説明

立体画像表示装置およびその製造方法

【課題】位相差板および画像表示部の熱による膨張・収縮に起因するクロストークの発生、および位相差板および画像表示部の表面の凸凹に起因する色ムラ等を抑制すると共に、位相差板の画像表示部に対する位置ズレを抑制する。
【解決手段】画像表示部130の出射側の面と位相差板180の入射側の面とを、接着層300により接着すると共に、画像表示部130と位相差板180の左右の二辺とを、ガラス転移温度が接着層300より高い接着領域400により接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像表示装置およびその製造方法に関する。本発明は、特に、位相差板の周辺部を画像表示部に接着した立体画像表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイと位相差板とを組み合わせた立体画像表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この立体画像表示装置では、液晶ディスプレイにおける観察者側の面に位相差板を、接着剤を用いて貼り付けている。
【特許文献1】特開平10−253824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、液晶ディスプレイおよび位相差板は、製造工程において加熱・冷却されることにより、膨張・収縮して撓む。また、位相差板の表面に凸凹が存在する場合がある。このため、液晶ディスプレイと位相差板とを接着する接着剤には、これらの撓みに追従して撓むことができる程度、また、液晶ディスプレイ及び位相差板の表面の歪みや厚さムラに追従して、平坦性を発現できる程度、即ち、当該撓みおよび当該表面の凸凹を吸収できる程度の柔軟性が要求される。
【0004】
この要求レベルを達成する方法の1つには、接着剤のガラス転移温度を低くする方法がある。しかし、ガラス転移温度の低い接着剤は、製造工程における熱と加圧力、および高温環境下で使用することにより、接着剤のクリープが発生し易く、位相差板が液晶ディスプレイの画像表示部に対して位置ズレを起こすことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、右目用画像光を生成する右目用画像生成領域および左目用画像光を生成する左目用画像生成領域を含む画像生成部を有し、前記右目用画像光および前記左目用画像光を、偏光軸が互いに平行な直線偏光として出射する画像表示部と、前記画像表示部の出射側に配され、右目用偏光領域および左目用偏光領域を有し、前記右目用偏光領域および前記左目用偏光領域に前記右目用画像光および前記左目用画像光がそれぞれ入射したときに、入射した前記右目用画像光および前記左目用画像光を、偏光軸が互いに直交した直線偏光、または、偏光軸の回転方向が互いに逆方向である円偏光として出射する位相差板と、前記画像表示部の前記右目用画像生成領域および前記左目用画像生成領域と前記位相差板の前記右目用偏光領域および前記左目用偏光領域とが重なる領域に配され、前記画像表示部の出射側の面と前記位相差板の入射側の面とを接着する接着層と、前記画像表示部と前記位相差板の周辺部とを接着する接着領域とを備え、前記接着領域の接着剤のガラス転移温度は、前記接着層の接着剤のガラス転移温度より高い立体画像表示装置が提供される。
【0006】
本発明の第2の形態においては、右目用画像光を生成する右目用画像生成領域および左目用画像光を生成する左目用画像生成領域を含む画像生成部を有し、前記右目用画像光および前記左目用画像光を、偏光軸が互いに平行な直線偏光として出射する画像表示部と、前記画像表示部の出射側に配され、右目用偏光領域および左目用偏光領域を有し、前記右目用偏光領域および前記左目用偏光領域に前記右目用画像光および前記左目用画像光がそれぞれ入射したときに、入射した前記右目用画像光および前記左目用画像光を、偏光軸が互いに直交した直線偏光、または、偏光軸の回転方向が互いに逆方向である円偏光として出射する位相差板とを有する立体画像表示装置の製造方法であって、前記画像表示部の出射側の面および前記位相差板の前記入射側の面の少なくとも一方であって、前記画像表示部の前記右目用画像生成領域および前記左目用画像生成領域と前記位相差板の前記右目用偏光領域および前記左目用偏光領域とが重なる領域に、硬化性の樹脂を含む接着シートを貼り付ける貼付工程と、前記画像表示部の出射側の面と前記位相差板の前記入射側の面とを向かい合わせて重ねる積層工程と、前記画像表示部および前記位相差板の周辺部に樹脂を塗布する周辺塗布工程と、前記周辺塗布工程及び前記積層工程の後に、前記周辺部に塗布した樹脂を硬化させることにより、前記周辺部を接着する周辺接着工程と、前記周辺接着工程の後に、前記画像表示部と前記位相差板との間の樹脂を硬化することにより、前記画像表示部と前記位相差板とを接着する全面接着工程とを備える製造方法が提供される。
【0007】
本発明の第3の形態においては、右目用画像光を生成する右目用画像生成領域および左目用画像光を生成する左目用画像生成領域を含む画像生成部を有し、前記右目用画像光および前記左目用画像光を、偏光軸が互いに平行な直線偏光として出射する画像表示部と、前記画像表示部の出射側に配され、右目用偏光領域および左目用偏光領域を有し、前記右目用偏光領域および前記左目用偏光領域に前記右目用画像光および前記左目用画像光がそれぞれ入射したときに、入射した前記右目用画像光および前記左目用画像光を、偏光軸が互いに直交した直線偏光、または、偏光軸の回転方向が互いに逆方向である円偏光として出射する位相差板とを有する立体画像表示装置の製造方法であって、前記画像表示部の出射側の面および前記位相差板の前記入射側の面の少なくとも一方であって、前記画像表示部の前記右目用画像生成領域および前記左目用画像生成領域と前記位相差板の前記右目用偏光領域および前記左目用偏光領域とが重なる領域に、樹脂を塗布する全面塗布工程と、前記全面塗布工程の後に、前記画像表示部の出射側の面と前記位相差板の前記入射側の面とを向かい合わせて重ねる積層工程と、前記画像表示部および前記位相差板の周辺部に樹脂を塗布する周辺塗布工程と、前記積層工程及び前記周辺塗布工程の後に、前記周辺部に塗布した樹脂を硬化させることにより、前記周辺部を接着する周辺接着工程と、前記周辺接着工程の後に、前記画像表示部と前記位相差板との間の樹脂を硬化することにより、前記画像表示部と前記位相差板とを接着する全面接着工程とを備える製造方法が提供される。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態の製造方法により製造される立体画像表示装置100の分解斜視図である。図1に示すように、立体画像表示装置100は、光源120と、画像表示部130と、位相差板180と、反射防止層200とをこの順で備える。画像表示部130は、光源側偏光板150、画像生成部160および出射側偏光板170を含む。なお、反射防止層200を備えることは必須ではない。この立体画像表示装置100に表示される立体画像を後述する観察者500が観察する場合、図1における反射防止層200よりも右側から観察する。
