説明

立体撮像装置

【課題】レンズアレイを用いたインテグラル方式の立体撮像装置において、要素レンズの数を増やすことなく解像度を向上することができる立体撮像装置を提供する。
【解決手段】被写体からの入射光Lを受光する要素レンズ2aをアレイ状に配置した要素レンズ群2と、要素レンズ群と対向して設けられ、要素レンズから出射される光による要素画像を撮像する撮像手段5(要素画像素子51)と、撮像した要素画像を記憶する記憶手段9とを備える立体撮像装置1において、要素レンズの受光面側にて、要素レンズの受光面より小さな面積の透過領域で入射光を透過する光透過部(光透過部H)を一つの要素レンズに対して一つ有する遮光面を備える遮光手段6(遮光板61)と、光透過部の位置それぞれにおける透過領域が互いに重ならないように、光透過部の位置を所定の時間間隔で繰り返し切り替える切替手段7(駆動部71)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテグラル方式の立体撮像装置に係り、多数のマイクロレンズ(要素レンズ)を配置し、マイクロレンズ毎に形成される要素画像を撮像する立体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体画像の撮影や表示をする立体画像方式として、アレイ状(2次元平面状)に要素レンズ(凸レンズあるいはピンホール)が配列されたレンズアレイを用いたインテグラル方式が知られている。
従来のレンズアレイを用いたインテグラル方式の立体撮像装置では、要素レンズの数が立体画像の解像度の上限値となる。よって、解像度を向上するためには、要素レンズの数を増やす方法が一般的であった。このような一般的な方法に対して、要素レンズの数を増やすことなく、解像度を向上する方法として、様々な提案がなされている。例えば、特許文献1には、入射光を2分割するビームスプリッタと、レンズアレイと撮像素子からなる1対の撮影ユニットを備え、対となる2つの要素レンズに入射する入射光の相対的な位置関係に差が出るように、2個の撮影ユニットを配置する方法が開示されている。また、非特許文献1には、同様にレンズアレイと撮像素子からなる撮影ユニット自体を撮影する毎に移動させて、相対的な位置関係を時間的にずらす方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3676916号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Optics Letters, Vol. 27, Issue 5, pp. 324-326, “Improved viewing resolution of three-dimensional integral imaging by use of nonstationary micro-optics”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、要素レンズの数を増やすことなく解像度を向上するために、特許文献1の方法では、2台の撮影ユニットを備える必要があり、さらに、ビームスプリッタにより2分割された入射光を2台の撮影ユニットがそれぞれ受光するように、撮影ユニットを配置する必要があり、立体撮像装置が大型化するという問題点がある。また、非特許文献1の方法では、撮影ユニット自体を移動させる必要があり、立体撮像装置を移動させる動力が必要となり、立体撮像装置が大型化するという問題点がある。
【0006】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたものであり、レンズアレイを用いたインテグラル方式の立体撮像装置において、要素レンズの数を増やすことなく解像度を向上することができ、かつ装置が大型化しない立体撮像装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の立体撮像装置は、被写体からの入射光を受光する要素レンズをアレイ状に配置した要素レンズ群と、前記要素レンズ群と対向して設けられ、前記要素レンズから出射される光による要素画像を撮像する撮像手段と、撮像した要素画像を記憶する記憶手段とを備える立体撮像装置であって、前記要素レンズの受光面側にて、前記要素レンズの受光面より小さな面積の透過領域で前記入射光を透過する光透過部を一つの前記要素レンズに対して一つ有する遮光面を備える遮光手段と、前記光透過部の位置それぞれにおける前記透過領域が互いに重ならないように、前記光透過部の位置を所定の時間間隔で繰り返し切り替える切替手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、請求項1に記載の立体撮像装置は、光透過部の位置それぞれにおける透過領域が互いに重ならないように、切替手段が光透過部の位置を所定の時間間隔で切り替える。