説明

立体異性的に富んだ3−アミノカルボニルビシクロヘプテンピリミジンジアミン化合物およびそれらの使用

本発明は、抗増殖活性を有する3−アミノカルボニル−ビシクロヘプテン−2,4−ピリミジンジアミン化合物のり立体異性体および立体異性体混合物、これらの化合物を含有する組成物、およびこれらの化合物を使用して細胞増殖を阻止し増殖性疾患(例えば、腫瘍形成癌)を治療する方法を提供する。さらに別の局面では、これらの化合物および/または立体異性的に富んだ化合物のプロドラッグを提供する。このようなプロドラッグは、それらのプロドラッグ形状で活性であり得るか、または生理学的条件下もしくは使用条件下にて活性薬剤形状に変換されるまで、不活性であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.関連出願の相互参照)
本願は、35 U.S.C.§ 119(e)に基づいて、出願番号第60/628,199号(これは、2004年11月15日に出願された)から優先権を主張しており、この内容は、本明細書中で参考として援用されている
(2.分野)
本開示は、抗増殖活性を示す4N−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−N2−置換フェニル−2,4−ピリミジンジアミン化合物、これらの化合物のプロドラッグ、これらの化合物および/またはプロドラッグを製造する中間体および合成方法、これらの化合物および/またはプロドラッグを含有する薬学的組成物、およびこれらの化合物および/またはプロドラッグを種々の状況(例えば、増殖性障害(例えば、腫瘍および癌)の治療を含めて)で使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(3.背景)
癌は、異常細胞の制御できない成長および転移に特徴がある群の多様な疾患である。一般に、全ての種類の癌には、細胞の成長および分裂の制御における何らかの異常性が関与している。細胞分裂および/または細胞伝達を調節する経路は、細胞の成長を抑制し制限する際のこれらの調節機構の効果が失われるか迂回されるように、変化する。継続した回数の突然変異および自然淘汰によって、異常細胞の群(これは、一般に、単一の突然変異細胞に起源する)は、追加突然変異を蓄積し、それは、他の細胞よりも選択的に成長上で有利となり、それゆえ、細胞塊において優勢な細胞型に進展する。この突然変異および自然淘汰のプロセスは、多くの種類の癌細胞により示される遺伝的な不安定性、体細胞の突然変異または生殖系列に由来の遺伝のいずれかによって獲得される不安定性により、高められる。癌細胞の変異性が高められると、それらが悪性細胞の形成に向かって進展する可能性が高まる。癌細胞がさらに発生するにつれて、一部は、局所的に侵襲性となり、次いで、最初の癌細胞組織以外の組織をコロナイズするように転移する。腫瘍細胞の異質性と共に、この性質によって、癌は、治療し根絶するのが特に困難な病気となっている。
【0003】
伝統的な癌の治療は、癌細胞の高い増殖能力およびそれらのDNA損傷に対する高い感受性を利用している。電離放射線(γ線、X線を含めて)および細胞毒性剤(例えば、ブレオマイシン、シスプラチン、ビンブラスチン、シクロホスファミド、5’−フルオロウラシルおよびメトトレキセート)は、DNAに対する一般的な損傷および染色体構造の不安定化(これらは、最終的に、癌細胞の破壊に至る)に頼っている。これらの治療は、細胞分裂周期のチェックポイントにおいて欠陥を有する種類の癌に、特に有効であり、それは、これらの細胞が細胞分裂を受ける前に損傷したDNAを修復する能力を制限する。しかしながら、これらの治療の非選択的な性質により、しばしば、身体を衰弱させる激しい副作用が起こる。これらの薬剤を全身的に使用すると、通常は健康な臓器および組織を損傷し得、患者の長期的な健康を損ない得る。
【0004】
いかにして癌細胞が発生するかという知見に基づいて、さらに選択的な化学療法(例えば、抗エストロゲン化合物であるタモキシフェン)が開発されているものの、全ての化学療法の有効性は、これらの薬剤に対する耐性の発生に晒される。特に、細胞膜結合輸送体(例えば、MdrI)の発現が高まると、その細胞からの薬剤の流出が高まることに特徴がある多剤耐性表現型が生じる。癌細胞によるこれらの種類の適応によって、特定の種類の化学療法の有効性が制限される。結果的に、増殖性疾患の異質性を攻撃し他の化合物を使う療法の過程で発生し得る耐性を克服するのに有効な療法を確立するために、他の化学療法薬(特に、活性立体異性体および/または立体異性体混合物)を識別することが重要である。さらに、異なる特性および細胞標的を有し得る化学療法薬(特定の化学療法薬の活性立体異性体および/または立体異性体混合物を含めて)を組み合わせて使用すると、化学療法の有効性が高まり、薬剤耐性の発生が制限される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(4.要旨)
一局面では、特定のジアステレオマーに富んだ4N−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−2N−置換フェニル−2,4−ピリミジンジアミン化合物が提供され、これらは、種々の異なる種類の腫瘍細胞に対して、抗増殖活性を示す。いくつかの実施態様では、構造式(I)に従う化合物が提供される:
【0006】
【化22】

該化合物は、それらのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含み、構造式(Ia)の対応するジアステレオマー(これは、(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーと命名されている)に富んでいる:
【0007】
【化23】

ここで:
各Rは、別個に、水素、低級アルキル、−(CHOH、−OR、−O−(CH、−O−(CH−R、−C(O)OR、ハロ、−CFおよび−OCFからなる群から選択される;
各Rは、別個に、水素、低級アルキル、−OR、−O(CH−R、−O(CH−R、−NHC(O)R、ハロ、−CF、−OCF、および
【0008】
【化24】

からなる群から選択される
各Rは、別個に、水素、低級アルキル、−(CH−OH、−OR、−O(CH−R、−O(CH−R、ハロ、−CF、−OCF
【0009】
【化25】

からなる群から選択される;
各Rは、別個に、水素、低級アルキル、アリールアルキル、−OR、−NR、−C(O)R、−C(O)ORおよび−C(O)NRからなる群から選択される;
は、水素、ハロ、フルオロ、−CN、−NO、COまたは−CFである;
各nは、別個に、1〜3の整数である;
各Rは、別個に、水素、低級アルキルおよび低級シクロアルキルからなる群から選択される;
各Rは、別個に、−OR、−CF、−OCF、−NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NRおよび−C(O)NRからなる群から選択される;
各Rは、別個に、水素および低級アルキルからなる群から選択されるか、あるいは、2個のR置換基は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、5員〜7員飽和環を形成し得、該環は、必要に応じて、1個〜2個の追加ヘテロ原子基を含み、該追加ヘテロ原子基は、O、NR、NR−C(O)R、NR−C(O)ORおよびNR−C(O)NRからなる群から選択される;そして
各Rは、別個に、低級モノ−ヒドロキシアルキルまたは低級ジ−ヒドロキシアルキルである。
【0010】
いくつかの実施態様では、構造式(I)の化合物は、構造式(IIa)に従う(2−エキソ−3−エキソ)異性体のラセミ混合物である:
【0011】
【化26】