【0011】
光源120は、観察者500から見て立体画像表示装置100の最も奥側に配され、立体画像表示装置100を使用している状態(以下、「立体画像表示装置100の使用状態」と略称する)において、白色の無偏光が光源側偏光板150の一面に向けて出射される。なお、本実施形態では、光源120に面光源を用いているが、面光源に替えて例えば点光源と集光レンズとの組み合わせでもよい。この集光レンズの一例として、フレネルレンズシートが挙げられる。
【0012】
光源側偏光板150は、画像生成部160における光源120側に配される。光源側偏光板150は、透過軸および当該透過軸に直交する吸収軸を有するので、光源120から出射した無偏光が入射すると、その無偏光のうち透過軸方向と平行な偏光軸の光を透過すると共に、吸収軸方向と平行な偏光軸の光を遮断する。ここで、偏光軸の方向とは、光における電界の振動方向をいう。光源側偏光板150における透過軸の方向は、図1に矢印で示すように、観察者500が立体画像表示装置100を見たときの水平方向から右上45度の方向とされている。
【0013】
画像生成部160は、右目用画像生成領域162および左目用画像生成領域164を有する。これら右目用画像生成領域162および左目用画像生成領域164は、図1に示すように、画像生成部160を水平方向に区切った領域であり、複数の右目用画像生成領域162および左目用画像生成領域164が鉛直方向に互い違いに配されている。
【0014】
立体画像表示装置100の使用状態において、画像生成部160の右目用画像生成領域162および左目用画像生成領域164には、それぞれ右目用画像および左目用画像が生成される。このときに光源側偏光板150を透過した光が画像生成部160の右目用画像生成領域162に入射すると、右目用画像生成領域162の透過光は右目用画像の画像光(以下、「右目用画像光」と略称する)となる。同様に、光源側偏光板150を透過した光が画像生成部160の左目用画像生成領域164に入射すると、左目用画像生成領域164の透過光は左目用画像の画像光(以下、「左目用画像光」と略称する)となる。
【0015】
なお、右目用画像生成領域162を透過した右目用画像光および左目用画像生成領域164を透過した左目用画像光は、それぞれ特定方向の偏光軸を有する直線偏光になる。ここで、それぞれ特定方向の偏光軸とは、互いに同じ方向であってもよく、図1に示す例においては、ともに偏光軸が後述する出射側偏光板170における透過軸の方向と同じ方向に設定されている。このような画像生成部160には、例えば水平方向および垂直方向に二次元的に複数の小さなセルが配され、各セルにおいて配向膜間に液晶を封止したLCD(液晶ディスプレイ)が用いられる。このLCDにおいて各セルを電気的に駆動することにより、各セルは、通過する光をその偏光軸の方向を変えずに透過する状態と、偏光軸の方向を90度回転させて透過する状態とを切り替える。
【0016】
出射側偏光板170は、画像生成部160における観察者500側に配される。この出射側偏光板170は、上記右目用画像生成領域162を透過した右目用画像光、および、上記左目用画像生成領域164を透過した左目用画像光が入射すると、これらのうち偏光軸が透過軸と平行な光を透過すると共に、偏光軸が吸収軸と平行な光を遮断する。ここで、出射側偏光板170における透過軸の方向は、図1に矢印で示すように、観察者500が立体画像表示装置100を見たときの水平方向から左上45度の方向とされている。即ち、画像表示部130は、右目用画像光及び左目用画像光を、偏光軸が互いに平行な直線光として出射する。なお、ここでいう平行とは、観察者500が、右目用画像光および左目用画像光を立体画像として認識することができる程度の平行度を有していればよく、誤差の範囲も含む。
【0017】
位相差板180は、右目用偏光領域181および左目用偏光領域182を有する。この位相差板180における右目用偏光領域181および左目用偏光領域182の位置および大きさは、図1に示すように、画像生成部160の右目用画像生成領域162および左目用画像生成領域164の位置および大きさに対応している。したがって、立体画像表示装置100の使用状態において、右目用偏光領域181には、上記右目用画像生成領域162を透過した右目用画像光が入射するとともに、左目用偏光領域182には、上記左目用画像生成領域164を透過した左目用画像光が入射する。
また、位相差板180の画像表示部130に対向する面における右目用偏光領域181と左目用偏光領域182との境界には、遮光部190が設けられている。この遮光部190は、位相差板180の右目用偏光領域181に隣接する左目用偏光領域182に入射するべき左目用画像光のうち、上記境界を超えて当該右目用偏光領域181に入射する画像光を吸収して遮る。また、上記遮光部190は、同様に、位相差板180の左目用偏光領域182に隣接する右目用偏光領域181に入射するべき右目用画像光のうち、上記境界を超えて当該左目用偏光領域182に入射する画像光を吸収して遮る。このように、位相差板180の上記境界に遮光部190を設けることにより、立体画像表示装置100から出射される右目用画像光および左目用画像光にクロストークが生じにくくなる。
【0018】
右目用偏光領域181は、入射した右目用画像光の偏光軸を回転させずにそのまま透過する。また、左目用偏光領域182は、入射した左目用画像光の偏光軸を右目用偏光領域181に入射した右目用画像光の偏光軸に対して直交する方向に回転させる。したがって、右目用偏光領域181を透過した右目用画像光の偏光軸と、左目用偏光領域182を透過した左目用画像光の偏光軸とは、図1に矢印で示すように、その方向が互いに直交する。ここでいう直交とは、観察者500が、右目用画像光および左目用画像光を立体画像として認識することができる程度の直角度をもって交差していればよく、誤差の範囲も含む。
【0019】
なお、図1の位相差板180における矢印は、位相差板180を通過した偏光の偏光軸を示している。右目用偏光領域181には、例えば透明なガラスまたは樹脂などが用いられ、左目用偏光領域182には、例えば入射される左目用画像光の偏光軸の方向に対して45度の角度の光学軸を有する半波長板が用いられる。図1に示す例において、左目用偏光領域182の光学軸の方向は、水平方向または鉛直方向とされている。ここで、光学軸とは、光が左目用偏光領域182を透過するときの進相軸または遅相軸の一方を指す。なお、上記位相差板180に代えて、右目用偏光領域181および左目用偏光領域182にそれぞれ半波長板を用いて、入射した右目用画像光および左目用画像光を、偏光軸が互いに直交した直線偏光として出射してもよい。
