説明

空間冗長性を使用して無線信号の受信を改善する方法及び装置

1つ以上のサービスのデータは、スケーラブルチャンネル符号を使用してエンコードされ、少なくともMの送信信号の受信機による受信が受信機によるデータの再生を可能にするように、Nの送信機での送信のために分割される(ただしM<N)。換言すると、所定の地理的領域での1つ以上の特定の送信信号の受信が保証されていなくても、少なくともMの他の送信信号の受信により、サービスの受信が可能になる。従って、悪い受信の領域又は受信のない領域の存在にもかかわらず、全地理的領域を通じて1つ以上のサービスが提供可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2005年3月29日に出願された米国仮出願第60/665,995号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、概して通信システムに関し、特に無線システム(例えば、地上波放送、セルラ、Wi−Fi(Wireless−Fidelity)、衛星等)に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの無線通信システムでは、主要な問題は、受信機が全てではないがいくつかのチャンネル(又は信号)の送信を受信することができないことがある点である。例えば、米国の地上波放送テレビ(TV)システムでは、都市は、典型的には地理的に離れた5〜15の地上波送信機を有し得る。各地上波送信機は、特定のチャンネルでコンテンツを放送している。しかし、TVセットの地理的位置のため、TVセットは所定の地理的領域では放送されているチャンネルのサブセットしか受信できないことがある。実際に、ATSC−DTV(Advanced Television Systems Committee−Digital Television)システム(例えば、United States Advanced Television Systems Committee,“ATSC Digital Television Standard”,Document A/53,September 16,1995及び“Guide to the Use of the ATSC Digital Television Standard”,Document A/54,October 4,1995参照)のような現代のデジタル通信システムでは、所定の領域の受信地域がTVセットの位置に応じて変化することは周知である。このことは、更に図1に示されている。地理的領域は、それぞれチャンネル1、2、3及び4に関連するコンテンツを放送する地上波ATSC−DTV送信タワーT、T、T及びTを有する。(この例の目的で、各送信タワーは単一チャンネルの番組のみを放送していることを仮定する。)この地理的領域では、2つのTVセット(TVセット10及びTVセット20)が配置されている。図1で点線の矢印により示すように、TVセット10は利用可能なチャンネルのサブセット(すなわち、チャンネル2、3及び4)のみを受信することができる。同様に、図1の点線の矢印は、TVセット20がチャンネル1、2及び4のみを受信することができることを示している。
【0004】
今日では、この問題を軽減することができる対策は存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実際に、この問題も無線ネットワークでの他のサービスの提供に影響を及ぼす。図示のように、この場合も同様にATSC−DTVシステムについて検討する。今日では、ATSC−DTVシステムは、MPEG2圧縮HDTV(高品位TV)信号の送信に約19Mbit/sec(百万ビット/秒)を提供する(MPEG2はMoving Picture Expert Group (MPEG)−2 Systems Standard (ISO/IEC 13818−1)を示す)。従って、約4〜6の標準品位TVチャンネルが混雑なしに単一の物理送信チャンネル(PTC:physical transmission channel)で安全にサポートされ得る。更に、複数の更なる低帯域の従来にはないサービス又は補助サービス(天気予報、株価指数、ヘッドラインニュース、ホームショッピング等)を提供するために、十分な帯域がこのトランスポートストリームに残っている。実際に、MPEG2エンコードの向上及び高度のコーデック(コーダ/デコーダ)技術(H.264又はVC1等)の導入により、更なる予備容量が、補助サービスを提供する際に使用されるPTCで利用可能になっている。
【0006】
しかし、前記の問題は、所定の地理的領域でこれらの補助サービスの保証されたサービスクラスの提供を妨げる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の予備容量を集約し、所定の地理的領域で信号受信地域の問題に対処する新しい密着したサービス(coherent service)を提供する機会が存在するに気付いた。特に、本発明の原理によれば、1つ以上のサービスのデータは、スケーラブルチャンネル符号を使用してエンコードされ、少なくともMの送信信号の受信機による受信が受信機によるデータの再生を可能にするように、Nの送信機での送信のために分割される(ただしM<N)。換言すると、所定の地理的領域での1つ以上の特定の送信信号の受信が保証されていなくても、少なくともMの他の送信信号の受信により、サービスの受信が可能になる。従って、悪い受信の領域又は受信のない領域の存在にもかかわらず、全地理的領域を通じて1つ以上のサービスが提供可能になる。
