説明

空間光変調ユニット、照明光学系、露光装置及びデバイスの製造方法

【課題】照明光学系の瞳位置において形成される光分布形状、該光分布形状内における偏光状態及び光強度分布を迅速に変更することができる空間光変調ユニットを提供する。
【解決手段】二次元的に配列された複数の素子SE1をそれぞれ独立に制御可能であり、前記複数の素子のそれぞれに入射した光に対して空間的な変調を与える空間光変調器S1と、前記複数の素子のそれぞれに対応させて形成された偏光制御素子S2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の素子のそれぞれに入射した光に対して空間的な変調を与える空間光変調ユニット、該空間光変調ユニットを備える照明光学系、該照明光学系を備えた露光装置及び該露光装置を用いたデバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マスクに形成されたパターンは高集積化されており、この微細なパターンをウエハ上に正確に転写するためには、マスクパターンを最適な照度分布で照明することが不可欠である。従って、露光装置が備える照明光学系の瞳位置において輪帯状や多極状(例えば4極状)の光強度分布を形成するための変形照明を行い、マイクロフライアイレンズの後側焦点面に形成される二次光源の光強度分布を変化させることにより、投影光学系の焦点深度や解像力を向上させる技術が注目されている。
【0003】
また、特性の異なる2種類のパターンが混在するようなマスクパターンに適した照明条件を実現するために、複数の回折光学素子と当該複数の回折光学素子に異なる偏光を与える偏光制御部材を備え、異なる偏光の光を用いて照明光学系の瞳位置において多極状(例えば4極状)の光分布形状を形成する露光装置が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】WO2005/036619(A1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の露光装置においては、照明光学系の瞳位置において形成された光分布形状内において、光強度分布を変更する場合には回折光学素子を交換しなければならず、容易に照明光学系の瞳位置において形成された光分布形状内における光強度分布を変更することができなかった、
本発明の目的は、照明光学系の瞳位置において形成される光分布形状、該光分布形状内における偏光状態及び光強度分布を迅速に変更することができる空間光変調ユニット、該空間光変調ユニットを備える照明光学系、該照明光学系を備える露光装置及び該露光装置を用いたデバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に本発明の構成を実施形態の符号を付して説明するが、本発明は、本実施形態に限定されるものではない。
【0006】
本発明の空間光変調ユニットは、二次元的に配列された複数の素子(SE1)をそれぞれ独立に制御可能であり、前記複数の素子のそれぞれに入射した光に対して空間的な変調を与える空間光変調器(S1)と、前記複数の素子のそれぞれに対応させて形成された偏光制御素子(S2)とを備えることを特徴とする。
【0007】
また本発明の空間光変調ユニットは、二次元的に配列された複数の素子(SE1)をそれぞれ独立に制御可能であり、前記複数の素子のそれぞれに入射した光に対して空間的な変調を与える空間光変調器(S1)と、前記複数の素子が二次元的に配列された素子配列領域を複数領域に分割したとき、前記複数領域のそれぞれに対応させて形成される偏光制御素子(S3)とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の照明光学系は、光源(1)から供給される照明光によって被照射面を照明する照明光学系であって、前記照明光学系の光路内に配置され、前記照明光学系の瞳位置又は該瞳位置と光学的に共役な位置に所望の偏光状態であり、かつ所望の光強度分布を形成する本発明の空間光変調ユニット(SM1)を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の露光装置は、感光性基板(W)上に所定のパターン(M)を転写する露光装置において、被照射面に配置された前記パターンを照明するための本発明の照明光学系を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のデバイスの製造方法は、本発明の露光装置を用いて所定のパターン(M)を感光性基板(W)上に露光する露光工程(S44)と、前記パターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記パターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程(S46)と、前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程(S48)とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の空間光変調ユニットによれば、所定面に形成される光分布形状、該光分布形状内における偏光状態及び光強度分布を迅速に変更することができる。
【0012】
また、本発明の照明光学系によれば、照明光学系の瞳位置又は瞳位置と光学的に共役な位置で、所望の光分布形状、該光分布形状内における偏光状態及び光強度分布を迅速に変更することができる。
【0013】
また、本発明の露光装置によれば、本発明の照明光学系によりマスクの照明を行うため、高解像度で且つ高スループットでマスクのパターンを感光性基板上に露光することができる。
【0014】
また、本発明のデバイスの製造方法によれば、この発明の照明光学系を備える露光装置により露光を行うため、高解像度で且つ高スループットでマイクロデバイスの製造を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態にかかる露光装置について説明する。図1は、本実施形態にかかる露光装置の概略構成を示す図である。なお、以下の説明においては、図1中に示すXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がウエハWに対して平行となるように設定され、Z軸がウエハWに対して直交する方向に設定されている。
【0016】
本実施形態にかかる露光装置は、図1に示すように、露光光(照明光)を供給するためのレーザ光源1として、例えば波長が約193nmの光を供給するArFエキシマレーザ光源又は波長が約248nmの光を供給するKrFエキシマレーザ光源を備えている。レーザ光源1からZ方向に沿って射出された略平行な光束は、X方向に沿って細長く延びた矩形状の断面を有し、ズーム光学系2に入射する。ズーム光学系2に入射した光束は、図1のYZ平面内、XY平面内において拡大又は縮小され、所定の矩形状の断面を有する光束に整形される。整形光学系(光整形部材)としてのズーム光学系2を介した平行な光束は、空間光変調ユニットSM1に入射する。
【0017】
