説明

空調制御装置

【課題】住宅に設置された比較的小容量の電源を使用した場合であっても走行用バッテリの充電量の低下を抑制しつつプレ空調を確実に実施でき、利便性、快適性の向上を図る上で有利な空調制御装置を提供する。
【解決手段】商用電源が接続された状態で、商用電源2からの給電と走行用バッテリ12からの給電とによって空調装置16を動作させることによりプレ空調を実施する際、空調装置16の動作開始時に短時間発生する突入電流を、商用電源2からの給電と走行用バッテリ12からの給電との双方によって吸収させ、突入電流が終了したのちは、商用電源2からの給電のみによって空調装置16を動作させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に搭載された空調装置の動作を制御する空調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗車前の車両において予め空調装置を動作させて車室内の空調を行うことで乗車時の快適性を確保する、いわゆるプレ(プリ)空調機能を備えた空調装置が提案されている。ところが、このようなプレ空調機能を備えた空調装置が走行用バッテリを走行駆動源とする電気自動車に搭載された場合、空調装置がプレ空調を実施することにより走行用バッテリの電力を消費してしまうことから、充電量が低下し走行距離が低下することが懸念される。そこで、このような電気自動車においては、該電気自動車に搭載された充電装置が外部電源から供給される電力を使用して走行用バッテリに充電を行う際に、充電装置を介して外部電源からの電力を空調装置に供給することでプレ空調を実施し、これにより走行用バッテリの充電量の低下を抑制することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−147420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現在、電気自動車の走行用バッテリを充電する際の外部電源の種類としては以下の2種類が使用されている。
1)住宅などのコンセントに供給される比較的小容量の商用電源(例えば100V(15A)、200V(15A))
2)充電ステーションなどに設置された急速充電器に備えられている大容量の電源(例えば三相200V(50kW))
一方、電気自動車用の空調装置は、通常、電動モータで動作するコンプレッサを備えていることから、空調動作を開始すると同時に電動モータが起動する。電動モータの起動時には、定常電流の数倍から数十倍の突入電流が発生する。したがって、前者の比較的小容量の商用電源を使用して充電する場合、例えば、電動モータの突入電流が商用電源の容量を超過すると、住宅の電源に過大な負荷がかかることが懸念される。そのため、予め住宅の電源の容量を前記の突入電流を吸収できるに足る大容量のものにしておく必要があり、そのような大容量の電源が確保できない場合には、プレ空調を使うことができず、ユーザの利便性の向上を図る上で改善の余地がある。本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、住宅に設置された比較的小容量の電源を使用した場合であっても走行用バッテリの充電量の低下を抑制しつつプレ空調を確実に実施でき、利便性、快適性の向上を図る上で有利な空調制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、走行用の駆動源に電力を供給する走行用バッテリと、商用電源を用いて前記走行用バッテリを充電する充電装置と、前記走行用バッテリから給電されることで車室内の空調を行う空調装置とを備える電気自動車に搭載され、前記空調装置を制御する空調制御装置であって、前記商用電源が接続された状態でプレ空調を実施する場合は、前記空調装置の動作開始時に短時間発生する突入電流を、前記商用電源からの給電と前記走行用バッテリからの給電との双方によって吸収させ、前記突入電流が終了したのちは、前記商用電源からの給電のみによって前記空調装置を動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、住宅に設置された比較的小容量の商用電源を使用して走行用バッテリを充電する場合であっても、住宅の電源に過大な負荷をかけることなく、走行用バッテリの充電量の低下を抑制しつつプレ空調を確実に実施でき、利便性、快適性の向上を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態における空調制御装置18が搭載された電気自動車の制御系と空調制御装置18を遠隔制御する携帯機20の構成を示すブロック図である。