該化合物は、それらのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含み、ここで、R、R、RおよびRは、構造式(I)(上記)について定義したとおりである。
【0012】
いくつかの実施態様では、この化合物は、構造式(Ia)(上記)に従う立体異性的に富んだジアステレオマーであり、該化合物は、それらのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含み、その鏡像異性体およびそれらの任意の他のジアステレオマーを実質的に含まない。
【0013】
さらに別の局面では、この立体異性的に富んだ化合物(the stereoisomerically enriched compounds)のプロドラッグが提供される。このようなプロドラッグは、それらのプロドラッグ形状で活性であり得るか、または生理学的条件下または使用条件下にて活性薬剤形状に変換されるまで、不活性であり得る。これらのプロドラッグにおいて、これらの立体異性的に富んだ化合物の1個またはそれ以上の官能基は、プロ部分に含まれ、これらのプロ部分は、使用条件下にて、典型的には、加水分解、酵素開裂またはいくつかの他の開裂機構を経由して、分子から開裂して、これらの官能基を生じる。例えば、第一級または第二級アミノ基は、アミノプロ部分に含まれ得、これらのアミノプロ部分は、使用条件下にて、開裂して、この第一級または第二級アミノ基を生成する。それゆえ、これらのプロドラッグは、これらの化合物の1個またはそれ以上の官能基をマスクする特定の種類の保護基(これは、「プロ基」と称する)を含み、これらの保護基は、使用条件下にて、開裂して、活性薬剤化合物を生じる。これらの立体異性的に富んだ化合物内にて、プロ部分に含めるためにプロ基でマスクされ得る官能基には、アミン(第一級および第二級)、ヒドロキシル、スルフィニル(チオール)、カルボキシル、カルボニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。このような官能基をマスクしてプロ部分(これらは、所望の使用条件下にて、開裂可能である)を生じるのに適当な無数のプロ基は、当該技術分野で公知である。これらのプロ基の全ては、単独で、または組み合わせて、これらのプロドラッグに含まれ得る。これらのプロドラッグに含めることができる第一級または第二級アミン基を生じるプロ部分の具体例には、アミド、カーバメート、イミン、尿素、ホスフェニル、ホスホリルおよびスルフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。これらのプロドラッグに含めることができるスルファニル基を生じるプロ部分の具体例には、例えば、S−メチル誘導体(モノチオ、ジチオ、オキシチオ、アミノチオアセタール)、シリルチオエーテル、チオエステル、チオカーボネート、チオカーバメート、非対称ジスルフィドなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらのプロドラッグに含めることができるヒドロキシル基を生じるプロ部分の具体例には、スルホネートおよびカーボネートが挙げられるが、これらに限定されない。これらのプロドラッグに含めることができるカルボキシル基を生じるプロ部分の具体例には、エステル(シリルエステル、オキサミン酸エステルおよびチオエステルを含めて)、アミドおよびヒドラジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
さらに別の局面では、1種またはそれ以上の立体異性的に富んだ化合物を含有する組成物が提供される。これらの組成物は、一般に、これらの化合物、および/またはそれらのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物および/またはN−オキシドと、適当なキャリア、賦形剤および/または希釈剤とを含有する。このキャリア、賦形剤および/または希釈剤の正確な性質は、この組成物の所望の用途に依存しており、また、インビトロ用途で適当または許容できるものから、獣医学用途で適当または許容できるもの、ヒトで使用するのに適当または許容できるものまでの範囲であり得る。
【0015】
本明細書中で記述した立体異性的に富んだ化合物は、インビトロアッセイにおいて、異常細胞(例えば、腫瘍細胞)の増殖の強力な阻害剤である。それゆえ、さらに別の局面では、異常細胞(特に、腫瘍細胞)の増殖を阻止する方法が提供される。これらの方法は、一般に、異常細胞(例えば、腫瘍細胞)を、これらの細胞の増殖を阻止するのに有効な量の本明細書中で記述した1種またはそれ以上の立体異性的に富んだ化合物、および/またはそれらのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物および/またはN−オキシドと接触させる工程を包含する。これらの細胞は、これらの化合物それ自体と接触できるか、またはこの化合物は、組成物に処方できる。これらの方法は、インビトロ状況で、または増殖性障害(例えば、腫瘍形成性の癌)に治療または予防に向けた治療アプローチとして、インビボ状況で、実行され得る。
【0016】
さらに別の局面では、増殖性障害を治療する方法が提供される。これらの方法は、獣医学的な状況で動物において、またはヒトにおいて、実行され得る。これらの方法は、一般に、動物またはヒト被験体に、増殖性障害を治療または予防するのに有効な量の本明細書中で記述した1種またはそれ以上の立体異性的に富んだ化合物、および/またはそれらのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物および/またはN−オキシドを投与する工程を包含する。これらの化合物それ自体が被験体に投与できるか、これらの化合物は、組成物の形状で、投与できる。これらの方法に従って治療できる増殖性障害には、腫瘍形成性の癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書中で記述した立体異性的に富んだ化合物は、Auroraキナーゼの強力な阻害剤である。Auroraキナーゼは、細胞分裂の重要な制御因子であることが知られている系統の酵素である。いくつかの種類のヒトの癌細胞(例えば、乳癌、大腸癌、腎臓癌、子宮頚癌、神経芽細胞腫、黒色腫、リンパ腫、膵臓癌、膀胱癌および他の固形腫瘍)において、高いレベルのAuroraキナーゼが存在しており(例えば、Bischottら、1998,EMBO J.17:3052−3065;Geopfert & Brinkley,2000,Curr.Top.Dev.Biol.49:331−342;Sakakuraら,2001,Br.J.Cancer 84:824−831を参照のこと)、Auroraキナーゼの過剰発現は、細胞形質変換(異常細胞が癌になるプロセス)を招くことが明らかとなっている。いずれの特定の作用理論にも束縛するつもりはないものの、本明細書中で記述した立体異性的に富んだ化合物だけでなく、それらの活性プロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物および/またはN−オキシドは、1種またはそれ以上のAuroraキナーゼを阻害することにより、それらの抗増殖活性を発揮すると考えられている。
【0018】
それゆえ、さらに別の局面では、Auroraキナーゼの活性を阻害する方法が提供される。これらの方法は、一般に、Auroraキナーゼを、その活性を阻害するのに有効な量の本明細書中で記述した1種またはそれ以上の立体異性的に富んだ化合物、および/またはそれらの活性プロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物および/またはN−オキシドと接触させる工程を包含する。これらの方法は、精製または部分精製Auroraキナーゼ酵素(例えば、キナーゼを発現する細胞の抽出物)を使うインビトロ状況で、Auroraキナーゼを発現する無傷細胞を使うインビトロ状況で、またはAuroraキナーゼ媒介プロセス(例えば、細胞有糸分裂)を阻害するインビボ状況で、および/またはAuroraキナーゼ活性により少なくとも部分的に媒介される疾患または障害の治療または予防に向けた治療アプローチとして、実行できる。
【0019】
さらに別の局面では、Auroraキナーゼ媒介疾患または障害を治療または予防する方法が提供される。これらの方法は、一般に、動物またはヒト被験体に、Auroraキナーゼ媒介疾患または障害を治療または予防するのに有効な量の本明細書中で記述した1種またはそれ以上の立体異性的に富んだ化合物、および/またはそれらの活性プロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物および/またはN−オキシドを投与する工程を包含する。Auroraキナーゼ媒介疾患および障害には、Auroraキナーゼ系統の酵素のメンバーが一定の役割を果たす任意の疾患、障害、または他の有害な状態が挙げられる。このようなAuroraキナーゼ媒介疾患または障害の具体例には、例えば、大腸癌、乳癌、胃癌、卵巣癌、子宮頚癌、黒色腫、腎臓癌、前立腺癌、リンパ腫、神経芽細胞腫、膵臓癌および膀胱癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
他の局面には、以下でさらに詳細に記述するように、立体異性的に富んだ化合物およびプロドラッグを合成するのに有用な中間体および方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
(6.詳細な説明)
(6.1 定義)
本明細書中で使用する以下の用語は、以下の意味を有すると解釈される:
「アルキル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、親アルカン、アルケンまたはアルキンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導された規定数の炭素原子(すなわち、C1〜C6とは、1個〜6個の炭素原子を意味する)を有する飽和または不飽和で直鎖または環状の一価炭化水素ラジカルを意味する。典型的なアルキル基には、メチル;エチル(例えば、エタニル、エテニル、エチニル);プロピル(例えば、プロパン−1−イル、プロパン−2−イル、シクロプロパン−1−イル、プロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル、シクロプロパ−1−エン−1−イル;シクロプロパ−2−エン−1−イル、プロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イル等);ブチル(例えば、ブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イル、2−メチル−プロパン−2−イル、シクロブタン−1−イル、ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1−イン−1−イル、ブタ−1−イン−3−イル、ブタ−3−イン−1−イル等)などが挙げられるが、これらに限定されない。特定レベルの飽和を含むことを意図している場合、以下で定義する「アルカニル」、「アルケニル」および/または「アルキニル」との術語が使用される。「低級アルキル」とは、1個〜8個の炭素原子を含有するアルキル基を意味する。
【0022】
「アルカニル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、親アルカンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導された飽和または不飽和で直鎖または環状のアルキルを意味する。典型的なアルカニルには、メタニル;エタニル;プロパニル(例えば、プロパン−1−イル、プロパン−2−イル(イソプロピル)、シクロプロパン−1−イル等);ブタニル(例えば、ブタン−1−イル、ブタン−2−イル(第二級ブチル)、2−メチル−プロパン−1−イル(イソブチル)、2−メチル−プロパン−2−イル(t−ブチル)、シクロブタン−1−イル等)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
