説明

空調装置の全体熱容量の最適化方法

【課題】ヒートポンプとして使用されるヒートループと電気式加熱装置を備えている空調装置の最適な制御方法を提供する。
【解決手段】乗員により設定される温度、ブロア回転数、および外気温を関数として全体熱容量を計算し、ヒートループ1の熱容量(HC1)を計算し、その後、このヒートループ1の熱容量(HC1)を全体熱容量と比較し、もし、全体熱容量が、ヒートループ1の熱容量(HC1)よりも大きい場合、電気式加熱装置2の熱容量を決定し、ヒートループ1の熱容量(HC1)に、電気式加熱装置2の熱容量(HC2)を加えることにより、乗員の設定温度に基づく全体必要熱容量を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用空調装置の制御方法に関する。具体的に言うと、本発明は、少なくとも1つの外部熱交換器と、内部熱交換器、または、水−空気熱交換ラジエータと、圧縮機と、蒸発器とを備え、いわゆる「ヒートポンプ」モードで作動するヒートループを備えている空調装置の制御方法に関し、このヒートループは、空調装置用の熱容量を有し、空調装置は、加熱補助能力を有する電気加熱装置を補助的に備えている。また、本発明の空調装置は、本発明の制御方法を実行する制御装置を備えている。
【0002】
このような空調装置は、一般に、ハイブリッド車、または電気自動車で採用されており、全体的な熱容量は、ヒートポンプサイクルで作動するヒートループによりもたらされ、1つ以上の電気式加熱装置が、補助的に設けられている。
【0003】
本発明は、さらに、空調装置の最適な成績係数を得るために、電気式補助装置と、ヒートポンプモードで作動するヒートループの使用割合を決定することができる方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
電気式加熱装置の成績係数は1と等しく、ヒートポンプモードで作動するヒートループの成績係数は、一般に1より大きいが、熱がくみ出される外部環境の温度が低下するにつれて、著しく減少することが知られている。
【0005】
本発明による空調装置においては、外気温が過度に低いために、ヒートループの成績係数が低下する際に、電気加熱装置が、ヒートポンプモードで作動するヒートループを支援することを意図している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、空調装置の電気式加熱補助装置を好適に使用することができる制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の制御方法は、次のステップを備えている。
−設定温度の入力。
−外部熱交換器の空気速度の測定。
−空調装置内の流動空気温度の測定。
−内部熱交換器、または水−空気熱交換ラジエータの空気流量の測定。
−設定温度と、内部熱交換器の流動空気温度と空気流量に基づく全体熱容量の計算。
−ヒートループの熱容量の決定。
−ヒートループの熱容量と全体熱容量の比較。
−ヒートループの熱容量が全体熱容量よりも低い場合、ヒートループの熱容量を補助するための、電気式加熱補助装置の熱容量の調節。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、このようにして、ヒートループの熱容量値を決定することができ、空調装置が必要とする全体熱容量に応じて、最適な成績係数を得ることができる。
【0009】
この方法は、もし、ヒートループの熱容量が、計算された全体能力より低い場合、全体成績係数のヒートループのこの熱容量に関する導関数を相殺した、ヒートループの熱容量に限定するステップを備えていると有利である。
【0010】
本発明の好ましい実施例によると、この方法は、ヒートループの熱容量の関数として、ヒートループの成績係数の2つの線形近似係数aとbを見積もる予備ステップを備えている。これらの係数は、少なくとも外部熱交換器の複数の空気速度、内部熱交換器の複数の流動空気温度と流量に対して、ヒートループの構成機器類の関数としてそれぞれ見積もられ、この方法は、測定ステップの後に、見積もられた係数の中から、測定されたパラメーターに応じて、ヒートループの成績係数の近似係数を決定するステップを備えており、ヒートループの熱容量は、(b∧1/2−b)/aに限定される。
【0011】
