立体像表示装置
【課題】本発明は、鮮明な立体像を得ることができる立体像表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】対向する2面を有する光伝送部材110と、該光伝送部材を前記2面の両面から挟むように設けられた2枚の光学アレイ131、132とを含む複合アレイ130を有し、該複合アレイの一方側で撮像した立体物90を、該複合アレイの他方側に立体像100として表示する立体像表示装置であって、
前記光学アレイは、前記光伝送部材の面上に2次元に配列された屈折率分布ファイバー120を含み、
該屈折率分布ファイバーの長さは、中を進行する光の蛇行周期の4分の1であることを特徴とする。
【解決手段】対向する2面を有する光伝送部材110と、該光伝送部材を前記2面の両面から挟むように設けられた2枚の光学アレイ131、132とを含む複合アレイ130を有し、該複合アレイの一方側で撮像した立体物90を、該複合アレイの他方側に立体像100として表示する立体像表示装置であって、
前記光学アレイは、前記光伝送部材の面上に2次元に配列された屈折率分布ファイバー120を含み、
該屈折率分布ファイバーの長さは、中を進行する光の蛇行周期の4分の1であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体像表示装置に関し、特に、複合アレイの一方側で撮像した立体物を、複合アレイの他方側に立体像として表示する立体像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、任意の視点から自由に立体画像を見ることができる立体画像方式の一つとして、平面状に配列された凸レンズ群又はピンホール群を用いたいわゆるIP(Integral Photography)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
図1は、従来のIP方式のファイバー群を用いた場合の撮影方法の一例について説明するための図である。図1において、同一平面上に配置された複数の凸レンズ21、22、・・・、2nからなるレンズ群20の背面に、写真フィルム30を置き、レンズ群20の前に置いた被写体10を撮影している状態が示されている。写真フィルム30には、各凸レンズ21、22、・・・、2nにより被写体10の像31、32、33、・・・、3nが結像し、撮影される。
【0004】
図2は、図1の方法により撮影した立体画像を、表示する方法の従来技術の一例を示した図である。図2において、図1の方法により撮影して現像した写真40が、レンズ群20に対して撮影したときのフィルムと同じ位置に配置されている。この状態で、レンズ群20の前方から目60で写真状の像41、42、・・・、4nを見ると、立体再生像50が見える。この場合、レンズ群20から被写体10を見て凹に見えるものが、立体再生像50では被写体10を裏側から見たようになるために、凸に見える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−122191号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】『三次元画像工学』、大越孝敬著、朝倉書店、1991年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のIP方式においては、写真フィルム30を用いて撮影し、現像した写真40を用いるため、リアルタイムで被写体10を撮影し、表示する光学系としては利用できない。また、テレビカメラや液晶パネル等を用いた方式の発明があるが、撮影した画像は、電気信号を介する必要があった。
【0008】
一方、電気信号を介せず、光ファイバーを多数2次元状に配置したアレイのみで撮像信号を伝送する方式も提案されている(例えば、特許文献1参照)。特に、光ファイバーの長さを、光ファイバー内の光路の半周期の奇数倍とした発明では、立体像をアレイの観察者側に形成することができ、空中像を作成、提供できる。特許文献1の発明においては、光ファイバーとして、半径方向に2乗特性のような不均一な屈折率分布を持つ光ファイバーを用いることを前提としている。
【0009】
光ファイバーの屈折率が半径方向の中心部で高く、周辺部に行くに従い小さくなる例として、例えば、下記(1)式を満たす条件が挙げられる。
【0010】
【数1】
図3は、(1)式で示される特性を有する光ファイバー70を示した図である。(1)式で示される特性を有する光ファイバー70に光が入射すると、半径方向の中心部(軸中心部)ほど屈折率が高いために、図3に示すように、光線は蛇行し、ある特定の点で結像する。このように、光ファイバー70は、レンズ作用を備える。この原理は、1964年、D. MARCUSEらによって見いだされ、内容の詳細は、The Bell System Technical Journal. , July, 1964等に記載されている。
【0011】
ここで、光ファイバー70の光線マトリックス、つまり入射光の位置、角度と出射光の位置、角度との関係は、(2)式のように表せる。
【0012】
【数2】
図4は、(2)式で示された関係を示す図である。ここで、特許文献1においては、立体像をファイバーアレイの観察者側に表示するために、光ファイバー70の長さZLを、(3)式に対応する長さとしている。
【0013】
【数3】
図5は、光ファイバー70の長さZLを、(3)式に対応する長さとしたときの内部を通過する光線の状態を示した図である。図5に示すように、rs=−rp、φs=−φpとなり、入射光線の角度φsと出射光線の角度φpは、符号が逆で絶対値が等しくなる。
【0014】
図6は、光ファイバー70を複数本アレイ状に配列した光ファイバーアレイ80と入射光線及び出射光線との関係を示した図である。図6に示すように、各光ファイバー70の端面の中心から出射した光線を考えると、入射側の光線を入射端面に対称に折り返した形になり、光の進行方向、つまり光ファイバー70の外側に入射端から被写体90までと同じ距離d1で交わる。つまり、出射光線は、交点Pで交わり、交点Pに再生像100ができる。
【0015】
図7は、図6の光ファーバーアレイ80を用いた状態を、1本の光ファイバー70に着目して拡大した図である。この場合には、各光ファイバー70の端面の全面から出射した光は、図7に示すように、あたかも入射端面付近外側の仮想集光点P’から光が出力されたように、ある広がりをもって出射端側に進行する。そして、再生像面に到達したときには、出射端面よりも更に広がった状態となっている。図7において、入射光側の三角形SS1S3と出射光側の三角形P’P3P1が逆合同、即ち、入射光側の三角形SS1S3と線対称な三角形S’S1S3と出射光側の三角形P’P1P3が合同となっていることが分かる。従って、仮想集光点P’から見た再生像の位置Pが、仮想集光点P’から光ファイバー70の出射端までの距離の2倍の距離2d1にあることから、この広がりは、再生面において、一つの光ファイバーの出射側端面から出る光束の広がりDpの2倍の2Dpとなり、この広がりの分、ぼやけた像となる。ここに、実効的なDpは入射光の入射角に依存するが、最大値はファイバーの直径まで許容される。
【0016】