【0008】
本発明の実施例では、TVプロバイダのATSC−DTV送信機は、主チャンネルと補助チャンネルとを有するデジタル多重送信を送信する。主チャンネルは、TVプロバイダにより提供される1つ以上の高品位TV(HDTV:high definition TV)チャンネルを有するが、補助チャンネルは、ファウンテン符号化データストリームの一部(fountain−coded data stream)を有する。ファウンテン符号化データストリームの他の部分は、他のATSC−DTV送信機により送信される。
【0009】
本発明の他の実施例では、ATSC受信機はMのチューナ(ただしM>1)とファウンテンデコーダとを有する。各チューナは、異なるPTCに同調し、これからファウンテン符号化データストリームを再生する。Mの再生されたファウンテン符号化データストリームは、ファウンテンデコーダに適用され、1つ以上のサービスを表すデータストリームを提供する。
【0010】
本発明の他の実施例では、番組コンテンツは、少なくとも1つの搬送波を有するデータ伝達信号に具現され、データ伝達信号は複数のパケットを表し、これらのパケットのうち少なくともいくつかはファウンテン符号化データストリームの一部を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の概念を除いて、図面に示す要素は周知であり、詳細には説明しない。また、テレビ放送及び受信機に精通していることを想定し、ここでは詳細に説明しない。例えば、本発明の概念を除いて、NTSC(National Television Systems Committee)、PAL(Phase Alternation Lines)、SECAM(SEquential Couleur Avec Memoire)及びATSC(Advanced Television Systems Committee)のようなTV標準の現在提案されている勧告に精通していることを想定する。同様に、本発明の概念を除いて、8−VSB(eight−level vestigial sideband)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、スケーラブルチャンネル符号化(例えばファウンテン符号化/デコード)のような送信概念、及びRF(radio−frequency)フロントエンドのような受信機の構成要素、又は低雑音ブロック、チューナ、復調器、相関器、リーク積分器(leak integrator)、平方器(squarer)のような受信機の部分が想定される。同様に、トランスポートビットストリームを生成するフォーマット及びエンコード方法(MPEG(Moving Picture Expert Group)−2システム標準(ISO/IEC 13818−1)等)は周知であり、ここでは説明しない。本発明の概念は、従来の番組技術を使用して実装されてもよいため、ここでは説明しない点に留意すべきである。最後に、図面の同様の番号は同様の要素を表す。
【0012】
前述のように、本発明の概念は、スケーラブルチャンネル符号化の用途に関する。スケーラブルチャンネル符号化の例は、ファウンテン符号である。図2を参照すると、ファウンテン符号化システムの概念図が図示されている。本発明の概念を除いて、ファウンテン符号は当該技術分野において既知である。ファウンテン符号は、LT符号(例えば、“LT Codes”,Proceedings of ACM Symposium on Foundations of computer Science,2002を参照)と、Raptor符号(例えば、“Raptor Codes”,Amin Shokrollahi,Published Report−Digital Fountain Inc.and Laboratorie d’Algorithmique,EPLF,Lausanne,Switzerland,January 13,2004参照)とを有する。ファウンテン符号についての更なる情報は“http://www.digitalfountain.com/”でも見つかり得る。
【0013】