これにより、一つの要素レンズであっても、透過領域の位置(光透過部の位置)の違いと、所定の時間間隔で切り替えられることにより、要素レンズの受光面において、実質的に、透過領域の位置(光透過部の位置)の数だけ受光領域を形成することができる。そして、撮像手段は、切り替えにより生じる時間差により、受光領域の数(光透過部の位置の数)だけ形成される要素画像を撮像することができる。また、遮光手段が光透過部の位置を切り替えることにより、撮像手段には、一つの要素レンズに対して一つの要素画像が形成され、かつ時間差により複数の要素画像が重なることなく形成されることになる。これにより、撮像手段は、切替手段が光透過部の位置を切り替える毎に形成された一つの要素画像を撮像することができる。
【0009】
また、請求項1に記載の立体撮像装置は、撮像した要素画像を記憶手段に記憶させるため、1つの撮像手段により、光透過部の位置が切り替えられて形成される数だけ、要素画像を記憶手段に記憶させることができる。
【0010】
請求項2に記載の立体撮像装置は、請求項1に記載の立体撮像装置において、前記遮光手段は、前記要素レンズと同数の前記光透過部である孔を有する遮光板であって、前記切替手段は、前記遮光板を前記要素レンズの前焦点位置にて駆動して、前記孔の位置それぞれにおける前記透過領域が互いに重ならないように、前記孔の位置を前記所定の時間間隔で繰り返し切り替えることを特徴とする。
【0011】
かかる構成において、立体撮像装置は、要素レンズの受光側にて要素レンズと同数の孔を有し、その要素レンズの前焦点位置にて駆動する遮光板を備えることで、要素レンズの数を増やすことなく解像度を向上することができる。
【0012】
請求項3に記載の立体撮像装置は、請求項1に記載の立体撮像装置において、前記遮光手段は、前記要素レンズの前焦点位置に設置され、液晶素子を有する液晶パネルであって、前記切替手段は、前記光透過部である液晶素子の開閉を制御して、制御対象の前記液晶素子それぞれで開いた前記透過領域が互いに重ならないように、開制御対象の液晶素子を前記所定の時間間隔で繰り返し切り替えることを特徴とする。
【0013】
かかる構成において、立体撮像装置は、要素レンズの受光側にて、前記要素レンズの前焦点位置にて設置された液晶素子を有する液晶パネルと、液晶素子の開(光の透過)と閉(光の遮断)とを制御する開閉制御手段を備えることで、要素レンズの数を増やすことなく解像度を向上することができる。
【0014】
請求項4に記載の立体撮像装置は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された立体撮像装置において、前記要素レンズが屈折率分布レンズであって、前記屈折率分布レンズのレンズ長が、当該屈折率分布レンズ内の光路が1/4周期となる長さに形成されていることを特徴とする。
【0015】
かかる構成において、立体撮像装置は、被写体Xの倒立像を撮像することができる。
【0016】
請求項5に記載の立体撮像装置は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された立体撮像装置において、前記要素レンズが屈折率分布レンズであって、前記屈折率分布レンズのレンズ長が、当該屈折率分布レンズ内の光路が3/4周期となる長さに形成されていることを特徴とする。
【0017】
かかる構成において、立体撮像装置は、被写体Xの正立像を記憶手段に撮像することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
請求項1に記載の発明によれば、レンズアレイを用いたインテグラル方式の立体撮像装置であっても、要素レンズの数に、光透過部の位置を切り替えた数を乗算した実質的な要素レンズ数で撮像対象物を撮像することができる。そのため、実際の要素レンズの数を増やすことなく解像度を向上することができ、コンパクトな立体撮像装置を提供することができる。