つまり、特許文献1に記載の構成では、電気信号を用いずに立体像を得ることはできるが、立体像自体は、ぼやけた像となってしまうという問題があった。
【0017】
そこで、本発明は、鮮明な立体像を得ることができる立体像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る立体像表示装置は、対向する2面を有する光伝送部材と、該光伝送部材を前記2面の両面から挟むように設けられた2枚の光学アレイとを含む複合アレイを有し、該複合アレイの一方側で撮像した立体物を、該光伝送部材の入力面に各光ファイバーに対応して生成された要素画像群を介して、該複合アレイの他方側に立体像として表示する立体像表示装置であって、
前記光学アレイは、前記光伝送部材の面上に2次元に配列された屈折率分布ファイバーを含み、
該屈折率分布ファイバーの長さは、中を進行する光の蛇行周期の4分の1であることを特徴とする立体像表示装置。
【0019】
これにより、再生像面において、光線の広がりを回避することができ、鮮明な立体像を表示することができる。
【0020】
第2の発明は、第1の発明に係る立体像表示装置において、
前記光伝送部材は、拡散板であって、
前記立体像は、前記立体物に対して鏡面対称の像であることを特徴とする。
【0021】
これにより、拡散板に関して対称な位置に、鮮明な鏡面対称像を得ることができる。
【0022】
第3の発明は、第2の発明に係る立体像表示装置において、
所定間隔を有して配置された前記複合アレイを偶数枚有し、前記鏡面対称の立体像を反転させ、前記立体物と同じ奥行き方向となるように前記立体像を表示することを特徴とする。
【0023】
これにより、立体像の凹凸反転を回避することができ、立体物に忠実な立体像を表示することができる。
【0024】
第4の発明は、第2の発明に係る立体像表示装置において、
前記拡散板は、液晶で構成され、該液晶の拡散特性を用いることを特徴とする。
【0025】
これにより、IP方式のように、撮像した立体物を液晶に高解像度で表示させることができ、立体像の表示を鮮明に行うことができる。
【0026】
第5の発明は、第4の発明に係る立体像表示装置において、
前記液晶は、電圧制御型液晶であることを特徴とする。
【0027】
これにより、電圧で液晶の拡散特性を調整することができる。
【0028】
第6の発明は、第2の発明に係る立体像表示装置において、
前記拡散板は、ホログラフィックスクリーンで構成されたことを特徴とする。
【0029】
これにより、ホログラフィックスクリーンの持つ拡散特性により、撮像する立体物の要素画像群を生成し、これを出力側の光ファイバーを介して、立体物を忠実に再現できる。
【0030】
第7の発明は、第1の発明に係る立体表示装置において、
前記光伝送部材は、拡大光学系部材又は縮小光学系部材であることを特徴とする。
【0031】
これにより、立体像の大きさを、現実の立体物よりも拡大させたり縮小させたりして用途に応じて調整することができる。
【0032】
第8の発明は、第7の発明に係る立体表示装置において、
前記拡大光学系部材又は前記縮小光学系部材は、ファイバーオプティックスプレートであることを特徴とする。
【0033】
これにより、入手容易な部材を用いて、立体像の大きさの調整を容易に行うことができる。
【0034】
第9の発明は、第1の発明に係る立体表示装置において、
前記光伝送部材は、立体像の回転機能を有するファイバー光学系部材であることを特徴とする。
【0035】
これにより、立体像の回転を行わせることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、ぼやけの少ない鮮明な立体像を表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来のIP方式のファイバー群を用いた撮影方法の説明図である。
【図2】図1の方法により撮影した立体画像を表示する従来技術例を示した図である。
【図3】(1)式で示される特性を有する光ファイバー70を示した図である。
【図4】(2)式で示された関係を示す図である。
【図5】光ファイバー70が(3)式を満たす長さのときの光線の状態を示した図である。
【図6】光ファイバーアレイ80と入射光線及び出射光線との関係を示した図である。
【図7】光ファーバーアレイ80の1本の光ファイバー70に着目した拡大図である。
【図8】実施例1に係る立体像表示装置の原理を説明するための図である。
【図9】実施例1に係る立体像表示装置の複合アレイ130の構成を示した斜視図である。
【図10】実施例1に係る立体表示装置の図9とは異なる複合アレイ133の全体構成の一例を示した斜視図である。
【図11】実施例1に係る立体表示装置の複合アレイ130の一例を示す側面図である。
【図12】実施例2に係る立体像表示装置の全体構成の一例を示した側面図である。
【図13】実施例3に係る立体像表示装置の全体構成の一例を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【実施例1】
【0039】
図8は、本発明の実施例1に係る立体像表示装置の原理を説明するための図である。図8において、実施例1に係る立体表示装置の複合アレイ130の部分的要素の光ファイバーを拡大して示している。複合アレイ130は、拡散板110と、光ファイバー120とを備える。光ファイバー120は、拡散板110の両面に設けられている。光ファイバー120は、撮影面側又は入射面側の光ファイバー121と、表示面側又は出射面側の光ファイバー122とを備える。
【0040】
ここで、光ファイバー120が、撮影面側の光ファイバー121と表示面側の光ファイバー122の連続した長さで表現されていると考えると、光ファイバー120の長さは、(4)式を満たす。また、拡散板110の位置は、(5)式を満たす面の位置に挿入されている。
【0041】
【数4】
ここで、拡散板110は、光ファーバー120を2つに分割していることになる。これは、撮影と表示を一体化させ、撮影面と表示面を共有した形のIP方式の構成とも解釈できる。よって、物体側を撮像側アレイ131、像側を表示アレイ132と呼ぶこととする。特に、(4)式において、m=0のとき、図8に示すように、撮像側アレイ131及び表示側アレイ132とも、その構成要素である光ファーバー121、122の長さは蛇行周期の4分の1周期となる。このとき、光ファイバー120の端面は焦点面となり、表示面である拡散板110から出た光線は、光ファイバー122から出射するときに平行光となり、図7において示した像形成点での2倍の広がりを回避することができる。
【0042】
図9は、実施例1に係る立体像表示装置の複合アレイ130の全体構成の一例を示した斜視図である。図9において、実施例1に係る立体像表示装置の複合アレイ130は、拡散板110と、撮像側アレイ131と、表示側アレイ132とを有する。撮像側アレイ131は、複数の入射面側の光ファイバー121が、拡散板110の一方の面上に、二次元状に、縦横に列をなして配列されて構成されている。光ファイバー121は、円筒形状をしており、円筒の中心軸が、拡散板110の面と垂直になるように配置されている。
【0043】
