説明

空調システム

【課題】扉が開扉されたときに空気を高圧室から低圧室に向かって流動させることができる空調システムを提供する。
【解決手段】空調システムは、室10,11,12の室内気圧を目標室内気圧に維持する第1室内気圧調節手段、人の存在を検出する人検出手段、室10,11,12の間の目標室内気圧の差を拡大させる第2室内気圧調節手段、扉18,19,20の開閉を識別しつつ扉18,19,20の実際の開き度合いを複数の段階に区分して識別する扉開閉識別手段、扉18,19,20の開扉中に高圧室から低圧室に向かって空気を流動させる気流方向規制手段を実行する。気流方向規制手段は、扉の実際の開き度合を仮想開き度合のいずれかに当て嵌め、当て嵌めた仮想開き度合に対応する扉開放空間空気通過量を決定し、決定した扉開放空間空気通過量に等しい空気量が開放空間を通過し得るように、室につながるダンパ41,42,43の空気通過量を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉の閉扉中に室の室内気圧を目標室内気圧に維持するとともに、扉の開扉中に空気を高圧室から低圧室に向かって流動させる空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
扉を介して隣接する複数の室の室内気圧を検出する室内気圧測定手段と、扉の開閉を識別する扉開閉識別手段とを有し、気圧測定手段によって測定したそれら室の室内気圧に基づいて、それら室に連結された給気ダクトまたは排気ダクトに設置した室圧調整用ダンパを調節し、室の室内気圧をそれら室に個別に設定された初期目標室内気圧に維持する空調システムがある(特許文献1参照)。
【0003】
このシステムは、扉開閉識別手段によって扉が開扉されたと判断すると、あらかじめ設定されたそれら室の初期目標室内気圧を変更し、開扉された扉を介してつながる室どうしを一室とみなしてそれら室の目標室内気圧を互いに一致させる。また、扉開閉識別手段によって扉が閉扉されたと判断すると、変更した目標室内気圧を初期目標室内気圧に戻し、室の室内気圧をそれら室に個別に設定された初期目標室内気圧に復帰させる。システムは、開扉された扉を閉めた後において、室内気圧の制御量が周期的に大きく変動することはなく、室圧調整用ダンパの定常状態(十分に時間が経過して一定になっているはずの状態)に対する振れ(ハンチング)を防止することができる。このシステムは、扉の開閉にともなって室の室内気圧が変動したとしても、扉を閉めた後にそれら室の室内気圧をあらかじめ設定された初期目標室内気圧に復帰させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−83221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記公報に開示の空調システムでは、開扉された扉を介してつながる室どうしの初期目標室内気圧を変更してそれら室の目標室内気圧を互いに一致させるから、室どうしにおける目標室内気圧の差がなくなり、扉を開けたときに、扉の開放空間を介してつながる室どうしのうちの初期目標室内気圧が低い低圧室から初期目標室内気圧が高い高圧室に向かって空気が流動する場合があり、扉の開扉中に空気を高圧室から低圧室に向かって常時一方向へ流動させることができない。このシステムは、たとえば、低圧室において空気汚染の危険が高い作業を行い、高圧室においてその他の作業を行う場合、扉の開扉中に汚染された空気が低圧室から高圧室に流入し、高圧室が汚染されてしまう場合があり、汚染された空気を所定の経路で安全に排気することができない。
【0006】
本発明の目的は、扉の閉扉中に室の室内気圧を目標室内気圧に維持することができ、扉が開扉されたときに空気を高圧室から低圧室に向かって確実に流動させることができる空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の前提は、扉を介して隣接する少なくとも2つの室と、それら各室に連結されて該各室に所定量の空気を供給する給気管と、それら各室に連結されて該各室から所定量の空気を排出する排気管と、給気管および排気管のいずれか一方に取り付けられた可変風量ユニットとから形成され、扉が閉扉状態にあるときに可変風量ユニットの空気通過量を調節して各室の室内気圧を目標室内気圧に維持する第1室内気圧調節手段を有する空調システムである。
【0008】
前記前提における本発明の特徴は、それら各室が目標室内気圧が高い高圧室と該高圧室よりも目標室内気圧が低い低圧室とに区分され、空調システムが、扉の近傍に人が位置したときにその人の存在を検出する人検出手段と、人検出手段によって扉の近傍に人が存在すると判断したときに、人の存在が確認された扉を挟んで隣接する高低圧室間の目標室内気圧の差をその扉の開扉前に拡大させる第2室内気圧調節手段とを有することにある。
【0009】
本発明の実施態様の一例としては、第2室内気圧調節手段が、高圧室の目標室内気圧を第1室内気圧調節手段によって維持されるべき該高圧室の目標室内気圧よりも上げる目標室内気圧上昇手段と、低圧室の目標室内気圧を第1室内気圧調節手段によって維持されるべき該低圧室の目標室内気圧よりも下げる目標室内気圧下降手段とのうちの少なくとも一方である。
【0010】
本発明の実施態様の他の一例としては、可変風量ユニットが、回転機の駆動力を介して旋回する旋回羽根および前記羽根の旋回によって開閉される空気流路を有するモータダンパと、モータダンパを制御する制御器とから形成され、第1および第2室内気圧調節手段が羽根の旋回角度を変化させることで空気流路を通過する空気通過量を調節し、第1室内気圧調節手段では、旋回羽根が第1旋回速度で旋回し、第2室内気圧調節手段では、旋回羽根が第1旋回速度よりも速い第2旋回速度で旋回する。
【0011】
本発明の実施態様の他の一例としては、空調システムが、扉が開扉されたと仮定したときの該扉の仮想開き度合を複数の段階に区分して記憶しつつ、複数の仮想開き度合に対応する複数の扉開放空間空気通過量を記憶する初期条件記憶手段と、扉の開閉を識別しつつ、開扉された扉の実際の開き度合を計測する扉開閉識別手段と、前記扉開閉識別手段によって扉が開扉されたと判断したときに、開扉された扉の開放空間を介してつながる室どうしのうちの目標室内気圧が高い高圧室から目標室内気圧が低い低圧室に向かって空気を流動させる気流方向規制手段とを有し、気流方向規制手段が、扉開閉識別手段によって計測された扉の実際の開き度合を複数の仮想開き度合のいずれかに当て嵌めるとともに、当て嵌めた仮想開き度合に対応する扉開放空間空気通過量を決定し、決定した扉開放空間空気通過量に等しい空気量が扉の開放空間を通過し得るように、高低圧室につながる可変風量ユニットの空気通過量を調節する。
【0012】
本発明の実施態様の他の一例としては、空調システムが、扉開閉識別手段によって各室に施設されている扉の少なくとも1つが開扉されたと判断すると、開扉された扉の開放空間を介してつながるそれら室に対する第2室内気圧調節手段を中断してそれら室に気流方向規制手段を実行するとともに、扉開閉識別手段によって気流方向規制手段を実行中の室の扉の全てが閉扉されたと判断すると、それら室に対する気流方向規制手段を中断してそれら室に第1室内気圧調節手段を実行する。
【0013】
本発明の実施態様の他の一例として、空調システムでは、給気管と排気管とが各室に個別に連結され、可変風量ユニットが給気管と排気管とのいずれか一方に1つだけ取り付けられ、1つの可変風量ユニットによって各室に第1および第2室内気圧調節手段と気流方向規制手段とが実行される。
【0014】
本発明の実施態様の他の一例として、気流方向規制手段が、羽根の旋回角度を変化させることで空気流路を通過する空気通過量を調節し、気流方向規制手段では、旋回羽根が前記第2旋回速度で旋回する。
【0015】
本発明の実施態様の他の一例としては、旋回羽根の第1旋回速度が0.03〜0.10[rad/sec]の範囲にあり、旋回羽根の第2旋回速度が0.30〜1.00[rad/sec]の範囲にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る空調システムによれば、扉の近傍に人が存在すると判断すると、人の存在が確認された扉を挟んで隣接する高低圧室間の目標室内気圧の差を拡大させるから、その扉が開扉されたときに、扉の解放空間を介して空気を目標室内気圧が高い高圧室から目標室内気圧が低い低圧室に向かって確実に流動させることができる。このシステムは、扉の閉扉中に第1室内気圧調節手段によって室の室内気圧を目標室内気圧に維持し得ることはもちろん、扉の開扉中に空気を高圧室から低圧室に向かって常時一方向へ流動させることができるから、低圧室の空気が汚染されていたとしても、汚染された空気が低圧室から高圧室に向かって流れ込むことはなく、汚染された空気を所定の経路で安全に排気することができ、空気汚染の全室への拡大を防ぐことができる。
【0017】
第2室内気圧調節手段が高圧室の目標室内気圧を上げる目標室内気圧上昇手段と低圧室の目標室内気圧を下げる目標室内気圧下降手段とのうちの少なくとも一方である空調システムは、第2室内気圧調節手段によって高圧室と低圧室との間の目標室内気圧の差を確実に拡大させることができ、扉が開扉されたときに、扉の解放空間を介して空気を高圧室から低圧室に向かって確実に流動させることができる。
【0018】
第1室内気圧調節手段ではモータダンパの旋回羽根が第1旋回速度で旋回し、第2室内気圧調節手段では旋回羽根が第1旋回速度よりも速い第2旋回速度で旋回する空調システムは、第2室内気圧調節手段においてダンパの旋回羽根を高速で旋回させて空気流路を通過する空気通過量を速やかに調節するから、高低圧室間の目標室内気圧に素早く差を付けることができ、人の存在をシステムが認識した直後に扉が開扉されたとしても、空気を高圧室から低圧室に向かって確実に流動させることができる。このシステムは、第1室内気圧調節手段においてダンパの旋回羽根を低速で旋回させて室内気圧を目標室内気圧に戻すから、第1室内気圧調節手段において羽根を高速で旋回させる場合と比較し、室内気圧の制御量が周期的に大きく変動することはなく、たとえば、開かれた扉を閉めた後にそれら室の室内気圧をあらかじめ設定された目標室内気圧の範囲内に速やかに復帰させることができる。
【0019】
人検出手段と第1および第2室内気圧調節手段との他に、初期条件記憶手段と扉開閉識別手段と気流方向規制手段とを有する空調システムは、決定した扉開放空間空気通過量に等しい空気量が扉の開放空間を通過し得るように、高低圧室につながる可変風量ユニットの空気通過量を調節するから、扉の開扉中に気流方向規制手段によって開放空間を介してつながるそれら室の空気を高圧室から低圧室に向かって確実に流動させることができる。このシステムは、気流方向規制手段を実行する以前に第2室内気圧調節手段によって高低圧室間の目標室内気圧に差を付けるから、扉を開いた直後における空気の低圧室から高圧室への流動を防ぐことができる。
【0020】
扉開閉識別手段によって扉が開扉されたと判断すると、開扉された扉の開放空間を介してつながるそれら室に対する第2室内気圧調節手段を中断してそれら室に気流方向規制手段を実行する空調システムは、第2室内気圧調節手段によって扉の閉扉中に高低圧室間の目標室内気圧に差を付けることで、扉を開いた直後における空気の低圧室から高圧室への流動を防ぎつつ、扉の開扉中に気流方向規制手段によって開放空間を介してつながるそれら室の空気を高圧室から低圧室に向かって確実に流動させることができる。このシステムは、気流方向規制手段を実行中のそれら室の扉の全てが閉扉されると、気流方向規制手段を中断してそれら室に第1室内気圧調節手段を実行するから、開扉された扉を閉めた後において、室内気圧の制御量が周期的に大きく変動することがなく、可変風量ユニットの定常状態(十分に時間が経過して一定になっているはずの状態)に対する振れ(ハンチング)を防ぐことができ、扉の開閉にともなって室の室内気圧が変動したとしても、扉を閉めた後にそれら室の室内気圧をあらかじめ設定された目標室内気圧の範囲内に速やかに戻すことができる。
【0021】
各室に個別に連結された給気管と排気管とのいずれか一方に可変風量ユニットが1つだけ取り付けられた空調システムは、1つの可変風量ユニットを介して室に第1および第2室内気圧調節手段と気流方向規制手段とが実行されるから、それら手段の実行に複数の可変風量ユニットを必要とせず、システムの簡略化や低コスト化、省スペース化を図ることができる。
【0022】
気流方向規制手段において旋回羽根が第2旋回速度で旋回する空調システムは、扉の開扉中にモータダンパの羽根を高速で旋回させて空気流路を通過する空気通過量を速やかに調節するから、空気を高圧室から低圧室に向かって確実かつ迅速に流動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一例として示す空調システムの概念図。
【図2】一例として示す空調システムの概念図。
【図3】一例として示す空調システムの概念図。
【図4】一例として示す空調システムの概念図。
【図5】第3室を側方から示す概観図。
【図6】閉扉された状態で示す扉の斜視図。
【図7】開扉された状態で示す扉の斜視図。
【図8】システムが実行するプロセスの一例を示すフローチャート。
【図9】他の一例として示す空調システムの概念図。