「アルケニル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、親アルケンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導された少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する飽和または不飽和で直鎖または環状のアルキルを意味する。この基は、この二重結合の周りで、シスまたはトランスのいずれかの立体配座であり得る。典型的なアルケニル基には、エテニル;プロペニル(例えば、プロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル、プロパ−2−エン−2−イル、シクロプロパ−1−エン−1−イル);シクロプロパ−2−エン−1−イル;ブテニル(例えば、ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル等)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
「アルキニル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、親アルキンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導された少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する飽和または不飽和で直鎖または環状のアルキルを意味する。典型的なアルキニル基には、エチニル;プロピニル(例えば、プロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イル等);ブチニル(例えば、ブタ−1−イン−1−イル、ブタ−1−イン−3−イル、ブタ−3−イン−1−イル等)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
「アルキルジイル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、親アルカン、アルケンまたはアルキンの2個の異なる炭素原子の各々から1個の水素原子を除去するか親アルカン、アルケンまたはアルキンの単一の炭素原子から2個の炭素原子を除去することにより誘導された規定数の炭素原子(すなわち、C1〜C6とは、1個〜6個の炭素原子を意味する)を有する飽和または不飽和で直鎖または環状の一価炭化水素基を意味する。その2個の一価ラジカル中心または二価ラジカル中心の各原子価は、同一または異なる原子と結合を形成できる。典型的なアルキルジイル基には、メタンジイル;エチルジイル(例えば、エタン−1,1−ジイル、エタン−1,2−ジイル、エテン−1,1−ジイル、エテン−1,2−ジイル);プロピルジイル(例えば、プロパン−1,1−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2、2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロプロパン−1,2−ジイル、プロパ−1−エン−1,1−ジイル、プロパ−1−エン−1,2−ジイル、プロパ−2−エン−1,2−ジイル、プロパ−1−エン−1,3−ジイル、シクロプロパ−1−エン−1,2−ジイル、シクロプロパ−2−エン−1,2−ジイル、シクロプロパ−2−エン−1,1−ジイル、プロパ−1−イン−1,3−ジイル等);ブチルジイル(例えば、ブタン−1,1−ジイル、ブタン−1,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、2−メチル−プロパン−1,1−ジイル、2−メチル−プロパン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル;シクロブタン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,3−ジイル、ブタ−1−エン−1,1−ジイル、ブタ−1−エン−1,2−ジイル、ブタ−1−エン−1,3−ジイル、ブタ−1−エン−1、4−ジイル、2−メチル−プロパ−1−エン−1,1−ジイル、2−メタニリデン−プロパン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1、4−ジイル、シクロブタ−1−エン−1,2−ジイル、シクロブタ−1−エン−1,3−ジイル、シクロブタ−2−エン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブタ−1−イン−1,3−ジイル、ブタ−1−イン−1、4−ジイル、ブタ−1,3−ジイン−1、4−ジイル等)などが挙げられるが、これらに限定されない。特定レベルの飽和を含むことを意図している場合、アルカニルジル、アルケニルジルおよび/またはアルキニルジルとの術語が使用される。2個の原子価が同じ炭素原子上にあることを特に意図している場合、「アルキリデン」との術語が使用される。「低級アルキルジイル」とは、1個〜6個の炭素原子を含有するアルキルジイル基を意味する。いくつかの実施態様では、このアルキルジイル基は、そのラジカル中心が末端炭素にある飽和非環式アルカニルジル基(例えば、メタンジイル(メタノ);エタン−1,2−ジイル(エタノ);プロパン−1,3−ジイル(プロパノ);ブタン−1、4−ジイル(ブタン)など(これらはまた、以下で定義するアルキレノとも呼ばれている))である。
【0026】
「アルキレン」とは、単独で、または他の置換基の一部として、直鎖の親アルカン、アルケンまたはアルキンの2個の末端炭素原子の各々から1個の水素原子を除去することにより誘導された2個の末端一価ラジカル中心を有する直鎖の飽和または不飽和アルキルジイル基を意味する。特定のアルキレン中の二重結合または三重結合の位置は、もし存在するなら、鍵括弧で示されている。典型的なアルキレン基には、メチレン(メタノ);エチレン(例えば、エタノ、エテノ、エチノ);プロピレン(例えば、プロパノ、プロパ[1]エノ、プロパ[1,2]ジエノ、プロパ[1]イノ等);ブチレン(例えば、ブタノ、ブタ[1]エノ、ブタ[2]エノ、ブタ[1,3]ジエノ、ブタ[1]イノ、ブタ[2]イノ、ブタ[1,3]ジイノ等)などが挙げられるが、これらに限定されない。特定レベルの飽和を含むことを意図している場合、「アルカノ」、「アルケノ」および/または「アルキノ」との術語が使用される。いくつかの実施態様では、このアルキレン基は、(C1〜C6)または(C1〜C3)アルキレンである。いくつかの実施態様では、このアルキレン基は、直鎖の飽和アルカノ基(例えば、メタノ、エタノ、プロパノ、ブタノなど)である。
【0027】
「シクロアルキル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、「アルキル」基の環状型を意味する。典型的なシクロアルキル基には、シクロプロピル;シクロブチル(例えば、シクロブタニルおよびシクロブテニル);シクロペンチル(例えば、シクロペンタニルおよびシクロペンテニル);シクロヘキシル(例えば、シクロヘキサニルおよびシクロヘキセニル)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
「親芳香環系」とは、共役π電子系を有する不飽和で環式または非環式の環系を意味する。具体的には、「親芳香環系」の定義には、環の1個またはそれ以上が芳香族でありかつ環の1個またはそれ以上が飽和または不飽和である縮合環系(例えば、フルオレン、インダン、インデン、フェナレン、テトラヒドロナフタレン等)が含まれる。典型的な親芳香環系には、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、テトラヒドロナフタレン、トリフェニレン、トリナフタレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「アリール」とは、単独で、または他の置換基の一部として、親芳香環系の単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導された規定数の炭素原子(すなわち、C5〜C15とは、5個〜15個の炭素原子を意味する)を有する一価芳香族炭化水素基を意味する。典型的なアリール基には、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどだけでなく、それらの種々のヒドロ異性体から誘導された基が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、このアリール基は、(C5〜C15)アリールであり、(C5〜C10)がさらに典型的である。具体例には、フェニルおよびナフチルがある。
【0030】
「ハロゲン」または「ハロ」とは、単独で、または他の置換基の一部として、特に明記しない限り、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0031】
「ハロアルキル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、その水素原子の1個またはそれ以上をハロゲンで置き換えたアルキル基を意味する。それゆえ、「ハロアルキル」との用語は、モノハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキルなどからパーハロアルキルまでを含むことを意味する。例えば、「(C1〜C2)ハロアルキル」との表現は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1−フルオロエチル、1,1−ジフルオロエチル、1,2−ジフルオロエチル、1,1,1−トリフルオロエチル、パーフルオロエチルなどを含む。
【0032】
「ヒドロキシアルキル」とは、単独で、または他の置換基の一部として、その水素原子の1個またはそれ以上をヒドロキシル置換基で置き換えたアルキル基を意味する。それゆえ、「ヒドロキシアルキル」との用語は、モノヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、トリヒドロキシアルキルなどを含むことを意味する。
【0033】
上で定義した基は、よく認識された別の置換基を作り出すために通例使用されている接頭辞および/または接尾辞を含み得る。例として、「アルキルオキシ」または「アルコキシ」とは、式−ORの基を意味し、「アルキルアミン」とは、式−NHRの基を意味し、そして「ジアルキルアミン」とは、式−NRRの基を意味し、ここで、各Rは、別個に、アルキルである。他の例として、「ハロアルコキシ」または「ハロアルキルオキシ」とは、式−OR’の基を意味し、ここで、R’は、ハロアルキルである。
【0034】
「プロドラッグ」とは、使用条件(例えば、体内)下にて活性薬剤を放出するように変換を必要とし得る活性化合物(薬剤)の誘導体を意味する。プロドラッグは、しばしば、必ずしもそうではないが、その活性薬剤に変換されるまで、薬理学的に不活性である。プロドラッグは、典型的には、薬剤化合物中の官能基をマスクすることにより得られ、これは、その官能基を放出する特定の使用条件下にて変換(例えば、開裂)を受けるプロ部分を形成するように、それゆえ、この活性薬剤を形成するように、プロ基(以下で定義する)と共に活性に部分的に必要であると考えられている。このプロ部分の開裂は、例えば、加水分解反応を経由して、自発的に進行し得、または、例えば、酵素により、光により、酸または塩基により、または物理的または環境パラメータの変化(例えば、温度変化)またはそれに晒すことにより、触媒または誘発され得る。この薬剤は、使用条件に対して内生的であり得(例えば、そのプロドラッグが投与される細胞内に存在している酵素、または胃の酸性状態)、または外因的に供給され得る。
【0035】
本明細書中で記述した活性な立体異性的に富んだ化合物の官能基をマスクしてプロドラッグを生じるのに適当な種々のプロ基だけでなく、得られたプロ部分は、当該技術分野で周知である。例えば、ヒドロキシル官能基は、スルホネート、エステルまたはカーボネートプロ部分としてマスクされ得、これは、インビボで加水分解されて、水酸基を提供し得る。アミノ官能基は、アミド、カーバメート、イミン、尿素、ホスフェニル、ホスホリルまたはスルフェニルプロ部分としてマスクされ得、これは、インビボで加水分解されて、アミノ基を提供し得る。カルボキシル基は、エステル(シリルエステルおよびチオエステルを含めて)、アミドまたはヒドラジドプロ部分としてマスクされ得、これは、インビボで加水分解されて、カルボキシル基を提供し得る。適当なプロ基およびそれらの各個のプロ部分の他の具体的な例は、当業者に明らかである。
【0036】
「プロ基」とは、活性な立体異性的に富んだ化合物内の官能基をマスクしてプロ部分を形成するのに使用したとき、その薬剤をプロドラッグに変換する種類の保護基を意味する。プロ基は、典型的には、特定の使用条件下にて開裂可能な結合を介して、この薬剤の官能基に結合される。それゆえ、プロ基は、特定の使用条件下にて官能基を放出するように開裂するプロ部分の一部である。特定の例として、式−NH−C(O)CHのアミドプロ部分は、プロ基−C(O)CHを含む。
