説明

窓のシール装置ならびにシールストリップ

【課題】窓板が停止しているときは十分な案内性とシール性を維持し、窓板が移動するときは摺動抵抗を無くすか又は減少させ得るシール装置を提供する。
【解決手段】本発明のシール装置は、シールストリップ102を備えている。シールストリップは、窓板66に対向する位置に管状シール部130を備えている。管状シール部は、弾性変形可能な中空壁132により閉じられて内部に気体が満たされた内部空間134を有する。管状シール部は気圧調節機構に通気可能に連結されている。ここで、窓板が停止しているときは、管状シール部は窓板に所定の押圧力を与えた状態で接触して窓板とドア枠61との間をシールする。窓板が少なくとも上昇移動するときは、気圧調節機構により内部空間内の気圧を減少させて窓板と管状シール部を非接触状態とさせるか、若しくは窓板に対する管状シール部の押圧力を減少させた状態で接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両用として適する窓のシール装置と窓のシール装置を構成するシールストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に設けられる窓としては、典型的には車体の側面に取り付けられるドア内を上昇および下降移動(典型的には昇降動)するガラス製の窓が挙げられる。そして、ドア枠に形成された溝内に沿って装着されるシール装置としては、ゴムや熱可塑性エストラマー等の弾性ポリマー材料から成形される長尺なシールストリップ(典型的にはガラスラン、ガラスランチャンネル、ランチャンネル、案内部材等とも呼称される案内ストリップ。)が多用されている。上記シールストリップの主たる目的は、(1)シールストリップのシール部を窓板の外周縁表面に弾性押圧力により弾性接触させて窓板とドア枠との間をシールし、車外の水や埃が車内へ侵入するのを防止すること、及び(2)窓板が移動するときに、窓板を所定の位置に案内することである。
【0003】
上記窓の窓板は、窓板の下縁がドアの内部に設けられた昇降機構(典型的には、Xアーム機構とケーブル型機構の二種類が多用されている)に連結されており、昇降機構の作動によって窓板がドア枠内を昇降動する。前記昇降機構は車両が走行するためのエンジン等とは別の駆動源(典型的には、電動モーター)に連結され、該昇降機構は前記駆動源の駆動に伴い作動する。前記駆動源の作動はドアの車内側に設けられた選択スイッチ(典型的には、車内側のドアインナートリムやアームレストに備えられた選択スイッチ)の上昇又は下降の選択スイッチの操作により行われる。
【0004】
上述したシール装置の一つの目的である窓板とドア枠との間のシール性を良好に保つことは、窓板の表面に接触するシール部の押圧力を大きくすることにより達成することができる。
一方、シール部の押圧力を大きくすればするほど移動する窓板とシール部との摩擦力が大きくなり、窓板が移動するときの摺動抵抗が増大する。これにより、窓板を移動するためには大きな駆動力や頑丈で大型の窓板移動機構が必要となる。また、窓板が移動するときの摺動抵抗が増大すると、シール部の摩耗が増大しシール部の寿命が短くなる。更に窓板が移動するときに窓板とシール部との擦れ音(異音)が発生することがあり、乗員に不快感を与える等の問題が発生する。
一般に、窓板が昇降移動、特に上昇動するときの全体の負荷を100としたとき、前記ガラスランチャンネル等の固定されたシールストリップのシール部と移動する窓板との摺動による負荷が30前後と最も大きく、次いで窓板の自重による負荷が28前後と言われている。
【0005】
上述した摺動抵抗を減少させる観点から、例えば特許文献1には、昇降動する窓板の表面と接触するリップ部の表面にウエザストリップ本体よりも摩擦係数が小さい低摩擦材料の層を一体的に成形することにより摺動抵抗を減少させる発明が記載されている。また、特許文献2には、昇降動する窓板の表面と接触するシールリップの表面に長手方向に沿って複数の突条を形成して窓板の面との接触面積を小さくすることにより摺動抵抗を減少させる発明が記載されている。特許文献3には、ガラスランに中空室を形成することにより昇降動する窓ガラスとゴム薄膜との摺動抵抗を減少させる発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−330345号公報
【特許文献2】特開2005−247164号公報
【特許文献3】特開平05−270277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2のいずれにおいても、シールストリップ(ウエザストリップ)は窓板表面に接触した状態で用いられ、しかも窓板とドア枠との間のシールを良好に果す事が求められるため、窓板の面に対して所定の接触押圧力を保って接触させる必要があるのでシール性の維持と摺動抵抗の低減の両方を満足させるという観点からは必ずしも十分ではない。
【0008】
また、特許文献3の発明(特に、第3実施例の段落[0035]以降の説明)では、ガラスランの第1及び第2中空室14,16は窓ガラスが開閉移動しているときはゴム薄膜13a,15aが窓ガラスの表面から離れて(この状態が自然の状態(明細書では平衡状態)である)いる。窓ガラスが閉じた状態で第1及び第2中空室14,16内にエアーが供給されて第1及び第2中空室14,16が正圧状態になることに伴ってゴム薄膜13a,15aが窓ガラスに圧着された状態になるとの記載がある。
しかしながら、特許文献3の発明では、なお下記に記載する不具合が解消されておらず、実用として供するには更なる改善の余地がある。
【0009】
窓ガラスを(開から閉に、又は閉から開に移動させている途中で停止させて)半開きにして車両が走行するときには、第1及び第2中空室14,16が平衡状態に戻り、ゴム薄膜13a,15aが窓ガラスから離れた状態になるので窓ガラスを(特に窓ガラス面と直交する方向で)正規の望ましい位置に維持できない。この状態で車両が走行すると走行中の車両に横方向の振動が生じたとき、窓ガラスの慣性力により窓ガラスが枠に対して相対的に激しく揺れて、保護枠にはめ込まれたガラスランの側壁部に衝突し衝突音などの異音が発生する。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するべく創出されたものであり、窓板の移動が停止しているときは(典型的には、窓板が閉じているとき及び半開きのとき)十分なシール性を維持し且つ窓板が少なくとも上昇移動するとき(典型的には、窓板が開状態から閉状態に変わるとき及び閉状態から開状態に変わるとき)には前記摺動抵抗を無くすか又は減少させる事が出来る新規のシール装置ならびに該シール装置を構成するために用いられるシールストリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を実現するべく本発明によって車両のドア枠に装着されるシール装置が提供される。
即ち、本発明の窓のシール装置は、請求項1に記載のとおり、窓を有する車両用のドアのドア本体と、前記ドア本体と一体的に形成され、該ドア本体の上縁との間に所定形状の窓開口を形成すると共に内部に所定幅の連続した溝を有する剛性のドア枠と、前記ドア枠の溝に沿って昇降移動し前記窓を閉開する窓板と、前記ドア枠の溝に沿って装着されて前記ドア枠に固定され、前記窓板の外周縁と前記ドア枠との間をシールすると共に昇降移動する前記窓板を案内する長尺なシールストリップと、前記ドア本体内に備えられ、前記窓板の下側の外周縁に連結されて前記窓板を昇降移動させる窓板昇降機構と前記窓板昇降機構を駆動する駆動源とを有する車両用ドアの窓のシール装置である。
前記シールストリップは、前記窓板の昇降方向と平行に配置される少なくとも一つの前記ドア枠の溝に装着されたとき前記窓板の外周縁端面と対向する位置に配置される底部ストリップと、該底部ストリップの幅方向の車内側端部と車外側端部の少なくともいずれか一方から前記窓開口の中心側に向けて延びる側部ストリップとを有し、
前記側部ストリップと前記底部ストリップの少なくともいずれかには、前記窓板の外周縁に対向する位置に弾性変形可能な中空壁により閉じられて内部に気体が満たされた内部空間を有する管状シール部が長手方向に形成されている。
前記管状シール部は前記内部空間の気圧の増減に対応してその外形と該内部空間の体積が拡大及び縮小可能で、前記外形と体積が拡大したとき前記管状シール部の外面が前記窓板の外周縁に所定長さ当たりで所定の押圧力を保って接触し、縮小したとき前記窓板の外周縁から離れて非接触となるか又は前記押圧力が減少した状態で前記窓板の外周縁と接触可能となる。
前記管状シール部は、前記窓板の少なくとも上昇移動時に該管状シール部の前記内部空間内の気体を吸引すると共に気圧を減少させることにより該管状シール部の外形および内部空間の体積を縮小させ、前記窓板の停止時に前記内部空間内に気体を流入させると共に前記気圧を増大させて前記管状シール部の外形および内部空間の体積を拡大させることができる気圧調節機構に通気可能に連結されている。
そして、前記窓板昇降機構が非作動で、前記窓板が停止しているときは、前記窓板の外周縁が前記シールストリップの中に存在しない長手方向の範囲内において、前記管状シール部は第一の位置に位置している。
前記窓板の外周縁が前記シールストリップの中に存在する長手方向の範囲内において、前記管状シール部は、前記窓板の外周縁と接触して、前記第一の位置よりも前記窓板の開閉移動経路から離れる第二の位置に変位させられると共に前記窓板の外周縁に所定の押圧力を与えた状態で接触して前記窓板と前記ドア枠との間をシールし、
前記窓板昇降機構の作動により前記窓板が少なくとも上昇移動するときは、前記気圧調節機構の作動により前記管状シール部の前記内部空間から気体を吸引し前記内部空間内の気圧を減少させることにより、(1)前記管状シール部を全長に亘って前記第二の位置よりも更に前記窓板の開閉移動経路から離れる第三の位置へ変位させて前記窓板の外周縁と非接触状態にさせるか、若しくは(2)前記窓板の外周縁が前記シールストリップの中に存在する長手方向の範囲内において、前記窓板の外周縁に対する前記管状シール部の所定長さ当たりの押圧力を前記第二の位置における押圧力よりも減少させた状態で接触させることを特徴とする。
【0012】
かかる構成の本発明の窓のシール装置では、側部ストリップと底部ストリップの少なくともいずれかにおいて、窓板の外周縁に対向する位置に弾性変形可能な中空壁により閉じられて内部に気体が満たされた内部空間を有する管状シール部が長手方向に形成されている。そして、上記管状シール部は、窓板が少なくとも上昇移動するときには前記内部空間の気圧を減少させ(内部空間を負圧の状態にし)、窓板の停止時には前記内部空間の気圧を増大させることができる気圧調節機構に連結されている。上記内部空間の気圧が減少したときは管状シール部の外形と内部空間の体積が縮小して管状シール部の外面が窓板の外周縁から離れて非接触状態になるか又は接触していても窓板の外周縁に対する管状シール部の押圧力が減少する。一方で、上記内部空間の気圧が増大したときは管状シール部の外形と内部空間の体積が拡大して管状シール部の外面が窓板の外周縁に所定の押圧力を保って接触する。
【0013】
このように本発明の窓のシール装置では、管状シール部の外形と内部空間の体積を拡大および縮小することにより、開閉窓板が停止状態のとき(典型的には、窓板が閉じているとき)は管状シール部の外面が開閉窓板の外周縁に接触して、ドア枠と窓板との間で所定のシール性能を維持することができる。一方、窓板が少なくとも上昇移動するとき(典型的には、窓板が開状態から閉状態に変わるとき)には管状シール部が窓板の外周縁から離れた位置に後退するので、窓板と管状シール部との摩擦力(「管状シール部の動摩擦係数(μ)」×「管状シール部の窓板にかかる荷重(P)」)のうち、前記荷重(P)が無くなる(ゼロになる)か又は減少する。このことにより、摺動抵抗(摩擦力に伴う抵抗)が実質的に無くなるか、又は従来に比べて減少させることができる。さらにまた、以下の(1)から(4)の少なくとも一つが可能となる。(1)窓板と接する管状シール部の磨耗が減少するか又はシール装置の他の形態(窓板の下降移動時にも内部空間内の気圧を減少させるような形態)では管状シール部の磨耗が無くなるので、管状シール部の寿命を長くすることができる。(2)窓板を移動させる際、特に上昇移動させるときの駆動力(電動の場合は電動モーターの負荷)が従来よりも少なくて済む。従って、窓板を移動させる移動機構(ウインドウレギュレーター機構)を小型化、簡素化および軽量化することができる。(3)管状シール部が離れた状態での窓板の移動中において、窓板と管状シール部との擦れ音が発生しない。(4)管状シール部が気体のクッション(緩衝)作用をするので、窓板が車両の横方向に急激に変位してもドア枠等との衝突音を発生させない。