この実施例は、一度実施すると、ヒートループの作動中に、変化する複数のパラメーターに対する、係数aとbを蓄積できるので、特に簡単である。
【0012】
また、本発明の特別な特徴によると、空気−水熱交換回路と、電気式水加熱補助装置を備えている空調装置の場合、係数aとbは、全体として必要とされる熱容量の関数として見積もられる。
【0013】
この特徴は、電気式水加熱補助装置の作動の特殊性を考慮に入れている。
【0014】
本発明は、空気−空気ヒートループを備え、電気式空気加熱装置を備える空調装置、空気−水ヒートループを備え、電気式空気加熱装置を備える空調装置、および電気式空気加熱装置の有無に拘わらず、空気−水ヒートループを備え、電気式水加熱装置を備えている空調装置から選択される空調装置に適用することができる。
【0015】
空調装置の作動の補助として、1と等しい成績係数を有する電気式加熱補助装置を使用することができる場合、本発明は、これらのすべてのヒートポンプ装置に適用することができる。
【0016】
好ましい実施例においては、本発明の方法の異なるステップは、コンピュータプログラムの命令により決定される。
【0017】
従って、本発明は、データ媒体のコンピュータプログラムにも関連しており、このプログラムは、本発明の方法のステップの実行に適している命令を備えており、コンピュータ内で実行される。
【0018】
このプログラムは、どのようなプログラミング言語の使用が可能であり、ソースコード、オブジェクトコード、または、ソースコードとオブジェクトコードの間の中間コードの形式、部分コンパイル形式、またはいかなる他の所望の形式でも可能である。
【0019】
本発明はまた、前述のコンピュータプログラムの命令を備えているコンピュータに読み込み可能なデータ媒体にも関する。
【0020】
このデータ媒体は、プログラムを格納できるどんな構成要素または装置でも良い。例えば、この媒体は、ROM、CD−ROM、または超小型電子回路のROMのような格納手段、または、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、フラッシュメモリー、USBキー等の磁気記録手段でも良い。
【0021】
さらに、このデータ媒体は、電信機または他の手段により、電気ケーブル、または光ケーブルを経由して送ることができる電気信号または光信号のような伝導媒体でも良い。本発明のプログラムは、特にインターネット型のネットワークにダウンロードすることができる。
【0022】
また、このデータ媒体は、プログラムが組み込まれている集積回路とすることができ、この回路は、本発明の方法を実行するのに適している。
【0023】
本発明の他の特徴と効果は、非限定的な実施例を示す添付図面を参照の上、次の詳細な説明を読めば、明らかになると思う。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を実行できる空気−空気空調装置の構成を模式的に示す。
【図2】本発明を実行できる空気−水空調装置の構成を示す。
【図3】本発明を実行できる空気−水空調装置の構成を模式的に示す。
【図4】本発明の空調装置の作動を制御する制御装置のブロック図を示す。
【図5】本発明の方法を示すフローチャートである。
【図6】ヒートループの熱容量に関するヒートループの成績係数の変動例を示す。
【図7】ヒートループの熱容量割合の関数としての、全体能力が3550ワットの空調装置の全体成績係数の変動例を示す。
【図8】3つの異なる全体熱容量に関する、ヒートループの熱容量割合の関数としての全体成績係数の変動例を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0025】
図1は、本発明の方法を実施できる空調装置の第1の態様を模式的に示している。
【0026】
この空調装置は、少なくとも1つの、外部熱交換器10、内部熱交換器11、圧縮機12、膨張弁9、および蒸発器13から成るヒートループ1を備えている。このヒートループは、空気−空気形式である。この空気−空気形式は、ヒートループ1により発生された熱が、空調装置を通過する空気流に直接に伝達されるものである。このヒートループは、いわゆる「ヒートポンプ」モードにより作動する。「ヒートポンプ」は、ヒートループが発生した熱量により、空調装置を通過する空気流を加熱するものである。内部熱交換器11は、このヒートポンプモードにおいて、コンデンサのように作動する。