【0037】
「増殖性障害」とは、例えば、細胞がそれらの対応する正常な細胞より多く分裂する場合、異常な細胞増殖に特徴がある疾患または障害を意味する。この異常な細胞増殖は、任意の作用機構または作用機構の組み合わせにより、引き起こされ得る。例えば、1個またはそれ以上の細胞の細胞分裂周期は、細胞がそれらの対応する正常な細胞よりも頻繁に分裂するように影響され得、または、別の例として、1個またはそれ以上の細胞は、抑制信号(これは、通常、それらの分裂数を制限する)を迂回し得る。増殖性疾患には、成長が遅いまたは速い腫瘍および癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
「抗増殖性化合物」とは、類似の型の未処理コントロール細胞と比較して、細胞の増殖を阻止する化合物を意味する。この阻止は、任意の機構または機構の組み合わせにより引き起こされ得、そして細胞増殖抑制的または細胞毒性的に、増殖を阻止するように作動し得る。具体的な例として、本明細書中で使用する阻止には、任意の作用機構(例えば、アポトーシスを含めて)による細胞分裂の停止、細胞が分裂、増殖および/または成長する速度の低下、および/または細胞死の誘発が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
「Auroraキナーゼ」は、一般に「Aurora」キナーゼ類と呼ばれる、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼのファミリーのメンバーをいう。セリン/トレオニンタンパク質キナーゼのAuroraファミリーは、細胞増殖のために必須である(例えば、BischhoffおよびPlowman,1999,Trends Cell Biol.9:454−459;GietおよびPrigent,1999,J.Cell Science 112:3591−3601;Nigg,2001,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2:21−32;Adamsら,2001,Trends Cell Biol.11:49−54を参照)。現在、3種の哺乳動物ファミリーメンバーが存在する:Aurora−A(「2」)、Aurora−B(「1」)およびAurora−C(「3」)(例えば、GietおよびPrigent,1999,J.Cell Sci.112:3591−3601;BischoffおよびPlowman,1999,Trends Cell Biol.9:454−459を参照;これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)。本明細書中で使用される場合、「Auroraキナーゼ」は、これらの3種の既知の哺乳動物ファミリーメンバーのみでなく、後に発見される哺乳動物ファミリーメンバー、ならびに他の種および生物に由来する相同なタンパク質をも含む(他の種および生物に由来するAuroraキナーゼファミリーの相同なメンバーの非限定的な例については、Schumacherら,1998,J.Cell Biol.143:1635−1646;Kimuraら,1997,J.Biol.Chem.272:13766−13771を参照、これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)。
【0040】
「Auroraキナーゼ媒介性プロセス」または「Auroraキナーゼ媒介性疾患もしくはAuroraキナーゼ媒介性障害」は、Auroraキナーゼが役割を果たすところの細胞内プロセス、疾患または障害をいう。Auroraキナーゼ類は、タンパク質リン酸化事象において、細胞周期の分裂期を調節する重要な役割を果たすと考えられる。ヒトAuroraキナーゼは、有糸分裂の間、異なる細胞下局在を示す。例えば、Aurora−Aは、細胞周期のM期の間アップレギュレートされ、そして有志分裂の間紡錘極に局在する。このことは、中心体機能への関与を示唆している。Aurora−A活性は前期の間に最大化されるが、Aurora−Bは、染色分体分離ならびに後期および終期における切断溝(cleavage furrow)の形成の間、重要な役割を果たすと考えられる。Aurora−Cの役割は、あまり明らかでないが、有糸分裂の間の後期から細胞質分裂まで、中心体に局在することが示されている。さらに、哺乳動物細胞におけるAuroraキナーゼ活性の阻害は、異常細胞増殖および倍数性をもたらす(Teradaら,1998,EMBO J:17:667−676)。従って、Auroraキナーゼ類は、細胞分裂、染色体分離、紡錘体形成および細胞質分裂を調節すると考えられる。本明細書中で使用される場合、これらの種々のプロセスの全ては、「Auroraキナーゼ媒介性プロセス」の範囲内である。
【0041】
さらに、1977年におけるその発見以来、哺乳動物Auroraキナーゼファミリーは、腫瘍形成と密接に関連付けられている。その最も説得力のある証拠は、Aurora−Aの過剰発現が、げっ歯類線維芽細胞を変換させることである(Bischoffら,1998,EMBO J.17:3052−3065)。高いレベルのこのキナーゼを有する細胞は、多数の中心体および多極性の紡錘体を含み、急速に異数体になる。Auroraキナーゼの腫瘍形成活性は、このような遺伝的不安定性の発生に関連している可能性が高い。実際、Aurora−A遺伝子座の増幅と染色体不安定性との間の相関性が、乳房および胃の腫瘍において観察されている(Miyoshiら,2001,Int.J.Cancer 92:370−373;Sakakuraら,2001,Brit:J.Cancer 84:824−831)。
【0042】
Auroraキナーゼ類は、広範なヒト腫瘍において過剰発現されることが報告されている。Aurora−Aの発現の上昇は、50%を超える結腸直腸腫瘍(Bischoffら,1998,EMBO J.17:3052−3065;Takahashiら,2000,Jpn.J.Cancer Res.91:1007−1014)、卵巣腫瘍(Gritskoら,2003,Clinical Cancer Research 9:1420−1426)、および胃腫瘍(Sakakura,2001,Brit.J.Cancer 84:824−831)で検出されており、そして94%を超える乳房の侵襲性腺管腺癌(Tanaka,1999,Cancer Research 59:2041−2044)で検出されている。高レベルのAurora−Aはまた、腎臓腫瘍細胞株、子宮頚部腫瘍細胞株、神経芽腫細胞株、メラノーマ細胞株、リンパ腫細胞株、膵臓腫瘍細胞株および前立腺腫瘍細胞株においても報告されている(Bischoffら,1998,EMBO J.17:3052−3065;Kimuraら,1999,J.Biol.Chem.274:7334−7340;Zhouら,1998,Nature Genetics 20:189−193;Liら,2003,Clin Cancer Res.9(3):991−7)。Aurora−Aの増幅/過剰発現は、ヒト膀胱癌において観察されており、そしてAurora−Aの増幅は、倍数性および攻撃的臨床行動に関連する(Senら,2002,J Natl Cancer Inst.94(17):1320−9)。さらに、Aurora−A遺伝子座(20q13)の増幅は、リンパ節陰性乳癌を有する患者の予後の悪さと相関する(Isolaら,1995,American Journal of Pathology 147:905−911)。Aurora−Bは、多数のヒト腫瘍細胞株において高度に発現される。これらの細胞株としては、白血病細胞が挙げられる(Katayamaら,1998,Gene 244:1−7)。この酵素のレベルは、原発性結腸直腸癌におけるデュークス段階の関数として上昇する(Katayamaら,1999,J.Nat’l Cancer Inst.91:1160−1162)。通常は生殖細胞にのみ見出されるAurora−Cもまた、高い割合の原発性結腸直腸癌および種々の腫瘍細胞株(子宮頚部腺癌細胞および乳房癌腫細胞を含む)において高度に発現される(Kimuraら,1999,J.Biol.Chem.274:7334−7340;Takahashiら,2000,Jpn.J.Cancer Res.91:1007−1014)。
【0043】
コントロール的に、Auroraファミリーは、正常組織の大部分で低レベルで発現される。例外は、高い割合の分裂中の細胞を有する組織(例えば、胸腺および精巣)である(Bischoffら,1998,EMBO J.,17:3052−3065)。
【0044】
増殖性障害においてキナーゼの果たす役割のさらなる総説については、BischhoffおよびPlowman,1999,Trends Cell Biol.9:454−459;GietおよびPrigent,1999,J.Cell Science 112:3591−3601;Nigg,2001,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2:21−32;Adamsら,2001,Trends Cell Biol.11:49−54ならびにDutertreら,2002,Oncogene 21:6175−6183を参照。
【0045】
癌細胞によるタンパク質の過剰発現は、抗腫瘍効果を生じるタンパク質活性の阻害を常に表すわけではないが、機能性アッセイにおいて、少なくとも以下の腫瘍細胞型が、Auroraキナーゼ活性の阻害に感受性であることが確認されている:前立腺腫瘍細胞(DU145)、子宮頚部腫瘍細胞(Hela)、膵臓腫瘍細胞(Mia−Paca2、BX−PC3)、組織学的白血病(U937)、肺腺癌細胞、肺類表皮腫瘍細胞、小細胞肺癌細胞、乳房癌腫細胞、腎臓癌腫細胞、MolT3(全て)およびMolt4(全て)。
【0046】
種々の癌におけるAuroraキナーゼの確立された役割に基づき、「Auroraキナーゼ媒介性疾患およびAuroraキナーゼ媒介性障害」の例としては、メラノーマ、白血病および固形腫瘍癌(例えば、大腸、乳房、胃、卵巣、子宮頚部、メラノーマ、腎臓、前立腺、リンパ腫、神経芽細胞腫、膵臓および膀胱の癌)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
「治療的に有効な量」は、特定の障害もしくは疾患、またはその1以上の症状を処置するために十分な化合物の量をいう。腫瘍形成性増殖性障害に関して、治療的に有効な量は、他の中でとりわけ、腫瘍を縮小させるか、もしくは腫瘍の増殖速度を低下させるために、十分な量を含む。
【0048】
多くの状況で、腫瘍形成性増殖性障害のための標準的処置は、腫瘍を除去するための外科的介入を、単独でまたは薬物(化学)治療および/または放射線治療と併用して含む。本明細書中で使用される場合、化合物の「治療的に有効な量」は、腫瘍を除去された被験体における腫瘍の再発を予防するか、もしくはそのような被験体における腫瘍の再発速度を遅くする。
【0049】
従って、本明細書中で使用される場合、外科的介入および/または他の抗増殖性薬剤(例えば、5−フルオロウラシル、ビノレルビン、タキソール、ビンブラスチン、シスプラチン、トポテカンなどが挙げられる)のような別の治療型に加えて治療利益をもたらす化合物の量は、「治療的に有効な量」の意味の中に包含される。
【0050】
「予防的に有効な量」は、被験体が特定の障害または疾患を発症することを防ぐために十分な化合物の量をいう。代表的に、予防が実施される被験体は、特定の疾患または障害に罹患していないが、マーカーもしくは家族歴に基づき、この疾患もしくは障害を発症する危険性が高いと認識される。
【0051】
(6.2 立体異性的に富んだ化合物および立体異性的に純粋な化合物)
ある種のN4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−ene−2−イル)−N2−置換フェニル−2,4−ピリミジンジアミン化合物(これは、下記の構造式(I)で表わされる)は、インビトロアッセイにおいて、Auroraキナーゼ活性および腫瘍細胞増殖の強力な阻害剤であることが最近発見された(例えば、出願番号第11/133,419号(これは、2005年5月18日に出願された)、係属中の出願番号第 号(これは、「Stereoisomerically Enriched β−Lactams Using Candida Antarctica」の表題であり、上記出願と同時に出願された(これは、弁護士事件整理番号第375462−030US号として、識別されている)、および国際出願第PCT/US05/17470号(これは、2005年5月18日に出願され、そして本明細書中で参照される先行出願である)を参照のこと):
【0052】
【化27】

