24)を介して第2受水室(W2)へ流れる。
【0070】
そうすると、図9に示すように、ピストン部材(13)は第2動作を行う。具体的に、第2受水室(W2)は拡大し第2空気室(A2)は縮小し、ピストン部材(13)が第1流体室(C1)側へ変位する。第2空気室(A2)が縮小すると、第2空気室(A2)の空気が圧縮される。この状態において、第1空気室(A1)は拡大し第1受水室(W1)は縮小する。そのため、第2空気室(A2)では、第2吸入管(16)が開放されて外気が流入する。第2受水室(W2)では、その内部の水が第2水連通路(24)を介して水流出路(22)へ流出する。
【0071】
そして、図示はしないが、ピストン部材(13)がさらに第1流体室(C1)側へ変位すると、第2空気室(A2)の空気圧力が所定値以上となり、第2吐出ポート(18)が開放されて、第2空気室(A2)の圧縮空気が吐出管(19)から空気供給路(45)へ吐出される。そして、第2空気室(A2)で所定値以上となった空気圧力が、流路切換部(20)の弁体(26)の他端(図9における右端)に作用すると、弁体(26)は第1流体室(C1)側へ所定距離だけ変位して停止する。つまり、係止部(27)がノッチ部(26c)の右側の溝にはまって、弁体(26)が第1位置に戻り、上述した動作が繰り返される。
【0072】
このように、空気圧縮機(10)では、縮小した空気室(A1,A2)の空気圧力の作用によって、流路切換部(20)の弁体(26)が第1位置と第2位置とに交互に変位する。これによって、水流入路(21)及び水流出路(22)が2つの受水室(W1,W2)に対して交互に連通する。これにより、ピストン部材(13)が第1動作と第2動作とを交互に行い、ピストン部材(13)が往復動する。その結果、2つの空気室(A1,A2)が交互に縮小するため、吐出管(19)から圧縮空気が連続的に吐出される。吐出管(19)から空気供給路(45)へ吐出された圧縮空気は、蓄圧タンク(40)に貯留される。蓄圧タンク(40)の圧縮空気は、太陽光発電ユニット(50)へ供給される。
【0073】
また、空気圧縮機(10)では、上述したようにピストン部材(13)が往復動することによって、発電機構(30)において発電する。発電機構(30)では、ピストン部材(13)の往復動に伴って永久磁石(32)が往復動(変位)する。この永久磁石(32)の往復動によって、コイル(31)に起電力が発生して発電する。このようにして発電機構(30)で発電した電力は、パネル制御部(80)の駆動回路(81)に供給される。駆動回路(81)に供給された電力は、ダイオードブリッジ回路(82)で整流された後、コンデンサ(83)に蓄電される。
【0074】
−太陽光発電ユニットの動作−
太陽光発電ユニット(50)では、太陽光の方角に応じて太陽光パネル(51)の角度が調整される。太陽光追尾システム(S)では、この太陽光パネル(51)の駆動源として、空気圧縮機(10)から供給された圧縮空気が利用される。太陽光発電ユニット(50)の動作について図1〜図3を参照しながら説明する。
【0075】
蓄圧タンク(40)に貯留された圧縮空気は、給排気機構(65)側へ送られる。この状態において、パネル制御部(80)は、太陽の位置(方角)に応じて、各給排気切換弁(68,69)を制御する。より詳細に、パネル制御部(80)は、角度センサ(71)で検出した太陽光パネル(51)の角度位置と、日射センサ(72)で検出した太陽の日射方向とに基づいて、太陽光パネル(51)の必要な回動角度を算出する。そして、パネル制御部(80)は、太陽光パネル(51)が算出した回転角度で変位するように、各給排気切換弁(68,69)を制御し、各空気袋(58,59)を伸縮させる。
【0076】
例えば太陽が東側(例えば図3におけるの右上側)に位置していたとする。この場合、パネル制御部(80)は、東側寄りに設けられる第2空気袋(59)が、第1空気袋(58)よりも低い位置とするように、各給排気切換弁(68,69)を制御する。具体的に、この場合には第2給排気切換弁(69)を第2状態とすることで、第2給排気流路(67b)と第2排出路(67c)とを連通させる。これにより、第2空気袋(59)内の圧縮空気が第2排出路(67c)を通じて大気中へ放出される。その結果、第2空気袋(59)は徐々に収縮する。同時に、第1給排気切換弁(68)を第1状態とすることで、第1中継流路(66a)と第1給排気流路(66b)とを連通させる。これにより、第1中継流路(66a)側の圧縮空気が、第1空気袋(58)に流入する。その結果、第1空気袋(58)は徐々に伸張する。以上のように各空気袋(58,59)を伸縮調整することで、太陽光パネル(51)を図3(A)に示すような角度位置に調整できる。