【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1の窓のシール装置において、前記管状シール部は、前記窓板の昇降移動時(即ち、上昇移動時と下降移動時の両方をいう。)に該管状シール部の前記内部空間内の気体を吸引すると共に気圧を減少させることにより該管状シール部の外形および内部空間の体積を縮小させ、前記窓板の停止時に前記内部空間内に気体を流入させると共に前記気圧を増大させて前記管状シール部の外形および内部空間の体積を拡大させることができる気圧調節機構に通気可能に連結されている。そして、前記窓板昇降機構の作動により前記窓板が移動(即ち上昇移動および下降移動)するときは、前記気圧調節機構の作動により前記管状シール部の前記内部空間から気体を吸引し前記内部空間内の気圧を減少させることにより、(1)前記管状シール部を全長に亘って前記第二の位置よりも更に前記窓板の開閉移動経路から離れる第三の位置へ変位させて前記窓板の外周縁と非接触状態にさせるか、若しくは(2)前記窓板の外周縁が前記シールストリップの中に存在する長手方向の範囲内において、前記窓板の外周縁に対する前記管状シール部の所定長さ当たりの押圧力を前記第二の位置における押圧力よりも減少させた状態で接触させることを特徴とする。
かかる構成によると、上記管状シール部は、窓板の上昇移動時および下降移動時には内部空間の気圧を減少させ、窓板の停止時には内部空間の気圧を増大させることができる気圧調節機構に連結されているので、上記(1)から(4)の効果をさらに顕著に奏することができる。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の窓のシール装置において、前記ドア枠は、前記ドア本体の上縁の端部から鉛直方向に延びる縦辺枠と前記縦辺枠の上端からドア本体の上縁の他端に向けて延びる上辺枠とを備えており、前記縦辺枠に装着されるシールストリップの端部と前記上辺枠に装着されるシールストリップの長手方向の端部とは、該両方のシールストリップを交差させて(典型的には少なくとも一方のシールストリップが非直線状に配置されている状態)接合されている。ここで該両方のシールストリップの接合された端部では、それぞれの前記管状シール部の内部空間同士が通気可能に接合されていることを特徴とする。
かかる構成によると、ドア枠の溝に装着されたシールストリップの全長に亘って(センターピラー側の縦辺枠から上辺枠を介してフロントピラー側の縦辺枠まで)連続する内部空間を備えた管状シール部を形成することができる。これにより、ドア枠の全長に亘り管状シール部と窓板とのシール性能を維持でき、特に窓が全閉する直前に発生する大きな抵抗(窓板の上辺外周縁が、ドア枠の上辺枠に装着されたシールストリップと接触し始めてから閉じ切るまでの間に発生する抵抗)を無くすか又は減少させることができる。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかの窓のシール装置において、前記駆動源は、正回転及び逆回転可能な電動モーターであることを特徴とする。
かかる構成によると、容易に窓板を上昇移動および下降移動させることができるので、上述した効果を奏する本発明のシール装置をより簡単に実施することができる。また、この種のモーターを用いて簡便に本発明の装置を構築することができる。
【0017】
また、請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかの窓のシール装置において、前記内部空間内の気体を吸引して前記管状シール部の外形及び内部空間の体積を縮小させた後に、時間的に遅れて前記窓板を少なくとも上昇移動させることを特徴とする。
かかる構成によると、管状シール部の縮小動作が完了した後に窓板が移動することになるので、窓板の少なくとも上昇移動開始時点で窓板の表面と管状シール部の接触を阻止するか、若しくは管状シール部の窓板への押圧力を減少させることができ、窓板の少なくとも上昇移動時間中にわたってスムースな移動を実現することができる。
【0018】
また、請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかの窓のシール装置において、前記気圧調節機構はピストン及びピストンロッドを有するシリンダーであり、前記内部空間が前記シリンダー内の空間と通気可能に連通されていて、前記駆動源の作動と連動してピストンの前進又は後退で前記内部空間内の気圧を増減させることを特徴とする。
かかる構成によると、ピストン及びピストンロッドを有するシリンダーのような公知の機構を用いることによって、内部空間に負圧を容易に発生させることができる。
【0019】
また、請求項7の発明は、請求項6の窓のシール装置において、前記ピストン機構は、前記窓板を上昇移動させる際或いは上昇移動および下降移動させる際のいずれにおいても前記ピストンを同一方向に強制移動させることを特徴とする。
かかる構成によると、窓板が窓開口を少なくとも上昇移動する際および昇降移動する際(上昇移動と下降移動の両方をいう)のいずれのときも、ピストンを移動させることにより内部空間内から空気を吸引して内部空間内に負圧を発生させることができる。
【0020】
また、請求項8の発明は、請求項6の窓のシール装置において、前記シリンダーは、前記ピストンを移動させて前記管状シール部が縮小方向に作動を完了するまでの時間よりも前記ピストンが元の位置に戻り、前記管状シール部が拡大方向の非作動状態に復帰するまでの時間が長くなるように構成されていることを特徴とする。
かかる構成によると、窓板が移動を停止した後に管状シール部が元の形状にゆっくりと復元するので、窓板の移動を阻害せず、管状シール部が窓板の表面と接触するときに衝突音が発生しない。
【0021】
さらに、上記目的を実現するべく本発明によって車両のドアに装着されるシール装置を構成するシールストリップが提供される。
即ち、本発明のシールストリップは、請求項9に記載のとおり、窓を有する車両用のドアのドア本体と、前記ドア本体と一体的に形成され、該ドア本体の上縁との間に所定形状の窓開口を形成すると共に内部に所定幅の連続した溝を有する剛性のドア枠と、前記ドア枠の溝に沿って昇降移動し前記窓を閉開する窓板と、前記ドア本体内に備えられ、前記窓板の下側の外周縁に連結されて前記窓板を昇降移動させる窓板昇降機構と前記窓板昇降機構を駆動する駆動源とを有する車両用ドアに設けられた窓のシール装置を構成するために用いられるシールストリップである。
前記シールストリップは、前記ドア枠の溝に沿って装着されて前記ドア枠に固定され、前記窓板の外周縁と前記ドア枠との間をシールすると共に昇降移動する前記窓板を案内する長尺なシールストリップであり、
前記窓板の昇降方向と平行に配置される少なくとも一つの前記ドア枠の溝に装着されたとき前記窓板の外周縁端面と対向する位置に配置される底部ストリップと、
前記底部ストリップの幅方向の車内側端部と車外側端部の少なくともいずれか一方から前記窓開口の中心側に向けて延びる側部ストリップとを有し、
前記側部ストリップと前記底部ストリップの少なくともいずれかには、前記窓板の外周縁に対向する位置に弾性変形可能な中空壁により閉じられて内部に気体が満たされた内部空間を有する管状シール部が長手方向に形成されている。
前記管状シール部は、前記内部空間の気圧の増減に対応してその外形と該内部空間の体積が拡大及び縮小可能で、前記外形と体積が拡大したとき前記管状シール部の外面が前記窓板の外周縁に所定長さ当たりで所定の押圧力を保って接触し、縮小したとき前記窓板の外周縁から離れて非接触となるか又は前記押圧力が減少した状態で前記窓板の外周縁と接触可能となり、
前記シールストリップが前記ドア枠の溝に沿って装着されたとき、前記管状シール部は、前記シール装置に設けられている気圧調節機構に連結され、前記気圧調節機構は前記窓板の少なくとも上昇移動時に該管状シール部の前記内部空間内の気体を吸引すると共に気圧を減少させることにより該管状シール部の外形および内部空間の体積を縮小させ、前記窓板の停止時に前記内部空間内に気体を流入させると共に前記気圧を増大させて前記管状シール部の外形および内部空間の体積を拡大させることができるように構成されている。
ここで前記窓板昇降機構が非作動で、前記窓板が停止しているときは、前記窓板の外周縁が前記シールストリップの中に存在しない長手方向の範囲内において、前記管状シール部は第一の位置に位置し、
前記窓板の外周縁が前記シールストリップの中に存在する長手方向の範囲内において、前記管状シール部は、前記窓板の外周縁と接触して、前記第一の位置よりも前記窓板の開閉移動経路から離れる第二の位置に変位させられると共に前記窓板の外周縁に所定の押圧力を与えた状態で接触して前記窓板と前記ドア枠との間をシールし、
前記窓板昇降機構の作動により前記窓板が少なくとも上昇移動するときは、前記気圧調節機構の作動により前記管状シール部の前記内部空間から気体を吸引し前記内部空間内の気圧を減少させることにより、(1)前記管状シール部を全長に亘って前記第二の位置よりも更に前記窓板の開閉移動経路から離れる第三の位置へ変位させて前記窓板の外周縁と非接触状態にさせるか、若しくは(2)前記窓板の外周縁が前記シールストリップの中に存在する長手方向の範囲内において、前記窓板の外周縁に対する前記管状シール部の所定長さ当たりの押圧力を前記第二の位置における押圧力よりも減少させた状態で接触させることを特徴とする。
かかる構成のシールストリップを用いることによって上述の作用効果を奏する本発明のシール装置を好適に構成することができる。
【0022】
また、請求項10の発明は、請求項9のシールストリップにおいて、前記シールストリップは、弾性変形可能なゴム又は熱可塑性エストラマーから横断面形状が一定に成形されていることを特徴とする。
かかる構成によると、公知の材料を用いて上述した効果を奏する本発明のシールストリップを押出成形により簡単に製造することができる。
【0023】
また、請求項11の発明は、請求項9又は10のシールストリップにおいて、前記管状シール部は、車内側の側部ストリップに設けられていることを特徴とする。
かかる構成によると、車内側の側部ストリップに管状シール部を形成することで、車外側の表面において窓板とドア枠の表面との間の段差を小さく維持できる。
【0024】
また、請求項12の発明は、請求項9又は10のシールストリップにおいて、前記管状シール部は、車内側の側部ストリップと前記底部ストリップとを跨いで設けられていることを特徴とする。
かかる構成によると、窓板が閉じた状態では、管状シール部が窓板の外周縁の車内側表面と端面の両方に接触してシールすることができる。このため、請求項11の窓のシール装置によると、窓板とドア枠との間のシール性をさらに安定して保つことができる。
【0025】
また、請求項13の発明は、請求項9から12のいずれかのシールストリップにおいて、前記管状シール部の中空壁の少なくとも内面側は、前記側部ストリップの材料よりも柔軟で耐屈曲性と気密性の高い材料から成形されていることを特徴とする。
かかる構成によると、耐屈曲性(管状シール部の繰り返し拡大、縮小作動で亀裂等が生じない)が高いので安定した性能が保たれる。また、内部空間内の気体と外部の気体とが中空壁を通って不測に漏れず安定して作動する。
【0026】
また、請求項14の発明は、請求項9から13のいずれかのシールストリップにおいて、前記管状シール部における前記中空壁の幅方向の端末が前記側部ストリップと底部ストリップの少なくともいずれかと化学的に接合されていることを特徴とする。
かかる構成によると、管状シール部における中空壁の幅方向の端末は側部ストリップと化学的に接合(典型的には融着または溶着)されているので、当該中空壁の端末において安定した接合が得られ中空壁と側部ストリップがその接合部において剥がれる等の不具合は生じない。
【0027】
また、請求項15の発明は、請求項9から14のいずれかのシールストリップにおいて、管状シール部、前記底部ストリップ、および側部ストリップのうちの前記窓板の外周縁と対向する少なくとも一つの表面には、前記窓板との摺動抵抗を減少させる処理層が形成されていることを特徴とする。
かかる構成によると、窓板と処理層が形成された部分との間に生じる摩擦力が小さくなり、窓板が移動するときの摺動抵抗を減少させることができる。
【0028】
また、請求項16の発明は、請求項15のシールストリップにおいて、前記処理層は、前記表面の長手方向に沿って連続して形成された複数の凹凸部であることを特徴とする。
かかる構成によると、窓板とシールストリップとの接触する面積が小さくなるので、窓板と処理層が形成された部分との間に生じる摩擦力が小さくなり、窓板が移動するときの摺動抵抗を減少させることができる。
【0029】
また、請求項17の発明は、請求項15又は16のシールストリップにおいて、前記処理層は、前記管状シール部または前記シールストリップの材料よりも窓板に対する摩擦係数が低い材料で構成された低摩擦材層であることを特徴とする。
かかる構成によると、窓板と低摩擦材層が形成された部分との間に生じる摩擦力が小さくなり、窓板が移動するときの摺動抵抗を減少させることができる。特に低摩擦材層の表面に前記の凹凸部を形成すれば、摺動抵抗を更に減少させられる。
【0030】