【図10】他の一例として示す空調システムの概念図。
【図11】他の一例として示す空調システムの概念図。
【図12】他の一例として示す空調システムの概念図。
【図13】他の一例として示す空調システムの概念図。
【図14】他の一例として示す空調システムの概念図。
【図15】開扉された状態で示す扉の斜視図。
【図16】システムが実行するプロセスの他の一例を示すフローチャート。
【図17】図16に続くフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付の図面を参照し、本発明に係る空調システムの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0025】
図1〜4は、一例として示す空調システムの概念図である。図5は、側壁13の側から示す第1室10の概観図である。図1〜4は室10,11,12を上方から示し、図5は、室10を側方から示している。図1では、扉18,19,20のすべてが閉じられ(閉扉状態)、扉19の前に使用者56(人)が立っている。図2では、扉19のみが開かれている(開扉状態)。図3では、扉18,19,20のすべてが閉じられ、扉18の前に使用者56が立っている。図4では、扉18のみが開かれている。
【0026】
本実施の形態では、互いに隣接する3つの室を例としてシステムを説明する。ただし、室を3つに限定するものではなく、室が2つまたは室が4つ以上であってもよい。室は、目標室内気圧が最も高い第1室10と、第1室10よりも目標室内気圧が低い第2室11と、第2室11よりも目標室内気圧が低い第3室12とから形成されている。第1室10と第2〜第3室11,12との関係では、第1室10が高圧室となり、第2〜第3室11,12が低圧室となる。第2室11と第3室12との関係では、第2室11が高圧室となり、第3室12が低圧室となる。それら室10,11,12の目標室内気圧は、室外の気圧よりも高い。第1〜第3室10,11,12は、側壁13,14によって仕切られ、さらに、それら室10,11,12の四方を囲む天井15、床16、周壁17によって室外と仕切られている。側壁14には、第1室10と第2室11とをつなぐ扉18が設置され、第2室11と第3室12とをつなぐ扉19が設置されている。周壁17には、第3室12と室外とをつなぐ扉20が設置されている。
【0027】
室10,11,12には、それら室10,11,12に所定量の空気を供給する給気ダクト21(給気管)がつながり、それら室から所定量の空気を排出する排気ダクト22(排気管)がつながっている。室12には、コントローラ23が設置されている。コントローラ23は、第3室12の内部に設置されているが、第1室10や第2室11または室外に設置されていてもよい。室10,11,12には、それら室10,11,12の室内気圧を時系列で連続的に測定する圧力センサ24,25,26が設置されている。圧力センサ24,25,26は、インターフェイス27(無線または有線)を介してコントローラ23に接続されている。なお、室10,11,12の目標室内気圧に特に限定はなく、室10,11,12の用途や室10,11,12の容積等によって目標室内気圧を所定の範囲で適宜設定することができる。それら室10,11,12の用途や容積についても特に限定はない。また、第3室12の目標室内気圧が第2室11のそれより高くてもよく、第2室11の目標室内気圧が第1室10のそれより高くてもよい。それら室10,11,12の目標室内気圧が室外の気圧より低くてもよい。
【0028】
給気ダクト21は、基幹ダクト28と、基幹ダクト28から分岐して室10,11,12に向かって延びる分岐ダクト29とから形成されている。基幹ダクト28には給気用送風機30が取り付けられ、分岐ダクト29には定風量ユニット31,32,33が取り付けられている。それら分岐ダクト29は、室10,11,12の天井15に施設された給気口(図示せず)につながり、それら室10,11,12に個別に連結されている。定風量ユニット31,32,33は、各分岐ダクト29毎に一つだけ設置されている。定風量ユニット31,32,33は、ダクト21の内部気圧の変動に対してユニット31,32,33内を通る空気通過量を調節し、室10,11,12へ供給する空気量を常時一定に保持する。排気ダクト22は、基幹ダクト34と、基幹ダクト34から分岐して室10,11,12に向かって延びる分岐ダクト35とから形成されている。基幹ダクト34には排気用送風機36が取り付けられ、分岐ダクト35には可変風量ユニット37,38,39が取り付けられている。それら分岐ダクト35は、室10,11,12の周壁17に施設された排気口40につながり、それら室10,11,12に個別に連結されている。可変風量ユニット37,38,39は、各分岐ダクト35毎に1つだけ設置されている。
【0029】
可変風量ユニット37,38,39は、モータダンパ41,42,43と制御器44,45,46とから形成されている。ダンパ41,42,43は、図示はしていないが、モジュトロールモータ(回転機)と、モータの駆動力を介して旋回する旋回羽根と、旋回羽根の旋回によって開閉される空気流路とから形成されている。制御器44,45,46は、インターフェイス27を介してコントローラ23に接続されている。ユニット37,38,39では、制御器44,45,46からの制御信号によってモジュトロールモータが回転するとともに旋回羽根が所定角度に旋回し、空気流路に対する羽根の開度を調整して空気流路を通過する空気通過量を調節する。なお、モータダンパ41,42,43には、平行翼ダンパまたは対向翼ダンパを使用することができる。
【0030】
図6,7は、閉扉された状態で示す扉18,19,20の斜視図と、開扉された状態で示す扉18,19の斜視図とである。扉18,19,20は、一方の縦方向側部が蝶番を介して側壁14や周壁17に取り付けられている(図示せず)。扉18,19,20は、縦方向側部を軸として旋回するスイング式片開き自在戸である。扉18,19,20は、目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって旋回させることはできるが、目標室内気圧の低い室から目標室内気圧の高い室に向かって旋回させることはできない。すなわち、扉18は第1室10から第2室11に向かって旋回し、扉19は第2室11から第3室12に向かって旋回し、扉20は第3室12から室外に向かって旋回する。それら扉18,19,20は、側壁14や周壁17に対して0〜180度の範囲で旋回する。扉18を開けると、扉18の解放空間47を通って室10と室11とを行き来することができ、扉19を開けると、扉19の解放空間48を通って室11と室12とを行き来することができる。扉20を開けると、扉20の解放空間を通って室12と室外とを行き来することができる。
【0031】
扉18,19,20には、室10,11,12の気密を保持するためにエアタイトのそれが使用されている。ドアノブ49は、グレモンハンドルであり、扉18,19,20の閉扉後にグレモンハンドルをロック(回転)することで扉18,19,20の気密性を高めている。扉18,19,20の上方には、扉18,19,20の前(近傍)に人が位置したときにその人の存在を検出する赤外線センサ50,51,52,53,54が取り付けられている。センサ50,51,52,53,54は、扉18,19,20と天井15との間に延びる側壁14や周壁17に設置され、インターフェイス55を介してコントローラ23に接続されている。センサ50は第1室10の側に設置され、センサ51は第2室11の側に設置されている。センサ52は第2室11の側に設置され、センサ53は第3室12の側に設置されている。センサ54は第3室12の側に設置されている。扉20の室外の側には赤外線センサは設置されていない。それらセンサ50,51,52,53,54は、扉18,19,20の前に人が立つと、その人の体温を感知して所定の電気信号(以下、人検出信号という)をコントローラ23に出力する。なお、コントローラ23や給気用送風機30、排気用送風機36、ユニット37,38,39、センサ24,25,26,50,51,52,53,54には、図示はしていないが、配線を介して所定の電力が供給されている。
【0032】
システムでは、矢印L1で示すように、給気用送風機30の駆動力を介して給気ダクト21から室10,11,12へ所定量の空気が給気され、矢印L2で示すように、排気用送風機36の駆動力を介して室10,11,12から排気ダクト22へ所定量の空気が排気されている。システムでは、給気用ダクト21の内部を流れる空気に圧力変動が生じたとしても、定風量ユニット31,32,33によって分岐ダクト29の空気通過量が一定に保持され、常時一定量の空気が室10,11,12に供給されている。室10,11,12から排気ダクト22に排出される空気量は、可変風量ユニット37,38,39によって調節されている。扉18,19,20の閉扉中はユニット37,38,39を介して室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧に維持されており、第1〜第3室10,11,12の室内気圧が室外の気圧(大気圧)よりも高く、第1室10の室内気圧が第2室11のそれよりも高くなり、第2室11の室内気圧が第3室12のそれよりも高くなっている。
【0033】
コントローラ23は、所定の制御、演算を行う中央処理装置と所定の条件を記憶可能な主記憶装置とを有するマイクロプロセッサ(図示せず)である。コントローラ23には、図示はしていないが、キーボードやテンキーユニット等の入力装置、プリンタやX−Yプロッタ等の出力装置、液晶ディスプレイやCRT等の表示装置がインターフェイスを介して接続されている。入力装置と表示装置とは、各室10,11,12毎に設置されている。コントローラ23は、主記憶装置に格納されたアプリケーションプログラムを起動し、所定のオペレーティングシステムに従い、扉18,19,20の閉扉中に室10,11,12の室内気圧を目標室内気圧に維持する第1室内気圧調節手段と、人の存在を検出する人検出手段と、室10,11,12どうしの間の目標室内気圧の差を拡大させる第2室内気圧調節手段とを実行する。システムの起動中、コントローラ23には、圧力センサ24,25,26から室10,11,12の実測室内気圧が常時入力され、可変風量ユニット37,38,39の制御器44,45,46から羽根の旋回角度が常時入力されている。コントローラ23は、センサ50,51,52,53,54を介して扉18,19,20の前に人が存在するかを常時監視している。
【0034】
図8は、このシステムが実行するプロセスの一例を示すフローチャートである。図8に基づき、コントローラによって実行されるこのシステムのプロセスの詳細を説明すると、以下のとおりである。室10,11,12の使用者56(人)は、扉20を開けて室12に入り、扉20を閉めた後、コントローラ23のスイッチ(図示せず)をONにしてシステムを起動させる。システムを起動させると、給気用送風機30、排気用送風機36、ユニット37,38,39、センサ24,25,26,50,51,52,53,54が稼動する。なお、システムを起動させる際には、扉18,19,20のすべてが閉じられているものとするとともに、扉18,19,20の前(近傍)に使用者56がいないものとする。システムを起動させた後、入力装置によって各室10,11,12の目標室内気圧と後記する第2室内気圧調節手段の実行時間とが入力される(S−1)。コントローラ23は、目標室内気圧や実行時間の変更の有無を表示装置を介して表示する(S−2)。目標室内気圧や実行時間に変更がある場合は、入力装置によって目標室内気圧や実行時間の変更を行う(S−3)。入力または変更された目標室内気圧と実行時間とは、コントローラ23の主記憶装置に格納される(S−4)。目標室内気圧と実行時間とは、システムの起動中いつでも変更することができる。コントローラ23は、目標室内気圧や実行時間に変更がない場合、各室10,11,12に第1室内気圧調節手段を実行する(S−5)。第1室内気圧調節手段においてコントローラ23は、ユニット37,38,39の空気通過量を調節して各室10,11,12の室内気圧を目標室内気圧に近づけて行き、室内気圧が目標室内気圧の範囲内に入ると、その時点の各室10,11,12の室内気圧を維持する。コントローラ23は、センサ24,25,26が測定した室内気圧に基づいて室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にあるかを判断しているとともに(S−6)、センサ50,51,52,53,54からの信号に基づいて扉18,19,20の前に使用者56が存在するかを判断している(S−7)。
【0035】
第1室内気圧調節手段においてコントローラ23は、室10,11,12の目標室内気圧(目標値)を基準入力信号に変換し(設定)、偏差をもとに制御対象が所定の動作をするように制御信号を作る(調節)。さらに、制御信号を操作に必要な操作信号(操作量)に変換するとともに(操作)、外乱が加えられたときの制御量を検出してそれを基準入力信号と同種の物理量(主フィードバック量)に変換し(検出)、その物理量をフィードバックして基準入力信号と比較する。第1室内気圧調節手段においてコントローラ23は、設定、調節、操作、検出の各要素が閉ループを形成するフィードバック制御を行う。ここで、操作量はモジュトロールモータの回転を制御する電圧や電流、周波数であり、制御対象は可変風量ユニット37,38,39のモータダンパ41,42,43であり、制御量はダンパ41,42,43の羽根の旋回角度(羽根の開度によるダンパ41,42,43の空気流路を通過する空気通過量)である。偏差とは、目標室内気圧と主フィードバック量との差で制御量を訂正動作させる動作信号である。なお、フィードバック制御の制御動作は、PID制御である。