当業者は、構造式(I)において、構造式(I)に従う化合物が8種のジアステレオマー(これらは、下記の構造式(Ia)〜(Ih)で図示されている)を含むように、炭素1、2、3および4における立体異性体が特定されていないことを理解する:
【0053】
【化28】

構造式(I)の化合物はまた、2種のシスラセミ化合物(これらは、構造式(IIa)および(IIb)で表わされる)、および2種のトランスラセミ化合物(これらは、下記の構造式(IIIa)および(IIIb)で表わされる)を含む:
【0054】
【化29】

構造式(IIa)のシスラセミ化合物は、2−エキソ−3−エキソラセミ化合物と呼ばれ、それぞれ、構造式(Ia)および(Ib)の(1R,2R,3S,4S)および(1S,2S,3R,4R)ジアステレオマーを含む。構造式(IIb)のシスラセミ化合物は、2−エンド−3−エンドラセミ化合物と呼ばれ、それぞれ、構造式(Ic)および(Id)の(1R,2S,3R,4S)および(1S,2R,3S,4R)ジアステレオマーを含む。実施例の項でさらに詳細に説明するように、Rがフルオロであり、Rが水素であり、Rが4−メチルピペラジン−1−イルであり、そしてRがメチルである化合物について、それらの2種のシスラセミ化合物は、インビトロ抗増殖アッセイにおいて、異なる腫瘍細胞株に対して、抗増殖活性を示す。しかしながら、この2−エキソ−3−エキソラセミ化合物(ラセミ化合物r1)は、両方のラセミ化合物で試験された全ての細胞株において、対応する2−エンド−3−エンドラセミ化合物(ラセミ化合物r2)よりも20倍強力である。さらに、ラセミ化合物r1の(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーは、ラセミ化合物r1の効力に大いに関与していることが発見された。単離した立体異性体として試験したとき、この(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマー(これは、「a」ジアステレオマーと命名されている)は、一般に、ナノモル範囲のIC50を示したのに対して、(1S,2S,3R,4R)ジアステレオマー(これは、「b」鏡像異性体と命名されている)は、一般に、同じ細胞株に対して、マイクロモル範囲のIC50を示した。それゆえ、一般に、この化合物の(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーは、一般に、その対応する(1S,2S,3R,4R)鏡像異性体よりも1000倍強力である。それはまた、試験した細胞株において、対応する2−エンド−3−エンドr2ラセミ化合物よりもおよそ20〜50倍強力である。この(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーは、AuroraキナーゼBに対する細胞ベース阻害アッセイにおいて、その(1S,2S,3R,4R)鏡像異性体と比べて、同様に優れた結果を示した。この(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーの観察された効力に基づいて、構造式(Ia)に従う全範囲の(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーは、それらの対応する(1S,2S,3R,4R)鏡像異性体、2−エキソ−3−エキソラセミ化合物、2−エンド−3−エンドラセミ化合物および他の対応するジアステレオマーと比べて、同様に優れた結果を示すと予想される。
【0055】
従って、本明細書中では、この特に強力な(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーに富んだ化合物が提供される。一実施態様では、このような立体異性的に富んだ化合物には、構造式(I)に従う化合物が挙げられる:
【0056】
【化30】

該化合物は、構造式(Ia)の対応するジアステレオマーに富んでいる:
【0057】
【化31】

ここで:
各Rは、別個に、水素、低級アルキル、−(CHOH、−OR、−O−(CH、−O−(CH−R、−C(O)OR、ハロ、−CFおよび−OCFからなる群から選択される;
各Rは、別個に、水素、低級アルキル、−OR、−O(CH−R、−O(CH−R、−NHC(O)R、ハロ、−CF、−OCF、および
【0058】
【化32】

からなる群から選択される
各Rは、別個に、水素、低級アルキル、−(CH−OH、−OR、−O(CH−R、−O(CH−R、ハロ、−CF、−OCF
【0059】
【化33】