【0027】
また、この空調装置は、空調装置を通過する空気流を加熱する電気式加熱補助装置2を備えている。さらに、この空調装置は、本発明の方法を実行しうる制御装置3を備えている。
【0028】
この空調装置の作動中に、外気温の空気が外部熱交換器10を流速VAで通過する。この空気循環流は、少なくとも部分的にファンにより発生させられる。この外部熱交換器10を通過する空気の流速VAは、車両の速度と、ファンの駆動電圧に依存している。
【0029】
同時に、空気流量DmAの空気流が、蒸発器13、内部熱交換器11、および電気式加熱補助装置2を、順次に通過する。この空気循環により、空調装置の換気と空調と加熱の効果を得ることができる。空気流の空調装置に流入する際の温度は、Tfaである。空調装置が、内気モードで作動する時、温度Tfaは、再循環空気流の温度Trecyである。空調装置が、外気モードで作動する時、温度Tfaは、外気温度Textである。
【0030】
この循環流の出口、すなわち、空調装置の出口における空気流の温度は、蒸発器の入口の温度より高い。
【0031】
制御装置3は、圧縮機の設定回転数N12を圧縮機に送ることにより、ヒートループ1の熱容量を制御することができる。
【0032】
また、本発明の制御装置3は、熱容量の制御信号HC2を送ることにより、電気式加熱補助装置2が熱容量を発生するように、補助装置2の作動を制御することができる。
【0033】
図2は、内部熱交換器11の代わりに、水コンデンサ14と空気−水熱交換ラジエータ15から成る、波線で囲まれている水回路を備える空調装置を示している。ヒートループ1は、空気−水形式である。空気−水形式とは、ヒートループ1で発生した熱量が、水コンデンサ14と空気−水熱交換ラジエータ15から成る水回路により、空調装置を通過する空気流に伝達されることを意味している。
【0034】
この空調装置の作動中に、流量Dmaの空気流は、蒸発器13、空気−水熱交換ラジエータ15、および加熱補助装置2を通過する。
【0035】
この場合もやはり、制御装置3は、図1の空調装置と同様に、電気式加熱補助装置2と同じく、圧縮機12の作動を制御することができる。
【0036】
図3は、水回路の水を加熱できる電気式加熱補助装置16を有する空気−水空調装置を示している。この電気式加熱補助装置16は、水コンデンサ14と空気−水熱交換ラジエータ15の間に、概ね挿入されている。
【0037】
制御装置3は、圧縮機12の作動を制御することができ、かつ電気式加熱補助装置16の熱容量HC16を制御することもできる。
【0038】
図4は、本発明が実施される装置の制御装置3のブロック図を模式的に示している。この制御装置3に、空調装置の作動パラメーターが入力されている。本発明を実行するために、ユーザーが設定する設定温度Tcons、空気流Tfa、および蒸発器13、内部熱交換器11、または、空気−水ヒートループの場合は水−空気熱交換ラジエータ15、および電気式加熱補助装置2を通過する空気流量DmAが入力されている。また、この制御装置3には、外部熱交換器の空気速度VAも入力されている。
【0039】
最後に、この制御装置3には、全体熱容量HCgloも、入力させなければならない。
【0040】
この全体熱容量HCgloは、概ねユーザーが設定する設定温度Tconsに基づいて決定される。
【0041】
本発明によると、ヒートループの作動パラメーターの測定と、設定温度値Tconsに基づいて、制御装置3は、ヒートループ1と、電気式加熱補助装置2の熱容量の配分を計算することができる。
【0042】
従って、ヒートループの熱容量HC1と、電気式加熱補助装置の熱容量HC2を調節するために、制御装置3の出力として、2つの制御信号を用いることができる。
【0043】
このために、制御装置3は、ヒートループの熱容量HC1の関数として、COPgloで表される空調装置の全体成績係数を使用している。
【0044】
同じ作業条件に対して、ヒートポンプモードで作動しているヒートループの成績係数が変化すると、このヒートループの熱容量が比例的に減少することが知られている。
【0045】
制御装置3で実行される本方法によると、ヒートループと、電気式加熱補助装置の使用割合を決定することができ、最適の全体成績係数を得ることができる。
