説明

空気開放用の排気弁付きサクション・ポンプ

【課題】安価に生産でき、かつ、組立てが容易なサクション・ポンプを提供する。
【解決手段】サクション・ポンプは空気開放用の排気膜32を有する排気弁を備えている。この排気膜32及び真空を生成するために用いられる真空膜31は、共通の膜プレート3により一体的に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の前提部分に係る空気開放用の排気弁を備えたサクション・ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
サクション・ポンプは非常に多くの用途が知られている。しかしながら、これらポンプは母乳を吸入するための搾乳ポンプ装置、あるいは体液を吸い上げるための排出ポンプとして好ましく使用される。
【0003】
ポンプ室内で常に同じ空気を移動させる閉鎖系のサクション・ポンプが存在する。しかしながら電磁石を用いて周期的に開放され得る排気弁付きの開放系のポンプも知られている。
【0004】
これらサクション・ポンプ、特にそれが搾乳ポンプとして用いられる場合には、サクション・ポンプに課せられる必要条件はかなり高い。サクション・ポンプは可能な限り強力であると同時に、比較的小型でなければならない。特に搾乳ポンプとして用いられる場合には、サクション・ポンプは最小限の保守で動作でき、容易に清掃できなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、可能な限り簡単に組立てられるサクション・ポンプを創出することである。
【0006】
この目的は請求項1の特徴をもつサクション・ポンプにより達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるサクション・ポンプは排気膜をもつ排気弁を具備し、この排気膜と真空を生成するために用いられる真空膜は共通の膜プレートの形で一体として設計される。
【0008】
排気弁と真空膜を同じプレート上に配置することは、これらの部分の生産コストが少なく、組立てが簡単になるということを意味する。
【0009】
好ましい実施形態において、ポンプは上部ハウジング部分、中間ハウジング部分、下部ハウジング部分を具備し、膜プレートと弁プレートはハウジング部分の間に配置されている。この分割は複数の要素が同一の構造部分の上に形成され得ることを意味する。特に低圧を生成するために必要な真空膜と、低圧をすばやく解除するために必要な排気膜は、同一の構造部分上に一体化して形成され得る。制御跳ね蓋と弁跳ね蓋もまた共通の構造部分上に一体化して形成され得る。電動モータと電磁石は同じハウジング部分に固定され得る。ポンプを複数の階層、好ましくは5つの階層に分割することにより、ポンプ組立て品の複雑さを損ねることなく、個別部品の数は最小限まで削減され得る。これはポンプ組立て品の外形を小さくするだけでなく、生産と組立てコストを最小にする。
【0010】
複数の階層を持つこのモジュール構造のさらに別の利点は、個別部品に分解することなく、単に水で流すだけでポンプの洗浄が可能であるという点である。外に通じている排気口により、スポンジの必要はない。従来技術では、ポンプに吸い上げられたミルクを吸収し、騒音を減衰させるためにスポンジが使用される。しかしスポンジはポンプ内に場所を取り、不快なにおいを発生しがちである。
【0011】
好ましい実施形態及び好ましいサクション・ポンプの作動方法によれば、ポンプをできるだけ小型にすることが可能となり、同時に短いポンプサイクルを可能とする。
【0012】
好ましい方法において、排気弁の排気開口部を閉じる排気部本体は、最初、部分的にのみ持ち上げられる。このような方法では、単一の動作で排気開口部全体を開放する場合と比較して、必要とする力は小さくてすむ。
【0013】
したがって、排気部本体を作動させる手段、特に持ち上げる手段は小さな力にでき、そのため小型化できる。前記の手段として電磁石を用いる場合には、比較的低出力タイプが使用され得る。これは、排気部本体を引っ張り上げる、あるいは持ち上げるとき、電磁石が動作の最後に加える力よりも、最初に加える力が少なくてすむことによるものである。しかし、この最初に利用できる少ない力は比較的小さな開口を開放するために十分である。そのため、比較的小型で、その結果として価格の安い電磁石を用いることができる。さらに排気開口を比較的大きくすることも可能である。これは低圧の高速な解除、したがって望ましいポンプの機能を保証する。
【0014】
ポンプは容易に1分間に120サイクルに達する。しかし、最適にはポンプは1分間に50〜72のサイクルで動作できる。第1のサイクル速度は特に刺激に適しており、第2のサイクル速度は母乳の圧搾に適している。