【0020】
図2は、立体画像表示装置100の使用状態を示す概略図である。立体画像表示装置100により立体画像を観察する場合、観察者500は、図2に示すように、立体画像表示装置100から投影される右目用画像光および左目用画像光を、偏光眼鏡220をかけて観察する。この偏光眼鏡220には、観察者500がこの偏光眼鏡220をかけたときに観察者500の右目512側にあたる位置に右目用画像透過部232が配され、左目514側にあたる位置に左目用画像透過部234が配される。これら右目用画像透過部232および左目用画像透過部234は、互いに異なる特定の透過軸方向をもつ偏光レンズであり、偏光眼鏡220のフレームに固定されている。
【0021】
右目用画像透過部232は、透過軸方向が右目用偏光領域181を透過した右目用画像光と同じ方向を有すると共に、吸収軸方向が上記透過軸方向と直交する方向を有する偏光板とされている。左目用画像透過部234は、透過軸方向が左目用偏光領域182を透過した左目用画像光と同じ方向を有すると共に、吸収軸方向が上記透過軸方向と直交する方向を有する偏光板とされている。これら右目用画像透過部232および左目用画像透過部234には、例えば二色性染料を含浸させたフィルムを一軸延伸して得られる偏光膜を貼り付けた偏光レンズが用いられる。
【0022】
観察者500は、立体画像表示装置100により立体画像を観察するときに、上記位相差板180の右目用偏光領域181および左目用偏光領域182を透過した右目用画像光および左目用画像光の出射する範囲内において、上記のように、偏光眼鏡220をかけて立体画像表示装置100を観察する。これにより、右目512では右目用画像光だけを観察することができ、左目514では左目用画像光だけを観察することができる。したがって、観察者500は、これら右目用画像光および左目用画像光を立体画像として認識することができる。
【0023】
図3は、筐体110に収容された立体画像表示装置100の概略断面図である。図3に示すように、画像表示部130が外枠165に支持される。さらに、画像表示部130の出射側に位相差板180および反射防止層200が取り付けられる。筐体110は、光源120および画像表示部130を収容する。ここで、位相差板180は、接着層300および接着領域400により画像表示部130に接着される。
【0024】
接着層300の厚みは、遮光部190と同じ厚みであることが好ましい。ここで同じ厚さとは、完全に同一である場合に加えて、接着層300の方が遮光部190よりも1.5倍程度厚い範囲までを含む。例えば、遮光部190の厚みが10μmから15μmである場合に、接着層300の厚みは10μmから20μmであることが好ましく、また、遮光部190の厚みが2μmから3μmである場合に、接着層300の厚みは2μmから5μmであることが好ましい。ここで、接着層300の厚みは、位相差板180の右目用偏光領域181および左目用偏光領域182における入射側の面からの厚みをいう。遮光部190の厚みがより小さいほうが、接着層300と位相差板180との間に気泡が入りにくくなる。
【0025】
図4は、反射防止層200の一例を示す。上記立体画像表示装置100は、位相差板180よりも観察者500側に反射防止層200を有する。反射防止層200は、位相差板180のガラス基板183上に、接着層202、基材204、ハードコート206、高屈折率樹脂208および低屈折率樹脂210をこの順に有する。
接着層202の厚みは、例えば25μmである。また、基材204は、例えばトリアセチルセルロース(TAC)であって、厚みは80μmである。ハードコート206の厚みは例えば5μmである。高屈折率樹脂208および低屈折率樹脂210の屈折率はそれぞれ1.65、1.40であり、厚みはそれぞれ0.1μmとされている。なお、反射防止層200は、出射される偏光を乱すことがなければ、上記の例に限られない。
【0026】
上記立体画像表示装置100の製造方法について以下に説明する。本実施形態に係る立体画像表示装置100の製造方法は、アライメント工程としての貼付工程と積層工程と、周辺接着工程としての点接着工程と、ラミネート工程としての真空ラミネート工程と、オートクレーブ工程と、全面接着工程としての全面UV接着工程とを備える。
【0027】
貼付工程では、画像表示部130に接着層300を形成する。また、積層工程では、画像表示部130の出射側の面と位相差板180とを向かい合わせて重ねる。また、点接着工程は、画像表示部130の出射側の面と位相差板180の周辺部とに樹脂を塗布する周辺塗布工程と、周辺塗布工程において塗布した樹脂を硬化させることにより、画像表示部130の出射側の面と位相差板180の周辺部とを接着する周辺接着工程とを備える。
【0028】
真空ラミネート工程では、画像表示部130および位相差板180を真空加圧ラミネートする。また、オートクレーブ工程では、画像表示部130および位相差板180を加熱する。さらに、全面UV接着工程では、接着層300を硬化することにより画像表示部130と位相差板180とを接着する。
【0029】
図5は、貼付工程前の画像表示部130の概略断面図を示す。図5の画像表示部130の画像生成部160は、光源側ガラス基板142および出射側ガラス基板144と、これら光源側ガラス基板142および出射側ガラス基板144の間に封止された液晶により形成される右目用画像生成領域162、および、左目用画像生成領域164を有する。光源側ガラス基板142の光源側には、光源側偏光板150が配されると共に、出射側ガラス基板144の出射側には、出射側偏光板170が配される。
【0030】
図6は、貼付工程を説明する断面図である。図6に示すように、貼付工程は、位相差板180の入射側の面に接着シート700を貼り付ける工程を有する。ここで、接着シート700は、接着層300および当該接着層300を支持するセパレートフィルム710を有する。接着層300を構成する接着剤は紫外線硬化型の樹脂であって、一例として、スリーボンド(登録商標)社のスリーボンド(登録商標)1630等のウレタンアクリレート系の樹脂が挙げられる。
【0031】
図6に示す例において、位相差板180において遮光部190が設けられた面に、接着シート700の接着層300側が載置されることにより、位相差板180に接着シート700が貼り付けられる。なお、接着シート700は、ロール状に巻かれた状態から所定の長さを引き出してカットして使用してもよく、また、予め単票状に形成されたものを使用してもよい。ここで、遮光部190の厚みが3〜10μmの場合に、接着シート700の接着層300の厚みは15〜75μmであることが好ましい。これにより、遮光部190間の凹部にも樹脂が行き渡り、表面を平滑にすることができる。
