説明

窒化物半導体発光素子およびその製造方法

【課題】偏光光を取り出すことができ、その発光波長の制御も容易な窒化物半導体発光素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】GaN基板1は、c面以外の主面(たとえばm面)を持つ。このGaN基板1上に、有機金属化学気相成長法によって、GaN半導体層2が形成される。GaN半導体層2は、GaN基板1側から順に、N型コンタクト層21、第1量子井戸層22、GaNファイナルバリア層25、P型電子阻止層23、P型コンタクト層24、および第2量子井戸層26を積層した積層構造を有している。第2量子井戸層26は、第1量子井戸層22よりも発光波長が長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、窒化物半導体発光素子(発光ダイオード、レーザダイオード等)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
III-V族半導体においてV族元素として窒素を用いた半導体は「III族窒化物半導体」と呼ばれ、その代表例は、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)である。一般には、AlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)と表わすことができ、これを、「窒化ガリウム半導体」または「GaN半導体」ということにする。
【0003】
c面を主面とする窒化ガリウム(GaN)基板上にIII族窒化物半導体を有機金属化学気相成長法(MOCVD法)によって成長させる窒化物半導体の製造方法が知られている。この方法を適用することにより、N型層およびP型層を有するGaN半導体積層構造を形成することができ、この積層構造を利用した発光デバイスを作製できる。このような発光デバイスは、たとえば、液晶パネル用バックライトの光源として利用可能である。
【0004】
c面を主面とするGaN基板上に再成長されたGaN半導体の主面はc面である。このc面から取り出される光は、ランダム偏光(無偏光)状態となっている。そのため、液晶パネルに入射する際に、入射側偏光板に対応した特定偏光以外は遮蔽され、出射側への輝度に寄与しない。そのため、高輝度な表示を実現し難い(効率は最大でも50%)という問題がある。
【0005】
この問題を解決するために、c面以外、すなわち、a面、m面等の無極性(ノンポーラ)面、または半極性(セミポーラ)面を主面とするGaN半導体を成長させて、発光デバイスを作製することが検討されている。無極性面または半極性面を主面とするGaN半導体層によってP型層およびN型層を有する発光デバイスを作製すると、強い偏光状態の発光が可能である。そこで、このような発光デバイスの偏光の方向と、液晶パネルの入射側偏光板の通過偏光の方向とを一致させておくことにより、入射側偏光板での損失を少なくすることができる。その結果、高輝度な表示を実現できる。
【非特許文献1】T. Takeuchi et al., Jap. J. Appl. Phys. 39, 413-416, 2000
【非特許文献2】A. Chakraborty, B. A. Haskell, H. S. Keller, J. S. Speck, S. P. DenBaars, S. Nakamura and U. K. Mishra: Jap. J. Appl. Phys. 44 (2005) L173
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
たとえば、白色発光を実現しようとすると、従来からの白色LED(発光ダイオード)の場合と同様に、蛍光体と組み合わせることになる。すなわち、発光デバイスから発した偏光光を蛍光体に入射させ、この蛍光体から放出される光を外部に取り出すことによって、白色発光を実現できる。
ところが、蛍光体から放出される光は、散乱光であり、偏光方向がランダムな無偏光光である。したがって、液晶パネルのバックライト用光源として適用するとすれば、偏光板での大きな損失が避けられず、高輝度な表示を実現できない。
【0007】
一方、III族窒化物半導体で500nm以上の発光波長を持つ活性層を形成すると、このような活性層は、熱ダメージに弱いことが分かっている。具体的には、たとえば、GaN基板上にN型GaN半導体層を成長させ、これにIII族窒化物半導体からなる活性層を積層し、さらに、P型GaN半導体層を成長させて発光ダイオード構造を形成する場合を例にとる。この場合、500nm以上の発光波長とするためには、活性層にインジウムが取り込まれる必要がある。そのために、活性層の成長時の基板温度が、700℃〜800℃とされる。一方、活性層の上に形成されるP型GaN層のエピタキシャル成長時には、基板温度が800℃以上とされる。このときに活性層が熱ダメージを受け、その発光効率が著しく損なわれることになる。したがって、500nm以上の波長を得ることは、必ずしも容易ではない。
【0008】
この発明の目的は、2種類以上の波長ピークを持つ偏光光を取り出すことができ、その発光波長の制御および高効率化が容易な窒化物半導体発光素子およびその製造方法を提供すること、つまり、たとえば、偏光した白色発光ダイオードを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、c面以外の積層主面を有するIII族窒化物半導体積層構造を備えた窒化物半導体発光素子であって、前記III族窒化物半導体積層構造が、c面以外の所定の結晶面の主面を有し、第1波長の光を発生する第1活性層と、前記所定の結晶面の主面を有し、前記第1波長とは異なる第2波長の光を発生する第2活性層とを含む、窒化物半導体発光素子である。