からなる群から選択される;
各Rは、別個に、水素、低級アルキル、アリールアルキル、−OR、−NR、−C(O)R、−C(O)ORおよび−C(O)NRからなる群から選択される;
は、水素、ハロ、フルオロ、−CN、−NO、COまたは−CFである;
各nは、別個に、1〜3の整数である;
各Rは、別個に、水素、低級アルキルおよび低級シクロアルキルからなる群から選択される;
各Rは、別個に、−OR、−CF、−OCF、−NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NRおよび−C(O)NRからなる群から選択される;
各Rは、別個に、水素および低級アルキルからなる群から選択されるか、あるいは、2個のR置換基は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、4員〜9員飽和環を形成し得、該環は、必要に応じて、1個〜2個の追加ヘテロ原子基を含み、該追加ヘテロ原子基は、O、NR、NR−C(O)R、NR−C(O)ORおよびNR−C(O)NRからなる群から選択される;そして
各Rは、別個に、低級モノ−ヒドロキシアルキルまたは低級ジ−ヒドロキシアルキルである。
【0060】
別の実施態様では、このような立体異性的に富んだ化合物には、構造式(IIa)に従う2−エキソ−3−エキソシスラセミ化合物が挙げられ、ここで、R、R、R、RおよびRは、構造式(I)について先に記述したとおりであり、これらは、構造式(Ia)(上記)のジアステレオマーに富んでいる。
【0061】
本明細書中で使用する場合、化合物は、特定のジアステレオマーが、化合物中に存在している任意の他のジアステレオマーよりも過剰に存在しているとき、そのジアステレオマーに「富んでいる」。この化合物を構成する特定のジアステレオマーの実際の割合は、存在している他のジアステレオマーの数に依存している。具体例として、ラセミ混合物は、特定の鏡像異性体がその混合物の50%より多くを構成するとき、その鏡像異性体に「富んでいる」。存在しているジアステレオマーの数に関係なく、特定のジアステレオマーに富んでいる化合物は、指定されたジアステレオマーの少なくとも約60%、70%、80%、90%またはそれ以上を構成する。特定のジアステレオマーが富んでいる量は、以下でさらに詳細に述べるように、当業者により日常的に使用される通常の分析方法を使用して、確認できる。
【0062】
別の実施態様では、これらの立体異性的に富んだ化合物には、構造式(Ia)(上記)に従う化合物が挙げられ、ここで、R、R、R、RおよびRは、構造式(I)について先に記述したとおりであり、これらは、対応する鏡像異性体および/または任意の他の対応するジアステレオマーを実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、当業者に日常的に使用される通常の分析方法(これらは、以下で詳細に述べる)を使用して確立されるように、その化合物が望ましくないジアステレオマーおよび/または鏡像異性体を約10%未満で含有することを意味する。いくつかの実施態様では、望ましくない立体異性体の量は、10%未満、例えば、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ以下であり得る。約95%以上の望ましい立体異性体を含有する立体異性的に富んだ化合物は、本明細書中では、「実質的に純粋な」立体異性体と呼ぶ。約99%以上の望ましい立体異性体を含有する立体異性的に富んだ化合物は、本明細書中では、「純粋な」立体異性体と呼ぶ。任意の立体異性的に富んだ化合物の純度(ジアステレオマーの純度;%de)は、以下で詳細に記述するように、通常の分析方法を使用して、確認できる。
【0063】
本明細書中で記述した種々の立体異性的に富んだ化合物のいくつかの実施態様では、Rは、水素である;Rは、
【0064】
【化34】

である;そしてRが、
【0065】
【化35】

以外のものである。本明細書中で記述した種々の立体異性的に富んだ化合物の他の実施態様では、Rは、水素、メチル、メトキシ、トリフルオロメチルまたはクロロである。さらに他の実施態様では、Rは、メチル、−C(O)CH、−C(O)OCHまたは−C(O)OCHCHである。
【0066】
本明細書中で記述した種々の立体異性的に富んだ化合物のさらに他の実施態様では、Rは、水素である;Rは、
【0067】
【化36】

以外のものである;そしてRは、
【0068】
【化37】

である。
【0069】
さらに他の実施態様では、Rは、水素、メチル、メトキシ、トリフルオロメチルまたはクロロである。好ましくは、Rは、メチル、−C(O)CH、−C(O)OCHまたは−C(O)CHCHである。
【0070】
本明細書中で記述した種々の立体異性的に富んだ化合物のさらに他の実施態様では、Rは、
【0071】
【化38】

以外のものである;そしてRは、
【0072】
【化39】

以外のものである。いくつかの他の実施態様では、RおよびRは、それぞれ、水素であり、そしてRは、−OCHNHRである。いくつかの他の実施態様では、R、RおよびRは、それぞれ、互いに別個に、水素、メチル、メトキシ、トリフルオロメチルおよびクロロからなる群から選択されるが、但し、R、RおよびRの少なくとも2個は、水素以外のものである。
【0073】
さらに他の実施態様では、Rは、水素であり、Rは、水素、
【0074】
【化40】

からなる群から選択され、そしてRは、水素、低級アルキル、ハロ、−CF
【0075】
【化41】

からなる群から選択される。さらに他の実施態様では、Rは、水素、メチル、クロロ、−CF
【0076】
【化42】

からなる群から選択され、そしてRは、メチル、−CORまたは−CO(O)Rであり、ここで、Rは、メチルまたはエチルである。さらに別の実施態様では、Rは、水素、
【0077】
【化43】

からなる群から選択され、そしてRは、水素、低級アルキル、ハロ、−CF
【0078】
【化44】

からなる群から選択される。さらに他の実施態様では、Rは、水素、メチル、クロロ、−CF
【0079】
【化45】

からなる群から選択され、そしてRは、メチル、−CORまたは−CO(O)Rであり、ここで、Rは、メチルまたはエチルである。好ましくは、Rは、
【0080】
【化46】

であり、そしてRは、−CORであり、ここで、Rは、メチルである;そしてRは、水素である。他の実施態様では、Rは、
【0081】
【化47】

であり、Rは、−CO(O)Rであり、ここで、Rは、エチルであり、そしてRは、水素である。さらに他の実施態様では、Rは、
【0082】
【化48】

であり、そしてRは、水素である。
【0083】
さらに別の実施態様では、Rは、水素である;Rは、
【0084】
【化49】

である;そしてRは、メチル、−CORまたは−CO(O)Rであり、ここで、Rは、メチルまたはエチルである。好ましくは、Rは、
【0085】
【化50】

であり、Rは、メチルであり、そしてRは、水素、メチル、クロロおよび−CFからなる群から選択される。さらに好ましくは、Rは、メチルである。
【0086】
本明細書中で記述した立体異性的に富んだ化合物のさらに他の実施態様では、Rは、フルオロである。
【0087】
さらに他の実施態様では、この立体異性的に富んだ化合物は、実質的に立体異性的に純粋なまたは立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[(3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)]フェニル−2,4−ピリミジンジアミンである。
【0088】
構造式(Ia)(上記)の対応するジアステレオマーに立体異性的に富み得、それらの任意の鏡像異性体および/またはジアステレオマーを実質的に含み得ず、および/または構造式(Ia)(上記)ジアステレオマーで実質的に純粋または純粋であり得る構造式(I)に従う化合物の代表的な追加実施態様は、以下の表1で例示されている:
【0089】
【化51】