空間光変調ユニットSM1は、図2に示すような反射型の空間光変調器S1及び空間光変調器S1の上面に近接して設けられている偏光制御素子S2を備えている。空間光変調器S1は図3に示すように、基板SS上に平面形状の反射面を上面にして敷き詰められた多数の微小な反射素子である要素ミラーSE1を含む可動マルチミラーである。各要素ミラーSE1は可動であり、その反射面の傾き、すなわち反射面の傾斜角及び傾斜方向は制御部20により制御されるSLM駆動部26によりそれぞれ独立に駆動制御される。各要素ミラーSE1は、その反射面に平行な二方向であって、互いに直交する二方向を回転軸として所望の回転角度だけ連続的に回転することができる。即ち、各要素ミラーSE1は、反射面に沿った二次元で傾斜を制御することで、入射する照明光に対して各要素ミラーSE1に対して設定された空間的な変調を与える。
【0018】
ここでは、要素ミラーSE1の外形は正方形としているが,これに限定するものではない。ただし、光利用効率の観点から、隙間無く配列可能な形状が好ましい。また、隣接する要素ミラーSE1間の間隔は必要最小限とすることが好ましい。また、照明条件の細かな変更を可能にするために、要素ミラーSE1は可能な限り小さいことが好ましい。また、要素ミラーSE1の反射面の形状は平面には限られず、凹面や凸面などの曲面であっても良い。
【0019】
偏光制御素子S2は、空間光変調器S1に設けられている各要素ミラーSE1毎に配置される複数の偏光制御部により構成され、各偏光制御部は、たとえば波長板、旋光子等により構成され、それぞれ入射する光の偏光状態を制御する機能を有し、図2に示すように、例えば要素ミラーSE1aに入射した偏光状態Aの光を偏光状態Bの光に変換し、要素ミラーSE1bに入射した偏光状態Aの光を偏光状態Cの光に変換する。なお、偏光制御素子は、入射光及び要素ミラーにより反射された反射光が通過することから反射による位相のずれを考慮して形成される。
【0020】
空間光変調ユニットSM1は、照明光学系の瞳位置に円形,輪帯,2極,4極等の所望の光分布形状を形成する変形照明を可能とし、更に瞳位置に形成される光分布形状内における光の偏光状態を制御する。即ち、記憶部22には、各要素ミラーSE1上に形成されている偏光制御部の作用情報を考慮した、照明光学系の瞳位置で所望の偏光状態の円形、輪帯、2極、4極等の各光分布形状を形成するための、各要素ミラーSE1の傾斜角及び傾斜方向の情報が記憶されている。従って、制御部20がSLM駆動部26を制御し、各要素ミラーSE1の傾斜角及び傾斜方向を変更し、照明光学系の瞳位置又は該瞳位置と光学的に共役な位置において所望の偏光状態の光分布形状(光強度分布)を形成する。なお、記憶部22に各要素ミラーSE1の番地情報に対応させて偏光制御素子の作用情報を記憶させておき、制御部20によりこの情報を参照して、照明光学系の瞳位置において所望の偏光状態の光分布形状(光強度分布)を形成するようにしても良い。
【0021】
図4は、空間光変調ユニットSM1の一部(4つの要素ミラーに対応する部分)を示す図である。図4に示す空間光変調ユニットSM1の一部においては、図に示すxy座標系で表わされるx方向の直線偏光を有する光がS2aに入射した場合には、要素ミラーSE1で反射されて射出する光を時計回りに45度、偏光方向を回転した直線偏光の光に変換し、x方向の直線偏光を有する光がS2bに入射した場合には、要素ミラーSE1で反射されて射出する光を反時計回りに45度、偏光方向を回転した直線偏光の光に変換し、x方向の直線偏光を有する光がS2cに入射した場合には、要素ミラーSE1で反射されて射出する光を時計回りに45度、偏光方向を回転した直線偏光の光に変換し、x方向の直線偏光を有する光がS2dに入射した場合には、要素ミラーSE1で反射されて射出する光を時計回りに45度、偏光方向を回転した直線偏光の光に変換する。
【0022】
本実施形態においては、空間光変調ユニットSM1が入射光を、照明光学系の瞳位置において所定の偏光状態を有する輪帯状の光分布形状(光強度分布)を形成する光に変換するように制御されているため、図4に示す空間光変調ユニットSM1の一部のS2aを通過した偏光状態を変換された光は、図5に示す照明光学系の瞳位置(瞳面)において、Pa1で示す領域の一部を通過し、空間光変調ユニットSM1の一部のS2bを通過した偏光状態を変換された光は、照明光学系の瞳位置(瞳面)において、Pb1で示す領域の一部を通過し、空間光変調ユニットSM1の一部のS2cを通過した偏光状態を変換された光は、照明光学系の瞳位置(瞳面)において、Pc1で示す領域の一部を通過し、空間光変調ユニットSM1の一部のS2dを通過した偏光状態を変換された光は、照明光学系の瞳位置(瞳面)において、Pd1で示す領域の一部を通過する。即ち、空間光変調ユニットSM1を通過した光束は、アフォーカルレンズ(リレー光学系)5に入射し、アフォーカルレンズ5(ひいては照明光学系)の瞳位置又は該瞳位置の近傍に所定の偏光状態を有する輪帯状の光分布形状(光強度分布)を形成する。アフォーカルレンズ5は、その前側焦点位置と空間光変調ユニットSM1の空間光変調器S1の位置とがほぼ一致し且つその後側焦点位置と図中破線で示す所定面6の位置とがほぼ一致するように設定されたアフォーカル系(無焦点光学系)である。従って、空間光変調ユニットSM1に入射した光束は、アフォーカルレンズ5の瞳位置に所定の偏光状態を有する輪帯状の光分布形状(光強度分布)を形成した後、略平行な光束となってアフォーカルレンズ5から射出される。
【0023】
なお、アフォーカルレンズ5の前側レンズ群5aと後側レンズ群5bとの間の光路中には、照明光学系の瞳位置又はその近傍に、光源側から順に、円錐アキシコン系87、第1シリンドリカルレンズ対88及び第2シリンドリカルレンズ対89が配置されている。
【0024】
図6は、照明光学系の瞳位置又は該瞳位置の近傍に配置される円錐アキシコン系87の概略構成を示す図である。円錐アキシコン系87は、光源側から順に、光軸AX方向に対して凹円錐状の屈折面(凹状屈折面)を有する第1プリズム87a及び第1プリズム87aの凹円錐状の屈折面と互いに当接可能なように相補的に形成された凸円錐状の屈折面(凸状屈折面)を有する第2プリズム87bを備えている。第1プリズム87aは光源側に平面を向け且つマスクM側に凹円錐状の屈折面を向けて配置されており、第2プリズム87bは光軸AX側に凸円錐状の屈折面を向け且つマスクM側に平面をむけて配置されている。
【0025】
また、第1プリズム87a及び第2プリズム87bのうち少なくとも一方は光軸AXに沿って移動可能に構成されており、第1プリズム87aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム87bの凸円錐状の屈折面との間隔が可変に構成されている。ここで、第1プリズム87aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム87bの凸円錐状の屈折面とが互いに当接している状態では、円錐アキシコン系87は平行平面板として機能し、後述するマイクロレンズアレイ10を介して形成される輪帯状の二次光源に及ぼす影響はない。しかしながら、第1プリズム87aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム87bの凸円錐状の屈折面とを離間させると、円錐アキシコン系87は、いわゆるビームエキスパンダとして機能する。従って、円錐アキシコン系87の間隔の変化に伴って、図1中破線で示す所定面6への入射光束の入射角度は変化する。