拡散板110の他方の面上には、複数の出射面側の光ファイバー122が、入射面側の光ファイバー121と同様に、二次元状に、縦横に列をなして配列されている。出射面側の光ファイバー122は、入射面側の光ファイバー121と同様に、円筒形状をしており、円筒の中心軸は、拡散板110に垂直になるように配置されている。そして、入射面側の光ファイバー121の円筒の中心軸と、出射面側の光ファイバー122の円筒の中心軸は、拡散板110を介して一致しており、連続する長い光ファイバー120を、拡散板110が中央で2分した形状、又は入射面側の光ファイバー121と出射面側の光ファイバー122が、拡散板110を両側から挟むような形状となっている。
【0044】
入射面側の光ファイバー121と出射面側の光ファイバー122は、同じ長さであり、ともに(4)式を満たす。そして、拡散板110は、(5)式を満たす位置に存在する。これにより、入射面側で撮像され、拡散板110上に撮像された画像が、出射面側の光ファイバーで光が広がって表示されることを防ぐことができる。そして、この関係を満たす入射面側の光ファイバー121と、出射面側の光ファイバー122を、図9に示すように、拡散板110の両面上に、二次元状に配列することにより、ぼやけの少ない鮮明な立体像を表示することができる。図9においては、紙面の都合上、縦3行×横5列分の光ファイバー121、122しか示していないが、これらをもっと多く配置して撮像側アレイ131及び表示側アレイ132を構成することにより、更に広い領域について、立体像を表示することができる。
【0045】
このように、拡散板110の対向する2面上に、拡散板110を両面から挟むように光ファイバー121と光ファイバー122を2次元状に配置することにより、ぼやけの少ない鮮明な立体像を表示できる複合アレイ130を構成することができる。
【0046】
図10は、実施例1に係る立体表示装置の図9とは異なる複合アレイ133の全体構成の一例を示した斜視図である。図10において、複合アレイ133は、拡散板110と、撮像側アレイ134と、表示側アレイ135とを備える点では、図9に係る複合アレイ130と同様である。複合アレイ133は、撮像側アレイ134を構成する入射側の光ファイバー121と、表示側アレイ135を構成する出射側の光ファイバー122が、図9においては、縦横で格子状に列をなしていたのに対し、そのような配置となっておらず、縦方向の真ん中の2行目が、奥の1行目の行に対して円筒の略半径分ずれ、かつ、1行目の間に入り込むいわゆる俵積みの配置となっている点で、図9に係る複合アレイ130と異なっている。このように、複合アレイ133を構成する光ファイバー120は、必ずしも格子状又はマトリックス状に配置される必要は無く、種々の配置構成をとり得る。但し、図10に係る複合アレイ133においても、入射側の光ファイバー121の円筒の中心軸と、出射側の光ファイバー122の円筒の中心軸122とは一致し、拡散板110を両面から挟むように配置されている点は、図9に係る複合アレイ130と同様である。
【0047】
このように、実施例1に係る立体像表示装置の複合アレイ133は、用途に応じて撮像側アレイ134及び表示側アレイ135を種々の構成とすることができる。
【0048】
図11は、実施例1に係る立体表示装置の複合アレイ130の一例を示す側面図である。図9及び図10において説明したように、複合アレイ130は、(4)式を満たす屈折率分布光ファイバー121、122を、2次元状のアレイに配置して2枚のアレイを用意する。1枚が撮像側アレイ131であり、もう1枚が表示側アレイ132である。そして、両者の間に拡散板110を挿入した複合アレイ構成とし、複合アレイ130を構成する。特に、一番短いものとしては、光ファイバー121、122の中を通る光の蛇行周期の1/4で構成することができる。このような構成により、立体物である被写体90を、鏡面対称の立体像100として、観察者側に表示できる。
【0049】
図11において、被写体90と、撮像側アレイ131との距離はd1であり、表示側アレイ132と立体像100との距離も同様にd1となっている。被写体90からは、撮像側アレイの入射側光ファイバー121の全面に光が入射し、被写体90が撮像される。撮像された被写体90の要素画像群は、拡散板110に表示される。
【0050】
拡散板110は、撮像側アレイ131で撮影した被写体90の像が結像される部材である。また、拡散板110に結像された像が、表示側アレイ131に伝送されるように、光伝送性を有する部材から構成される。例えば、拡散板110は、透過性を有する部材で構成されてもよい。よって、拡散板110は、画像の表示機能を有するとともに光伝送性を有する板状の部材が適用される。拡散板110には、例えば、すりガラス、液晶パネルや、ホログラフィックスクリーンが適用されてもよい。液晶パネルは、種々の液晶パネルが適用されてよく、例えば、電圧制御型液晶が適用されてもよい。拡散板110に電圧制御型液晶を用いた場合には、電圧により、拡散板110の拡散特性を制御することができる。また、拡散板110にホログラフィックスクリーンを適用した場合には、それを拡散板110として立体物の像を撮像表示することができる。
【0051】
このとき、立体像100が表示される位置は、被写体90と撮像側アレイ131との距離d1と同様に、表示側アレイ132から距離d1離れた位置であり、撮像側アレイ131で入射した光が、拡大や縮小等なく、拡散板110を対称としてそのまま表示側アレイ132から出射される。よって、立体像100は、ぼやけが少なく、被写体90に忠実な鮮明な像となる。ここにd1は任意の値にとれるから、表示される立体像は凹凸が逆になる。
【0052】
このように、(5)式を満たす長さの光ファイバー121、122で撮像側アレイ131及び表示側アレイ132を構成し、像を表示できて透過性を有する拡散板110を、(5)式を満たす位置に挿入して複合アレイ130を構成することにより、一方の面で撮像した被写体90の立体像100を、凹凸が逆であるものの、電気信号を用いた像の変換を行うこと無く、他方の面で忠実に再現表示することができる。
【実施例2】
【0053】
図12は、本発明の実施例2に係る立体像表示装置の全体構成の一例を示した側面図である。図12において、実施例2に係る立体表示装置は、第1の複合アレイ130と、第2の複合アレイ136の2つの複合アレイ130、136を備えている。第1の複合アレイ130は、実施例1において説明した複合アレイ130と同様の複合アレイ130であるので、同様の参照番号を付している。一方、第2の複合アレイ136は、新たに加えられた複合アレイであり、第1の複合アレイ130と同様の複合アレイであってもよいし、異なる複合アレイであってもよい。また、第2の複合アレイ136は、拡散板111と、撮像側アレイ137と、表示側アレイ138を備えている。第1の複合アレイ130及び第2の複合アレイ136を構成する光ファイバー120は、ともに(4)式の長さを満たし、最も短い長さでは、光ファイバー120の内部を通過する光の蛇行周期の4分の1の長さである。
【0054】
