説明

空気清浄装置、及び加湿機

【課題】フィルタの繊維間の隙間などにも十分な量の紫外線を照射して、高い除菌作用を発揮することができる空気清浄装置、及び加湿機を提供する。
【解決手段】 空気吸込口1B及び吐出口1Cを有するケース本体1Aの内部に、除菌用の液体に下端部が浸漬する状態で上部ローラ4B及び下部ローラ4Cに張架されて回動する無端ベルト状のフィルタ4を備えた空気清浄装置1であって、ケース本体1Aの内部のフィルタ4のR状に湾曲した部分の近傍に、フィルタ4のR状の部分に臨む状態で、フィルタ4への紫外線照射を行う除菌装置20を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄装置、及び加湿機に係り、特に高い除菌機能を備えることができる空気清浄装置、及び加湿機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、室内の空気を浄化する空気清浄装置として、高性能空気清浄フィルタを搭載して空気中の微細な塵埃や臭いを捕集して空気を浄化する空気清浄機が普及しているが、空気清浄機は圧力損失の大きなフィルタを搭載しているため、大きな風量を処理しにくい、目詰まりにより通風抵抗が大きくなったり活性炭が飽和して臭いの吸着性能が劣化した場合にフィルタ交換が必要、別に加湿機構を組み合わせないと加湿ができない、等の課題があった。その課題を解決する空気清浄装置として、上下方向にフィルタを不動状態で設置するとともに、このフィルタの下部に電解液を浸漬させて、その電解液を吸い上げるように構成した気液接触型除菌装置(VW)が提案され開発されている。ところが、このタイプのものは、長期間の動作や使用環境によって、フィルタに汚れが多く付着すると、これが浸漬する電解液まで汚損されてしまい、電解液による除菌作用が十分に機能できない、といった事態が発生する虞があった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載のものなども知られている。
即ち、この空気清浄装置は、図4及び図5に示すように、空気入り口101から流入する空気中の塵埃を捕集する集塵フィルタ102と、集塵フィルタ102に捕集された塵埃を除去する回転ブラシ103、吸引ノズル104とを備え、集塵フィルタ102は、室内側に露出すると共に空気入り口101のカバーを兼ねるように構成したものであって、集塵フィルタ102を回転ブラシ103、吸引ノズル104で自動清掃することで、集塵フィルタ102に付着した塵埃を自動的に除去するのに加え、空気入り口101に吸込みグリルなどが無いので、清掃の省力化を図ることができるようになっている。
【0004】
また、この空気清浄装置にあっては、清掃ユニットカバー105の内部には、清掃手段の掃き取り手段である回転ブラシ103と、吸引手段の吸引ノズル104と、光源である紫外線ランプ106とが配置されている。また、清掃ユニットカバー105の内壁には、紫外線ランプ106からの光を反射する反射層107が設けられている。従って、この紫外線ランプ106を波長254nm付近の紫外線を含む出射特性とすることで、直接菌に作用して除菌を行うことができる。また、この空気清浄装置は、清掃ユニットカバー105の内壁に反射層107を設けるとともに、回転ブラシ103、吸引ノズル104を清掃ユニットカバー105内に一つにまとめた構造とすることで、塵の飛散を防ぐとともに、空気清浄装置内への紫外線の漏れを防いで空気清浄装置内の樹脂部品等の劣化を抑えることで、空気清浄装置の信頼性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−153289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような空気清浄装置にあっては、紫外線ランプ106の近傍を通過する際に、フラットな状態のフィルタ集塵フィルタ102に対して紫外線照射を行うので、専ら集塵フィルタ102の表面部分の除菌を行うだけである。つまり、集塵フィルタ102の繊維間に入り込んでいた細菌などについては、十分な除菌機能を発揮することが難しい。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑み、フィルタの繊維間の隙間などにも十分な量の紫外線を照射して、高い除菌作用を発揮することができる空気清浄装置、及び加湿機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、
(1)本発明の空気清浄装置、及び加湿機は、空気吸込口及び吐出口を有するケース本体の内部に、除菌用の液体に下端部が浸漬する状態でローラ間に張架されて回動する無端ベルト状のフィルタを備えた空気清浄装置、及び加湿機であって、