【0032】
図7は、図6に引き続き貼付工程を説明する断面図である。図7に示すように、貼付工程はさらに、位相差板180の入射側の面に貼り付けた接着シート700のセパレートフィルム710側に、加熱したローラ800を押し付けることにより、接着シート700を位相差板180にラミネートする工程を有する。図7に示す工程において、大気圧(0.1MPa)のチャンバ内で、80℃〜85℃に加熱したローラ800が接着シート700の接着層300上で図中矢印方向に0.3m/minの速度で転がりながら移動することにより、ラミネートされ、位相差板180に接着シート700が仮接着される。加熱したローラ800でラミネートすることにより、遮光部190の有無による凹凸形状に沿って接着層300が埋り、位相差板180における入射側の全面に接着層300が配される。
なお、図6に位相差板180と接着シート700との貼り合わせと、図7に示すラミネートとは同時に行うことが好ましい。これにより、工数を減らすことができる。
【0033】
図8は、図7に引き続き貼付工程を説明する断面図である。図8に示すように、貼付工程はさらに、ラミネートされた接着シート700のセパレートフィルム710を接着層300から剥がす工程を有する。これにより、接着層300が、露出した状態で位相差板180側に残る。
【0034】
なお、図6から図8に示す実施形態において、接着シート700を位相差板180に先に接着してラミネートしている。これに代えて、接着シート700を画像表示部130に先に接着してラミネートしてもよい。
【0035】
図9は、積層工程を説明する断面図である。積層工程において、位相差板180の接着層300側の面と画像表示部130の出射側偏光板170側の面とを向かい合うように重ね、位相差板180と画像表示部130とのアライメントを調整する。
【0036】
なお、図9に示すように、位相差板180の右目用偏光領域181および左目用偏光領域182はガラス基板183に支持されている。位相差板180のガラス基板183が画像表示部130の出射側ガラス基板144よりも厚く、かつ、位相差板180と画像表示部130とを全面接着するので、強度を保持しつつ、出射側ガラス基板144を薄くすることができる。これにより、画像表示部130の画像生成部160と位相差板180の右目用偏光領域181および左目用偏光領域182との距離が縮まることにより、視野角を拡げることができる。例えば、ガラス基板183の厚みが0.7mmである場合に、出射側ガラス基板144の厚みを0.5mm以下にすることができる。
【0037】
図10(A)、(B)は、点接着工程における周辺塗布工程を説明する断面図である。周辺塗布工程において、位相差板180における周辺部としての左右一対の側面189と、画像表示部130の出射側の面、即ち出射側ガラス基板144における左右両側とに、樹脂(接着剤)を塗布する。ここで、樹脂は、各側面189における複数箇所に所定間隔毎に所定の幅で塗布する。
これにより、周辺塗布工程において、位相差板180の左右一対の側面189に沿って互いに離間した複数の接着領域400を形成する。この場合に例えば、樹脂は紫外線硬化型の樹脂であって、一例として、スリーボンド社のスリーボンド3114、又は3114B等のエポキシ系樹脂が挙げられる。また、樹脂は、例えば、立体画像表示装置の画像サイズが46インチの場合、各側面189および画像表示部130における各側面189の外側の4箇所に80mm間隔毎に2mmの塗布幅で塗布される。
【0038】
ここで、出射側偏光板170の横幅は、位相差板180の横幅よりも狭くされており、左右の接着領域400は、出射側偏光板170の左右の側面から離間されている。また、接着領域400は、位相差板180のガラス基板183における側面と、画像表示部130の出射側ガラス基板144における左右の縁部とに塗布されている。これにより、出射側偏光板170の膨張収縮の影響を受けないので、安定した立体画像を観察することができる。
【0039】
図11は、点接着工程における周辺接着工程を説明する断面図である。周辺接着工程において、接着領域400に対してスポット的に紫外線を照射して、接着領域400の樹脂を硬化させる。この場合に例えば、積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射する。これにより、位相差板180のガラス基板183における左右の側面と、画像表示部130の出射側ガラス基板144における左右の縁部とが接着される。
【0040】
図12は、真空ラミネート工程を説明する断面図である。真空ラミネート工程では、減圧下の真空炉内において、上記点接着工程後の画像表示部130および位相差板180が、位相差板180を上向きにして、載置台610に載置される。さらに、減圧下の真空炉内において、ローラ600が位相差板180のガラス基板183を押圧しながら回転する。この場合に例えば、真空引きを1分間実施して、950MPaのラミネート圧力、80度のラミネート温度で、ラミネートを6分間実施する。
これにより、画像表示部130と位相差板180とがラミネートされると共に、接着層300及び接着領域400の樹脂が脱気される。従って、接着層300の厚みを均一にして、画像表示部130と位相差板180の平坦度および平行度を高めることができる。また、樹脂の透明性および接着性を向上させることができる。なお、本実施形態で採用したロールラミネート工法以外に、例えば、ダイヤフラム方式によるラミネート工法も採用できる。
【0041】
上記ラミネート工程後において、接着層300の厚さは、遮光部190と同じ厚さであることが好ましい。ラミネート工程において、ローラは図12に示すように右目用画像生成領域162および左目用画像生成領域164が並んでいる方向に沿って回転してラミネートしてもよく、また、図12とは直交する方向すなわち右目用画像生成領域162および左目用画像生成領域164の長手方向に沿って回転してラミネートしてもよい。
【0042】
上記真空ラミネート工程の後には、オートクレーブ工程を実施する。このオートクレーブ工程において、圧力が大気圧より高い雰囲気中で画像表示部130および位相差板180を加熱する。当該加熱工程における雰囲気の圧力は、上記真空ラミネート工程におけるラミネート圧力より高いことが好ましい。当該オートクレーブ工程の条件の一例として、雰囲気の温度80℃および圧力0.6MPaのチャンバ内に、画像表示部130および位相差板180が1時間配される。
当該オートクレーブ工程により、上記真空ラミネート工程によって画像表示部130および位相差板180に生じた歪みが開放される。さらに、当該オートクレーブ工程により、真空加圧ラミネートで除去し切れなかった接着層300の気泡を潰したり、押し出したりすることができる。
