説明

窒化物半導体発光素子

【課題】発光素子本来の機能を損なうことなく、20A/cmの密度の電流を流すために必要な電圧を3V未満として、従来よりも低電圧で動作することができる窒化物半導体発光素子を提供する。
【解決手段】多重量子井戸15に含まれるInGa1−bNバリア層のIn組成比bを0.04≦b≦0.1とし、かつ、このInGa1−bNバリア層を含めて、発光素子に含まれるIn組成比が0.04〜0.1の範囲のInGaN層の厚さの合計を60nm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子本来の機能を損なうことなく、従来よりも低電圧で動作することが可能な窒化物半導体発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化ガリウムアルミニウム(AlGaN)等の窒化物半導体は、緑色〜青色〜近紫外領域の発光素子(LED)用材料として、現在脚光を浴びている。
【0003】
図6に、従来の窒化物半導体発光素子の構造例を示す。
この発光素子は、サファイア基板1上に、低温成長GaNバッファ層2、アンドープGaN層3、n−GaN層4、InGa1−aN(井戸層)/GaN(バリア層)ペア多重量子井戸5、p−Al0.1Ga0.9N層6、p−GaN層7を順次形成し、さらに、リアクティブ・イオン・エッチング(RIE)装置によるエッチングにより、p−GaN層7の表面からn−GaN層4の一部までエッチングした後、RIEでエッチングされなかったp−GaN層7の表面に透明導電膜8(Ni2nm/Au4nm)を蒸着し、透明導電膜8と一部重なる部分にp電極9を、RIEでエッチングされたn−GaN層4の表面にn電極10をそれぞれ形成したものである。
【0004】
InGa1−aN井戸層/GaNバリア層からなるペア多重量子井戸5は、例えば、ピーク波長が460nmの青色発光素子の場合、Inの組成比aを0.15とし、成長温度を780℃として形成される。他方、ピーク波長が525nmの緑色発光素子の場合、Inの組成比aを0.25とし、成長温度を730℃として形成される。
【0005】
このような青色又は緑色で発光する窒化物半導体発光素子において、20A/cmの密度の電流を流すためには、従来、3V以上の電圧を印加する必要があった。この電圧値は、得られる光のエネルギー(青色の場合、発光ピーク波長を460nmとすると、2.7eV、緑色の場合、発光ピーク波長を525nmとすると、2.36eVとなる)と比較しても格段に大きい値である。このエネルギー差は、半導体内部で熱となり、窒化物半導体発光素子の動作時の温度を上昇させ、出力の低下、素子寿命の低下、封止樹脂の劣化などを引き起こすことになる。
【0006】
この原因としては、従来の窒化物半導体発光素子では、多重量子井戸のバリア層として、図6に示すようなGaN層、あるいは微量にInを含むInGaN(In組成3%以下)が用いられていたため、バリア層のバンドギャップが3V以上と大きくなり、この大きなバンドギャップが活性層内のキャリアの移動を妨げる障壁となるためと考えられる。以上より、窒化物半導体発光素子の駆動電圧を低減するためには、バリア層のバンドギャップを小さくすること、例えばIn組成が4%以上のInGaN層をバリア層として用いることが有効と考えられる(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特許第3135041号公報(実施例2、図1)
【特許文献2】特開2002−76521号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された発光素子では、多重量子井戸内のバリア層のIn組成を20%としているため、下地層であるn型GaN層と活性層の間の格子不整合が大きくなり、活性層に新たな格子欠陥が導入され、発光素子として機能しなくなる可能性がある。
【0008】
また、特許文献2に開示された発光素子では、In0.05Ga0.95Nからなるバリア層と同一組成の光ガイド層を200nmの厚さで成長させているため、やはり、格子不整合に基づく結晶欠陥が導入され、発光素子としての機能が損なわれてしまうおそれがある。
【0009】