実施例1に係る立体像表示装置においては、立体物である被写体90の、凹凸が逆転する像しか得られなかった。しかしながら、実施例2に係る立体表示装置においては、第1の複合アレイ130の他に、第1の複合アレイ130と直列に、所定間隔を有して第2の複合アレイ136を配置して、第1の複合アレイ130から得られた像を、更に逆転させて凹凸の逆転現象を解消している。つまり、立体物である被写体90の第1の立体像101は、被写体90と第1の複合アレイ130の撮像側アレイ131との距離d1分、表示側アレイ132から離れた位置に表示される。ここで、第1の立体像101を被写体とし、更に第2の複合アレイ136で撮像及び表示を行うようにすれば、被写体90の凹凸逆転像である第1の立体像101の凹凸を更に逆転させ、立体物との凹凸関係が逆転していない第2の立体像102を得ることができる。
【0055】
ここで、第2の複合アレイ136は、第1の複合アレイ130が作る立体像101よりも外側、つまり第1の複合アレイより離れた位置に配置される。第1の複合アレイ130が、表示側アレイ132から距離d1だけ離れた位置に生成した立体像101を、第2の複合アレイ136は、自分自身の被写体として取り扱うことができるため、図12においては、第2の複合アレイ136の撮像側アレイ137は、第1の立体像101から、距離d2離れた位置に配置されている。これにより、第2の複合アレイ136は、表示側アレイ138から距離d2離れた位置に、第2の立体像102を空中に光学像として表示することができる。そして、第2の立体像102は、第1の立体像101を鏡面対称に表示した像であるので、第1の立体像101とは凹凸が逆、即ち立体物である被写体90と同様の凹凸を有する立体像として再現される。
【0056】
このように、第1の複合アレイ130と第2の複合アレイ136の間隔を、第1の複合アレイが作る第1の立体像101が、第2の複合アレイ136の入力端面との間にあるように配置することにより、第2の複合アレイ136が作る第2の立体像102を、第2の複合アレイ136の表示側アレイ138の外側に空中の光学像として生成することができ、凹凸の反転を解消することができる。
【0057】
なお、図12においては、第1の複合アレイ130と、第2の複合アレイ136の2つの複合アレイ130、136を備える立体像表示装置について説明したが、複合アレイ130、136が偶数個備えられていれば、凹凸の反転を解消した立体表示装置を構成することができる。よって、実施例2に係る立体像表示装置は、偶数個の複合アレイ130、136を備えていれば、用途に応じて様々な構成とすることができる。
【実施例3】
【0058】
図13は、本発明の実施例3に係る立体像表示装置の全体構成の一例を示した側面図である。実施例3に係る立体表示装置は、拡大複合アレイ150を備える。拡大複合アレイ150は、拡大光学系部材140と、撮像側アレイ151と、表示側アレイ152とを備える。つまり、拡散板110、111の代わりに、拡大光学系部材140が、撮像側アレイ151と、表示側アレイ152との間に挿入されている。このように、拡散板110、111の代わりに、拡大光学系部材140を挿入することにより、撮像側アレイ151で撮像した被写体90の画像を、拡大して表示側アレイ152に伝送することができる。これにより、表示側アレイ152では、被写体の被写体90よりも、拡大した立体像103を表示することができる。このように、撮像側アレイ151と表示側アレイ152の間に挿入配置する光伝送部材を、拡散板110ではなく、拡大光学系部材140とすることにより、立体物である被写体90に比べて拡大した立体像103を表示することができる。
【0059】
なお、この場合においても、撮像側アレイ151及び表示側アレイ152を構成する光ファイバー120は、(5)式の関係を満たす長さであることが必要である。
【0060】
また、図13において、撮像側アレイ151と被写体90との距離をd3とすると、表示側アレイ152と立体像103との距離は、kd3で示される。ここで、kは倍率を示す定数である。よって、倍率が大きくなる程、表示側アレイ152と立体像103との距離は大きくなることになる。
【0061】
拡大光学系部材140は、種々の光学部材を適用することができるが、例えば、ファイバーオプティックプレートが適用されてもよい。また、図13においては、光伝送部材として、拡大光学系部材140を用いた例を挙げて説明したが、拡大光学系部材の代わりに、縮小光学系部材を用いてもよい。例えば、上述のファイバーオプティックプレートは、拡大光学系部材としても、縮小光学系部材としても利用できるので、ファイバーオプティックスプレートを用いて、被写体90よりも縮小する立体像103を得ることができる立体物表示装置を構成してもよい。
【0062】
更に、ファイバーオプティックスプレートと同様のファイバー光学系で、光学像を回転できる部材を拡大光学系140の代わりに挿入してもよい。このような構成とすることにより、被写体90を回転させた立体像103を得ることができる。
【0063】
このように、撮像側アレイ151と表示側アレイ152の間の光伝送部材は、単に画像を撮像及び表示するだけでなく、種々の光学的変換機能を有する部材を用いることができ、これにより、用途に応じて種々の立体像103を表示することが可能となる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、立体物の被写体を立体像として表示する立体像表示装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10、90 被写体(立体物)
20 レンズ群
30 写真フィルム
40 写真
50、100、101、102、103 立体像
70、120、121、122 光ファイバー
80 光ファイバーアレイ
110、111 拡散板
130〜138 複合アレイ
140 拡大系光学部材
150、151、152 拡大複合アレイ
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体像表示装置に関し、特に、複合アレイの一方側で撮像した立体物を、複合アレイの他方側に立体像として表示する立体像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、任意の視点から自由に立体画像を見ることができる立体画像方式の一つとして、平面状に配列された凸レンズ群又はピンホール群を用いたいわゆるIP(Integral Photography)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
図1は、従来のIP方式のファイバー群を用いた場合の撮影方法の一例について説明するための図である。図1において、同一平面上に配置された複数の凸レンズ21、22、・・・、2nからなるレンズ群20の背面に、写真フィルム30を置き、レンズ群20の前に置いた被写体10を撮影している状態が示されている。写真フィルム30には、各凸レンズ21、22、・・・、2nにより被写体10の像31、32、33、・・・、3nが結像し、撮影される。
【0004】