【0043】
図13は、全面UV接着工程を説明する断面図である。全面UV接着工程において、上記オートクレーブ工程後の接着層300に対して、位相差板180の側から紫外線を照射して、接着層300の樹脂を硬化させる。この場合に例えば、照度180mW/cm2、積算光量3000mJ/cm2、波長365nmの紫外線を照射する。これにより、接着層300の樹脂のうち、位相差板180の遮光部190間の領域に紫外線が照射されて硬化される。
【0044】
さらに、ヒータ等により外部から接着層300に熱を加えて、接着層300全体を硬化させる。これにより、紫外線が照射されなかった領域の樹脂も硬化させて、画像表示部130と位相差板180とをより確実に接着することができる。なお、紫外線の照射とヒータによる加熱とは併せて行われてもよい。
【0045】
以上により接着された画像表示部130および位相差板180が、図3に示す筐体110に取り付けられることにより、立体画像表示装置100が製造される。ここで、接着領域400の樹脂としては、ガラス転移温度(Tg)が、接着層300の樹脂のガラス転移温度よりも高いものが用いられている。例えば、接着領域400の樹脂としては、ガラス転移温度が80℃以上のものを用いているのに対して、接着層300の樹脂としては、ガラス転移温度が0℃以下、より具体的には−20℃のものを用いている。
【0046】
即ち、接着領域400の樹脂の温度は、周辺塗布工程から全面UV接着工程までの全工程に亘って、ガラス転移温度以下となるのに対して、接着層300の樹脂の温度は、貼付工程後の全工程に亘って、ガラス転移温度より高くなる。このため、点接着工程、真空ラミネート工程、オートクレーブ工程、及び全面UV接着工程が実施されている間、接着層300の樹脂はガラス状態からゴム状態となるのに対して、接着領域400の樹脂は、粘性、剛性が接着層300の樹脂と比較してガラス状態を維持する。
【0047】
従って、本実施形態では、貼付工程後の各工程における加熱により画像表示部130および位相差板180の一方に膨張・収縮による撓みが発生した場合でも、この一方の撓みに対して他方と接着層300とが追従することができる。また、画像表示部130と位相差板180との位置ズレを抑制できるので、立体画像表示装置100が使用されている(立体映像を観賞する)状態での、画像表示部130と位相差板180との間における光の干渉(例えば、ニュートンリングのような模様)の発生を抑制できる。特に大画面の場合には、画像表示部130および位相差板180の撓みがより大きくなることから、立体画像の画質向上に対してより大きな効果が得られる。
【0048】
また、画像表示部130および位相差板180の表面に歪みや厚さムラがある場合でも、粘性が低い接着層300は、その表面の歪みや厚さムラを補うかたちで追従するので、画像表示部130と位相差板180との間が一定となり、接着層300を隙間無く充填できる。従って、画像表示部130と位相差板180との間での内部反射を抑制でき、クロストークの発生を抑制できる。また、画像表示部130と位相差板180との間隔のバラツキを抑制できるので、色むらの発生を抑制できる。従って、立体画像の画質低下を抑制できる。
【0049】
また、接着領域400のガラス転移温度が点接着工程後の各工程の温度条件以上であることにより、点接着工程後の各工程において、接着層300が、位相差板180の重量に耐えるのに十分な接着強度を維持できない場合であっても、接着領域400が、位相差板180の重量に耐えるのに十分な接着強度を維持する。よって、位相差板180が自重によりずり落ちることを抑制でき、以って、位相差板180の画像表示部130に対する上下方向の位置ズレを抑制できる。
【0050】
また、接着領域400のガラス転移温度を製造後に想定される使用環境の温度より高い。これにより、高温環境下における周囲の熱、画像表示部130の発熱等により、接着層300のクリープが生じた場合でも、接着領域400が、位相差板180の重量に耐えるのに十分な接着強度を維持する。よって、想定される使用環境下において、位相差板180が自重によりずり落ちることを抑制でき、以って、位相差板180の画像表示部130に対する上下方向の位置ズレを抑制できる。
【0051】
また、本実施形態では、複数の接着領域400を位相差板180と画像表示部130との左右両側に所定の間隔で離間して設けている。これにより、位相差板180と画像表示部130へ伝わる接着領域400の樹脂の硬化時に発生する収縮応力の影響を小さくすることができる。また、この収縮応力により発生した位相差板180の歪みを接着層300により吸収・緩和させることにより、画像表示部130のコントラストへの影響を最小限に抑えることができる(色むらの発生を抑制できる)。
【0052】
また、本実施形態では、位相差板180の左右の側面189と画像表示部130の左右両側部とを接着領域400により接着している。これにより、接着領域400が、画像領域の外側に配されるので、画像領域の全域が使用可能となる。また、積層工程後に、位相差板180の側面189と画像表示部130の出射側の面とで形成される隅部に、接着剤を溜めることによって、位相差板180の側面189と画像表示部130の出射側の面とを接着できるので、接着作業を容易化できる。
【0053】
また、本実施形態では、位相差板180のガラス基板183と画像表示部130の出射側ガラス基板144との接着において、左右の二辺を接着しているが、当該接着強度を保持できるのであれば、上下二辺もしくは一辺を画像表示部130に対して接着してもよい。なお、位相差板180のガラス基板183を低熱膨張・収縮のフィルム基材としてもよい。これにより、位相差板180の重量を抑えることが可能となり、以って、ずり落ちを防止することができる。なお、当該フィルム基材と出射側ガラス基板144との接着は、四辺、二辺もしくは一辺の接着ができるが、ガラス基材より基材の収縮が大きいフィルム基材の場合は四辺の接着が好ましい。
【0054】
また、本実施形態では、接着領域400を、出射側偏光板170から離間させて配している。これにより、出射側偏光板170の熱による膨張・収縮の影響が、接着領域400を介して画像表示部130および位相差板180に及ぶことを防止できる。また、熱による膨張・収縮が位相差板180と比較して小さい位相差板180のガラス基板183と画像表示部130の出射側ガラス基板144とを直接接着している。従って、上述の位置ずれをより一層抑制できる。
【0055】
図14は、本実施形態の製造方法により製造される他の立体画像表示装置101の分解斜視図である。図14に示す立体画像表示装置101において、上記立体画像表示装置100と同じ構成については同じ参照番号を付して説明を省略する。図14に示すように、立体画像表示装置101は、上記立体画像表示装置100の位相差板180に替えて位相差板185を備える。この位相差板185は、右目用偏光領域186および左目用偏光領域187を有する。