前記ケース本体の内部の前記フィルタのR状に湾曲した部分の近傍に、前記フィルタのR状の部分に臨む状態で、前記フィルタへの紫外線照射を行う除菌装置を設けた、ことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、フィルタのR状に湾曲した上部では、フィルタを構成する繊維の向きがフィルタの移動動作とともに略180度回動して移動方向が反転していくので、繊維間の隙間もこれに伴って除菌装置に対する相対的な向きが大きく変動する。その結果、その隙間への紫外線の照射方向も相対的に変化させることができるので、フィルタの表面ばかりかそれを構成する繊維間の隙間に対しても、各種の方向から紫外線を照射させることができるようになる。これによって、フィルタの普段露出しない内部などのような各部位にまで隅々にわたってむらなく十分な量の紫外線を照射させることができるので、紫外線による高い除菌作用を発揮できるようになる。
【0010】
(2)また、本発明の空気清浄装置、及び加湿機は、空気吸込口及び吐出口を有するケース本体の内部に、
水道水など塩化物イオンを含む水を電解して電解水とする電解部と、
電解水を貯留するトレイ部と、
電解部で生成した電解水を保水し気液接触させる、無端ベルト状のフィルタを回動可能な状態で、上下に設けた一対のローラに張架させたエアーエレメント部と、
当該エアーエレメント部のフィルタを通過した空気を送出させる送風用のファン部と、
前記エアーエレメント部のフィルタを回転させる駆動部と、
前記フィルタのR状に湾曲した部分の近傍上部に、前記フィルタのR状の部分に臨む状態で設けた前記フィルタへの紫外線照射を行う除菌装置と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、エアーエレメント部で電解水と空気を接触させて電解水により空気の除菌浄化を行うとともに、上記(1)の場合と同様、フィルタのR状に湾曲した上部では、フィルタを構成する繊維の向きがフィルタの移動動作とともに略180度回動して移動方向が反転していくので、繊維間の隙間もこれに伴って除菌装置に対する相対的な向きが大きく変動する。その結果、その隙間への紫外線の照射方向も相対的に変化させることができるので、フィルタの表面ばかりかそれを構成する繊維間の隙間に対しても、各種の方向から紫外線を照射させることができるようになる。これによって、フィルタの普段露出しない内部などのような各部位にまで隅々にわたってむらなく十分な量の紫外線を照射させることができるので、紫外線による高い除菌作用を発揮できるようになる。
【0012】
(3)また、本発明の空気清浄装置、及び加湿機は、上記(1)又は(2)の空気清浄装置、及び加湿機において、
前記除菌装置が、前記フィルタを構成する無端ベルトを上側で架設して支持する上部ローラの回転中心位置よりも上側であって、前記無端ベルトのR状に湾曲した表面部分に対して所要量の紫外線を照射する光源と、
当該光源からの紫外線を前記無端ベルトのR状に湾曲した表面部分に向けて反射させる反射ミラーと、を備えた、ことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、上記(1)、(2)に記載の効果に加えて、反射ミラーで反射された紫外線も同時にフィルタに照射できるので、さらに増大された紫外線を照射でき、より高い除菌効果が期待できる。
【0014】
(4)また、本発明の空気清浄装置、及び加湿機は、上記(1)又は(2)の空気清浄装置、及び加湿機において、
前記光源が、前記ケース本体の奥部方向に向けた状態で前記フィルタに対向配置させたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、上記(1)又は(2)に記載の効果に加えて、ケース本体を開いたときに、紫外線が使用者の目に直接差し込むトラブルを回避することが可能になるので、安全性が高まる。
【0016】
(5)また、本発明の空気清浄装置、及び加湿機は、上記(3)の空気清浄装置、及び加湿機において、
前記ローラが、表面部分が前記光源からの紫外線を反射させる反射手段としての機能を有することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、上記(3)に記載の効果に加えて、さらにフィルタの繊維の隙間を通過してしまいフィルタに到達できなかった紫外線については、ローラの表面の鏡面加工による反射機能を利用して効果的な反射が行われるので、そこで反射した紫外線はこのローラに対面・接触するフィルタの内側面を照射させることができる。このようにして、フィルタの裏面の各部位にも紫外線を照射させることができるので、紫外線によるさらに高い除菌作用を発揮可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の空気清浄装置、及び加湿機は、空気吸込口及び吐出口を有するケース本体の内部に、除菌用の液体に下端部が浸漬する状態でローラ間に張架されて回転する無端ベルト状のフィルタを備えた空気清浄装置であって、ケース本体の内部のフィルタのR状に湾曲した部分の近傍に、フィルタのR状の部分に臨む状態で、フィルタへの紫外線照射を行う除菌装置を備えている。