【0036】
第1室内気圧調節手段では、圧力センサ24,25,26が測定した室10,11,12の実測室内気圧がコントローラ23に入力され、コントローラ23が入力された実測室内気圧とあらかじめ設定された室10,11,12の目標室内気圧とを比較して所定の第1角度制御量を作る。第1角度制御量は、コントローラ23からユニット37,38,39の制御器44,45,46に出力される。制御器44,45,46は、コントローラ23から入力された第1角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ41,42,43の空気流路を狭めたり広げたりすることで、ユニット37,38,39を通過する空気通過量を調節する。コントローラ23は、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲に入ると、制御器44,45,46を介してその時点における羽根の旋回角度(開度)を保持する。
【0037】
外乱が加わって室10,11,12の室内気圧が変動したり、室10,11,12の目標室内気圧を変更すると、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲から外れ、基準入力信号(目標室内気圧)と主フィードバック量との間に誤差が生じる。コントローラ23は、ステップ(S−6)において室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にないと判断すると、室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲に入るように修正する(S−8)。具体的には、基準入力信号と主フィードバック量との間の誤差がゼロとなるように、コントローラ23が新第1角度制御量を作り、新第1角度制御量をユニット37,38,39の制御器44,45,46に出力する。制御器44,45,46は、コントローラ23から入力された新第1角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ41,42,43の空気流路を狭めたり広げたりすることで、ユニット37,38,39を通過する空気通過量を調節する。コントローラ23は、新第1角度制御量によって基準入力信号と主フィードバック量との間の誤差がゼロとなり、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲に入ると、制御器44,45,46を介してその時点における羽根の旋回角度を保持する。
【0038】
図1に示すように、使用者56が第3室12から第2室11に移動するため、扉19の前に立つと、使用者56の体温をセンサ53が感知し、人検出信号がセンサ53からコントローラ23に出力される。人検出信号がコントローラ23に入力されると、コントローラ23は、扉19の前に人が存在すると判断し、人の存在が検出された扉19を特定する(S−9)。コントローラ23は、人の存在が検出された扉19を挟んで隣り合う第2室11と第3室12とに実行中の第1室内気圧調節手段を中断し、それら室11,12に第2室内気圧調節手段を実行する(S−10)。コントローラ23は、センサ53から人検出信号が入力されると同時に、センサ52,53の測定機能を一時停止する。第2室内気圧調節手段においてコントローラ23は、第2室11の目標室内気圧を第1室内気圧調節手段によって維持されるべき目標室内気圧よりも上げる目標室内気圧上昇手段と、第3室12の目標室内気圧を第1室内気圧調節手段によって維持されるべき目標室内気圧よりも下げる目標室内気圧下降手段とを実行する。
【0039】
目標室内気圧上昇手段では、コントローラ23がユニット38の空気通過量を減少させる第2角度制御量を作り、第2角度制御量を制御器45に出力する。制御器45は、コントローラ23から入力された第2角度制御量に基づき、室11につながるユニット38のダンパ42の羽根の開度を小さくする。目標室内気圧下降手段では、コントローラ23がユニット39の空気通過量を増加させる第3角度制御量を作り、第3角度制御量を制御器46に出力する。制御器46は、コントローラ23から入力された第3角度制御量に基づき、室12につながるユニット39のダンパ43の羽根の開度を大きくする。目標室内気圧上昇手段と目標室内気圧下降手段とによって、それら室11,12の目標室内気圧の差が第1室内気圧調節手段によって維持されるべき目標室内気圧の差より大きくなり、室11,12の間の目標室内気圧の差が拡大する。
【0040】
数値を例示して説明すると、以下のとおりである。第1室内気圧調節手段によって維持されるべき第1室10の目標室内気圧が35Pa、第2室11の目標室内気圧が25Pa、第3室12の目標室内気圧が15Paとし、第1室内気圧調節手段によってそれら室10,11,12の目標室内気圧が前記数値に保持されていたとする。この状態で、使用者56が扉19の前に位置して人の存在をセンサ53が感知すると、コントローラ23によって第2室内気圧調節手段が実行され、第2室11の目標室内気圧が25Paから5Pa上昇して30Paになり、第3室12の目標室内気圧が15Paから5Pa下降して10Paになる。第2室11と第3室12との目標室内気圧の差が第1室内気圧調節手段の実行中では10Paであるが、第2室内気圧調節手段の実行中では20Paであり、差が拡大する。使用者56が扉19を開けると、図2に矢印L3で示すように、空気が扉19の解放空間48を通って第2室11(高圧室)から第3室12(低圧室)に流入する。なお、目標室内気圧の上昇範囲や下降範囲について特に限定はないが、好ましくは、それらの範囲が2〜15Pa、より好ましくは、それらの範囲が4〜8Paである。第1室10には引き続き第1室内気圧調節手段が実行されている。
【0041】
コントローラ23は、センサ53から出力された人検出信号をトリガとしてタイマを作動させ、第2室内気圧調節手段の実行時間を計数しつつ、第2室内気圧調節手段の実行時間内かを判断する(S−11)。第2室内気圧調節手段の実行時間に特に限定はないが、実行時間の好ましい範囲は2秒〜10秒であり、より好ましい範囲は4〜6秒である。コントローラ23は、第2室内気圧調節手段の実行時間内においてセンサ52,53の測定機能を停止する。扉19が開扉されて使用者が第3室12から第2室11に移動し、その後扉19が閉扉されたとしても、実行時間が終了するまでは第2室内気圧調節手段が継続して実行される。コントローラ23は、タイマによって第2室内気圧調節手段の実行時間が終了したと判断すると、室11,12に対する第2室内気圧調節手段を中止するとともに、センサ52,53の測定機能を回復させる。
【0042】
コントローラ23は、システムの中止の有無を表示装置を介して表示する(S−12)。ステップ(S−12)においてシステムの中止を選択すると、コントローラ23のスイッチがOFFとなり、起動中のシステムが停止する。ステップ(S−12)においてシステムを中止しない場合(システムの続行)、コントローラ23は、ステップS−5に戻り、それら室10,11,12に第1室内気圧調節手段を実行する。システムを続行すると、コントローラ23は、第1室内気圧調節手段を実行しつつ(S−5)、各室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にあるかを監視するとともに(S−6)、扉18,19,20の前に人が存在するかを監視する(S−7)。なお、使用者56が第3室12から第2室11に移動した後に扉19が開扉されたままであっても、第2室内気圧調節手段の実行時間が終了すると、それら室11,12に第1室内気圧調節手段が再び実行される。扉19を開けた状態でも、第1室内気圧調節手段によって維持されるべき第2室11の目標室内気圧が第3室12のそれよりも高いから、空気が扉19の解放空間48を通って第2室11から第3室12に流入する。
【0043】
図3に示すように、第2室11に移動した使用者56が扉18の前に立つと、使用者56の体温をセンサ51が感知し、人検出信号がセンサ51からコントローラ23に出力される。人検出信号がコントローラ23に入力されると、コントローラ23は、扉18の前に人が存在すると判断し、人の存在が検出された扉18を特定する(S−9)。コントローラ23は、人の存在が検出された扉18を挟んで隣り合う第1室10と第2室11とに実行中の第1室内気圧調節手段を中断し、それら室10,11に第2室内気圧調節手段を実行する(S−10)。コントローラ23は、センサ51から人検出信号が入力されると同時に、センサ50,51の測定機能を一時停止する。第2室内気圧調節手段においてコントローラ23は、第1室10の目標室内気圧を第1室内気圧調節手段によって維持されるべき目標室内気圧よりも上げる目標室内気圧上昇手段と、第2室11の目標室内気圧を第1室内気圧調節手段によって維持されるべき目標室内気圧よりも下げる目標室内気圧下降手段とを実行する。
【0044】
目標室内気圧上昇手段では、コントローラ23がユニット37の空気通過量を減少させる第2角度制御量を作り、第2角度制御量を制御器44に出力する。制御器44は、コントローラ23から入力された第2角度制御量に基づき、室10につながるユニット37のダンパ41の羽根の開度を小さくする。目標室内気圧下降手段では、コントローラ23がユニット38の空気通過量を増加させる第3角度制御量を作り、第3角度制御量を制御器45に出力する。制御器45は、コントローラ23から入力された第3角度制御量に基づき、室11につながるユニット38のダンパ42の羽根の開度を大きくする。目標室内気圧上昇手段と目標室内気圧下降手段とによって、それら室10,11の目標室内気圧の差が第1室内気圧調節手段によって維持されるべき目標室内気圧の差より大きくなり、室10,11の間の目標室内気圧の差が拡大する。
【0045】
数値を例示して説明すると、第1室10の目標室内気圧が35Paから5Pa上昇して40Paに、第2室11の目標室内気圧が25Paから5Pa下降して20Paになり、第1室10と第2室11との目標室内気圧の差が第1室内気圧調節手段の実行中では10Paであるが、第2室内気圧調節手段の実行中では20Paであり、差が拡大する。コントローラ23は、第2室内気圧調節手段の実行時間内においてセンサ50,51の測定機能を停止する。使用者56が扉18を開けると、図4に矢印L3で示すように、空気が扉18の解放空間47を通って第1室10から第2室11に向かって流動する。第2室内気圧調節手段の実行時間が終了すると、それら室10,11に第1室内気圧調節手段が再び実行され、コントローラ23がセンサ50,51の測定機能を回復させる。
【0046】
使用者56が室12から室外に出るために扉20の前に立つと、使用者56の体温をセンサ54が感知し、人検出信号がセンサ54からコントローラ23に出力される。人検出信号がコントローラ23に入力されると、コントローラ23は、扉20の前に人が存在すると判断し、人の存在が検出された扉20を特定する(S−9)。コントローラ23は、第3室12に実行中の第1室内気圧調節手段を中断し、室12に第2室内気圧調節手段を実行する(S−10)。第2室内気圧調節手段においてコントローラ23は、第3室12の目標室内気圧を第1室内気圧調節手段によって維持されるべき目標室内気圧よりも上げる目標室内気圧上昇手段を実行する。
【0047】
目標室内気圧上昇手段では、コントローラ23がユニット39の空気通過量を減少させる第2角度制御量を作り、第2角度制御量を制御器46に出力する。制御器46は、コントローラ23から入力された第2角度制御量に基づき、室12につながるユニット39のダンパ43の羽根の開度を小さくする。目標室内気圧上昇手段によって、室12と室外との気圧差(大気圧と目標室内気圧との差)が大きくなり、気圧差が拡大する。数値を例示して説明すると、第3室12の目標室内気圧が15Paから5Pa上昇して20Paになる。コントローラ23は、第2室内気圧調節手段の実行時間内においてセンサ54の測定機能を停止する。使用者56が扉20を開けると、空気が扉20の解放空間を通って第3室12から室外に流出する。第2室内気圧調節手段の実行時間が終了すると、室12に第1室内気圧調節手段が再び実行され、コントローラ23がセンサ54の測定機能を回復させる。
【0048】