まず、図2の上部を参照すると、Nの長さのファイルはk=N/Lの入力パケットに分割される。ただし、Lは各入力パケット(ここでは入力シンボルとも呼ばれる)のペイロードである。ここで使用される“パケット”という用語は便宜的なものであり、すなわち、パケットは当該技術分野において既知のように、アドレス情報、誤り検出/訂正データ(例えばパリティ及び/又は巡回冗長検査(CRC)符号等)をも有し、ここでは更に説明されない点に留意すべきである。例示的な一式のkの入力パケット39は、ファウンテンコーダ40に適用される。後者は、ランダムに出力パケット(ここでは出力シンボルとも呼ばれる)を生成し、ファウンテン符号化出力パケットストリーム41を作る。例えば、ファウンテンコーダ40の各出力パケットは、独立して、いくつかの入力パケットの排他的論理和(XOR)としてランダムに生成される。従って、エンコード処理は、出力シンボルを入力シンボルに接続するエンコードグラフ(encoding graph)(図示せず)を規定する。出力パケットストリーム41の出力パケットのいくつかは送信で損失又は破損されることがあるが、ファウンテン符号化データを使用する利点は、何らかのJの出力パケットの再生が元の一式のkの入力パケットの再生を可能にするという点にある。これは、図2の下部に示されている。ファウンテンデコーダ45は、出力パケットストリーム41の何らかの出力パケット44を再生する。Jの出力パケットが受信されるとすぐに、ファウンテンデコーダ45はこれらのパケットをデコードし、元の一式のkの入力パケット39を再生する。この例では、ファウンテンデコーダ45が前記のエンコードグラフを有する(すなわち、ファウンテンデコーダ45は何の入力シンボルが特定の出力シンボルを生成するために使用されるかを認識している)ことを仮定している。J>kであるが、有利には、Jの値はkの値に非常に近くてもよい。例えば、J=1.05(k)である。
【0014】
前述のように、所定の地理的領域で信号受信地域の問題に対処する新しい密着したサービス(coherent service)を提供することが可能であることに気付いた。実際のサービスの種類(天候、株式データ等)は本発明の概念に無関係である点に留意すべきである。特に、本発明の原理によれば、1つ以上のサービスのデータは、スケーラブルチャンネル符号を使用してエンコードされ、少なくともMの送信信号の受信機による受信が受信機によるデータの再生を可能にするように、Nの送信機での送信のために分割される(ただしM<N)。換言すると、所定の地理的領域での何らかの特定の送信信号の受信が保証されていなくても、少なくともMの他の送信信号の受信により、サービスの受信が可能になる。従って、悪い受信の領域又は受信のない領域の存在にもかかわらず、全地理的領域を通じて1つ以上のサービスが提供可能になる。
【0015】
前記から、無線システムは、地理的領域の改善した受信地域を提供し得る。都市にNの送信機が存在することを仮定すると、(N−k、k>0)が領域内の受信機の90%以上により確実に受信される可能性がある。例えば、図1のATSC−DTVシステムに関して、プロバイダが何らかの予備容量を共有することに合意すると、この予備容量は、スケーラブルチャンネル符号を使用してエンコードされた前記のサービスに割り当てられる。例えば、3Mbit/secの予備容量が補助チャンネルとして使用されるのにPTCで利用可能である場合、各局は3Mbit/sec(これが一定ビットレートであるか平均で1Mbit/secの可変ビットレートであるかは個々のチャンネルに依存する)の一部又は全部を3つの他の局(T、T及びT)で相互に共有することを選択してもよい。PTCの予備容量は、例えば必要な量の予備容量がPTCで生成されるように主チャンネルの数を選択して、主チャンネルの送信を制限することにより生成され得る点に留意すべきである。極端な例は、唯一の主チャンネル(すなわち、信号デジタルATSC−DTVチャンネル)の送信である。代替として、PTCで予備容量を生成するために、MPEG2エンコードの向上及び高度のコーデック(コーダ/デコーダ)技術(AVC(Advanced Video Coding)としても知られるH.264又はMPEG−4 Part10若しくはVC1等)の導入が利用され得る。
【0016】
本発明の原理によるATSC−DTV地上波放送の例示的な構成を図3に示す。図3に示す各送信タワーが本発明の原理(以下に説明する)に従って信号を送信することを除いて、この図面は図1と同様である。この例では、送信機100−1は、信号111−1を送信する送信タワーTに関連し、送信機100−2は、信号111−2を送信する送信タワーTに関連し、送信機100−3は、信号111−3を送信する送信タワーTに関連し、送信機100−4は、信号111−4を送信する送信タワーTに関連する。同様に、TVセット200及び205により示されている受信機も、本発明の原理に従って、1つ以上のサービスのロバスト受信を提供するために送信信号を利用するように適合される。図3の点線の矢印からわかるように、TVセット200は、利用可能なチャンネルのサブセット(すなわち、チャンネル2、3及び4)のみを受信することができる。チャンネル1の受信は悪すぎる又は存在しない。同様に、図3の点線の矢印は、TVセット205がコンテンツの有効な視聴をするためにチャンネル1、2及び4のみを受信することができることを示している。TVセット205はTVセット200(以下に説明する)と同様であり、ここでは更に説明しない。この例の目的で、各送信タワーは、例示的に特定のTVプロバイダに関連しており、TVプロバイダは単一チャンネルで番組を送信する。例えば、送信タワーTはチャンネル1.1の番組を放送し、送信タワーTはチャンネル2.1の番組を放送し、送信タワーTはチャンネル3.1の番組を放送し、送信タワーTはチャンネル4.1の番組を放送する。各チャンネル番号は、当該技術分野において既知のように、ATSCメジャー−マイナーチャンネル番号フォーマットを使用している。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、送信タワーTは1つより多くのチャンネル(例えばチャンネル1.1、1.2等)の番組を放送してもよい。同様に、送信タワーは特定のTVプロバイダに関連しなくてもよい。