従って、フィルタのR状に湾曲した上部では、フィルタを構成する繊維の向きがフィルタの移動動作とともに略180度回動して移動方向が反転していくので、繊維間の隙間もこれに伴って除菌装置に対する相対的な向きが大きく変動する。その結果、その隙間への紫外線の照射方向も相対的に変化させることができるので、フィルタの表面ばかりかそれを構成する繊維間の隙間に対しても、各種の方向から紫外線を照射させることができるようになる。
これによって、フィルタの普段露出しない内部などのような各部位にまで隅々にわたってむらなく十分な量の紫外線を照射させることができるので、紫外線による高い除菌作用を発揮できるようになる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の空気清浄装置の全体構成を示す概略線図である。
【図2】図1の空気清浄装置の側断面図である。
【図3】本発明の空気清浄装置の要部の作用を示す説明図である。
【図4】従来の空気清浄装置の構成を示す斜視図である。
【図5】その断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の空気清浄装置1を示すものであり、この空気清浄装置1は、ケース本体1Aと、フロントパネル2と、給水タンク3と、エアーエレメント部を構成するフィルタ4と、ファン部を構成する送風ファン5と、電解部を構成する除菌用電極6と、トレイ部を構成するトレイ7と、受皿8と、光源9と、エアーフィルタ10と、図示外の駆動部を制御する制御部11などとからなる主要な構成要素を備えている。さらに、本発明では、特に紫外線(UV)を用いた除菌装置20を備えている。
【0021】
このように構成された本実施形態の空気清浄装置1では、空気吸込口1Bから送風ファン5で強制的に取り込んだ外部からの空気を、トレイ7に貯留された除菌用の液体(この場合には、HClOが生成された液体)に下部が浸漬されたフィルタ4に通すことによって加湿された空気を形成し、その加湿された空気を吹出口1Cから外部へ排出させている。また、詳細は後述するが、例えば長期間しないような場合に、万一フィルタ4にかび、細菌、ウイルスなどが付着したような場合でも、除菌装置20によってそのかび、細菌、ウイルスなどを死滅させることができるようになっている。
【0022】
ケース本体1Aは、大略構成として、図1に示すように、内部に、給水タンク室S、送風ファン室S、フィルタ室S、エアーフィルタ室S、制御室S、光源室Sを設けている。また、ケース本体1Aは、背面に網目状の空気吸込口1B及び上面にルーバ1Fを付設した吹出口1Cをそれぞれ有するとともに、正面(フロント面)に給水タンク3を出し入れするための開放口1Dを設けており、さらに上面には操作パネル部1E(図2参照)が設置されている。
【0023】
給水タンク3は、後述する除菌用電極6による化学反応により除菌作用を有する液体、本実施形態では次亜塩素酸HClOを生成させるため、塩化物イオン(Cl)を含有する水(水道水)を収容するものである。なお、本実施形態では、図1に示すように、給水タンク室Sにおいて透明なタンク内部に水道水(或いは塩素殺菌された水など)が収容されている。
【0024】
フィルタ4は、所定湿度に加湿され、かつ、除菌された空気を生成して空気清浄装置1の外部へ送り出すためのものであり、適宜の材料(例えば、所要の繊維材料を比較的粗いメッシュ状に編みあげたもの)で形成された無端ベルトで構成されており、図1に示すように、フィルタ室Sにおいて、ケース本体1A内の給水タンク3の近傍のトレイ7の液皿7Bに貯められた除菌液に下端部が浸漬する状態で設置されている。本実施形態のフィルタ4は、図1に示すように、フィルタユニット4Aの上下に配置した一対のローラ4B,4Cの間に張架されており、いずれか一方のローラと物理的に連結されるとともに制御部11で制御される駆動手段である、図示外のステップモータによって回転駆動する。
【0025】
送風ファン5は、図1に示すように、フィルタ4を通過してきた空気を強制的に吸引するとともに、この空気を吹出口1Cから外部へ送出するものであり、フィルタ4の近傍の送風ファン室Sに設置されている。
【0026】