従って、本発明の目的は、上記の問題を解決し、発光素子本来の機能を損なうことなく、20A/cmの密度の電流を流すために必要な電圧を3V未満として、従来よりも低電圧で動作することができる窒化物半導体発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく、従来よりもIn組成比の大きなInGaNバリア層を用いて、駆動電圧が小さくしかも発光素子としての機能を損なわない発光素子を実現するために鋭意研究を重ね、格子欠陥を発生させないように多重量子井戸を含め素子全体の層構造を注意深く検討した結果、(1)多重量子井戸活性層に含まれるInGaNバリア層のIn組成を特定の範囲に設定することにより、発光素子の駆動電圧を従来よりも低減できること、(2)InGaNバリア層の厚さを特定の範囲とし、かつ、InGaNバリア層および素子に含まれる特定範囲のIn組成を有するInGaN層の厚さの合計を所定の厚さ以下とすることにより、新たな格子欠陥の導入を防止できること、を見出した。
【0011】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、本発明の窒化物半導体発光素子は、基板上に、少なくともn型層、InGaN井戸層/InGaNバリア層の複数ペアからなる多重量子井戸活性層、及びp型層を積層してなり、前記多重量子井戸活性層に含まれるInGaNバリア層の組成がInGa1−xN(0.04≦x≦0.1)で表され、かつ、前記InGaNバリア層を含めて、発光素子に含まれるIn組成比が0.04〜0.1の範囲のInGaN層の厚さの合計が60nm以下であることを特徴とする。
【0012】
前記活性層の発光ピーク波長は、青色及び緑色の発光領域である430〜560nmの範囲とすることができる。
【0013】
前記InGaNバリア層の厚さを5〜20nmの範囲とすることが好ましい。
【0014】
前記多重量子井戸活性層と前記n型層との間に、In組成比が0.04〜0.1の範囲のInGaN層を挿入することもできる。
【0015】
前記基板上にGaN層又はAlGa1−yN層(0<y<0.5)を格子緩和した形態で形成し、その上に前記多重量子井戸活性層を形成することもできる。
【0016】
前記基板は、サファイア、Ga、SiC、Si、GaN、AlNのいずれかからなる単結晶基板を用いることができる。
【0017】
前記窒化物半導体発光素子を構成する積層構造の結晶成長は、気相成長装置内で行うのが好ましく、例えば、有機金属気相成長(MOVPE)装置又はハイドライド気相成長(HVPE)装置内で行うのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発光素子の機能を損なわずに、20A/cmの密度の電流を流すために必要な電圧を3V未満とすることが可能となり、従来よりも低電圧で駆動する窒化物半導体発光素子を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
図1に、第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の断面構造を示す。
この窒化物半導体発光素子は、サファイア基板1上に、低温成長GaNバッファ層2、アンドープGaN層3、n−GaN層4、InGa1−aN(井戸層)/InGa1−bN(バリア層)多重量子井戸15、p−Al0.1Ga0.9N層6、p−GaN層7を順次形成し、さらに、リアクティブ・イオン・エッチング(RIE)装置によるエッチングにより、p−GaN層7の表面からn−GaN層4の一部までエッチングした後、RIEでエッチングされなかったp−GaN層7の表面に透明導電膜8(Ni2nm/Au4nm)を蒸着し、透明導電膜8と一部重なる部分にp電極9を、RIEでエッチングされたn−GaN層4の表面にn電極10をそれぞれ形成したものである。
【0021】
即ち、この窒化物半導体発光素子は、図6に示す従来の窒化物半導体発光素子のInGa1−aN(井戸層)/GaN(バリア層)ペア多重量子井戸5をInGa1−aN(井戸層)/InGa1−bN(バリア層)多重量子井戸15に代えたことを特徴としている。
【0022】
このInGa1−aN(井戸層)/InGa1−bN(バリア層)多重量子井戸15において、InGa1−bNバリア層のIn組成比bは、後述する実施例の結果からも明らかなように、0.04〜0.1の範囲とすることにより、20A/cmの密度の電流を流すために必要な電圧を3V未満とすることができる。
【0023】
更に、InGa1−bNバリア層の厚さを5〜20nmの範囲とし、かつ、InGa1−bNバリア層の厚さの合計を60nm以下とすることにより、窒化物半導体発光素子の機能を損なうことがない。
【0024】
InGa1−bNバリア層のバリア数は、InGa1−bNバリア層の厚さの合計が60nm以下となる範囲で適宜設定することができる。
【0025】
なお、ピーク波長460nmの青色素子の場合は、InGa1−aN井戸層のaを0.15とし、ピーク波長525nmの緑色素子の場合は、aを0.25とできる点は従来例と同様である。
【0026】
[第2の実施の形態]