【0017】
次に図4を参照すると、送信構成の例示的な実施例が図示されている。送信構成は、ファウンテンコーダ140(スケーラブルチャンネル符号化の例)と、デマルチプレクサ(demux)145と、送信機100−1、100−2、100−3及び100−4とを有する。図4に示す様々な要素は地理的に同じ場所に配置されなくてもよい点に留意すべきである。本発明の概念を除いて、送信機100−1、100−2、100−3及び100−4は、当該技術分野において既知のように、関連する送信タワーを介して送信するそれぞれのATSC−DTV信号を形成する。データストリーム139はファウンテンコーダ140に適用される。データストリーム139は1つ以上のサービスのデータを表す。図3のATSC−DTVシステムに関して、HDTV信号の送信である主サービスに対して、これは補助サービスと呼ばれるが、本発明はこれに限定されない。ファウンテンコーダ140は、適用されたデータをエンコードし、ファウンテン符号化ビットストリーム141をデマルチプレクサ145に提供する。後者は、4つの送信機にファウンテン符号化データストリームを分割する。各送信機は、ファウンテン符号化データストリームの一部と、ATSC−DTV信号として送信する非ファウンテン符号化データ(例えば、番組ガイド及び1つ以上のHDTVチャンネル)を受信する。特に、送信機100−1は、ファウンテン符号化データ部分146−1と非ファウンテン符号化データ99−1とを受信し、これは信号111−1を介して送信タワーTを介して送信される。本発明の概念を除いて、信号111−1は物理送信チャンネル(PTC:physical transmission channel)1を表し、物理送信チャンネルは、当該技術分野において既知のように、適切な搬送周波数で伝達されるトランスポートストリーム又はデジタル多重送信である。同様に、送信機100−2は、ファウンテン符号化データ部分146−2と非ファウンテン符号化データ99−2を受信し、これは信号111−2を介して送信タワーTを介して送信される。送信機100−3は、ファウンテン符号化データ部分146−3と非ファウンテン符号化データ99−3を受信し、これは信号111−3を介して送信タワーTを介して送信される。送信機100−4は、ファウンテン符号化データ部分146−4と非ファウンテン符号化データ99−4を受信し、これは信号111−4を介して送信タワーTを介して送信される。
【0018】
この時点で図5を参照すると、図5は、図4の送信構成で使用される本発明の原理による例示的なフローチャートを示している。本発明の原理によれば、ステップ160において、1つ以上のサービスを表すデータがファウンテンエンコードされる。ステップ165において、ファウンテンエンコードされたデータは、Nの送信機(N>1)に分配され、これにより、各送信機がファウンテン符号化サービスの一部を受信する。最後にステップ170において、Nの送信機のそれぞれは、送信するトランスポートストリーム又はデジタル多重送信を形成する。トランスポートストリームはファウンテン符号化サービスのその部分を有する。従って、ファウンテン符号化サービスは、送信のためにNの送信機に分配される。本発明の概念はファウンテン符号化データの均一な分配に関して記載しているが(すなわち、部分が等しい)、本発明の概念はこれに限定されない。
【0019】
次に図6を参照すると、図3及び4の送信構成について、本発明の原理によるPTCの例示的なフォーマットが図示されている。各PTC(111−1、111−2、111−3及び111−4)は、少なくとも1つの搬送波(図示せず)を有するデータ伝達信号を表し、データ伝達信号は複数のパケットを表し、これらのパケットのうち少なくともいくつかはファウンテン符号化データストリームの一部を表す。特に、各PTCは、パケット70のストリームを表す。ATSC−DTVシステムについて、パケットのストリームは、少なくとも1つのMPG(Master Programming Guide)(G)パケット75と、少なくとも1つのコンテンツ(C)パケット80と、少なくとも1つの補助パケット(A)パケット90とを有する。本発明の概念を除いて、MPGは当該技術分野において既知である(例えば、“ATSC Standard:Program and System Information Protocol for Terrestrial Broadcast and Cable(Revision B)”,Doc.A/65B,Advance Television Systems Committeeを参照。従って、ここでは説明しない)。MPGはPTC毎にデータ又は情報を有する。各PTCに関連するデータは、変調フォーマット等と、特定のPTCの一部である番組チャンネルのそれぞれに関するデータとを有する。