システムでは、第2室内気圧調節手段におけるモータダンパ41,42,43の旋回羽根の旋回速度(第2旋回速度)が第1室内気圧調節手段におけるモータダンパ41,42,43の旋回羽根の旋回速度(第1旋回速度)よりも高速に設定されている。旋回速度は、第1室内気圧調節手段から第2室内気圧調節手段に移るときに第1旋回速度から第2旋回速度に切り替わり、第2室内気圧調節手段から第1室内気圧調節手段に移るときに第2旋回速度から第1旋回速度に切り替わる。ここで、第1室内気圧調節手段における旋回羽根の旋回速度は0.03〜0.10[rad/sec]の範囲にあり、第2室内気圧調節手段における旋回羽根の旋回速度は0.30〜1.00[rad/sec]の範囲にある。第1室内気圧調節手段における羽根の旋回速度が0.10[rad/sec]を超過すると、開扉された扉18,19,20を閉めた後において、室内気圧が目標室内気圧を挟んでプラスとマイナスとに大きく振れて安定せず、室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧に復帰しない。第2室内気圧調節手段における羽根の旋回速度が0.30[rad/sec]未満では、ユニット37,38の空気通過量を速やかに減少させることやユニット38,39の空気通過量を速やかに増加させることができず、室10,11,12間における目標室内気圧に迅速に差を付けることができない。
【0049】
システムは、第2室内気圧調節手段において羽根を高速で旋回させてユニット37,38,39を通過する空気通過量を速やかに調節するから、室10,11,12間における目標室内気圧に迅速に差を付けることができ、人の存在をシステムが認識した直後に扉18,19,20が開扉されたとしても、空気を高圧室から低圧室に向かって確実に流動させることができる。システムは、第1室内気圧調節手段において羽根を低速で旋回させて室内気圧を初期設定された目標室内気圧の範囲に戻すから、第1室内気圧調節手段において羽根を高速で旋回させる場合と比較し、室内気圧の制御量が周期的に大きく変動することはなく、室10,11,12の室内気圧をあらかじめ設定された目標室内気圧の範囲内に確実かつ迅速に復帰させることができる。
【0050】
システムは、扉18,19の近傍に人が存在すると判断すると、人の存在が確認された扉18,19を挟んで隣接する室10,11,12間の目標室内気圧の差を扉18,19が開扉される以前に拡大させるから、扉18,19が開扉されたときに、扉18,19の解放空間47,48を介して空気を目標室内気圧が高い高圧室から目標室内気圧が低い低圧室に向かって確実に流動させることができる。システムは、扉18,19,20の閉扉中に第1室内気圧調節手段によって室10,11,12の室内気圧を目標室内気圧に維持し得ることはもちろん、扉18,19の開扉中に空気を高圧室から低圧室に向かって常時一方向へ流動させることができるから、低圧室の空気が汚染されていたとしても、汚染された空気が低圧室から高圧室に向かって流れ込むことはなく、汚染された空気を所定の経路で安全に室外へ排気することができ、空気汚染の全室への拡大を防ぐことができる。
【0051】
図9〜14は、他の一例として示す空調システムの概念図である。図15は、開扉された状態で示す扉18,19,20の斜視図である。図9では、扉18,19,20のすべてが閉じられ(閉扉状態)、扉20の前に使用者56(人)が立っている。図10では、扉のみが開かれている(開扉状態)。図11では、扉のすべてが閉じられ、扉の前に使用者が立っている。図12では、扉のみが開かれている。図13では、扉のすべてが閉じられ、扉の前に使用者が立っている。図14では、扉のみが開かれている。
【0052】
室は、図1に示すそれらと同様に、目標室内気圧が最も高い第1室10と、第1室10よりも目標室内気圧が低い第2室11と、第2室11よりも目標室内気圧が低い第3室12とから形成されている。それら室10,11,12の目標室内気圧は、室外の気圧よりも高い。側壁14には、第1室10と第2室11とをつなぐ扉18が設置され、第2室11と第3室12とをつなぐ扉19が設置されている。周壁17には、第3室12と室外とをつなぐ扉20が設置されている。室10,11,12には、給気ダクト21(給気管)と排気ダクト22(排気管)とがつながっている。室外には、コントローラ23が設置されている。室10,11,12には、それら室10,11,12の室内気圧を時系列で連続的に測定する圧力センサ24,25,26が設置されている。圧力センサ24,25,26は、インターフェイス27を介してコントローラ23に接続されている。
【0053】
給気ダクト21は、基幹ダクト28と、各室10,11,12に個別に連結された分岐ダクト29とから形成されている。基幹ダクト28には給気用送風機30が取り付けられ、分岐ダクト29には定風量ユニット31,32,33が取り付けられている。定風量ユニット31,32,33は、各分岐ダクト29毎に一つだけ設置されている。排気ダクト22は、基幹ダクト34と、各室10,11,12に個別に連結された分岐ダクト35とから形成されている。基幹ダクト34には排気用送風機36が取り付けられ、分岐ダクト35には可変風量ユニット37,38,39が取り付けられている。可変風量ユニット37,38,39は、各分岐ダクト35毎に1つだけ設置されている。定風量ユニット31,32,33や可変風量ユニット37,38,39は、図1のシステムに使用されたそれらと同一である。可変風量ユニット37,38,39は、モータダンパ41,42,43と制御器44,45,46とから形成されている。
【0054】
扉18,19,20は、図1のそれらと同様に、縦方向側部を軸として旋回するスイング式片開き自在戸であり、エアタイトが使用されている。扉18,19,20は、目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって旋回させることはできるが、目標室内気圧の低い室から目標室内気圧の高い室に向かって旋回させることはできない。それら扉18,19,20は、側壁14や周壁17に対して0〜180度の範囲で旋回する。ドアノブ49は、グレモンハンドルである。扉18,19,20の上方には、扉18,19,20の前(近傍)に人が位置したときにその人の存在を検出する赤外線センサ50,51,52,53,54,57が取り付けられている。センサ50,51,52,53,54,57は、インターフェイス55を介してコントローラ23に接続されている。センサ50は第1室10の側に設置され、センサ51は第2室11の側に設置されている。センサ52は第2室11の側に設置され、センサ53は第3室12の側に設置されている。センサ54は第3室12の側に設置され、センサ57は室外の側に設置されている。センサ50,51,52,53,54,57は、扉18,19,20の前に人が立つと、その人の体温を感知して所定の人検出信号をコントローラ23に出力する。
【0055】
扉18,19,20が収まる側壁14や周壁17の扉枠には、図15に示すように、それら扉18,19,20の開閉を識別するとともに、扉18,19,20の実際の開き度合いを複数の段階に区分して検出する3個の開閉センサ58,59,60が取り付けられている。それらセンサ58,59,60は、インターフェイス62を介してコントローラ23に接続されている。センサ58には、リミットスイッチ(トリガーセンサ)が使用されている。リミットスイッチは、扉18,19,20のデッドボルトの動きを接点信号に変換し、ON/OFF信号を出力する。センサ58は、扉18,19,20を開く前および閉じた後にドアノブ49(グレモンハンドル)を回転させる動作を検出する。センサ59,60には、マグネットスイッチが使用されている。マグネットスイッチは、磁力で扉18,19,20の開閉を検出する。センサ58は、扉18,19,20を閉めたときにドアノブ49が対向する扉枠に取り付けられている。センサ59は、扉18,19,20を閉めたときの扉18,19,20の先端の側に位置する扉枠に取り付けられている。センサ60は、蝶番の側に位置する扉枠に取り付けられている。マグネットスイッチが反応するまでの遊び(ストローク)を利用することで、センサ59,60が反応する扉回転角度に差を設けることができるから、センサ59,60の種類および取り付け位置を適宜選択することで、センサ59,60が反応する扉開度を調節することができる。扉18,19,20を開くときには、扉18,19,20のエアタイトが解かれ、扉18,19,20が僅かに開いた時点でセンサ58が反応し、その後、センサ59→センサ60の順に反応する。これとは逆に、扉18,19,20を閉めるときには、センサ60→センサ59→センサ58の順に反応する。扉18,19,20の近傍には2種類かつ3個のセンサ58,59,60が取り付けられているが、これに限定するものではなく、扉18,19,20の実際の開き度合いを識別可能な態様においてセンサの種類や個数、取り付け位置を決めることができる。なお、コントローラ23や給気用送風機30、排気用送風機36、ユニット31,32,33,37,38,39、センサ24,25,26,50,51,52,53,54,57,58,59,60には、図示はしていないが、配線を介して所定の電力が供給されている。
【0056】
システムでは、矢印L1で示すように、給気用送風機30の駆動力を介して給気ダクト21から室10,11,12へ所定量の空気が給気され、矢印L2で示すように、排気用送風機36の駆動力を介して室10,11,12から排気ダクト22へ所定量の空気が排気されている。システムでは、定風量ユニット31,32,33によって分岐ダクト29の空気通過量が一定に保持され、常時一定量の空気が室10,11,12に供給されている。室10,11,12から排気ダクトに排出される空気量は、可変風量ユニット37,38,39によって調節されている。扉18,19,20の閉扉中は、ユニット37,38,39によって第1〜第3室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧に維持されている。
【0057】
コントローラ23は、図1のそれと同様に、中央処理装置と主記憶装置とを有するマイクロプロセッサ(図示せず)である。コントローラ23は、所定の条件を記憶する初期条件記憶手段、扉18,19,20の閉扉中に室10,11,12の室内気圧を目標室内気圧に維持する第1室内気圧調節手段、人の存在を検出する人検出手段、室10,11,12どうしの間の目標室内気圧の差を拡大させる第2室内気圧調節手段、扉18,19,20の開閉を識別するとともに扉18,19,20の実際の開き度合いを複数の段階に区分して識別する扉開閉識別手段、扉18,19,20の開扉中に目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって空気を流動させる気流方向規制手段を実行する。コントローラ23には、インターフェイスを介して入力装置や出力装置、表示装置が接続されている。入力装置や表示装置は、室10,11,12毎に設置されている。
【0058】
システムの起動中、コントローラ23には、圧力センサ24,25,26から室10,11,12の実測室内気圧が常時入力され、可変風量ユニット37,38,39の制御器44,45,46から羽根の旋回角度が常時入力されている。コントローラ23には、開閉センサ58,59,60から扉18,19,20の開閉情報が常時入力されている。コントローラ23は、センサ50,51,52,53,54,57を介して扉18,19,20の前に人が存在するかを常時監視している。扉18,19,20の開閉情報には、扉18,19,20が開扉状態にあるか閉扉状態にあるかの他に、開扉された扉18,19,20の複数の段階に区分された実際の開き度合が含まれる。コントローラ23は、扉18,19,20が閉扉状態にあると判断すると、各室10,11,12に対して第1室内気圧調節手段を継続して実行し、扉の前に人が存在すると判断すると、人の存在が検出された扉を介してつながる室に実行中の第1室内気圧調節手段を中断して室に第2室内気圧調節手段を実行する。コントローラ23は、第2室内気圧調節手段を実行中の室をつなぐ扉が開扉されたと判断すると、第2室内気圧調節手段を中断して開扉された扉の開放空間を介してつながる室に気流方向規制手段を実行する。コントローラ23は、気流方向規制手段を実行中の室をつなぐ扉が閉扉されたと判断すると、室に対する気流方向規制手段を中断して室に第1室内気圧調節手段を実行する。
【0059】
図16は、このシステムが実行するプロセスの他の一例を示すフローチャートである。図17は、図16に続くフローチャートである。図16,17に基づき、コントローラ23によって実行されるこのシステムのプロセスの詳細を説明すると、以下のとおりである。室10,11,12の使用者56(人)は、コントローラ23のスイッチ(図示せず)をONにしてシステムを起動させる。システムを起動させると、ユニット31,32,33,37,38,39、給気用送風機30、排気用送風機36、各センサ24,25,26,50,51,52,53,54,57,58,59,60が稼動する。システムを起動させた後、入力装置によってこのシステムの各手段を実行するために必要な条件が入力される(S−1)。条件は、室10,11,12の目標室内気圧、第2室内気圧調節手段の実行時間、扉18,19,20が開扉されたと仮定したときの複数の段階に区分されたそれら扉18,19,20の仮想開き度合(複数の段階に区分された扉18,19,20の仮想旋回角度)、前記仮想開き度合に対応する複数の段階に区分された扉開放空間空気通過量Vである。なお、室10,11,12の目標室内気圧は、図1のシステムのそれらと同一とする。コントローラ23は、条件変更の有無を表示装置を介して表示する(S−2)。それら条件に変更がある場合は、入力装置によって条件変更を行う(S−3)。入力された条件や変更された条件は、コントローラ23の主記憶装置に格納される(初期条件記憶手段)(S−4)。それら条件は、システムの起動中いつでも変更することができる。