また、請求項1に記載の発明は、従来の立体撮像装置と要素レンズの数が同じであり、装置の大きさもほぼ同じであるにもかかわらず、従来の立体撮像装置より解像度が高いため、被写体により近い表現をする立体画像を撮像することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、レンズアレイの受光面側に駆動する遮蔽板を備える程度の拡張でよく、コンパクトな立体撮像装置を提供することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、レンズアレイの受光面側に液晶パネルを設置する程度の拡張でよく、コンパクトな立体撮像装置を提供することができる。
【0021】
請求項4および請求項5に記載の発明によれば、屈折率分布レンズを使用することで、被写体Xの倒立像または正立像の要素画像を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態に係る立体撮像装置の構成を示す模式図である。
【図2】遮光板が目的地点P1と目的地点P2との間を横方向(左右)に往復運動する図1に示した立体撮像装置を要素レンズ群側から視た模式図であり、(a)目的地点P1に光透過部Hが位置したとき、(b)目的地点P2に光透過部Hが位置したときを示す。
【図3】図1に示した要素レンズが凸レンズである立体撮像装置による撮像方法の説明図であり、(a)目的地点P1に光透過部Hが位置したとき、(b)目的地点P2に光透過部Hが位置したときを示す。
【図4】(a)遮光板の移動タイミングと、(b)目的地点P1における光透過部Hの開口面積と、(c)目的地点P2における光透過部Hの開口面積との関係を示す図である。
【図5】図1に示した要素レンズが屈折率分布型レンズ(1/4GRINレンズ)である立体撮像装置による撮像方法の説明図であり、(a)目的地点P1に光透過部Hが位置したとき、(b)目的地点P2に光透過部Hが位置したときを示す。
【図6】図1に示した要素レンズが屈折率分布型レンズ(3/4GRINレンズ)である立体撮像装置による撮像方法の説明図であり、(a)目的地点P1に光透過部Hが位置したとき、(b)目的地点P2に光透過部Hが位置したときを示す。
【図7】第2の実施形態に係る立体撮像装置を要素レンズ群側から視た模式図であり、(a)目的地点P1に光透過部Hが位置したとき、(b)目的地点P2に光透過部Hが位置したとき、(c)目的地点P3に光透過部Hが位置したとき、(d)目的地点P4に光透過部Hが位置したときを示す。
【図8】第3の実施形態に係る立体撮像装置の構成を示す模式図である。
【図9】遮光板が目的地点P1と目的地点P2との間を縦方向(上下)に往復運動する立体撮像装置を要素レンズ群側から視た模式図である。
【図10】第2の実施形態に係る立体撮像装置を要素レンズ群側から視た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の第1の実施形態について、適宜、図面を参照しながら詳細に説明する。
[立体撮像装置1]
第1の実施形態に係る立体撮像装置1は、図1に示すように、要素レンズ群2(複数の要素レンズ2a)と、光学遮蔽部3と、撮像手段5(複数の要素撮像素子51、基板52)と、遮光手段6と、切替手段7と、記憶手段9とを備える。この立体撮像装置1は、撮像手段5で結像して形成される要素画像を撮像するものである。
【0024】
なお、立体撮像装置1が備える、撮像手段5と、切替手段7と、記憶手段9とは、図示を省略したCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disc Drive)などを備えた一般的なコンピュータで構成することができ、コンピュータを前記した各手段として機能させるプログラムにより実現することができる。
記憶手段9は、ハードディスクなどの一般的な記憶手段であり、後記する撮像手段5である各要素撮像素子51から取得した撮像情報を記憶するものである。
【0025】
(要素レンズ群2)
要素レンズ群2は、複数の要素レンズ2aで構成されており、受光面の面積が同一かつ外観形状が同一の要素レンズ2aを、図1および図2に示すように、レンズの主点が同一平面上にあるように、アレイ状に配列して設置した構成である。
各要素レンズ2aは、撮像対象物である被写体X(図3)からの入射光Lを受光して、レンズ出射光Rを出射して、被写体Xを光学像(要素画像)として撮像手段5にそれぞれ結像させるレンズである。
以下、第1の実施形態に係る立体撮像装置1では、要素レンズ2aを凸レンズ21aとして説明する。
【0026】
(光学遮蔽部3)