【0010】
この構成によれば、第1および第2の活性層は、いずれも共通の結晶面の主面を有するので、同じ方向に偏光した光を発生する。第1および第2活性層から第1および第2波長の光が同時に発生することにより、見かけ上、これらの混色の光が観測されることになる。こうして、III族窒化物半導体の活性層の組成の制御では発生することができない発光色(波長)の偏光を発生することができ、見かけ上の発光波長を容易に制御できる。
【0011】
請求項2に記載されているように、前記第1および第2活性層は、AlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)からなるものであることが好ましい。
請求項3記載の発明は、前記III族窒化物半導体積層構造が、さらに、N型窒化物半導体層と、P型窒化物半導体層とを含み、前記第1活性層が、前記N型窒化物半導体層およびP型窒化物半導体層の間にあり、前記第2活性層が、前記N型窒化物半導体層およびP型窒化物半導体層の間以外の場所にある、請求項1または2記載の窒化物半導体発光素子である。
【0012】
この構成によれば、N型窒化物半導体層およびP型窒化物半導体層によって第1活性層を挟んだ発光ダイオード構造が形成されている。したがって、第1活性層に電流を注入することにより、この第1活性層を励起して発光させることができる。第2活性層については、たとえば、第1活性層で発生する光によって励起して発光させることができる。
第2活性層は、N型窒化物半導体層およびP型窒化物半導体層の間以外の場所にあるので、これらを形成した後に第2活性層を形成することができる。このようにすれば、第2活性層は、N型またはP型窒化物半導体層の形成時における熱ダメージを回避できるから、その発光波長の制御が容易になる。
【0013】
請求項4に記載されているように、前記第2活性層は、前記P型窒化物半導体層に対して前記第1活性層とは反対側にあってもよい。
また、請求項5に記載されているように、前記第2活性層は、前記N型窒化物半導体層に対して前記第1活性層とは反対側にあってもよい。
むろん、第3の活性層や第4の活性層やさらに別の活性層が、前記N型窒化物半導体層およびP型窒化物半導体層の間以外の場所にさらに設けられていてもよい。このようにすれば、3つ以上の波長の偏光光が見かけ上混合されて観測されることになるので、発光波長の制御の自由度を多くすることができる。
【0014】
請求項6記載の発明は、いずれも前記所定の結晶面である第1主面および第2主面を有する基板をさらに含み、前記III族窒化物半導体積層構造が、前記基板の第1主面に積層され前記第1活性層を含む第1部分と、前記基板の第2主面に積層され前記第2活性層を含む第2部分とを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の窒化物半導体発光素子である。
【0015】
この構成によれば、基板の一方主面側および他方主面側にIII族窒化物半導体積層構造が振り分けられている。たとえば、基板の第1主面側に積層される第1部分が、N型窒化物半導体層およびP型窒化物半導体層ならびにこれらの間に配置された第1活性層を含む構成とすることができる。これにより、基板の第1主面側において、電流注入によって第1活性層を励起させて偏光発光させ、その偏光光を、基板を通して第2主面側の第2活性層に導き、これを光励起によって偏光発光させることができる。
【0016】
請求項7に記載されているように、前記第2主面は鏡面であることが好ましい。
前記基板としては、サファイア基板(たとえば、r面を主面とするもの)、LiAl基板、炭化シリコン基板(たとえばm面を主面とするもの)、窒化ガリウム基板(たとえば、a面またはm面を主面とするもの)などを用いることができる。r面サファイア基板上にはa面III族窒化物半導体層を形成でき、LiAl基板上にはm面III族窒化物半導体層を形成でき、m面炭化シリコン基板上にはm面III族窒化物半導体層を形成でき、a面窒化ガリウム基板上にはa面III族窒化物半導体層を形成でき、m面窒化ガリウム基板上にはm面III族窒化物半導体層を形成できる。
【0017】
請求項8に記載されているように、前記基板は、前記第1活性層よりも広いバンドギャップを持つことが好ましい。前記基板が導電性基板(たとえば、炭化シリコン基板またはGaN基板)の場合に、そのバンドギャップを第1活性層のバンドギャップよりも広くしておくことによって、基板での光吸収を抑制できる。これにより、第2活性層を効率的に光励起できる。
【0018】
さらに、請求項9に記載されているように、前記基板は、前記第1活性層の発光波長に対して透明(好ましくは90%以上の光透過率)であることが好ましい。これにより、第1活性層からの光を第2活性層に効率的に導いて、この第2活性層を効率的に光励起させることができる。
請求項10記載の発明は、前記第1活性層が電流注入により発光し、前記第2活性層が前記第1活性層からの光による光励起によって発光するようになっている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の窒化物半導体発光素子である。
【0019】
この構成によれば、第2活性層に関して電流を注入するための構成を備える必要がない。そのため、構成が簡単になる。そのうえ、III族窒化物半導体積層構造の形成時に、第1活性層に関連する発光ダイオード構造を形成した後に第2活性層を形成することができ、この第2活性層に関しては発光ダイオード構造を形成する必要がない。そのため、第2活性層を、発光ダイオード構造の形成時における熱ダメージを回避して形成することができる。これにより、第2活性層はすぐれた発光効率を有することができる。