【0026】
図7は、輪帯照明において形成される二次光源に対する円錐アキシコン系87の作用を説明するための図である。図7(a)は、円錐アキシコン系87の間隔が0でかつ後述するズームレンズ7の焦点距離が最小値に設定された状態(以下、「標準状態」という)で形成された最も小さい輪帯状の二次光源130aを示す図であり、図7(b)は、円錐アキシコン系87の間隔を所定の値に拡大した状態(ズームレンズ7の焦点距離は不変)で形成された輪帯状の二次光源130bを示す図である。図7(a)、(b)を参照すると、円錐アキシコン系87の間隔を0から所定の値まで拡大させることにより、その幅(外径と内径との差の1/2:図中矢印で示す)が変化することなく、その外径及び内径がともに拡大された輪帯状の二次光源130bに変化する。即ち、円錐アキシコン系87の作用により、輪帯状の二次光源の幅が変化することなく、その輪帯比(内径/外径)及び大きさ(外径)がともに変化する。
【0027】
図8は、アフォーカルレンズ5の前側レンズ群5aと後側レンズ群5bとの間の光路中に配置された第1シリンドリカルレンズ対88及び第2シリンドリカルレンズ対89の概略構成を示す図である。図4に示すように、第1シリンドリカルレンズ対88は、光源側から順に、たとえばYZ平面内に負屈折力を有し且つXY平面内に無屈折力の第1シリンドリカル負レンズ88aと、同じくYZ平面内に正屈折力を有し且つXY平面内に無屈折力の第1シリンドリカル正レンズ88bとにより構成されている。一方、第2シリンドリカルレンズ対89は、光源側から順に、たとえばXY平面内に負屈折力を有し且つYZ平面内に無屈折力の第2シリンドリカル負レンズ89aと、同じくXY平面内に正屈折力を有し且つYZ平面内に無屈折力の第2シリンドリカル正レンズ89bとにより構成されている。
【0028】
第1シリンドリカル負レンズ88aと第1シリンドリカル正レンズ88bとは、光軸AXを中心として一体的に回転するように構成されている。同様に、第2シリンドリカル負レンズ89aと第2シリンドリカル正レンズ89bとは、光軸AXを中心として一体的に回転するように構成されている。第1シリンドリカルレンズ対88はZ方向にパワーを有するビームエキスパンダとして機能し、第2シリンドリカルレンズ対89はX方向にパワーを有するビームエキスパンダとして機能する。また、本実施形態においては、第1シリンドリカルレンズ対88及び第2シリンドリカルレンズ対89のパワーが同一となるように設定されている。従って、第1シリンドリカルレンズ対88及び第2シリンドリカルレンズ対89を通過した光束は、Z方向及びX方向に同一のパワーにより拡大作用を受ける。
【0029】
アフォーカルレンズ5を介した光束は、σ値可変用のズームレンズ7に入射する。所定面6の位置はズームレンズ7の前側焦点位置又はその近傍に配置され、後述するマイクロレンズアレイ10の入射面はズームレンズ7の後側焦点面又はその近傍に配置されている。即ち、ズームレンズ7は、所定面6とマイクロレンズアレイ10の入射面とを実質的に光学的なフーリエ変換の関係に配置し、ひいてはアフォーカルレンズ5の瞳位置とマイクロレンズアレイ10の入射面とを光学的に略共役に配置している。従って、マイクロレンズアレイ10の入射面上には、アフォーカルレンズ5の瞳位置と同様に、例えば光軸AXを中心とした輪帯状の照野が形成される。この輪帯状の照野の全体形状は、ズームレンズ7の焦点距離に依存して相似的に変化する。即ち、マイクロレンズアレイ10によって照明光学系の瞳位置と光学的に共役な位置に形成される二次光源(面光源)の大きさは、レーザ光源1から射出される照明光の光量をほぼ一定に保ちながら、ズームレンズ7の焦点距離に依存して相似的に変更することができる。
【0030】
図9は、輪帯照明において形成される二次光源に対するズームレンズ7の作用を説明するための図である。図9(a)は、標準状態で形成された輪帯状の二次光源130aを示す図であり、図9(b)は、ズームレンズ7の焦点距離を所定の値へ拡大した状態(円錐アキシコン系87の間隔は不変)で形成された輪帯状の二次光源130cを示す図である。図9(a)、(b)を参照すると、ズームレンズ7の焦点距離を最小値から所定の値へ拡大させることにより、照明光の光量をほぼ一定に保ちながら、その全体形状が相似的に拡大された輪帯状の二次光源130cに変化する。即ち、ズームレンズ7の作用により、輪帯状の二次光源の輪帯比が変化することなく、その幅及び大きさ(外径)が共に変化する。ズームレンズ7を介した光束は、ビームスプリッタ8に入射する。ビームスプリッタ8により反射された光束は、CCD撮像部(検出部)9に入射する。CCD撮像部9による画像信号は、制御部20に対して出力される。
【0031】
ビームスプリッタ8を通過した光束は、オプティカルインテグレータとしてのマイクロレンズアレイ10に入射する。マイクロレンズアレイ10への入射光束の入射角度は、円錐アキシコン系87の間隔の変化に伴って、所定面6への入射光束の角度が変化するのと同様に変化する。マイクロレンズアレイ10は、縦横にかつ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子である。マイクロレンズアレイ10を構成する各微小レンズは、マスク(被照射面)Mにおいて形成すべき照野の形状(ひいてはウエハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形上の断面を有する。マイクロレンズアレイ10に入射した光束は、多数の微小レンズにより二次元的に分割され、その後側焦点面(ひいては照明瞳)にはマイクロレンズアレイ10への入射光束によって形成される照野と略同じ光分布を有する二次光源、即ち光軸AXを中心とした輪帯状の実質的な面光源からなる二次光源が形成される。
【0032】
マイクロレンズアレイ10の後側焦点面に形成された輪帯状の二次光源からの光束は、マイクロレンズアレイ10の後側焦点面(射出面)又はその近傍に配置可能に設けられている開口絞り12を通過する。開口絞り12は、マイクロレンズアレイ10の後側焦点面に形成される二次光源の大きさを所定の大きさに制限する例えば虹彩絞り等により構成されている。開口絞り12を介した光束は、ビームスプリッタ14、コンデンサレンズ17aを介して、マスクブラインドMBを重畳的に照明する。ビームスプリッタ14により反射された光束は、レンズ15を介してフォトダイオード16に入射する。フォトダイオード16による検出信号は、制御部20に対して出力される。
【0033】
照明視野絞りとしてのマスクブラインドMBには、マイクロレンズアレイ10を構成する各微小レンズの形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。マスクブラインドMBの矩形状の開口部を介した光束は、結像光学系17bの集光作用を受けた後、反射鏡19により反射され、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。即ち、結像光学系17bは、マスクブラインドMBの矩形状開口部の像をマスクステージMS上に載置されたマスクM上に形成する。なお、レーザ光源1〜反射鏡19及び空間光変調ユニットSM1等は、照明光学系を構成する。