【0077】
また、例えば太陽が南側(例えば図3における上側)に位置していたとする。この場合、パネル制御部(80)は、第1空気袋(58)と第2空気袋(59)とを同じ位置とするように、各給排気切換弁(68,69)を制御する。これにより、太陽光パネル(51)を図3(B)に示すような角度位置に調整できる。
【0078】
また、例えば太陽が西側(例えば図3における左上側)に位置していたとする。この場合、パネル制御部(80)は、第1空気袋(58)が、第2空気袋(59)よりも低い位置とするように、各給排気切換弁(68,69)を制御する。具体的に、この場合には第1給排気切換弁(68)を第2状態とし、第2給排気切換弁(69)を第1状態とする。その結果、第1空気袋(58)が収縮すると同時に、第2空気袋(59)が伸張する。これにより、太陽光パネル(51)を図3(C)に示すような角度位置に調整できる。
【0079】
各給排気切換弁(68,69)は、パネル制御部(80)における駆動回路(81)によって第1状態と第2状態とに切り換えられる。例えば、駆動回路(81)のスイッチ(85,86)がオンされてコンデンサ(83)に蓄電された電力が給排気切換弁(68,69)へ供給されると、給排気切換弁(68,69)は第1状態に切り換わる。また、駆動回路(81)のスイッチがオフされてコンデンサ(83)から給排気切換弁(68,69)への電力供給が停止されると、給排気切換弁(68,69)は第2状態に切り換わる。
【0080】
以上のようにして、太陽光パネル(51)の受光面(51a)に太陽光が授与されると、太陽光パネル(51)では、直流電力が生成される。この直流電力は、例えば、パワーコンディショナ(115)に出力されて、該パワーコンディショナ(115)によって交流電力に変換される。変換された交流電力は、電力供給対象へ供給される。
【0081】
なお、本実施形態の発電機構(30)では、コイル(31)と永久磁石(32)を用いて電磁誘導で発電するようにしたが、本発明に係る発電機構(30)はこれに限らず、エレクトレットと金属板を用いて静電誘導で発電するようにしてもよい。
【0082】
−実施形態1の効果−
上記実施形態1の空気圧縮機(10)では、水道水の圧力を利用して空気を圧縮している。これにより、水道水の過剰な圧力を有効に利用することができ、省エネ性の向上に寄与することができる。
【0083】
また、上記実施形態1の空気圧縮機(10)によれば、受水室(W1,W2)に流入した水圧によってピストン部材(13)を変位させ、空気室(A1,A2)の容積を縮小させることで、比較的簡易な構造により、圧縮空気を得ることができる。また、受水室(W1,W2)には、水道水の圧力が利用されるため、水道水の過剰な圧力を有効に利用することができ、省エネ性の向上に寄与することができる。
【0084】
さらに、上記実施形態1の空気圧縮機(10)によれば、縮小した空気室(A1,A2)の空気圧力によって、水流入路(21)及び水流出路(22)を2つの受水室(W1,W2)に交互に連通させるようにしたので、自動でピストン部材(13)を往復動させて2つの空気室(A1,A2)を交互に縮小させることができる。これにより、連続的に圧縮空気を生成することができる。また、自動でピストン部材(13)を往復動させるので、水流入路(21)及び水流出路(22)を切り換えるための制御部が不要となり、空気圧縮機(10)の構成が簡易となる。
【0085】
特に、弁室(25)において縮小した空気室(A1,A2)の空気圧力によって第1位置と第2位置とに変位する弁体(26)を備えるようにしたため、確実に水流入路(21)及び水流出路(22)を2つの受水室(W1,W2)に交互に連通させることができる。よって、確実にピストン部材(13)を往復動させることができる。
【0086】
また、実施形態1の空気圧縮機(10)では、各ピストン部(13a,13b)における水の受圧面の面積を、空気の増圧面の面積よりも大きくしているため、空気室(A1,A2)の空気を水道水の圧力よりも高い圧力まで増圧させることができる。したがって、比較的高い圧力の圧縮空気を得ることができる。