さらに、上記目的を実現するべく本発明によってシールストリップ組立体が提供される。即ち、本発明のシールストリップ組立体は、請求項18に記載のとおり、請求項9から17のいずれか一項に記載のシールストリップの少なくとも2つが長手方向の端部で相互に接合されてなるシールストリップ組立体である。前記シールストリップ組立体は、前記ドア枠の前記ドア本体の上縁の端部から鉛直方向に延びる縦辺枠に装着されるシールストリップと、前記ドア枠の前記縦辺枠の上端から前記ドア本体の上縁の他端に向けて延びる上辺枠に装着されるシールストリップとを備えている。そして、前記縦辺枠に装着されるシールストリップの長手方向の端部と前記上辺枠に装着されるシールストリップの長手方向の端部とは、該両方のシールストリップを交差させて接合されており、該両方のシールストリップの接合された端部では、それぞれの前記管状シール部の内部空間同士が通気可能に接合されていることを特徴とする。
かかる構成によると、ドア枠の溝に装着されたシールストリップ組立体の全長に亘って(センターピラー側の縦辺枠から上辺枠を介してフロントピラー側の縦辺枠まで)連続する内部空間を備えた管状シール部を形成することができる。これにより、ドア枠の全長に亘り管状シール部と窓板とのシール性能を維持でき、特に窓が全閉する直前に発生する大きな抵抗(窓板の上辺外周縁が、ドア枠の上辺枠に装着されたシールストリップと接触し始めてから閉じ切るまでの間に発生する抵抗)を無くすか又は減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係るシール装置が取り付けられた自動車の前ドアと後ドアを示す車外側側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る前ドアをセンターピラー側から見た側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る前ドアの窓板をセンターピラー側から見た側面図である。
【図4】図1中のIV−IV線に沿う前ドアの横断面図であり、第1実施形態に係るシールストリップの断面図である。
【図5】図1中のV−V線に沿う縦断面図であって、シール装置の構造を示す部分断面図である。
【図6】第1実施形態に係る気圧調節機構の構造を示す平面図である。
【図7】第1実施形態に係るリンク駆動機構の構造を示す正面図である。
【図8】第1実施形態に係る負圧発生機の構造を示す断面図である。
【図9】第1実施形態に係るクラッチと電動モーターの作動の制御の原理を示す配線図である。
【図10】第1実施形態に係るシールストリップにおいて、窓板がシールストリップの中に存在する場合に車内側管状シール部が車内側に変位した状態を示す横断面図である。
【図11】第1の変更例に係る気圧調節機構の構造を示す平面図である。
【図12】第1の変更例に係るリンク駆動機構の構造を示す正面図である。
【図13】第2の変更例に係る気圧調節機構の構造を示す平面図である。
【図14】第3の変更例に係る気圧調節機構の構造を示す平面図である。
【図15】第4の変更例に係るシールストリップを示す横断面図である。
【図16】第5の変更例に係るシールストリップを示す横断面図である。
【図17】第3実施形態に係るシールストリップの横断面図である。
【図18】第2実施形態に係るクラッチと電動モーターの作動の制御の原理を示す配線図である。
【図19】第2実施形態に係る駆動回路において、窓板の上昇移動時の電流の流れを示す配線図である。
【図20】第2実施形態に係る駆動回路において、窓板の下降移動時の電流の流れを示す配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば押出成形等によるシールストリップ(ガラスランチャンネル)の製造に関する一般的な事項)は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている事項と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0033】
以下、図面を参照しつつ本発明の窓のシール装置(以下、単に「シール装置」という。)の好適な一実施形態(第1実施形態)を詳細に説明する。図1は、自動車(車両)1に装着される前ドア6と後ドア6Aを模式的に示す側面図である。この図では、自動車1の左側面に装着されるドア6,6Aのみ示しているが、自動車1の右側面にも同様の構成(即ち左右対称)のドアならびにシール装置が装着される。以下の説明は図示される左側の前後のドア6,6Aに装着されるシール装置3についてのみ説明し、重複する右側面の前ドア及び後ドアに装着されるシール装置についての説明は省略する。図2は、本発明の一実施形態に係る前ドア6を後ろ側(センターピラー60側)から見た側面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る窓板66を後方から見た側面図である。
【0034】
図1に示すように、本実施形態に係るシール装置3は、ドア本体8と、ドア枠(窓枠)22と、窓板66と、シールストリップ組立体100と、窓板昇降機構74と気圧調節機構150(図6参照)と電動モーター(駆動源)80とを備えている。以下、シール装置3の各構成部材について説明する。なお、後ドア6Aおよび右側面に装着される前ドア,後ドアも同様のシール装置(図示省略)を備えている。
図1および図2に示すように、本実施形態に係る前ドア6は、ドア本体8を構成するドアアウターパネル12及びドアインナーパネル14ならびに該ドア本体8の上方に形成されたドア枠(窓枠)22を有する。
ドア枠22は、自動車1のセンターピラー60に沿って上下方向に配置されるセンターピラー側縦辺枠61と、センターピラー側縦辺枠61の上端と一体に接合され、自動車1のフロントピラー62に沿って延びる上辺枠50(水平枠56と傾斜枠58とを含む)とを有する。また、図1に示すように、上辺枠50の傾斜枠58のやや前寄りの部位には、ほぼ鉛直方向(即ちセンターピラー側縦辺枠61と平行に延びる方向)に延びるフロントピラー側縦辺枠63(「仕切り枠」、「パーテション」ともいう。)の上端が接続されてパーテション63が装着されている。ドア本体上縁10と、センターピラー側縦辺枠61と、上辺枠50とフロントピラー側縦辺枠63とにより窓開口部70が形成されている。
【0035】
同様に、本実施形態に係る後ドア6Aは、ドア本体8Aのドアアウターパネル12A及びドアインナーパネル(図示せず)ならびに該ドア本体8Aの上方に形成されたドア枠(窓枠)22Aを有する。
ドア枠22Aは、センターピラー側縦辺枠61Aと、センターピラー側縦辺枠61Aの上端と一体に接合されている上辺枠50Aとを有している。上辺枠50Aは、センターピラー側縦辺枠61Aの上端からリアピラー64に沿って湾曲しながら斜め下方向に延びる傾斜枠58Aを有する。また、ドア枠22Aには、リアピラー側縦辺枠65が前ドア6の場合と同様に装着されている。なお、図示されるように、前ドア6と後ドア6Aは形状が若干異なるものの、後ドア6Aの構成は前ドア6の構成とほぼ同一であるので、以下前ドア6について説明し後ドア6Aについてのこれ以上の説明は省略する。
【0036】
図2に示すように、センターピラー側縦辺枠61は、後述する窓板66の厚さ方向の中心位置に対応する部分が車外側を凸とし車内側を凹とする(車内側を半径中心として)所定の曲率半径R(普通乗用車で曲率半径Rが5mから十数m)で湾曲している。フロントピラー側縦辺枠63もほぼ同一の曲率半径Rで湾曲している。
ドアインナーパネル14の車内側には、ドアインナーパネル14を覆うようにドアインナートリム16が形成されている。ドアインナートリム16には、窓板昇降用選択スイッチ20(以下、「選択スイッチ20」と略称する場合がある。)を備えるアームレスト18が形成されている。
ドア本体の内部には、窓板66を昇降移動させる窓板昇降機構74と、該窓板昇降機構74を駆動する電動モーター80が備えられている。
【0037】
また、図1に示すように、ドア枠22(即ち、センターピラー側縦辺枠61、上辺枠50、フロントピラー側縦辺枠63)の内側の溝32(図4参照)内には、溝32の形状に追随してシールストリップ組立体100が装着されている。
図3に示すように、窓板66は、車外側を凸とし車内側を凹とする曲率半径R(フロントピラー側縦辺枠63およびセンターピラー側縦辺枠61と同一の曲率半径R)で湾曲している。窓板66の下端縁は、窓板ホルダー68によって支持されており(接着剤、粘着剤等の固着手段により窓板ホルダー68に固定されている。)、該窓板ホルダー68は、窓板昇降機構74の一つであるチャンネル76にボルト等の締結具78により連結されている(窓板ホルダー68とチャンネル76との間に弾性ワッシャー等を介在させるのが好ましい。)。
窓板66は、シールストリップ組立体100により案内されドア枠22に形成された窓開口部70内を上昇移動(図1および図3の矢印Xの方向)および下降移動(図1および図3の矢印Y方向)する。このとき、窓板ホルダー68、チャンネル76が弾性変形したとき等および窓板66自体が弾性変形したときに、窓板ホルダー68の下端縁を中心として、限られた範囲内で車内側および車外側方向に窓板66が揺れ動くことが可能である。
【0038】
本実施形態に係るシールストリップ組立体100は、センターピラー側縦辺枠61に沿って装着されるセンターピラー側シールストリップ(シールストリップ)102と、傾斜枠58を含む上辺枠50に沿って湾曲状に曲げて装着される上側シールストリップ(シールストリップ)104と、フロントピラー側縦辺枠63に沿って装着されるフロントピラー側シールストリップ(シールストリップ)106とを備える。
なお、後述する管状シール部130は、窓板66の昇降方向と平行に配置されるセンターピラー側縦辺枠61とフロントピラー側縦辺枠63に対応するシールストリップの少なくともいずれかに設けられるが、縦辺枠61,63の両方に対応するシールストリップに設けられるのが好ましい。さらに好ましくは、管状シール部130は前記の両方の縦辺枠61,63に対応するシールストリップに加えて上辺枠50に対応するシールストリップにも設けることである。このとき、管状シール部130は、内部の空洞または中空部がセンターピラー側縦辺枠61から上辺枠50を介してフロントピラー側縦辺枠63まで連続するようにシールストリップの全長に亘って設けられているのが好ましい。
本実施形態に係るシール装置3では、シールストリップ組立体100の全長に亘って管状シール部130が設けられている。図1に示すように、センターピラー側シールストリップ102及びフロントピラー側シールストリップ106のそれぞれの下端には後述する連結チューブ136,136が気密に連結されている。
【0039】
センターピラー側、上側及びフロントピラー側の各シールストリップ102,104,106は、それぞれ、所定の弾性ポリマー材料から所定の一定横断面形状に押出成形される長尺なシールストリップである。好ましい弾性ポリマー材料としては、加硫済みの弾性ゴム(典型的にはエチレンープロピレンージエンゴム(EPDM)を主体とする材料)やオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)やスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)等が挙げられる。
【0040】
次に、図4を参照にしつつ、本実施形態に係るシール装置3を構成するシールストリップ組立体100のセンターピラー側、上側およびフロントピラー側の各シールストリップ102,104,106の構成と取付形態を説明する。
図4は、図1のIV−IV線に沿った横断面図であって、この図に基づいて本実施形態に係るセンターピラー側シールストリップ102の横断面形状と当該部位におけるドア枠(ここではセンターピラー側縦辺枠61)を説明する。
なお、上側シールストリップ104及びフロントピラー側シールストリップ106については、基本的構成はほぼ同様であるため、重複した説明は省略する。
【0041】
図4に示すように、センターピラー側縦辺枠61は、金属帯板から車内側壁28と車外側壁30とが車両1の幅方向で略平行に配置されるように折り曲げられて形成されており、該二つの側壁28,30間にほぼ鉛直方向(図4の紙面と直交する方向)に沿って溝32が形成されている。そして、車内側壁28および車外側壁30にはそれぞれ、後述するセンターピラー側シールストリップ102を係止させて固定するために車内側凹部34,車外側凹部36が形成されている。
【0042】
一方、図4に示すように、本実施形態に係るセンターピラー側シールストリップ(シールストリップ)102は、上述したポリマー材料の押出成形によって長尺に成形された略U字形状(なお、溝32に取り付けられる前は拡開したU字形に形成されている。)の一定の横断面形状の本体部108を備えている。かかる本体部108は、ドア枠22に案内されて昇降移動する窓板66の外周縁の端面と対向する位置に配置される底部ストリップ110と、該底部ストリップ110の幅方向の両方の端部から窓開口部の中心に向けて各々突出する車内側側部ストリップ112及び車外側側部ストリップ118とを有し、両方の側部ストリップ112,118間に溝124が形成されている。
【0043】
センターピラー側シールストリップ102には、車内側係止突部114が車内側側部ストリップ112から車内側に張り出すように形成されている。同様に、車外側係止突部120が車外側側部ストリップ118から車外側に張り出すように形成されている。これによりセンターピラー側シールストリップ102がセンターピラー側縦辺枠61の溝32に装着された状態において、溝32からの抜け出しが防止される。なお、車内側折返しリップ116と車外側折返しリップ122は、車内側側壁28と車内側側部ストリップ112との間の隙間および車外側側壁30と車外側側部ストリップ118との隙間をそれぞれ遮蔽している。