【0015】
上述した方法の好ましい変形において、排気部本体の端部のみが最初に排気開口から取り外される。この端部が排気部本体の端と一致する場合、必要な力は最小である。
【0016】
排気部本体は上記のように膜である。もし持ち上げられる端部の厚さが膜の他の部分よりも薄ければ、端部の持ち上げをより容易に行なうことが可能である。排気開口は好ましくは多角形、特に四角または三角形である。膜もまた好ましくは多角形、好ましくは四角または三角形である。
【0017】
膜のより容易な持ち上げを可能にするために、接続ピンが膜に固定されるか、あるいは一体化されて膜上に形成され、この接続ピンはつり上げ磁石の鉄片に接続される。この接続ピンは好ましくは排気開口を覆う膜の端部に配置される。しかしながら、膜はまた高くなったフランジとともに設計され、この場合には、接続ピンは排気開口上に配置されず、その代わり高くなったフランジ上に配置される。
【0018】
接続ピンが膜に対して移動可能なように設計されている場合には、生産に関連した許容誤差、あるいは組立てに関連した許容誤差を克服可能である。電磁石の角度における誤差も補正することができる。シリコーン製の排気膜上に一体化されて形成され、適切な厚さの材料によって十分な剛性を持つ接続ピンを用いることにより、良好な結果が達成される。接続ピンは排気膜上にヒンジで連結された形で形成され得る。しかし、簡単な実施形態では、接続ピンの材料の弾性は接続ピンをその取り付け点に関して移動可能にするために十分である。
【0019】
上述した実施形態では、端部において作動できる排気膜を具備することにより、漏れ防止を確実なものにし、このため特に搾乳ポンプとして使用されるとき、吸い上げたミルクの漏れがないことを確実にするという利点を有する。
【0020】
上述した実施形態のさらなる利点は、特に膜の使用に関連して、バネを必要とせず、そのために必要とされる個別部品の数が削減可能である。バネを取り付ける必要がないため、ポンプ組立てに要する作業が低減される。
【0021】
また、好ましい実施形態としては、サクション・ポンプは、安全弁を有しており、かつ液体、特にポンプ内に吸い上げられ、溜まっているミルクにより運転不能にならないような構成とすることができる。
【0022】
このサクション・ポンプは、第1の低圧で開放される第1段と、第2の低圧で開放される第2段を持つ安全弁を具備する。第1の低圧は第2の低圧よりも量的に低い。
【0023】
この安全弁の2段の設計は、ミルクが第2段まで侵入しないことを確実にする。理想的な低圧からの逸脱が非常に僅かな場合でさえ、第1段は開くので、低圧が高いレベルにあって、詰まった場合には、すなわち非常時においても、それは開いたままである。第2の弁は全部の安全弁が僅かな変動で開くことを防止するが、第2の弁は非常時においては確実に開いている。
【0024】
以上のように、本発明によるサクション・ポンプは比較的短時間で、あまり強い力をかけることなく真空状態を緩和することができる。本発明によるポンプは広範な用途に適している。それは特に母乳を吸い上げる搾乳ポンプや、体液を吸いだす排出ポンプに適している。本発明によるポンプ組立て品は特に携帯用の搾乳ポンプに適しており、これは公開予定のPCT/CH2004/000061に特に記述されている。
【0025】
その他の有利な実施形態は添付の請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】外部ハウジングを省略した本発明によるサクション・ポンプの斜視図を示す。
【図2】下側から見た図1のサクション・ポンプの図を示す。
【図3】図1によるサクション・ポンプの縦断面図を示す。
【図4】図1によるサクション・ポンプの分解図を示す。
【図5】図1によるサクション・ポンプの下部ハウジング部の斜視図を示す。
【図6】図1によるサクション・ポンプの膜プレートを上方から見た図を示す。
【図7】図6による膜プレートの縦断面図を示す。
【図8】図7による膜プレートの拡大詳細図を示す。
【図9】上部ハウジング部の一部を上方から見た図を示す。
【図10】第2の実施形態によるサクション・ポンプの膜プレートを上方から見た図を示す。
【図11】図10による膜プレートの縦断面図を示す。
【図12】図11による膜プレートの拡大詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の主題は添付図面に示された好ましい例証となる実施形態に基づいて、以下に説明される。
【0028】
図1は、特にヒトの母乳を吸い上げるための搾乳ポンプ装置に適しているような本発明によるサクション・ポンプを示す。しかし、このポンプは、例えば、体液を吸い出すための排出ポンプなど、その他の用途にも適している。
【0029】