【0034】
マスクMのパターンを透過した光束は、投影光学系PLを介して、感光性基板であるウエハW上にマスクMのパターン像を形成する。こうして、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面内においてウエハステージWS上に載置されたウエハWを二次元的に駆動制御しながら一括露光又はスキャン露光を行うことにより、ウエハWの各露光領域にはマスクMのパターンが逐次露光される。
【0035】
なお、図1に示した本実施形態にかかる露光装置は、ウエハW等の被処理基板を保持して移動可能な露光ステージ(ウエハステージWS)とは別に設けられて、各種の計測部材やセンサを備えた計測ステージ上にCCD撮像部39を備えている。このCCD撮像部39は、照明光学系及び投影光学系の双方を通過した光に基づいて、照明光学系(投影光学系)の瞳位置と光学的に共役な位置での光強度分布を検出する。このCCD撮像部39を用いれば、照明光学系に加えて投影光学系の経時的な光学特性の変化の影響も補正することが可能となる。なお、上述のような計測ステージを備えた露光装置は、例えば特開平11−135400に開示されている。
【0036】
本実施形態にかかる露光装置によれば、照明光学系の瞳位置又は該瞳位置と光学的に共役な位置で所望の偏光状態を有する光分布形状(光強度分布)を形成することができるため、高解像度でかつスループット良く、マスクのパターンをウエハ上に露光することができる。
【0037】
次に、図10、図11を参照して、本発明の第2の実施形態に係る露光装置について説明する。なお、第2の実施形態に係る露光装置は、第1の実施形態に係る露光装置を構成する空間光変調ユニットSM1の構成が図10に示す空間光変調ユニットSM2に変更されている点を除き第1の実施形態に係る露光装置と同一の構成を有する。従って、第2の実施形態の説明においては、第1の実施形態にかかる露光装置の構成と同一の構成の詳細な説明は省略し、第1の実施形態に係る露光装置の構成と同一の構成には第1の実施形態で用いたのと同一の符号を用いて説明を行う。
【0038】
図10は、空間光変調ユニットSM2を示す図である。図10に示す空間光変調ユニットSM1においては、空間光変調器S1の各要素ミラーSE1が二次元的に配列された素子配列領域を領域A、領域B、領域C、領域Dの4つの領域に分割し、空間光変調器S1上に各領域に対応して、それぞれの偏光作用を有する偏光制御素子S3が設けられている。図11(a)に示すように、偏光制御素子S3は、図に示すxy座標系で表わされるx方向の直線偏光を有する光が領域Aに入射した場合には、各要素ミラーで反射されて射出する光を時計回りに45度、偏光方向を回転した直線偏光の光に変換し、x方向の直線偏光を有する光が領域Bに入射した場合には、各要素ミラーで反射されて射出する光を反時計回りに45度、偏光方向を回転した直線偏光の光に変換し、x方向の直線偏光を有する光が領域Cに入射した場合には、各要素ミラーで反射されて射出する光を時計回りに45度、偏光方向を回転した直線偏光の光に変換し、x方向の直線偏光を有する光が領域Dに入射した場合には、各要素ミラーで反射されて射出する光を反時計回りに45度、偏光方向を回転した直線偏光の光に変換する。
【0039】
本実施形態においては、空間光変調ユニットSM2が入射光を、照明光学系の瞳位置において、所定の偏光状態を有する輪帯状の光分布形状(光強度分布)を形成する光に変換するように制御されているため、図11(b)に示すように、空間光変調ユニットSM2の領域Aを通過した偏光状態を変換された光は、照明光学系の瞳位置(瞳面)においてPa2で示す領域を通過し、空間光変調ユニットSM2の領域Bを通過した偏光状態を変換された光は、照明光学系の瞳位置(瞳面)においてPb2で示す領域を通過し、空間光変調ユニットSM2の領域Cを通過した偏光状態を変換された光は、照明光学系の瞳位置(瞳面)においてPc2で示す領域を通過し、空間光変調ユニットSM2の領域Dを通過した偏光状態を変換された光は、照明光学系の瞳位置(瞳面)においてPd2で示す領域を通過する。即ち、空間光変調ユニットSM2を通過した光束は、アフォーカルレンズ(リレー光学系)5に入射し、アフォーカルレンズ5(ひいては照明光学系)の瞳位置又は該瞳位置の近傍に所定の偏光状態を有する輪帯状の光分布形状(光強度分布)を形成する。
【0040】
本実施の形態においては、空間光変調器S1を4つの領域の分割し、領域毎に偏光制御素子を設けているため、空間光変調ユニットSM2の構成を簡略化することができる。
【0041】
なお、本実施形態においては、デポラライズ照明による円形照明を実施することが可能である。この場合には、図11(a)に示す、空間光変調ユニットSM2の領域Aを通過した偏光状態を変換された光(x方向の直線偏光の光の偏光方向を時計回りに45度回転させた光)は、照明光学系の瞳位置(瞳面)において円形領域を通過し、空間光変調ユニットSM2の領域Bを通過した偏光状態を変換された光(x方向の直線偏光の光の偏光方向を反時計回りに45度回転させた光)は、照明光学系の瞳位置(瞳面)において、領域Aを通過した偏光状態を変換された光と同一の円形領域を通過し、空間光変調ユニットSM2の領域Cを通過した偏光状態を変換された光(x方向の直線偏光の光の偏光方向を時計回りに45度回転させた光)は、照明光学系の瞳位置(瞳面)において、領域Aを通過した偏光状態を変換された光と同一の円形領域を通過し、空間光変調ユニットSM2の領域Dを通過した偏光状態を変換された光(x方向の直線偏光の光の偏光方向を反時計回りに45度回転させた光)は、照明光学系の瞳位置(瞳面)において、領域Aを通過した偏光状態を変換された光と同一の円形領域を通過する。即ち、空間光変調ユニットSM2を通過した光束は、アフォーカルレンズ(リレー光学系)5に入射し、アフォーカルレンズ5(ひいては照明光学系)の瞳位置又は該瞳位置の近傍に、図12に示すように空間光変調ユニットSM2の領域A〜Dを通過した光の偏光状態が混ぜ合わされたデポラライズ照明による円形の光強度分布を形成する。
【0042】
次に、図13〜図21を参照して、本発明の第3の実施形態に係る露光装置について説明する。なお、第3の実施形態に係る露光装置は、第1の実施形態に係る露光装置を構成する空間光変調ユニットSM1の構成を、第2の実施形態に係る空間光変調ユニットSM2(図10)に変更し、ズーム光学系2を制御部20の制御により空間光変調ユニットSM2に入射する照明光の断面形状を変更可能に変更し、空間光変調ユニットSM2、即ち空間光変調器S1及び偏光制御素子S3を一体として制御部20の制御下、SLM移動部27によりズーム光学系2の照明光(照明形状)に対して2次元平面内において移動可能に構成した点を除き第1の実施形態に係る露光装置と同一の構成を有する。従って、第3の実施形態の説明においては、第1及び第2の実施形態にかかる露光装置の構成と同一の構成の詳細な説明は省略し、第1及び第2の実施形態に係る露光装置の構成と同一の構成には第1及び第2の実施形態で用いたのと同一の符号を用いて説明を行う。
【0043】