【0046】
さらに、もし、電気式空気加熱補助装置2が使用されている場合、全体成績係数を、次のように表すことができる。
COPglo=HCglo/(P12+P2)
【0047】
この式において、P12は、圧縮機の電力消費量であり、P2は、電気式加熱補助装置の電力消費量である。もし、電気式水加熱装置16が使用されている場合、P2の代わりに消費量P16がを用いる。
【0048】
ヒートループの成績係数COP1と、電気式装置の成績係数COP2により、圧縮機12の電力消費量と、電気式加熱装置2の電力消費量を表すことができ、その結果、次式を得ることができる。
COPglo=COP1・COP2/((HC1/HCglo)・COP2+(HC2/HCglo)・COP1)
上式におけるHC1とHC2は、ヒートループ1と電気式加熱補助装置2の熱容量である。
【0049】
電気式装置の成績係数COP2、場合によっては、COP16は、1以下と考えられる。ヒートループの成績係数COP1は、ヒートループ1の熱容量HC1の標準的な関数である。
【0050】
本発明によると、全体成績係数COPgloのこの式は、ヒートループの熱容量値HC1を決定するために用いられ、この導関数は相殺される。
【0051】
そのため、次の式は、ヒートループの熱容量HC1に関する、全体成績係数の導関数である。
(COPglo)’=(COP1^2・HCglo+HC1・HCglo・COP1’− COP1・HCglo)/((HC1/HCglo)+(HC2/HCglo)・COP1)^2
【0052】
従って、この導関数の相殺は、次の方程式によりなされている。
COP1^2・HCglo+HC1・HCglo・COP1’− COP1・HCglo=0
【0053】
これはまた、方程式を解いている。
(HC1/COP1)’=1
【0054】
この方程式を解くことにより、ヒートループ1と加熱補助装置2の熱容量を最適に分配し、空調装置を最適に作動させるHC1の値を得ることができる。
【0055】
以下に述べる本発明の有利な実施例においては、ヒートループの成績係数COP1の線形近似を用いている。
【0056】
空気を加熱するために、電気式加熱補助装置2を使用している空調装置の場合、ヒートループの成績係数COP1は、専らヒートループの熱容量HC1の関数である。
COP1=f(HC1)
【0057】
電気式水加熱補助装置16を使用している空調装置の場合、ヒートループの成績係数COP1は、ヒートループの熱容量HC1と、全体加熱必要能力HCgloの両方の関数である。
COP1=f(HC1; HCglo)
【0058】
この全体熱容量HCgloの値は、水コンデンサ14の入口と電気式加熱補助装置16の出口の水温レベルを定めているので、水コンデンサ14の入口の水温に影響する。
【0059】
これらの相違にも拘らず、成績係数COP1の変化を定義している、2つの係数aとbを有する次式により、2つのタイプの電気式補助加熱装置のヒートループの成績係数COP1の近似値を求めることができる。
COP1=a・HC1+b
【0060】
これらの係数は、制御装置3がアクセスできるデータベース内に格納されている。これらの係数aとbは、実行されているヒートループの構成機器類により決定されている。電機式補助空調装置が使用されている時、複数の空気速度VA、流動空気の温度Tfaと流量Dmaも、測定され格納されている。
【0061】
また、電気式水加熱補助装置16を使用している空調装置の場合、この係数aとbも、空調装置の全体熱容量HCgloに依存している。
【0062】
従って、この係数aとbは、空調装置の制御条件により、複数の値が決定されて格納されている。
【0063】
さらに、制御装置3は、格納手段を備えており、例えば、データ表の形式で、空調装置の制御条件に関連して、少なくとも3つか4つのパラメーターの関数として、係数aとbが格納されている。これにより、係数aとbの値を迅速に変化させて、制御装置3に入力することができる。
【0064】
従って、前述の方程式は、次のようになる。
(HC1/(a・HC1+b))’=1
【0065】
この方程式は、ヒートループの熱容量の値として、次のように解くことができる。
HC1=(√b−b)/a
【0066】
従って、ヒートループ1の熱容量のこの値HC1は、ヒートループ1が、全体成績係数COPgloを最大にできる最大熱容量である。