光学遮蔽部3は、図1〜3に示すように、凸レンズ21aの受光面から撮像手段5(基板52)までの区間で、隣接する凸レンズ21aからクロスオーバーする余計な光(レンズ出射光Rなど)の影響を受けないように、隣接する凸レンズ21aとの間に配置されているものであり、光学的な遮蔽機能を有し、例えば、黒色または光を反射しない性質を有する金属または合成樹脂からなる薄板から構成される。
【0027】
(撮像手段5)
撮像手段5は、複数の要素撮像素子51が基板52の面に設けられているものである。撮像手段5は、要素レンズの後焦点位置になるように配置されている。基板52には、各要素レンズ2aからの入射光Lを、それぞれ1つの要素撮像素子51が受光するように、同一平面上に対応して配置されている。そして、基板52には、各要素撮像素子51と記憶手段9とを接続する撮像情報信号線などが配線されている。各要素撮像素子51は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)撮像素子であり、解像度の比較的高い動画での立体画像の撮影に充分である高精細な画素数で構成されている。
【0028】
この立体撮像装置1では、要素レンズ群2の受光側に配置された被写体Xを撮影する。このとき、図3に示すように、要素撮像素子51にて、要素レンズ群2を構成する各要素レンズ2aにより光学像(要素画像G)が結像する。各要素撮像素子51は、対応する各要素レンズ2aから入射されて形成される要素画像を撮像する。本実施形態において、各要素撮像素子51は、連続して撮像するものであり、後記する所定時間T以下の間隔で連続して撮像することが好ましい。
そして、本実施形態の各要素撮像素子51は、要素撮像素子51が撮像した要素画像Gに、その要素撮像素子51が設置された基板52の面における位置情報(設置位置情報)などを付与して撮像情報を生成して記憶手段9に出力する。
ここで、第1の実施形態では、要素レンズ2aが凸レンズ21aである。そのため、図3に示すように、要素撮像素子51には、倒立像が形成される。
【0029】
(遮光手段6)
遮光手段6は、要素レンズ群2の受光側に、要素レンズ群2と離間して設けられた遮光面上に、要素レンズ2aの受光面より小さな面積で入射光Lを透過する光透過部を、一つの要素レンズ2aに対して一つ備えるものである。
(遮光板61)
第1の実施形態における遮光手段6は、各要素レンズ2aそれぞれ一つに対して一つの光透過部H(光透過部)が設けられた遮光板61である。
【0030】
遮光板61は、要素レンズ群2の受光側にて、要素レンズ群2への入射光Lを遮る板状の遮光面である。この遮光板61は、光透過部H以外の部分で光を透過しないものである。
また、遮光板61は要素レンズ2の受光面側にて、当該要素レンズ2の前焦点位置にあることが好適であるが、その前後に焦点距離の分だけずれていてもよい。
【0031】
光透過部H(光透過部)は、入射光Lを要素レンズ2aに照射させる孔である。当該孔の面積(開口面積)および形状(開口形状)は、光透過部Hが要素レンズ2aと対向したときに、その要素レンズ2aのレンズ面(受光面)に入射光Lが確実に照射される開口面積および開口形状である。
【0032】
(切替手段7)
切替手段7は、遮光板61の光透過部Hの位置それぞれにおける、入射光Lを透過可能な透過領域が互いに重ならないように、光透過部Hの位置を所定時間Tの間隔で繰り返し切り替える手段であり、遮光板61を駆動させる駆動部71と、時間を計測する時計部72とを備えている。
【0033】
時計部72は、時間を計測し、所定時間T毎に駆動指示信号を、駆動部71に出力するものである。この時計部72は、所定時間Tで示す一定の周期で駆動指示信号を出力するものであればよく、時間を計測するものに限定されない。
所定時間Tは、ディスプレイの画面描画の速度である垂直走査周期と同じ、または垂直走査周期の整数分の1であることが好ましい。
【0034】
駆動部71は、要素レンズ群2の受光側に位置する遮光板61を、要素レンズ群2の受光面と平行してなる平面上の2つの目的地点P間(目的地点P1と目的地点P2との間)で往復させることができる駆動手段である。
目的地点P(目的地点P1と目的地点P2)の座標データは、不図示の記憶部に記憶されているものであり、駆動部71はこの座標データを取得して遮光板61を目的地点Pにまで移動させる。
そして、駆動部71は、時計部72から駆動指示信号を取得したときに、次の移動先となる目的地点Pに遮光板61を移動させるものである。
ここで、目的地点P1および目的地点P2は、光透過部Hが目的地点P1に位置するときの透過領域と、目的地点P2に位置するときの透過領域とが互いに重ならない地点である。