更に、本発明の原理によれば、MPGは、補助番組チャンネル情報を有し、補助番組チャンネル情報は、番組データと、サービスを伝達するパケットに関することを除いて各番組チャンネルにあるものと同様のPIDデータとを有する。各コンテンツパケット80は、パケット識別子(PID)とコンテンツ(ビデオ、オーディオ及び/又はデータ)とを有する。例えば、コンテンツは、特定の番組チャンネルのビデオ及び/又はオーディオに関してもよく、受信機300にダウンロードされる実行可能なプログラムを表すデータに関してもよい。本発明の原理によれば、補助パケット90は、ファウンテン符号化データの一部を表す。例えば、送信機100−1に関して、補助チャンネル90は、ファウンテン符号化データ部分146−1を伝達する。しかし、本発明はこれに限定されず、他の非ファウンテン符号化データも補助チャンネルを介して同様に伝達され得る。
【0020】
本発明の原理による例示的なTVセット200のハイレベルブロック図が図7に図示されている。TVセット200は、受信機300とディスプレイ220とを有する。例示的に、受信機300はATSC互換受信機である。受信機300はまたNTSC(National Television Systems Committee)互換でもよい(すなわち、TVセット200がNTSC放送又はATSC放送からのビデオコンテンツを表示することができるように、NTSC動作モード及びATSC動作モードを有する)点に留意すべきである。本発明の概念を記載する際に簡単にするため、ATSC動作モードのみがここでは記載される。受信機300は、(例えばアンテナ(図示せず)を介して)例えばビデオコンテンツを視聴するディスプレイ220に適用するHDTV(高品位TV)ビデオ信号を再生するための処理を行う放送信号111を受信する。
【0021】
本発明の原理によれば、受信機300はまた、選択されたチャンネルの受信が悪すぎる場合又は存在しない場合であっても、1つ以上のサービスを再生することもできる。受信機300を参照すると、本発明の原理による受信機300の例示的な一部が図8に図示されている。受信機300は、フィルタ復調バンク390と、前方誤り訂正(FEC)デコーダ395と、トランスポートプロセッサ350と、コントローラ355と、メモリ360とを有する。トランスポートプロセッサ350及びコントローラ355の双方は、1つ以上のマイクロプロセッサ及び/又はデジタル信号プロセッサ(DSP)をそれぞれ表し、プログラムを実行してデータを格納するメモリを有してもよい。これに関して、メモリ360は、受信機300のメモリを表し、例えばトランスポートプロセッサ350及び/又はコントローラ355の何らかのメモリを有する。例示的な双方向データ及び制御バス301は、図示のように図8の要素の様々なものを相互に結合する。制御バス310は単なる典型であり、例えば(並列及び/又は直列の形式で)個々の信号が図8の要素間でデータ及び制御シグナリングを伝達するために使用されてもよい。また、受信機300はリモコン(図示せず)を介してコマンド(例えば番組選択)を受信してもよい点にも留意すべきである。
【0022】
本発明の原理によれば、前述のように、少なくとも(N−k)の送信機からの信号が所定の地理的領域で何らかの時点で受信可能であることを仮定する(ただしk>0)。図3に関して、受信地域は点線で表されており、受信機は常に少なくとも3つの送信機から受信可能である。すなわち、N=4であり、(N−k)=3又はk=1である。従って、ほとんどの一般的な場合、受信機は、ビットを得る必要のあるチャンネルの数に同調可能でなければならない。すなわち、受信機は(N−k)のチューナを有する必要がある。図3に関して、受信機300は3つのチューナを有する。
【0023】
図9を参照すると、フィルタ復調バンク390が図示されている。フィルタ復調バンク390は、3つのフロントエンドフィルタ(605−1、605−2及び605−3)と、3つのアナログ・デジタル(A/D)変換器(610−1、610−2及び610−3)と、3つの復調器(660−1、660−2及び660−3)と、マルチプレクサ(mux)665と、ファウンテンデコーダ670(スケーラブルチャンネルデコーダの例)とを有する。受信信号111はフィルタ復調バンク390に適用される。受信信号111は、受信機300のアンテナ(図示せず)により受け取られた全ての受信信号を表す。フロントエンドフィルタ605−3は、制御バス301の信号658を介して、図8のコントローラ355により1つの送信機(例えば送信機100−2)に関連する各搬送周波数に同調する。同様に、フロントエンドフィルタ605−2は送信機100−3に同調し、フロントエンドフィルタ605−1は送信機100−4に同調する。従って、各フロントエンドフィルタは受信信号111をダウンコンバートしてフィルタリングし、A/D変換器610(すなわち、610−1、610−2及び610−3)にほぼベースバンド信号を提供する。A/D変換器610は、ダウンコンバートされた信号をサンプリングし、信号をデジタル領域に変換し、サンプル611(すなわち、611−1、611−2及び611−3)のシーケンスを復調器660(すなわち、660−1、660−2及び660−3)に提供する。