図2に、第2の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の断面構造を示す。
この窒化物半導体発光素子は、図1に示す構造の第1の実施形態に係る窒化物半導体発光素子のn−GaN層4とInGa1−aN/InGa1−bN多重量子井戸15との間に、アンドープInGa1−bN層17を挿入した層構成とした以外は、第1の実施形態に係る窒化物半導体発光素子と同様に形成されている。
【0027】
この窒化物半導体発光素子においても、InGa1−aN/InGa1−bN多重量子井戸15に含まれるInGa1−bNバリア層のIn組成比bを0.04〜0.1の範囲とし、かつバリア層の厚さを5〜20nmの範囲としているが、更にアンドープInGa1−bN層17のIn組成比bも0.04〜0.1の範囲とし、このアンドープInGa1−bN層17の厚さとInGa1−bNバリア層全体の厚さの合計の厚みを60nm以下としている。これより、第1の実施形態と同様に、窒化物半導体発光素子の機能を損なうことがなく、かつ20A/cmの密度の電流を流すために必要な電圧を3V未満とすることができる。
【0028】
なお、本実施形態では、格子整合の観点から、アンドープInGa1−bN層17のIn組成比をバリア層のIn組成比と同じbとしたが、0.04〜0.1の範囲内で、バリア層の組成比とは別個独立した値とすることもできる。
【0029】
また、本実施形態では、n−GaN層4とInGa1−aN/InGa1−bN多重量子井戸15との間に、アンドープInGa1−bN層17を1層挿入した層構成としたが、上記のようにIn組成比bを0.04〜0.1の範囲とし、かつバリア層を含めたInGaN層合計厚みを60nm以下とする条件を満たす限り、複数のInGaN層を挿入してもよい。
【0030】
[その他の実施形態]
第1及び第2の実施形態に係る窒化物半導体発光素子では、低温成長バッファ層2、アンドープ層3及びn型層4をGaNとしたが、これらの層の一部又は全部をAlGa1−cN(0<c<0.5)で形成することもできる。
【0031】
また、第1及び第2の実施形態に係る窒化物半導体発光素子では、基板としてサファイア基板1を用いたが、Ga基板やSiC基板やSi基板を用いることもできる。
【0032】
更に、アモルファス状態の低温成長バッファ層2に代えて、結晶成長させたAlNバッファ層を用いることもできる。
【0033】
また、図3に示すように、基板としてGaN基板21を用いることもできる。この場合は、n−GaN層4と同組成となるため、格子不整合や熱膨張係数の差異の問題が生じることがなく、図3に示すように、緩衝層としての低温成長バッファ層2及びその上に形成したアンドープGaN層3を省略することが可能となる。
【実施例】
【0034】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0035】
[実施例1]
(青色窒化物半導体発光素子の作製)
MOVPE法により、図1に示す構造の青色(ピーク波長460nm)窒化物半導体発光素子を製造した。
【0036】
まず、2インチ径のC面サファイア基板1をMOVPE装置に導入した後に、1200℃でサファイア基板1の表面をクリーニングし、その後520℃で低温成長GaNバッファ層2を形成した。その上に1150℃でアンドープGaN層3を2μm成長し、更に同じ温度でn型キャリア濃度を5×1018/cmとしたn−GaN層4を2μm成長した。
【0037】
その後、成長温度を780℃として、InGa1−aN量子井戸層3nm/InGa1−bNバリア層(0<b<0.13、厚さ=3〜30nm)の1〜10ペアの多重量子井戸15からなる発光層を成長した。量子井戸の成長は、まずn−GaN層4にバリア層を成長しその後に、井戸→バリア→井戸・・・の順で成長を行った。また、一番最後のバリア層の厚さは5nmとした。また、InGa1−aN量子井戸層のIn組成比aを0.15とした。
【0038】
その後、1100℃で、p型キャリア濃度を3×1017/cmとしたp−Al0.1Ga0.9N層6を30nm、p型キャリア濃度を7×1017/cmとしたp−GaN層7を170nm成長した。
【0039】
続いて、各ウエハの表面の一部をリアクティブ・イオン・エッチング(RIE)装置によるエッチングによりn−GaN層4の一部までエッチングした。その後、RIEでエッチングされなかったp−GaN層7の表面に透明導電膜8(Ni2nm/Au4nm)を蒸着し、酸素中500℃で5分間熱処理を行い、オーミック性の電極を形成した。続いて、RIEでエッチングした領域にTi200nm/Al500nm/Ti200nmを蒸着し、窒素中600℃10分間の熱処理によりオーミック性を持つn電極10とした。その後、Ti200nm/Au8000nmを透明導電膜8と一部重なるように蒸着してp電極9を形成すると共に、さらにn電極10上にも蒸着して、図1に示す構造の窒化物系半導体発光ダイオードを作製した。