【0067】
その後、電気式加熱補助装置の熱容量HC2は、制御装置3により、次式に従って計算される。
HC2=HCglo−HC1
【0068】
図5は、本発明の制御方法のフローを示すフローチャートである。
【0069】
ステップE0において、外部熱交換器10の温度Tfa、空気速度VA、および空調装置の空気流の流量Dmaが入力されている。ユーザーが設定した、設定温度Tconsに基づいて計算された全体熱容量HCgloも、入力されている。
【0070】
本発明によると、ヒートループの成績係数COP1は、線形近似形式で表されている。ついで、ステップE1において、2つの係数aとbにより、ヒートループの成績係数COP1を、ヒートループの熱容量HC1の関数として直線的に表すことができる。
【0071】
この値aとbは、空調装置の作動パラメーターの関数として、また、電気式水加熱補助装置を使用している空気−水空調装置の場合、全体加熱必要能力の関数として、データベース内に格納されている値を読むことにより、決定される。
【0072】
次いで、ステップE2において、ヒートループの熱容量の最適値HC1が計算される。
【0073】
ステップE3において、ヒートループの最適熱容量HC1が、ユーザーの設定値による全体熱容量以下かどうかが確認される。
【0074】
(N)の場合、ヒートループの熱容量HC1の関数として、全体成績係数COPgloの導関数を相殺できるヒートループの熱容量HC1が、全体熱容量HCglo以下ではなく、その後、ステップE4において、ヒートループの熱容量HC1は、ユーザーが必要とする全体加熱必要能力HCgloを完全に充足している。
【0075】
(O)の場合、ヒートループの熱容量HC1の関数として、全体成績係数COPgloの導関数を相殺できるヒートループの熱容量HC1が、全体熱容量HCglo以下で、ヒートループの熱容量値HC1が、ステップE5において、ステップE2において計算された、ヒートループの最適熱容量値にセットされている。
【0076】
その後、空調装置は、使用されているヒートループの形式、すなわち、空気−水ヒートループ、または空気−空気ヒートループにより、作動が調節されている。この問いは、図5のステップE6に示されている。もし、ヒートループが、空気−水モードで作動している場合、ステップE7において、ヒートループの熱容量値HC1_mは、水コンデンサ14の入口の空気流量DmAと水温Teau_i、および、水コンデンサ14の出口の水温Teau_oの関数として計算される。
【0077】
もし、空気−空気ヒートループの場合、ステップE8において、ヒートループの熱容量値HC1_mは、内部熱交換器11の入口の空気流量DmAと空気温度Tair_i、そして、内部熱交換器11の出口の空気温度Tair_oの関数として計算される。
【0078】
両方の場合において、この制御方法は、ヒートループの熱容量の計算値HC1_mを、ヒートループの熱容量の制御値HC1と比較するステップを備えている。
【0079】
その後、ステップE10において、圧縮機の回転制御値N12が計算され、圧縮機12に送られる。
【0080】
もし、ヒートループの熱容量HC1が、全体加熱必要能力HCglo以下の場合、ヒートループ1の作動と、熱容量HC1の調整と並行して、電気式加熱補助装置HC2またはHC16の設定熱容量の計算が行われる。
【0081】
これは、図5のステップE11に示されており、電気式補助装置HC2またはHC16の熱容量の設定値は、ヒートループの熱容量HC1と、全体加熱必要能力HCgloの関数として計算される。
HC2又はHC16=HCglo−HC1
【0082】
ステップE12において、電気式加熱補助装置HC2またはHC16の熱容量の設定値HC2_mまたはHC16_mの熱容量の実際値が、空調装置の作動パラメーターの測定値の関数として計算される。
【0083】
その後、ステップE13において、ステップE12の計算値が、ステップE11の計算値と比較される。
【0084】
ステップE14において、この比較された数値差は、HC2またはHC16の設定値を計算するのに使用され、電気式空気加熱補助装置2または電気式水加熱補助装置16に、制御装置3から送られる。
【0085】