【0035】
ここで、遮光板61は、駆動部71により、目的地点Pが2つであれば、それら目的地点Pを通過するように、縦方向、横方向、または斜め方向に往復運動することが好ましいが、縦方向、横方向、斜め方向の動きを組み合わせた運動、例えば円運動をしてもよい。
図1では、レール上を不図示のモータやアクチュエータなどで遮光板61を移動させているが、遮光板61を目的地点Pに移動させることができれば、どのような手段であっても構わない。
【0036】
以上のように、駆動部71が遮光板61を目的地点P1に移動させることで、図2(a)に示すように要素レンズ2aに入射光Lが直接照射される。そして、駆動部71が遮光板61を目的地点P2に移動させることで、図2(b)に示すように要素レンズ2aに入射光Lが直接照射される。
そして、駆動部71は、時計部72から所定時間T毎に駆動指示信号を取得し、遮光板61を駆動させる。そのため、所定時間Tの間隔で、光透過部Hが対向する要素レンズ2aには、光透過部Hが目的地点P1に位置するときの入射光Lと、光透過部Hが目的地点P2に位置するときの入射光Lとが交互に照射される。
【0037】
[第1の実施形態]
[立体撮像装置の動作]
図1に示した立体撮像装置1の動作について図3(a)(b)を参照して説明する(適宜図1および図2を参照)。
【0038】
図3(a)(b)に示すように、立体撮像装置1は、駆動部71により遮光板61が所定時間T毎に2地点間(目的地点P1と目的地点P2との間)を往復する。そして、遮光板61が目的地点Pに到達したときに、立体撮像装置1は、要素レンズ群2の前方に配置された被写体Xを撮影する。
【0039】
(目的地点P1)
図4に示すように、まず、時刻t0のときに、立体撮像装置1は、遮光板61を移動させる。そして、遮光板61を目的地点P1で停止させる(図3(a)の状態)(時刻t1)。このとき、遮光板61の光透過部Hを透過した入射光Lが凸レンズ21aに入射される。
このとき(時刻t1〜t2の期間)、凸レンズ21aは受光した入射光Lを要素撮像素子51に、要素画像G1(光学像)として入射する。
【0040】
そして、各要素撮像素子51は、各凸レンズ21aからのレンズ出射光R1が結像して形成された要素画像G(要素画像G1)を撮像し、撮像した要素画像G1を記憶手段9に出力する。
記憶手段9には、要素画像Gに、要素撮像素子51の設置位置情報などが付与された撮像情報が記憶される。
【0041】
(目的地点P2)
そして、前回、遮光板61が移動した時刻t0から所定時間T経過後の時刻t2(=t0+T)のときに、立体撮像装置1(駆動部71)は、遮光板61を目的地点P2で停止させる(図3(b)の状態)(時刻t3)。このとき、遮光板61の光透過部Hを透過した入射光Lが凸レンズ21aに入射される。
このとき(時刻t3〜t4の期間)、凸レンズ21aは受光した入射光Lを要素撮像素子51に、要素画像G2(光学像)として入射する。
また、駆動部71が遮光板61を目的地点P1から目的地点P2に移動させて、光透過部Hの位置が切り替わったことで、要素画像G2は、要素撮像素子51にて要素画像G1が形成された位置とは異なる位置に形成される。
ここで、異なる位置とは、要素画像G1と要素画像G2とが同時に形成されたとしても、互いの要素画像Gが完全に重なる位置や片方の要素画像Gがもう一方の要素画像Gを包含する位置ではない。しかし、互いの要素画像Gの一部が重なる位置であってもよい。
【0042】
そして、各要素撮像素子51は、各凸レンズ21aからのレンズ出射光R2が結像して形成された要素画像G(要素画像G2)を撮像し、撮像した要素画像G2を記憶手段9に出力する。
記憶手段9には、要素画像Gに、要素撮像素子51の設置位置情報などが付与された撮像情報が記憶される。
【0043】
本実施の形態に係る立体撮像装置1によれば、要素撮像素子51にて要素画像G1と要素画像G2とが異なる位置に形成される。しかし、光透過部Hの位置が切り替わることにより、要素画像G1と要素画像G2とが同時に要素撮像素子51に形成されることはない。そのため、要素撮像素子51は、切り替えにより生じる時間差(所定時間Tの間隔)で要素画像G1と要素画像G2とを交互に撮像することになる。よって、同一の要素レンズ2a(凸レンズ21a)で撮影したにもかかわらず、要素画像G1と要素画像G2とは、まるで、別々の要素レンズで別々の要素撮像素子51により撮像しているようになる。そして、立体撮像装置1の記憶手段9には、同じ撮像手段5(要素撮像素子51)が撮像した要素画像G1と要素画像G2とが記憶される。これにより、要素画像G1と要素画像G2とは、仮想的に別々の要素レンズ2aで別々の要素撮像素子51により撮影された画像であるとすることができ、要素レンズ2aをあたかも2倍に増やしたようになる。