【0044】
さらに、図4に示すように、本実施形態に係るセンターピラー側シールストリップ102には、車内側側部ストリップ112の内面(溝124に面する側)から車外側側部ストリップ118側(窓板66側)に向かって突出する横断面形状が略半円形状の管状シール部130が長手方向に沿って全長に亘って連続して形成されている。管状シール部130は、車内側側部ストリップ112(本体部108)よりも柔軟であり変形可能な中空壁132と内部に気体(本実施形態では空気であり、以降「空気」と記載することがある。)が満たされた内部空間134を有する。これにより、内部空間134内の気圧が増大および減少したとき管状シール部130(中空壁132)の外形及び内部空間134の体積が拡大および縮小することができる。
管状シール部130の中空壁132は、車内側側部ストリップ112よりも小さい力で変形できるように、中空壁132を車内側側部ストリップ112の厚さよりも薄肉にして本体部108と一体的に押出成形(共押出成形)するか、または、中空壁132を車内側側部ストリップ112よりも柔軟で弾性復元力を有する材料を用いて成形するか、又はこれらを組み合わせることによって成形している。中空壁132と車内側側部ストリップ112とは、管状シール部130の幅方向の端末において、共押出成形時に化学的に接合(典型的には熱融着)して一体化している。これにより、中空壁132の幅方向の端末において安定した接合が得られ中空壁132と車内側側部ストリップ112がその接合部において剥がれる等の不具合は生じない。また、中空壁132の少なくとも内面側は、車内側側部ストリップ112の材料よりも柔軟で耐屈曲性と気密性の高い天然ゴム成分等を含む材料を用いて成形するのが好ましい。これにより、中空壁132(管状シール部130)の外形が拡大および縮小を繰り返しても中空壁132に亀裂等の不具合が発生しないと共に、内部空間134内に気体を密閉して、該気体が中空壁132を透過して外部に流出するのを阻止することができる。さらにまた、中空壁132は車内側側部ストリップ112を形成する材料よりも温度変化に伴う硬度の変動が少ない材料で形成されていることが好ましい。これにより、特に温度が低いときも中空壁132自体は柔軟性を維持するので、広範囲の使用環境下でも安定して変形することができる。更に、管状シール部130の表面は平滑に形成するのが好ましい。これにより管状シール部の表面が平滑に形成された窓板66の面に接したとき、密に接触しシール性が向上すると共に両表面間で音が透過するのを防ぎ遮音性を向上させる。
かかる構成により、内部空間134内の気圧が変動したとき、特に負圧になったとき車内側側部ストリップ112(本体部108)は変形および移動せず、管状シール部130(中空壁132)だけが安定して変形(縮小)し、車内側側部ストリップ112に不測の位置ずれなどが生じない。なお、上記構成の管状シール部130であっても、窓板66との繰り返される離反と接触に耐えるうるための物理的または化学的性能が不足する場合には、中空壁132の表面に上記材料を適宜積層して一体化して形成することが好ましい。
【0045】
窓板66の外周縁の端面と対向する底部ストリップ110の表面には本体部108よりも静止摩擦係数が低い低摩擦材層(処理層)128が長手方向に連続して形成されている。また、窓板66の外周縁の表面と対向する車外側側部ストリップ118の表面には、複数の凹凸(処理層)が長手方向に連続して形成され、且つ本体部108よりも静止摩擦係数が低い低摩擦材層128Aが長手方向に連続して形成されている。これにより、窓板66と低摩擦材層が形成された部分との摺動抵抗を低減することができるので窓板66の昇降移動はよりスムースになる。なお、窓板66の外周縁と対向する管状シール部130の表面にも低摩擦材層128を形成するのが好ましい。さらに好ましくは、底部ストリップ110及び管状シール部130の表面にも複数の凹凸を長手方向に連続して形成することが好ましい。これらの凹凸を形成することにより、後述するように、管状シール部130の内部空間134内の気体が吸引され管状シール部の外形が縮小したときに管状シール部130が窓板66の表面と接する場合であっても、前記凹凸がないときに比較して窓板66の外周縁の端面と底部ストリップ110の表面および窓板66の表面と管状シール部130の表面との実質的な接触面積が小さくなり、窓板66が移動するときの摺動抵抗を減少させるのに有効である。
【0046】
なお、車外側側部ストリップ118から折返し状に延び、窓板66の車外側表面の一部をシールする車外側シール部が形成されていてもよいが、図4では、本実施形態に係るセンターピラー側シールストリップ102は、車外側側部ストリップ118から折り返し状に延びる車外側シール部が形成されていない。これにより、窓板66の車外側表面は車外側側部ストリップ118に直接接することができ、車外側シール部が形成されている場合と比較して、センターピラー側縦辺枠61の外側表面との段差(図4に示すd)を小さくすることができる。段差を小さくすることは、自動車(車両)1の走行中のドア枠22部分における空気の摩擦抵抗を減らすのに有効である。
【0047】
図5は、図1中のV−V線に沿う縦断面図であって、シール装置3の管状シール部の長手方向の構造を示す。
図5に示すように、本実施形態に係るセンターピラー側シールストリップ(シールストリップ)102は、シールストリップ102の長手方向の下側の端部がセンターピラー側縦辺枠61の下端を越えて縦辺枠61の溝32(図4参照)に沿って装着されている。シールストリップ102の長手方向の下側の端部には、管状シール部130の内部空間134と後述する負圧発生機200のシリンダーの第2の空間209とを連通する連結チューブ136が装着(連結)されている。センターピラー側シールストリップ102と連結チューブ136の連結部分から気体が流出入しないように、連結チューブ136は、その内形状がシールストリップ側では内部空間134に対応した半円形で、連結チューブ側では真円形に徐々にかつ滑らかに変化しているパイプ状の連結具138によってシールストリップ102に確実に装着されている。同様に、フロントピラー側シールストリップ106の下側の端部にも連結チューブ136が装着(連結)されている(図1参照)。なお、連結チューブを装着する位置は、センターピラー側縦辺枠61とフロントピラー側縦辺枠63の範囲内であればどの位置でもよいが、構造の簡素化の観点からシールストリップ102,106の長手方向の下側の端部(管状シール部130の長手方向の下側の端部)に連結(装着)するのが好ましい。
本実施形態に係るシールストリップ組立体100は、長手方向の全長に亘って管状シール部130が形成されており、センターピラー側シールストリップ102の長手方向上側の端部が上側シールストリップ104の一方の端部と交差して突き合せ部分が接着または溶着等により(典型的には化学的に)接合され、フロントピラー側シールストリップ106の長手方向上側の端部が上側シールストリップ104の他の一方の端部と交差して(典型的には化学的に)接合している。そして、接合された端末では、それぞれの管状シール部130の内部空間134同士が通気可能に連通している。上記のようにセンターピラー側およびフロントピラー側シールストリップ102,106の下側の端部には、負圧発生機200と連結する連結チューブ136,136が装着されているので、管状シール部130の内部空間134は実質的に密閉された状態を維持している。後述する気圧調節機構150が作動することによって、管状シール部130の内部空間134内の気体は、連結チューブ136を介して内部空間134内に流入および内部空間内から流出して、内部空間134内の気圧が増大および減少する。
なお、上側シールストリップ104に管状シール部が形成されていない場合は、センターピラー側シールストリップ102及び/又はフロントピラー側シールストリップ106に形成されている管状シール部の長手方向上側の端部(上辺枠50側の端部)を塞ぐか、中空壁を車内側側部ストリップと接合させて管状シール部の長手方向の上側の端部からの気体の流出入(漏れ)を阻止している。これにより管状シール部の内部空間は、実質的に密閉された状態を維持している。上記の接合手段としては、例えば、接着剤を使用して中空壁と車内側側部ストリップとの接触部を接着して接合する方法、接触部を超音波や高周波振動で融着させるなどの化学的接合方法、別途のクリップやステープル等で中空壁を挟んで車内側側部ストリップに機械的に接合させる方法等の公知手段を用いて接合してもよいし、これらの手段を併用して接合してもよい。
【0048】
次に、図6から図8を参照にしつつ、本実施形態に係る気圧調節機構150の構造を説明する。図6は、第1実施形態に係る気圧調節機構150の構造の一部を示す平面図である。なお、本実施形態では、気圧調節機構150に力を伝達する手段としてバー(棒)を用いたリンク駆動機構を説明するが、前記のバー(棒)に代えてワイヤー、ケーブル、ひもを用いてもよい。従って、本願では伝達手段として前記のバー(棒)、ワイヤー、ケーブル、ひもを用いたものを包含させて「リンク駆動機構」と称している。図7は、第1実施形態に係るリンク駆動機構168の構造を示す正面図である。図8は、第1実施形態に係る負圧発生機200の構造を示す断面図である。
図6から図8に示すように、本実施形態に係る気圧調節機構150は、負圧発生機200と、一端がピストンロッド215と連結されるバー(棒)Bを有するピストン駆動リンク176(以下、単に「ピストン駆動リンク」という。)を介して負圧発生機200と連結されるリンク駆動機構168と、クラッチ158とを有し、窓板昇降機構74を駆動する電動モーター(駆動源)80により駆動する。電動モーター80は、電力供給源であるバッテリ151(図9参照)に電気的に接続および遮断可能とされている。電動モーター80としては、正回転および逆回転可能な電動モーターであることが好ましい。電動モーター80には、電動モーターの軸(駆動軸)152に小径ベベルギア154が取り付けられている。小径ベベルギア154と噛み合わせて大径ベベルギア156(減速ギア)が配置されると共に大径ベベルギア156に第1の従動軸164が取り付けられている。前記の構造により、電動モーターの軸152と回転軸の方向が異なり90度の角度で交差すると共に第1の従動軸164が駆動され、電動モーターの軸152よりも低速で回転し高い回転トルクを出す。第1の従動軸164の一方は、窓板昇降機構74に連結されており、電動モーター80を駆動させて第1の従動軸164が正転および逆転方向に回転することによって窓板昇降機構74が作動して、窓板66が上昇移動および下降移動することができる。他の一方は、クラッチ158(電磁クラッチ)の第1のクラッチ板160に連結されている。
クラッチ158の第2のクラッチ板162は第2の従動軸166に連結されており、第2の従動軸166の他端はリンク駆動機構168と連結している。なお、第2の従動軸166に所定の値を超える負荷(回転トルク)がかかったとき、第1と第2のクラッチ板160,162間には滑りが生じて第1のクラッチ板160は空転する。後述するように窓板昇降用選択スイッチ20を作動させて端子を接点に接続させて通電すること(電気的にONにすること)によりクラッチ158は電力供給源であるバッテリ151(図9参照)に電気的に接続されて第1のクラッチ板160と第2のクラッチ板162が繋がり、通電を遮断すること(電気的にOFFにすること)により前記の繋がりを解除する。
【0049】
図6及び図7に示すように、本実施形態に係るリンク駆動機構168は、第2の従動軸166に取り付けられて第2の従動軸166と一緒に回転すると共に回転運動を直線運動に変換する円形状の回転駆動板170と、該駆動板170と第2のクラッチ板162との間に設けられドア本体8内に取り付けられて前記回転駆動板170を所定の回転角度の範囲内で回転を許容し、前記角度を超えて回転を阻止するストッパー180と、ピストン駆動リンク176を有する。回転駆動板170には、円形のガイド溝172が形成されている。ガイド溝172においてストッパー180から突出するストッパーピン182が嵌入され、回転駆動板170を所定の回転角度の範囲内で移動を許容している。駆動板170の外周には、ピストン駆動リンク176の一端が連結される連結部174が形成されており、ピストン駆動リンク176の一端が連結部174において回転駆動板170と連結されている(第2の従動軸166の中心からピストン駆動リンク176の連結部174までの距離をr1としている。)。ピストン駆動リンク176の他の一端は、後述する負圧発生機200のピストンロッド215と連結している。
【0050】