図2は、図1の方法により撮影した立体画像を、表示する方法の従来技術の一例を示した図である。図2において、図1の方法により撮影して現像した写真40が、レンズ群20に対して撮影したときのフィルムと同じ位置に配置されている。この状態で、レンズ群20の前方から目60で写真状の像41、42、・・・、4nを見ると、立体再生像50が見える。この場合、レンズ群20から被写体10を見て凹に見えるものが、立体再生像50では被写体10を裏側から見たようになるために、凸に見える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−122191号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】『三次元画像工学』、大越孝敬著、朝倉書店、1991年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のIP方式においては、写真フィルム30を用いて撮影し、現像した写真40を用いるため、リアルタイムで被写体10を撮影し、表示する光学系としては利用できない。また、テレビカメラや液晶パネル等を用いた方式の発明があるが、撮影した画像は、電気信号を介する必要があった。
【0008】
一方、電気信号を介せず、光ファイバーを多数2次元状に配置したアレイのみで撮像信号を伝送する方式も提案されている(例えば、特許文献1参照)。特に、光ファイバーの長さを、光ファイバー内の光路の半周期の奇数倍とした発明では、立体像をアレイの観察者側に形成することができ、空中像を作成、提供できる。特許文献1の発明においては、光ファイバーとして、半径方向に2乗特性のような不均一な屈折率分布を持つ光ファイバーを用いることを前提としている。
【0009】
光ファイバーの屈折率が半径方向の中心部で高く、周辺部に行くに従い小さくなる例として、例えば、下記(1)式を満たす条件が挙げられる。
【0010】
【数1】
図3は、(1)式で示される特性を有する光ファイバー70を示した図である。(1)式で示される特性を有する光ファイバー70に光が入射すると、半径方向の中心部(軸中心部)ほど屈折率が高いために、図3に示すように、光線は蛇行し、ある特定の点で結像する。このように、光ファイバー70は、レンズ作用を備える。この原理は、1964年、D. MARCUSEらによって見いだされ、内容の詳細は、The Bell System Technical Journal. , July, 1964等に記載されている。
【0011】
ここで、光ファイバー70の光線マトリックス、つまり入射光の位置、角度と出射光の位置、角度との関係は、(2)式のように表せる。
【0012】
【数2】
図4は、(2)式で示された関係を示す図である。ここで、特許文献1においては、立体像をファイバーアレイの観察者側に表示するために、光ファイバー70の長さZLを、(3)式に対応する長さとしている。
【0013】
【数3】
図5は、光ファイバー70の長さZLを、(3)式に対応する長さとしたときの内部を通過する光線の状態を示した図である。図5に示すように、rs=−rp、φs=−φpとなり、入射光線の角度φsと出射光線の角度φpは、符号が逆で絶対値が等しくなる。
【0014】
図6は、光ファイバー70を複数本アレイ状に配列した光ファイバーアレイ80と入射光線及び出射光線との関係を示した図である。図6に示すように、各光ファイバー70の端面の中心から出射した光線を考えると、入射側の光線を入射端面に対称に折り返した形になり、光の進行方向、つまり光ファイバー70の外側に入射端から被写体90までと同じ距離d1で交わる。つまり、出射光線は、交点Pで交わり、交点Pに再生像100ができる。
【0015】
図7は、図6の光ファーバーアレイ80を用いた状態を、1本の光ファイバー70に着目して拡大した図である。この場合には、各光ファイバー70の端面の全面から出射した光は、図7に示すように、あたかも入射端面付近外側の仮想集光点P’から光が出力されたように、ある広がりをもって出射端側に進行する。そして、再生像面に到達したときには、出射端面よりも更に広がった状態となっている。図7において、入射光側の三角形SS1S3と出射光側の三角形P’P3P1が逆合同、即ち、入射光側の三角形SS1S3と線対称な三角形S’S1S3と出射光側の三角形P’P1P3が合同となっていることが分かる。従って、仮想集光点P’から見た再生像の位置Pが、仮想集光点P’から光ファイバー70の出射端までの距離の2倍の距離2d1にあることから、この広がりは、再生面において、一つの光ファイバーの出射側端面から出る光束の広がりDpの2倍の2Dpとなり、この広がりの分、ぼやけた像となる。ここに、実効的なDpは入射光の入射角に依存するが、最大値はファイバーの直径まで許容される。
【0016】
つまり、特許文献1に記載の構成では、電気信号を用いずに立体像を得ることはできるが、立体像自体は、ぼやけた像となってしまうという問題があった。
【0017】
そこで、本発明は、鮮明な立体像を得ることができる立体像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る立体像表示装置は、対向する2面を有する光伝送部材と、該光伝送部材を前記2面の両面から挟むように設けられた2枚の光学アレイとを含む複合アレイを有し、該複合アレイの一方側で撮像した立体物を、該光伝送部材の入力面に各光ファイバーに対応して生成された要素画像群を介して、該複合アレイの他方側に立体像として表示する立体像表示装置であって、
前記光学アレイは、前記光伝送部材の面上に2次元に配列された屈折率分布ファイバーを含み、
該屈折率分布ファイバーの長さは、中を進行する光の蛇行周期の4分の1であることを特徴とする立体像表示装置。
【0019】
これにより、再生像面において、光線の広がりを回避することができ、鮮明な立体像を表示することができる。
【0020】
第2の発明は、第1の発明に係る立体像表示装置において、
前記光伝送部材は、拡散板であって、
前記立体像は、前記立体物に対して鏡面対称の像であることを特徴とする。
【0021】
これにより、拡散板に関して対称な位置に、鮮明な鏡面対称像を得ることができる。
【0022】
第3の発明は、第2の発明に係る立体像表示装置において、
所定間隔を有して配置された前記複合アレイを偶数枚有し、前記鏡面対称の立体像を反転させ、前記立体物と同じ奥行き方向となるように前記立体像を表示することを特徴とする。
【0023】
これにより、立体像の凹凸反転を回避することができ、立体物に忠実な立体像を表示することができる。
【0024】
第4の発明は、第2の発明に係る立体像表示装置において、
前記拡散板は、液晶で構成され、該液晶の拡散特性を用いることを特徴とする。
【0025】
これにより、IP方式のように、撮像した立体物を液晶に高解像度で表示させることができ、立体像の表示を鮮明に行うことができる。
【0026】
第5の発明は、第4の発明に係る立体像表示装置において、
前記液晶は、電圧制御型液晶であることを特徴とする。
【0027】
これにより、電圧で液晶の拡散特性を調整することができる。
【0028】
第6の発明は、第2の発明に係る立体像表示装置において、
前記拡散板は、ホログラフィックスクリーンで構成されたことを特徴とする。
【0029】
これにより、ホログラフィックスクリーンの持つ拡散特性により、撮像する立体物の要素画像群を生成し、これを出力側の光ファイバーを介して、立体物を忠実に再現できる。
【0030】
第7の発明は、第1の発明に係る立体表示装置において、
前記光伝送部材は、拡大光学系部材又は縮小光学系部材であることを特徴とする。
【0031】
これにより、立体像の大きさを、現実の立体物よりも拡大させたり縮小させたりして用途に応じて調整することができる。
【0032】
第8の発明は、第7の発明に係る立体表示装置において、