実際のポンプ組立て品のみが示されている。この組立て品は、通常、外部ハウジング内に配置される。図はこの外部ハウジングと、ポンプの作動のために必要な電子部品、あるいはエネルギー蓄積手段(例えば二次電池あるいは電池)を示していない。
【0030】
ポンプは非常に小型の構造を持つ。このポンプの最も大きな構成要素の1つは電動モータ1である。ポンプはさらに、上部ハウジング部2、中間ハウジング部4、下部ハウジング部6を具備し、これらのハウジング部は互いに接続することができる。取り付け部7も設けられており、これは前記ハウジング部の構成要素であり、この場合のようにハウジング部へ接続されている。
【0031】
取り付け部7の上に少なくとも1つの胸キャップ接続片70があり、その上に胸キャップへの接続チューブが接続できる。取り付け部7はさらに排気口71を有する。この排気口71もまた外部ハウジングから外に伸びている。また外部ハウジングから突き出た排気経路72、スペーサ要素73が存在する。スペーサ要素73は、振動が伝わらず、十分な遮音が確保されるように、外部ハウジングに対してポンプ組立て品を支える。
【0032】
各取り付け部70、71、72がどのようにして各経路を介してポンプの各領域に接続されているかについて、図2から理解される。
【0033】
図3に示されるポンプの縦断面図は、ここではモータ1を省略してあるが、ポンプが、小型設計であるにもかかわらず、3つの明確に区別できる機能領域、すなわちポンプ装置P、排気装置V、ならびに、これらの間に配置された安全装置Sに分割されることを示している。ポンプの構造は図3と4の概観から最もよく理解される。
【0034】
ポンプ装置Pは真空膜31と吸気および排気制御跳ね蓋51、52を有し、これらの制御跳ね蓋は吸気および排気開口部62、63、およびポンプ室の開口43’とともに、ポンプ室43と真空経路69の間の接続を作り出す。真空膜31は、連結棒11、および、例えばボールベアリング用の結合部品12、ならびに偏心器13を介して電動モータ1の駆動軸10へ接続され、この電動モータ1により、真空膜31は、予め決められたリズムまたはポンプ曲線に従い、あるいは制御システムから自由に選択できるリズムまたはポンプ曲線に従って上下に移動できる。
【0035】
排気装置Vは排気膜32を有する排気弁、および排気膜により密閉可能な、排気膜の台座44の形態の排気開口部を有する。排気膜の台座44を取り巻く空間44’は、排気接続装置45を介して排気経路72に接続される。排気膜の台座44は、底部、すなわち排気膜32から離れた側が開いており、弁プレート5の第1の排気開口54と下部ハウジング部6の第2の排気開口67につながっている。この第2の排気開口67は真空経路69を介して、安全弁空間68と吸気開口62に接続される。
【0036】
排気膜32は接続ピン33を介してつり上げ磁石または電磁石8の鉄片80に接続される。電磁石8は排気膜32を持ち上げ、それにより排気膜の台座44を開放する。このようにして、空気は排気経路72と第1および第2の排気開口部54、67を通って真空経路69に入り、真空経路内の低圧が緩和される。排気膜32のこの上昇と下降もまた、予め決められた関数に従って、または制御システムから自由に選択可能な関数に従って行われ、この関数は真空膜31の動きと調和している。真空膜31と排気膜32の動きは、好ましくは、WO 01/47577に記載されており、母親と子供の必要性に適合されるか、あるいは乳児が乳を吸う自然なリズムを模倣する、ポンプ曲線が得られるように、調整される。ポンプ組立て品は全ての位置、すなわち机の上に寝かせたりあるいは立たせたりした状態、あるいは持ち運び中でも機能する。生成される真空状態は組立て品がどのように空間的に配置されているかにはほとんど依存しない。
【0037】
安全装置Sは安全弁を有する。真空膜31および排気膜32の動作を協調させる制御電子装置が誤作動または故障した場合、この安全弁は、ポンプ内の低圧レベルが大きくなりすぎず、母親の胸部を傷つけないことを確実にする。
【0038】
本発明によれば、安全装置Sは2段で設計される。第1段は第1の安全膜55と半球形の安全弁の栓46から構成されており、栓46は小さな横方向の開口46’を有し、第1の安全膜55の上に押し付けられる。この第1段は約120mmHgの低い圧力でさえも開く。
【0039】
第2段は調整ネジ9により閉鎖される第2の安全膜35を有する。第2の安全膜が開く時の限界値は調整ネジ9の調整により変更可能である。本発明によれば、安全膜は第1段よりも高い低圧、例えば約290mmHgで開く。
【0040】