【0056】
ここで、右目用偏光領域186および左目用偏光領域187は、ともに1/4波長板であり、それぞれの光学軸が互いに直交する。この位相差板185における右目用偏光領域186および左目用偏光領域187の位置および大きさは、上記位相差板180における右目用偏光領域181および左目用偏光領域182の位置および大きさと同様に、画像生成部160の右目用画像生成領域162および左目用画像生成領域164の位置および大きさに対応している。したがって、立体画像表示装置101の使用状態において、右目用偏光領域186には、上記右目用画像生成領域162を透過した右目用画像光が入射すると共に、左目用偏光領域187には、上記左目用画像生成領域164を透過した左目用画像光が入射する。
【0057】
また、位相差板185の画像表示部130に対向する面における右目用偏光領域186と左目用偏光領域187との境界には、遮光部190が設けられている。この遮光部190は、位相差板185の右目用偏光領域186に隣接する左目用偏光領域187に入射するべき左目用画像光のうち、上記境界を超えて当該右目用偏光領域186に入射する画像光を吸収して遮る。
【0058】
また、上記遮光部190は、同様に、位相差板185の左目用偏光領域187に隣接する右目用偏光領域186に入射するべき右目用画像光のうち、上記境界を超えて当該左目用偏光領域187に入射する画像光を吸収して遮る。このように、位相差板185の上記境界に遮光部190を設けることにより、立体画像表示装置101から出射される右目用画像光および左目用画像光にクロストークが生じにくくなる。
【0059】
位相差板185は、入射した光を偏光軸の回転方向が互いに逆方向である円偏光として出射する。例えば、右目用偏光領域186は入射した光を右回りの円偏光として出射すると共に、左目用偏光領域187は入射した光を左回りの円偏光として出射する。なお、図14の位相差板185の矢印は、この位相差板185を通過した偏光の回転方向を示している。右目用偏光領域186には、例えば光学軸が水平方向である1/4波長板が用いられ、左目用偏光領域187には、例えば光学軸が鉛直方向である1/4波長板が用いられる。
【0060】
図14に示す立体画像表示装置101においても、立体画像表示装置100の場合と同様に、接着層300および接着領域400により画像生成部160と位相差板185とを接着する。これにより、画像表示部130および位相差板180の撓み、凸凹を接着層300に吸収させると共に、位相差板180の画像表示部130に対する位置ズレを抑制できる。
【0061】
図14に示す位相差板185を備えた立体画像表示装置101を観察する場合、観察者500は、右目512側にあたる位置および左目514側にあたる位置にそれぞれ1/4波長板と偏光レンズが配された偏光眼鏡をかけて観察する。この偏光眼鏡において、観察者500の右目512側にあたる位置に配される1/4波長板は光学軸が水平方向であり、観察者500の左目514側にあたる位置に配される1/4波長板は光学軸が鉛直方向とされている。また、観察者500の右目512側にあたる位置に配される偏光レンズ、および、観察者500の左目514側にあたる位置に配される偏光レンズは、ともに透過軸方向が観察者500から見て右斜め45度であり、吸収軸方向が上記透過軸方向と直交する方向とされている。
【0062】
観察者500の右目512側では、偏光軸が観察者500から見て右回りの円偏光が入射したときに、その円偏光は上記の光学軸が水平方向である1/4波長板によって右斜め45度の直線偏光に変換された後、上記偏光レンズを透過して観察者500の右目512で観察される。また、観察者500の左目514側では、偏光軸が観察者500から見て左回りの円偏光が入射したときに、その円偏光は上記の光学軸が鉛直方向である1/4波長板によって右斜め45度の直線偏光に変換された後、上記偏光レンズを透過して観察者500の左目514で観察される。このように、上記偏光眼鏡をかけて立体画像表示装置101を観察することにより、右目512では右目用画像光だけを観察することができ、左目514では左目用画像光だけを観察することができる。したがって、観察者500は、これら右目用画像光および左目用画像光を立体画像として認識することができる。
【0063】
図15および図16は、本実施形態の他の製造方法における真空積載工程を説明する断面図である。当該他の製造方法は、図5から図13に示す製造方法における積載工程に代えて、真空積載工程を有する。当該他の製造方法について、図5から図13に示す製造方法と同一の構成および作用については、同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0064】
図15に示すように、真空積載工程において、画像表示部130が、出射側偏光板170が上向きになるように下盤900に載置され、位相差板180が、接着層300が下向きになるように上盤910に取り付けられる。この状態で、画像表示部130と位相差板180とが位置決めされる。下盤900と上盤910とは、閉じられた空間内に上下に対向して配されており、上盤910は、下盤900に対して接離可能とされている。
【0065】
当該真空積層工程では、画像表示部130および位相差板180をそれぞれ下盤900および上盤910に設置した後、これらが配された空間内を真空雰囲気にする。この場合に例えば、当該空間内を1〜1000Paとする。
【0066】
図16に示すように、上盤910が下盤900側へ移動され、位相差板180と画像表示部130とが接着層300を介して圧着される。本作業は、接着層300の圧縮量と圧縮時間とを管理する。この場合に例えば、圧着される前に厚さが35μmの接着層300を、5〜25μm圧縮させる。圧縮時間は10〜90秒とする。
【0067】
以上、本実施形態の真空積載工程によれば、積載工程において接着層300と画像表示部130との間に気泡が混入することを防止できるので、気泡除去を目的とする真空ラミネート工程を不要にできる。これに伴って、真空ラミネート工程における加熱を不要できるので、当該加熱に起因する位相差板180の画像表示部130に対する位置ズレが発生しない。
【0068】
図17は、本実施形態の他の製造方法における全面塗布工程を説明する断面図である。当該他の製造方法は、図5から図13に示す製造方法における貼付工程に代えて、全面塗布工程を有する。当該他の製造方法について、図5から図13に示す製造方法と同一の構成および作用については、同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0069】