【0090】
【化52】


【0091】
本明細書中で記述した特定の化合物の特定のジアステレオマーおよび/またはラセミ混合物(例えば、表1で記述した化合物)が意図されているとき、化合物の番号の次に、以下のようにして、特定のジアステレオマーまたはラセミ混合物を指定する文字を付ける:
a=(1R,2R,3S,4S)
b=(1S,2S,3R,4R)
c=(1R,2S,3R,4S)
d=(1S,2R,3S,4R)
e=(1R,2R,3R,4S)
f=(1S,2S,3S,4R)
g=(1R,2S,3S,4S)
h=(1S,2R,3R,4R)
r1=2−エキソ−3−エキソシスラセミ化合物
r2=2−エンド−3−エンドシスラセミ化合物
r3=2−エキソ−3−エンドトランスラセミ化合物
r4=2−エンド−3−エキソトランスラセミ化合物。
【0092】
それゆえ、具体例として、化合物60の(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーは、化合物60aと呼ばれる。
【0093】
当業者は、本明細書中で記述した立体異性的に富んだ化合物がプロ基でマスクしてプロドラッグを作成できる官能基を含み得ることを理解する。このようなプロドラッグは、通常、それらの薬剤形状に変換されるまで、薬理学的に不活性であるが、そうである必要はない。例えば、エステル基は、通例、胃の酸性状態に晒されたとき、酸触媒加水分解を受けて、親カルボン酸を生じるか、腸または血液の塩基性状態に晒されるとき、塩基触媒加水分解を受ける。それゆえ、被験体に経口投与したとき、エステル部分を含む立体異性的に富んだ化合物は、そのエステル形状が薬理学的に活性であるかどうかとは関係なく、それらの対応するカルボン酸のプロドラッグと見なされ得る。
【0094】
本明細書中で記述した種々の立体異性的に富んだ化合物のプロドラッグは、本発明の範囲内に含まれる。このようなプロドラッグでは、任意の利用可能な官能部分は、プロ基でマスクされ得、プロドラッグで生じる。本明細書中で記述した立体異性的に富んだ化合物内にて、プロ部分に含めるためにプロ基でマスクされ得る官能基には、アミン(第一級および第二級)、ヒドロキシル、スルフィニル(チオール)、カルボキシル、カルボニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。このような官能基をマスクしてプロ部分(これらは、所望の使用条件下にて、開裂可能である)を生じるのに適当な無数のプロ基は、当該技術分野で公知である。これらのプロ基の全ては、単独で、または組み合わせて、本発明の立体異性的に富んだプロドラッグに含まれ得る。
【0095】
例証的な一実施態様では、これらの立体異性的に富んだプロドラッグは、構造式(I)(上記)に従う化合物であり、ここで、R、RおよびRは、それらの先に定義した代替物に加えて、プロ基であり得、これらは、構造式(Ia)(上記)の対応するジアステレオマーに富んでいる。
【0096】
当業者は、本明細書中で記述した化合物およびプロドラッグの多くだけでなく、本明細書中で具体的に記述および/または図示した種々の化合物が、互変異性および配座異性を示し得ることを理解する。例えば、これらの化合物およびプロドラッグは、いくつかの互変異性形状(エノール形状、ケト形状およびそれらの混合物)で、存在し得る。本明細書および請求の範囲内の種々の化合物の名称、式および化合物の図は、可能な互変異性形状または立体異性形状の1つだけを表わし得るので、本発明は、本明細書中で記述した有用性の1つまたはそれ以上を有する化合物またはプロドラッグの任意の互変異性体、立体異性体だけでなく、これらの種々の異なる異性体形状の混合物を包含し得ることが理解できるはずである。この2,4−ピリミジンジアミンの核構造の周りでの回転が限られている場合、アトロープ異性体もまた可能であり、これらもまた、本発明の化合物および/またはプロドラッグに具体的に含まれる。
【0097】
種々の置換基の性質に依存して、これらの立体異性的に富んだ化合物およびプロドラッグは、塩の形状であり得る。このような塩には、医薬品用途に適当な塩(「薬学的に受容可能な塩」)、獣医学用途に適当な塩などが挙げられる。このような塩は、当該技術分野で周知であるように、酸または塩基から誘導され得る。
【0098】
いくつかの実施態様では、この塩は、薬学的に受容可能な塩である。一般に、薬学的に受容可能な塩は、その親化合物の所望の薬理活性の1つまたはそれ以上を実質的に保持しかつヒトに投与するのに適当なものである。薬学的に受容可能な塩には、無機酸または有機酸を使って形成された酸付加塩が挙げられる。薬学的に受容可能な酸付加塩を形成するのに適当な無機酸には、限定ではなく例として、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸など)、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。薬学的に受容可能な酸付加塩を形成するのに適当な有機酸には、限定ではなく例として、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、パルミチン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、アルキルスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸など)、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸など)、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプタン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などが挙げられる。
【0099】
薬学的に受容可能な塩には、また、その親化合物に存在している酸性部分が金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアルミニウムイオン)で置き換えられるかあるいは有機塩基(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルグルカミン、モルホリン、ピペリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミンなど)と配位するかいずれかのときに形成された塩が挙げられる。
【0100】
これらの立体異性的に富んだ化合物およびプロドラッグだけでなく、それらの塩はまた、当該技術分野で周知であるように、水和物、溶媒和物およびN−オキシドの形状であり得る。
【0101】
本明細書中で記述した化合物およびプロドラッグの立体異性富化度および/または純度は、当業者に周知の通常の分析方法により、確立され得る。例えば、特定の立体異性体の立体異性富化度および/または純度を確立するために、キラルNMRシフト試薬、キラルカラムを使用するガスクロマトグラフィー分析、キラルカラムを使用する高圧液体クロマトグラフィー分析、キラル試薬および通常の分析を使う反応によるジアステレオマー誘導体の形成が使用され得る。あるいは、本明細書中で記述した化合物の立体異性富化度および/または純度を確立するために、公知の立体異性富化度および/または純度を有する出発物質を使用する合成が使用され得る。立体異性均質性を証明する他の分析方法は、十分に、当業者の領域内である。
【0102】
(6.3 合成方法)
これらの立体異性的に富んだ化合物およびプロドラッグは、市販の出発物質および/または通常の合成方法により調製された出発物質を使用して、種々の異なる合成経路を経由して、合成され得る。これらの立体異性的に富んだ化合物およびプロドラッグを合成するのに使用できる種々の代表的な合成経路は、WO 03/063794およびUS 2004−0029902で記載されており、その開示内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0103】
例示の目的のために、本明細書中で記述した全範囲の化合物を合成するのに使用できる代表的な合成スキームは、以下のスキーム(I)で図示されている:
【0104】
【化53】

スキーム(I)では、R、R、RおよびRは、構造式(I)(上記)について先に定義したとおりであり、Xは、ハロゲン(例えば、F、Cl、BrまたはI)であり、そして各Gは、他のものとは別個に、OおよびSから選択される。アミノカルボキサミド6中の「」は、特定の立体中心が指定されていないことを表示することに注目すべきである。従って、当業者は、スキーム(I)が、構造式(I)に従うラセミジアステレオマー混合物、ジアステレオマーに富んだ混合物だけでなく、他の特定のジアステレオマーを実質的に含まない構造式(I)の化合物の立体異性体を調製するのに使用され得る。
【0105】
スキーム(I)を参照すると、ウラシルまたはチオウラシル2は、標準的な条件下にて、標準的なハロゲン化剤POX(または他のハロゲン化剤)を使用して、その2位置および4位置で二ハロゲン化されて、2,4−ビス−ハロピリミジン4が生じる。このハロゲン化物は、そのC4位置にて、ピリミジン4におけるC2位置よりも、求核試薬に対して反応性が高い。この反応性の差を利用して、まず、2,4−ビス−ハロピリミジン4を1当量の2−アミノビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−3−カルボキサミド6と反応させて8を得ることにより、続いて、アニリン10と反応させて構造式(I)に対応する化合物を得ることにより、本明細書中で記述した化合物およびプロドラッグを合成できる。当業者は、アミノカルボキサミド6の立体異性的配置および光学純度が、殆どの状況では、構造式(I)の化合物の立体異性的配置および光学純度を決定することを理解する。
【0106】
たいていの状況では、このC4ハロゲン化物は、このスキームで図示しているように、求核試薬に対して反応性が高い。しかしながら、当業者が認識するように、R置換基の種類は、この反応を変え得る。例えば、Rがトリフルオロメチルであるとき、4N−置換−4−ピリミジンアミン8と対応する2N−置換−2−ピリミジンアミンとの50:50の混合物が得られる。R置換基の種類とは関係なく、この反応物のレギオ選択性は、当該技術分野で周知であるように、溶媒および他の合成条件(例えば、温度)を調節することにより、制御できる。
【0107】
スキーム(I)で描写された反応は、その反応混合物がマイクロ波によって加熱されるとき、より迅速に進行し得る。この様式で加熱するとき、以下の条件が使用され得る:Smith Reactor(Personal Chemistry,Biotage AB,Sweden)において、封管(20バールの圧力)中にて、エタノール中で、5〜20分間にわたって、175℃まで加熱すること。
【0108】
ウラシルまたはチオウラシル2出発物質は、業者から購入され得るか、または標準的な有機化学技術を使用して調製され得る。スキーム(I)において出発物質として使用できる市販のウラシルおよびチオウラシルには、限定ではなく例として、ウラシル(Aldrich #13,078−8;CAS Registry 66−22−8);2−チオ−ウラシル(Aldrich #11,558−4;CAS Registry 141−90−2);2,4−ジチオウラシル(Aldrich #15,846−1;CAS Registry 2001−93−6);5−ブロモウラシル(Aldrich #85,247−3;CAS Registry 51−20−7;5−フルオロウラシル(Aldrich #85,847−1;CAS Registry 51−21−8);5−ヨードウラシル(Aldrich #85,785−8;CAS Registry 696−07−1);5−ニトロウラシル(Aldrich #85,276−7;CAS Registry 611−08−5);5−(トリフルオロメチル)−ウラシル(Aldrich #22,327−1;CAS Registry 54−20−6)が挙げられる。別の5−置換ウラシルおよび/またはチオウラシルは、General Intermediates of Canada,Inc.,Edmonton,CA(http://www.general中間体.com)および/またはInterchim,Cedex,France(http://www.interchim.com)から市販されているか、または標準的な技術を使用して調製され得る。適当な合成方法を教示している無数の教本参考文献は、以下で提供する。
【0109】
アニリン10は、業者から購入され得るか、あるいは、標準的な技術を利用して調製され得る。例えば、適当なアニリンは、標準的な化学反応を使用して、ニトロ前駆体から合成され得る。特定の代表的な反応は、実施例の項で提供されている。また、Vogel,1989,Practical Organic Chemistry,Addison Wesley Longman,Ltd.and John Wiley & Sons,Inc.を参照のこと。
【0110】
当業者は、いくつかの場合において、アニリン10が、合成中に保護を必要な官能基を含み得ることを認識する。使用される任意の保護基の正確な種類は、保護する官能基の種類に依存しており、そして当業者に明らかとなる。適当な保護基だけでなく、それらを結合および除去する合成戦略の指針は、例えば、Greene & Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3d Edition,John Wiley & Sons,Inc.,New York(1999)およびその中で引用された参考文献(以下、「Greene & Wuts」)で見られる。
【0111】
本明細書中で記述したプロドラッグは、上記方法の常套的な改良により、調製され得る。
【0112】
当業者は、構造式(Ia)(上記)に対応する所望の(1R,2R,3S,4S)ジアステレオマーが、キラル分離により、または他の標準的な技術により、単離できることを理解する。特定のジアステレオマーをキラル分割する方法は、実施例の項において、さらに詳細に記述する。
【0113】
立体異性的に富んだ化合物および/または実質的に純粋なおよび/または純粋なジアステレオマーはまた、特定の原子の空間的配置を有するかまたはキラル補助剤の助けを借りて、2−アミノ−3−カルボキサミド出発物質6から合成できる。
【0114】
以下のスキーム(II)で図示されている代表的な一実施態様では、望ましいジアステレオマーは、キラル補助剤として、(R)−メチル−p−メトキシベンジルアミン18を使用して、化学的に分割される。
【0115】
【化54】