【図2】充電装置14と、商用電源2および急速充電用の電源4とを接続する場合の説明図である。
【図3】空調装置16および空調装置ECU24周辺の構成を示すブロック図である。
【図4】空調制御装置18の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、車両10は電気自動車であり、車両10には、走行用バッテリ12と、充電装置14と、空調装置16と、本発明に係る空調制御装置18とが搭載されている。
走行用バッテリ12は、図示しない走行用の駆動源である電動モータに電力を供給するものであり、高電圧電源を構成するものである。充電装置14は、商用電源を用いて走行用バッテリ12を充電するものである。本実施の形態では、充電装置14は、図2に示すように、普通充電用の第1の受電コネクタ1402と、急速充電用の第2の受電コネクタ1404とを備えている。第1の受電コネクタ1402は、住宅などのコンセント2に接続された専用の充電ケーブル4Aの給電コネクタ402と接続される。第2の受電コネクタ1404は、専用の充電スタンドなどに設けられた高電圧大容量の急速充電用の電源6に接続された専用の充電ケーブル4Bの給電コネクタ404と接続される。充電装置14は、第1の受電コネクタ1402に、商用電源、すなわちAC100VあるいはAC200Vが供給されるとこれを検出し、商用電源を用いた通常の充電レートでの普通充電を行う。普通充電では、走行用バッテリ12を満充電にするためにかかる充電時間は例えば約14時間(100V)あるいは約7時間(200V)である。また、充電装置14は、第2の受電コネクタ1404に、急速充電用の電源6が供給されるとこれを検出し、急速充電用の電源6を用いた通常の充電レートよりも高い充電レートでの急速充電を行う。急速充電では、走行用バッテリ12を80%の充電容量にするためにかかる充電時間は普通充電よりも短時間であり例えば約30分である。
【0009】
空調装置16は、冷房用のコンプレッサ1602と、暖房用の温水ヒータ1606と、走行用バッテリ14から供給される電力に基づいてコンプレッサ1602およびヒータ1606に電力を供給するインバータ1608と、図示しないが車室内の温度を検出するセンサや送風を行うブロアファンなどを含んで構成されている。コンプレッサ1602は、駆動用の電動モータ1604を有しており、空調装置16が空調動作(冷房)を開始すると同時に電動モータ1604が起動することにより、電動モータ1604の起動時には、定常電流の数倍から数十倍の突入電流が発生する。なお、空調装置16の構成はこれに限定されるものではなく、冷暖房の双方をコンプレッサ1602を用いて行ういわゆるヒートポンプ方式で行うようにするなど任意である。
【0010】
空調制御装置18について説明する前に、プレ空調のために空調制御装置18を遠隔制御する携帯機20について説明する。本実施の形態では、携帯機20は、携帯ECU20A、通信部20B、表示部20C、操作部20Dを含んで構成されている。通信部20は、携帯ECU20Aの制御により後述する車両10に搭載された通信部34との間で無線通信により情報の送受信を行う。表示部20Cは、携帯ECU20Aから供給される表示信号に応じて文字やアイコン、画像などを表示するものである。本実施の形態では、車両10側の通信部34から携帯側の通信部20Bに対して後述するプレ空調の終了およびその理由を示す終了情報が通知されると、携帯ECU20Aは、終了情報を表示部20Cに表示させる。操作部20Dは、例えば、複数の操作スイッチにより構成され、操作スイッチに対してなされた操作に応じて操作信号を携帯ECU20Aに供給するものである。なお、操作スイッチとして、表示部20Cに設けられたタッチパネルを用いるなど任意である。携帯ECU20Aは、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されており、前記制御プログラムを実行することにより動作する。そして、空調装置16の遠隔制御は、操作部20Dの操作によってプレ空調指令を通信部20Bから後述する空調制御装置18の一部を構成する通信部34に送信することでなされる。本実施の形態では、プレ空調指令は、プレ空調を暖房で行うか、冷房で行うか、また、後述するデフォッガ動作をさらに行うかの動作条件を規定する情報を含む。前記の動作条件の規定は、操作部20Dの操作によって表示部20Cに操作メニューを表示させ、操作部20Dの操作によってカーソルを動かして操作メニューに表示される項目を選択し、決定操作を行うことによりなされる。具体的には携帯機20でAUTO/COOL/HEAT/DEFOGGER/OFFのモードメニューが設定されており、プレ空調時は携帯機20側での設定が車室内の操作パネル25での設定に優先される。また、プレ空調指令は、そのような動作条件が規定されたのち、操作部20Dを操作することによってなされる。なお、携帯機20は車両の電子キーとしての機能も搭載されているがここでは詳細は省略する。