図5のフローチャートは、もし、全体加熱必要能力値HCgloが、成績係数COPgloの導関数を相殺して得られるヒートループの最適熱容量値HC1よりも高い場合、電気式加熱補助装置2または16により、付加的な熱容量が供給されることをはっきりと示している。
【0086】
それに反して、もし、全体加熱必要能力値HCgloが、成績係数COPgloの微分関数を相殺することのできるヒートループの熱容量HC1よりも低い場合、ヒートループの全ての熱容量が発揮されて、最高の成績係数を得ることができる。
【0087】
図6は、外気温が−10℃、空調装置の流動空気量が200kg/h、熱交換器の空気速度が1.7m/sの際の、熱容量HC1の関数としての、ヒートポンプモードで作動されているヒートループの成績係数COP1の変化例を示す。
【0088】
このカーブは、下降線を呈しており、この方程式は、有利なことに直線的変化を呈し、Y=−0.00038X+3.02607に近似し、かつ決定係数は0.99403である。
【0089】
この場合、ヒートループの熱容量値は、次のように計算することができる。
HC1=(√b−b)/a=(√3.026−3.026)/3.79・10^-4=3391W
【0090】
この実施例の制御条件のもとで、全体熱容量HCglo=3550の最適成績係数は、次の配分によって達成されることは、注目に値することである。
ヒートループの熱容量HC1=3391ワット。
電気式加熱補助装置HC2=109ワット。
【0091】
図7は、図6と同じ条件のもとに、ヒートループの熱容量の割合%HC1の関数としての全体成績係数HCgloを示す。
【0092】
ヒートループ1が、全体熱容量HCgloの95.5%の時に、曲線は最大値になることは注目するべきことである。
【0093】
また、必要熱容量HCgloの95.5%、すなわち3550ワットは、正に、前述の3391ワットに等しいことは注目すべきことである。
【0094】
図8は、3つの異なる全体熱容量HCglo:3000、4000、および5000ワットに対する、全体成績係数COPgloの3つの変化を示す。これらの曲線は、外気温が−10℃、空調装置の空気流量Dmaが280kg/h、外部熱交換器10の空気速度VAが、1.7m/秒に対するものである。これらの曲線は、ヒートループの熱容量割合%HC1の関数として示されている。
【0095】
全体熱容量が3000ワットの時に、ヒートループ1の全体熱容量を、より一層有利に供給できることは、注目に値することである。この場合、電気式加熱補助装置は使用されていない。なお、得られた成績係数は3である。
【0096】
全体の熱容量が4000ワットの時、ヒートループ1が、全体必要熱容量HCgloの78.7%、すなわち3848ワットを供給のが、最適であることが分かった。この場合、電気式加熱補助装置は、852ワットを供給している。成績係数は2であるが、もし、空調装置のヒートループ1の全体熱容量HCgloが供給されていると、成績係数は1.46である。
【0097】
電気式加熱補助装置2の作動に関する本発明の制御方法により、成績係数を37%増加させることができる。
【0098】
最後に、全体熱容量が5000ワットの時、空調装置のヒートループ1が、全体必要熱容量HCgloの63%、すなわち3148ワットを供給するのが、最適である。
【0099】
この場合、電気式加熱補助装置は、1850ワットを供給し、1.67の成績係数を得ることができる。
【0100】
最後に、本発明の技術思想に基いて、さまざまな実施例を考えうることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0101】
1 ヒートループ
2 電気式加熱補助装置
3 制御装置
9 膨張弁
10 外部熱交換器
11 内部熱交換器
12 圧縮機
13 蒸発器
14 水コンデンサ
15 空気−水熱交換ラジエータ
16 電気式加熱補助装置
a 線形近似係数
b 線形近似係数
VA 速度
DmA 空気流量
N12 設定回転数
HC1 ヒートループの熱容量
HC2 電気式加熱補助装置の熱容量
HC16 電気式加熱補助装置の熱容量