ミルクやその他の吸入された液体が誤ってポンプ内に入ると、それは第1段の場所にとどまり、その間にある空間を通って第2段の場所まで通過できない。したがって、母乳あるいは他の吸入された液体はせいぜい第1安全膜55を覆うだけである。この覆われた状態で場合によっては、第1安全膜はもはや予め設定された値で開かないが、依然として放出を可能とするのには十分に早く開く。第2の膜は常に、実際に制限値を越え、ポンプが開放されなければならないときにのみ開く。第2段は汚されないため、それは常に確実に開く。
【0041】
ポンプの個々の部品は4図に最もよく図示されている。この分解図は、ポンプがいくつかのレベルI、II、III、IV、Vのレベルに分割されており、ここではポンプ装置P,安全装置S、および排気装置Vの部品は共通レベルの上に配列されている。
【0042】
通常、しかし必ずしもそうではないが、作動位置で最も高いレベルを形成する第1のレベルIは、上部ハウジング部2、前述したモータ1および電磁石8を有する。モータ1は、上部ハウジング部2のモータ・プレート20に固定ネジ21により固定される。モータはモータ・プレート20にネジ止めされ、同様にポンプ組立て品に接続することができる。ハウジング部2は、連結棒11を受けるために用いられる連結棒空間23、連結棒に接続されるボールベアリング12、および釣り合いおもり13の付いた偏心器を有する。釣り合いおもり13は必ずしも存在する必要はない。上部ハウジング部2はまた、連結棒空間23から分離しており、電磁石8が固定されている磁石室24を有する。磁石室の下端に、ハウジング部2は下向きに突出する上部固定クリップ22を持つ。
【0043】
安全弁の第2段のための調整ネジ9もまた上部ハウジング部2に調整可能なように配列されている。
【0044】
第2段IIは、上部ハウジング部2、したがってポンプ組立て品の底部表面全体を少なくとも概ね横切って延びる膜プレート3により形成される。膜プレート3は柔軟性のある材料、特にシリコーンにより製造され、比較的薄い。膜プレートはその端部に心出し穴30と、上部ハウジング部2と中間ハウジング部4のそれぞれへの気密性と液密性のある接続を確保する上部と下部のシールリップ34、34’、34”を有する。下部シールリップは図7に示されている。膜プレート3は三角形の形状に形成されている排気膜32を有する。図6で理解されるように、排気膜32は三角形の基本形状を有する。この三角形は2つの補助部分に分割され、第1の補助部分32’もまた三角形を形成し、第2の補助部分32”は膜の残りの部分により形成され、したがって第2の補助部分は台形の形状を持つ。第1の補助部分32’の第1のコーナーは排気膜32のコーナーに一致する。第1の補助部分32’の対辺は、排気膜32の対辺と平行に伸びており、第1の補助部分32’の三角形の他の2辺は、排気膜32の三角形の2辺に一致して延びている。図7と図8に示されているように、三角形の第1の補助部分32’は第2の補助部分32”よりも厚さが薄い。
【0045】
接続ピン33は第1の補助部分32’の自由端に一体として形成されている。さらに図7と図8に示されるように、接続ピンは膜の面に対して少なくともほぼ垂直に上向きに突出しており、鉄片80に固く接続されている。排気膜32は第1のシールリップ34で囲まれる。
【0046】
膜プレート3はさらに真空膜31を有し、該真空膜は連結棒11に接続される。連結棒11は材料を厚くすることにより真空膜31上に一体として形成され、2成分材料により構成される。しかし連結棒はまた別個に製造され、組立て中に膜31に接続することもできる。真空膜は第2のシールリップ34’により、上部および中間ハウジング部2、4から密閉される。
【0047】
膜プレート3はさらに安全弁の第2の膜35を有する。図7に最もよく示されるように、第2の膜35は底部に向かって広がるV型の開口を有し、それを取り囲む第3のシールリップ34”により、上部ならびに中間ハウジング部2、4から密閉される。
【0048】
第3段IIIは中間ハウジング部4により形成される。上部および下部ハウジング部2、6と同様に、中間ハウジング部は好ましくは硬質のプラスチック材料、例えばPOM(ポリオキシメチレン)で製造される。中間ハウジング部4は羽目板状の形をしており、上部平面と下部平面とを有する。その側面上に、それぞれ上方向および下方向を向いた留め金40、41が設けられており、上部留め金40は上部ハウジング部2の上部固定クリップ22に係合し、下部留め金41は下部ハウジング部6の下部固定クリップ60に係合する。心出し穴42は、膜プレート3の心出し穴30と一直線となるように存在する。
【0049】
底部で閉じられ、小さな横方向の接続開口を有する2つの窪みが中間ハウジング部4に存在する。これらの窪みの1つは真空膜用の真空膜の台座43を形成し、それによりポンプ室を形成する。これら窪みの第2は、第1の安全段の安全栓46を形成する。排気膜32のために、その中に膜の台座44が配置されている空間44’は、中間ハウジング部4に存在する。この例では、この台座44は三角形をしている。空間44’は窪んだh型の溝であり、溝は排気接続装置45に接続されている。