前記拡大光学系部材又は前記縮小光学系部材は、ファイバーオプティックスプレートであることを特徴とする。
【0033】
これにより、入手容易な部材を用いて、立体像の大きさの調整を容易に行うことができる。
【0034】
第9の発明は、第1の発明に係る立体表示装置において、
前記光伝送部材は、立体像の回転機能を有するファイバー光学系部材であることを特徴とする。
【0035】
これにより、立体像の回転を行わせることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、ぼやけの少ない鮮明な立体像を表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来のIP方式のファイバー群を用いた撮影方法の説明図である。
【図2】図1の方法により撮影した立体画像を表示する従来技術例を示した図である。
【図3】(1)式で示される特性を有する光ファイバー70を示した図である。
【図4】(2)式で示された関係を示す図である。
【図5】光ファイバー70が(3)式を満たす長さのときの光線の状態を示した図である。
【図6】光ファイバーアレイ80と入射光線及び出射光線との関係を示した図である。
【図7】光ファーバーアレイ80の1本の光ファイバー70に着目した拡大図である。
【図8】実施例1に係る立体像表示装置の原理を説明するための図である。
【図9】実施例1に係る立体像表示装置の複合アレイ130の構成を示した斜視図である。
【図10】実施例1に係る立体表示装置の図9とは異なる複合アレイ133の全体構成の一例を示した斜視図である。
【図11】実施例1に係る立体表示装置の複合アレイ130の一例を示す側面図である。
【図12】実施例2に係る立体像表示装置の全体構成の一例を示した側面図である。
【図13】実施例3に係る立体像表示装置の全体構成の一例を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【実施例1】
【0039】
図8は、本発明の実施例1に係る立体像表示装置の原理を説明するための図である。図8において、実施例1に係る立体表示装置の複合アレイ130の部分的要素の光ファイバーを拡大して示している。複合アレイ130は、拡散板110と、光ファイバー120とを備える。光ファイバー120は、拡散板110の両面に設けられている。光ファイバー120は、撮影面側又は入射面側の光ファイバー121と、表示面側又は出射面側の光ファイバー122とを備える。
【0040】
ここで、光ファイバー120が、撮影面側の光ファイバー121と表示面側の光ファイバー122の連続した長さで表現されていると考えると、光ファイバー120の長さは、(4)式を満たす。また、拡散板110の位置は、(5)式を満たす面の位置に挿入されている。
【0041】
【数4】
ここで、拡散板110は、光ファーバー120を2つに分割していることになる。これは、撮影と表示を一体化させ、撮影面と表示面を共有した形のIP方式の構成とも解釈できる。よって、物体側を撮像側アレイ131、像側を表示アレイ132と呼ぶこととする。特に、(4)式において、m=0のとき、図8に示すように、撮像側アレイ131及び表示側アレイ132とも、その構成要素である光ファーバー121、122の長さは蛇行周期の4分の1周期となる。このとき、光ファイバー120の端面は焦点面となり、表示面である拡散板110から出た光線は、光ファイバー122から出射するときに平行光となり、図7において示した像形成点での2倍の広がりを回避することができる。
【0042】
図9は、実施例1に係る立体像表示装置の複合アレイ130の全体構成の一例を示した斜視図である。図9において、実施例1に係る立体像表示装置の複合アレイ130は、拡散板110と、撮像側アレイ131と、表示側アレイ132とを有する。撮像側アレイ131は、複数の入射面側の光ファイバー121が、拡散板110の一方の面上に、二次元状に、縦横に列をなして配列されて構成されている。光ファイバー121は、円筒形状をしており、円筒の中心軸が、拡散板110の面と垂直になるように配置されている。
【0043】
拡散板110の他方の面上には、複数の出射面側の光ファイバー122が、入射面側の光ファイバー121と同様に、二次元状に、縦横に列をなして配列されている。出射面側の光ファイバー122は、入射面側の光ファイバー121と同様に、円筒形状をしており、円筒の中心軸は、拡散板110に垂直になるように配置されている。そして、入射面側の光ファイバー121の円筒の中心軸と、出射面側の光ファイバー122の円筒の中心軸は、拡散板110を介して一致しており、連続する長い光ファイバー120を、拡散板110が中央で2分した形状、又は入射面側の光ファイバー121と出射面側の光ファイバー122が、拡散板110を両側から挟むような形状となっている。
【0044】
入射面側の光ファイバー121と出射面側の光ファイバー122は、同じ長さであり、ともに(4)式を満たす。そして、拡散板110は、(5)式を満たす位置に存在する。これにより、入射面側で撮像され、拡散板110上に撮像された画像が、出射面側の光ファイバーで光が広がって表示されることを防ぐことができる。そして、この関係を満たす入射面側の光ファイバー121と、出射面側の光ファイバー122を、図9に示すように、拡散板110の両面上に、二次元状に配列することにより、ぼやけの少ない鮮明な立体像を表示することができる。図9においては、紙面の都合上、縦3行×横5列分の光ファイバー121、122しか示していないが、これらをもっと多く配置して撮像側アレイ131及び表示側アレイ132を構成することにより、更に広い領域について、立体像を表示することができる。
【0045】
このように、拡散板110の対向する2面上に、拡散板110を両面から挟むように光ファイバー121と光ファイバー122を2次元状に配置することにより、ぼやけの少ない鮮明な立体像を表示できる複合アレイ130を構成することができる。
【0046】
図10は、実施例1に係る立体表示装置の図9とは異なる複合アレイ133の全体構成の一例を示した斜視図である。図10において、複合アレイ133は、拡散板110と、撮像側アレイ134と、表示側アレイ135とを備える点では、図9に係る複合アレイ130と同様である。複合アレイ133は、撮像側アレイ134を構成する入射側の光ファイバー121と、表示側アレイ135を構成する出射側の光ファイバー122が、図9においては、縦横で格子状に列をなしていたのに対し、そのような配置となっておらず、縦方向の真ん中の2行目が、奥の1行目の行に対して円筒の略半径分ずれ、かつ、1行目の間に入り込むいわゆる俵積みの配置となっている点で、図9に係る複合アレイ130と異なっている。このように、複合アレイ133を構成する光ファイバー120は、必ずしも格子状又はマトリックス状に配置される必要は無く、種々の配置構成をとり得る。但し、図10に係る複合アレイ133においても、入射側の光ファイバー121の円筒の中心軸と、出射側の光ファイバー122の円筒の中心軸122とは一致し、拡散板110を両面から挟むように配置されている点は、図9に係る複合アレイ130と同様である。
【0047】
このように、実施例1に係る立体像表示装置の複合アレイ133は、用途に応じて撮像側アレイ134及び表示側アレイ135を種々の構成とすることができる。