除菌用電極6は、前述した給水タンク3内の水から除菌作用を有する電解液である、例えば次亜塩素酸(以下、除菌液とよぶ)を生成させるために、トレイ7の液皿7Bに貯水された除菌液中に浸漬されている。本実施形態の除菌用電極6は、フィルタ4を収容・保持するフィルタユニット4Aの下部から吊下された状態で正負2種類の電極が対をなして設置されており、配線の一部となる導電性金属6Aなどを介して制御部11側と電気的な接続が図られている。
【0027】
トレイ7は、図1に示すように、ケース本体1Aの底部において、給水タンク室Sからフィルタ室Sの下部にかけて設置されている。
【0028】
液皿7Bには、給水タンク3から送り出された水道水から除菌液が生成されて貯められており、適宜のタイミングで回転駆動されている無端ベルト状のフィルタ4の下部領域がこの除菌液に常時浸漬されている。
【0029】
受皿8は、フィルタ室Sの下部に設置されており、普段、フィルタ室Sにフィルタユニット4Aが収容されている状態のときには、図6に示すように、縦方向に起立した状態でフィルタ室S内に収容されている。
【0030】
エアーフィルタ10は、図1に示すように、外部から取り込んでフィルタ4を通過する前の空気の浄化を行うものであり、フィルタ室Sに臨むケース本体1A内部の背面側において、空気吸込口1Bに対向配置されている。
【0031】
制御部11は、各種制御を司る電気系統の各種電子部品などが制御ボックス内に収容されてユニット化(またはモジュール化)されている。
【0032】
次に、本発明の各機構について簡単に説明する。
本発明の空気浄化装置は、電源を投入すると、制御部の動作によって、図示外の駆動手段によりフィルタ4及びファン5が回転し、外部の空気が背面側の空気吸込口1Bからケース本体1A内部へ取り込まれてフィルタ4を通過する。即ち、この外部から取り込んだ空気は、フィルタ4を通過する際、このフィルタ4で浄化されるとともに、この浄化された空気がファン5によって上面側の吹出口1Cからケース本体1A外部へ再び送り出されていく。
なお、フィルタ4は、無端ベルト状を有して上下のローラ4B,4C間に緊張状態に架設されて適宜のタイミングで回転することにより、液皿7B内の除菌液に順次浸漬されていくことで、フィルタ4の除菌が行われる。
【0033】
次に、特に本発明の特徴的な構成要素である除菌装置20について、その構成を説明する。
図3は、除菌装置20を示すものであり、この除菌装置20は、フィルタ4のR状に湾曲した上部(以下、R部とよぶ)に近接し、かつ、このR部に臨む状態でフィルタ4への紫外線照射を行うようになっている。本実施形態の除菌装置20は、光源21と、反射ミラー22と、を備えており、トレイ7の液皿7Bに貯水された除菌液(HClO)による殺菌メカニズムとは異なる、紫外線を用いた殺菌メカニズムでかびやインフルエンザウイルスなどを死滅させる。
【0034】
光源21は、フィルタ4を構成する無端ベルトを上部側で架設して支持する上部ローラ4Bの少なくとも回転中心位置Oよりも上側位置であって、無端ベルト上部の(R状に湾曲した)R部の表面部分に対して所要量の紫外線を照射するようになっており、所要の短波長を出射する紫外線照射ランプで構成されている。なお、この紫外線を照射させる光源21には、この紫外線照射ランプの限定されるものではなく、例えば所要の波長(例えば、凡そ250nm前後)の紫外線を出射するLEDなどでもか可能であるが、この場合には、紫外線照射ランプに比べて指向性が強いので、例えばフィルタ4の幅(Y)方向に平行に複数設置するようにするのが好ましい。
【0035】
また、この光源21は、制御部によるタイマー制御によって動作が制御されており、例えばフィルタ4を回転駆動させるステップモータの駆動動作と連動して或いはステップモータ動作中の時間内の適宜のタイミングで点灯動作させ、所要の紫外線光量をフィルタ4に順次照射させるように動作できる。これにより、特にフィルタ4を構成する繊維間の隙間まで十分な紫外線照射が行われ、その結果、高い除菌作用が発揮できるようになっている。
なお、この光源21は、安全性を考慮して、ケース本体1Aの奥部(−X)方向に向けた状態でフィルタ4に対向配置させることで、危険な紫外線がケース本体1A外部へ向けて出射するのを回避している。
【0036】
反射ミラー22は、光源21からの紫外線を入射させ、フィルタ4を構成する無端ベルトの(R状に湾曲した)R部の表面部分及びその近傍に向けて反射させるものであり、これによって、フィルタ4に対して例えば光源41の設置される一面側とは反対側の部分に至るまで、紫外線が十分な時間照射される。
本実施形態の反射ミラー22は、鏡面加工された適宜の材料(例えば、鏡面加工されたアルミニウムなど)を光源21に向けて凹状に湾曲させてあるが、ここでの反射紫外線がR部に効果的に照射されるように、その形状を最適な関数形状に合わせて、固有形状に形成すれば一層効果的である。
【0037】