【0050】
同様に第4段IVは柔軟性のあるプレート、好ましくはシリコーンのプレートを有する。第4段は弁プレート5により形成される。これもまた複数の心出し穴50を有し、これらの心出し穴50の少なくとも1組は、中間ハウジング部4の心出し穴ならびに膜プレート3の心出し穴と一直線をなしている。
【0051】
弁プレート5は、真空室の吸気口を形成する第1の制御跳ね蓋51を有する。弁プレートはさらに、真空室の排気口を形成する第2の制御跳ね蓋52を有する。第2の制御跳ね蓋52から延びて、二重のシールリップ53が存在し、二重のシールリップは下部ハウジング6内に配置された上方向に開く接続経路64を囲み、この接続経路64の上部を密閉する。
【0052】
安全弁の第1の膜55もまた弁プレート5と一体で成形される。弁プレート5はまた第1の排気開口54を有し、第1の排気開口は、排気膜の台座44と下部ハウジング部6内に配置された第2の排気開口67の間の接続を確実にする。同様に弁プレート5の個々の要素には、中間ならびに下部ハウジング部4、6に対してそれらを密閉するための上部ならびに下部シールリップが設けられている。弁プレート5の全ての要素は、好ましくは弁プレートと一体に製造される。
【0053】
第5段Vは下部ハウジング部6と取り付け部7を有する。これらの2つの部分は1個の共通部品で構成されるか、あるいはここに示されているように、プラグ接続により互いに結合され得る。
【0054】
下部ハウジング部6は図4、および図5の別の斜視図に示される。下部ハウジング部も板状の形を有しており、その下側はポンプ組立て品の底部を形成している。下部の固定クリップ60は側面で上向きに突出し、これにより中間ハウジング部4の下部の留め金41が下部固定クリップに固定される。心出しピン61もまた存在しており、これも上向きに突出しており、膜プレート3および中間ハウジング部4ならびに弁プレート5の心出し穴30、42、50を通して導かれる。これらの心出しピンと心出し穴は個々の段を互いの上に積み重ねることを容易にし、したがって素早い組立てを可能にする。
【0055】
下部ハウジング部6は、さらに、中央部が高くなった第1の円形窪みを有し、この窪みは吸気開口62を形成する。第2の円形窪みは排気開口63を形成する。この吸気開口62は下部ハウジング部6の中で伸びる真空経路69に接続される。この経路69は最初に安全弁開口68を通過するが、安全弁開口68は窪みとして同様に設計されており、安全弁開口68を覆うように第1段の安全膜55が配置されている。
【0056】
上部で開いており、かつシールリップ53で密閉された接続経路64は下部ハウジング部6の中で伸び、排気開口63の中に開いている。
【0057】
図5で理解されるように、接続経路64は、排気口71に接続し得る排気口接続装置66で終わる。第2の排気開口67は、胸キャップ接続片70に接続される胸キャップ接続部65へ延びている。
【0058】
この構造は、ポンプの簡単な清掃を可能にする。ミルクあるいは他の吸入液がポンプ内に入った場合には、洗浄剤が搾乳ポンプ接続片70を通して圧入されるか、吹き込まれ、かつ洗浄剤が排気経路72と排気口71を経由してポンプから再び出てくるようにすることにより、ポンプを水あるいは空気で容易に清掃できる。
【0059】
図9は上部ハウジング部2の中を上から見た部分図である。この図に見られるように、安全弁Sの調整ネジ9は円形断面で設計されているが、正方形のネジ穴25にねじ込まれる。これは十分な空気の通過が常に確保されることを意味する。
【0060】
図10から12は第2の実施形態を示す。この実施形態は排気弁の部分で上に述べた実施形態と異なる。他の部分は同じ設計であるため、ここでは改めて説明しない。この例において、排気膜32は三角形ではなく、四角形である。しかしながら排気膜は六角形あるいは八角形、あるいは他のいかなる多角形であり得る。しかしながら、実際には四角形の形状は三角形の形状と比較して、より確実に閉じたり、開いたりすることが確認されている。この例においても排気膜は厚い補助部分32”と薄い補助部分32’に分かれており、接続ピン33が薄い補助部分32’上に配置されている。同様に2つの補助部分32’と32”は実質的に四角形であり、接続ピン33は薄い補助部分32’の厚い補助部分32”とは反対側の長辺に、配置される。図10に見られるように、接続ピンはコーナーではなく、この長辺に沿ったほぼ中央に固定される。図12に示されるように、もし接続ピンが空間44’の側壁44”に一体として形成されれば、機能はより良く確実にされることも確認されている。しかし、この下に位置する開口、すなわち排気膜の台座44は好ましくは前記の例と同じく三角形である。この場合、接続ピン33は好ましくは三角形の穴44のコーナー上に正確に配置される。
