説明

立体画像表示装置

【課題】解像度が高く画像品質の良い立体画像を表示する立体画像表示装置を提供する。
【解決手段】立体画像表示装置101は、レンチキュラレンズ1と、透過型の液晶パネル2と、バックライト部7と、液晶パネル2と平行に配設された指向性緩和部31とを含む。ここで、液晶パネル2は、左右方向(Y方向)にのみ視差を有する立体画像を表示する。バックライト部7は、立体画像を観察者に投影するために、指向性を有する光線を液晶パネル2に照射する。このとき、液晶パネル2を透過した光線が指向性緩和部31を通過することによって、視差の方向である左右方向(Y方向)と異なる上下方向(X方向)の光線の指向性が緩和される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特殊な眼鏡を使用することなく立体画像(静止画像および動画像)を観察可能な立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像表示分野に於いては、様々な映像の提供の方法が考えられている。たとえば、立体的に映像(動画像)を知覚させる立体画像表示装置が実用化されつつある。
【0003】
立体画像表示装置は、人がその映像を見たときに立体的に知覚することができる映像を表示する。人間が物を見たときに立体的に知覚する要素としては、輻輳、両眼視差、運動視差、調節があると言われており、立体画像表示装置は、これらの要素を利用している。
【0004】
輻輳とは、物を見るときに左右の眼球が内向きに向く運動のことである。眼に輻輳角を与える筋肉の緊張を脳が認識することで、人間は立体感を得る。両眼視差とは、注視点を観察しているときの両眼に投影される網膜上像のズレ(いわゆる視差)のことである。人間は、この両眼視差を立体感として知覚する。運動視差とは、物を見る視点を変えたときに視点が移動するにつれて物の見え方が変化することである。人間は、この運動視差を立体感として知覚する。調節とは、見ている物の距離に応じて水晶体の厚みが変化することである。水晶体の厚みを変化させる筋肉の緊張を脳が認識することで、人間は立体感を得る。
【0005】
これらの立体視を促す知覚作用を利用した従来の立体映像装置は、(i)2眼式、(ii)多眼式、(iii)体積表示式、(iv)空間像再生式の4種類に大別できる。これらの方式の特徴を以下に簡単に述べる。
【0006】
(i)2眼式とは、左眼で見たときの映像と右眼で見たときの映像を用意して、観察者の左眼には左眼用映像を提示し、右眼には右眼用映像を提示する方法である。2眼式は、主に輻輳と両眼視差とを用いて立体感を与える。2種の映像を両眼に独立提示する方法にはいくつかある。
【0007】
よく知られるのが、左右像を分離するためのメガネを用意するものである。具体的には、左眼用映像を赤、右眼用映像を青で表示し、青/赤のメガネを通して見るアナグリフ式のものがある。あるいは、左眼用映像と右眼用映像とを時間的に交互に表示し、左右映像を時分割シャッタを備えるメガネを通して観察者に独立提示する方法がある。最近では、偏光方向を変えて左眼用映像と右眼用映像とを表示し、左右映像を分離する偏光フィルタを備えるメガネを用いて左右映像を観察者に独立提示する方法がある。この方法では、時分割シャッタを用いる方法に比べ、メガネを軽量にできるので、観察者への負担が少なくてすむ。
【0008】
独立提示する方法には、メガネを使用しないものもある。メガネを使用しない方法としては、表示画像をパララックスバリアやレンチキュラレンズを利用して左右像に分離する方式がある。
【0009】
(ii)多眼式とは、視点を2眼式の2点以外にも準備するものである。すなわち、多眼式では、複数の視点からの左眼用映像および右眼用映像を、パララックスバリアやレンチキュラレンズを利用して、観察方向に対して独立提示してやる方法である。多眼式では、輻輳および両眼視差に加えて、観察位置の移動に伴い、視点の数だけ左右画像が切替わって観察者に投影されるので、観察者に運動視差による立体感を与えることができる。
【0010】
(iii)体積表示式とは、たとえば、奥行き方向に複数の表示面を用意する、あるいは表示面を回転させる等で、奥行きに応じた位置に像を表示するものである。体積表示式では、輻輳および両眼視差に加えて、調節による立体感を作りだすことが可能となる。
【0011】
(iv)空間像再生式は、被写体の光線そのものを再生する方式である。空間像再生式は、実際に物体を見るのと同じように、観察者が輻輳、両眼視差、運動視差、調節のいずれの効果も得られるという点で優れた方式である。この方式には、光線再生法やホログラフィがある。
【0012】
ここで、光線再生法による立体映像表示についての原理を、図12および図13を用いて簡単に説明する。
【0013】
図12は、光線再生法を用いる立体画像表示装置の光学系を横から見た図である。
図13は、光線再生法を用いる立体画像表示装置の光学系の斜視図である。立体画像表示装置は、図12および図13に示すように、表示パネル112とレンズアレイ113とを備える。表示パネル112は、複数の画素(図14の参照符号112a)を有する。表示パネル112としては、たとえば、液晶ディスプレイが利用される。レンズアレイ113は、複数のレンズを一平面内に配置したものである。ここでは、図13に示すように、レンズアレイ113として、マイクロレンズ113aが2次元的に配置されたマイクロレンズアレイを用いる例を説明する。
【0014】
立体画像表示装置は、表示パネル112上に、複数の画素にて生成された要素画像114を表示する。レンズアレイ113を通して得られる表示パネル112の画像の光線は、図のようになり、観察者は、表示パネル112に表示された要素画像114をレンズアレイ113を通して観察すると、あたかも再生像111が存在するかのように感じる。逆に言えば、レンズアレイ113を通して要素画像114を観察した観察者があたかも再生像111が存在するかのように感じるように、立体画像表示装置は、要素画像114を表示パネル112に表示する。このため、観察者に対して、輻輳、両眼視差、調節の何れもが、自然に物を見ている状態と同等に与えられる。