【0087】
また、上記実施形態1の空気圧縮機(10)によれば、ピストン部材(13)の往復動を利用して発電する発電機構(30)を備えるようにしたため、発電のための駆動源を別途設けることなく発電電力を得ることができる。
【0088】
また、上記実施形態1の太陽光追尾システム(S)では、空気圧縮機(10)で生成した圧縮空気を、太陽光パネル(51)の駆動源として利用している。このため、過剰となる水道圧のエネルギーをこれらの駆動源として回収できる、省エネ性に優れた太陽光追尾システム(S)を提供することができる。
【0089】
また、上記実施形態1の太陽光追尾システム(S)では、空気圧縮機(10)の発電機構(30)によって発電した電力を蓄電するコンデンサ(83)を備えるようにした。このため、停電した際でも、給排気切換弁(68,69)など太陽光追尾システム(S)を構成する電機部品を駆動することができる。よって、信頼性の高い太陽光追尾システム(S)を提供することが可能となる。
【0090】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。図11及び図12に示すように、実施形態2に係る太陽光追尾システム(S)は、上記実施形態1における空気圧縮機(10)の発電機構(30)の構成を変更したものである。
【0091】
本実施形態に係る空気圧縮機(10)の発電機構(100)は、上記実施形態1と同様、ピストン部材(13)の往復動を利用して発電するものである。具体的に、本実施形態の発電機構(100)は、動力伝達部(101)と発電部(104)を有している。動力伝達部(101)は、互いに回動自在に連結された第1及び第2ロッド(102,103)を有する。第1ロッド(102)の一端はピストン部材(13)の第1ピストン部(13a)に接続され、第2ロッド(103)の一端は発電部(104)に接続されている。発電部(104)は、回転子(105)と固定子(107)を有する。回転子(105)は、固定子(107)の外周側に配置される筒状部材であり、その内周面には複数の永久磁石(106)が周方向に配列されている。この複数の永久磁石(106)は、S極のものとN極のものとが交互に配列されている。固定子(107)は、放射状に突出する複数の固定子コア(109)と、該固定子コア(109)に巻回されるコイル(108)とを有する。回転子(105)は、動力伝達部(101)の第2ロッド(103)の一端が回動自在に連結されている。
【0092】
本実施形態の発電機構(100)では、動力伝達部(101)によって、ピストン部材(13)の往復動が回転子(105)の回転動作に変換される。回転子(105)が回転すると、それに伴って、永久磁石(106)も回転(変位)する。これにより、コイル(108)に起電力が発生して発電する。この発電した電力は、上記実施形態1と同様、パネル制御部(80)の駆動回路(81)に供給されてコンデンサ(83)に蓄電される。その他の構成、作用及び効果は上記実施形態1と同様である。
【0093】
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3について説明する。図13に示すように、実施形態3に係る太陽光追尾システム(S)は、上記実施形態1における発電機構(30)及びパネル制御部(80)の構成を変更したものである。
【0094】
本実施形態に係る空気圧縮機(10)の発電機構(110)は、吐出管(19)から吐出された圧縮空気を利用して発電するものである。具体的に、本実施形態の発電機構(110)は、風車(111)と発電部(112)を有している。この発電機構(110)では、風車(111)が回転することによって発電部(112)で発電する。風車(111)は、空気圧縮機(10)から吐出された圧縮空気が吹き付けられることで回転する。具体的に、本実施形態の太陽光追尾システム(S)では、蓄圧タンク(40)に空気供給路(45)とは別に吹出流路(113)が接続されている。吹出流路(113)は、蓄圧タンク(40)の圧縮空気が風車(111)へ向かって吹き出すように構成されている。吹出流路(113)には、開閉弁としての電磁弁(114)が設けられている。
【0095】
本実施形態のパネル制御部(120)は、駆動回路(121)とスイッチ制御部(128)を有している。駆動回路(121)は、ダイオードブリッジ回路(122)と、コンデンサ(123)と、充電池(124)と、充放電切換回路(125)を有する。