各復調器は、それぞれ適用された信号の復調を実行し、復調された信号661(すなわち、661−1、661−2及び661−3)を提供する。復調された信号661−1、661−2及び661−3は、スケーラブルチャンネル符号化データの受信部分の各復調器による再生を表す。スケーラブルチャンネル符号化データの受信部分はマルチプレクサ665に適用され、マルチプレクサ665は、受信したスケーラブルチャンネル符号化(例えばファウンテン符号化)データストリーム666を形成する。後者は、スケーラブルチャンネルデコーダ(例えばファウンテンデコーダ)670に適用され、スケーラブルチャンネルデコーダ670は、ファウンテン符号化データストリーム666をデコードするために図4のファウンテンコーダ140のものに対する相補機能を実行し、デコードされたデータストリーム671を提供する。デコードされたデータストリーム671は、本発明の原理によれば、1つ以上のサービスを表す。デコードされたデータストリーム671は、ユーザにより使用されるさービスを提供するために、受信機300の他の回路(図示せず)により処理される。
【0024】
これに関して、少なくとも1つの復調器(例えば図9の復調器660−1)も復調された信号391を提供する点にも留意すべきである。後者は、特定のPTCの非ファウンテン符号化データを表すため、例えば選択されたHDTV番組を視聴するために、当該技術分野において既知のように処理される。特に、復調された信号391はFECデコーダ395に適用され、FECデコーダ395は、デコードされた信号396をトランスポートプロセッサ350に提供する。トランスポートプロセッサ350は、コンテンツ信号351により表されるビデオ、オーディオ及びデータビットを適切な次の回路(図示せず)に分配する。これに関して、受信機300は、ディスプレイ220に適用する前に信号351及び671を更に処理してもよく、及び/又は信号331を介してコンテンツをディスプレイ220に直接提供してもよい。
【0025】
本発明の原理による受信機で無線信号のロバスト受信を提供する例示的なフローチャートを示す図10に注目する。ステップ505において、受信機(例えば、受信機300のコントローラ355)は、(N−k)のチューナのそれぞれを受信した異なるチャンネルに同調する(ただし、N>k>0)。ステップ510において、受信機(例えば、受信機300のフィルタ復調バンク390)は、ファウンテン符号化データのN−kの部分を再生する。ステップ515において、受信機(例えば、受信機300のマルチプレクサ665)は、ファウンテン符号化データの(N−k)の部分を結合し、ファウンテン符号化データのストリームを提供する。ステップ520において、受信機(例えば、受信機300のファウンテンデコーダ670)は、ファウンテン符号化データをデコードし、1つ以上のサービスを表すデータを提供する。
【0026】
ステップ505の前に、受信機は有効に受信可能なチャンネルの数を決定するために更に走査を実行してもよい点に留意すべきである。少なくとも(N−k)のチャンネルが受信される場合、受信機は、それぞれの(N−k)のチューナをそれぞれの(N−k)のチャンネルに割り当てる(図10のステップ505)。例えば、受信チャンネルの受信信号強度インジケータ(RSSI:received signal strength indicator)を評価することにより、適切な受信が決定可能である。(N−k)のチャンネルが受信できない場合、適切なエラーメッセージが生成される。同様に、一例としてATSC−DTVシステムを検討すると、受信機300は、少なくとも1つのPTCを介して前述のMPGの形式を受信していることが仮定される。本発明の概念を除いて、チャンネルを同調するための受信機によるMPGの使用は、当該技術分野において既知である。例えば、Ozkan他により2002年4月2日に発行された米国特許第6,366,326号及び/又はOzkan他により1999年8月31に発行された米国特許第5,946,052号を参照のこと。従って、MPGの検索及び取得についてはここでは説明しない。MPGが取得されると、受信機300は、まずMPGに記載の各PTCを走査し、図3に関して少なくとも3つのPTCがファウンテン符号化サービスの再生のために適切に受信可能であるか否かを決定することができる。
【0027】
前述のように、本発明の概念によれば、複数の発信源及び複数の宛先(受信機又はシンク)を有するシステムでロバスト送信及び受信方法が記載される。実際に、前記の本発明の概念は、空間ダイバーシチの形式として記載され得る。例えば、前記の例示的な実施例で、図3のATSC−DTVシステムは本発明の原理に従って空間ダイバーシチを組み込む。例示的に、本発明の概念は、様々なチャンネルのコンテンツを通じて前述のファウンテン符号のようなスケーラブル又は無レート(rateless)チャンネル符号化方式の使用を提案する。この方式は、(前述のATSC−DTVシステムで示すような)既存の変調フォーマットに重ねられてもよい。これを実現するために必要な冗長性は、既存の送信機の位置に関する期待される受信地域の予想の関数である。
【0028】