【0015】
また、図13に示すように、光線再生法によって再生された像の各点はレンズを通して各方向に光線を放っている。なお、図13には、再生像111の点Aに対応する光線を示している。このため、観察方向を変えた場合には、観察者は、その方向から見た画像を観察する。すなわち、観察者は、運動視差を感じる。ここで説明している例では、立体画像表示装置は、レンズアレイ113としてマイクロレンズアレイを用いているので、観察者に、左右方向だけでなく上下左右についての運動視差も与えることができる。
【0016】
ここで、光線再生法で立体像を見ることのできる範囲(視域)について図14および図15を参照して説明する。
【0017】
図14は、1つのレンズを通る光の視域角を示す図である。図14に示すように、レンズアレイ113を構成する1つのマイクロレンズ113aに対応して、要素画像を表示する要素画像領域115が設定される。要素画像領域115の画像は、視域角116内の領域で観察できる。
【0018】
図15は、視域を示す図である。レンズアレイ113の全てのマイクロレンズ113aを通して要素画像が観察できる領域が、視域117となる。
【0019】
ところで、立体画像表示装置においては、観察者が立体像を観察できる領域(視域)が広いことが好ましい。しかしながら、光線再生法では、立体像の解像度と視域の両立が難しい。
【0020】
光線再生法は、レンズアレイを通して立体像を表示する方法であり、観察者は一つのレンズを通して1〜2画素の画像を観察する。そのため、立体像の解像度はレンズアレイの解像度と同等になる。たとえば、表示パネルの解像度が200×200画素であり、要素画像領域が10×10画素とすると、レンズアレイのレンズ数は20×20個となる。このレンズ数が立体像の解像度と同等となる。なお、要素画像領域の画素数は、表示できる視差の数(運動視差の数)を表している。上の例の場合、運動視差の数は左右に10視差及び上下に10視差となる。
【0021】
視域を広げるために各レンズの視域角を増やそうとすると、視差数すなわち要素画像画素数を多く取るとともにレンズ面積を大きくする必要がある。レンズ面積の増大はレンズ数の低下を招くので、立体像の解像度が低下する。
【0022】
これを解決する方法には、表示パネルの画素数を上げればよいが、それにも限度がある。たとえば2次元ディスプレイでは普通になっているSVGA(800×600画素)レベルの立体像を得ようとすると、レンズアレイのレンズ数が800×600個必要となり、要素画像を10×10画素としても、表示パネルとして8000×6000画素が必要となる。しかしながら、現在ではこのような表示ができる直視型ディスプレイは入手できる状況にない。また、このようなディスプレイを開発することも、技術的・価格的課題が多く現実的でない。
【0023】
解像度の高い立体画像を表示する方法の1つとして、右眼用の画像と左眼用の画像を時分割で表示する方法がある。たとえば、特開2005−77472号公報(特許文献1)では、液晶表示パネルの観察者側と反対側に、第1および第2の照明光を交互に出射する面光源が配置される。第1の照明光の強度のピークは、液晶表示パネルの法線に対して表示観察者の左右の眼のうちの一方の眼の方向に予め定めた角度だけ傾いた方向に存在する。第2の照明光の強度のピークは、液晶表示パネルの法線に対して観察者の他方の眼の方向に予め定めた角度だけ傾いた方向に存在する。そして、制御手段により、液晶表示パネルの複数の画素に左眼用画像データと右眼用画像データとを交互に書込む。このとき、第1と第2の照明光のうち、液晶表示パネルの複数の画素に書込まれた画像データに対応する指向性をもった照明光を、前記画像データの書込みに同期させて面光源から出射させる。
【0024】
また、解像度の高い立体画像を表示する他の方法として、垂直方向に視差が無く、水平方向に視差を有する1次元光線再生法がある。たとえば、特許第3966830号公報(特許文献2)は、1次元光線再生法において歪の少ない正しい透視投影画像を得ることを目的とする。この文献に記載の立体画像表示装置は、表示面内に複数の画素が平面的にマトリクス状に配置された表示装置と、複数のアパーチャまたは複数のレンズを有し画素からの光線方向を制御する視差バリアとを備える。ここで、表示装置の表示面は、視差バリアのアパーチャまたはレンズごとに対応した要素画像に分割される。視差バリアの水平方向ピッチは画素の水平方向ピッチの整数倍である。そして、垂直方向がある一定視距離の透視投影であり、水平方向が平行投影である画像が、画素の列ごとに分割配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2005−077472号公報
【特許文献2】特許第3966830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
ところで、前述の特開2005−77472号公報(特許文献1)のように右眼用の照明光と左眼用の照明光を時分割で生成することによって立体像を表示する方法の場合、生成された光線の拡散について注意する必要がある。
【0027】
具体的に、右眼用の画像を表示中には観察者の右眼にのみ照明光を与えて左眼には画像が投影されないようにする。もし、光源から観察者の右眼に至るまでの間に表示パネルなどの光学部材によって照明光が拡散されると、所望の配光範囲である観察者の右眼以外にも配光範囲が広がる。このとき、光学部材による拡散が強いと配光範囲がより広がってしまうので、観察者の左眼にも光線が投影されるようになる。すなわち、右眼用の画像が左眼に投影されるクロストークが発生する。この場合、クロストークの量が小さいときは、立体像が2重に見える等の画質の低下が認められるようになり、クロストークの量が大きいときは、観察者は視差画像を得ることが難しくなる。