【0096】
ダイオードブリッジ回路(122)は、4つのダイオード(D1〜D4)がブリッジ状に結線された整流回路である。ダイオードブリッジ回路(122)の入力端間には、発電機構(110)の発電部(112)が接続されている。コンデンサ(123)は、ダイオードブリッジ回路(122)の出力端間に接続されており、蓄電部を構成している。充電池(124)は、コンデンサ(123)の出力側に接続されている。充電池(124)の出力側は、負荷に接続されている。ここで言う負荷は、上記実施形態1に係るパネル制御部(80)のスイッチング回路(84)と同様である。充放電切換回路(125)は、充電池(124)の充電動作と放電動作を切り換えるものであり、第1及び第2スイッチ(126,127)を有する。なお、充放電切換回路(125)にはコンデンサ(123)と充電池(124)側へ電流が逆流するのを防止するダイオードが適宜設けられている。第1スイッチ(126)は充電池(124)と直列に接続されており、第2スイッチ(127)は充電池(124)と第1スイッチ(126)との間と負荷との間に接続されている。
【0097】
スイッチ制御部(128)は、上記実施形態1と同様、角度センサ(71)と日射センサ(72)の検出値に基づいて、スイッチング回路(84)における第1及び第2スイッチ(85,86)のスイッチング(オン/オフ)を行う。また、スイッチ制御部(128)は、充電池(124)の充電状態に基づいて、電磁弁(114)や充放電切換回路(125)を制御する。スイッチ制御部(128)は、例えば、充電池(124)の充電量が満タンである場合、電磁弁(114)を閉じると共に、充放電切換回路(125)の第1スイッチ(126)をオフし且つ第2スイッチ(127)をオンする。そうすると、充電池(124)の電力が第2スイッチ(127)を介して負荷へ供給される。負荷へ供給された電力は、太陽光発電ユニット(50)の給排気切換弁(68,69)の駆動に用いられる。また、スイッチ制御部(128)は、充電池(124)の充電量が少なくなると、電磁弁(114)を開くと共に、充放電切換回路(125)の第1スイッチ(126)をオンし且つ第2スイッチ(127)をオフする。そうすると、吹出流路(113)から圧縮空気が風車(111)へ向かって吹き出して、風車(111)が回転する。これによって、発電部(112)が発電する。発電した電力は、ダイオードブリッジ回路(122)で整流された後、コンデンサ(123)や充電池(124)に蓄電(充電)される。
【0098】
本実施形態では、空気圧縮機(10)から吐出された圧縮空気を利用して風車(111)を回転させ発電させるようにしたため、風車(111)及び発電部(112)とパネル制御部(120)の駆動回路(121)との接続距離を短く設定することができる。これにより、発電部(112)が発電した電力が駆動回路(121)へ供給される際に生じる電圧降下をできるだけ低減することができる。そのため、停電した際でも、十分な発電電力を確実に給排気切換弁(68,69)へ供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明したように、本発明は、空気圧縮機及びこれを備えた太陽光追尾システムについて有用である。
【符号の説明】
【0100】
S 太陽光追尾システム
10 空気圧縮機
11 シリンダ部材(筒状部材)
13 ピストン部材
13a 第1ピストン部(第1のピストン部)
13b 第2ピストン部(第2のピストン部)
13c ピストンロッド
20 流路切換部
21 水流入路
22 水流出路
25 弁室
25a 流入側ポート
25b 第1受水室側ポート
25c 第2受水室側ポート
25d 第1流出側ポート
25e 第2流出側ポート
26 弁体
30,100,110 発電機構
31,106 永久磁石(磁石)
32,108 コイル
51 太陽光パネル
54 回動軸
58 第1空気袋(アクチュエータ)
59 第2空気袋(アクチュエータ)
83,123 コンデンサ(蓄電部)
111 風車
124 充電池(蓄電部)
C1 第1流体室(第1の流体室)
C2 第2流体室(第2の流体室)
W1 第1受水室(受水室)
W2 第2受水室(受水室)
A1 第1空気室(空気室)