図14(a)は、制御部20の制御によりズーム光学系2を制御して照明形状を変更すると共に、SLM移動部27を制御してズーム光学系2からの断面形状140の照明光が領域C、領域Dに入射するように空間光変調ユニットSM2を移動させた状態を示す図である。なお、空間光変調ユニットSM2の領域C、領域Dは、それぞれ図11(a)に示すように入射した光の偏光状態を変換する。
【0044】
ここで空間光変調ユニットSM2を通過した光が照明光学系の瞳位置において、図14(b)に示す4極の照明形状を形成するように空間光変調ユニットSM2が制御されている場合には、この図に示すように、領域Dに入射し領域Dにおいて偏光状態が変換された照明光により、照明光学系の瞳位置において光分布形状143,144を形成し、領域Cに入射し領域Cにおいて偏光状態が変換された照明光により、照明光学系の瞳位置において光分布形状145,146を形成する。従って、照明光の光量を損失することなく、照明光学系の瞳位置において所定の偏光状態を有する4極の照明形状を形成することができる。なお、断面形状140の照明光の領域C及び領域Dにおける入射位置、即ち照明光により照明する領域Cと領域Dの面積比を変更することにより、光分布形状143,144と光分布形状145,146における光量を変更することができる。
【0045】
図15(a)は、制御部20の制御によりズーム光学系2を制御して照明形状を変更すると共に、SLM移動部27を制御してズーム光学系2からの断面形状150の照明光が領域A、領域Bに入射するように空間光変調ユニットSM2を移動させた状態を示す図である。なお、空間光変調ユニットSM2の領域A、領域Bは、それぞれ図11(a)に示すように入射した光の偏光状態を変換する。
【0046】
ここで空間光変調ユニットSM2を通過した光が照明光学系の瞳位置において、図15(b)に示す4極の照明形状を形成するように空間光変調ユニットSM2が制御されている場合には、この図に示すように、領域Aに入射し領域Aにおいて偏光状態が変換された照明光により、照明光学系の瞳位置において光分布形状153,154を形成し、領域Bに入射し領域Bにおいて偏光状態が変換された照明光により、照明光学系の瞳位置において光分布形状155,156を形成する。従って、照明光の光量を損失することなく、照明光学系の瞳位置において所定の偏光状態を有する4極の照明形状を形成することができる。なお、この場合においても、照明光により照明する領域の面積比を変更することにより光分布形状153,154と光分布形状155,156における光量を変更することができる。
【0047】
図16(a)は、制御部20の制御によりズーム光学系2を制御して照明形状を変更すると共に、SLM移動部27を制御してズーム光学系2からの断面形状160の照明光が領域Cに入射するように空間光変調ユニットSM2を移動させた状態を示す図である。なお、空間光変調ユニットSM2の領域Cは、図11(a)に示すように入射した光の偏光状態を変換する。
【0048】
ここで空間光変調ユニットSM2を通過した光が照明光学系の瞳位置において、図16(b)に示す2極の照明形状を形成するように空間光変調ユニットSM2が制御されている場合には、この図に示すように、領域Cに入射し領域Cにおいて偏光状態が変換された照明光により、照明光学系の瞳位置において光分布形状162,163を形成する。従って、照明光の光量を損失することなく、照明光学系の瞳位置において所定の偏光状態を有する2極の照明形状を形成することができる。なお、断面形状160を有する照明光により照明する領域を領域A〜Cの何れかの領域に変更することにより、照明光学系の瞳位置において形成される光分布形状の偏光状態を、照明する領域に応じた偏光状態にすることができる。
【0049】
図17(a)は、制御部20の制御によりズーム光学系2を制御して照明形状を変更すると共に、SLM移動部27を制御してズーム光学系2からの断面形状170の照明光が領域A〜Dに入射するように空間光変調ユニットSM2を移動させた状態を示す図である。なお、空間光変調ユニットSM2の領域A〜Dは、それぞれ図11(a)に示すように入射した光の偏光状態を変換する。
【0050】
ここで空間光変調ユニットSM2を通過した光が照明光学系の瞳位置において、図17(b)に示す円形の照明形状を形成するように空間光変調ユニットSM2が制御されている場合には、この図に示すように、領域A〜Dに入射し、それぞれの領域において偏光状態が変換された照明光により、照明光学系の瞳位置において円形の光分布形状171を形成する。従って、照明光の光量を損失することなく、照明光学系の瞳位置において所定の偏光状態(非偏光)を有する円形の照明形状を形成することができる。
【0051】
図18(a)は、制御部20の制御によりズーム光学系2を制御して照明形状を変更すると共に、SLM移動部27を制御してズーム光学系2からの断面形状180の照明光が領域180eに入射するように空間光変調ユニットSM2を移動させた状態を示す図である。なお、空間光変調ユニットSM2は、領域180a〜180i(9つの領域)に分割されており、領域180a,180f,180iは、図の上下方向に偏光方向を有する直線偏光の光の偏光方向を反時計回りに45度回転させた光に変換し、領域180b,180hは、図の上下方向に偏光方向を有する直線偏光の光の偏光方向を90度回転させた光に変換し、領域180c,180d,180gは、図の上下方向に偏光方向を有する直線偏光の光の偏光方向を時計回りに45度回転させた光に変換し、領域180eは、図の上下方向に偏光方向を有する直線偏光の光の偏光状態を変換しないで通過させる。
【0052】
ここで空間光変調ユニットSM2を通過した光が照明光学系の瞳位置において、図18(b)に示す2極の照明形状を形成するように空間光変調ユニットSM2が制御されている場合には、この図に示すように、領域180eした照明光により、照明光学系の瞳位置において光分布形状183,184を形成する。従って、照明光の光量を損失することなく、照明光学系の瞳位置において所定の偏光状態を有する2極の照明形状を形成することができる。なお、断面形状180を有する照明光により照明する領域を180a〜180iの何れかの領域に変更することにより、照明光学系の瞳位置において形成される光分布形状の偏光状態を、照明する領域に応じた偏光状態にすることができる。
【0053】
図19(a)は、制御部20の制御によりズーム光学系2を制御して照明形状を変更すると共に、SLM移動部27を制御してズーム光学系2からの断面形状190の照明光が領域180b,180e,180hに入射するように空間光変調ユニットSM2を移動させた状態を示す図である。なお、空間光変調ユニットSM2の領域180b,180e,180hは、図18(a)に示すように、入射した光の偏光状態を変換する。
【0054】
ここで空間光変調ユニットSM2を通過した光が照明光学系の瞳位置において、図19(b)に示す4極の照明形状を形成するように空間光変調ユニットSM2が制御されている場合には、この図に示すように、領域180b,180hに入射した照明光により、照明光学系の瞳位置において光分布形状193,194を形成し、領域180eに入射した照明光により、照明光学系の瞳位置において光分布形状195,196を形成する。この場合には、光分布形状195,196の光量は、光分布形状193,194の光量の略1/2となるが、空間光変調ユニットSM2に入射する照明光の断面形状190の縦方向の長さを領域180eの縦方向の長さの2倍となるように、ズーム光学系2により整形し、断面形状190の照明光が領域180b,180e,180hに入射するように空間光変調ユニットSM2を移動させることにより、光分布形状195,196の光量と光分布形状193,194の光量を等しくすることができる。従って、照明光学系の瞳位置において所定の偏光状態を有する4極の照明形状を形成することができる。