次に図11及び12を参照すると、本発明の原理に従って他の例示的な実施例が図示されている。図11は前記の図3に示す構成と類似しており、本発明の概念をセルラネットワーク(例えば、CDMA(Code Division Multiple Access)形式のシステム)に適用することを示している。この例では、セルラ送信機は、1つ以上のサービスを送信するために(前述の)本発明の概念に従って適合される。送信機100−1’は、セルラ信号111−1’を送信する送信タワーTに関連し、送信機100−2’は、セルラ信号111−2’を送信する送信タワーTに関連し、送信機100−3’は、セルラ信号111−3’を送信する送信タワーTに関連し、送信機100−4’は、セルラ信号111−4’を送信する送信タワーTに関連する。同様に、セルラエンドポイント200’及び205’により表される受信機は、本発明の原理に従って、送信信号を利用し、1つ以上のサービスのロバスト受信を提供するように適合される。
【0029】
次に図12を参照すると、この図面も前記の図3に示す構成と類似しており、本発明の概念をWi−Fiネットワーク(例えば、802.11形式のシステム)に適用することを示している。この例では、Wi−Fi送信機は、1つ以上のサービスを送信するために(前述の)本発明の概念に従って適合される。送信機100−1’は、Wi−Fi信号111−1’を送信する送信タワーTに関連し、送信機100−2’は、Wi−Fi信号111−2’を送信する送信タワーTに関連し、送信機100−3’は、Wi−Fi信号111−3’を送信する送信タワーTに関連し、送信機100−4’は、Wi−Fi信号111−4’を送信する送信タワーTに関連する。同様に、Wi−Fiエンドポイント200’(例えばラップトップコンピュータ)及び205’により表される受信機は、本発明の原理に従って、送信信号を利用し、1つ以上のサービスのロバスト受信を提供するように適合される。Wi−Fiエンドポイント205’は、サービスをネットワーク(又はサブネットワーク)の他のエンドポイント(図示せず)に中継(分配)するハブ及び/又はルータを表すことがわかる。
【0030】
前記から、前述のことは本発明の単なる例示であり、従って、ここでは明示的に記載されていないが、当業者は、本発明の原理を具現し、その要旨及び範囲内にある多数の代替構成を考案することができることがわかる。例えば、別々の機能要素に関して図示しているが、これらの機能要素は、1つ以上の集積回路(IC)に具現されてもよい。同様に、別々の要素として図示されているが、要素のいずれか又は全ては、記憶プログラム制御プロセッサ(例えばデジタル信号プロセッサ)で実施されてもよい。記憶プログラム制御プロセッサは、(例えば図5及び/又は10等に図示する1つ以上のステップに対応する)関連するソフトウェアを実行する。更に、TVセット200内にまとめられた要素として図示されているが、これらの要素は如何なる組み合わせで異なるユニットに分配されてもよい。例えば、図7の受信機300は、ディスプレイ220等を組み込んだ装置又はボックスから物理的に離れたセットトップボックスのように、装置又はボックスの一部でもよい。また、地上波放送(例えばATSC−DTV)について記載しているが、本発明の概念は、他の形式の通信システム(例えば、衛星、Wi−Fi、セルラ等)にも適用可能である点に留意すべきである。実際に、本発明の概念は静止型受信機について示しているが、本発明の概念はまた、移動型受信機にも適用可能である。従って、多数の変更が本発明の概念に行われてもよく、特許請求の範囲に記載の本発明の要旨及び概念を逸脱することなく、他の構成も考案され得ることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】地上波テレビ放送領域の受信問題
【図2】ファウンテン符号化/デコードの概念図
【図3】本発明の原理による地上波放送
【図4】本発明の原理を具現した送信構成の例示的なブロック図
【図5】図4の送信構成で使用される本発明の原理による例示的なフローチャート
【図6】本発明の原理による例示的な信号フォーマットの一部
【図7】本発明の原理を具現した受信機の例示的なハイレベルブロック図
【図8】本発明の原理を具現した受信機の例示的な部分
【図9】本発明の原理を具現した受信機の例示的な部分
【図10】本発明の原理による受信機で使用される例示的なフローチャート
【図11】本発明の原理による他の例示的な実施例
【図12】本発明の原理による他の例示的な実施例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスポートストリームを伝達し、少なくとも1つの搬送波を有するデータ伝達信号であって、
主チャンネルと補助チャンネルとを表す複数のパケットを有し、
前記補助チャンネルを表す少なくともいくつかのパケットは、スケーラブルチャンネル符号を使用してエンコードされたデータを伝達し、
前記主チャンネルで伝達されるデータは、スケーラブルチャンネル符号を使用してエンコードされないデータ伝達信号。
【請求項2】
前記スケーラブルチャンネル符号は、ファウンテン符号である、請求項1に記載のデータ伝達信号。
【請求項3】
前記主チャンネルは、少なくとも1つの高品位TVチャンネルを伝達する、請求項1に記載のデータ伝達信号。