【0040】
[実施例2]
(緑色窒化物系半導体発光素子の作製)
MOVPE法により、図1に示す構造の緑色(ピーク波長525nm)窒化物系半導体発光ダイオードを製造した。
【0041】
まず、2インチ径のC面サファイア基板1をMOVPE装置に導入した後に、1200℃でサファイア基板1の表面をクリーニングし、その後520℃で低温成長GaNバッファ層2を形成した。その上に1150℃でアンドープGaN層3を2μm成長し、更に同じ温度でn型キャリア濃度を5×1018/cmとしたn−GaN層4を2μm成長した。
【0042】
その後、成長温度を730℃として、InGa1−aN量子井戸層3nm/InGa1−bNバリア層(0<b<0.13、厚さ=3〜30nm)の1〜10ペアの多重量子井戸15からなる発光層を成長した。量子井戸の成長は、実施例1と同様に、まずn−GaN層4にバリア層を成長しその後に、井戸→バリア→井戸・・・の順で成長を行った。また、一番最後のバリア層の厚さは5nmとした。また、InGa1−aN量子井戸層のIn組成比aを0.25とした。
【0043】
その後、1100℃で、p型キャリア濃度を3×1017/cmとしたp−Al0.1Ga0.9N層6を30nm、p型キャリア濃度を7×1017/cmとしたp−GaN層7を170nm成長した。
【0044】
続いて、実施例1と同様にして、各ウエハの表面の一部をRIE装置によりn−GaN層4の一部までエッチングし、RIEでエッチングされなかったp−GaN層7の表面に透明導電膜8を形成し、この透明導電膜8と一部重なるように蒸着してp電極9を形成すると共に、RIEでエッチングした領域にn電極10を形成して、図1に示す構造の窒化物系半導体発光ダイオードを作製した。
【0045】
[実験例]
実施例1及び2で得られた窒化物系半導体発光ダイオードについて、バリア厚が10nmで量子井戸のペア数を4とし、20A/cm通電時の駆動電圧に対するInGaNバリア層のIn組成依存性、及び光出力に対するInGaNバリア層のIn組成依存性を調べた。結果を図4及び図5に示す。
【0046】
図4に示す結果より、InGaNバリア層のIn組成比が0.04〜0.1の範囲で青色、緑色共に、従来(In組成比=0)の場合よりも低駆動電圧で、3V未満を実現できることが分かった。
【0047】
同様に、図5に示す結果より、InGaNバリア層のIn組成比が0.04〜0.1の範囲で青色、緑色共に、従来(In組成比=0)の場合よりも、高出力な発光ダイオードが実現できることが分かった。
【0048】
他方、In組成比が0.1よりも大きい場合には、青色、緑色共に、発光はほとんど観測されず(図5)、駆動電圧が1V程度であった(図4)。これは格子不整合が大きくなり格子欠陥が導入されたため、欠陥による漏れ電流が支配的な電流輸送機構となり、pn接合での発光再結合が生じなくなったためと考えられる。
【0049】
上記のバリア厚10nm、ペア数4以外の様々な組み合わせについても、同様な実験を行った結果、バリア層のIn組成が0.04〜0.1の範囲で、その厚さが5〜20nmの範囲であり、かつ、バリア層の厚さの合計が60nm以下である場合に、上記と同様に駆動電圧を3V未満にできることが明らかとなった。
【0050】
[実施例3]
図2に示すように、多重量子井戸5とn−GaN層4との間に、1〜200nmのアンドープInGa1−bN層17を挿入したLEDを製作し、実施例1及び実施例2と同様の実験を行った。
【0051】
その結果、上記の多重量子井戸活性層に含まれるInGa1−bNバリア層のIn組成比bを0.04〜0.1、その厚さを5〜20nmとし、かつIn組成比bを0.04〜0.1の範囲としたアンドープInGa1−bN層17をバリア層全体の厚さに加えた合計の厚さが60nm以下である場合に、実施例1、2と同様に駆動電圧を従来よりも低い3V未満とすることができた。
【0052】
これに対して、バリア層全体の厚さが60nm以下であっても、In組成bが0.04〜0.1の範囲のアンドープInGa1−bN層17とバリア層全体の厚さとの合計が60nmを超えた場合には、新たな結晶欠陥が導入され、発光ダイオードとしての機能は失われてしまった。
【0053】
[実施例4]
実施例3で、活性層の成長温度を680〜800℃の範囲で変えて、発光のピーク波長が430〜560nmの範囲の発光ダイオードを作製した。
【0054】