【0060】
コントローラ23の主記憶装置には、下記の表1に示す扉18,19,20の実際の開き度合と扉18,19,20の仮想開き度合との対応関係、扉18,19,20の仮想開き度合と扉開放空間空気通過量Vとの対応関係が格納されている。コントローラ23は、表1に示すように、センサ58,59,60のON/OFF信号に基づいて扉18,19,20の開閉を判断する。センサ58,59,60のすべてがONのときは、扉18,19,20の実際の開き度合が0度で扉18,19,20が閉められた状態にある。センサ58がOFFでセンサ59とセンサ60とがONのときは、扉18,19,20の実際の開き度合が0度を超え3度以下の範囲にあり、仮想開き度合の開1に対応する。仮想開き度合の開1では、扉18の開放空間47を通過する開放空間空気通過量Vを100[m/h]、扉19の開放空間48を通過する開放空間空気通過量Vを80[m/h]、扉20の開放空間61を通過する開放空間空気通過量Vを50[m/h]としている。
【0061】
センサ58とセンサ59とがOFFでセンサ60がONのときは、扉18,19,20の実際の開き度合が3度を超え15度以下の範囲にあり、仮想開き度合の開2に対応する。仮想開き度合の開2では、扉18の開放空間47を通過する開放空間空気通過量Vを300[m/h]、扉19の開放空間48を通過する開放空間空気通過量Vを150[m/h]、扉20の開放空間61を通過する開放空間空気通過量Vを100[m/h]としている。センサ58,59,60のすべてがOFFのときは、扉18,19,20の開閉角度が15度を超え180以下の範囲にあり、仮想開き度合の開3に対応する。仮想開き度合の開3では、扉18の開放空間47を通過する開放空間空気通過量Vを500[m/h]、扉19の開放空間48を通過する開放空間空気通過量Vを400[m/h]、扉20の開放空間61を通過する開放空間空気通過量Vを300[m/h]としている。ただし、開放空間空気通過量Vを表1のそれらに限定するものではなく、センサ58,59,60の反応時の扉18,19,20の開き度合い(開閉角度)やそのときの扉18,19,20の開放空間の投影面積、扉18,19,20の種類、扉18,19,20の縦横寸法、扉18,19,20を介してつながる室10,11,12の条件(室内温度、風量)等により、開放空間空気通過量Vを適宜決定することができる。
【0062】
【表1】

【0063】
使用者56が条件を入力した後、コントローラ23は、各室10,11,12に対して第1室内気圧調節手段を実行する(S−5)。第1室内気圧調節手段においてコントローラ23は、図1のシステムと同様に、設定、調節、操作、検出の各要素が閉ループを形成するフィードバック制御を行う。第1室内気圧調節手段では、圧力センサ24,25,26が測定した室10,11,12の実測室内気圧がコントローラ23に出力され、コントローラ23が入力された実測室内気圧とあらかじめ設定された室10,11,12の目標室内気圧とを常時比較して所定の第1角度制御量を作る。第1角度制御量は、コントローラ23からユニット37,38,39の制御器44,45,46に出力される。制御器44,45,46は、コントローラ23から入力された第1角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ41,42,43の空気流路を狭めたり広げたりすることで、ユニット37,38,39を通過する空気通過量を調節する。コントローラ23は、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲に入ると、制御器44,45,46を介してその時点における羽根の旋回角度を保持する。第1室内気圧調節手段においてコントローラ23は、センサ24,25,26が測定した室内気圧に基づいて室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にあるかを判断しているとともに(S−6)、センサ50,51,52,53,54,57からの信号に基づいて扉18,19,20の前に人が存在するかを判断している(S−7)。
【0064】
扉18,19,20の閉扉中に室10,11,12の室内気圧が変動したり、目標室内気圧が変更されると、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲から外れ、基準入力信号と主フィードバック量との間に誤差が生じる。コントローラ23は、室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にないと判断すると、室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲に入るように修正する(S−8)。具体的には、基準入力信号と主フィードバック量との間の誤差がゼロとなるように、コントローラ23が新第1角度制御量を作り、新第1角度制御量をユニット37,38,39の制御器44,45,46に出力する。制御器44,45,46は、コントローラ23から入力された新第1角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ41,42,43の空気流路を狭めたり広げたりすることで、ユニット37,38,39を通過する空気通過量を調節する。コントローラ23は、新第1角度制御量によって基準入力信号とフィードバック量との間の誤差がゼロとなり、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲に入ると、制御器44,45,46を介してその時点における羽根の旋回角度を保持する。
【0065】
図9に示すように、使用者56が室12に入るために扉20の前(近傍)に立つと、使用者56の体温をセンサ57が感知し、人検出信号がセンサ57からコントローラ23に出力される。人検出信号がコントローラ23に入力されると、コントローラ23は、扉20の前に人が存在すると判断し、人の存在が検出された扉20を特定する(S−9)。コントローラ23は、人の存在が検出された扉20が設置された第3室12に実行中の第1室内気圧調節手段を中断し、室12に第2室内気圧調節手段を実行する(S−10)。コントローラ23は、センサ57から人検出信号が入力されると同時に、センサ54,57の測定機能を一時停止する。第2室内気圧調節手段においてコントローラ23は、第3室12の目標室内気圧を第1室内気圧調節手段によって維持されるべき目標室内気圧よりも上げる目標室内気圧上昇手段を実行する。目標室内気圧上昇手段では、コントローラ23がユニット39の空気通過量を減少させる第2角度制御量を作り、第2角度制御量を制御器46に出力する。制御器46は、コントローラ23から入力された第2角度制御量に基づき、室12につながるユニット39のダンパ43の羽根の開度を小さくする。目標室内気圧上昇手段によって、室外と室12との間の気圧差(大気圧と室の目標室内気圧との差)が拡大する。数値を例示して説明すると、第3室12の目標室内気圧が15Paから5Pa上昇して20Paになる。
【0066】
コントローラ23は、センサ57から出力された人検出信号をトリガとしてタイマを作動させ、第2室内気圧調節手段の実行時間を計数する。コントローラ23は、人の存在が検出された扉20が開扉されたかを開閉センサ58,59,60によって判断するとともに(S−11)、第2室内気圧調節手段の実行時間内かを判断する(S−12)。第2室内気圧調節手段の実行中に、扉20が開扉されることなく第2室内気圧調節手段の実行時間が終了すると、コントローラ23は、室12に対する第2室内気圧調節手段を中断し、室12に第1室内気圧調節手段を実行するとともに、センサ54,57の測定機能を回復させる。
【0067】
図10に示すように、使用者56が扉20を開けると、コントローラ23は、開閉センサ58,59,60からの開閉情報に基づき、扉20が開扉されたと判断し、室12に対する第2室内気圧調節手段を中断し、室12に気流方向規制手段を実行する(S−13)。気流方向規制手段においてコントローラ23は、センサ58,59,60のON/OFF信号に基づき、扉20の実際の開き度合を複数の段階に区分して識別しつつ、実際の開き度合を仮想開き度合の開1〜開3のいずれかに当て嵌め、当て嵌めた仮想開き度合に対応する扉開放空間空気通過量Vを決定する。気流方向規制手段においてコントローラ23は、決定した扉開放空間空気通過量Vに等しい空気量が扉20の開放空間61を通過し得るように、ユニット39(モータダンパ43の空気流路)を通過する空気通過量VMDを算出する。扉開放空間空気通過量Vは、前記表1に基づいて決定される。ユニット39を通過する空気通過量VMDは、以下の数1に基づいて算出される。
【0068】
[数1]
MD=VMDS−A*V
ここで、VMD,VMDS,V,Aは、以下の表2,3に示す行列である。VMDSやA、数1はコントローラ23の主記憶装置に格納されており、Vは表1によって定められる。なお、Aは、表3に示すように、扉18,19,20と可変風量ユニット37,38,39との関係を表す対応テーブルを行列として表示したものである。表3における1は扉に隣接する陽圧側の室を表し、−1は扉に隣接する陰圧側の室を表すとともに、0は扉に隣接しない室を表す。
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
気流方向規制手段においてコントローラ23は、算出した空気通過量VMDがユニット37,38,39を通過し得るように、モータダンパ41,42,43の羽根の旋回角度に対する第4角度制御量を作り、第4角度制御量をユニット37,38,39の制御器44,45,46に出力する。制御器44,45,46は、コントローラ23から入力された第4角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ41,42,43の空気流路を時系列で連続的に狭めたり広げたりすることで、ユニット37,38,39を通過する空気量を空気通過量VMDに一致させる。
【0072】
たとえば、扉20が開閉いずれの状態でも、分岐ダクト29から第3室12に900[m/h]の空気量VMDS39が供給されている(第3室12から分岐ダクト35へ900[m/h]の空気量VMDS39が排出されている)と仮定し、扉20が開扉状態にあるときに、コントローラ23が仮想開き度合を表1の開3とするとともに、第3室12から室外に向かって扉20の開放空間61を通過する算定空気量VD20を300[m/h]と決定したとする。この場合、第3室12につながるユニット39の空気流路を通過する空気通過量がVMD39=900−300=600[m/h]に変更される。ユニット39の制御器46は、コントローラ23からの指令に基づいて、ダクト35を600[m/h]の空気量が通過するように、モータダンパ43の羽根の旋回角度を変更する。システムでは、第2室内気圧調節手段によって室外と室12との気圧差が拡大するから、扉20を開けた直後に拡大した気圧差によって空気が室12から室外に流出する。また、扉20の開扉中は、図10に矢印L3で示すように、気流方向規制手段によって空気が扉20の解放空間61を通って室12から室外に流出する。なお、扉18,19が閉扉状態にある第1室10と第2室11とには、室内気圧調節手段が継続して実行され、室内気圧が目標室内気圧に維持されている。コントローラ23は、開閉センサ58,59,60によって扉20が閉扉されたかを判断する(S−14)。使用者56が第3室12に入り、扉20を閉めると、コントローラ23は、扉20が閉扉されたと判断し、室12に対する気流方向規制手段を中断して室12に第1室内気圧調節手段を実行する。さらに、扉20の閉扉をトリガとしてタイマを作動させ、扉20の閉扉から所定時間(2〜5秒)経過後にセンサ54,57の測定機能を回復させる。コントローラ23は、ステップ(S−14)において、扉20が開扉されたままであると判断すると、室12に対して引き続き気流方向規制手段を実行する。
【0073】
コントローラ23は、システムの中止の有無を表示装置を介して表示する(S−15)。ステップ(S−15)においてシステムの中止を選択すると、コントローラ23のスイッチがOFFとなり、起動中のシステムが停止する。ステップ(S−15)においてシステムを中止しない場合(システムの続行)、コントローラ23は、ステップS−5に戻り、それら室10,11,12に第1室内気圧調節手段を実行する。システムを続行すると、コントローラ23は、第1室内気圧調節手段を実行しつつ(S−5)、各室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にあるかを監視するとともに(S−6)、扉18,19,20の前に人が存在するかを監視する(S−7)。
【0074】
図11に示すように、使用者56が第3室12から第2室11に移動するため、扉19の前に立つと、使用者56の体温をセンサ53が感知し、人検出信号がセンサ53からコントローラ23に出力される。人検出信号がコントローラ23に入力されると、コントローラ23は、扉19の前に人が存在すると判断し、人の存在が検出された扉19を特定する(S−9)。コントローラ23は、人の存在が検出された扉19を挟んで隣り合う第2室11と第3室12とに実行中の第1室内気圧調節手段を中断し、それら室11,12に第2室内気圧調節手段を実行する。コントローラ23は、センサ53から人検出信号が入力されると同時に、センサ53,52の測定機能を一時停止する。第2室内気圧調節手段においてコントローラ23は、第2室11の目標室内気圧を第1室内気圧調節手段によって維持されるべき目標室内気圧よりも上げる目標室内気圧上昇手段と、第3室12の目標室内気圧を第1室内気圧調節手段によって維持されるべき目標室内気圧よりも下げる目標室内気圧下降手段とを実行する。