【請求項4】
前記主チャンネルは、ATSC−DTV(Advanced Television Systems Committee−Digital Television)信号を表す、請求項1に記載のデータ伝達信号。
【請求項5】
放送用のデジタル多重送信を形成する変調器を有する送信機であって、
前記デジタル多重送信は、主チャンネルと補助チャンネルとを有し、
前記補助チャンネルで伝達される少なくともいくつかのデータは、スケーラブルチャンネル符号を使用してエンコードされ、
前記主チャンネルで伝達されるデータは、スケーラブルチャンネル符号を使用してエンコードされない送信機。
【請求項6】
前記スケーラブルチャンネル符号は、ファウンテン符号である、請求項5に記載の送信機。
【請求項7】
前記主チャンネルは、1つ以上の高解像度ビデオチャンネルを有する、請求項5に記載の送信機。
【請求項8】
前記主チャンネルは、ATSC−DTV(Advanced Television Systems Committee−Digital Television)信号を表す、請求項5に記載の送信機。
【請求項9】
Mのトランスポートストリームを受信する際に使用され、補助チャンネルを表すMのスケーラブルチャンネル符号化データストリーム(ただしM>1)を提供するMのチューナと、
前記Mのスケーラブルチャンネル符号化データストリームをデコードする際に使用され、デコードされたデータストリームを提供するスケーラブルチャンネルデコーダと、
主チャンネルを表すデータストリームの再生のために、前記Mのチューナのうち少なくとも1つを同調させるコントローラと
を有する受信機。
【請求項10】
前記スケーラブルチャンネル符号は、ファウンテン符号である、請求項9に記載の受信機。
【請求項11】
前記主チャンネルは、少なくとも1つの高品位TVチャンネルを伝達する、請求項9に記載の受信機。
【請求項12】
前記主チャンネルは、ATSC−DTV(Advanced Television Systems Committee−Digital Television)信号を表す、請求項11に記載の受信機。
【請求項13】
送信機で使用され、放送用のデジタル多重送信を形成することを有する方法であって、
前記デジタル多重送信は、主チャンネルと補助チャンネルとを有し、
前記補助チャンネルで伝達される少なくともいくつかのデータは、スケーラブルチャンネル符号を使用してエンコードされ、
前記主チャンネルで伝達されるデータは、スケーラブルチャンネル符号を使用してエンコードされないデータ伝達信号。
【請求項14】
前記スケーラブルチャンネル符号は、ファウンテン符号である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記主チャンネルは、1つ以上の高解像度ビデオチャンネルを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記主チャンネルは、ATSC−DTV(Advanced Television Systems Committee−Digital Television)信号を表す、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
受信機で使用される方法であって、
主チャンネルを受信するために、
前記主チャンネルを表すデータストリームを提供するためにMのチューナ(ただしM>1)のうち1つを同調させ、
補助チャンネルを受信するために、
Mのスケーラブルチャンネル符号化データストリームを提供するためにMのトランスポートストリームのうち1つをそれぞれ受信するようにMのチューナを同調させ、
前記Mのスケーラブルチャンネル符号化データストリームをスケーラブルチャンネルデコードし、デコードされたデータストリームを提供することを有する方法。
【請求項18】
前記スケーラブルチャンネルデコードするステップは、前記Mのスケーラブルチャンネル符号化データストリームをファウンテンデコードし、デコードされたデータストリームを提供する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記主チャンネルは、少なくとも1つの高品位TVチャンネルを伝達する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記主チャンネルは、ATSC−DTV(Advanced Television Systems Committee−Digital Television)信号を表す、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−537663(P2008−537663A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504011(P2008−504011)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/037056
【国際公開番号】WO2006/104517
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】