図17に示すように、全面塗布工程において、画像表示部130における出射側偏光板170の出射側の面に、樹脂が塗布され、接着層300が形成される。ここで、樹脂は、少なくとも、画像表示部130の右目用画像生成領域162および左目用画像生成領域164と、位相差板180の右目用偏光領域181および左目用偏光領域182とが対向する領域に塗布される。これに代えて、出射側偏光板170の全面に塗布されてもよい。
樹脂を塗布する方法は、ダイコーター、グラビアコーター等が用いられる。当該全面塗布工程における接着層300の硬化前の厚みは、遮光部190の厚みと同じか、それよりも薄くてもよい。全面塗布工程における接着層300の硬化前の厚みは、遮光部190の間の開口部の面積、および、遮光部190の厚さ等によって、適宜設定することができる。
【0070】
当該全面塗布工程において用いられる樹脂は、紫外線で硬化すると共に、熱でも硬化することが好ましい。紫外線と熱との両方で硬化する樹脂としては、側鎖に不飽和二重結合有する官能基とエポキシ基を有する樹脂を使用することができる。また、紫外線で硬化する樹脂と、熱で硬化する樹脂とを混合して塗布してもよい。
この場合に、紫外線で硬化する樹脂としては、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステルアクリレートなどの紫外線硬化樹脂を使用することができる。また、熱で硬化する樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ウレタン樹脂などを使用することができる。また、上記樹脂の粘度は、常温(25℃)で、500cpsから1000cpsであることが好ましい。上記粘度が500cpsより小さいと、塗布した樹脂が流れ出る場合がある。一方、粘度が1000cpsより大きいと、遮光部190の間に樹脂が入り込みにくくなり、隅々まで樹脂が行き渡らない場合がある。
【0071】
図18は、積載工程を説明する断面図である。積載工程において、画像表示部130の接着層300が形成された面に、位相差板180の遮光部190が形成された面が向かい合うように重ねて載置される。画像表示部130に位相差板180が載置された状態で、これら画像表示部130および位相差板180が真空炉内に配され、当該真空炉が減圧されることにより、樹脂を脱気する脱気工程が行われる。脱気工程において、画像表示部130および位相差板180に超音波振動が与えられることにより樹脂が脱気されてもよい。
【0072】
図19は、ラミネート工程を説明する断面図である。ラミネート工程において、上記載置工程後の画像表示部130および位相差板180が、位相差板180を上向きにして、載置台610に載置される。さらに、ローラ600が位相差板180のガラス基板183を押圧しながら回転することにより、画像表示部130と位相差板180とがラミネートされる。これにより、接着層300の厚みを均一にして、画像表示部130と位相差板180の平坦度および平行度を高めることができる。
【0073】
上記ラミネート工程後において、接着層300の厚さは、遮光部190と同じ厚さであることが好ましい。ラミネート工程において、ローラは図19に示すように右目用画像生成領域162および左目用画像生成領域164が並んでいる方向に沿って回転してラミネートしてもよく、また、図19とは直交する方向すなわち右目用画像生成領域162および左目用画像生成領域164の長手方向に沿って回転してラミネートしてもよい。
また、上記ラミネート工程後に、画像表示部130と位相差板180とがアラインメントされてもよい。この場合に、接着層300にシリカ系フィラーをスペーサーとして混合することにより、アラインメントを容易にすることができる。なお、全面塗布工程、載置工程およびラミネート工程を、減圧下の真空炉内で実行してもよい。これにより、より効果的に脱気をすることでき、生産性が向上する。
【0074】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。例えば、本実施形態では、右目用偏光領域181と左目用偏光領域182との境界部に遮光部190を設けたが、遮光部190を設けずともクロストークの発生を防止できる場合には、遮光部190を設けなくてもよい。この場合、遮光部190を省略することにより、視野角をさらに拡げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本実施形態の製造方法により製造される立体画像表示装置100の分解斜視図である。
【図2】立体画像表示装置100の使用状態を示す概略図である。
【図3】筐体110に収容された立体画像表示装置100の概略断面図である。
【図4】反射防止層200の一例を示す。
【図5】貼付工程前の画像表示部130の概略断面図を示す。
【図6】貼付工程を説明する断面図である。
【図7】貼付工程を説明する断面図である。
【図8】貼付工程を説明する断面図である。
【図9】積層工程を示す断面図である。
【図10】周辺塗布工程を説明する(A)は断面図、(B)は平面図である。
【図11】周辺接着工程を説明する断面図である。
【図12】真空ラミネート工程を説明する断面図である。
【図13】全面接着工程を説明する断面図である。
【図14】本実施形態の製造方法により製造される他の立体画像表示装置101の分解斜視図である。
【図15】本実施形態の他の製造方法における真空積層工程を説明する断面図である。
【図16】本実施形態の他の製造方法における真空積層工程を説明する断面図である。
【図17】本実施形態の他の製造方法における全面塗布工程を説明する断面図である。
【図18】本実施形態の他の製造方法における積層工程を説明する断面図である。
【図19】本実施形態の他の製造方法における真空ラミネート工程を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0076】
100 立体画像表示装置、101 立体画像表示装置、110 筐体、120 光源、130 画像表示部、142 光源側ガラス基板、144 出射側ガラス基板、150 光源側偏光板、160 画像生成部、162 右目用画像生成領域、164 左目用画像生成領域、165 外枠、170 出射側偏光板、180 位相差板、181 右目用偏光領域、182 左目用偏光領域、183 ガラス基板、185 位相差板、186 右目用偏光領域、187 左目用偏光領域、189 側面、190 遮光部、200 反射防止層、202 接着層、204 基材、206 ハードコート、208 高屈折率樹脂、210 低屈折率樹脂、220 偏光眼鏡、232 右目用画像透過部、234 左目用画像透過部、300 接着層、400 接着領域、500 観察者、512 右目、514 左目、600 ローラ、610 載置台、700 接着シート、710 セパレートフィルム、800 ローラ、900 下盤、910 上盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右目用画像光を生成する右目用画像生成領域および左目用画像光を生成する左目用画像生成領域を含む画像生成部を有し、前記右目用画像光および前記左目用画像光を、偏光軸が互いに平行な直線偏光として出射する画像表示部と、