【0011】
次に空調制御装置18について説明する。図1に示すように、車両10には、走行用バッテリ12、充電装置14、空調装置16の他に、空調ECU24、EV−ECU26、充電ECU28、統合ECU30、リモコンECU32、通信部34、IGスイッチ36、シフトポジションセンサ38、フード開閉センサ40、ドア開閉センサ42、シートヒータ44、リアデフォッガ46などが搭載されている。空調制御装置18は、空調ECU24、EV−ECU26、充電ECU28、統合ECU30、リモコンECU32、通信部34、IGスイッチ36、シフトポジションセンサ38、フード開閉センサ40、ドア開閉センサ42などを含んで構成されている。
【0012】
空調ECU24、EV−ECU26、充電ECU28、リモコンECU32、統合ECU30は、それぞれCPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されており、前記制御プログラムを実行することにより動作する。また、空調ECU24、EV−ECU26、充電ECU28、リモコンECU32、統合ECU30は、図中二重線で示すバス22を介して接続され、情報の授受を行うように構成されている。バス22は、CAN(Controller Area Network)バス22と、CANバス22よりも下位のバスを含んで構成される。なお、EV−ECU26にはシフトポジションセンサ38が接続され、統合ECU30には、IGスイッチ36、フード開閉センサ40、ドア開閉センサ42が接続されている。
【0013】
空調ECU24は、図3に示すように、設定された室温となるように、空調装置16の制御を行うものであり、具体的には、前記のセンサの検出に基づいてインバータ1608やブロアファンを制御する。空調ECU24には、車室内の適宜箇所に設けられた操作パネル25が接続されており、操作パネル25は、操作部25Aと、表示部25Bとを備えている。操作部25Aは、冷房、暖房の切り替え、温度設定、風量設定、FACE/FOOT/DEFなどの送風モード切換、内外気切換などを行うための操作スイッチで構成されている。表示部25Bは、空調装置16の動作状態(停止、冷房、暖房)や、前記の設定内容などを文字やアイコンなどで表示するものである。これら操作部25A、表示部25Bの制御も空調ECU24によってなされている。
【0014】
EV−ECU26は、車両10全体の電子的な制御を行うものである。本実施の形態では、EV−ECU26は、空調装置16の電源のオン、オフを制御する空調リレー45の入力端子に制御信号を供給する機能を有している。また、空調リレー45は、運転席および助手席に設けられたシートヒータ44の動作、非動作を制御するシートヒータ用のリレーとしての機能をさらに有している。すなわち、EV−ECU26が前記の制御信号を有効とするとリレー45の出力端子が閉成し、空調装置16の電源がオンすると共に、シートヒータ44が動作する。なお、図中符号4402は車室内の適宜箇所に設けられたシートヒータ44の機能を有効、あるいは、無効にする手動スイッチを示す。手動スイッチ4402が閉状態のときにのみシートヒータ44の動作が可能となる。なお、空調リレー45の出力端子を介してシートヒータ44に供給される電源は図示しない補機用バッテリから供給される。
【0015】
充電ECU28は、充電装置14を介して走行用バッテリ12に対する充電動作を制御するものである。また、充電ECU28は、充電装置14を介して走行用バッテリ12の充電量を監視しており、満充電を100%としたときの充電量の比率を算出するようになっている。また、充電ECU28は、充電装置14を制御することにより、空調装置16に供給する電力として商用電源2および走行用バッテリ12の双方の電力を用いるか、あるいは、商用電源2のみとするか、あるいは、走行用バッテリ12の電源のみとするかを切り替えるものである。
【0016】
統合ECU30は、車両10に搭載されたさまざま補機類の制御を行うものである。