【0028】
前述の特許第3966830号公報(特許文献2)の場合も同様であり、視差を有する水平方向へ照明光が拡散すると、立体像の品質が低下したり、あるいは立体視が難しくなる。
【0029】
しかし、光源から出射する光線の指向性を高めれば高めるほど、立体画像の画質が改善するとは限らない。照明光の拡散を抑制しすぎると、表示装置及びバックライト等の光源による画面内の輝度ムラが認められるようになる。この輝度ムラの影響で画像品質が低下したり、立体像が観察し難くなったりする。
【0030】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、解像度が高く画像品質の良い立体画像を表示する立体画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
この発明は要約すれば立体画像表示装置であって、表示パネルと、バックライト用の光照射部と、指向性緩和部とを備える。表示パネルは、第1の方向にのみ視差を有する立体画像を表示する。光照射部は、指向性を有する光線を表示パネルに照射する。指向性緩和部は、表示パネルに対して光照射部側または光照射部と反対側の観察者側に設けられ、第1の方向と異なる第2の方向の前記光線の指向性を緩和させる。
【0032】
好ましくは、第2の方向は、表示パネルの表面に沿った方向のうちで、第1の方向と垂直な方向である。
【0033】
また、好ましくは、第1の方向は、観察者に対して左右方向である。
また、好ましくは、光照射部は、観察者の右眼および左眼に交互に光線が到達するように、光線の配光を切替える。この場合、表示パネルは、観察者の右眼用または左眼用の画像を光線の配光の切替に同期して表示する。
【0034】
さらに好ましくは、光照射部によって観察者の左右の一方の眼に光線が入射するように配光されたとき、他方の眼に入射する光線の強度は、一方の眼に入射する光線の強度の5%以下である。
【0035】
また、好ましくは、表示パネルは、光線再生法に従った立体画像を表示する。この場合、立体画像表示装置は、さらに、表示パネルの観察者側の表面に設けられ、表示パネルを透過した光線を観察者の右眼または左眼に導く開口部を有する導光部材を備える。
【0036】
さらに好ましくは、上記の導光部材は、第1の方向に周期構造を有するレンチキュラレンズである。
【0037】
また、好ましくは、光照射部は、複数の光源素子を含む光源部と、表示パネルと光源部との間に設けられ、複数の光源素子から出射された光を表示パネルの方向に屈折させる光学部材とを含む。
【0038】
さらに好ましくは、上記の光学部材は、第1の方向に周期構造を有するレンチキュラレンズである。
【0039】
好ましい実施の一形態において、指向性緩和部は、観察者と上記の導光部材との間に設けられる。
【0040】
好ましい実施の他の形態において、指向性緩和部は、表示パネルと上記の光学部材との間に設けられる。
【0041】
好ましい実施のさらに他の形態において、指向性緩和部は、上記の光学部材と光源部との間に設けられる。
【0042】
好ましい実施のさらに他の形態において、指向性緩和部は、各光源素子に近接して設けられ、第1の方向の成分を有する光を反射する反射板を複数含む。
【発明の効果】
【0043】
この発明によれば、1次元光線再生法などのように、所定の方向にのみ視差を有する立体画像を表示することによって立体画像の解像度を向上させる。さらに、指向性緩和部を用いて、視差の方向と異なる方向へのバックライト用光線の指向性を緩和することによって、画像品質を劣化させることなく輝度ムラの影響を抑制する。この結果、解像度が高く画像品質の良い立体画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の実施の形態1による立体画像表示装置101の構成を示す図である。
【図2】図1のバックライト部7の一部の構成を示す図である。
【図3】レンチキュラレンズ13を構成する各シリンドリカルレンズ13aの大きさと視域角との関係を説明するための図である。
【図4】要素画像領域と視域角との関係を説明するための図である。
【図5】図1の指向性緩和部31の構成の一例を模式的に示す図である。
【図6】観察者の左右方向での光の強度分布を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2による立体画像表示装置102の構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態3による立体画像表示装置103の構成を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態4による立体画像表示装置104の構成を示す図である。
【図10】図9の光源部5aの一部の構成を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態5による立体画像表示装置105の構成を示す図である。
【図12】光線再生法を用いる立体画像表示装置の光学系を横から見た図である。
【図13】光線再生法を用いる立体画像表示装置の光学系の斜視図である。
【図14】1つのレンズを通る光の視域角を示す図である。
【図15】視域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0046】
[実施の形態1]
(立体画像表示装置の構成)
図1は、この発明の実施の形態1による立体画像表示装置101の構成を示す図である。
【0047】