この場合にも、実施例3と同様に、多重量子井戸活性層に含まれるInGa1−bNバリア層のIn組成比bを0.04〜0.1、その厚さを5〜20nmとし、かつIn組成比bを0.04〜0.1の範囲としたアンドープInGa1−bN層17をバリア層全体の厚さに加えた合計の厚さが60nm以下である場合に、実施例3と同様に駆動電圧を従来よりも低い3V未満とすることができた。
【0055】
[実施例5]
実施例3で、低温バッファ層およびn型層をAlGa1−cN(0<c<0.5)とした発光ダイオードを製作した。この場合にも、実施例3と同様の結果が得られた。
【0056】
[実施例6]
実施例3で、低温バッファ層に代えて、1100℃で成長した1μmのAlN層をバッファ層として用いて発光ダイオードを製作した。この場合にも、実施例3と同様の結果が得られた。
【0057】
[実施例7]
実施例3で、基板をSiCとし、バッファ層を1100℃で成長した100nmのAlN層として発光ダイオードを製作した。この場合にも、実施例3と同様の結果が得られた。
【0058】
[実施例8]
実施例3で、基板をSiとし、バッファ層を1100℃で成長した100nmのAlN層として発光ダイオードを製作した。この場合にも、実施例3と同様の結果が得られた。
【0059】
[実施例9]
実施例3で、図3に示すように、基板をGaNとしてこの上に直接n型のGaN層を成長して発光ダイオードを製作した。この場合にも、実施例3と同様の結果が得られた。
【0060】
[実施例10]
実施例3で、基板をAlNとしてこの上に直接n型のGaN層を成長して発光ダイオードを製作した。この場合にも、実施例3と同様の結果が得られた。
【0061】
[実施例11]
実施例3で、基板をGaとしてこの上に直接n型のGaN層を成長して発光ダイオードを製作した。この場合にも、実施例3と同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図2】第2の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図3】他の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図4】20A/cm通電時の駆動電圧に対するInGaNバリア層のIn組成依存性を示すグラフである。
【図5】光出力に対するInGaNバリア層のIn組成依存性を示すグラフである。
【図6】従来例に係る窒化物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 サファイア基板
2 低温成長GaNバッファ層
3 アンドープGaN層
4 n−GaN層
5 InGa1−aN/InGa1−bN多重量子井戸
6 p−Al0.1Ga0.9N層
7 p−GaN層
8 透明導電膜
9 p電極
10 n電極
15 InGa1−aN/GaNペア多重量子井戸
17 アンドープInGa1−bN層
21 GaN基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、少なくともn型層、InGaN井戸層/InGaNバリア層の複数ペアからなる多重量子井戸活性層、及びp型層を積層してなり、
前記多重量子井戸活性層に含まれるInGaNバリア層の組成がInGa1−xN(0.04≦x≦0.1)で表され、
かつ、前記InGaNバリア層を含めて、発光素子に含まれるIn組成比が0.04〜0.1の範囲のInGaN層の厚さの合計が60nm以下であることを特徴とする窒化物半導体発光素子。
【請求項2】
前記活性層の発光ピーク波長が430〜560nmの範囲にあることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項3】
前記InGaNバリア層の厚さが5〜20nmの範囲であることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項4】
前記多重量子井戸活性層と前記n型層との間に、In組成比が0.04〜0.1の範囲のInGaN層を挿入したことを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項5】
前記多重量子井戸活性層が、基板上に形成されたGaN層又はAlGa1−yN層(0<y<0.5)の上に形成されることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項6】
前記基板は、サファイア、Ga、SiC、Si、GaN、AlNのいずれかからなる単結晶基板であることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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