説明

突起を有する平板部材の搬送容器とそれを用いた平板部材搬送体

【課題】一部に突起を有する平板部材を高い積載効率で、かつ安定した状態で収容できるようにした発泡樹脂製の搬送容器を提供する。
【解決手段】底板21と4周の側壁24からなり、底板上面には、1つの突起4を中心部以外の箇所に有する平板部材1を水平姿勢で収容することのできる収容凹部23が形成されてなる発泡樹脂製の搬送容器20において、前記収容凹部4に対応する領域には、平板部材1を突起4下向きにして水平姿勢で収容したときに突起4が位置することとなる場所と同形状の平板部材1を突起4を上向きにして水平姿勢で収容したときに突起4が位置することとなる場所の2箇所に、突起4が入り込むことのできる大きさの2つの貫通孔24a,24bが形成されている。この搬送容器20を用いることにより、突起4を有する2枚の平板部材1a,1bを安定して収容しかつ搬送することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、チップ管付きプラズマディスプレイパネルのような突起を有する平板部材の搬送容器とそれを用いた平板部材の搬送体に関する。
【背景技術】
【0002】
図2はプラズマディスプレイパネル(PDP)の一例を示す。プラズマディスプレイパネル(PDP)1は、その製造に際し、前面ガラス基板2と背面ガラス基板3を合着して形成されたた空間から空気を抜き、その後、その空間内に不活性ガスを封入するプロセスを必要とする。そのために、図2に示すように、背面ガラス基板の角部近傍にあらかじめ準備された排気口の上に、チップ管4と称される直径数mm程度のガラス管が接続され、ガス封入が完了するとチップ管4は封じ切られる。結果として、全体として平板部材であるプラズマディスプレイパネルの偶部には長さ10〜20mm程度である封じ切られチップ管部分が、突起として残っている。
【0003】
プラズマディスプレイパネルのようなガラス基板は、搬送時の衝撃等により損傷を受けやすく、かつ年々大型化することもあって、搬送に当たり、特許文献1や特許文献2に記載のように、ガラス基板を垂直姿勢ではなく水平姿勢で収容するようにした合成樹脂発泡体からなる搬送容器が用いられるようになっている。
【0004】
図3(a),(b)は、従来から使用されているプラズマディスプレイパネル用の搬送容器10とその搬送態様を示している。搬送容器10は発泡樹脂製であり、底板11と4周の側壁12を有し、底板11の上面には、チップ管付きプラズマディスプレイパネル1を水平姿勢で収容するための収容凹部13が形成されている。そして、収容凹部13内にチップ管付きプラズマディスプレイパネル1を収容したときに、そのチップ管4が位置することとなる場所には貫通孔14が形成されている。
【0005】
図3(a)に示すケースでは、貫通孔14は収容凹部13の図で左上偶部に形成されており、1枚のチップ管付きプラズマディスプレイパネル1がチップ管4を上向きとした姿勢で収容凹部13内に水平姿勢で収容されている。そのA−A線での断面図にも示すように、この姿勢で、チップ管4の先端は搬送容器10の底面11から上方に突出しているが、側壁12はそれより高くなっており、搬送に格別支障はない。また、A−A線での断面図に示すように、搬送容器10を2段に積層した場合にも、下段の搬送容器10に収容されたプラズマディスプレイパネル1のチップ管4の先端は、上段の搬送容器10に形成された貫通孔14内に入り込むことができるので、多段に搬送容器10を段積みしてもプラズマディスプレイパネル1のチップ管4は安全に保護される。
【0006】
図3(b)に示すケースでは、前記貫通孔14は収容凹部13の図で右上偶部に形成されており、同じ1枚のチップ管付きプラズマディスプレイパネル1が裏返しした姿勢で、すなわち、チップ管4を下向きとした姿勢で収容凹部13内に水平姿勢で収容されている。この姿勢では、そのB−B線での断面図に示すように、チップ管4の全体が貫通孔14内に入り込んでおり、搬送に支障は生じない。また、B−B線での断面図に示すように、搬送容器10を2段に積層した場合にも、チップ管4は安全に保護される。
【0007】
【特許文献1】特開平10−197855号公報
【特許文献2】特開2004−59116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来用いられているガラス基板(チップ管付きプラズマディスプレイパネル1)用の搬送容器は、1つの搬送容器に1枚のガラス基板を水平姿勢で収容して搬送体とし、それ単独で梱包体とするか、あるいは多段に段積みした多段搬送体とした後に梱包体とし、輸送や保管に供するようにしている。そのために、積載効率が高いとはいえず、課題として残っている。
【0009】