【0061】
以上のような本発明によるサクション・ポンプはいくつかの利点を提供する。サクション・ポンプは非常に小さな空間内で広範な機能を提供し、安価に生産され、組立てが容易である。
【0062】
また、本明細書に開示された発明は以下の各項のような構成とすることができる。
1.周期的時間間隔で排気開口部(44、54、67)を開放し、再びそれを気密状態に閉鎖する排気部本体(32)を備えた排気弁を具備するサクション・ポンプ、特に真空を生成する膜ポンプを作動する方法であって、排気部本体(32)は最初、排気開口部(44、54、67)を部分的にのみ開放するように持ち上げられるサクション・ポンプ、特に真空を生成する膜ポンプを作動する方法。
2.前記排気部本体(32)は、最初、排気開口部(44、54、67)の端部で取り外される上記1項に記載した方法。
3.前記排気部本体(32)は、最初、排気開口部(44、54、67)のコーナー部で取り外される上記2項に記載した方法。
4.前記排気部本体(32)の第1の部分が、最初、第1排気経路を開放するために持ち上げられ、その後、排気部本体(32)の第2の部分が、第2排気経路を開放するために持ち上げられ、第2排気経路は第1排気経路よりも大きな直径を有し、かつ、2つの経路が互いに接続されている上記1項に記載した方法。
5.排気開口部(44、54、67)と、排気開口部(44、54、67)を気密状態に閉鎖可能な排気部本体(32)と、排気部本体(32)を作動させるための作動手段(8)を具備する排気弁を備えたサクション・ポンプ、特に真空を生成する膜ポンプであって、排気部本体(32)は、弁を開く時に、最初、排気開口部(44、54、67)を部分的にのみ開放し、その後、より広い部分あるいは排気開口部(44、54、67)の全域を開放するよう作動させられ得る排気弁を備えたサクション・ポンプ、特に真空を生成する膜ポンプ。
6.前記排気部本体は排気膜(32)であり、かつ排気膜(32)は端部(32’)を有しており、前記排気膜がこの端部で弁の開放時に排気開口部(44、54、67)から最初に取り外される上記5項に記載したサクション・ポンプ。
7.前記作動手段(8)はつり上げ磁石であり、かつ排気膜(32)は接続ピン(33)を介してつり上げ磁石(8)の鉄片(11)に接続されており、かつ接続ピン(33)は排気膜(32)に排気膜の端部で接続されている上記6項に記載したサクション・ポンプ。
8.前記接続ピンは排気開口部のコーナーの上側に配置されている上記7項に記載したサクション・ポンプ。
9.前記接続ピン(33)は排気膜(32)上に一体として形成されている上記7項に記載したサクション・ポンプ。
10.前記接続ピン(33)は排気膜(32)に対してほぼ垂直に配置されている上記7から9項のいずれかに記載したサクション・ポンプ。
11.前記排気膜(32)はプラスチック、特にシリコーンで製造されている上記6から10項のいずれかに記載したサクション・ポンプ。
12.前記排気膜(32)は少なくとも1つのコーナーを有しており、かつ端部(32’)は少なくとも1つのコーナーの少なくとも1つを含む上記6から11項のいずれかに記載したサクション・ポンプ。
13.前記排気膜(32)は多角形の基本形状、特に四角形あるいは三角形の基本形状を有している上記6から12項のいずれかに記載したサクション・ポンプ。
14.前記排気膜(32)は厚さのより薄い第1の部分領域(32’)と厚さのより厚い第2の部分領域(32”)を有しており、かつ端部が第1の部分領域(32’)に配置されている上記6から13項のいずれかに記載したサクション・ポンプ。
15.前記排気膜(32)は四角形の基本形状を有しており、かつ2つの部分領域(32’、32”)の各々は四角形の基本形状を有しており、かつ接続ピン(33)は、厚さのより厚い部分領域(32”)と反対側の、厚さのより薄い部分領域(32’)の長辺上に配置されている上記13又は14項に記載したサクション・ポンプ。
16.前記長辺は中心を有しており、かつ接続ピン(33)は厚さの薄い部分領域(32’)上の当該中心部に配置されている上記15項に記載したサクション・ポンプ。
17.前記排気開口部(44、54、67)は多角形の基本形状、特に四角形あるいは三角形の基本形状を有している上記5から16項のいずれかに記載したサクション・ポンプ。
18.前記排気膜(32)は実質的に平面である上記6から17項のいずれかに記載したサクション・ポンプ。