HCglo 全熱容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプモードで作動するヒートループ(1)を備えている空調装置の制御方法であって、前記ヒートループ(1)は、少なくとも1つの外部熱交換器(10)と、内部熱交換器(11)または水−空気熱交換ラジエータ(15)と、圧縮機(12)と、膨張器(9)と、蒸発器(13)を備えており、前記ヒートループ(1)は、熱容量(HC1)を供給し、空調装置は、補助熱容量(HC2,HC16)を有する電気式加熱装置(2,16)と、制御方法を実行する制御装置(3)を備えており、前記制御方法は、
−設定温度の受取、
−外部熱交換器(10)の位置での空気速度(VA)の測定(EO)、
−空調装置内の流動空気の温度(Tfa)の測定(EO)、
−内部熱交換器(11)または水−空気熱交換ラジエータ(15)の空気流量(DmA)の測定(EO)、
−設定温度、流動空気の温度(Tfa)、そして内部熱交換器(11)の空気流量に基づく全体熱容量(HCglo)の計算(EO)、
−ヒートループ(1)の熱容量(HC1)の決定、
−ヒートループ(1)の熱容量(HC1)と、全体熱容量(HCglo)との比較、
−ヒートループ(1)の熱容量(HC1)が、全体熱容量(HCglo)よりも低い場合、ヒートループの熱容量(HC1)の補助として、電気式加熱補助装置(2,16)の熱容量(HC2,HC16)の調整(E11,E12,E13,E14)というステップを備えていることを特徴とする空調装置の制御方法。
【請求項2】
ヒートループ(1)の熱容量(HC1)に関する全体成績係数(COPglo)の導関数が、全体成績係数(COPglo)以下のヒートループの熱容量(HC1)に相殺される場合、ヒートループの熱容量(HC1)が、前記導関数を相殺するヒートループの熱容量に限定される(E3,E4,E5)ことを特徴とする請求項1記載の空調装置の制御方法。
【請求項3】
ヒートループの熱容量(HC1)の関数として、ヒートループの成績係数(COP1)の2つの線形近似係数aとbを見積もる予備ステップを備えており、これらの係数は、少なくとも外部熱交換器(VA)の複数の空気速度、複数の流動空気温度(Tfa)と内部熱交換器内の質量空気流量(DmA)の、ヒートループの構成機器類の関数としてそれぞれ見積もられており、この方法は、測定ステップ(EO)の後に、見積もられた係数の中で、測定されたパラメーターに応じて、ヒートループの成績係数(COP1)の近似係数を決定するステップ(E1)を備えており、ヒートループの熱容量(HC1)は、(b1/2−b)/aに制限されていることを特徴とする請求項1又は2記載の空調装置の制御方法。
【請求項4】
空調装置は、空気−水ヒートループと電気式水加熱補助装置(16)を備え、係数aとbは、全体必要熱容量(HCglo)の関数として見積もられていることを特徴とする請求項3記載の空調装置の制御方法。
【請求項5】
空調装置の制御方法であって、空調装置は、空気−空気ヒートループを備えるとともに電気式空気加熱装置(2)を装備している空調装置、空気−水ヒートループを備えるとともに電気式空気加熱装置(2)を装備している空調装置、および、電気式空気加熱装置(2)の有無に拘わらず、空気−水ヒートループを備えるとともに電気式水加熱装置(16)を装備している空調装置、から選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載の空調装置の制御方法。
【請求項6】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが実行されるときに請求項1〜4のいずれか1項に記載の制御方法のステップを実行させる命令を備えているコンピュータプログラム。
【請求項7】
コンピュータプログラムが記録されているコンピュータ可読媒体であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の制御方法のステップを実行させる命令を備えているコンピュータ可読媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−140297(P2011−140297A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−280076(P2010−280076)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(505113632)ヴァレオ システム テルミク (81)
【Fターム(参考)】