図1を参照して、立体画像表示装置101は、1次元光線再生式の立体画像表示装置である。さらに、立体画像表示装置101は、解像度の高い立体画像を表示するために、右眼用の画像と左眼用の画像を時分割で表示することが可能である。図1に示すように、立体画像表示装置101は、立体表示部3と、画像制御部4と、バックライト部7と、光源制御部8と、カメラ9と、瞳位置検出部26と、指向性緩和部31とを含む。
【0048】
ここで、図1において、立体表示部3はXY平面に沿って配設されるものとし、立体表示部3の厚み方向をZ方向とする。立体表示部3の観察者にとって、左右方向(水平方向)がY方向であり、上下方向(垂直方向)がX方向である。その他の図の座標軸の設定も同じである。
【0049】
立体表示部3は、光線再生式の立体像を表示する。立体表示部3は、立体視用レンズアレイ1と、表示パネル2とを含む。実施の形態1の場合、立体視用レンズアレイ1は、左右方向(Y方向)に周期構造を有するレンチキュラレンズである。レンチキュラレンズの場合、運動視差は左右方向(Y方向)に発生するが上下方向(X方向)には発生しない。しかし、上下の運動視差はあまり求められないので立体視に関して大きな影響はないと考えられる。
【0050】
表示パネル2は、画像を表示するための透過型パネルである。実施の形態1の場合、表示パネル2に表示される画像は、左右方向(Y方向)にのみ視差を有する立体画像である。表示パネル2は、複数の画素を含み、バックライト部7からのバックライト光を画素単位で透過制御することによって画像を表示する。表示パネル2としては、たとえば液晶パネルを用いることができる。
【0051】
画像制御部4は、表示パネル2に画像を表示すべく表示パネル2の表示画像を制御する。より具体的には、画像制御部4は、表示パネル2の各画素の動作、詳しくは、各画素による光の透過状態を決定する。
【0052】
バックライト部7は、光照射部として、表示パネル2にバックライト用の照射光を照射する。バックライト部7は、光源部5と、配光用レンズアレイ6とを含み、観察者から見て、表示パネル2の背面側に配置される。以下、バックライト部7の具体的な構成を、図2を参照して説明する。
【0053】
図2は、図1のバックライト部7の一部の構成を示す図である。図2(A)は図1のバックライト部7の一部の側面図であり、図2(B)は斜視図である。
【0054】
図2(A)および(B)に示すように、バックライト部7を構成する光源部5は、光源素子としての線状光源20を複数含む。各線状光源20は、半導体光源であるLED(Light-Emitting Diode)21と、LED21の光を受ける導光路22とが組み合わせれて構成される。また、図1の配光用レンズアレイ6は、Y方向に周期構造を有するレンチキュラレンズ23である。各線状光源20は、レンチキュラレンズ23の主軸の方向(X方向)と平行に配設される。
【0055】
ここで、配光を実現する仕組みについて説明する。以下では、レンチキュラレンズ23を構成する一つのレンズ部分であるシリンドリカルレンズ23aに対応する複数の線状光源20を1ブロックとよぶ。
【0056】
シリンドリカルレンズ23aの光源部5側の面(入射面)に入射した光は、光の入射面への入射角および入射位置ならびにレンズ形状に応じた出射角で、レンズ23aの観察者側の面(出射面)から出射する。したがって、1ブロック中で各線状光源20を発し、対応する各レンズ23aに入射した光は、各線状光源20とレンズ23aとの位置関係ならびにレンズ23aの形状で決まる角度でレンズ23aから出射する。別の観点から言うと、1ブロックに含まれる各線状光源20は、各線状光源20を出射した光がレンズの通過後に異なる角度で進行するように配置される。
【0057】
したがって、バックライト部7は、各ブロックごとに点灯する線状光源20の位置により、決められた方向に光を配光できる。たとえば、図2中の1ブロック中の一番右端の線状光源20aを点灯すると、レンズ23aの光軸(Z方向)に対してθ1の角度で光が出射される。θ1の値は、レンズ23aと線状光源20aの位置関係で決まる。また、1ブロック中の右端から7番目の線状光源20bを点灯すると、レンズ23aの光軸に対してθ2の角度で光が出射される。
【0058】
バックライト部7による配光制御は以上のように行なわれるため、光源素子としての線状光源20は、レンチキュラレンズ23の焦点距離の位置に配設されることが好ましい。このとき、光源部5の各ブロックから出射されてレンチキュラレンズ23を透過する光線は、略平行となるので、レンチキュラレンズ23からは、非常に指向性の強い光が出射される。よって、実施の形態1に係る立体画像表示装置101は、狭い範囲、たとえば、観測者の右眼または左眼の位置に配光できる。
【0059】
再び図1を参照して、光源制御部8は、所望の出射角度に応じたバックライト部7の光源素子(図2の線状光源20)を点灯制御する。出射角度と、点灯する光源素子との関係は、バックライト部7の設計により予め定まっており、光源制御部8は、この関係に基づき、点灯する光源素子を決定する。光源制御部8は、各光源素子から出射される光線が配光用レンズアレイ6を通過し所定の方向へ導光されるべく各光源素子の点灯を制御する。
【0060】
カメラ9は、観察者を含む領域の画像を撮影する。カメラ9は、配光すべき観察者の瞳位置を検出するためのセンサとして用いられる。
【0061】
瞳位置検出部26は、カメラ9による撮像画像を画像処理することにより、観察者の瞳位置を検出する。たとえば、瞳位置検出部26は、画像中の明暗パターンなどに基づいて、観察者の瞳位置を検出する。
【0062】
前述の光源制御部8は、瞳位置検出部26からの情報に基づいて、観察者の瞳付近の位置に向かって配光するように、バックライト部7の光源部5の各ブロックからの光線出力を制御する。また、画像制御部4は、瞳位置検出部26からの情報に基づいて、要素画像の表示位置を適宜制御する。
【0063】