19.排気弁、特に上記6から18項のいずれかに記載した排気弁を具備するサクション・ポンプであって、前記排気弁は排気膜(32)を有しており、この排気膜(32)と真空を生成するために用いられる真空膜(31)は、共通の膜プレート(3)の形で一体として設計されているサクション・ポンプ。
20.前記膜プレート(3)の一部は安全弁の安全膜(35)として設計されている上記19項に記載したサクション・ポンプ。
21.上記15又は20項に記載したサクション・ポンプであって、前記ポンプは上部ハウジング部(2)、中間ハウジング部(4)ならびに下部ハウジング部(6)を含み、上部ハウジング部(2)が排気膜(32)を作動させるためのつり上げ磁石(8)を受け、真空膜(31)を作動させるための電動モータ(1)を受けており、中間ハウジング部(4)が排気膜(32)のために設けられ、かつ排気開口部を取り囲む排気膜の台座(44)と、真空膜(31)のための真空膜の台座(43)を有しており、下部ハウジング部(6)が真空膜の台座(43)の排気開口部(44、54、67)と吸気開口部(62、51、43’)の間に真空経路(69)を形成しており、かつ膜プレート(3)は上部ハウジング部と中間ハウジング部(2、4)の間に配置されており、かつ弁プレート(5)が中間ハウジング部と下部ハウジング部(4、6)の間に配置されているサクション・ポンプ。
22.前記弁プレート(5)と膜プレート(3)は実質的に平面である上記21項に記載したサクション・ポンプ。
23.前記弁プレート(5)と膜プレート(3)はプラスチック、特にシリコーンで製造されている上記21又は22項に記載したサクション・ポンプ。
24.排気口(71)と、必要に応じて真空付属装置(70)と、ポンプの外部ハウジングから突き出ている排気付属装置(72)を含む上記5から23項のいずれかに記載したサクション・ポンプ。
25.排気口付属装置(66)は下部ハウジング部(6)上に一体として形成されており、取り付け部(7)上に一体として形成された排気口(71)に接続され得る上記21又は24項に記載したサクション・ポンプ。
26.前記下部、中間、上部ハウジング部(2、4、6)は密閉したハウジング組立て品を形成するために、互いに接続され得る上記21から25項のいずれかに記載したサクション・ポンプ。
27.前記ハウジング組立て品は実質的に水密性を有しており、排気口(71)と排気開口部(72)への搾乳ポンプの接続装置(70)を介して水洗され得る上記26項に記載したサクション・ポンプ。
28.安全弁を具備するサクション・ポンプ、特に上記19から27項のいずれかに記載したサクション・ポンプであって、前記安全弁は第1の低圧で開く第1段(55、46)と、第2の低圧で開く第2段(35,9)を有しており、第1の低圧は第2の低圧より量的に低いサクション・ポンプ。
29.前記排気部本体は第1と第2の補助部分(320、321)を有しており、かつ第1の補助部分(320)はつり上げ磁石(8)の鉄片(80)に接続されており、かつ第2の補助部分(321)は第1のバネ要素(322)を介して第1の補助部分(320)に接続されており、かつ第2の補助部分(321)は、第1の補助部分(320)によって閉じられ得る第1の排気経路(326)を有しており、かつ第2の補助部分(321)は第2の排気経路(327)を閉じ、かつ第2の排気経路(327)は第1の排気経路(326)の直径よりも大きい直径を有する上記5項に記載したサクション・ポンプ。
【符号の説明】
【0063】
P ポンプ装置
V 排気装置
S 安全装置
I 第1段
II 第2段
III 第3段
IV 第4段
V 第5段
1 モータ
10 ドライブシャフト
11 連結棒
12 ボールベアリング
13 釣り合いおもり付き偏心器
2 上部ハウジング部
20 モータ・プレート
21 固定ネジ
22 上部固定クリップ
23 連結棒空間
24 磁石室
25 ネジ穴
3 膜プレート
30 心出し穴
31 真空膜
32 排気膜
32’ 第1の補助部分
32” 第2の補助部分
33 接続ピン
34 第1のシールリップ
34’ 第2のシールリップ
34” 第3のシールリップ
35 安全弁の第2膜
4 中間ハウジング部
40 上部留め金
41 下部留め金
42 心出し穴
43 真空膜の台座
43’ ポンプ室の開口
44 排気膜の台座
44’ 空間
44” 側壁
45 排気接続装置
46 第1段の安全弁閉鎖手段
46’ 横方向の開口
5 弁プレート
50 心出し穴
51 第1の制御跳ね蓋
52 第2の制御跳ね蓋
53 接続経路用シールリップ
54 第1排気開口部
55 安全弁の第1膜
6 下部ハウジング部
60 下部固定クリップ
61 接続ピン
62 吸気開口部
63 排気開口部
64 接続経路
65 胸キャップ接続部
66 排気口接続装置
67 第2排気開口部
68 安全弁室
69 真空経路
7 取り付け部
70 搾乳ポンプ接続片
71 排気口
72 排気経路