以上により、本実施の形態に係る立体撮像装置1によれば、要素レンズ2aおよび要素撮像素子51の数を増やさずに、解像度を向上することができる。
【0044】
以下に、要素レンズ2aの種々のバリエーションを第1の変形例ないし第2の変形例として説明する。
[第1の変形例](GRINレンズ:1/4)
[立体撮像装置1A]
図5に示すように、立体撮像装置1Aは、要素レンズ2aに屈折率分布型レンズ21bを用いた点と、屈折率分布型レンズ21bにGRINレンズを用いるため、図1に示す要素レンズ2aの主点から要素レンズ2aの前焦点位置までの距離dが必要ない(d=0)である点の2点を除いて、図1および図3に示した立体撮像装置1と同一の構成である。したがって、図1および図3と同じ構成には同じ符号を付して、説明を省略する。
【0045】
(屈折率分布型レンズ21b)
屈折率分布型レンズ21bは、中心から外周に向かって屈折率が異なる屈折率分布レンズであるGRINレンズを用い、前記GRINレンズのレンズ長を、当該GRINレンズ内を蛇行する光路の一周期の1/4とする長さに形成した1/4GRINレンズである。なお、当該1/4GRINレンズからのレンズ出射光R(R1,R2)が結像して形成される要素画像G(G1,G2)は、被写体Xの倒立像である。
この屈折率分布型レンズ21b(1/4GRINレンズ)を用いることにより、被写体Xの倒立像を記憶手段9に記憶することができる。
【0046】
[第2の変形例](GRINレンズ:3/4)
[立体撮像装置1B]
図6に示すように、立体撮像装置1Bは、要素レンズ2aに屈折率分布型レンズ21cを用いた点と、屈折率分布型レンズ21cにGRINレンズを用いるため、図1に示す要素レンズ2aの主点から要素レンズ2aの前焦点位置までの距離dが必要ない(d=0)である点の2点を除いて、図1および図3に示した立体撮像装置1と同一の構成である。したがって、図1および図3と同じ構成には同じ符号を付して、説明を省略する。
【0047】
(屈折率分布型レンズ21c)
屈折率分布型レンズ21cは、中心から外周に向かって屈折率が異なる屈折率分布レンズであるGRINレンズを用い、前記GRINレンズのレンズ長を、当該GRINレンズ内を蛇行する光路の一周期の3/4とする長さに形成した3/4GRINレンズである。なお、当該3/4GRINレンズからのレンズ出射光R(R1,R2)が結像して形成される要素画像G(G1,G2)は、被写体Xの正立像である。
この屈折率分布型レンズ21c(3/4GRINレンズ)を用いることにより、被写体Xの正立像を記憶手段9に記憶することができる。
【0048】
[第2の実施形態]
次に、目的地点Pが4つある場合の本発明の第2の実施形態について、適宜、図面を参照しながら詳細に説明する。
図7に示すように、要素レンズ2aを俵積み状態に配列した第2の実施形態に係る立体撮像装置1Cは、目的地点Pが4つ(P1,P2,P3,P4)あり、遮光板61を駆動させて、光透過部Hの位置を、目的地点P1(図7(a))→目的地点P2(図7(b))→目的地点P3(図7(c))→目的地点P4(図7(d))→目的地点P1(図7(a))→・・・、の順番に所定時間Tの間隔で切り替える。この目的地点Pの切替処理は、第1の実施形態に係る立体撮像装置1と同様の処理であるため説明を省略する。これにより、各目的地点Pにおいて光透過部Hを透過した入射光Lが、1つの要素レンズ2aに照射される。
ここで、目的地点P1〜P4は、光透過部Hが目的地点P1に位置するとき、目的地点P2に位置するとき、目的地点P3に位置するとき、目的地点P4に位置するときで、透過領域が互いに重ならない地点である。
【0049】
[第3の実施形態]
次に、遮光手段6に、液晶シャッタを用いた場合の本発明の第3の実施形態について、適宜、図面を参照しながら詳細に説明する。
[立体撮像装置1D]
図8に示すように、第3の実施形態に係る立体撮像装置1Dは、遮光手段6が異なる点を除いて、図1および図3に示した立体撮像装置1と同一の構成である。したがって、図1および図3と同じ構成には同じ符号を付して、説明を省略する。
【0050】
(遮光手段6a)
第3の実施形態における遮光手段6aは、複数の液晶素子を備える液晶シャッタ62である。
(液晶シャッタ62)