指向性緩和部31は、観察者と立体視用レンズアレイ1との間に表示パネル2と平行に配設される。指向性緩和部31は、上下方向(X方向)の指向性が緩和するように光線を散乱させる板状の光学部材である。立体画像の視差の方向は左右方向であるので、上下方向に光線の指向性が緩和しても立体画像の画質には影響がない。この結果、指向性緩和部31は、立体画像の画質に影響を与えることなくバックライト部7からの光線の指向性を緩和させることにより、輝度ムラを低減させることができる。指向性緩和部31の具体的な構成例については、図5を参照して後述する。
【0064】
(立体画像表示装置における視域の拡大)
実施の形態1に係る立体画像表示装置101は、光線再生式の課題である解像度と視域の両立を克服し、従来に比べて立体像を観察できる領域(視域)が広く、かつ、高い解像度を持つ立体像を生成できる。このことを以下に説明する。
【0065】
実施の形態1では、立体像の解像度の確保のためにレンズ数の多いレンチキュラレンズ13を用いる。この場合に、レンズ数を増やすことによって低下する視域は、表示パネル2で表示する画像を制御することによって補う方法をとる。この方法について図3および図4を用いて説明する。
【0066】
図3は、レンチキュラレンズ13を構成する各シリンドリカルレンズ13aの大きさと視域角との関係を説明するための図である。図3を参照して、レンチキュラレンズ13を構成する1つのシリンドリカルレンズ13aの大きさに対応して、要素画像を表示する要素画像領域15aが決まる。図3に示す視域角16aの場合には、観察者位置aでは表示画像を観察可能であるが、観察者位置bや観察者位置cでは表示画像を観察できない。
【0067】
そこで、観察者位置bや観察者位置cでも表示画像を観察可能にするため、各シリンドリカルレンズ13aの大きさを拡大することによって、要素画像領域を図3の領域15にまで拡げる方法が考えられる。しかしながら、既に説明したように、個々のレンズ13aを大きくするとレンズの総数が減少するので、立体画像の解像度が低下する。この課題に対して、実施の形態1の立体画像表示装置101は、各シリンドリカルレンズ13aの大きさをそのままにして、図4に示すように観察者の位置に応じて要素画像領域を変更する。
【0068】
図4は、要素画像領域と視域角との関係を説明するための図である。図4を参照して、観察者位置bおよびcにおいても表示画像を観察者が観察できるようにするためには、要素画像領域を図4に示すように領域15の範囲内で要素画像領域を変更すればよい。すなわち、観察者が観察者位置aにいるときには要素画像を領域Raに表示し、観察者が観察者位置bにいるときには要素画像を領域Rbに表示し、観察者が観察者位置cにいるときには要素画像を領域Rcに表示する。このように、要素画像を表示する領域を固定せずに観察者の位置に応じて変更することにより、視域を拡大することができる。
【0069】
具体的に、立体画像表示装置101では、画像制御部4は、瞳位置検出部26の検出結果に基づいて、表示パネル2に表示する要素画像を制御する。また、光源制御部8は、要素画像が観察者の瞳を含む領域に投影されるように、バックライト部7の配光を制御する。
【0070】
(立体画像表示装置における立体視の仕組み)
図3、図4は、観察位置において、視域角が観察者の両眼をカバーしている場合を示しているが、立体像の解像度をさらに向上させるために、観察者の片眼分にまで視域角を絞ることが有効である。
【0071】
この場合は、観察者の位置に応じて要素画像の表示領域を変更するだけでは立体視できず、左右眼用の画像分離を実現する仕組み、すなわち、一方の眼用の画像を表示中には他方の眼にその画像が投影されないような仕組みが必要である。なぜならば、光線再生法では、視域角が観察者の両眼をカバーしているならば、右眼/左眼で見ている光線が異なることで両眼視差を得ることができるが、視域角が観察者の片眼しかカバーしていない場合、表示画像はどちらか一方の眼に投影させるための画像であり、これを他方の眼に投影しても両眼視差を得ることができないためである。
【0072】
光線再生法の場合、左右眼用の画像分離は、2眼式のようなパララックスバリアやレンチキュラレンズで行なうことは難しく、時分割で左右眼用の画像分離を行なう方法が好適である。立体画像表示装置101においても、この方法を採用する。
【0073】
以下、図1を参照して、立体画像表示装置101による立体視可能な仕組みについて、より詳しく説明する。光線再生式のパネルである立体表示部3は、立体像の解像度を向上させるために、視域角が観察者の片眼分にまで絞られるように設計されている。なお、実施の形態1の場合、表示パネル2に表示される画像は、左右方向(水平方向)にのみ視差を有する立体画像である。
【0074】
具体的に、立体画像表示装置101は、片眼用の画像を表示中には他方の眼にその画像が投影されないように、時分割で左右眼用の画像分離を行なう。すなわち、画像制御部4は、ある期間は右眼用画像を表示し、次の期間は左眼用画像を表示するというように、交互に右眼用画像と左眼用画像とを表示パネル2に表示する。また、画像制御部4は、瞳位置検出部26からの情報に基づいて、観察者の瞳の位置に応じて要素画像の表示領域を変更する。
【0075】
また、光源制御部8は、バックライト部7を制御し、右眼用画像表示期間には、瞳位置検出部26からの情報に基づいて、観察者の右眼にバックライトを配光する。左眼用画像表示期間には、瞳位置検出部26からの情報に基づいて、観察者の左眼にバックライトを配光する。すなわち、光源制御部8は、左眼用画像および右眼用画像のそれぞれに対し、左眼および右眼位置に追従させた配光制御を行なう。
【0076】
このように、立体画像表示装置101によれば、左右画像の時分割表示およびバックライトの配光制御を連携的に実行することで、片眼用の画像を表示中に、他方の眼にその画像が投影されないようにできる。これら一連の連携的な制御によって、広い視域にわたって、観察者に光線再生式の高解像度の立体表示像を知覚させることができる。つまり、立体画像表示装置における立体像の解像度と視域拡大の両立を果たすことができる。