73 スペーサ
8 つり上げ磁石
80 鉄片
9 調整ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空を生成するために用いられる真空膜(31)と、空気開放用の開口を有し、ポンプ内の低圧状態を解除するための排気弁とを備え、前記排気弁は、前記空気開放用の開口を密閉する排気膜(32)を有し、この排気膜(32)と前記真空膜(31)が、共通の膜プレート(3)により一体に形成されていることを特徴とするサクション・ポンプ。
【請求項2】
前記膜プレート(3)の一部が、安全弁の安全膜(35)として形成されている請求項1記載のサクション・ポンプ。
【請求項3】
前記排気膜(32)を作動させるためのつり上げ磁石(8)を受けるとともに、前記真空膜(31)を作動させるための電動モータ(1)を受ける上部ハウジング部(2)と、前記排気膜(32)のために設けられた、空気開放用の開口を取り囲む排気膜の台座(44)と、前記真空膜(31)のための真空膜の台座(43)を有する中部ハウジング部(4)とを備え、前記膜プレート(3)が前記上部ハウジング部と中間ハウジング部(2、4)の間に配置されている請求項1又は2記載のサクション・ポンプ。
【請求項4】
空気開放用の開口部(44、54、67)と前記真空膜の台座(43)の吸気開口部(62、51、43’)の間の真空経路(69)を形成する下部ハウジング部(6)を備え、前記中間ハウジング部と下部ハウジング部(4、6)の間に弁プレート(5)が配置されている請求項3記載のサクション・ポンプ。
【請求項5】
前記弁プレート(5)と膜プレート(3)は実質的に平面である請求項3又は4記載のサクション・ポンプ。
【請求項6】
前記弁プレート(5)と膜プレート(3)はプラスチックで製造されている請求項3〜5のいずれか一項記載のサクション・ポンプ。
【請求項7】
ポンプの外部ハウジングから突出して設けられた排気口(71)と、真空付属装置(70)と、排気付属装置(72)とを備える請求項1〜6のいずれか一項記載のサクション・ポンプ。
【請求項8】
前記下部ハウジング部(6)上に一体として形成され、取り付け部(7)上に一体として形成された排気口(71)に接続される排気口付属装置(66)を備える請求項4又は7記載のサクション・ポンプ。
【請求項9】
前記下部、中間、上部ハウジング部(2、4、6)は、互いに接続されて密閉されたハウジング組立て品を形成する請求項4〜8のいずれか一項記載のサクション・ポンプ。
【請求項10】
前記ハウジング組立て品は実質的に水密性を有しており、排気口(71)と排気開口部(72)へ、搾乳ポンプの接続装置(70)を介して水を流して洗浄が可能である請求項9記載のサクション・ポンプ。
【請求項11】
前記排気膜(32)は端部(32’)を有しており、この端部で当該排気膜が弁の開放時に空気開放用の開口部(44、54、67)から最初に取り外される請求項1〜10のいずれか一項記載のサクション・ポンプ。
【請求項12】
前記つり上げ磁石からなる作動手段(8)を備え、前記排気膜(32)が接続ピン(33)を介して前記つり上げ磁石(8)の鉄片(11)に接続されるとともに、前記接続ピン(33)が前記排気膜(32)に当該排気膜の端部において接続される請求項11記載のサクション・ポンプ。
【請求項13】
前記接続ピンは前記空気開放用の開口部のコーナー上に配置されている請求項12記載のサクション・ポンプ。
【請求項14】
前記接続ピン(33)は、前記排気膜(32)上に一体として形成されている請求項12記載のサクション・ポンプ。
【請求項15】
前記接続ピン(33)は、前記排気膜(32)に対してほぼ垂直に配置されている請求項12〜14のいずれか一項記載のサクション・ポンプ。
【請求項16】
前記排気膜(32)は、厚さのより薄い第1の部分領域(32’)と、厚さのより厚い第2の部分領域(32”)を有しており、当該排気膜の端部領域が第1の部分領域(32’)に配置されている請求項1〜15のいずれか一項記載のサクション・ポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−179509(P2011−179509A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111066(P2011−111066)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【分割の表示】特願2007−531564(P2007−531564)の分割
【原出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(503465052)メデラ ホールディング アーゲー (40)
【Fターム(参考)】