本実施の形態では、統合ECU30は、リアガラスに設けられたくもり除去用のリアデフォッガ(ヒータ)46の動作、非動作を制御するリアデフォッガ用のリレー47の入力端子に制御信号を供給する機能を有している。すなわち、統合ECU30が前記の制御信号を有効とすると、リレー47の出力端子が閉成しリアデフォッガ46が動作する。本例では、空調リレー45の出力端子がリアデフォッガ用のリレー47の入力端子に接続されており、したがって、空調リレー45が閉成したときにのみリアデフォッガ用のリレー47が動作可能であり、すなわち、リアデフォッガ46の動作が可能となっている。なお、リアデフォッガ用のリレー47の出力端子を介してリアデフォッガ46に供給される電源は図示しない補機用バッテリから供給される。また、本例では、リアガラスに設けられたリアデフォッガ46について説明するが、リアガラス以外のガラス窓に設けられたデフォッガについても上記の構成が適用可能である。
【0017】
通信部34は、リモコンECU32の制御により携帯機20の通信部20Bとの間で無線通信により情報の送受信を行う。リモコンECU32は、携帯機20から送信されるプレ空調指令を通信部34を介して受信すると後述する制御動作を実行する。
IGスイッチ36は、OFF、ACC(アクセサリー使用可能なポジション),ON(車両10の走行が可能なポジション)などの切換操作ポジションを検出するものである。シフトポジションセンサ38は、シフトレバーのポジションを検出するものである。フード開閉センサ40は、エンジンルームを開閉するフードの開閉状態を検出するものである。ドア開閉センサ42は、車両10に設けられたドアの開閉状態を検出するものである。これらIGスイッチ36のポジションと、フード開閉センサ40、ドア開閉センサ42の検出結果は統合ECU30を介して、シフトポジションセンサ38の検出結果はEV−ECU26を介して、それぞれバス22経由でリモコンECU32に供給される。
【0018】
次に、空調制御装置18の動作について図4のフローチャートを参照して説明する。なお、以下の例では、停車中の車両10に対する商用電源2からの充電を開始したのち、ユーザが携帯機20を用いてプレ空調指令を送信する場合について説明する。充電装置14は、第1、第2の受電コネクタ1402、1404に商用電源2、あるいは、急速充電用の電源4が接続されると、これを検出し、充電ECU28に起動信号を与える(ステップS10)。起動信号を受け付けると、充電ECU28はスリープ状態から起動する(ステップS12)。そして、充電ECU28は、充電装置14を制御して商用電源2、あるいは、急速充電用の電源4を用いて走行用バッテリ12に対する充電を行う(ステップS14)。一方、リモコンECU32は、携帯機20から送信されたプレ空調指令を受信したか否かを監視している(ステップS16)。
【0019】
プレ空調指令が受信されたならば、リモコンECU32は、充電装置14による走行用バッテリ12の充電動作が実行されているという充電動作条件が成立するか否かを判定する(ステップS18)。具体的にはリモコンECU32は、バス22を介して充電ECU28から得られる充電装置14の動作状態の情報に基づいて充電動作条件の成立、不成立を判定する。本実施の形態では、商用電源2を用いた充電動作が実行されるということをもって充電動作条件が成立すると判定し、急速充電用の電源4を用いた充電動作が実行されている場合は充電動作条件が不成立と判定する。即ち、第1の受電コネクタ1402と給電コネクタ402と接続されて充電ECU28が起動した場合、換言すれば商用電源2が接続された状態で、充電動作条件が成立するもので、充電が完了しても第1の受電コネクタ1402と給電コネクタ402と接続されていれば条件成立は維持される。なお、急速充電用の電源4を用いた場合にはプレ空調を行わないが、その理由は、急速充電中は走行用バッテリ12が発熱するため、空調装置16を用いた走行用バッテリ12の冷却動作を行うためである。
【0020】
充電動作条件が成立したならば、リモコンECU32は、走行用バッテリに充電されている充電量が予め定められた最低充電量以上であるという充電量条件が成立するか否かを判定する(ステップS20)。具体的にはリモコンECU32は、バス22を介して充電ECU28から得られる走行用バッテリの充電量が最低充電量以上であるか否かに基づいて充電量条件の成立、不成立を判定する。最低充電量は以下のように設定することができる。すなわち、突入電流を吸収するために必要な給電量を最大給電量としたとき、最低充電量は、前記の最大給電量から商用電源2によって給電し得る給電量を差し引いた不足分を補うに足る値である。
【0021】
充電量条件が成立したならば、リモコンECU32は、空調装置16による空調の実行を許可するために必要な動作許可条件が成立するか否かを判定する(ステップS22)。動作許可条件として例えば以下の条件が例示され、以下の条件の全てが成立すると動作許可条件が成立することになる。
1)IGスイッチ36がOFFポジションである。