【0020】
請求項11に記載されているように、前記第1活性層は、前記第2活性層よりもバンドギャップが大きいIII族窒化物半導体からなっていてもよい。バンドギャップが大きく、したがって、発光波長が短いほど、活性層の耐熱性がよくなる。そこで、第1活性層をN型窒化物半導体層およびP型窒化物半導体層の間に配置して発光ダイオード構造を形成するとともに、第2活性層を当該発光ダイオード構造の外側に配置するとよい。これにより、第1活性層は、III族窒化物半導体積層構造の形成時における高温に耐えることができ、第2活性層は、そのような高温環境に置くことなく形成することができる。したがって、第1および第2活性層は、いずれもすぐれた効率で偏光発光することができる。
【0021】
請求項12に記載されているように、前記所定の結晶面は、無極性面または半極性面であってもよい。無極性面の例は、m面(10-10)およびa面(11-20)である。半極性面の例としては、(10-1-1)面、(10-1-3)面、(11-22)面を挙げることができる。
請求項13記載の発明は、c面以外の積層主面を有するIII族窒化物半導体積層構造を備えた窒化物半導体発光素子の製造方法であって、前記III族窒化物半導体積層構造を形成する工程が、c面以外の所定の結晶面の主面を有し、第1波長の光を発生する第1活性層を形成する工程と、前記所定の結晶面の主面を有し、前記第1波長よりも長い第2波長の光を発生する第2活性層を、前記III族窒化物半導体積層構造の構成層のうち当該第2活性層の形成温度よりも形成温度の高い層を全て形成した後に形成する工程とを含む、窒化物半導体発光素子の製造方法である。
【0022】
この方法により、発光波長が長く、したがって耐熱性に劣る第2活性層が熱ダメージを受けることを回避できる。これにより、第1および第2活性層はいずれも良好な発光特性を有することができ、第1および第2波長の光を見かけ上混合した発光色、たとえば白色の偏光発光が可能になる。
III族窒化物半導体積層構造の形成は、ハイドライド気相成長(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法または有機金属化学気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって行うことができる。
【0023】
請求項14記載の発明は、c面以外の積層主面を有するIII族窒化物半導体積層構造を備えた窒化物半導体発光素子の製造方法であって、前記III族窒化物半導体積層構造を形成する工程が、第1導電型の窒化物半導体層を形成する工程と、前記第1導電型の窒化物半導体層の上に、c面以外の所定の結晶面の主面を有し、第1波長の光を発生する第1活性層を形成する工程と、前記第1活性層の上に、第2導電型の窒化物半導体層を形成する工程と、前記所定の結晶面の主面を有し、前記第1波長よりも長い第2波長の光を発生する第2活性層を、前記第1導電型の窒化物半導体層、前記第1活性層および前記第2導電型の窒化物半導体層が形成された後に形成する工程とを含む、窒化物半導体発光素子の製造方法である。
【0024】
この方法によれば、第1活性層に関連する発光ダイオード構造を形成した後に、第2活性層が形成される。したがって、第2活性層は、第1活性層に関連する発光ダイオード構造形成時の高温処理による熱ダメージを受けることがない。こうして第1および第2活性層はいずれも良好な発光効率でそれぞれ第1および第2波長の偏光光を発生することができる。
【0025】
請求項15記載の発明は、前記第2活性層を形成する工程が、前記III族窒化物半導体積層構造の他のすべての構成層が形成された後に当該第2活性層を形成する工程である、請求項13または14記載の窒化物半導体発光素子の製造方法である。
この方法により、第2活性層が高温処理による熱ダメージを受けることを確実に回避できる。
【0026】
請求項16に記載されているように、前記第2波長は、500nm以上であってもよい。したがって、前記第1波長は、たとえば、500nm未満であってもよい。
その他、窒化物半導体発光素子の製造方法に関しても、窒化物半導体発光素子の発明の場合と同様な変形が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための図解的な断面図である。この窒化物半導体発光素子は、GaN(窒化ガリウム)基板1上にIII族窒化物半導体積層構造としてのGaN半導体層2を再成長させて構成されている。
GaN半導体層2は、GaN基板1側から順に、N型コンタクト層21、第1活性層(発光層)としての第1量子井戸(QW:Quantum Well)層22、GaNファイナルバリア層25、P型電子阻止層23、P型コンタクト層24、および第2活性層(発光層)としての第2量子井戸層26を積層した積層構造を有している。P型コンタクト層24層の表面は、第2量子井戸層26の側方へと引き出された引き出し部を有しており、この引き出し部には、透明電極としてのアノード電極3が形成されている。さらに、このアノード電極3の一部には、配線接続のための接続部4が接合されている。また、N型コンタクト層21には、カソード電極5が接合されている。
【0028】