【0048】
図11は、実施例1に係る立体表示装置の複合アレイ130の一例を示す側面図である。図9及び図10において説明したように、複合アレイ130は、(4)式を満たす屈折率分布光ファイバー121、122を、2次元状のアレイに配置して2枚のアレイを用意する。1枚が撮像側アレイ131であり、もう1枚が表示側アレイ132である。そして、両者の間に拡散板110を挿入した複合アレイ構成とし、複合アレイ130を構成する。特に、一番短いものとしては、光ファイバー121、122の中を通る光の蛇行周期の1/4で構成することができる。このような構成により、立体物である被写体90を、鏡面対称の立体像100として、観察者側に表示できる。
【0049】
図11において、被写体90と、撮像側アレイ131との距離はd1であり、表示側アレイ132と立体像100との距離も同様にd1となっている。被写体90からは、撮像側アレイの入射側光ファイバー121の全面に光が入射し、被写体90が撮像される。撮像された被写体90の要素画像群は、拡散板110に表示される。
【0050】
拡散板110は、撮像側アレイ131で撮影した被写体90の像が結像される部材である。また、拡散板110に結像された像が、表示側アレイ131に伝送されるように、光伝送性を有する部材から構成される。例えば、拡散板110は、透過性を有する部材で構成されてもよい。よって、拡散板110は、画像の表示機能を有するとともに光伝送性を有する板状の部材が適用される。拡散板110には、例えば、すりガラス、液晶パネルや、ホログラフィックスクリーンが適用されてもよい。液晶パネルは、種々の液晶パネルが適用されてよく、例えば、電圧制御型液晶が適用されてもよい。拡散板110に電圧制御型液晶を用いた場合には、電圧により、拡散板110の拡散特性を制御することができる。また、拡散板110にホログラフィックスクリーンを適用した場合には、それを拡散板110として立体物の像を撮像表示することができる。
【0051】
このとき、立体像100が表示される位置は、被写体90と撮像側アレイ131との距離d1と同様に、表示側アレイ132から距離d1離れた位置であり、撮像側アレイ131で入射した光が、拡大や縮小等なく、拡散板110を対称としてそのまま表示側アレイ132から出射される。よって、立体像100は、ぼやけが少なく、被写体90に忠実な鮮明な像となる。ここにd1は任意の値にとれるから、表示される立体像は凹凸が逆になる。
【0052】
このように、(5)式を満たす長さの光ファイバー121、122で撮像側アレイ131及び表示側アレイ132を構成し、像を表示できて透過性を有する拡散板110を、(5)式を満たす位置に挿入して複合アレイ130を構成することにより、一方の面で撮像した被写体90の立体像100を、凹凸が逆であるものの、電気信号を用いた像の変換を行うこと無く、他方の面で忠実に再現表示することができる。
【実施例2】
【0053】
図12は、本発明の実施例2に係る立体像表示装置の全体構成の一例を示した側面図である。図12において、実施例2に係る立体表示装置は、第1の複合アレイ130と、第2の複合アレイ136の2つの複合アレイ130、136を備えている。第1の複合アレイ130は、実施例1において説明した複合アレイ130と同様の複合アレイ130であるので、同様の参照番号を付している。一方、第2の複合アレイ136は、新たに加えられた複合アレイであり、第1の複合アレイ130と同様の複合アレイであってもよいし、異なる複合アレイであってもよい。また、第2の複合アレイ136は、拡散板111と、撮像側アレイ137と、表示側アレイ138を備えている。第1の複合アレイ130及び第2の複合アレイ136を構成する光ファイバー120は、ともに(4)式の長さを満たし、最も短い長さでは、光ファイバー120の内部を通過する光の蛇行周期の4分の1の長さである。
【0054】
実施例1に係る立体像表示装置においては、立体物である被写体90の、凹凸が逆転する像しか得られなかった。しかしながら、実施例2に係る立体表示装置においては、第1の複合アレイ130の他に、第1の複合アレイ130と直列に、所定間隔を有して第2の複合アレイ136を配置して、第1の複合アレイ130から得られた像を、更に逆転させて凹凸の逆転現象を解消している。つまり、立体物である被写体90の第1の立体像101は、被写体90と第1の複合アレイ130の撮像側アレイ131との距離d1分、表示側アレイ132から離れた位置に表示される。ここで、第1の立体像101を被写体とし、更に第2の複合アレイ136で撮像及び表示を行うようにすれば、被写体90の凹凸逆転像である第1の立体像101の凹凸を更に逆転させ、立体物との凹凸関係が逆転していない第2の立体像102を得ることができる。
【0055】
ここで、第2の複合アレイ136は、第1の複合アレイ130が作る立体像101よりも外側、つまり第1の複合アレイより離れた位置に配置される。第1の複合アレイ130が、表示側アレイ132から距離d1だけ離れた位置に生成した立体像101を、第2の複合アレイ136は、自分自身の被写体として取り扱うことができるため、図12においては、第2の複合アレイ136の撮像側アレイ137は、第1の立体像101から、距離d2離れた位置に配置されている。これにより、第2の複合アレイ136は、表示側アレイ138から距離d2離れた位置に、第2の立体像102を空中に光学像として表示することができる。そして、第2の立体像102は、第1の立体像101を鏡面対称に表示した像であるので、第1の立体像101とは凹凸が逆、即ち立体物である被写体90と同様の凹凸を有する立体像として再現される。
【0056】
このように、第1の複合アレイ130と第2の複合アレイ136の間隔を、第1の複合アレイが作る第1の立体像101が、第2の複合アレイ136の入力端面との間にあるように配置することにより、第2の複合アレイ136が作る第2の立体像102を、第2の複合アレイ136の表示側アレイ138の外側に空中の光学像として生成することができ、凹凸の反転を解消することができる。
【0057】
なお、図12においては、第1の複合アレイ130と、第2の複合アレイ136の2つの複合アレイ130、136を備える立体像表示装置について説明したが、複合アレイ130、136が偶数個備えられていれば、凹凸の反転を解消した立体表示装置を構成することができる。よって、実施例2に係る立体像表示装置は、偶数個の複合アレイ130、136を備えていれば、用途に応じて様々な構成とすることができる。
【実施例3】
【0058】
図13は、本発明の実施例3に係る立体像表示装置の全体構成の一例を示した側面図である。実施例3に係る立体表示装置は、拡大複合アレイ150を備える。拡大複合アレイ150は、拡大光学系部材140と、撮像側アレイ151と、表示側アレイ152とを備える。つまり、拡散板110、111の代わりに、拡大光学系部材140が、撮像側アレイ151と、表示側アレイ152との間に挿入されている。このように、拡散板110、111の代わりに、拡大光学系部材140を挿入することにより、撮像側アレイ151で撮像した被写体90の画像を、拡大して表示側アレイ152に伝送することができる。これにより、表示側アレイ152では、被写体の被写体90よりも、拡大した立体像103を表示することができる。このように、撮像側アレイ151と表示側アレイ152の間に挿入配置する光伝送部材を、拡散板110ではなく、拡大光学系部材140とすることにより、立体物である被写体90に比べて拡大した立体像103を表示することができる。