【0055】
図20(a)は、制御部20の制御によりズーム光学系2を制御して照明形状を変更すると共に、SLM移動部27を制御してズーム光学系2からの断面形状200の照明光が領域180b,180e,180hに入射するように空間光変調ユニットSM2を移動させた状態を示す図である。なお、空間光変調ユニットSM2の領域180b,180e,180hは、図18(a)に示すように、入射した光の偏光状態を変換する。
【0056】
ここで空間光変調ユニットSM2を通過した光が照明光学系の瞳位置において、図20(b)に示す2極の照明形状を形成するように空間光変調ユニットSM2が設定されている場合には、この図に示すように、領域180b,180hに入射した照明光により、照明光学系の瞳位置において光分布形状201,202を形成し、領域180eに入射した光は、照明光学系の照明瞳外に反射されて、マスクを照明するために用いられない。従って、照明光学系の瞳位置において所定の偏光状態を有する2極の照明形状を形成することができる。
【0057】
図21(a)は、制御部20の制御によりズーム光学系2を制御して照明形状を変更すると共に、SLM移動部27を制御してズーム光学系2からの断面形状210の照明光が領域180a〜180iに入射するように空間光変調ユニットSM2を移動させた状態を示す図である。なお、空間光変調ユニットSM2の領域180a〜180iは、図18(a)に示すように、入射した光の偏光状態を変換する。
【0058】
ここで空間光変調ユニットSM2を通過した光が照明光学系の瞳位置において、図21(b)に示す円形の照明形状を形成するように空間光変調ユニットSM2が制御されている場合には、この図に示すように、領域180a〜180iに入射した照明光により、照明光学系の瞳位置において円形の光分布形状211を形成する。従って、照明光の光量を損失することなく、照明光学系の瞳位置において所定の偏光状態(非変更)を有する円形の照明形状を形成することができる。
【0059】
本実施の形態に係る露光装置によれば、照明光学系の瞳位置又は該瞳位置と光学的に共役な位置で所望の偏光状態を有する光分布形状(光強度分布)を形成することができるため、高解像度でかつスループット良く、マスクのパターンをウエハ上に露光することができる。また、空間光変調ユニットSM2において、空間光変調器S1の各要素ミラー上に所望の偏光制御作用を有する偏光制御素子S3が位置するように、製造時に精密に位置決めされており、照明光に対して空間光変調器S1と偏光制御素子S3とを一体として移動させて、照明光の入射位置を変更しているため、照明光学系の瞳位置において所望の偏光状態を有する光分布形状(光強度分布)を精密に形成することができる。
【0060】
次に、図22を参照して、本発明の第4の実施形態に係る露光装置について説明する。なお、第4の実施形態に係る露光装置は、第3の実施形態に係る露光装置において、SLM移動部27により空間光変調ユニットSM2を移動させることにより、ズーム光学系2により整形された断面形状を有する照明光の入射位置を変更していたのを、空間光変調ユニットSM2を固定した状態で、1組の光路折曲げミラーを用いることにより、空間光変調ユニットSM2に対する照明光の入射位置を変更するように構成した点を除き第3の実施形態に係る露光装置と同一の構成を有する。従って、第4の実施形態の説明においては、第1〜3の実施形態にかかる露光装置の構成と同一の構成の詳細な説明は省略し、第1〜3の実施形態に係る露光装置の構成と同一の構成には第1〜3の実施形態で用いたのと同一の符号を用いて説明を行う。
【0061】
図22においては、空間光変調ユニットSM2が固設されており、且つ光源1からの光の空間光変調ユニットSM2上での照射領域の位置を変更するための1組の光路折曲げミラー50,51を備える。1組の光路折曲げミラー50,51の動作としては、一方の折曲げミラーをZ軸廻り(θz)に傾斜させ、他方の折曲げミラーをθzと直交する軸廻りに傾斜させる第1方式と、一方の折曲げミラーをZ軸廻り(θz)と当該θzと直交する軸廻りとの2自由度で傾斜可能に設け、他方の折曲げミラーを上記2軸廻りの2自由度で傾斜可能に設ける第2方式が存在する。第2方式の場合には、一方の光路折曲げミラーを動作させることに起因する、空間光変調ユニットSM2へ入射する光の方向の変動を、他方の光路折曲げミラーの動作で補償することができる。
【0062】
なお、上述の各実施形態においては、空間光変調ユニットを空間光変調器と、空間光変調器上に設けられた偏光制御素子とにより構成していたが、図23(a)に示すように、空間光変調器S1の各要素ミラーSE1の各々に、偏光制御素子としての偏光制御層52を設けるようにしても良い。各要素ミラーSE1は、図23(b)に示すように、2自由度で傾斜可能なミラー載置部53と、ミラー載置部表面に形成された金属反射膜54と、誘電体多層膜で形成された偏光制御層52とを備えている。各要素ミラーSE1は、基板上に支柱55により支持され、駆動電極56により駆動される。この変形例においては、偏光制御層としての誘電体多層膜が各要素ミラーSE1の金属反射膜54に対するp偏光成分とs偏光成分との間に所定の位相差を与えている。これにより、各要素ミラーSE1で反射する光の偏光状態を変更することができる。なお、金属反射膜上の誘電体多層膜によって偏光状態を変化させるものは、例えば特公昭61−38443号公報に開示されている。
【0063】
なお、上記変形例では、偏光制御層として誘電体多層膜を用いたが、それに限定されることなく、各要素ミラー上に複屈折性・旋光性を有する光学材料を設けたものであっても良い。
【0064】
また、上述の実施形態においては、空間光変調ユニットが空間光変調器と偏光制御素子を備えているが、空間光変調ユニットが偏光制御素子を介して空間光変調器に照明光を入射させるためのプリズムを備えていてもよい。この場合には、第1の実施形態に係る露光装置の空間光変調ユニットSM1の位置にミラーを設け、ミラーとアフォーカルレンズ5の間に、プリズム、偏光制御素子及び空間光変調器を有する空間光変調ユニットSM3を配置する。図24は、空間光変調ユニットSM3の構成を示す図である。空間光変調ユニットSM3は、図24に示すように、プリズムP1、プリズムP1に一体的に取り付けられた偏光制御素子S2及び空間光変調器S1を備えている。プリズムP1は、直方体のうち1つの側面がV字状の楔形に凹んだ形状を有する。即ち、プリズムP1では直方体のうちの1つの側面が、内側に窪むようにして鈍角をなして交差する2つの平面PS1、PS2によって構成されている。この2つの平面PS1、PS2の内面は第1及び第2の反射面R11、R12として機能する。
【0065】