これは、充電中の車両10が停車されている必要があるためである。
2)シフトポジションセンサ38で検出されるシフトポジションがP(駐車)である。
これは、充電中の車両10が停車されている必要があるためである。
3)フード開閉センサ40で検出されるフードの開閉状態は閉である。
これは、フードが閉状態とすることで、エンジンルーム内で動作する空調装置16のファンなどに対する安全性を確保するためである。
4)ドア開閉センサ42で検出される車両10のドアの開閉状態が全て閉である。
これは、空調装置16による空調を有効に行うためである。
なお、ステップS18,S20,S22で条件が不成立となれば、ステップS10に戻る。
【0022】
充電動作条件と、充電量条件と、動作許可条件との3つの条件の全てが成立したならば、リモコンECU32は、空調装置16の電源をオンする(ステップS24)。具体的には、リモコンECU32は、EV−ECU26を介して空調リレー45をオンする。そして、リモコンECU32は、充電装置14を制御することにより、商用電源2と走行用バッテリ12とを併用して空調装置16に給電を行う(ステップS26)。これにより、空調装置16の動作開始時に短時間発生する突入電流を、商用電源からの給電と走行用バッテリからの給電との双方によって吸収させる。次いで、リモコンECU32は、突入電流の吸収がなされたのちは、充電装置14を制御することにより、走行用バッテリ12のみを用いて空調装置16に給電を行う(ステップS28)。この場合、リモコンECU32は、携帯機20から受信したプレ空調指令に含まれる暖房、冷房、除湿などの動作内容を空調ECU24に与え、空調ECU24は与えられた動作内容に基づいて空調装置16を制御する。これによりプレ空調が実施される。なお、ステップS24において空調リレー45がオンされると、手動スイッチ4402がオンされている場合にはシートヒータ44が動作する。
【0023】
さらに、リモコンECU32は、携帯機20から受信したプレ空調開始時のモード設定がDEFOGGERモードに設定されているか否かを判定し(ステップS30)、判定が肯定であれば統合EUC30にデフォッガ動作の実行を指令しこれにより統合ECU30はデフォッガリレー46をオンさせることで、リヤデフォッガ46の動作が実行される(ステップS32)。そして、リモコンECU32は、空調装置16の動作中、空調装置16の動作を終了させるために必要な制御終了条件が成立するか否かを判定する(ステップS34)。制御終了条件として例えば以下の条件が例示され、以下の条件の少なくとも1つが成立すると制御終了条件が成立することになる。
1)携帯機20から送信されたプレ空調を停止する停止指令が通信部34で受信される。
2)前記の動作許可条件の少なくとも1つが不成立となる。
3)予め定められた時間を超過した。これは、走行用バッテリ12の消耗を抑制するためである。
4)車両10における制御系に異常発生が検出された。
【0024】
リモコンECU32は、制御終了条件が成立すると判定されたときには、空調装置16の動作を終了させる(ステップS36)。具体的には、リモコンECU32は、EV−ECU26を介して空調リレー45をオフする。これにより、走行用バッテリ12から空調装置16への給電が停止される。このとき、リアデフォッガ46が動作されていたならば、空調リレー45のオフによりリアデフォッガ46も非動作とされる。
【0025】
リモコンECU32は、プレ空調が終了した旨、および、終了した原因を含む終了情報を携帯機20に対して通信部34を介して送信する(ステップS38)。終了した原因とは、前記の制御終了条件のそれぞれに対応した内容を示す情報であればよく、例えば、以下のものが例示される。
1)携帯機20の停止指令によりプレ空調を停止しました。
2)予め定められたプレ空調時間を超過したためプレ空調を停止しました。
3)車両に異常が検出されたためプレ空調を停止しました。3)の場合は、以下のような理由が含まれる。車両10における制御系に異常発生が検出された。IGスイッチ36がOFFポジション以外となった。シフトポジションがP(駐車)以外となった。フードが開かれた。ドアが開かれた。
【0026】
なお、本実施の形態では、ステップS16〜S28を実行するリモコンECU32によって特許請求の範囲の動作開始制御手段が構成されている。また、ステップS34、S36を実行するリモコンECU32によって特許請求の範囲の動作終了制御手段が構成されている。また、ステップS30、S32、S36を実行するリモコンECU32によって特許請求の範囲のデフォッガ制御手段が構成されている。
【0027】