【0059】
なお、この場合においても、撮像側アレイ151及び表示側アレイ152を構成する光ファイバー120は、(5)式の関係を満たす長さであることが必要である。
【0060】
また、図13において、撮像側アレイ151と被写体90との距離をd3とすると、表示側アレイ152と立体像103との距離は、kd3で示される。ここで、kは倍率を示す定数である。よって、倍率が大きくなる程、表示側アレイ152と立体像103との距離は大きくなることになる。
【0061】
拡大光学系部材140は、種々の光学部材を適用することができるが、例えば、ファイバーオプティックプレートが適用されてもよい。また、図13においては、光伝送部材として、拡大光学系部材140を用いた例を挙げて説明したが、拡大光学系部材の代わりに、縮小光学系部材を用いてもよい。例えば、上述のファイバーオプティックプレートは、拡大光学系部材としても、縮小光学系部材としても利用できるので、ファイバーオプティックスプレートを用いて、被写体90よりも縮小する立体像103を得ることができる立体物表示装置を構成してもよい。
【0062】
更に、ファイバーオプティックスプレートと同様のファイバー光学系で、光学像を回転できる部材を拡大光学系140の代わりに挿入してもよい。このような構成とすることにより、被写体90を回転させた立体像103を得ることができる。
【0063】
このように、撮像側アレイ151と表示側アレイ152の間の光伝送部材は、単に画像を撮像及び表示するだけでなく、種々の光学的変換機能を有する部材を用いることができ、これにより、用途に応じて種々の立体像103を表示することが可能となる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、立体物の被写体を立体像として表示する立体像表示装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10、90 被写体(立体物)
20 レンズ群
30 写真フィルム
40 写真
50、100、101、102、103 立体像
70、120、121、122 光ファイバー
80 光ファイバーアレイ
110、111 拡散板
130〜138 複合アレイ
140 拡大系光学部材
150、151、152 拡大複合アレイ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2面を有する光伝送部材と、該光伝送部材を前記2面の両面から挟むように設けられた2枚の光学アレイとを含む複合アレイを有し、該複合アレイの一方側で撮像した立体物を、該複合アレイの他方側に立体像として表示する立体像表示装置であって、
前記光学アレイは、前記光伝送部材の面上に2次元に配列された屈折率分布ファイバーを含み、
該屈折率分布ファイバーの長さは、中を進行する光の蛇行周期の4分の1であることを特徴とする立体像表示装置。
【請求項2】
前記光伝送部材は、拡散板であって、
前記立体像は、前記立体物に対して鏡面対称の像であることを特徴とする請求項1に記載の立体像表示装置。
【請求項3】
所定間隔を有して配置された前記複合アレイを偶数枚有し、前記鏡面対称の立体像を反転させ、前記立体物と同じ奥行き方向となるように前記立体像を表示することを特徴とする請求項2に記載の立体像表示装置。
【請求項4】
前記拡散板は、液晶で構成されたことを特徴とする請求項2に記載の立体像表示装置。
【請求項5】
前記液晶は、電圧制御型液晶であることを特徴とする請求項4に記載の立体像表示装置。
【請求項6】
前記拡散板は、ホログラフィックスクリーンで構成されたことを特徴とする請求項2に記載の立体像表示装置。
【請求項7】
前記光伝送部材は、拡大光学系部材又は縮小光学系部材であることを特徴とする請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項8】
前記拡大光学系部材又は前記縮小光学系部材は、ファイバーオプティックスプレートであることを特徴とする請求項7に記載の立体表示装置。
【請求項9】
前記光伝送部材は、立体像の回転機能を有するファイバー光学系部材であることを特徴とする請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項1】
対向する2面を有する光伝送部材と、該光伝送部材を前記2面の両面から挟むように設けられた2枚の光学アレイとを含む複合アレイを有し、該複合アレイの一方側で撮像した立体物を、該複合アレイの他方側に立体像として表示する立体像表示装置であって、
前記光学アレイは、前記光伝送部材の面上に2次元に配列された屈折率分布ファイバーを含み、
該屈折率分布ファイバーの長さは、中を進行する光の蛇行周期の4分の1であることを特徴とする立体像表示装置。
【請求項2】
前記光伝送部材は、拡散板であって、
前記立体像は、前記立体物に対して鏡面対称の像であることを特徴とする請求項1に記載の立体像表示装置。
【請求項3】
所定間隔を有して配置された前記複合アレイを偶数枚有し、前記鏡面対称の立体像を反転させ、前記立体物と同じ奥行き方向となるように前記立体像を表示することを特徴とする請求項2に記載の立体像表示装置。
【請求項4】
前記拡散板は、液晶で構成されたことを特徴とする請求項2に記載の立体像表示装置。
【請求項5】
前記液晶は、電圧制御型液晶であることを特徴とする請求項4に記載の立体像表示装置。
【請求項6】
前記拡散板は、ホログラフィックスクリーンで構成されたことを特徴とする請求項2に記載の立体像表示装置。
【請求項7】
前記光伝送部材は、拡大光学系部材又は縮小光学系部材であることを特徴とする請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項8】
前記拡大光学系部材又は前記縮小光学系部材は、ファイバーオプティックスプレートであることを特徴とする請求項7に記載の立体表示装置。
【請求項9】
前記光伝送部材は、立体像の回転機能を有するファイバー光学系部材であることを特徴とする請求項1に記載の立体表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−8167(P2011−8167A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153752(P2009−153752)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18−22年度、情報通信研究機構の高度通信・放送研究開発委託「多並列・像再生型立体テレビシステムの研究開発」について産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18−22年度、情報通信研究機構の高度通信・放送研究開発委託「多並列・像再生型立体テレビシステムの研究開発」について産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
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