前記画像表示部の出射側に配され、右目用偏光領域および左目用偏光領域を有し、前記右目用偏光領域および前記左目用偏光領域に前記右目用画像光および前記左目用画像光がそれぞれ入射したときに、入射した前記右目用画像光および前記左目用画像光を、偏光軸が互いに直交した直線偏光、または、偏光軸の回転方向が互いに逆方向である円偏光として出射する位相差板と、
前記画像表示部の前記右目用画像生成領域および前記左目用画像生成領域と前記位相差板の前記右目用偏光領域および前記左目用偏光領域とが重なる領域に配され、前記画像表示部の出射側の面と前記位相差板の入射側の面とを接着する接着層と、
前記画像表示部と前記位相差板の周辺部とを接着する接着領域と
を備え、
前記接着領域の接着剤のガラス転移温度は、前記接着層の接着剤のガラス転移温度より高い立体画像表示装置。
【請求項2】
前記接着領域は、前記位相差板の縁に沿って互いに離間して複数設けられる請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
前記接着領域は、前記位相差板の側面と前記画像表示部とを接着する請求項2に記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
前記画像表示装置は、ガラス基板、および、前記ガラス基板における前記位相差板側の面に貼り付けられた偏光板を有し、
前記接着領域は、前記ガラス基板と前記位相差板とを接着する請求項3に記載の立体画像表示装置。
【請求項5】
前記接着領域は、前記偏光板から離間している請求項4に記載の立体画像表示装置。
【請求項6】
前記位相差板は、前記右目用偏光領域および前記左目用偏光領域を支持するガラス基板を有し、
前記接着領域は、前記画像表示装置の前記ガラス基板に対して、少なくとも前記位相差板の前記ガラス基板において対向する一対の縁を接着する請求項4に記載の立体画像表示装置。
【請求項7】
右目用画像光を生成する右目用画像生成領域および左目用画像光を生成する左目用画像生成領域を含む画像生成部を有し、前記右目用画像光および前記左目用画像光を、偏光軸が互いに平行な直線偏光として出射する画像表示部と、
前記画像表示部の出射側に配され、右目用偏光領域および左目用偏光領域を有し、前記右目用偏光領域および前記左目用偏光領域に前記右目用画像光および前記左目用画像光がそれぞれ入射したときに、入射した前記右目用画像光および前記左目用画像光を、偏光軸が互いに直交した直線偏光、または、偏光軸の回転方向が互いに逆方向である円偏光として出射する位相差板と
を有する立体画像表示装置の製造方法であって、
前記画像表示部の出射側の面および前記位相差板の前記入射側の面の少なくとも一方であって、前記画像表示部の前記右目用画像生成領域および前記左目用画像生成領域と前記位相差板の前記右目用偏光領域および前記左目用偏光領域とが重なる領域に、硬化性の樹脂を含む接着シートを貼り付ける貼付工程と、
前記画像表示部の出射側の面と前記位相差板の前記入射側の面とを向かい合わせて重ねる積層工程と、
前記画像表示部および前記位相差板の周辺部に樹脂を塗布する周辺塗布工程と、
前記周辺塗布工程及び前記積層工程の後に、前記周辺部に塗布した樹脂を硬化させることにより、前記周辺部を接着する周辺接着工程と、
前記周辺接着工程の後に、前記画像表示部と前記位相差板との間の樹脂を硬化することにより、前記画像表示部と前記位相差板とを接着する全面接着工程と
を備える製造方法。
【請求項8】
前記周辺接着工程と前記全面接着工程との間に、前記画像表示部および前記位相差板をラミネートするラミネート工程をさらに備える請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記積層工程を真空炉内で実行することにより、前記接着シートが含む前記樹脂を脱気する請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
右目用画像光を生成する右目用画像生成領域および左目用画像光を生成する左目用画像生成領域を含む画像生成部を有し、前記右目用画像光および前記左目用画像光を、偏光軸が互いに平行な直線偏光として出射する画像表示部と、
前記画像表示部の出射側に配され、右目用偏光領域および左目用偏光領域を有し、前記右目用偏光領域および前記左目用偏光領域に前記右目用画像光および前記左目用画像光がそれぞれ入射したときに、入射した前記右目用画像光および前記左目用画像光を、偏光軸が互いに直交した直線偏光、または、偏光軸の回転方向が互いに逆方向である円偏光として出射する位相差板と
を有する立体画像表示装置の製造方法であって、
前記画像表示部の出射側の面および前記位相差板の前記入射側の面の少なくとも一方であって、前記画像表示部の前記右目用画像生成領域および前記左目用画像生成領域と前記位相差板の前記右目用偏光領域および前記左目用偏光領域とが重なる領域に、樹脂を塗布する全面塗布工程と、
前記全面塗布工程の後に、前記画像表示部の出射側の面と前記位相差板の前記入射側の面とを向かい合わせて重ねる積層工程と、
前記画像表示部および前記位相差板の周辺部に樹脂を塗布する周辺塗布工程と、
前記積層工程及び前記周辺塗布工程の後に、前記周辺部に塗布した樹脂を硬化させることにより、前記周辺部を接着する周辺接着工程と、
前記周辺接着工程の後に、前記画像表示部と前記位相差板との間の樹脂を硬化することにより、前記画像表示部と前記位相差板とを接着する全面接着工程と
を備える製造方法。
【請求項11】
前記周辺接着工程と前記全面接着工程との間に、前記画像表示部および前記位相差板をラミネートするラミネート工程をさらに備える請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記積層工程を真空炉内で実行することにより、前記画像表示部の前記右目用画像生成領域および前記左目用画像生成領域と前記位相差板の前記右目用偏光領域および前記左目用偏光領域とが重なる領域に塗布された前記樹脂を脱気する請求項10に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−175551(P2009−175551A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15516(P2008−15516)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】