A2 第2空気室(空気室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に第1及び第2の流体室(C1,C2)が区画された筒状部材(11)と、
上記各流体室(C1,C2)において上記軸方向の外方側と内方側の一方に水道水が流入する受水室(W1,W2)が位置し他方に空気が流入する空気室(A1,A2)が位置するように上記各流体室(C1,C2)を上記受水室(W1,W2)と空気室(A1,A2)とに区画し、上記受水室(W1,W2)に流入した水道水の圧力を受けて変位し上記空気室(A1,A2)を縮小させる第1及び第2のピストン部(13a,13b)と、該ピストン部(13a,13b)同士を連結するピストンロッド(13c)とを有するピストン部材(13)と、
水道水が流入する水流入路(21)及び水道水が流出する水流出路(22)と、
上記ピストン部(13a,13b)の変位により縮小した空気室(A1,A2)の圧力が作用することによって、上記水流入路(21)を上記空気室(A1,A2)が拡大した側の流体室(C1,C2)の受水室(W1,W2)と連通させ、且つ、上記水流出路(22)を上記空気室(A1,A2)が縮小した側の流体室(C1,C2)の受水室(W1,W2)と連通させる流路切換部(20)とを備えている
ことを特徴とする空気圧縮機。
【請求項2】
請求項1において、
上記流路切換部(20)は、
上記水流入路(21)が接続された流入側ポート(25a)と、水流出路(22)が接続された第1及び第2の流出側ポート(25d,25e)と、上記各受水室(W1,W2)と連通する第1及び第2の受水室側ポート(25b,25c)とが設けられた弁室(25)と、
該弁室(25)に収容され、上記ピストン部(13a,13b)の変位により縮小した空気室(A1,A2)の圧力が作用することによって、上記流入側ポート(25a)と上記第1の受水室側ポート(25b)とを連通させ且つ第1の流出側ポート(25d)と第2の受水室側ポート(25c)とを連通させるように上記弁室(25)を区画する第1位置と、上記流入側ポート(25a)と上記第2の受水室側ポート(25c)とを連通させ且つ上記第2の流出側ポート(25e)と上記第1の受水室側ポート(25b)とを連通させるように上記弁室(25)を区画する第2位置とに変位する弁体(26)とを備えている
ことを特徴とする空気圧縮機。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記ピストン部(13a,13b)の変位に伴う上記ピストン部材(13)の上記軸方向の往復動によって変位する磁石(32,106)と、該磁石(32,106)の変位によって発電するコイル(31,108)とを有する発電機構(30,100)を備えている
ことを特徴とする空気圧縮機。
【請求項4】
請求項1または2において、
上記空気室(A1,A2)で該空気室(A1,A2)の縮小によって圧縮され吐出された空気によって回転する風車(111)を有し、該風車(111)の回転によって発電する発電機構(110)を備えている
ことを特徴とする空気圧縮機。
【請求項5】
回動軸(54)が設けられた太陽光パネル(51)と、
請求項1乃至4の何れか1つに記載の空気圧縮機(10)と、
上記空気圧縮機(10)の圧縮空気によって作動し、太陽の向きに応じて上記太陽光パネル(51)を上記回動軸(54)の軸周りに回動させるアクチュエータ(58,59)とを備えている
ことを特徴とする太陽光追尾システム。
【請求項6】
回動軸(54)が設けられた太陽光パネル(51)と、
請求項3または4に記載の空気圧縮機(10)と、
上記空気圧縮機(10)の圧縮空気によって作動し、太陽の向きに応じて上記太陽光パネル(51)を上記回動軸(54)の軸周りに回動させるアクチュエータ(58,59)と、
上記空気圧縮機(10)の発電機構(30,100,110)によって発電した電力を蓄電する蓄電部(83,123,124)とを備えている
ことを特徴とする太陽光追尾システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−32714(P2013−32714A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168192(P2011−168192)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】