電動モーター80が正回転した場合は、図7の矢印X7の方向に回転駆動板170が正回転し、電動モーター80が逆回転した場合は、図7の矢印Y7の方向に回転駆動板170が逆回転する。図7中の二点鎖線で示されたピストン駆動リンク176は、回転駆動板170が正回転してガイド溝172の終端末がストッパーピン182に接触して、回転駆動板170は前記の接触位置を越える回転が阻止されている状態のピストン駆動リンク176の位置を示している。上記の状態でピストン駆動リンク176の連結部174は円弧の軌跡を描いて水平方向に距離aだけ変位し、ピストンロッド215を介してピストン210を図6及び図8の矢印X6の方向へ距離aだけ変位させる。この状態で電動モーター80が駆動(回転)を続けて第2のクラッチ板162に作用する回転トルクが所定の値に達すると、第1のクラッチ板160と第2のクラッチ板162との間で滑りが生じて、第1のクラッチ板160が空転し過度の回転トルクが第2の従動軸166に伝達されなくなる。通電を停止する(電気的にOFFにする)と、第1のクラッチ板160と第2のクラッチ板162は離れて、第2のクラッチ板162には回転トルクが伝達されなくなると同時に窓板昇降機構74の作動も停止する。第2のクラッチ板162の回転トルクは、後述するコイル状のリターンスプリング220を圧縮し、かつピストン210を変位させ管状シール部130の内部空間134内の気圧を減少させて負圧を発生させるのに十分な力に設定されている。なお、本実施形態では、第2の従動軸166の中心からピストン駆動リンク176の連結部174までの距離をr1としているが、ピストン駆動リンク176の移動距離を異ならせる必要があるときは、第2の従動軸166の中心からリンクの連結部174までの距離を調節するかまたは、異なる形状のガイド溝を形成すればよい。
【0051】
図8に示すように、本実施形態に係る気圧調節機構150の負圧発生機200は、内部にピストン210とピストンロッド215とを有する流体圧シリンダー205であり、内部空間134内の気圧を増減させるピストン機構である。なお、本実施形態では、シリンダー205は流体として空気やガスなどの気体を用いる。ピストンロッド215は、ピストン駆動リンク176のシリンダー205側の端末とピストン連結部230において連結している。シリンダー205の内部には、ピストンロッド215を常時後退させる方向(図8の矢印Y6の方向)に力を加えるコイル形状のリターンスプリング220が設けられている。シリンダー205の前側の端部には、外部とシリンダー205の前側の空間(シリンダーの第1の空間207)との空気の流出入を許容する通気ポート225が設けられている。シリンダー205の後側の端部には、連結チューブ136が連結されており、連結チューブ136を介して管状シール部130の内部空間134とシリンダー205の後側の空間(シリンダーの第2の空間209)が連通している。図8に示すように、本実施形態に係る連結チューブ136は、途中で二つに分岐して、一方がセンターピラー側シールストリップ102の管状シール部130と連結されており、他の一方がフロントピラー側シールストリップ106の管状シール部と連結されている。
気圧調節機構150は、リンク駆動機構168が作動すると、ピストンロッド215を図8の矢印X6の方向に引っ張って(変位させて)、ピストン210を図8の実線で示す位置から二点鎖線で示す位置まで前進させて管状シール部130の内部空間134の容積を減少させ内部空間134内の気圧を減少させることができる。なお、前述した回転駆動板170が所定の角度だけ回転し、連結部174が距離aだけ移動し、これ以上の回転を阻止されても、クラッチ158に通電され第1のクラッチ板160が空転している限り前記の状態は維持される。電動モーター80の作動が停止してリンク駆動機構168が非作動となると、第1のクラッチ板160と第2のクラッチ板162の繋がりが解除されると同時にリターンスプリング220の復元力によってピストン210が図8の矢印Y6の方向に後退させられて(元の位置に変位させて)内部空間134内の気圧が元の気圧まで増大する。
上記の通り、リターンスプリング220の復元力は、ピストン210を後退させる力と、ピストン駆動リンク176を介して回転駆動板170を矢印Y7方向に逆回転させる力を足した力よりも大きくなるように設定されている。
【0052】
図9は、クラッチ158と電動モーター80の作動の制御の原理を示す配線図である。同図の駆動回路195において窓板昇降用選択スイッチ20はニュートラル(非作動で停止中)に位置している。図9に示すように、電動モーター80およびクラッチ158は、ドア本体8のアームレスト18に備えられている窓板昇降用選択スイッチ20が窓板「上昇」に切り換えられると(図9の矢印X9の方向)、端子190,190が第1の接点185Aと第3の接点185Cにそれぞれ接続されることで、バッテリ151からの電力が供給されて(正電圧が印加されて)電動モーター80は正回転すると共にクラッチ158は繋がる(第1のクラッチ板160と第2のクラッチ板162とが繋がる)。同様に、窓板昇降用選択スイッチ20を窓板「下降」に切り換えられると(図9の矢印Y9の方向)、端子190,190が第2の接点185Bと第4の接点185Dにそれぞれ接続されることで、バッテリ151からの電力が供給されて(逆電圧が印加されて)電動モーター80は逆回転すると共にクラッチ158は繋がる(第1のクラッチ板160と第2のクラッチ板162とが繋がる)。一方、窓板昇降用選択スイッチ20をニュートラルに切り換えて端子190,190を第1の接点185A,第3の接点185Cまたは第2の接点185B,第4の接点185Dからそれぞれ離すことで、バッテリ151からの電力が断たれて電動モーター80の作動が停止すると同時にクラッチ158は開放される(第1のクラッチ板160と第2のクラッチ板162が離れる)。
なお、上述した駆動回路195は、シール装置の作動に関連する電動モーターとクラッチの作動の原理を説明するもので従来の回路と同様でもよく、本発明を特徴付けるものではないため、スイッチ20がニュートラルに戻っても電動モーター80を作動させ続ける自己保持回路等の詳細な説明は省略する。
【0053】
次に、窓板66が上昇する(典型的には、窓板66が開いている状態から閉じる方向に移動する)ときのシール装置3、即ち、電動モーター80、窓板昇降機構74及び気圧調節機構150の作動と窓板66の動きに対応する上記のセンターピラー側シールストリップ102の機能(作用、効果)について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図10は、窓板66の外周縁がセンターピラー側シールストリップ102の中(溝124内)に存在する位置における管状シール部130の形状および位置と気圧調節機構150の作動との関連を説明する。窓板昇降機構74および気圧調節機構150が同時に作動すると管状シール部130の内部空間134内の気体がシリンダー205の作動により吸引されて内部空間134内が負圧となり、管状シール部130が第二の位置(図10の符号L2の二点鎖線で表す管状シール部130の位置)から第三の位置(図10の符号L3の実線で表す管状シール部130の位置)へと変位した状態を示す断面図である。なお、窓板昇降機構74および気圧調節機構150が共に非作動であって、窓板66の外周縁がセンターピラー側シールストリップ102の中(溝124内)に存在しない位置(例えば、窓板66が全開状態のときのシールストリップの上側部分)の管状シール部130の形状と位置を第一の位置とする(図10の符号L1の一点鎖線で表す管状シール部130の位置)。
【0054】
窓板66を上昇させるときは、アームレスト18に設けられている窓板昇降用選択スイッチ20の窓板「上昇」を押す。これにより、図9に示す端子190,190が第1の接点185A,第3の接点185Cにそれぞれ接続され、電動モーター80の正回転回路が閉じられて、電動モーター80とクラッチ158が電気的にONになり、電動モーター80が回転し始めると同時に、クラッチ158が繋がる(第1のクラッチ板160と第2のクラッチ板162とが繋がる)。図7に示すように、電動モーター80の回転速度はベベルギア154,156の組み合わせで減速されて(回転トルクは増大されて)第1の従動軸164を正回転方向に駆動する。
第1の従動軸164の一方は、窓板昇降機構74に連結されているので、第1の従動軸164の回転により窓板昇降機構74を作動させて窓板66を上昇移動させる。第1の従動軸164の他の一方は、クラッチ158に連結されており、クラッチ158を介して第2の従動軸166が回転し、第2の従動軸166が回転駆動板170を正回転方向(図7の矢印X7の方向)に駆動する。
図7に示すように、回転駆動板170が正回転方向に駆動することによって、図面上において二点鎖線で示すようにピストン駆動リンク176を引っ張って(回転させて)リンクの連結部174を水平方向に距離aだけ変位させる。
【0055】
図8に示すように、引っ張られたピストン駆動リンク176の他の一方の端末は、ピストンロッド215を介してピストン210に連結されているので、ピストン210はコイル状のリターンスプリング220を圧縮して図8の矢印X6の方向に長さ寸法aだけ引っ張られて前進する(変位する)。これにより、シリンダー205の第2の空間209の内部の気圧が負圧になると同時に管状シール部130の内部空間134内の気体は連結チューブ136を介してシリンダーの第2の空間209内に強制的に吸引されるので、内部空間134内の気体の量が減少して、気体が満たされていたときよりも気圧が減少する(以下、単に「負圧が発生する」と記載することがある)。内部空間134内の気圧の減少に伴い、管状シール部130の中空壁132は大気圧力に押されて縮小方向に変形し、内部空間134の体積が縮小すると共に管状シール部130の中空壁132が車内側側部ストリップ112に向けて弾性的に変位する(図5の二点鎖線で示す車外側の位置から実線で示す車内側側部ストリップ112側の位置に変位する)。なお、ピストン210が図8の矢印X6の方向に寸法aだけ引っ張られるとき、シリンダーの第1の空間207の気体は、通気ポート225を通ってシリンダー205の外へ排出される。
【0056】
図10に示すように、管状シール部130の内部空間134内の気体がシリンダーの第2の空間209内に吸引されて内部空間134内の気体の量が減少するのに伴って、管状シール部130(中空壁132)が車内側側部ストリップ112に向けて変位する。これにより、管状シール部130の長手方向の全長に亘って、管状シール部130の表面が窓板66の車内側の外周縁から離れる第三の位置L3に変位して非接触状態になる(管状シール部130の表面と窓板66の表面との間に間隙が生じて非接触状態になる)。前記の非接触状態にならない場合でも窓板66の車内側の外周縁に対する管状シール部130の所定長さ当たりの押圧力(P1)を第二の位置L2における押圧力(P2)よりも減少させた状態で接触させることができる。従って、窓板66が上昇するときに、管状シール部130と窓板66が非接触状態の場合には、押圧力がゼロとなり管状シール部130と窓板66との動摩擦係数の大小とは無関係に窓板66の表面と管状シール部130との摺動抵抗(動摩擦係数×押圧力(=0))は無くなる。また、管状シール部130の窓板66に対する押圧力P1がP2よりも小さい状態で接触している場合には、窓板66の表面とシール部130との摺動抵抗(動摩擦係数×押圧力P1(<P2))は押圧力P2で接している場合よりも減少する。管状シール部130が車内側に向けて変位している状態は、電動モーター80が作動して窓板66が上昇移動している間維持される。上記の状態で窓板66は、窓板ホルダー68を中心にして車内側および車外側に限られた範囲で回転状に変位可能なので(図3参照)窓板66は車内側に向けて僅かに変位する。従って、窓板66は車外側側部ストリップ118から離れるか、接触しているとしても接触圧力は管状シール部130が縮小する前よりも小さくなる。
【0057】
窓板66が上昇移動して全閉状態になったとき、駆動される電動モーター80の場合は図示しない位置センサーや過電流ロック回路により正回転回路が開かれて電気的にOFFの状態となり電動モーター80は作動を停止する。同時にクラッチ158の電流も停止されクラッチ158の繋ぎが開放される。なお、窓板66を半開きの状態で停止させる場合は、選択スイッチ20を押すのを停止してスイッチ20がニュートラルの位置に戻ると上記と同じ状態となり電動モーター80は停止する。
【0058】
図8に示すように、上記のように電動モーター80が停止すると共にクラッチ158の繋ぎが開放されたとき、シリンダー205内のリターンスプリング220の弾性復元力によってピストン210はシリンダー205の後方に押し戻されて(図8の矢印Y6の方向に変位して)、通気ポート225を通って気体が外部からシリンダー205(シリンダーの第1の空間207)内に流入する。ピストン210が押戻されることによって、シリンダーの第2の空間209内の気体は、連結チューブ136を介して管状シール部130の内部空間134内に供給される。
押し戻し作用により、管状シール部130の内部空間134内の気圧が元の気圧(窓板昇降機構74が非作動のときの気圧)に戻るか、又は電動モーター80が作動しているときの気圧よりも大きな気圧(窓板昇降機構74が非作動のときの気圧よりは小さい気圧)が内部空間134内に発生するので、管状シール部130は、図5および図10に示す二点鎖線で示す位置L2まで復帰して窓板66の外周縁を車外側に向けて押し付ける。従って、窓板66の表面とドア枠22との間は良好にシールされることとなる。