【0075】
目標室内気圧上昇手段では、コントローラ23がユニット38の空気通過量を減少させる第2角度制御量を作り、第2角度制御量を制御器45に出力する。制御器45は、コントローラ23から入力された第2角度制御量に基づき、室11につながるユニット38のダンパ42の羽根の開度を小さくする。目標室内気圧下降手段では、コントローラ23がユニット39の空気通過量を増加させる第3角度制御量を作り、第3角度制御量を制御器46に出力する。制御器46は、コントローラ23から入力された第3角度制御量に基づき、室12につながるユニット39のダンパ43の羽根の開度を大きくする。目標室内気圧上昇手段と目標室内気圧下降手段とによって、それら室11,12の目標室内気圧の差が第1室内気圧調節手段によって維持されるべき目標室内気圧の差より大きくなり、室11,12の間の目標室内気圧の差が拡大する。
【0076】
数値を例示して説明すると、第2室11の目標室内気圧が25Paから5Pa上昇して30Paになり、第3室12の目標室内気圧が15Paから5Pa下降して10Paになる。第2室11と第3室12との目標室内気圧の差が第1室内気圧調節手段の実行中では10Paであるが、第2室内気圧調節手段の実行中では20Paであり、差が拡大する。コントローラ23は、センサ53から出力された人検出信号をトリガとしてタイマを作動させ、第2室内気圧調節手段の実行時間を計数する。コントローラ23は、人の存在が検出された扉19が開扉されたかを開閉センサ58,59,60によって判断するとともに(S−11)、第2室内気圧調節手段の実行時間内かを判断する(S−12)。第2室内気圧調節手段の実行中に、扉19が開扉されることなく第2室内気圧調節手段の実行時間が終了すると、コントローラ23は、室11,12に対する第2室内気圧調節手段を中断し、室11,12に第1室内気圧調節手段を実行するとともに、センサ52,53の測定機能を回復させる。
【0077】
図12に示すように、使用者56が扉19を開けると、コントローラ23は、開閉センサ58,59,60からの開閉情報に基づき、扉19が開扉されたと判断し、開扉された扉19の開放空間48を介してつながる室11,12に対する第2室内気圧調節手段を中断し、それら室11,12に気流方向規制手段を実行する(S−13)。気流方向規制手段においてコントローラ23は、センサ58,59,60のON/OFF信号に基づき、扉19の実際の開き度合を複数の段階に区分して識別しつつ、実際の開き度合を仮想開き度合の開1〜開3のいずれかに当て嵌め、当て嵌めた仮想開き度合に対応する扉開放空間空気通過量Vを決定する。気流方向規制手段では、決定した扉開放空間空気通過量Vに等しい空気量が扉19の開放空間48を通過し得るように、可変風量ユニット38,39(モータダンパ42,43の空気流路)を通過する空気通過量VMD[m/h]を算出する。ユニット38,39を通過する空気通過量VMDは、前記数1に基づいて算出される。気流方向規制手段においてコントローラ23は、算出した空気通過量VMDがユニット38,39を通過し得るように、モータダンパ42,43の羽根の旋回角度に対する第4角度制御量を作り、第4角度制御量をユニット38,39の制御器45,46に出力する。制御器45,46は、コントローラ23から入力された第4角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ42,43の空気流路を時系列で連続的に狭めたり広げたりすることで、ユニット38,39を通過する空気量を空気通過量VMDに一致させる。
【0078】
たとえば、分岐ダクト29から第2室11に1300[m/h]の空気量VMDS38が供給され(第2室11から分岐ダクト35へ1300[m/h]の空気量VMDS38が排出され)、分岐ダクト29から第3室12に900[m/h]の空気量VMDS39が供給されている(第3室12から分岐ダクト35へ900[m/h]の空気量VMDS39が排出されている)と仮定する。また、扉19が開扉状態にあるときに、コントローラ23が仮想開き度合を表1の開3とするとともに、第2室11から第3室12に向かって開放空間48を通過する扉開放空間空気通過量VD19を400[m/h]と決定したとする。この場合、第2室11につながるユニット38を通過する空気通過流量がVMD38=1300−400=900[m/h]に変更され、第3室12につながるユニット39を通過する空気通過流量がVMD39=900+400=1300[m/h]に変更される。ユニット38,39の制御器45,46は、コントローラ23からの指令に基づいて、ダクト35を900[m/h]の空気量が通過するように、ダンパ42の羽根の旋回角度を変更するとともに、ダクト35を1300[m/h]の空気量が通過するように、ダンパ43の羽根の旋回角度を変更する。
【0079】
システムでは、第2室内気圧調節手段によって第2室11と第3室12との目標室内気圧の差が拡大するから、扉19を開けた直後に拡大した室内気圧の差によって空気が第2室11(高圧室)から第3室12(低圧室)に流入する。また、扉19の開扉中は、図12に矢印L3で示すように、気流方向規制手段によって空気が扉19の解放空間48を通って第2室11から第3室12に流入する。なお、扉19が閉扉状態にある第1室10には、室内気圧調節手段が継続して実行され、室内気圧が目標室内気圧に維持されている。コントローラ23は、開閉センサ58,59,60によって扉19が閉扉されたかを判断する(S−14)。使用者56が第2室11に入り、扉19を閉めると、コントローラ23は、扉19が閉扉されたと判断し、室11,12に対する気流方向規制手段を中断して室11,12に第1室内気圧調節手段を実行する。さらに、扉19の閉扉をトリガとしてタイマを作動させ、扉19の閉扉から所定時間経過後にセンサ52,53の測定機能を回復させる。コントローラ23は、ステップ(S−14)において、扉19が開扉されたままであると判断すると、室11,12に対して引き続き気流方向規制手段を実行する。コントローラ23は、システムの中止の有無を表示装置を介して表示する(S−15)。システムの中止を選択すると、起動中のシステムが停止する。システムを中止しない場合(システムの続行)、コントローラ23は、ステップS−5に戻り、それら室10,11,12に第1室内気圧調節手段を実行する。
【0080】
図13に示すように、使用者56が第2室11から第1室10に移動するため、扉18の前に立つと、使用者56の体温をセンサ51が感知し、人検出信号がセンサ51からコントローラ23に出力される。人検出信号がコントローラ23に入力されると、コントローラ23は、扉18の前に人が存在すると判断し、人の存在が検出された扉18を特定する(S−9)。コントローラ23は、人の存在が検出された扉18を挟んで隣り合う第1室10と第2室11とに実行中の第1室内気圧調節手段を中断し、それら室10,11に第2室内気圧調節手段を実行する(S−10)。コントローラ23は、センサ51から人検出信号が入力されると同時に、センサ50,51の測定機能を一時停止する。第2室内気圧調節手段においてコントローラ23は、第1室10の目標室内気圧を第1室内気圧調節手段によって維持されるべき目標室内気圧よりも上げる目標室内気圧上昇手段と、第2室11の目標室内気圧を第1室内気圧調節手段によって維持されるべき目標室内気圧よりも下げる目標室内気圧下降手段とを実行する。
【0081】
目標室内気圧上昇手段では、コントローラ23がユニット37の空気通過量を減少させる第2角度制御量を作り、第2角度制御量を制御器44に出力する。制御器44は、コントローラ23から入力された第2角度制御量に基づき、室10につながるユニット37のダンパ41の羽根の開度を小さくする。目標室内気圧下降手段では、コントローラ23がユニット38の空気通過量を増加させる第3角度制御量を作り、第3角度制御量を制御器45に出力する。制御器45は、コントローラ23から入力された第3角度制御量に基づき、室11につながるユニット38のダンパ42の羽根の開度を大きくする。目標室内気圧上昇手段と目標室内気圧下降手段とによって、それら室10,11の目標室内気圧の差が第1室内気圧調節手段によって維持されるべき目標室内気圧の差より大きくなり、室10,11の間の目標室内気圧の差が拡大する。
【0082】
数値を例示して説明すると、第1室10の目標室内気圧が35Paから5Pa上昇して40Paになり、第2室11の目標室内気圧が25Paから5Pa下降して20Paになる。第1室10と第2室11との目標室内気圧の差が第1室内気圧調節手段の実行中では10Paであるが、第2室内気圧調節手段の実行中では20Paであり、差が拡大する。コントローラ23は、センサ51から出力された人検出信号をトリガとしてタイマを作動させ、第2室内気圧調節手段の実行時間を計数する。コントローラ23は、開閉センサ58,59,60によって人の存在が検出された扉18が開扉されたかを判断するとともに(S−11)、第2室内気圧調節手段の実行時間内かを判断する(S−12)。第2室内気圧調節手段の実行中に、扉18が開扉されることなく第2室内気圧調節手段の実行時間が終了すると、コントローラ23は、室10,11に対する第2室内気圧調節手段を中断し、室10,11に第1室内気圧調節手段を実行するとともに、センサ50,51の測定機能を回復させる。
【0083】
図14に示すように、使用者56が扉18を開けると、コントローラ23は、開閉センサ58,59,60からの開閉情報に基づき、扉18が開扉されたと判断し、開扉された扉18の開放空間47を介してつながる室10,11に対する第2室内気圧調節手段を中断し、それら室10,11に気流方向規制手段を実行する(S−13)。気流方向規制手段においてコントローラ23は、センサ58,59,60のON/OFF信号に基づき、扉18の実際の開き度合を複数の段階に区分して識別しつつ、実際の開き度合を仮想開き度合の開1〜開3のいずれかに当て嵌め、当て嵌めた仮想開き度合に対応する扉開放空間空気通過量Vを決定する。気流方向規制手段では、決定した扉開放空間空気通過量Vに等しい空気量が扉18の開放空間47を通過し得るように、可変風量ユニット37,38(モータダンパ41,42の空気流路)を通過する空気通過量VMD[m/h]を算出する。ユニット37,38を通過する空気通過量VMDは、前記数1に基づいて算出される。気流方向規制手段では、算出した空気通過量VMDがユニット37,38を通過し得るように、モータダンパ41,42の羽根の旋回角度に対する第4角度制御量を作り、第4角度制御量をユニット37,38の制御器44,45に出力する。制御器44,45は、コントローラ23から入力された第4角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ41,42の空気流路を時系列で連続的に狭めたり広げたりすることで、ユニット37,38を通過する空気量を空気通過量VMDに一致させる。
【0084】
たとえば、分岐ダクト29から第1室10に1800[m/h]の空気量VMDS37が供給され(第1室10から分岐ダクト35へ1800[m/h]の空気量VMDS37が排出され)、分岐ダクト29から第2室11に1300[m/h]の空気量VMDS38が供給されている(第2室11から分岐ダクト35へ1300[m/h]の空気量VMDS38が排出されている)と仮定する。また、扉18が開扉状態にあるときに、コントローラ23が仮想開き度合を表1の開3とするとともに、第1室10から第2室11に向かって開放空間47を通過する扉開放空間空気通過量VD18を500[m/h]と決定したとする。この場合、第1室10につながるユニット37を通過する空気通過流量がVMD37=1800−500=1300[m/h]に変更され、第2室11につながるユニット38を通過する空気通過流量がVMD38=1300+500=1800[m/h]に変更される。ユニット37,38の制御器44,45は、コントローラ23からの指令に基づいて、ダクト35を1300[m/h]の空気量が通過するように、ダンパ41の羽根の旋回角度を変更するとともに、ダクト35を1800[m/h]の空気量が通過するように、ダンパ42の羽根の旋回角度を変更する。
【0085】
システムでは、第2室内気圧調節手段によって第1室10と第2室11との目標室内気圧の差が拡大するから、扉18を開けた直後に拡大した室内気圧の差によって空気が第1室10(高圧室)から第2室11(低圧室)に流入する。また、扉18の開扉中は、図14に矢印L3で示すように、気流方向規制手段によって空気が扉18の解放空間47を通って第1室10から第2室11に流入する。なお、扉19,20が閉扉状態にある第3室12には、室内気圧調節手段が継続して実行され、室内気圧が目標室内気圧に維持されている。コントローラ23は、開閉センサ58,59,60によって扉18が閉扉されたかを判断する(S−14)。使用者56が第1室10に入り、扉187を閉めると、コントローラ23は、扉18が閉扉されたと判断し、室10,11に対する気流方向規制手段を中断して室10,11に第1室内気圧調節手段を実行する。さらに、扉18の閉扉をトリガとしてタイマを作動させ、扉18の閉扉から所定時間経過後にセンサ50,51の測定機能を回復させる。コントローラ23は、ステップ(S−14)において、扉18が開扉されたままであると判断すると、室10,11に対して引き続き気流方向規制手段を実行する。コントローラ23は、システムの中止の有無を表示装置を介して表示する(S−15)。システムの中止を選択すると、起動中のシステムが停止する。システムを中止しない場合(システムの続行)、コントローラ23は、ステップS−5に戻り、それら室10,11,12に第1室内気圧調節手段を実行する。