1つの搬送容器に2枚のガラス基板を積層して収容することにより、高い積載効率が得られる。しかし、上記したチップ管付きプラズマディスプレイパネル1のように一部に突起(チップ管4)を有する平板部材の場合、単純に2枚重ねに積層することはできないので、高い積載効率が得られない。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、チップ管付きプラズマディスプレイパネルのように一部に突起を有する平板部材を高い積載効率で、かつ安定した状態で収容できるようにした発泡樹脂製の搬送容器を提供することを第1の課題とする。また、その搬送容器に一部に突起を有する平板部材を収容した搬送体を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による搬送容器は、底板と4周の側壁からなり、前記底板上面には、1つの突起を中心部以外の箇所に有する平板部材を水平姿勢で収容することのできる収容凹部が形成されてなる発泡樹脂製の搬送容器であって、収容凹部は収容しようとする平板部材の厚さの2倍以上の深さを有し、前記底板の前記収容凹部に対応する領域の厚さは平板部材が有する突起の長さより大きく、かつ前記領域には、平板部材を前記突起を下向きにして前記収容凹部に水平姿勢で収容したときに前記突起が位置することとなる場所と同形状の平板部材を突起を上向きにして前記収容凹部に水平姿勢で収容したときに前記突起が位置することとなる場所の2箇所に、前記突起が入り込むことのできる大きさの貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明による平板部材搬送体は、上記の搬送容器における収容凹部内に、同じ形状の2枚の平板部材が、一方は前記突起を下向きにした姿勢で他方は前記突起を上向きにした姿勢で積層状態とされて収容されていることを特徴とする。平板部材搬送体は一段のものであってもよく、2段以上に段積みされてなる多段搬送体であってもよい。
【0013】
上記の搬送容器および平板部材搬送体では、1つの容器内に、同じ形状である2枚の平板部材を、突起が形成されていない側の面側を対向させた姿勢で、収容することができ、積載効率を従来のものよりも2倍にすることができる。また、2枚の平板部材を収容した搬送容器を多段に積層しても、1つの搬送容器内に収容された平板部材に形成されている突起先端が、隣接する搬送容器内に収容された平板部材に衝接して傷を付けるようなことは起こらない。
【0014】
本発明による搬送容器および平板部材搬送体は、1つの突起を中心部以外の箇所に有する任意の平板部材のための搬送容器および搬送体として利用することができるが、平板部材がチップ管付きプラズマディスプレイパネルであることは好適であり、その場合、前記突起はチップ管付きプラズマディスプレイパネルが有するチップ管となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、1つの突起を中心部以外の箇所に有する平板部材を水平姿勢で収容することのできる収容凹部が形成されてなる発泡樹脂製の搬送容器において、搬送品に傷を付けることなく、1つの搬送容器内に2枚収容することが可能となり、搬送効率を倍増することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1(a)は本発明による発泡樹脂製の搬送容器の一例を示す平面図であり、図1(b)は図1(a)に示す搬送容器に1つの突起を中心部以外の箇所に有する平板部材の2枚を水平姿勢で収容したときでの、図1のA−A線による断面図である。
【0017】
搬送容器20は、発泡樹脂製であり、好ましくは、熱可塑性樹脂の発泡性粒子を型内成形することによって成形される。好ましくは、スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂の発泡性複合樹脂粒子が用いられる。スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂の複合樹脂は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合させて得られたものであり、スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂の複合樹脂の中でも、スチレン系樹脂とエチレン系樹脂の複合樹脂が好ましく、例えば、スチレン成分の割合は40〜90重量%、好ましくは50〜85%、更に好ましくは55〜75重量%であり、発泡体の倍率は3〜60倍が好ましい。スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂の発泡性複合樹脂粒子による成形品は、同じ発泡倍率のポリプロピレン系樹脂発泡成形品に比べて強度があり、また収縮率が小さく寸法精度もよい。従って、寸法上のバラツキが少ない。さらに、ポリスチレン系樹脂発泡成形品に比べて、摩擦等による粉塵が出難い長所がある。
【0018】
搬送容器20は、底板21と4周の側壁22を有し、底板21の上面には平板部材を水平姿勢で収容することのできる収容凹部23が形成されている。この例において、収容する平板部材は、図2に基づき説明したチップ管付きプラズマディスプレイパネル1であり、前記収容凹部23の面積はチップ管付きプラズマディスプレイパネル1の平面積よりも広くされている。そして、収容凹部23の4つの偶部には、チップ管付きプラズマディスプレイパネル1の4つの角部を受け入れて支持するための入隅部24a〜24dが形成されている。また、収容凹部23の深さは、収容しようとする平板部材、すなわちチップ管付きプラズマディスプレイパネル1の厚さの2倍以上の深さとされている。
【0019】
図示の例において、左上の入隅部24aの近傍と右上に入隅部24bの近傍には、貫通孔25a,25bが形成されている。一方の貫通孔25aは、図2に示すチップ管付きプラズマディスプレイパネル1をそのチップ管4を上向きとした姿勢で前記収容凹部23に収容したときに、該チップ管4が位置する位置することとなる場所であり、他方の貫通孔25bは、同じチップ管付きプラズマディスプレイパネル1をそのチップ管4が上向きとした姿勢で前記収容凹部23に収容したときに、該チップ管4が位置する位置することとなる場所である。また、貫通孔25a,25bの上下方向の長さ、すなわち収容凹部23の領域における底板21の厚さは、前記チップ管4の長さよりも長く(厚く)されている。