なお、通気ポート225に流量調節弁を設けて通気ポート225から排出される単位時間当たりの気体の量よりも通気ポート225からシリンダー205内に流入する時間当たりの気体の量をやや少なくすることで、窓板の移動停止から時間的に遅れて(実用的には、一秒ないし数分の一秒)ピストン210を後退移動させると、窓板66が停止する前(移動中)に管状シール部130が窓板66に接触するのを防止すると共に管状シール部130が窓板66にゆっくりと接触して音の発生を防止することができる。
【0059】
次に、窓板66が下降する(典型的には、窓板66が閉じている状態から開く方向に移動する)ときのシール装置3、即ち、電動モーター80、窓板昇降機構74および気圧調節駆動機構150の作動と窓板66の動きに対応する上記のセンターピラー側シールストリップ102の機能(作用、効果)について図面を参照しつつ説明する。なお、このときの作動は上述した窓板が上昇するときと逆であるので、逆の場合に特有の作動についてのみ説明する。
【0060】
窓板66を下降させるときはアームレスト18に設けられている窓板昇降用選択スイッチ20の窓板「下降」を押す。これにより、図9に示す端子190,190が第2の接点185B,第4の接点185Dにそれぞれ接続され、電動モーター80の逆回転回路が閉じられて、電動モーター80とクラッチ158が電気的にONになり、電動モーター80が回転し始めると同時に、クラッチ158が繋がる(第1のクラッチ板160と第2のクラッチ板162とが繋がる)。
【0061】
第1の従動軸164の一方は、窓板昇降機構74に連結されているので、第1の従動軸164の回転により窓板昇降機構74を作動させて窓板66を下降移動させる。第1の従動軸164の他の一方は、クラッチ158に連結されており、クラッチ158を介して第2の従動軸166が回転し、第2の従動軸166が回転駆動板170を逆回転方向(図7の矢印Y7の方向)に駆動する。
回転駆動板170が逆回転方向に駆動することによって、窓板66が上昇移動するときと同様に、ピストン駆動リンク176を引っ張って(回転させて)リンクの連結部174を水平方向に距離aだけ変位させる。即ち、電動モーター80を正回転又は逆回転してもピストン駆動リンク176を同一の方向に引っ張り、ピストンを同一方向に強制移動させることができる。図8に示すように、引っ張られたピストン駆動リンク176の他の一方の端末は、ピストンロッド215を介してピストン210に連結されているので、ピストン210はリターンスプリング220を圧縮して図8の矢印X6の方向に距離aだけ引っ張られる(変位する)。以下は、上述した窓板66が上昇するときと同様である。これにより、窓板66が上昇するときと同様の効果が得られる。
【0062】
次に、窓板66が上昇移動している(典型的には、窓板66が開いている状態から閉じる方向に移動している)途中、又は窓板66が下降移動している(典型的には、窓板66が閉じている状態から開く方向に移動している)途中に窓板66を停止させて半開き状態にしたときについて簡単に説明する。
【0063】
窓板66が、上昇移動または下降移動している途中で窓板昇降用選択スイッチ20を中立にして、端子190,190を第1の接点185A,第3の接点185C又は第2の接点185B,第4の接点185Dからそれぞれ離すと、正回転回路又は逆回転回路が開いて電動モーター80が停止してクラッチが解除される。モーター80が停止してクラッチが解除された後の作動は上記した場合と同一である。
以上の通り、管状シール部130が車内側に向けて後退したとき、窓板66に対して車内側から車外側に向けて窓板66の面と直交する方向にかかっていた押圧力が開放される(押圧力がゼロになるか、又は低下する)。なお、車外側側部ストリップ118に車外側シール部が形成されていてもよい。
【0064】
上記の第1実施形態では、窓板66が上昇移動および下降移動するときのいずれかの移動時においても、管状シール部130が窓板66の表面と非接触状態になるか、若しくは管状シール部130の所定長さ当たりの押圧力を減少させた状態で管状シール部130が窓板66の表面と接触する例について説明した。しかし、本発明はかかる形態に限定されず、窓板66が少なくとも上昇移動するときだけ管状シール部130が窓板66の表面と非接触状態になるか、若しくは管状シール部130の所定長さ当たりの押圧力を減少させた状態で管状シール部130が窓板66の表面と接触し、窓板66が下降移動するときは窓板66が停止しているときと同一の状態で管状シール部130が窓板66に接触していても本発明に係る目的は達成される。
【0065】
以下、第2実施形態として、窓板66が上昇移動するときだけ管状シール部130が窓板66の表面と非接触状態になるか、若しくは管状シール部130の所定長さ当たりの押圧力を減少させた状態で管状シール部130が窓板66の表面と接触する構造について図面を参照しつつ説明する。
【0066】
まず第1に、クラッチ158の作動を制御する駆動回路195の変更によって上記の作動を呈する好適な例を説明する。
図18は、第2実施形態に係るクラッチ158と電動モーター80の作動の制御の原理を示す配線図である。図19は、第2実施形態に係る駆動回路195Aにおいて、窓板の上昇移動時の電流の流れを示す配線図である。図20は、第2実施形態に係る駆動回路195Aにおいて、窓板の下降移動時の電流の流れを示す配線図である。なお、図19および図20では、電流の流れる線を太線で示すとともに電流の流れる向きを併記する。
【0067】
図18に示すように、クラッチ158に接続される一方の線は第1実施形態と同様に選択スイッチ20内で窓板66を上昇させる側の第1の接点185Aと接続可能とされているが、他の一方の線はバッテリ151に接続されている点が上記第1実施形態とは異なる。上記の構造により選択スイッチ20の窓板「上昇」を押すと、図19の太線で示すように駆動回路195A内を電流が流れて(電動モーター80およびクラッチ158に電流が流れる)、電動モーター80が作動して正方向に回転すると同時にクラッチ158も作動する(繋がる)。クラッチ158が作動した後の作動は第1実施形態において、選択スイッチ20の窓板「上昇」を押したときの作動と同様である。
一方、選択スイッチ20の窓板「下降」を押すと、図20の太線で示すように駆動回路195A内を電流が流れて(電動モーター80に電流が流れる)、電動モーター80が作動して逆方向に回転するが、クラッチ158の一方の線は選択スイッチ20内で窓板66を下降させる側の第4の接点185Dと接続されていないので、クラッチ158には電流が流れずクラッチ158は作動せずにそのままの状態を維持する(即ち、窓板66は下降移動するが、気圧調節機構150は作動せず内部空間134内の気圧は減少しない。)。
従って、上記構造による窓のシール装置3では、窓板66が上昇移動するときは管状シール部130が窓板66の表面と非接触状態になるか、若しくは管状シール部130の所定長さ当たりの押圧力を減少させた状態で管状シール部130が窓板66の表面と接触するため、窓板66と管状シール部130との摺動抵抗をゼロにするかまたは減少させることができる。一方、窓板66が下降移動するときは管状シール部130が窓板66に前記の減少させた押圧力よりも大きい押圧力を保って接触するので、管状シール部130で窓板66を支えながら窓板66を安定して下降移動させることができる。
【0068】
また、上記のように変更された駆動回路195Aに代えて、気圧調節機構150(図6参照)において、クラッチ158として第1の従動軸164の一方向への回転力を第2の従動軸166に伝達するが、逆方向への回転力が掛かったときには空転して回転力を第2の従動軸166に伝達させない機能(典型的にはラチェットと爪を有するワンウェイクラッチの機能)を付加したクラッチを用いてもよい。
かかる構成により、電動モーター80が正回転して窓板66を上昇移動させるときには、第1の従動軸164の回転力がクラッチ158を介して第2の従動軸166に伝達されて気圧調節機構150が作動(リンク用回転駆動板170が正回転方向(図7のX7の方向)に駆動して、ピストンロッド215を図6及び図8のX6の方向に引っ張り、内部空間134内の気圧を減少させる。)するため、第1実施形態の窓板が上昇移動するときと同様の効果を奏する。
一方、電動モーター80が逆回転して窓板66を下降移動させるときには、クラッチ(ワンウェイクラッチ)158は空転するため、第1の従動軸164の回転力は、第2の従動軸166には伝達されず気圧調節機構150は作動しない(即ち、内部空間134内の気圧は減少しない。)。従って、上記構造のクラッチ158を備える窓のシール装置3では、上述した駆動回路195Aを用いた場合と同様の効果が得られる。
【0069】
上述した第1および第2実施形態では、電気により制御するクラッチ(電磁クラッチ)158によって、電動モーター80の動力をリンク駆動機構168に伝達していたが係る構成に限定されるものではなく、粘性流体クラッチ258を用いて電動モーター80の動力をリンク駆動機構268に伝達するような構成であってもよい。以下、第1実施形態あるいは第2実施形態のいくつかの変更例を説明する。図11に示す変更例は、第1実施形態の好適な変更例であり、第1の変更例に係る気圧調節機構の構造を示す平面図である。図12は、第1の変更例に係るリンク駆動機構の構造を示す正面図である。
【0070】
図11に示すように、第1の変更例に係る気圧調節機構250は、負圧発生機200と、ピストン駆動リンク276を介して負圧発生機200と連結されるリンク駆動機構268とを有し、電動モーター80によって駆動する。電動モーター80の回転トルクは、小径ベベルギア154および大径ベベルギア156を介して従動軸266に伝達され、従動軸は駆動(回転)する。従動軸266の一方は、窓板昇降機構74に連結されており、電動モーター80を駆動させて従動軸266が回転することによって窓板昇降機構74が作動して、窓板66が上昇移動および下降移動することができる。従動軸266の他の一方は、粘性流体クラッチ258に連結されている。
図11及び図12に示すように、本変更例に係るリンク駆動機構268は、従動軸266と、粘性流体クラッチ258と、該粘性流体クラッチ258と大径ベベルギア156との間に設けられドア本体8内に取り付けられているストッパー280と、ピストン駆動リンク276を有する。なお、図12には図示していないがストッパー280は、第1実施形態と同様の構造である。粘性流体クラッチ258は、円筒型のケース285の内部に従動軸266に連結されている回転羽根275を備えており、ケース285の内部は粘性流体で満たされている。粘性流体クラッチ258の回転駆動板270の外周には、突起290が形成されている。ピストン駆動リンク276は、突起290と従動軸266の中心を結ぶ直線状であり、且つ回転駆動板270の外周に形成されている連結部274に連結されている。
【0071】
図12に示すように、電動モーター80が正回転した場合は、回転羽根275が正回転することにより起こる粘性流体の流れによる流動力を受けて回転駆動板270が正回転(図12の矢印X12の方向)し、電動モーター80が逆回転した場合は、回転駆動板270が逆回転(図12の矢印Y12の方向)する。図12中の二点鎖線で示されたピストン駆動リンク276は、回転駆動板270が正回転してストッパーピン282(図11参照)に接触し、回転駆動板270の回転が阻止されている状態のピストン駆動リンク276の一方の端末の位置を示しており、ピストン駆動リンク276はリンクの水平方向に距離bだけ変位し、ピストン駆動リンク276の他の一端に連結されるピストンロッド215を介してピストン210を図8及び図11の矢印X6の方向へ距離bだけ変位させている。
かかる構造により、第1実施形態の場合と同様の効果に加えて、電気信号によるクラッチの繋ぎと解除は不要となるので構造が簡単となる。なお、粘性流体クラッチとしては、円筒型のケース内部に回転羽根が備えられており、かつ内部に粘性流体が満たされているものであれば、制限なく使用することができる。
【0072】
以上、図11および図12を示しつつ第1実施形態についての好適な一変更例(第1の変更例)を説明したが、粘性流体クラッチ258を用いたシール装置において、上述したワンウェイクラッチの機能を備えたクラッチを用いることによって、窓板66が上昇移動するときだけ管状シール部130が窓板66の表面と非接触状態になるか、若しくは管状シール部130の所定長さ当たりの押圧力を減少させた状態で管状シール部130が窓板66の表面と接触することを実現することができる。
【0073】
上述した第1及び第2実施形態(さらには第1の変更例を含む)では窓板昇降機構を駆動する駆動源として使用する電動モーターを気圧調節機構の駆動源としても使用していたが、電動モーターとは別途独立した駆動源を用いて気圧調節機構を駆動してもよい。以下、かかるケーブル駆動機構の好適な二つの変更例(第2の変更例及び第3の変更例)について図面を参照しつつ詳細に説明する。図13は、第2の変更例に係る気圧調節機構の構造を示す平面図である。図14は、第3の変更例に係る気圧調節機構の構造を示す平面図である。
【0074】