【0077】
(指向性緩和部の構成および効果)
図5は、図1の指向性緩和部31の構成の一例を模式的に示す図である。図5(A)は指向性緩和部31の斜視図であり、図5(B)はY方向から見た側面図であり、図5(C)はX方向から見た側面図である。
【0078】
図1、図5を参照して、指向性緩和部31は、表示パネル2と平行に(すなわち、XY平面に沿って)配設される板状の透光性部材である。指向性緩和部31は、たとえば、ガラスなどを用いて形成することができる。
【0079】
指向性緩和部31の観察者側(+Z方向側)の表面31aには、断面形状が楔形でY方向に延びる溝が複数本形成されている。すなわち、図5(B)に示すように、Y方向から見た指向性緩和部31の表面31aにはV字形状の複数の溝がX方向に連なっている。一方、図5(C)に示すように、X方向から見た指向性緩和部31の表面31aの形状は一様である。
【0080】
したがって、バックライト部7から出射され表示パネル2を透過した光線33は、指向性緩和部31の表面31aにおいてX方向(上下方向)には広い角度で散乱されるが、Y方向(左右方向)にはほとんど散乱されない。実施の形態1の場合、表示パネル2には左右方向(Y方向)にのみ視差を有する立体画像が表示されるが、Y方向の光線の指向性は維持されるので、観察者は左右の眼に投影された画像の視差によって高品質の立体画像を観察することができる。
【0081】
一方、指向性緩和部31を通過することによって光線の指向性がX方向では緩和されるので、バックライト部7の線状光源が有するX方向の輝度ムラは均一化される。これにより、表示画像の画像品質を一層向上させることができる。
【0082】
なお、図5に示した指向性緩和部31の形状は一例である。視差の方向である左右方向(Y方向)と異なる方向、好ましくは上下方向(X方向)の光線の指向性が緩和するように光線を散乱させる光学部材であればどのような形状であってもよい。
【0083】
次に、左右方向の光の拡散と立体視との関係についての実験結果を説明する。実験で用いた立体画像表示装置は、図1で説明したものと同じである。ただし、図1の指向性緩和部31に代えて、拡散が大きいものと小さいものとの2種類の等方性の拡散部材を配設した。この場合、等方性の拡散部材によって光線は上下方向および左右方向に等しく拡散される。
【0084】
実験では、立体表示部3から500mmの距離に観察者がいるものとして、その右眼と左眼とにバックライト部7から指向性光線を配光した。そして、この場合の立体表示部3から500mmの距離における、左右方向の光の強度分布を測定した。
【0085】
図6は、観察者の左右方向(水平方向)での光の強度分布を示す図である。図6(A)は拡散が小さい拡散部材を用いたときの光の強度分布の図であり、図6(B)は拡散が大きい拡散部材を用いたときの光の強度分布の図である。図6(A)および(B)では、右眼に配光したときの光強度分布曲線REと左眼に配光したときの光強度分布曲線LEとの両方が示されている。縦軸は最大値を1で規格化した光強度を示す。また、横軸は左右方向(水平方向)の位置を示す。この場合、両眼の中心位置を0とし、それより右眼側の位置が負で表わされ、左眼側の位置が正で表わされる。両眼の間隔は65mmである。
【0086】
図6(A)に示すように、拡散部材の拡散が小さい場合において、左眼用照明を行ったときに右眼に入ってくる光線強度は約5%であることがわかる。この状態で立体表示部3に立体画像を表示して立体視を行うと、像が2重に見えるなど、一方の眼に向けた立体画像が他方の眼にも照射されたために生じるいわゆるクロストーク像がほとんど発生しておらず、良好な立体像が観察された。
【0087】
一方、図6(B)に示すように、拡散部材の拡散が大きい場合において、左眼用照明を行ったときに右眼に入ってくる光線強度は約25%であることがわかる。この状態で立体表示部3に立体画像を表示して立体視を行うと、像が2重に見えるなどのクロストーク像が観察された。
【0088】
以上の実験結果から、バックライト部7によって観察者の左右の一方の眼に光線が入射するように配光されたとき、他方の眼に入射する光線の強度は、一方の眼に入射する光線の強度の5%以下であることが望ましい。
【0089】
[実施の形態2]
指向性緩和部31の配置位置は、実施の形態1と異なる位置であってもよい。
【0090】
図7は、この発明の実施の形態2による立体画像表示装置102の構成を示す図である。図7の立体画像表示装置102は、指向性緩和部31が立体表示部3と配光用レンズアレイ6との間に配設される点で、図1の立体画像表示装置101と異なる。その他の点については、図7の立体画像表示装置102は図1の立体画像表示装置101と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0091】
図7に示すように、指向性緩和部31が立体表示部3と配光用レンズアレイ6との間に配設されても、バックライト部7から照射された光線に対して実施の形態1の場合と同様の指向性の緩和効果が得られる。図7の場合、指向性緩和部31を透過した光線が、立体表示部3を照明することにより、観察者に画像を投影する。
【0092】
特に図7の場合、配光用レンズアレイ6の観察者側(+Z方向)の面に指向性緩和部31に相当する形状が形成できるので、配光用レンズアレイ6と指向性緩和部31とを一体的に製造することができる点にメリットがある。この結果、指向性緩和部31を独立に設ける必要が無くなるので、部材点数の削減、組立て性の向上、部品管理の簡略化、およびコストダウンが期待できる。
【0093】
[実施の形態3]