液晶シャッタ62は、要素レンズ群2の受光面側にて設置され、要素レンズ群2への入射光Lを遮る液晶パネルである。
液晶シャッタ62が設置される位置は、要素レンズ2aの前焦点位置であることが好適であるが、その前後に焦点距離の分ずれていても設置可能である。
【0051】
光透過部HAは、液晶シャッタ62に設けられた液晶素子の集合体であり、後記する開閉制御部73に制御されて、液晶素子の開/閉を行う。光透過部HAは、開(光の透過)のときに入射光Lを透過させて要素レンズ2aに入射させ、閉(光の遮断)のときに遮光する。当該光透過部HAの開口面積および開口形状は、光透過部HAが要素レンズ2aと対向したときに、その要素レンズ2aのレンズ面(受光面)に入射光Lが確実に入射される開口面積および開口形状である。
【0052】
(切替手段7a)
切替手段7aは、時間を計測する時計部72と、各要素レンズ2a一つに対して一つの光透過部HA(光透過部)が開く(光を透過する)ように液晶シャッタ62の液晶素子の開(光の透過)と閉(光の遮断)とを制御する開閉制御部73とを備えている。
時計部72は、時間を計測し、所定時間T毎に開閉指示信号を、開閉制御部73に出力するものであり、第1の実施形態の時計部72と同様のものであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
開閉制御部73は、時計部72からの開閉指示信号を取得して、液晶シャッタ62が備える液晶素子の光の透過率を調節して、開(光の透過)/閉(光の遮断)を行う制御部である。
【0053】
第3の実施形態において、液晶シャッタ62には光透過部HAが、光透過部HA1と光透過部HA2との2つを有する。ここで、光透過部HA1を構成する液晶素子と、光透過部HA2を構成する液晶素子とは、重複して構成されない。
開閉制御部73は、時計部72からの開閉指示信号を取得して、一つの要素レンズ2aに対して一つの光透過部HAが開くように、つまり、光透過部HA1または光透過部HA2のどちらか一方が開くように、光透過部HA1および光透過部HA2の開閉を行う。このとき、双方において“開”となる液晶素子はない。そのため、光透過部HA1が“開”のときの入射光Lが透過可能な透過領域と、光透過部HA2が“開”のときの入射光Lが透過可能な透過領域とでは、互いに重ならない。
【0054】
第3の実施形態の立体撮像装置1Dによれば、遮光手段6に液晶パネルを用いて、光透過部に液晶素子を用いて、その液晶素子を制御して光の透過/遮断を行うことで、光透過部である光透過部HA(HA1、HA2)の開(光の透過)/閉(光の遮断)を電気的に行うことができる。そのため、第1および第2の実施形態の立体撮像装置より、光透過部H(光透過部HA)の位置を高速に切り替えることができる。こうして、光透過部の位置を高速に切り替えて、要素撮像素子51が撮像することで、短い時間間隔で撮像することができる。そのため、動く物体を撮影したときに、単位時間間隔で移動する距離に応じて生じてしまう、ちらつきの現象が少ない動画を撮影することができる。
【0055】
また、第1の実施形態の立体撮像装置1と同様に、立体撮像装置1Dは、1つの要素レンズ2aから2つの要素画像G(G1、G2)を撮像することができ、要素レンズ2aをあたかも2倍に増やしたようになる。
以上により、第3の実施形態の立体撮像装置1Dによれば、要素レンズ2aおよび要素撮像素子51の数を増やさずに、解像度を向上することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、適宜変更して実施することが可能である。
例えば、切替手段7(7a)が切り替える光透過部H(HA)の位置は、2つ以上設定されていればよい。設定される位置の数は、光透過部Hの位置それぞれにおける、入射光Lを透過可能な透過領域が互いに重ならなければ、制限されない。
【0057】
また、光透過部Hの透過領域の大きさ(開口面積)は、適宜変更することが可能である。
例えば、図2に示したように遮光板61が駆動部71により、目的地点P1と目的地点P2との間を横方向(左右)に往復運動する場合や、図9に示すように遮光板61が駆動部71により、目的地点P1と目的地点P2との間を縦方向(上下)に往復運動する場合、光透過部Hの透過領域の大きさ(開口面積)は、図9に示す値が好適である。ここで、図中のDはレンズの直径を示し、rmaxは光透過部Hの形状(透過領域)が円である場合の最大半径を示す。