図13に示すように、第2の変更例に係る気圧調節機構350は、正回転および逆回転可能なロータリーアクチュエーター368を備えている。ロータリーアクチュエーター368の駆動軸366は、駆動軸366の回転運動をピストン駆動リンク376の直線運動に変換する円形状の回転駆動板370に連結されている。回転駆動板370は、上記第1実施形態に係る駆動板170と同様に連結部374を備えており、ピストン駆動リンク376は連結部374と連結されている。本変更例に係るロータリーアクチュエーター368はバッテリ151に電気的に接続されると、通電することにより駆動軸366が回転し、ピストン210(ピストンロッド215)が図8の矢印X6の方向に引っ張られて管状シール部130の内部空間134内の気圧が減少する(負圧が発生する)。一方、通電を停止することにより駆動軸366が元の状態に戻るので、ピストン210(ピストンロッド215)は元の位置に変位し内部空間134内の気圧が元の状態に戻る。ロータリーアクチュエーター368としては、例えば、ロータリーソレノイドが挙げられる。かかる構成により、第1実施形態の場合と同様の効果に加えて、リンクを駆動する機構の構造が簡単となる。収容スペースに余裕があれば、前記ロータリーアクチュエーター368は、窓板昇降機構74に対応する位置に設けることに限定されない。
なお、上記駆動回路195Aを気圧調節機構350に適用する(即ち、図18中のクラッチ158に代えてロータリーアクチュエーター368を用いる。)ことで、上記第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
図14に示すように、第3の変更例に係る気圧調節機構450は、直線運動をする例で、内部に回転運動を直線運動に変換する機構を内蔵し、前進及び後退する作動アーム470を有するリニアーアクチュエーター468を備えている。作動アーム470には、連結部474が形成されている。連結部474には、ピストン駆動リンク476が連結されている。本変更例に係るリニアーアクチュエーター468はバッテリ151に電気的に接続されると、作動アーム470は該アクチュエーター468内に引き込まれ、これによりピストン210(ピストンロッド215)が図8の矢印X6の方向に引っ張られて管状シール部130の内部空間134内の気圧が減少する(負圧が発生する)。一方、通電を停止することによりピストン210(ピストンロッド215)に作用していた引っ張り力が解放され、リターンスプリング220の押戻し作用によってピストン210(ピストンロッド215)は元の位置に変位し内部空間134内の気圧が元の状態に戻る。リニアーアクチュエーター468としては、例えば、リニアーソレノイドや回転運動を直線運動に変換するリニアーボールねじ機構が挙げられる。かかる構成により、第1実施形態の場合と同様の効果に加えて、シール装置の構造が簡単となる。
なお、上記駆動回路195Aを気圧調節機構450に適用する(即ち、図18中のクラッチ158に代えてリニアーアクチュエーター468を用いる。)ことで、上記第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0076】
また、気圧調節機構350,450において、タイマーなどの機器を回路内に組み入れて、ロータリーアクチュエーター368又はリニアーアクチュエーター468の作動よりも電動モーター80の作動を遅らせて(例えば数分の1秒)作動させると、管状シール部が後退した後に窓板の昇降移動が始まるので、窓板の昇降開始時における管状シール部と窓板との摺動抵抗をより確実に減少させることができる。
【0077】
上述した第1及び第2実施形態(第1から第3の変更例を含む)では、車内側側部ストリップの内面から車外側に向けて突出する横断面形状が略半円形状の管状シール部が形成されていたが、本発明はかかる形態に限定されない。以下、シールストリップの構造に関する好適な二つの変更例(第4及び第5の変更例)について図面を参照しつつ説明する。図15は、第4の変更例に係るシールストリップを示す横断面図である。なお、本変更例を説明する図面において、第1実施形態と実質的に同一である部材や機構には同一の符号を付すとともに重複した説明は省略する。
図15に示すように、第4の変更例に係るシールストリップ502は、車内側側部ストリップ112の開口縁側(突出先端側)から一体に底部ストリップ110(図4参照)の幅方向中心側に向けて突出し、昇降する窓板66の側面に弾接可能であり、該側部ストリップ112との間に空間を保って折返し状に延びる車内側シール部520を有する。シールストリップ502は、車内側シール部520の先端側から車内側側部ストリップ112に向けてジグザグ状に延びて車内側側部ストリップ112に連結する車内側包囲リップ533を有し、車内側シール部520と車内側包囲リップ533から管状シール部530が形成され、管状シール部530は本体部108と一体的に一定横断面形状に押出成形されている。車内側包囲リップ533は、車内側シール部520および車内側側部ストリップ112よりも薄肉で柔軟な構造に形成されている。管状シール部530は、車内側側部ストリップ112と車内側シール部520と車内側包囲リップ533とに囲まれて形成されている内部空間534を備えている。車内側包囲リップ533は、管状シール部530の内部空間534内の気圧の増減によって直線状に伸びたり折りたたみ状に縮小したりすることができる。なお、車内側シール部520の弾性反発力(車内側シール部520が窓板66の表面を押圧する力)を調節するために、車内側シール部520の裏面側(溝124に面する側)の根元部分には凹溝527が長手方向に連続して形成され、前記凹溝部分の厚さが隣接する他の部分よりも小さく薄肉に形成されている。かかる構成により車内側シール部520が前記薄肉の部分を中心にして回転状に容易に変位し第1または第2実施形態の場合と同様の効果が得られる。
【0078】
次に図16は、第5の変更例に係るシールストリップを示す横断面図である。なお、本変更例を説明する図面において、第1実施形態と実質的に同一である部材や機構には同一の符号を付すとともに重複した説明は省略する。
図16に示すように、第5の変更例に係るシールストリップ602は、車内側側部ストリップ112のうちの窓板66の車内側表面と対向する部分と底部ストリップ110のうちの窓板66の端面と対向する部分とに跨る形状の管状シール部630を備えている。管状シール部630は、車内側側部ストリップ112及び底部ストリップ110よりも柔軟な材料で形成するか、または薄肉に形成するか若しくは両者を併用して形成され、変形可能な中空壁632と内部空間634を有し、中空壁632が窓板66側に向けて突出する円弧状の横断面形状が略三角形をなしている。内部空間634の気圧が減少する前の状態、即ち気圧調節機構が作動する前には、中空壁632は窓板66の外周縁の端面および窓板66の車内側の表面の両方の面に接触している。従って、中空壁が窓板66の一つの面だけに接触する場合に比較して広い面積で接触するのでシール性が向上する。内部空間634内の気圧が減少すると管状シール部630は図16の二点鎖線で示した位置に変位する。
かかる構成により、第1実施形態の場合と同様の効果に加えて、管状シール部630が窓板66の車内側表面と窓板の外周縁端面の両方に接触してシールすることができるので、窓板とドア枠との間のシール性をさらに安定して保つことができる。なお、この変更例では、窓板66の外周縁は丸く面取りしてシャープエッジが存在しないようにして、管状シール部630に不測の損傷が生じるのを防止するのが好ましい。
【0079】
以上、本発明に関する種々の実施形態を説明したが、上述の実施形態は何れもサッシュドア枠(即ち帯鋼板を冷間ロール成形法により所定の横断面形状、例えば図4に図示する形状に折り曲げ成形した長尺材)に装着されるシールストリップに関するものであるが、本発明は、このようなサッシュドアに適用が限定されるものではなく、例えば、プレス加工によってドアパネルの窓開口部に相当する部分を打ち抜いて、残部でドアパネルと一体のドア枠を形成するプレスドア枠(窓枠)にも好適に適用される発明である。
例えば、上述した第1実施形態に係るシールストリップ102をプレスドア枠24にも好ましく適用することができる。図17はその一例(第2実施形態)を示す横断図面である。図17に示すように、本実施形態に係るシールストリップ102は、第1実施形態と同様、プレスドア枠24の溝に装着されている。かかる構成により、第1または第2実施形態の場合と同様の効果が得られる。
なお、本発明は、プレスドア枠の構造により特徴付けられるものではないため、これ以上の詳しい説明は省略する。図中において符号を付している部分を簡単に説明すると以下の通りである。即ち、符号29はドアインナーパネルから連続する車内側壁、符号31はドアアウターパネルから連続する車外側壁、符号35はプレスドア枠の車内側凹部、符号37はプレスドア枠の車外側凹部である。
【0080】
以上、本発明の具体例を図面を参照しつつ詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、上記各実施形態では、自動車のヒンジ式のフロント開閉ドアに適用する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、ヒンジ式リア開閉ドアにも適用できる。また、ドアが車両の前後方向に移動して開閉するスライド式ドアにも適用することができる。さらに、窓板が移動するバックウインドウやハッチバックにも適用可能で、さらには車体パネル内の窓開口を窓板だけが移動する窓(この場合は、窓開口を取り囲む車体パネルの開口縁をドア枠とみなす。)にも適用することができる。
自動車以外の適用例では、窓板が移動するものであれば、トラック、バス、鉄道車両等の窓のシール装置にも適用できる。
さらに、管状シール部は車外側側部ストリップにも設けることで、窓板を車内側と車外側の両面側からシールしてもよい。また、管状シール部を底部ストリップにさらに設けることで、窓板の車内側及び車外側の表面に加えて外周縁端面をシールしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 自動車(車両)
3 シール装置
6 前ドア
6A 後ドア
8 ドア本体
8A ドア本体
10 ドア本体上縁
12 ドアアウターパネル
12A ドアアウターパネル
14 ドアインナーパネル
16 ドアインナートリム
18 アームレスト
20 窓板昇降用選択スイッチ
22 ドア枠(窓枠)
22A ドア枠(窓枠)
24 プレスドア枠(窓枠)
28 車内側壁
29 プレスドア枠の車内側壁
30 車外側壁
31 プレスドア枠の車外側壁
32 溝
34 車内側凹部
35 プレスドア枠の車内側凹部
36 車外側凹部
37 プレスドア枠の車外側凹部
50 上辺枠
50A 上辺枠
56 水平枠
58 傾斜枠
58A 傾斜枠
60 センターピラー
61 センターピラー側縦辺枠
61A センターピラー側縦辺枠
62 フロントピラー
63 フロントピラー側縦辺枠
64 リアピラー
65 リアピラー側縦辺枠
66 窓板
68 窓板ホルダー
70 窓開口部
74 窓板昇降機構
76 チャンネル
78 締結具
80 電動モーター(駆動源)
100 シールストリップ組立体
102 センターピラー側シールストリップ(シールストリップ)
104 上側シールストリップ(シールストリップ)
106 フロントピラー側シールストリップ(シールストリップ)
108 本体部
110 底部ストリップ
112 車内側側部ストリップ
114 車内側係止突部
116 車内側折返しリップ
118 車外側側部ストリップ
120 車外側係止突部
122 車外側折返しリップ
124 溝
128 低摩擦材層
128A 低摩擦材層
130 管状シール部
132 中空壁
134 内部空間
136 連結チューブ
138 連結具(連結パイプ)
150 気圧調節機構
151 バッテリ
152 電動モーターの軸(駆動軸)
154 小径ベベルギア
156 大径ベベルギア
158 クラッチ
160 第1のクラッチ板
162 第2のクラッチ板
164 第1の従動軸
166 第2の従動軸
168 リンク駆動機構
170 回転駆動板
172 ガイド溝
174 連結部
176 ピストン駆動リンク
B バー(棒)
180 ストッパー
182 ストッパーピン
185A 第1の接点
185B 第2の接点
185C 第3の接点
185D 第4の接点
190 端子
195,195A 駆動回路
L1 第一の位置
L2 第二の位置
L3 第三の位置
200 負圧発生機
205 シリンダー
207 シリンダーの第1の空間
209 シリンダーの第2の空間
210 ピストン
215 ピストンロッド
220 リターンスプリング
225 通気ポート
230 ピストン連結部
250 気圧調節機構
258 粘性流体クラッチ
266 従動軸
268 リンク駆動機構
270 回転駆動板
274 連結部
275 回転羽根
276 ピストン駆動リンク
280 ストッパー
282 ストッパーピン
285 ケース
290 突起
350 気圧調節機構
366 駆動軸
368 ロータリーアクチュエーター
370 回転駆動板
374 連結部
376 ピストン駆動リンク
450 気圧調節機構
468 リニアーアクチュエーター
470 作動アーム
474 連結部