図8は、この発明の実施の形態3による立体画像表示装置103の構成を示す図である。図8は、指向性緩和部31のさらに他の配置位置の例を示すものである。すなわち、図8の立体画像表示装置103は、指向性緩和部31が配光用レンズアレイ6と光源部5との間に配設される点で、図1、図7の立体画像表示装置101,102と異なる。その他の点については、図8の立体画像表示装置103は図1、図7の立体画像表示装置101,102と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0094】
図8の位置に指向性緩和部31が配置されても、実施の形態1の場合と同様の指向性の緩和効果が得られる。この場合、光源部5から出射された光線は、指向性緩和部31によってX方向に拡散された後、配光用レンズアレイ6を通過することによってY方向に指向性が与えられる。そして、このY方向に指向性を有する光線によって立体表示部3が照明されることによって、観察者に画像が投影される。
【0095】
立体表示部3と配光用レンズアレイ6との間のスペースが小さいなどの理由で、図7の位置に指向性緩和部31を配設することができない場合には、図8の位置に配置してもよい。
【0096】
[実施の形態4]
図9は、この発明の実施の形態4による立体画像表示装置104の構成を示す図である。図9の立体画像表示装置104はバックライト部7に含まれる光源部5aの構成が、図10を参照して後述するように実施の形態1〜3の光源部5と異なる。この結果、立体画像表示装置104の場合には、光源部5aを構成する半導体光源であるLED21から出射される光線のY方向の拡散が予め制限される。この方法によっても実施の形態1〜3の指向性緩和部31と同様の効果が得られる。その他の点については、図9の立体画像表示装置104は図1の立体画像表示装置101と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0097】
図10は、図9の光源部5aの一部の構成を示す図である。図10を参照して、光源部5aはX方向と平行に配設される複数の線状光源20を含む。そして、各線状光源20は、半導体光源であるLED21と、LED21の光を受ける導光路22と、導光路22の出射方向を除く面を覆うミラー部32とを含む。ミラー部32は、導光路22の出射方向以外の方向(たとえば、+Y方向、−Y方向、および−Z方向)に進行する光線を略全反射する。
【0098】
ミラー部32を設けることによって、導光路22を通過した光線は、視差方向である左右方向(Y方向)には指向性を有し、概略的に図10(B)の点線で示した方向に出射される。出射された光線は、Y方向の指向性を維持した状態で配光用レンズアレイ6によって立体表示部3の方向に屈折される。一方、導光路22を通過した光線は、X方向には指向性をほとんど持たない。このため、線状光源20から出射される光線はX方向には均一性のあるムラの少ない光線である。この結果、観察者に高品質の立体画像が投影される。
【0099】
このように、図10のミラー部32は、LED21から出射された光線のうちY方向成分を有する光を反射する反射板として機能し、実施の形態1〜3の指向性緩和部31に相当する。なお、図10の立体画像表示装置104の場合も、実施の形態2の場合と同様に、指向性緩和部31を独立に設ける必要がなくなるので、部材点数の削減、組立て性の向上、部品管理の簡略化、およびコストダウンが期待できる。
【0100】
[実施の形態5]
実施の形態1〜4では、立体像再生の方式を光線再生法として説明したが、それ以外の方式の場合にも指向性緩和部31を用いることができる。ここでは、2眼式の立体画像表示装置105について説明する。
【0101】
2眼式の立体視の原理は、観察者の左右の眼に対して、それぞれ、左眼用および右眼用の画像を表示する、というものである。実施の形態5に係る立体画像表示装置105は、右眼用画像と左眼用画像とを時分割で表示し、それに同期して右眼と左眼にバックライトを配光制御する。
【0102】
図11は、この発明の実施の形態5による立体画像表示装置105の構成を示す図である。図11の立体画像表示装置105は、図1の実施の形態1の立体画像表示装置105において、立体視用レンズアレイ1を省いたものである。この構成による2眼式の立体画像表示装置105によれば、左右画像を時分割で表示パネル2に表示し、瞳位置検出部26で検出した観察者の瞳の位置に基づいて、バックライト部7により左右の眼に画像と同期して配光することで、左右画像を分離できる。したがって、この立体画像表示装置105によれば、2眼式の立体表示が実現できる。
【0103】
従来は、パララックスバリアやレンチキュラレンズによって左右画像を空間的に分離していた。この方法であると、右目用および左目用画像を同時に表示するために、各画像の画素数は表示パネルの画素数の半分になり、したがって立体画像の表示解像度も表示パネルの表示解像度の半分に低下する。
【0104】
また、解像度を維持するための他の従来の方法として、左右画像を時分割で表示し、左右像の表示と同期した左右眼用シャッタ付きのメガネを観察者が使用することで左右像分離するものがあった。しかし、この方法は、観察者にメガネをかけさせる必要があり、また、メガネの構造が複雑となりがちで、観察者に負担を強いていた。
【0105】
実施の形態5に係る立体画像表示装置105によれば、右眼用及び左眼用画像は時分割で表示しているため表示パネルの画素数を維持でき、かつ、観察者はメガネ等を装着する必要がない。したがって、観察者は、メガネ無しで高解像度の立体画像を観察することができる。このとき、指向性緩和部31の効果によって、観察者は従来よりも高解像度かつ高品質の立体画像を観察することができる。
【0106】
なお、指向性緩和部31の配設位置は、実施の形態2〜4で説明したような位置に配設することも可能である。
【0107】
[その他の変形例]