【0020】
上記の搬送容器20を用いて、1つの突起を中心部以外の箇所に有する平板部材、すなわち図示の例では、図2に示すチップ管付きプラズマディスプレイパネル1を収容して平板部材搬送体とする手順を説明する。
【0021】
最初に、一枚のチップ管付きプラズマディスプレイパネル1aをそのチップ管4が下向きとなった姿勢で収容凹部23内に収容する。そのときには、チップ管4は、図1(b)に示すように、右上の入隅部24bの近傍に形成した貫通孔25b内に収容された状態となり、プラズマディスプレイパネル1aはその背面ガラス基板3を収容凹部23に接した姿勢で水平状態に収容される。
【0022】
次に、同じ形状のチップ管付きプラズマディスプレイパネル1bをそのチップ管4を上向きとした姿勢で収容凹部23内にかつ先に収容したチップ管付きプラズマディスプレイパネル1aの上に積層するようにして収容する。そのときには、チップ管4は、図1(b)に示すように、左上の入隅部24aの近傍に形成した貫通孔25aの位置に位置し、上位のプラズマディスプレイパネル1bの前面ガラス基板2と下位のプラズマディスプレイパネル1aの前面ガラス基板2とが対面した姿勢となる。対面する前面ガラス基板2同士に傷が付かないように、下位と下位のプラズマディスプレイパネル1a,1bの間、下位のプラズマディスプレイと搬送容器の間、上位のプラズマディスプレイパネルの上面に、非発泡あるいは極低発泡の樹脂フィルムやシート(不図示)を介在させることが好ましい。
【0023】
上記のように、本発明による搬送容器を用いることにより、同じ形状の2枚の1つの突起を中心部以外の箇所に有する平板部材、例えばチップ管付きプラズマディスプレイパネル1a,1bを安定した姿勢で収容することができる。そのために、平板部材搬送体として高い積載効率を得ることができる。また、図1(b)に示すように、上記した平板部材搬送体が2段以上に段積みしても、下段の搬送容器20に収容された上位のプラズマディスプレイパネル1aのチップ管4の先端は、上段の搬送容器20に形成された貫通孔25a内に入り込むことができるので、2枚のプラズマディスプレイパネル1a、1bを収容した搬送容器20を多段に段積みしても、プラズマディスプレイパネル1a、1bのチップ管4は安全に保護される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1(a)は本発明による発泡樹脂製の搬送容器の一例を示す平面図、図1(b)は図1(a)に示す搬送容器に1つの突起を中心部以外の箇所に有する平板部材の2枚を水平姿勢で収容したときでの、図1のA−A線による断面図。
【図2】1つの突起を中心部以外の箇所に有する平板部材の例としてのプラズマディスプレイパネル(PDP)の一例を示す図。
【図3】従来から使用されているプラズマディスプレイパネル用の搬送容器とそれを用いた2つの搬送態様を示す図。
【符号の説明】
【0025】
1a,1b…チップ管付きプラズマディスプレイパネル、4…チップ管、20…搬送容器、21…底板、22…4周の側壁、23…収容凹部、24a〜24d…入隅部、25a,25b…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と4周の側壁からなり、前記底板上面には、1つの突起を中心部以外の箇所に有する平板部材を水平姿勢で収容することのできる収容凹部が形成されてなる発泡樹脂製の搬送容器であって、
前記収容凹部は収容しようとする平板部材の厚さの2倍以上の深さを有し、前記底板の前記収容凹部に対応する領域の厚さは平板部材が有する突起の長さより大きく、かつ前記領域には、平板部材を前記突起を下向きにして前記収容凹部に水平姿勢で収容したときに前記突起が位置することとなる場所と同形状の平板部材を突起を上向きにして前記収容凹部に水平姿勢で収容したときに前記突起が位置することとなる場所の2箇所に、前記突起が入り込むことのできる大きさの貫通孔が形成されていることを特徴とする搬送容器。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送容器における収容凹部内に、同じ形状の2枚の平板部材が、一方は前記突起を下向きにした姿勢で他方は前記突起を上向きにした姿勢で積層状態とされて収容されていることを特徴とする平板部材搬送体。
【請求項3】
請求項3に記載の平板部材搬送体が2段以上に段積みされてなる平板部材搬送体。
【請求項4】
収容した前記平板部材はチップ管付きプラズマディスプレイパネルであり、前記突起はチップ管付きプラズマディスプレイパネルが有するチップ管であることを特徴とする請求項2または3に記載の平板部材搬送体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−100308(P2010−100308A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272892(P2008−272892)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(000153546)株式会社日立物流 (23)
【出願人】(599063088)共和紙業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】