GaN基板1は、支持基板(配線基板)10に接合されている。支持基板10の表面には、配線11,12が形成されている。そして、接続部4と配線11とがボンディングワイヤ13で接続されており、カソード電極5と配線12とがボンディングワイヤ14で接続されている。さらに、GaN半導体層2、アノード電極3、接続部4およびカソード電極5、ならびにボンディングワイヤ13,14が、エポキシ樹脂等の透明樹脂によって封止されることにより、窒化物半導体発光素子が構成されている。
【0029】
N型コンタクト層21は、シリコンをN型ドーパントとして添加したN型GaN層からなる。層厚は3μm以上とすることが好ましい。シリコンのドーピング濃度は、たとえば、1018cm−3とされる。より具体的には、N型コンタクト層21は、GaN基板1上(またはAlN層8上)に結晶成長させられたN型GaN半導体からなる。
第1量子井戸層22および第2量子井戸層26は、それぞれ、たとえば、シリコンをドープしたInGaN層(たとえば3nm厚)とGaN層(たとえば9nm厚)とを交互に所定周期(たとえば5周期)積層したものである。第1量子井戸層22と、P型電子阻止層23との間には、GaNファイナルバリア層25(たとえば40nm厚)が積層されている。
【0030】
第1量子井戸層22は、N型コンタクト層21とP型コンタクト層24との間に挟まれて発光ダイオード構造を形成する。この第1量子井戸層22の発光波長は、500nm未満とされる。より具体的には、たとえば、460nm(青色の波長域)とされる。
第2量子井戸層26は、P型コンタクト層24に関して第1量子井戸層22とは反対側に配置され、これにより、前記発光ダイオード構造の外に位置している。この第2量子井戸層26の発光波長は、500nm以上とされる。より具体的には、たとえば、500nm〜600nm(緑色〜黄色の波長域)とされる。
【0031】
すなわち、第2量子井戸層26の発光波長は、第1量子井戸層22の発光波長よりも長くされている。換言すれば、第2量子井戸層26のバンドギャップ(より具体的にはInGaN層のバンドギャップ)は、第1量子井戸層22のバンドギャップ(より具体的にはInGaN層のバンドギャップ)よりも小さくされている。バンドギャップの調整は、インジウム(In)の組成比を調整することによって行うことができる。
【0032】
たとえば、第1量子井戸層22の発光波長を青色波長域とし、第2量子井戸層26の発光波長を黄色波長域(560nm〜600nm)とすると、青色光と黄色光とが見かけ上混合されることによって、見かけ上、白色発光を実現できる。
P型電子阻止層23は、P型ドーパントとしてのマグネシウムを添加したAlGaN層からなる。層厚は、たとえば、28nmである。マグネシウムのドーピング濃度は、たとえば、3×1019cm−3とされる。
【0033】
P型コンタクト層24は、P型ドーパントとしてのマグネシウムを高濃度に添加したGaN層からなる。層厚は、たとえば、70nmである。マグネシウムのドーピング濃度は、たとえば、1020cm−3とされる。
アノード電極3は、NiとAuとから構成される透明な薄い金属層(たとえば、200Å以下)で構成される。
【0034】
カソード電極は、TiとAl層とから構成される膜である。
GaN基板1は、c面以外の主面を有するGaNからなる基板である。より具体的には、無極性面または半極性面を主面とするものである。好ましくは、無極性面の面方位から±1°以内のオフ角を有する面、または半極性面の面方位から±1°以内のオフ角を有する面を主面とするGaN単結晶基板である。GaN半導体層2の各層の積層主面は、GaN基板1の主面の結晶面に従う。すなわち、GaN半導体層2の構成層の主面は、いずれも、GaN基板1の主面の結晶面と同じ結晶面を有する。
【0035】
配線11,12から、アノード電極3およびカソード電極5間に順方向電圧を印加すると、第1量子井戸層22は、電流注入によって励起されて発光する。発光メカニズムは、ダイオード発光であってもよいし、EL(エレクトロスミネッセンス)発光であってもよい。GaN基板1の主面がc面以外の所定の結晶面(無極性面または半極性面)であるため、第1量子井戸層22の主面もまたc面以外の結晶面(GaN基板1と同一結晶面)となる。そのため、第1量子井戸層22は偏光光を発生することになる。
【0036】
一方、第1量子井戸層22から発生した光が第2量子井戸層26に入射されると、この第2量子井戸層26は光励起されて発光することになる。第2量子井戸層26の主面もGaN基板1と同一結晶面である。したがって、第2量子井戸層26は、第1量子井戸層22と同じ偏光方向の偏光光を発生する。
こうして第1および第2量子井戸層22,26から発した各偏光光は、見かけ上混合されて観測されることになる。したがって、見かけ上、第1および第2量子井戸層22,26の発光色の混色の偏光を発生することができる。
【0037】
図2は、III族窒化物半導体の結晶構造のユニットセルを表した図解図である。III族窒化物半導体の結晶構造は、六方晶系で近似することができ、六角柱の軸方向に沿うc軸を法線とする面(六角柱の頂面)がc面(0001)である。III族窒化物半導体では、分極方向がc軸に沿っている。そのため、c面は、+c軸側と−c軸側とで異なる性質を示すので、極性面(Polar Plane)と呼ばれる。一方、六角柱の側面がそれぞれm面(10-10)であり、隣り合わない一対の稜線を通る面がa面(11-20)である。これらは、c面に対して直角な結晶面であり、分極方向に対して直交しているため、極性のない平面、すなわち、無極性面(Nonpolar Plane)である。さらに、c面に対して傾斜している(平行でもなく直角でもない)結晶面は、分極方向に対して斜めに交差しているため、若干の極性のある平面、すなわち、半極性面(Semipolar Plane)である。半極性面の具体例は、(10-1-1)面、(10-1-3)面、(11-22)面などである。