なお、本実施形態の除菌装置20にあっては、上部ローラ4Bの表面23にも鏡面加工を施すことによって反射手段としての機能を付加しており、光源41からの紫外線がフィルタ4の繊維の隙間などを通過してしまった場合にも、これを反射させることによって、フィルタ4の外側面だけでなく上部ローラ4Bに対面する内側面にも紫外線を照射できる。
【0038】
また、本実施形態では、反射ミラー42及び上部ローラ4Bに対して、長期間の使用に伴ってさびなどの腐食が発生するのを防止するために、紫外線を透過する適宜の防食皮膜を鏡面加工面上に成膜させるような構成としてもよい。
【0039】
次に、本実施形態の除菌装置20の作用について説明する。
制御部11による駆動制御で図示外のステップモータが回転駆動し、このモータに連結する上部ローラ4Bが強制回転することで、この上部ローラ4B及び下部ローラ4C間に架設されたフィルタ4が所定方向に回動される。即ち、本実施形態では、図1において反時計方向に回動するフィルタ4に対して、制御部11による制御が行われ、少なくとも、フィルタ4の回動動作中の所要時間だけ除菌装置20が動作する。つまり、所定の回動数だけフィルタ4が回動する際に、この回動動作に合わせて、除菌装置20が動作して光源21が点灯するので、この光源21から所定波長の紫外線が上部ローラ4B近傍からフィルタ4に向けて照射される。
【0040】
これによって、図3に示すように、大部分の紫外線が直接フィルタ4の湾曲したR部に照射される一方、直接照射されなかった残りの紫外線はその殆どが反射ミラー22に入射してここで反射されてから、フィルタ4のR部へ再び向かう。従って、光源21から出射する紫外線はその殆どが直接的に又は間接的にフィルタ4へ照射されることになる。
【0041】
ところで、除菌装置20を近傍に設けてあるフィルタ4のR状に湾曲したR部では、このフィルタ4を構成する繊維の向きがフィルタ4の移動動作とともに略180度回動していくので、その繊維およびその間の隙間もこれに伴って除菌装置20に対する向きが大きく変動する。その結果、その繊維外周面の隙間を臨む部分などへの紫外線の照射方向も刻々と変化させることができる。従って、フィルタ4の表面ばかりかそのフィルタ4を構成する繊維において、フラットな状態では外部に露出することがなく普段は外部から見えにくい、繊維間の隙間に臨む厚さ方向の中間部分の外面部位に対してまでも、多様な方向から紫外線を照射させることができるようになるわけである。
【0042】
さらに、そのフィルタの繊維の間(隙間)を通過したために、フィルタ4に到達できなかった紫外線についても、上部ロータ4Bの表面に設けた鏡面加工による反射機能を利用して効果的な反射が行われるので、そこで反射した紫外線はこの上部ロータ4Bに対面・接触するフィルタ4の内側面にも照射させることができる。このようにして、フィルタ4の表裏面の各部位にむらなく十分な量の紫外線を照射させることができるので、紫外線による高い除菌作用を発揮できるようになるわけである。
【0043】
従って、本実施形態によれば、トレイ7の液皿7Bに貯水された除菌液(HClO)による除菌作用とともに、除菌液による殺菌メカニズムとは全く異なる紫外線を用いた殺菌メカニズムで、フィルタ4に付着したかびや細菌、インフルエンザウイルスなどを死滅させることができる。
【0044】
特に、トレイ7の液皿7Bに貯水された除菌液(HClO)による除菌作用については、室内の空気がかなり汚れているような場合であって、その多くの汚れがフィルタ4に付着後液皿7Bの除菌液に移動した場合には、除菌液(HClO)はかび、細菌、ウイルスに対して除菌効果を発揮するまえに、汚れの方に反応してしまうので、十分な除菌効果を発揮できない傾向にある。このような場合であっても、本実施形態によれば、紫外線が汚れに強いという特徴を利用して、除菌液(HClO)による除菌が行えなかったかび、細菌、ウイルスに対しても除菌効果を有効に発揮できる。
【0045】
しかも、本実施形態によれば、前述したように、紫外線の照射部位は、フィルタ4の繊維間の隙間が広がったR部であるので、繊維の隙間まで十分な紫外線照射を行うことができるようになり、紫外線による除菌作用を効果的に高めることができる。
【0046】
さらに、本実施形態によれば、除菌装置20がケース本体1Aの奥部に向けて配置されているので、例えば点検修理なので際に、外部からケース本体1A内部を覗き込もうとしても、紫外線が目に直接入射することがなく、安全面での対策も十分確保されている。
【0047】
しかも、本実施形態の空気清浄装置によれば、フィルタ4は除菌液に含まれる水分で加湿させる機能も備えているので、フィルタ4を通過する空気が加湿され、例えば湿度に弱いインフルエンザウイルスなどの対策用としても有効に機能させることが可能である。