上記の各実施の形態において、観察者が立体像を観察する位置が予め指定されている場合には、立体画像表示装置の装置構成を簡略化することができる。この場合、指定位置における観察者の右眼、左眼に配光するようにバックライト部7を設計しておき、表示パネル2にも指定位置における画像を表示しておく。これによって、カメラ9および瞳位置検出部26を省略することができる。
【0108】
また、以上の各実施の形態においては、光源として半導体発光素子であるLEDを用いた例を示した。LEDは、液晶パネルのバックライトとしてよく用いられる冷陰極管(CCFL)に比べて、小型であるので実装しやすい。また、応答速度が速いので時分割の点灯制御に対応できる。さらに、駆動回路が簡易に実現できる。これらのことからLEDを用いるのが好適である。しかしながら、本発明における光源素子をLEDに限定するものではない。
【0109】
また、上記の実施の形態1〜4では、立体表示部3の構成部材として立体視用レンズアレイ1(レンチキュラレンズ)を用いたが、原理的にはスリット(開口)を用いても光線再生法による立体像の表示は可能である。したがって、表示パネル2を透過した光線を観察者の右眼または左眼に導く開口部を有する導光部材であれば、立体視用レンズアレイ1の代わりに用いることができる。立体視用レンズアレイ1は、このような開口部を有する導光部材の好ましい一例として、実施の形態1〜4に記載したものである。
【0110】
また、上記の実施の形態1〜5では、バックライト部7の構成部材として配光用レンズアレイ6(レンチキュラレンズ)を用いたが、必ずしもこれに限るものでない。光源部5から出射された光を表示パネル2の方向に屈折させる光学部材であれば、配光用レンズアレイ6の代わりに用いることができる。配光用レンズアレイ6は、このような光線を屈折させる光学部材の好ましい一例として、実施の形態1〜5に記載したものである。
【0111】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0112】
1 立体視用レンズアレイ、2 表示パネル、3 立体表示部、4 画像制御部、5,5a 光源部、6 配光用レンズアレイ、7 バックライト部、8 光源制御部、9 カメラ、13 レンチキュラレンズ、15,15a 要素画像領域、20 線状光源、21 LED、22 導光路、23 レンチキュラレンズ、26 瞳位置検出部、31 指向性緩和部、32 ミラー部、101〜105 立体画像表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向にのみ視差を有する立体画像を表示する表示パネルと、
指向性を有する光線を前記表示パネルに照射するバックライト用の光照射部と、
前記表示パネルに対して前記光照射部側または前記光照射部と反対側の観察者側に設けられ、前記第1の方向と異なる第2の方向の前記光線の指向性を緩和させる指向性緩和部とを備える、立体画像表示装置。
【請求項2】
前記第2の方向は、前記表示パネルの表面に沿った方向のうちで、前記第1の方向と垂直な方向である、請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
前記第1の方向は、前記観察者に対して左右方向である、請求項1または2に記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
前記光照射部は、前記観察者の右眼および左眼に交互に前記光線が到達するように、前記光線の配光を切替え、
前記表示パネルは、前記観察者の右眼用または左眼用の画像を前記光線の配光の切替に同期して表示する、請求項3に記載の立体画像表示装置。
【請求項5】
前記光照射部によって前記観察者の左右の一方の眼に前記光線が入射するように配光されたとき、他方の眼に入射する前記光線の強度は、前記一方の眼に入射する前記光線の強度の5%以下である、請求項4に記載の立体画像表示装置。
【請求項6】
前記表示パネルは、光線再生法に従った立体画像を表示し、
前記立体画像表示装置は、さらに、前記表示パネルの前記観察者側の表面に設けられ、前記表示パネルを透過した前記光線を前記観察者の右眼または左眼に導く開口部を有する導光部材を備える、請求項4または5に記載の立体画像表示装置。
【請求項7】
前記導光部材は、前記第1の方向に周期構造を有するレンチキュラレンズである、請求項6に記載の立体画像表示装置。
【請求項8】
前記指向性緩和部は、前記観察者と前記導光部材との間に設けられる、請求項6または7に記載の立体画像表示装置。
【請求項9】
前記光照射部は、
複数の光源素子を含む光源部と、
前記表示パネルと前記光源部との間に設けられ、前記複数の光源素子から出射された光を前記表示パネルの方向に屈折させる光学部材とを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項10】
前記光学部材は、前記第1の方向に周期構造を有するレンチキュラレンズである、請求項9に記載の立体画像表示装置。
【請求項11】
前記指向性緩和部は、前記表示パネルと前記光学部材との間に設けられる、請求項9または10に記載の立体画像表示装置。
【請求項12】
前記指向性緩和部は、前記光学部材と前記光源部との間に設けられる、請求項9または10に記載の立体画像表示装置。
【請求項13】
前記指向性緩和部は、各前記光源素子に近接して設けられ、前記第1の方向の成分を有する光を反射する反射板を複数含む、請求項9または10に記載の立体画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−224129(P2010−224129A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70106(P2009−70106)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】