【0038】
非特許文献1に、c面に対する結晶面の偏角と当該結晶面の法線方向の分極との関係が示されている。この非特許文献1から、(11-24)面、(10-12)面なども分極の少ない結晶面であり、大きな偏光状態の光を取り出すために採用される可能性のある有力な結晶面であると言える。
たとえば、m面を主面とするGaN単結晶基板は、c面を主面としたGaN単結晶から切り出して作製することができる。切り出された基板のm面は、たとえば、化学的機械的研磨処理によって研磨され、(0001)方向および(11−20)方向の両方に関する方位誤差が、±1°以内(好ましくは±0.3°以内)とされる。こうして、m面を主面とし、かつ、転位や積層欠陥といった結晶欠陥のないGaN単結晶基板が得られる。このようなGaN単結晶基板の表面には、原子レベルの段差が生じているにすぎない。
【0039】
このようにして得られるGaN単結晶基板上に、MOCVD法によって、GaN半導体層2を成長させることができる。
図3は、GaN半導体層2を構成する各層を成長させるための処理装置の構成を説明するための図解図である。処理室30内に、ヒータ31を内蔵したサセプタ32が配置されている。サセプタ32は、回転軸33に結合されており、この回転軸33は、処理室30外に配置された回転駆動機構34によって回転されるようになっている。これにより、サセプタ32に処理対象のウエハ35を保持させることにより、処理室30内でウエハ35を所定温度に昇温することができ、かつ、回転させることができる。ウエハ35は、前述のGaN基板1を構成する、たとえば、GaN単結晶ウエハである。
【0040】
処理室30には、排気配管36が接続されている。排気配管36はロータリポンプ等の排気設備に接続されている。これにより、処理室30内の圧力は、1/10気圧〜常圧力(好ましくは1/5気圧程度)とされ、処理室30内の雰囲気は常時排気されている。
一方、処理室30には、サセプタ32に保持されたウエハ35の表面に向けて原料ガスを供給するための原料ガス供給路40が導入されている。この原料ガス供給路40には、窒素原料ガスとしてのアンモニアを供給するアンモニア原料配管41と、ガリウム原料ガスとしてのトリメチルガリウム(TMG)を供給するガリウム原料配管42と、アルミニウム原料ガスとしてのトリメチルアルミニウム(TMAl)を供給するアルミニウム原料配管43と、インジウム原料ガスとしてのトリメチルインジウム(TMIn)を供給するインジウム原料配管44と、マグネシウム原料ガスとしてのエチルシクロペンタジエニルマグネシウム(EtCpMg)を供給するマグネシウム原料配管45と、シリコンの原料ガスとしてのシラン(SiH)を供給するシリコン原料配管46とが接続されている。これらの原料配管41〜46には、それぞれバルブ51〜56が介装されている。各原料ガスは、いずれも水素もしくは窒素またはこれらの両方からなるキャリヤガスとともに供給されるようになっている。
【0041】
たとえば、m面を主面とするGaN単結晶ウエハをウエハ35としてサセプタ32に保持させる。この状態で、バルブ52〜56は閉じておき、アンモニア原料バルブ51を開いて、処理室30内に、キャリヤガスおよびアンモニアガス(窒素原料ガス)が供給される。さらに、ヒータ31への通電が行われ、ウエハ温度が1000℃〜1100℃(たとえば、1050℃)まで昇温される。これにより、表面の荒れを生じさせることなくGaN半導体を成長させることができるようになる。
【0042】
ウエハ温度が1000℃〜1100℃に達するまで待機した後、アンモニア原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52およびシリコン原料バルブ56が開かれる。これにより、原料ガス供給路40から、キャリヤガスとともに、アンモニア、トリメチルガリウムおよびシランが供給される。その結果、ウエハ35の表面に、シリコンがドープされたGaN層からなるN型コンタクト層21が成長する。
【0043】
N型コンタクト層21を形成した後には、次に、シリコン原料バルブ56が閉じられ、第1量子井戸層22の成長が行われる。第1量子井戸層22の成長は、アンモニア原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52およびインジウム原料バルブ54を開いてアンモニア、トリメチルガリウムおよびトリメチルインジウムをウエハ35へと供給することによりInGaN層を成長させる工程と、インジウム原料バルブ54を閉じ、アンモニア原料バルブ51およびガリウム原料バルブ52を開いてアンモニアおよびトリメチルガリウムをウエハ35へと供給することにより、無添加のGaN層を成長させる工程とを交互に実行することによって行える。たとえば、GaN層を始めに形成し、その上にInGaN層を形成する。これを5回に渡って繰り返し行った後、最後に、InGaN層上にGaNファイナルバリア層25が形成される。量子井戸層22およびGaNファイナルバリア層25の形成時には、ウエハ35の温度は、たとえば、700℃〜800℃(たとえば730℃)とされることが好ましい。
【0044】
次いで、P型電子阻止層23が形成される。すなわち、アンモニア原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52、アルミニウム原料バルブ53およびマグネシウム原料バルブ55が開かれ、他のバルブ54,56が閉じられる。これにより、ウエハ35に向けて、アンモニア、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウムおよびエチルシクロペンタジエニルマグネシウムが供給され、マグネシウムがドープされたAlGaN層からなるP型電子阻止層23が形成されることになる。このP型電子阻止層23の形成時には、ウエハ35の温度は、800℃以上(たとえば1000℃)とされることが好ましい。