プリズムP1の第1の反射面R11は、(光軸AXと平行に)入射した光を空間光変調器S1方向へ反射する。空間光変調器S1は、第1の反射面R11と第2の反射面R12との間の光路中に配置され、第1の反射面R11で反射した光を第2の反射面R12方向へ反射する。プリズムP1の第2の反射面R12は、空間光変調器S1で反射した光を反射してアフォーカルレンズ5側に射出する。
【0066】
ここで、プリズムP1に代えて、照明光を空間光変調器S1方向に反射する第1ミラー(第1偏向ミラー)及び空間光変調器S1により反射された照明光をアフォーカルレンズ5側に反射する第2ミラー(第2偏向ミラー)を設けても良い。
【0067】
なお、上述の実施形態にかかる露光装置においては、二次元的に配列されて個別に制御される複数の反射要素を有する空間光変調器として、二次元的に配列された反射面の傾きを個別に制御可能な空間光変調器を用いているが、このような空間光変調器としては、たとえば特表平10−503300号公報及びこれに対応する欧州特許公開第779530号公報、特開2004−78136号公報及びこれに対応する米国特許第6,900,915号公報、特表2006−524349号公報及びこれに対応する米国特許第7,095,546号公報、並びに特開2006−113437号公報に開示される空間光変調器を挙げることができる。これらの空間光変調器では、空間光変調器の個別の反射面を介したそれぞれの光が所定の角度で分布形成光学系に入射し、複数の光学要素への制御信号に応じた所定の光強度分布を照明瞳面において形成することができる。
【0068】
また、空間光変調器としては、たとえば二次元的に配列されて反射面の高さを個別に制御可能な空間光変調器を用いることもできる。このような空間光変調器としては、たとえば特開平6−281869号公報及びこれに対応する米国特許第5,312,513号公報、並びに特表2004−520618号公報及びこれに対応する米国特許第6,885,493号公報の図1dに開示される空間光変調器を用いることができる。これらの空間光変調器では、二次元的な高さ分布を形成することで回折面と同様の作用を入射光に与えることができる。
【0069】
なお、上述した二次元的に配列された複数の反射面を持つ空間光変調器を、たとえば特表2006−513442号公報及びこれに対応する米国特許第6,891,655号公報や特表2005−524112号公報及びこれに対応する米国特許公開第2005/0095749号公報の開示に従って変形しても良い。
【0070】
また、上述の実施形態において、空間光変調器として種々の回折パターン情報に基づいて、種々の回折パターンを表示させる透過型又は反射型の液晶素子を用いても良い。
【0071】
また、上述の実施形態において、偏光制御素子は、1枚の複屈折性光学材料により形成された偏光部材(典型的には波長板、旋光子等)をエッチング等で加工し空間光変調器の個別の要素ミラー毎、又は複数の要素ミラー毎に異なる厚さとすることにより形成しても良く、また空間光変調器の個別の要素ミラー毎、又は複数の要素ミラー毎に、厚みの異なる複屈折性光学材料で形成された偏光部材を準備し、これら複数の偏光部材を2次元アレー状に並べて形成しても良い。
【0072】
また、上述の実施形態にかかる露光装置においては、レーザ光源としてArFエキシマレーザ光源又はKrFエキシマレーザ光源を用いているが、Fレーザ光源を用いてもよい。
【0073】
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。図25は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。この図に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウエハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、各実施形態の投影露光装置を用い、レチクルRに形成されたパターンをウエハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウエハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。その後、ステップS46によってウエハW表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウエハW表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。
【0074】
ここで、レジストパターンとは、各実施形態の投影露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウエハW表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウエハW表面のエッチング又は金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。なお、ステップS44では、各実施形態の投影露光装置は、フォトレジストが塗布されたウエハWを感光性基板つまりプレートPとしてパターンの転写を行う。
【0075】
図26は、液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。この図に示すように、液晶デバイスの製造工程では、パターン形成工程(ステップS50)、カラーフィルタ形成工程(ステップS52)、セル組立工程(ステップS54)及びモジュール組立工程(ステップS56)を順次行う。
【0076】
ステップS50のパターン形成工程では、プレートPとしてフォトレジストが塗布されたガラス基板上に、各実施形態の投影露光装置を用いて回路パターン及び電極パターン等の所定のパターンを形成する。このパターン形成工程には、各実施形態の投影露光装置を用いてフォトレジスト層にパターンを転写する露光工程と、パターンが転写されたプレートPの現像、つまりガラス基板上のフォトレジスト層の現像を行い、パターンに対応する形状のフォトレジスト層を生成する現像工程と、この現像されたフォトレジスト層を介してガラス基板の表面を加工する加工工程とが含まれている。
【0077】
ステップS52のカラーフィルタ形成工程では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応する3つのドットの組をマトリクス状に多数配列するか、又はR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を水平走査方向に複数配列したカラーフィルタを形成する。
【0078】
ステップS54のセル組立工程では、ステップS50によって所定パターンが形成されたガラス基板と、ステップS52によって形成されたカラーフィルタとを用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。具体的には、例えばガラス基板とカラーフィルタとの間に液晶を注入することで液晶パネルを形成する。
【0079】
ステップS56のモジュール組立工程では、ステップS54によって組み立てられた液晶パネルに対し、この液晶パネルの表示動作を行わせる電気回路及びバックライト等の各種部品を取り付ける。
【0080】