また、図7に示したように遮光板61が駆動部71により、目的地点P1〜P4を順番に移動する場合、光透過部Hの透過領域の大きさ(開口面積)は、図10に示す値が好適である。図9と同様に、図中のDはレンズの直径を示し、rmaxは光透過部Hの形状(透過領域)が円である場合の最大半径を示す。
【0058】
また、要素レンズ2aに、凸レンズ21aや、屈折率分布型レンズ(1/4GRINレンズ)21b、屈折率分布型レンズ(3/4GRINレンズ)21cを用いた例を示したが、特に限定されるものではなく、ボールレンズ、屈折率分布レンズ、回折光学素子、凹レンズ、あるいは、これらの組み合せでもよい。また、回折光学素子は、例えばフレネルレンズである。なお、凹レンズは、他のレンズと適宜組み合わせて用いられる。
【0059】
本発明の第1の実施形態の第1の変形例である立体撮像装置1Aを用いて、屈折率分布型レンズ21b(1/4GRINレンズ)で撮影した要素画像群を、そのまま一般的な凸レンズの立体画像表示装置に与えることで、奥行きが反転した逆視状態の立体画像を表示することができる。
一方、第2の変形例である立体撮像装置1Bを用いて、屈折率分布型レンズ21c(3/4GRINレンズ)で撮影した要素画像群を、そのまま一般的な凸レンズの立体画像表示装置に与えることで、奥行きが正しい正視状態の立体画像を表示することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 立体撮像装置
2 要素レンズ群
2a 要素レンズ
21a 凸レンズ(要素レンズ)
3 光学遮蔽部
5 撮像手段
51 要素撮像素子(撮像手段)
52 基盤(撮像手段)
6 遮光手段
61 遮光板(遮光手段)
6a 遮光板(遮光手段)
7 切替手段
71 駆動部(切替手段)
72 時計部(切替手段)
9 記憶手段
G(G1、G2) 要素画像
H 光透過部
L 入射光
P(P1、P2) 目的地点
d 要素レンズの主点から前焦点位置までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの入射光を受光する要素レンズをアレイ状に配置した要素レンズ群と、前記要素レンズ群と対向して設けられ、前記要素レンズから出射される光による要素画像を撮像する撮像手段と、撮像した要素画像を記憶する記憶手段とを備える立体撮像装置であって、
前記要素レンズの受光面側にて、前記要素レンズの受光面より小さな面積の透過領域で前記入射光を透過する光透過部を、一つの前記要素レンズに対して一つ有する遮光面を備える遮光手段と、
前記光透過部の位置それぞれにおける前記透過領域が互いに重ならないように、前記光透過部の位置を所定の時間間隔で繰り返し切り替える切替手段と
を備えることを特徴とする立体撮像装置。
【請求項2】
前記遮光手段は、前記要素レンズと同数の前記光透過部である孔を有する遮光板であって、
前記切替手段は、前記遮光板を前記要素レンズの前焦点位置にて駆動して、前記孔の位置それぞれにおける前記透過領域が互いに重ならないように、前記孔の位置を前記所定の時間間隔で繰り返し切り替えることを特徴とする請求項1に記載された立体撮像装置。
【請求項3】
前記遮光手段は、前記要素レンズの前焦点位置に設置され、液晶素子を有する液晶パネルであって、
前記切替手段は、前記光透過部である液晶素子の開閉を制御して、制御対象の前記液晶素子それぞれで開いた前記透過領域が互いに重ならないように、開制御対象の液晶素子を前記所定の時間間隔で繰り返し切り替えることを特徴とする請求項1に記載された立体撮像装置。
【請求項4】
前記要素レンズが屈折率分布レンズであって、前記屈折率分布レンズのレンズ長が、当該屈折率分布レンズ内の光路が1/4周期となる長さに形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された立体撮像装置。
【請求項5】
前記要素レンズが屈折率分布レンズであって、前記屈折率分布レンズのレンズ長が、当該屈折率分布レンズ内の光路が3/4周期となる長さに形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された立体撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−248032(P2011−248032A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120068(P2010−120068)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【Fターム(参考)】