【0045】
次に、P型コンタクト層24が形成される。すなわち、アンモニア原料バルブ51、ガリウム原料バルブ52およびマグネシウム原料バルブ55が開かれ、他のバルブ53,54,56が閉じられる。これにより、ウエハ35に向けて、アンモニア、トリメチルガリウムおよびエチルシクロペンタジエニルマグネシウムが供給され、マグネシウムがドープされたGaN層からなるP型コンタクト層24が形成されることになる。P型コンタクト層24の形成時には、ウエハ35の温度は、800℃以上(たとえば1000℃)とされることが好ましい。
【0046】
そして、次に、P型コンタクト層24上に、第1量子井戸層22の場合と同様にして、第2量子井戸層26が形成される。第1および第2量子井戸層22,26の形成時には、インジウム原料ガス、ガリウム原料ガスおよび窒素原料ガスの流量比を調節することによって、InGaN層の組成が調節される。これにより、InGaN層のバンドギャップが調節され、その結果、第1および第2量子井戸層22,26の各発光波長が制御される。
【0047】
こうして、ウエハ35上にGaN半導体層2が成長させられると、このウエハ35は、エッチング装置に移され、たとえばプラズマエッチングによって、図1に示すように、N型コンタクト層21を露出させるための凹部7と、N型コンタクト層24を露出させるための凹部8とが形成される。凹部7は、第1量子井戸層22、P型電子阻止層23およびP型コンタクト層24を島状に取り囲むように形成されてもよく、これにより、量子井戸層22、P型電子阻止層23およびP型コンタクト層24をメサ形に整形するものであってもよい。同様に、凹部8は、第2量子井戸層26を島状に取り囲むように形成されてもよく、これにより、第2量子井戸層26をメサ形に整形するものであってもよい。
【0048】
さらに、抵抗加熱または電子線ビームによる金属蒸着装置によって、アノード電極3、接続部4、カソード電極5が形成される。これにより、図1に示す発光ダイオード構造を得ることができる。
このようなウエハプロセスの後に、ウエハ35の劈開によって個別素子が切り出され、この個別素子は、ダイボンディングおよびワイヤボンディングによってリード電極に接続された後、エポキシ樹脂等の透明樹脂中に封止される。こうして、窒化物半導体発光素子が作製される。
【0049】
前述のとおり、第2量子井戸層26は、III族窒化物半導体積層構造であるGaN半導体層2の構成層のうち、最後に形成される。より具体的には、第1量子井戸層22をN型コンタクト層21およびP型コンタクト層24で挟み込んだ発光ダイオード構造が形成された後に、第2量子井戸層26が形成される。そのため、第2量子井戸層26は、P型コンタクト層24の形成時の温度800℃以上(たとえば1000℃)を経験することがない。さらに言えば、第2量子井戸層26は、GaN半導体層2の構成層のうちで、それよりも形成温度の高い全ての層が形成された後に形成される。したがって、第2量子井戸層26は、他の層の形成時に熱ダメージを受けることがない。よって、第2量子井戸層26は、発光波長が長い発光層であるにも拘わらず、すぐれた発光効率を有することができる。一方、第1量子井戸層22は、発光波長が短い発光層であるため、P型コンタクト層24の形成時の高温に耐えることができるので、やはり、すぐれた発光効率を有することができる。
【0050】
第1および第2量子井戸層22,26は、いずれも、偏光発光する発光層であり、偏光方向も同一である。したがって、第1および第2量子井戸層22,26からの発光光が混合されて観測されることによって、見かけ上、それらの混色の偏光光が観測されることになる。このようにして、窒化物半導体発光素子から、発光色の制御された偏光を取り出すことができる。
【0051】
図4は、この発明の他の実施形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための図解図である。この図4において、前述の図1に示された各部に対応する部分には同一の参照符号を付して示す。
この実施形態では、III族窒化物半導体積層構造としてのGaN半導体層2は、GaN基板1の一方の主面(第1主面)側に第1量子井戸層22を含む第1部分2Aを有し、GaN基板1の他方の主面(第2主面)側に第2量子井戸層26を含む第2部分2Bを有している。前記他方の主面(第2主面)は、鏡面とされている。
【0052】
第1部分2Aは、GaN基板1側から順に、N型コンタクト層21、第1量子井戸層22、ファイナルバリア層25、P型電子阻止層23およびP型コンタクト層24を積層して構成されている。
第2部分2Bは、この実施形態では、第2量子井戸層26のみを含む。第2量子井戸層26は、N型コンタクト層21に対して第1量子井戸層22とは反対側に位置しており、第1量子井戸層22をN型およびP型コンタクト層21,24で挟んだ発光ダイオード構造の外側に配置されている。この第2量子井戸層26側が、光取り出し面となっている。
【0053】
P型コンタクト層24の表面に形成されたアノード電極3は、支持基板10上の配線11に接合(ダイボンディング)されている。これにより、発光ダイオード構造は、図1の場合とは反転した姿勢で支持基板10に固定されている。