【0086】
システムでは、第2室内気圧調節手段と気流方向規制手段とにおけるモータダンパ41,42,43の旋回羽根の旋回速度(第2旋回速度)が第1室内気圧調節手段におけるモータダンパ41,42,43の旋回羽根の旋回速度(第1旋回速度)よりも高速に設定されている。旋回速度は、第1室内気圧調節手段から第2室内気圧調節手段に移るときに第1旋回速度から第2旋回速度に切り替わり、気流方向規制手段から第1室内気圧調節手段に移るときに第2旋回速度から第1旋回速度に切り替わる。ここで、第1室内気圧調節手段における旋回羽根の旋回速度は0.03〜0.10[rad/sec]の範囲にあり、第2室内気圧調節手段と気流方向規制手段とにおける旋回羽根の旋回速度は0.30〜1.00[rad/sec]の範囲にある。第1室内気圧調節手段における羽根の旋回速度が0.10[rad/sec]を超過すると、開扉された扉18,19,20を閉めた後において、室内気圧が目標室内気圧を挟んでプラスとマイナスとに大きく振れて安定せず、室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧に復帰しない。第2室内気圧調節手段における羽根の旋回速度が0.30[rad/sec]未満では、ユニット37,38の空気通過量を速やかに減少させることやユニット38,39の空気通過量を速やかに増加させることができず、室10,11,12間における目標室内気圧に迅速に差を付けることができない。また、気流方向規制手段における羽根の旋回速度が0.30[rad/sec]未満では、開放空間を通過する扉開放空間空気通過量に等しい空気量を可変風量ユニット37,38,39を介して速やかに排気することができず、空気が開放空間47,48,61を一方向へ通過しない場合があり、扉18,19,20の開扉中に空気が低圧室から高圧室に向かって流入したり、空気が室外から室12に向かって流入する場合がある。
【0087】
システムは、第2室内気圧調節手段において羽根を高速で旋回させてユニット37,38,39を通過する空気通過量を速やかに調節するから、室10,11,12間における目標室内気圧に迅速に差を付けることができ、人の存在をシステムが認識した直後に扉18,19,20が開扉されたとしても、空気を高圧室から低圧室に向かって確実に流動させることができる。システムは、扉の開扉中に羽根を高速で旋回させてユニットの空気流路を通過する空気通過量を速やかに調節するから、目標室内気圧が高い室から目標室内気圧が低い室に向かって空気を確実かつ迅速に流動させることができ、空気を第3室から室外に向かって確実かつ迅速に流動させることができる。システムは、第1室内気圧調節手段において羽根を低速で旋回させて室内気圧を初期設定された目標室内気圧の範囲に戻すから、第1室内気圧調節手段において羽根を高速で旋回させる場合と比較し、室内気圧の制御量が周期的に大きく変動することはなく、室10,11,12の室内気圧をあらかじめ設定された目標室内気圧の範囲内に確実かつ迅速に復帰させることができる。
【0088】
システムは、扉18,19,20が閉扉状態にあると判断すると、各室10,11,12に対して第1室内気圧調節手段を実行するから、扉18,19,20の閉扉中に室10,11,12の室内気圧を目標室内気圧に維持することができる。システムは、扉18,19,20の近傍に人が存在すると判断すると、人の存在が確認された扉を挟んで隣接する室間の目標室内気圧の差をその扉が開扉される以前に拡大させるから、その扉が開扉された直後に、扉の解放空間47,48,61を介して空気を目標室内気圧が高い高圧室から目標室内気圧が低い低圧室に向かって確実に流動させることができる。
【0089】
システムでは、決定した扉開放空間空気通過量V[m/h]に等しい空気量が扉18,19,20の開放空間47,48,61を通過し得るように、室10,11,12につながるユニット37,38,39の空気通過量VMD[m/h]を調節するから、扉18,19,20の開扉中に、目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって空気を確実に流動させることができる。システムは、扉18,19,20の開扉中に、目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって空気を常時一方向へ流動させることができるから、目標室内気圧の低い室における空気が汚染されていたとしても、汚染された空気が目標室内気圧の低い室から目標室内気圧の高い室に向かって流動することはなく、汚染された空気を所定の経路で安全に室外へ排気することができ、空気汚染の全室への拡大を防ぐことができる。
【0090】
システムは、開扉されていた扉18,19,20が閉扉されると、気流方向規制手段を中断して室10,11,12に第1室内気圧調節手段を実行するから、開扉された扉を閉めた後において、室内気圧の制御量が周期的に大きく変動することがなく、ユニット37,38,39の定常状態(十分に時間が経過して一定になっているはずの状態)に対する振れ(ハンチング)を防止することができ、扉18,19,20の開閉にともなって室10,11,12の室内気圧が変動したとしても、扉18,19,20を閉めた後にそれら室10,11,12の室内気圧をあらかじめ設定された目標室内気圧の範囲内に速やかに復帰させることができる。システムは、1つの可変風量ユニットを介してそれら室10,11,12に室内気圧調節手段と気流方向規制手段とが実行されるから、それら手段の実行に複数の可変風量ユニットを必要とせず、システムの簡略化や低コスト化、省スペース化を図ることができる。
【0091】
図9に示すシステムでは、センサ58,59,60の替わりに、扉18,19,20の開閉を識別するとともに、扉18,19,20の実測開度θ1(扉の実際の開き度合)を測定する開閉角度センサを使用することもできる。ここで、扉18,19,20の実測開度θ1とは、扉18,19,20を開けたときの側壁14や周壁17と扉18,19,20とのなす角度(扉旋回角度0〜180度)をいう(図15参照)。図9のシステムを援用し、扉18,19,20の実測開度θ1を測定する開閉角度センサを使用する場合を説明すると、以下のとおりである。
【0092】
開閉角度センサは、図示はしていないが、扉18,19,20の蝶番の側に位置する扉枠に取り付けられ、インターフェイスを介してコントローラ23に接続される。コントローラ23は、所定の条件を記憶する初期条件記憶手段、扉18,19,20の閉扉中に室10,11,12の室内気圧を目標室内気圧に維持する第1室内気圧調節手段、人の存在を検出する人検出手段、室10,11,12どうしの間の目標室内気圧の差を拡大させる第2室内気圧調節手段、扉18,19,20の開閉を識別するとともに扉18,19,20の実測開度θ1を計測する扉開閉識別手段、扉18,19,20の開扉中に目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって空気を流動させる気流方向規制手段を実行する。コントローラ23には、インターフェイスを介して入力装置や出力装置、表示装置が接続されている。なお、コントローラ23が実行する第1室内気圧調節手段と第2室内気圧調節手段とは既述したシステムのそれらと同一であるから、その説明は省略する。
【0093】
システムを起動させた後、コントローラ23には、入力装置によって各手段を実行するために必要な条件が入力される。条件には、室10,11,12の目標室内気圧、第2室内気圧調節手段の実行時間、扉18,19,20の種類(扉18,19,20の縦寸法と横寸法とを含む)、扉18,19,20が開扉されたと仮定したときの複数の段階に区分された扉の仮想開度θ2(複数の段階に区分された扉18,19,20の仮想開き度合)、前記仮想開度θ2に対応する複数の扉開放空間空気通過量Vである。扉18,19,20の種類には、スイング式片開き自在戸、スイング式両開き自在戸、スライド式片開き戸、スライド式引き込み戸、スライド式引き分け戸等がある。入力された条件は、コントローラ23の主記憶装置に格納される(初期条件記憶手段)。
【0094】
このシステムでは、扉18,19,20の仮想開度θが15度、30度、45度の3段階に分類され、それら仮想開度θ2と仮想開度θに対応する3つの扉開放空間空気通過量Vとがコントローラ23の主記憶装置に格納されている。扉18,19,20の仮想開度θとは、扉18,19,20の実測開度θ1と同様に、扉18,19,20を開けたときの側壁14や周壁17と扉18,19,20とのなす角度θ(扉旋回角度)をいう。ただし、扉18,19,20の仮想開度θを3段階に限定するものではなく、扉18,19,20の仮想開度θが4段階以上に分類されてもよく、4段階以上の仮想開度θとそれら仮想開度θに対応する扉開放空間空気通過量Vとが主記憶装置に格納されてもよい。ここで、扉18,19,20の実測開度θ1と仮想開度θとの対応関係の一例としては、実測開度θが0度を超え15度以下の範囲を仮想開度θの15度とみなし、実測開度θが15度を超え30度以下の範囲を仮想開度θの30度とみなすとともに、実測開度θが30度を超え180度以下の範囲を仮想開度θの45度とみなすこととする。実測開度θのうちの30度を超え180度以下を仮想開度θの45度に対応させるのは、実測開度θが30度を超え180度以下の範囲における扉開放空間空気通過量Vが略同一となるから、30度を超え180度以下を実質的に実測開度θの45度とみなして差し支えないからである。
【0095】
扉18,19,20の仮想開度θに対する扉開放空間空気通過量Vを求める一例としては、開放空間を通過する任意かつ一定速度に設定された空気の平均流速V[m/s]に開放空間47,48,61の開口面積S[m]を乗じ、扉18,19,20の開扉中に開放空間47,48,61を通過する扉開放空間空気通過量V[m/h]を算出する。空気の平均流速Vが一定とは、扉18,19,20の全開状態、扉18,19,20の半開状態、扉18,19,20がわずかに開いた状態等のいずれの開扉状態でも、扉18,19,20の開放空間47,48,61を通過する空気の流速が一定であることをいう。扉18,19,20の開口面積Sは、図15に斜線で示すように、扉18,19,20の上方に形成される開放空間47,48,61の上部表面積S1[m]と扉18,19,20の側方に形成される開放空間47,48,61の側部表面積S2[m]とを加え合わせた値である。なお、扉18,19,20の開放空間47,48,61を通過する扉開放空間空気通過量Vは、扉18,19,20の全開時が最も多く、扉18,19,20がわずかに開いた時が最も少ない。扉18,19,20の開口面積Sと扉開放空間空気通過量Vとは以下の数2に基づいて算出される。
【0096】
[数2]
S=S1+S2[m
S1=(L/2)*sinθ[m
S2=2L*H*sin(θ/2)[m
=3600*S*V[m/h]
ただし、S≦L*H[m
ここで、Hは扉18,19,20の縦寸法[m]、Lは扉18,19,20の横寸法[m]であり(図15参照)、θ2は扉18,19,20の仮想開度[度](15度、30度、45度)である。なお、前記数2はコントローラ23の主記憶装置に格納されており、入力装置によって扉18,19,20の仮想開度θを入力すると、コントローラ23が前記数2に基づいて扉開放空間空気通過量Vを算出し、算出した空気通過量Vを主記憶装置に格納する。
【0097】
扉18,19,20の仮想開度θに対する扉開放空間空気通過量Vを求める他の一例としては、所定時間(たとえば、秒単位、分単位)に扉18,19,20を通過する空気通過量V[m/h]をあらかじめ設定し、空気通過量Vに扉18,19,20の開放空間47,48,61を出入りする所定時間の人間の出入りの平均頻度ε(整数)と扉18,19,20の仮想開度θの割合η[%]とを乗じて算出する。この場合の扉開放空間空気通過量Vは、以下の数3に基づいて算出される。
【0098】
[数3]
=(V*ε*η)/100[m/h]
ここで、扉18,19,20の仮想開度θの割合ηは、たとえば、扉18,19,20の仮想開度θが15度のときが15%、扉18,19,20の仮想開度θが30度のときが30%、扉18,19,20の仮想開度θが45度のときが100%である。なお、前記数3はコントローラ23の主記憶装置に格納されており、入力装置によって扉18,19,20の仮想開度θ(15度、30度、45度)を入力すると、コントローラ23が前記数3に基づいて扉開放空間空気通過量Vを算出し、算出した空気通過量Vを主記憶装置に格納する。
【0099】