476 ピストン駆動リンク
502 シールストリップ
520 車内側シール部
527 凹溝
530 管状シール部
533 車内側包囲リップ
534 内部空間
602 シールストリップ
630 管状シール部
632 中空壁
634 内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓を有する車両用のドアのドア本体と、
前記ドア本体と一体的に形成され、該ドア本体の上縁との間に所定形状の窓開口を形成すると共に内部に所定幅の連続した溝を有する剛性のドア枠と、
前記ドア枠の溝に沿って昇降移動し前記窓を閉開する窓板と、
前記ドア枠の溝に沿って装着されて前記ドア枠に固定され、前記窓板の外周縁と前記ドア枠との間をシールすると共に昇降移動する前記窓板を案内する長尺なシールストリップと、
前記ドア本体内に備えられ、前記窓板の下側の外周縁に連結されて前記窓板を昇降移動させる窓板昇降機構と前記窓板昇降機構を駆動する駆動源と、
を有する車両用ドアの窓のシール装置であって、
前記シールストリップは、前記窓板の昇降方向と平行に配置される少なくとも一つの前記ドア枠の溝に装着されたとき前記窓板の外周縁端面と対向する位置に配置される底部ストリップと、該底部ストリップの幅方向の車内側端部と車外側端部の少なくともいずれか一方から前記窓開口の中心側に向けて延びる側部ストリップとを有し、
前記側部ストリップと前記底部ストリップの少なくともいずれかには、前記窓板の外周縁に対向する位置に弾性変形可能な中空壁により閉じられて内部に気体が満たされた内部空間を有する管状シール部が長手方向に形成されており、
前記管状シール部は前記内部空間の気圧の増減に対応してその外形と該内部空間の体積が拡大及び縮小可能で、前記外形と体積が拡大したとき前記管状シール部の外面が前記窓板の外周縁に所定長さ当たりで所定の押圧力を保って接触し、縮小したとき前記窓板の外周縁から離れて非接触となるか又は前記押圧力が減少した状態で前記窓板の外周縁と接触可能となり、
前記管状シール部は、前記窓板の少なくとも上昇移動時に該管状シール部の前記内部空間内の気体を吸引すると共に気圧を減少させることにより該管状シール部の外形および内部空間の体積を縮小させ、前記窓板の停止時に前記内部空間内に気体を流入させると共に前記気圧を増大させて前記管状シール部の外形および内部空間の体積を拡大させることができる気圧調節機構に通気可能に連結され、
ここで前記窓板昇降機構が非作動で、前記窓板が停止しているときは、前記窓板の外周縁が前記シールストリップの中に存在しない長手方向の範囲内において、前記管状シール部は第一の位置に位置し、
前記窓板の外周縁が前記シールストリップの中に存在する長手方向の範囲内において、前記管状シール部は、前記窓板の外周縁と接触して、前記第一の位置よりも前記窓板の開閉移動経路から離れる第二の位置に変位させられると共に前記窓板の外周縁に所定の押圧力を与えた状態で接触して前記窓板と前記ドア枠との間をシールし、
前記窓板昇降機構の作動により前記窓板が少なくとも上昇移動するときは、前記気圧調節機構の作動により前記管状シール部の前記内部空間から気体を吸引し前記内部空間内の気圧を減少させることにより、(1)前記管状シール部を全長に亘って前記第二の位置よりも更に前記窓板の開閉移動経路から離れる第三の位置へ変位させて前記窓板の外周縁と非接触状態にさせるか、若しくは(2)前記窓板の外周縁が前記シールストリップの中に存在する長手方向の範囲内において、前記窓板の外周縁に対する前記管状シール部の所定長さ当たりの押圧力を前記第二の位置における押圧力よりも減少させた状態で接触させる、
ことを特徴とする窓のシール装置。
【請求項2】
前記管状シール部は、前記窓板の昇降移動時に該管状シール部の前記内部空間内の気体を吸引すると共に気圧を減少させることにより該管状シール部の外形および内部空間の体積を縮小させ、前記窓板の停止時に前記内部空間内に気体を流入させると共に前記気圧を増大させて前記管状シール部の外形および内部空間の体積を拡大させることができる気圧調節機構に通気可能に連結され、
前記窓板昇降機構の作動により前記窓板が移動するときは、前記気圧調節機構の作動により前記管状シール部の前記内部空間から気体を吸引し前記内部空間内の気圧を減少させることにより、(1)前記管状シール部を全長に亘って前記第二の位置よりも更に前記窓板の開閉移動経路から離れる第三の位置へ変位させて前記窓板の外周縁と非接触状態にさせるか、若しくは(2)前記窓板の外周縁が前記シールストリップの中に存在する長手方向の範囲内において、前記窓板の外周縁に対する前記管状シール部の所定長さ当たりの押圧力を前記第二の位置における押圧力よりも減少させた状態で接触させることを特徴とする請求項1に記載の窓のシール装置。
【請求項3】
前記ドア枠は、前記ドア本体の上縁の端部から鉛直方向に延びる縦辺枠と前記縦辺枠の上端からドア本体の上縁の他端に向けて延びる上辺枠とを備えており、前記縦辺枠に装着されるシールストリップの端部と前記上辺枠に装着されるシールストリップの長手方向の端部とは、該両方のシールストリップを交差させて接合されており、
ここで該両方のシールストリップの接合された端部では、それぞれの前記管状シール部の内部空間同士が通気可能に接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の窓のシール装置。
【請求項4】
前記駆動源は、正回転及び逆回転可能な電動モーターであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の窓のシール装置。
【請求項5】
前記内部空間内の気体を吸引して前記管状シール部の外形及び内部空間の体積を縮小させた後に、時間的に遅れて前記窓板を少なくとも上昇移動させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の窓のシール装置。
【請求項6】
前記気圧調節機構はピストン及びピストンロッドを有するシリンダーであり、前記内部空間が前記シリンダー内の空間と通気可能に連通されていて、前記駆動源の作動と連動してピストンの前進又は後退で前記内部空間内の気圧を増減させることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の窓のシール装置。
【請求項7】
前記ピストン機構は、前記窓板を上昇移動させる際或いは上昇移動および下降移動させる際のいずれにおいても前記ピストンを同一方向に強制移動させることを特徴とする請求項6に記載の窓のシール装置。
【請求項8】
前記シリンダーは、前記ピストンを移動させて前記管状シール部が縮小方向に作動を完了するまでの時間よりも前記ピストンが元の位置に戻り、前記管状シール部が拡大方向の非作動状態に復帰するまでの時間が長くなるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の窓のシール装置。
【請求項9】
窓を有する車両用のドアのドア本体と、
前記ドア本体と一体的に形成され、該ドア本体の上縁との間に所定形状の窓開口を形成すると共に内部に所定幅の連続した溝を有する剛性のドア枠と、
前記ドア枠の溝に沿って昇降移動し前記窓を閉開する窓板と、
前記ドア本体内に備えられ、前記窓板の下側の外周縁に連結されて前記窓板を昇降移動させる窓板昇降機構と前記窓板昇降機構を駆動する駆動源と、
を有する車両用ドアに設けられた窓のシール装置を構成するシールストリップであって、
前記シールストリップは、前記ドア枠の溝に沿って装着されて前記ドア枠に固定され、前記窓板の外周縁と前記ドア枠との間をシールすると共に昇降移動する前記窓板を案内する長尺なシールストリップであり、
前記窓板の昇降方向と平行に配置される少なくとも一つの前記ドア枠の溝に装着されたとき前記窓板の外周縁端面と対向する位置に配置される底部ストリップと、
前記底部ストリップの幅方向の車内側端部と車外側端部の少なくともいずれか一方から前記窓開口の中心側に向けて延びる側部ストリップとを有し、
前記側部ストリップと前記底部ストリップの少なくともいずれかには、前記窓板の外周縁に対向する位置に弾性変形可能な中空壁により閉じられて内部に気体が満たされた内部空間を有する管状シール部が長手方向に形成されており、
前記管状シール部は、前記内部空間の気圧の増減に対応してその外形と該内部空間の体積が拡大及び縮小可能で、前記外形と体積が拡大したとき前記管状シール部の外面が前記窓板の外周縁に所定長さ当たりで所定の押圧力を保って接触し、縮小したとき前記窓板の外周縁から離れて非接触となるか又は前記押圧力が減少した状態で前記窓板の外周縁と接触可能となり、
前記シールストリップが前記ドア枠の溝に沿って装着されたとき、前記管状シール部は、前記シール装置に設けられている気圧調節機構に連結され、前記気圧調節機構は前記窓板の少なくとも上昇移動時に該管状シール部の前記内部空間内の気体を吸引すると共に気圧を減少させることにより該管状シール部の外形および内部空間の体積を縮小させ、前記窓板の停止時に前記内部空間内に気体を流入させると共に前記気圧を増大させて前記管状シール部の外形および内部空間の体積を拡大させることができるように構成されており、
ここで前記窓板昇降機構が非作動で、前記窓板が停止しているときは、前記窓板の外周縁が前記シールストリップの中に存在しない長手方向の範囲内において、前記管状シール部は第一の位置に位置し、
前記窓板の外周縁が前記シールストリップの中に存在する長手方向の範囲内において、前記管状シール部は、前記窓板の外周縁と接触して、前記第一の位置よりも前記窓板の開閉移動経路から離れる第二の位置に変位させられると共に前記窓板の外周縁に所定の押圧力を与えた状態で接触して前記窓板と前記ドア枠との間をシールし、
前記窓板昇降機構の作動により前記窓板が少なくとも上昇移動するときは、前記気圧調節機構の作動により前記管状シール部の前記内部空間から気体を吸引し前記内部空間内の気圧を減少させることにより、(1)前記管状シール部を全長に亘って前記第二の位置よりも更に前記窓板の開閉移動経路から離れる第三の位置へ変位させて前記窓板の外周縁と非接触状態にさせるか、若しくは(2)前記窓板の外周縁が前記シールストリップの中に存在する長手方向の範囲内において、前記窓板の外周縁に対する前記管状シール部の所定長さ当たりの押圧力を前記第二の位置における押圧力よりも減少させた状態で接触させる、
ことを特徴とする窓のシール装置を構成するシールストリップ。
【請求項10】
前記シールストリップは、弾性変形可能なゴム又は熱可塑性エストラマーから横断面形状が一定に成形されていることを特徴とする請求項9に記載のシールストリップ。
【請求項11】
前記管状シール部は、車内側の側部ストリップに設けられていることを特徴とする請求項9又は10に記載のシールストリップ。
【請求項12】
前記管状シール部は、車内側の側部ストリップと前記底部ストリップとを跨いで設けられていることを特徴とする請求項9又は10に記載のシールストリップ。
【請求項13】
前記管状シール部の中空壁の少なくとも内面側は、前記側部ストリップの材料よりも柔軟で耐屈曲性と気密性の高い材料から成形されていることを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載のシールストリップ。
【請求項14】
前記管状シール部における前記中空壁の幅方向の端末が前記側部ストリップと底部ストリップの少なくともいずれかと化学的に接合されていることを特徴とする請求項9から13のいずれか一項に記載のシールストリップ。
【請求項15】
管状シール部、前記底部ストリップ、および側部ストリップのうちの前記窓板の外周縁と対向する少なくとも一つの表面には、前記窓板との摺動抵抗を減少させる処理層が形成されていることを特徴とする請求項9から14のいずれか一項に記載のシールストリップ。
【請求項16】
前記処理層は、前記表面の長手方向に沿って連続して形成された複数の凹凸部であることを特徴とする請求項15に記載のシールストリップ。
【請求項17】
前記処理層は、前記管状シール部または前記シールストリップの材料よりも窓板に対する摩擦係数が低い材料で構成された低摩擦材層であることを特徴とする請求項15又は16に記載のシールストリップ。
【請求項18】
請求項9から17のいずれか一項に記載のシールストリップの少なくとも2つが長手方向の端部で相互に接合されてなるシールストリップ組立体であって、
前記シールストリップ組立体は、
前記ドア枠の前記ドア本体の上縁の端部から鉛直方向に延びる縦辺枠に装着されるシールストリップと、
前記ドア枠の前記縦辺枠の上端から前記ドア本体の上縁の他端に向けて延びる上辺枠に装着されるシールストリップとを備えており、
前記縦辺枠に装着されるシールストリップの長手方向の端部と前記上辺枠に装着されるシールストリップの長手方向の端部とは、該両方のシールストリップを交差させて接合されており、該両方のシールストリップの接合された端部では、それぞれの前記管状シール部の内部空間同士が通気可能に接合されていることを特徴とするシールストリップ組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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