本実施の形態によれば、充電動作条件と、充電量条件と、動作許可条件との3つの条件の全てが成立すると、商用電源2からの給電と走行用バッテリ12からの給電とによって空調装置16を動作させることによりプレ空調を実施する際、空調装置16の動作開始時に短時間発生する突入電流を、商用電源2からの給電と走行用バッテリ12からの給電との双方によって吸収させ、突入電流が終了したのちは、商用電源2からの給電のみによって空調装置16を動作させるようにした。したがって住宅に設置された比較的小容量の商用電源を使用した場合であっても、住宅の電源に過大な負荷をかけることなく、走行用バッテリの充電量の低下を抑制しつつプレ空調を確実に実施でき利便性、快適性の向上を図る上で有利となる。また、本実施の形態では、プレ空調の実施中、車両のガラス窓に設けられたデフォッガを動作させるようにしたので、乗車前にガラス窓のくもりを除去できるため、利便性、快適性の向上を図る上でより一層有利となる。
【符号の説明】
【0028】
2……商用電源、10……車両、12……走行用バッテリ、14……充電装置、16……空調装置、20……携帯機、34……通信部、32……リモコンECU、46……リアデフォッガ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の駆動源に電力を供給する走行用バッテリと、商用電源を用いて前記走行用バッテリを充電する充電装置と、前記走行用バッテリから給電されることで車室内の空調を行う空調装置とを備える電気自動車に搭載され、前記空調装置を制御する空調制御装置であって、
前記商用電源が接続された状態でプレ空調を実施する場合は、前記空調装置の動作開始時に短時間発生する突入電流を、前記商用電源からの給電と前記走行用バッテリからの給電との双方によって吸収させ、前記突入電流が終了したのちは、前記商用電源からの給電のみによって前記空調装置を動作させる、
ことを特徴とする空調制御装置。
【請求項2】
前記プレ空調は前記走行用バッテリに充電されている充電量が予め定められた最低充電量以上であるという充電量条件を満たすことを条件に実行され、
前記突入電流を吸収するために必要な給電量を最大給電量としたとき、前記最低充電量は、前記最大給電量から前記商用電源によって給電し得る給電量を差し引いた不足分を補うに足る値である、
ことを特徴とする請求項1記載の空調制御装置。
【請求項3】
携帯機から送信された、前記車室内のプレ空調の実行を指令するプレ空調指令を受信する通信部と、
前記通信部が前記プレ空調指令を受信すると、前記商用電源が接続されているという充電動作条件と、前記走行用バッテリに充電されている充電量が予め定められた最低充電量以上であるという充電量条件とが成立するか否かを判定し、前記両条件が成立していることを条件に、前記商用電源からの給電と前記走行用バッテリからの給電とによって前記空調装置を動作させることによりプレ空調を実施する動作開始制御手段とを備え、
前記動作開始制御手段は、前記空調装置の動作開始時に短時間発生する突入電流を、前記商用電源からの給電と前記走行用バッテリからの給電との双方によって吸収させ、前記突入電流が終了したのちは、前記商用電源からの給電のみによって前記空調装置を動作させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の空調制御装置。
【請求項4】
前記空調装置の動作中、前記空調装置の動作を終了させるために必要な制御終了条件が成立するか否かを判定し、前記制御終了条件が成立すると判定されたときに前記空調装置の動作を終了させる動作終了制御手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項3記載の空調制御装置。
【請求項5】
前記商用電源は、住宅に設けられたコンセントから供給される電源である、
ことを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の空調制御装置。
【請求項6】
前記プレ空調の実施中、前記車両のガラス窓に設けられたデフォッガを動作させるデフォッガ制御手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の空調制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−45977(P2012−45977A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187085(P2010−187085)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】