扉18,19,20がスライド式引き戸の場合における仮想開度θ2は、たとえば、扉18,19,20の全開時における開放空間47,48,61の横寸法を100%、全開時に対して横寸法を15%、全開時に対して横寸法を30%の3段階に分類する。扉18,19,20がスライド式引き戸の場合における扉開放空間空気通過量V[m/h]を求める一例としては、扉18,19,20の縦寸法L[m]と横寸法H[m]とを乗じて扉18,19,20の全開時における開口面積S[m]を算出し、算出した開口面積Sに開放空間47,48,61を通過する任意かつ一定速度に設定された空気の平均流速V[m/s]と扉18,19,20の仮想開度θの割合η[%]とを乗じて算出する。この場合の扉開放空間空気通過量Vは、以下の数4に基づいて算出される。
【0100】
[数4]
S=L*H[m
=(S*V*η)/100[m/h]
ここで、扉18,19,20の仮想開度θの割合ηは、扉18,19,20の仮想開度θが15%のときが15%、扉18,19,20の仮想開度θが30%のときが30%、扉18,19,20が全開のときが100%である。なお、前記数4はコントローラ23の主記憶装置に格納されており、入力装置によって扉18,19,20の仮想開度θ(15%、30%、100%)を入力すると、コントローラ23が前記数4に基づいて扉開放空間空気通過量Vを算出し、算出した空気通過量Vを主記憶装置に格納する。扉18,19,20がスライド式引き戸の場合における扉18,19,20の実測開度θと仮想開度θとの対応関係の一例としては、実測開度θが1〜15%までを仮想開度θにおける15%とみなし、実測開度θが16〜30%までを仮想開度θにおける30%とみなすとともに、実測開度θが31〜100%までを仮想開度θにおける100%とみなす。なお、扉18,19,20の実測開度θは、開放空間47,48,61の実際の横寸法であり、開閉角度センサを介して開放空間47,48,61の横寸法を測定することによって求めることができる。
【0101】
扉18,19,20が開扉されると、扉18,19,20の開閉情報が開閉角度センサからコントローラ23に入力される。ここで、開閉情報には、扉18,19,20が開扉状態にあるか閉扉状態にあるかの他に、開扉された扉18,19,20の実測開度θ1が含まれる。コントローラ23は、扉開閉識別手段によって計測した扉18,19,20の実測開度θ(扉18,19,20の実際の開き度合)を主記憶装置に格納された3つの仮想開度θ(15度、30度、45度)のいずれかに当て嵌める。既述のように、実測開度θが0度を超え15度以下を仮想開度θの15度とし、実測開度θが15度を超え30度以下を仮想開度θの30度とするとともに、実測開度θが30度を超え180度以下を仮想開度θの45度とする。扉18,19,20がスライド式引き戸の場合は、実測開度θが0%を超え15%以下を仮想開度θの15%とし、実測開度θが15%を超え30%以下を仮想開度θの30%とするとともに、実測開度θが30%を超え100%以下を仮想開度θの100%とする。気流方向規制手段では、実測開度θを仮想開度θに当て嵌めた後、仮想開度θに対応する扉開放空間空気通過量Vを決定し、決定した扉開放空間空気通過量Vに等しい空気量が扉18,19,20の開放空間47,48,61を通過し得るように、可変風量ユニット37,38,39(モータダンパ41,42,43の空気流路)を通過する空気通過量VMD[m/h]を算出する。ユニット37,38,39を通過する空気通過量VMDは、コントローラ23の主記憶装置に格納された上記数1に基づいて算出される。
【0102】
気流方向規制手段では、算出した空気通過量VMDがユニット37,38,39を通過し得るように、コントローラ23がモータダンパ41,42,43の羽根の旋回角度に対する第4角度制御量を作り、第4角度制御量を制御器44,45,46に出力する。制御器44,45,46は、コントローラ23から入力された第4角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ41,42,43の空気流路を時系列で連続的に狭めたり広げたりすることで、ユニット37,38,39を通過する空気量を空気通過量VMDに一致させる。
【0103】
開閉角度センサによって扉18,19,20の実測開度θを測定するシステムは、図9に基づいて説明したシステムが有する効果に加え、扉18,19,20の仮想開度θを入力すると、コントローラ23が数2〜数4のいずれかに基づいて扉開放空間空気通過量Vを算出しつつ算出した扉開放空間空気通過量Vを格納するから、コントローラ23を介して正確な扉開放空間空気通過量Vを算出することができる。また、このシステムでは、気流方向規制手段が扉の開放空間47,48,61を通過する空気の平均流速V[m/s]を一定速度に設定しつつ、開放空間47,48,61を通過する扉開放空間空気通過量V[m/h]を決定する場合、開放空間47,48,61を通過する空気の平均流速Vを常時一定に保持することができるから、扉18,19,20が開け難くなることや扉18,19,20が閉め難くなることはなく、扉18,19,20の開閉を円滑に行うことができる。
【0104】
それらシステムにおいて、コントローラ23の主記憶装置は、室10,11,12の目標室内気圧やセンサ24,25,26が測定した室10,11,12の実測気圧、開放空間47,48,61を通過する算定空気量V、可変風量ユニット37,38,39を通過する通過空気量VMD等の数値を記憶することができる。また、それら数値を表示装置を介して画面に表示したり、出力装置を介して印字することもできる。
【0105】
それらシステムでは、定風量ユニット31,32,33が給気ダクト21から分岐するダクト29に取り付けられ、可変風量ユニット37,38,39が排気ダクト22から分岐するダクト35に取り付けられているが、定風量ユニット31,32,33が排気ダクト22から分岐するダクト35に取り付けられていてもよく、可変風量ユニット37,38,39が給気ダクト21から分岐するダクト29に取り付けられていてもよい。それらシステムでは、コントローラ23が第1室内気圧調整手段を実行するが、制御器44,45,46を介して可変風量ユニット37,38,39が単独で第1室内気圧調整手段を実行することもできる。また、第2室内気圧調整手段では、目標室内気圧上昇手段と目標室内気圧下降手段とのうちのいずれか一方だけを実行することもできる。
【0106】
それらシステムでは、赤外線センサ50,51,52,53,54,57に替えて、圧電素子が設置された床マットを使用することもできる。床マットは、扉18,19,20の前の床16に置かれる。使用者56(人)がマットの上に乗ると、使用者の体重が圧電素子に加わり、圧電素子の両端に所定の電圧が発生する。圧電素子からの電気信号(人検出信号)はコントローラ23に入力され、人検出信号に基づいてコントローラ23が扉の前(近傍)に人が存在すると判断する。また、それらシステムでは、赤外線センサ50,51,52,53,54,57に替えて、ボタンスイッチを使用することもできる。ボタンスイッチは、扉18,19,20または扉枠に取り付けられる。使用者56が扉18,19,20を開ける前にボタンスイッチを押すと、電気信号(人検出信号)がコントローラ23に入力され、人検出信号に基づいてコントローラ23が扉の前(近傍)に人が存在すると判断する。
【符号の説明】
【0107】
10 第1室
11 第2室
12 第3室
18 扉
19 扉
20 扉
21 給気ダクト(吸気管)
22 排気ダクト(排気管)
23 コントローラ
24 圧力センサ
25 圧力センサ
26 圧力センサ
31 定風量ユニット
32 定風量ユニット
33 定風量ユニット
37 可変風量ユニット
38 可変風量ユニット
39 可変風量ユニット
41 モータダンパ
42 モータダンパ
43 モータダンパ
44 制御器
45 制御器
46 制御器
47 開放空間
48 開放空間
50 赤外線センサ
51 赤外線センサ
52 赤外線センサ
53 赤外線センサ
54 赤外線センサ
56 使用者(人)
57 赤外線センサ
58 開閉センサ
59 開閉センサ
60 開閉センサ
61 開放空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉を介して隣接する少なくとも2つの室と、それら各室に連結されて該各室に所定量の空気を供給する給気管と、それら各室に連結されて該各室から所定量の空気を排出する排気管と、前記給気管および前記排気管のいずれか一方に取り付けられた可変風量ユニットとから形成され、前記扉が閉扉状態にあるときに前記可変風量ユニットの空気通過量を調節して前記各室の室内気圧を目標室内気圧に維持する第1室内気圧調節手段を有する空調システムにおいて、
それら各室が、前記目標室内気圧が高い高圧室と、前記高圧室よりも前記目標室内気圧が低い低圧室とに区分され、前記空調システムが、前記扉が開扉されたと仮定したときの該扉の仮想開き度合を複数の段階に区分して記憶しつつ、前記複数の仮想開き度合に対応する複数の扉開放空間空気通過量を記憶する初期条件記憶手段と、前記扉の近傍に人が位置したときにその人の存在を検出する人検出手段と、前記扉の開閉を識別しつつ、開扉された前記扉の実際の開き度合を計測する扉開閉識別手段と、前記人検出手段によって前記扉の近傍に人が存在すると判断したときに、前記人の存在が確認された扉を挟んで隣接する前記高低圧室間の目標室内気圧の差を拡大させる第2室内気圧調節手段と、前記扉開閉識別手段によって前記扉が開扉されたと判断したときに、開扉された前記扉の開放空間を介してつながる室どうしのうちの前記目標室内気圧が高い高圧室から前記目標室内気圧が低い低圧室に向かって空気を流動させる気流方向規制手段とを有し、
前記気流方向規制手段が、前記扉開閉識別手段によって計測された前記扉の実際の開き度合を前記複数の仮想開き度合のいずれかに当て嵌めるとともに、当て嵌めた前記仮想開き度合に対応する前記扉開放空間空気通過量を決定し、決定した前記扉開放空間空気通過量に等しい空気量が前記扉の開放空間を通過し得るように、前記高低圧室につながる前記可変風量ユニットの空気通過量を調節することを特徴とする前記空調システム。
【請求項2】
前記第2室内気圧調節手段が、前記高圧室の目標室内気圧を前記第1室内気圧調節手段によって維持されるべき該高圧室の目標室内気圧よりも上げる目標室内気圧上昇手段と、前記低圧室の目標室内気圧を前記第1室内気圧調節手段によって維持されるべき該低圧室の目標室内気圧よりも下げる目標室内気圧下降手段とのうちの少なくとも一方である請求項1記載の前記空調システム。
【請求項3】
前記可変風量ユニットが、回転機の駆動力を介して旋回する旋回羽根および前記羽根の旋回によって開閉される空気流路を有するモータダンパと、前記モータダンパを制御する制御器とから形成され、前記第1および第2室内気圧調節手段が、前記羽根の旋回角度を変化させることで前記空気流路を通過する空気通過量を調節し、
前記第1室内気圧調節手段では、前記旋回羽根が第1旋回速度で旋回し、前記第2室内気圧調節手段では、前記旋回羽根が前記第1旋回速度よりも速い第2旋回速度で旋回する請求項1または請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記空調システムが、前記扉開閉識別手段によって前記各室に施設されている扉の少なくとも1つが開扉されたと判断すると、開扉された扉の開放空間を介してつながるそれら室に対する前記第2室内気圧調節手段を中断してそれら室に前記気流方向規制手段を実行するとともに、前記扉開閉識別手段によって前記気流方向規制手段を実行中の室の扉の全てが閉扉されたと判断すると、それら室に対する前記気流方向規制手段を中断してそれら室に前記第1室内気圧調節手段を実行する請求項1ないし請求項3いずれかに記載の空調システム。
【請求項5】
前記空調システムでは、前記給気管と前記排気管とが前記各室に個別に連結され、前記可変風量ユニットが前記給気管と前記排気管とのいずれか一方に1つだけ取り付けられ、前記1つの可変風量ユニットによって前記各室に前記第1および第2室内気圧調節手段と前記気流方向規制手段とが実行される請求項1ないし請求項4いずれかに記載の空調システム。
【請求項6】
前記気流方向規制手段が、前記羽根の旋回角度を変化させることで前記空気流路を通過する空気通過量を調節し、前記気流方向規制手段では、前記旋回羽根が前記第2旋回速度で旋回する請求項3ないし請求項5いずれかに記載の空調システム。
【請求項7】
前記旋回羽根の第1旋回速度が、0.03〜0.10[rad/sec]の範囲にあり、前記旋回羽根の第2旋回速度が、0.30〜1.00[rad/sec]の範囲にある請求項6記載の空調システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2011−133221(P2011−133221A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26091(P2011−26091)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【分割の表示】特願2005−202680(P2005−202680)の分割
【原出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(591023479)ダイダン株式会社 (82)
【Fターム(参考)】