【0048】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。従って、本発明は空気清浄装置を備える加湿機にも適用できるし、加湿機にも適用できることはいうまでもない。
【0049】
即ち、本実施形態では、除菌用の液体として、水道水に含まれる塩化物イオンを利用し、電極を用いて電気的な化学反応で次亜塩素酸(除菌液)を生成する構成としたが、本発明では特にこれに限定されるものではない。即ち、本発明の空気清浄装置を、例えばホルムアルデヒド,トルエン、VOC(Volatile Organic Compound;揮発性有機化合物)などの有害化学物質や臭気物質を除去する、つまり化学物質除去機能を有する空気浄化装置として構成する場合には、水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ性を有する機能水や活性炭など吸着性のある適宜の成分を含む薬液を使用することで、脱臭機能を有する空気浄化装置として使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の空気清浄装置は、紫外線による高い除菌作用を発揮できるようになるので、例えば長期間の不使用などに伴って無端ベルト状のフィルタ下端部が浸漬する除菌用の液体が極端に汚染されるために除菌効果が低減されているような場合であっても、殺菌メカニズムの異なる紫外線をフィルタの隙間にまで効果的に照射することが可能になるので、フィルタの安定した衛生管理が可能となり、便宜である。
【符号の説明】
【0051】
1 空気清浄装置
1A ケース本体
1B 空気吸込口
1C 吹出口
1D 開放口
2 フロントパネル
3 給水タンク
4 フィルタ
4A フィルタユニット
4B (上部)ローラ
4C (下部)ローラ
5 送風ファン
6 除菌用電極
7 トレイ
7B 液皿
8 受皿
9 光源(LED)
10 エアーフィルタ
11 制御部
20 除菌装置
21 光源(紫外線照射ランプ)
22 反射ミラー
23 上部ローラの表面(反射手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気吸込口及び吐出口を有するケース本体の内部に、除菌用の液体に下端部が浸漬する状態でローラ間に張架されて回動する無端ベルト状のフィルタを備えた空気清浄装置であって、
前記ケース本体の内部の前記フィルタのR状に湾曲した部分の近傍に、前記フィルタのR状の部分に臨む状態で、前記フィルタへの紫外線照射を行う除菌装置を設けたことを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
空気吸込口及び吐出口を有するケース本体の内部に、
水道水など塩化物イオンを含む水を電解して電解水とする電解部と、
電解水を貯留するトレイ部と、
電解部で生成した電解水を保水し気液接触させる、無端ベルト状のフィルタを回動可能な状態で、上下に設けた一対のローラに張架させたエアーエレメント部と、
当該エアーエレメント部のフィルタを通過した空気を送出させる送風用のファン部と、
前記エアーエレメント部のフィルタを回転させる駆動部と、
前記フィルタのR状に湾曲した部分の近傍上部に、前記フィルタのR状の部分に臨む状態で設けた前記フィルタへの紫外線照射を行う除菌装置と、
を備えたことを特徴とする空気清浄装置。
【請求項3】
前記除菌装置は、
前記フィルタを構成する無端ベルトを上側で架設して支持する上部ローラの回転中心位置よりも上側であって、前記無端ベルトのR状に湾曲した表面部分に対して所要量の紫外線を照射する光源と、
当該光源からの紫外線を前記無端ベルトのR状に湾曲した表面部分に向けて反射させる反射ミラーと、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前記光源は、前記ケース本体の奥部方向に向けた状態で前記フィルタに対向配置させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気清浄装置。
【請求項5】
前記ローラは、表面部分が前記光源からの紫外線を反射させる反射手段としての機能を有する請求項3に記載の空気清浄装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうち、いずれかの空気清浄装置を備える加湿機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−158142(P2011−158142A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19145(P2010−19145)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】