GaN半導体層2の第1部分2Aは、支持基板10側からN型コンタクト層21が露出するまでエッチング(たとえばプラズマエッチング)されていて、凹部17が形成されている。この凹部17に、N型コンタクト層21に接するカソード電極5が形成されている。このカソード電極5と支持基板10上の配線12とが、金属ポスト18によって接続されている。
【0054】
この構成により、GaN半導体層2の第1部分2Aでは、第1量子井戸層22をN型コンタクト層21とP型コンタクト層24とで挟んだダイオード構造が形成されている。したがって、アノード電極3とカソード電極5との間に順方向電圧を印加すれば、第1量子井戸層22は、電流注入によって励起し、その主面の結晶面に依存する偏光を発生する。この光が、GaN基板1を透過して第2量子井戸層26に達することにより、この第2量子井戸層26が光励起され、その主面の結晶面に依存する偏光を発生する。
【0055】
GaN基板1の両主面は、いずれもc面以外の共通の結晶面であるので、第1および第2量子井戸層22,26の偏光方向は等しい。したがって、第2量子井戸層26側では、第1および第2量子井戸層22,26の発光色の混色の偏光が観測されることになる。
第1量子井戸層22で発生した偏光光がGaN基板1で吸収されることを抑制するためには、GaN基板1は第1量子井戸層22よりも広いバンドギャップを持つことが好ましい。また、基板1が第1量子井戸層22の発光波長に対して透明(好ましくは90%以上の光透過率)であることがより好ましい。
【0056】
この構造の窒化物半導体発光素子の作製に際しては、GaN基板1の一方主面側にGaN半導体層2の第1部分2Aがエピタキシャル成長させられた後に、GaN基板1の他方主面側に第2部分2Aを構成する第2量子井戸層26がエピタキシャル成長させられる。したがって、第2量子井戸層26は、第1部分2Aの発光ダイオード構造よりも後に形成されるので、P型コンタクト層24等の形成時の高温による熱ダメージを受けることがない。これにより、すぐれた効率で発光することができる。
【0057】
以上、この発明の実施形態について説明してきたが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、発光ダイオード構造に本願発明が適用された例について説明したが、この発明は、レーザダイオード等の他の発光デバイスにも適用することができる。
また、前述の実施形態では、主としてm面を主面とするGaN基板1を用いた例について説明したが、a面を主面とするGaN基板を用いてもよい。また、(10−11)面、(10−13)面、(11−22)などといったセミポーラ面を主面とするGaN基板を用いてもよい。
【0058】
また、前述の例では、GaN基板1上にGaN半導体層2を再成長させた例について説明したが、たとえば、m面を主面とした炭化シリコン基板上に、成長主面をm面としたGaN半導体を成長させるようにしてもよいし、r面を主面とするサファイア基板上にa面を主面とするGaN半導体を成長させるようにしてもよい。
さらに、前述の実施形態では、MOCVD法によってGaN基板1上にGaN半導体をエピタキシャル成長させる例について説明したが、HVPE法などの他のエピタキシャル成長法が適用されてもよい。
【0059】
また、前述の実施形態では、第1および第2量子井戸層(発光層)22,26を有する構成について説明したが、たとえば、図1および図4にそれぞれ示すように、第3活性層27を第2量子井戸層26に積層してもよい。この第3活性層27は、たとえば、第1および第2量子井戸層22,26のいずれとも発光波長の異なるIII族窒化物半導体層(より具体的には量子井戸層)からなり、第1量子井戸層22からの光の入射を受けて光励起して発光するものである。これにより、3色の偏光光が見かけ上混合されて観測されることになる。むろん、さらに、第4活性層や第5活性層を積層して、4色以上の混色の偏光発光を行わせることも可能である。
【0060】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の一実施形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための図解的な断面図である。
【図2】III族窒化物半導体の結晶構造のユニットセルを表した図解図である。
【図3】GaN半導体層を構成する各層を成長させるための処理装置の構成を説明するための図解図である。
【図4】この発明の他の実施形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための図解的な断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 GaN基板
2 GaN半導体層
2A 第1部分
2B 第2部分
3 アノード電極
4 接続部
5 カソード電極
7,8 凹部
10 支持基板
11,12 配線
13,14 ボンディングワイヤ
17 凹部
18 金属ポスト
21 N型コンタクト層
22 第1量子井戸層(第1活性層)
23 P型電子阻止層
24 P型コンタクト層
25 ファイナルバリア層
26 第2量子井戸層(第2活性層)
27 第3活性層
30 処理室
31 ヒータ
32 サセプタ
33 回転軸
34 回転駆動機構
35 ウエハ
36 排気配管
40 原料ガス供給路
41 アンモニア原料配管
42 ガリウム原料配管
43 アルミニウム原料配管
44 インジウム原料配管
45 マグネシウム原料配管
46 シリコン原料配管
51 アンモニア原料バルブ
52 ガリウム原料バルブ
53 アルミニウム原料バルブ
54 インジウム原料バルブ
55 マグネシウム原料バルブ