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第1の実施形態に係る露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る空間光変調ユニットの構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る空間光変調器の構成を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る空間光変調ユニットの構成を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る照明光学系の瞳位置における偏光分布を示す図である。
【図6】第1の実施形態にかかる照明光学系が備える円錐アキシコン系の概略構成を示す図である。
【図7】第1の実施形態にかかる輪帯照明において形成される二次光源に対する円錐アキシコン系の作用を説明するための図である。
【図8】第1の実施形態にかかる照明光学系が備える第1シリンドリカルレンズ対及び第2シリンドリカルレンズ対の概略構成を示す図である。
【図9】第1の実施形態にかかる輪帯照明において形成される二次光源に対するズームレンズの作用を説明するための図である。
【図10】第2の実施形態に係る空間光変調ユニットの構成を示す図である。
【図11】第2の実施形態に係る空間光変調ユニットにおける偏光状態の変換作用及び照明光学系の瞳位置における偏光分布を示す図である。
【図12】第2の実施形態に係る照明光学系の瞳位置における光分布形状を示す図である。
【図13】第3の実施形態に係る露光装置の概略構成を示す図である。
【図14】第3の実施形態に係る空間光変調ユニットにより形成される照明光学系の瞳位置における光分布形状を示す図である。
【図15】第3の実施形態に係る空間光変調ユニットにより形成される照明光学系の瞳位置における光分布形状を示す図である。
【図16】第3の実施形態に係る空間光変調ユニットにより形成される照明光学系の瞳位置における光分布形状を示す図である。
【図17】第3の実施形態に係る空間光変調ユニットにより形成される照明光学系の瞳位置における光分布形状を示す図である。
【図18】第3の実施形態に係る空間光変調ユニットにより形成される照明光学系の瞳位置における光分布形状を示す図である。
【図19】第3の実施形態に係る空間光変調ユニットにより形成される照明光学系の瞳位置における光分布形状を示す図である。
【図20】第3の実施形態に係る空間光変調ユニットにより形成される照明光学系の瞳位置における光分布形状を示す図である。
【図21】第3の実施形態に係る空間光変調ユニットにより形成される照明光学系の瞳位置における光分布形状を示す図である。
【図22】第4の実施形態に係る露光装置の概略構成を示す図である。
【図23】実施形態に係る空間光変調ユニットの変形例を示す図である。
【図24】実施形態に係る空間光変調ユニットの変形例を示す図である。
【図25】実施形態にかかるマイクロデバイスとしての半導体デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
【図26】実施形態にかかるマイクロデバイスとしての液晶表示素子の製造方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
1…レーザ光源、2…ビームエキスパンダ、3,8,14…ビームスプリッタ、5…アフォーカルレンズ、7…ズームレンズ、9…CCD撮像部、10…マイクロレンズアレイ、12…開口絞り、17a…コンデンサレンズ、17b…結像光学系、19…反射鏡、20…制御部、22…記憶部、26…SLM駆動部、27…SLM移動部、SM1,SM2,SM3…空間光変調ユニット、S1…空間光変調器、S2,S3…偏光制御素子、PL…投影光学系、MB…マスクブラインド、M…マスク、W…ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元的に配列された複数の素子をそれぞれ独立に制御可能であり、前記複数の素子のそれぞれに入射した光に対して空間的な変調を与える空間光変調器と、
前記複数の素子のそれぞれに対応させて形成された偏光制御素子と
を備えることを特徴とする空間光変調ユニット。
【請求項2】
二次元的に配列された複数の素子をそれぞれ独立に制御可能であり、前記複数の素子のそれぞれに入射した光に対して空間的な変調を与える空間光変調器と、
前記複数の素子が二次元的に配列された素子配列領域を複数領域に分割したとき、前記複数領域のそれぞれに対応させて形成される偏光制御素子と
を備えることを特徴とする空間光変調ユニット。
【請求項3】
前記偏光制御素子は1つの偏光部材から形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空間光変調ユニット。
【請求項4】
前記偏光制御素子は複数の偏光部材から形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空間光変調ユニット。
【請求項5】
前記複数の素子は、それぞれ反射面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の空間光変調ユニット。
【請求項6】
光源から供給される照明光によって被照射面を照明する照明光学系であって、
前記照明光学系の光路内に配置され、前記照明光学系の瞳位置又は該瞳位置と光学的に共役な位置に所望の偏光状態であり、かつ所望の光強度分布を形成する請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の空間光変調ユニット
を備えることを特徴とする照明光学系。
【請求項7】
前記空間光変調ユニットに入射する前記照明光を所望の断面形状に整形する光整形部材を備えることを特徴とする請求項6記載の照明光学系。
【請求項8】
前記光整形部材により整形され前記空間光変調ユニットに入射する前記照明光の位置と前記空間光変調ユニットの位置を相対的に変更する変更手段を備えることを特徴とする請求項7記載の照明光学系。
【請求項9】
感光性基板上に所定のパターンを転写する露光装置において、
被照射面に配置された前記パターンを照明するための請求項6乃至請求項8の何れか一項に記載の照明光学系を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項10】
請求項9記載の露光装置を用いて所定のパターンを感光性基板上に露光する露光工程と、
前記パターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記パターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程と
を含むことを特徴とするデバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−111223(P2009−111223A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283034(P2007−283034)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】