56 シリコン原料バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
c面以外の積層主面を有するIII族窒化物半導体積層構造を備えた窒化物半導体発光素子であって、
前記III族窒化物半導体積層構造が、
c面以外の所定の結晶面の主面を有し、第1波長の光を発生する第1活性層と、
前記所定の結晶面の主面を有し、前記第1波長とは異なる第2波長の光を発生する第2活性層とを含む、窒化物半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1および第2活性層が、AlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)からなる、請求項1記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項3】
前記III族窒化物半導体積層構造が、さらに、N型窒化物半導体層と、P型窒化物半導体層とを含み、
前記第1活性層が、前記N型窒化物半導体層およびP型窒化物半導体層の間にあり、
前記第2活性層が、前記N型窒化物半導体層およびP型窒化物半導体層の間以外の場所にある、請求項1または2記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項4】
前記第2活性層が、前記P型窒化物半導体層に対して前記第1活性層とは反対側にある、請求項3記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項5】
前記第2活性層が、前記N型窒化物半導体層に対して前記第1活性層とは反対側にある、請求項3記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項6】
いずれも前記所定の結晶面である第1主面および第2主面を有する基板をさらに含み、
前記III族窒化物半導体積層構造が、前記基板の第1主面に積層され前記第1活性層を含む第1部分と、前記基板の第2主面に積層され前記第2活性層を含む第2部分とを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項7】
前記第2主面が鏡面である、請求項6記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項8】
前記基板が、前記第1活性層よりも広いバンドギャップを持つ、請求項6または7記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項9】
前記基板が、前記第1活性層の発光波長に対して透明である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項10】
前記第1活性層が電流注入により発光し、前記第2活性層が前記第1活性層からの光による光励起によって発光するようになっている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項11】
前記第1活性層は、前記第2活性層よりもバンドギャップが大きいIII族窒化物半導体からなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項12】
前記所定の結晶面が、無極性面または半極性面である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項13】
c面以外の積層主面を有するIII族窒化物半導体積層構造を備えた窒化物半導体発光素子の製造方法であって、
前記III族窒化物半導体積層構造を形成する工程が、
c面以外の所定の結晶面の主面を有し、第1波長の光を発生する第1活性層を形成する工程と、
前記所定の結晶面の主面を有し、前記第1波長よりも長い第2波長の光を発生する第2活性層を、前記III族窒化物半導体積層構造の構成層のうち当該第2活性層の形成温度よりも形成温度の高い層を全て形成した後に形成する工程とを含む、窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項14】
c面以外の積層主面を有するIII族窒化物半導体積層構造を備えた窒化物半導体発光素子の製造方法であって、
前記III族窒化物半導体積層構造を形成する工程が、
第1導電型の窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第1導電型の窒化物半導体層の上に、c面以外の所定の結晶面の主面を有し、第1波長の光を発生する第1活性層を形成する工程と、
前記第1活性層の上に、第2導電型の窒化物半導体層を形成する工程と、
前記所定の結晶面の主面を有し、前記第1波長よりも長い第2波長の光を発生する第2活性層を、前記第1導電型の窒化物半導体層、前記第1活性層および前記第2導電型の窒化物半導体層が形成された後に形成する工程とを含む、窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記第2活性層を形成する工程が、前記III族窒化物半導体積層構造の他のすべての構成層が形成された後に当該第2活性層を形成する工程である、請求項13または14記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項16】
前記第2波長が、500nm以上である、請求項13〜15のいずれか一項に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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