スキーム(II)では、2−エキソ−3−エキソラセミβ−ラクタム14r1(これは、Stajarら、1984,Tetrahedron 40(12):2385で記載されているように、調製した)は、Boc基で保護されて、対応するラセミBoc−保護β−ラクタム16r1を生じる。次いで、Boc−保護ラセミ化合物16r1は、(R)−メチル−パラ−メトキシベンジルアミン18と反応されて、ジアステレオマー20aおよび20bの混合物が生じる。このジアステレオマー混合物は、酸(例えば、TFA)で処理されて、そのBoc基を開裂し、ジアステレオマー22aおよび22bの混合物が生じ、これらは、2,4−ジハロピリミジン4と反応でき、化合物24aおよび24bのラセミ混合物が得られる。この段階にて、化合物24aおよび24bは、結晶化により、互いから分離でき、そしてアニリン10と反応され、単離されたジアステレオマー25aおよび25bが得られる。次いで、単離されたジアステレオマー25aおよび25bに由来のキラル補助剤は、開裂でき、それぞれ、構造式(Ia)および(Ib)に従う単離されたジアステレオマーが得られる。
【0116】
が水素であり、Rが4−メチル−ピペラジン−1−イルであり、Rがメチルであり、そしてRがフルオロである化合物25aおよび25bについて、このキラル補助剤の開裂は、困難であることが証明されている。このような開裂が困難であるこれらの化合物および他の化合物について、このキラル補助剤は、化合物24aおよび24bから開裂でき、得られた単離された化合物は、アニリン10と反応されて、構造式(Ia)および(Ib)に従う単離されたジアステレオマーが得られる。このような反応の具体例は、実施例の項で記述されている。
【0117】
特定のジアステレオマーにおいて、立体異性的に富んだ、実質的に立体異性的に純粋なおよび/または立体異性的に純粋な化合物はまた、立体異性的に富んだ、実質的に立体異性的に純粋な、および/または立体異性的に純粋なβ−ラクタムから合成できる。このような立体異性的に富んだおよび/または(実質的に)立体異性的に純粋なβ−ラクタムは、酵素的に分割され単離できる。代表的な一実施態様では、(実質的に)立体異性的に純粋なβ−ラクタムは、Enikoら、2004,Tetrahedron Asymmetry 15:573−575で記載されているように、固定化リポラーゼ(immobilized lipolase)(これは、Sigma Chemical Co.,カタログ番号第L4777号から市販されている)を使用して、2−エキソ−3−エキソβ−ラクタム14r1のラセミ混合物から分割され単離できる。別の代表的な実施態様では、(実質的に)立体異性的に純粋なβ−ラクタムは、出願番号第60/628,401号(これは、2004年11月15日に出願され、弁護士整理番号第185954/US号として識別される)、係属中の出願番号第 号(これは、「Stereoisomerically Enriched β−Lactams Using Candida Antarctica」の表題であり、上記出願と同時に出願された(これは、弁護士事件整理番号第375462−030US号として、識別される)(これらの開示内容は、本明細書中で参考として援用されている)で記載されているように、樹脂結合し固定化されたキラザイム(chirazyme)L−2 B型、c.f.酵素(Candida Antarctica Type B,c−f;これは、Biocatalytics,Inc.,Pasadena,CAから市販されている)を使用して、2−エキソ−3−エキソBoc−保護ラセミβ−ラクタム16r1から分割され単離できる。この酵素を使用してβ−ラクタムの特定のジアステレオマーを分割する具体例は、2−エキソ−3−エキソラセミβ−ラクタム16r1を合成する方法と同様に、実施例の項で記述されている。
【0118】
酵素反応を利用して構造式(Ia)に従う特定のジアステレオマーを合成する例は、以下のスキーム(III)および(IV)で図示されている。スキーム(IV)で図示されているように、Novozyme 435酵素(これは、上で述べられスキーム(III)で図示されたChirazyme酵素と似ている)を使用する具体例は、ラセミβ−ラクタムから鏡像異性体を分割するのに使用でき、実施例の項で記述する。
【0119】
【化55】

【0120】
【化56】


【0121】
(6.4 抗増殖性化合物の活性)
立体異性的に富んだ活性化合物は、標準的なインビトロ細胞増殖アッセイで測定したとき、約1mM以下の範囲のIC50で、所望の細胞(例えば、腫瘍細胞)の増殖を阻止する。もちろん、当業者は、例えば、10μM、1μM、100nM、10nM、1nMまたはそれ以下の程度のそれより低いIC50を示す化合物が治療用途で特に有用であり得ることを理解する。この抗増殖活性は、細胞増殖抑制性または細胞毒性であり得る。特定の細胞型に特異的な抗増殖活性が望ましい場合、この化合物は、所望の細胞型での活性についてアッセイされ得、そして他の細胞型に対する活性の欠如についてカウンタースクリーンされ得る。このようなカウンタースクリーンでの「不活性」の程度、または活性対不活性の所望の割合は、異なる状況について変わり得、そして使用者により選択され得る。
【0122】
活性化合物はまた、約20μM以下の範囲、典型的には、約10μM、1μM、100nM、10nM、1nMまたはそれ以下の範囲のIC50で、Auroraキナーゼの活性を阻害する。Auroraキナーゼに対するIC50は、単離したAuroraキナーゼを使う標準的なインビトロアッセイで、または機能細胞アッセイで、決定できる。Auroraキナーゼ活性の程度を決定するのに使用できる適当な酵素カップリングアッセイは、Foxら、1998,Protein Sci.7:2249−2255で記載されている。Auroraキナーゼ−A、Auroraキナーゼ−Bおよび/またはAuroraキナーゼ−Cに対する基質として、ケムプチドペプチド配列LRRASLG(Bochern Ltd.,UK)が使用でき、そして反応は、30℃で、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、1mM DTTを含有する溶液中にて、実行できる。IC50値は、市販のソフトウェア(例えば、Prism 3.0,GraphPed Software,San Diego,CA)を使って、コンピューター処理された非線形回帰を使用して、決定できる。適当な細胞ベースの機能アッセイは、実施例の節で記載されている。
【0123】
(6.5 抗増殖性化合物の用途)
この立体異性的に富んだ活性化合物(それらの種々のプロドラッグ、塩、水和物および/またはN−オキシドを含めて)は、種々の状況において、Auroraキナーゼ、Auroraキナーゼ媒介プロセスおよび/または細胞増殖を阻止するのに使用され得る。いくつかの実施態様によれば、細胞または細胞集団は、Auroraキナーゼの活性、Auroraキナーゼ媒介プロセス、および/または細胞または細胞集団の増殖を阻止するのに有用な量のこのような化合物と接触される。この化合物は、細胞増殖を阻止するのに使用されるとき、細胞毒性的に細胞を殺すように作用するか、または細胞を殺すことなく増殖を阻止するように作用する。
【0124】
いくつかの実施態様では、これらの方法は、Auroraキナーゼ媒介疾患または障害(特に、増殖性障害)の治療または予防に対する療法アプローチとして、インビボで実行され得る。それゆえ、特定の実施態様では、本明細書中で記述した立体異性的に富んだ化合物(および本明細書中で記述した種々の形状)は、動物被験体(ヒトを含めて)における増殖性障害を治療または予防するのに使用され得る。この方法は、一般に、この被験体に、この障害を治療するのに有効な量の本発明の化合物あるいはそれらのプロドラッグ、塩、水和物またはN−オキシドを投与する工程を包含する。一実施態様では、この被験体は、哺乳動物であり、これには、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、齧歯類および霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施態様では、この被験体は、ヒトである。
【0125】
種々の細胞増殖性障害は、本明細書中で記述した化合物で治療または予防され得る。いくつかの実施態様では、これらの化合物は、罹患した被験体における種々の癌を治療するのに使用される。癌は、伝統的に、癌細胞が生じる組織および細胞型に基づいて、分類される。癌腫は、上皮細胞から生じる癌と見なされているのに対して、肉腫は、結合組織または筋肉から生じる癌と見なされている。他の癌の種類には、白血病(これは、造血細胞から生じる)、および神経系細胞の癌(これは、神経組織から生じる)が挙げられる。非侵襲性腫瘍については、腺腫は、腺性組織を備えた良性上皮性腫瘍と見なされているのに対して、軟骨腫(chondomas)は、軟骨から生じる良性腫瘍と見なされている。本発明では、記述した化合物は、癌腫、肉腫、白血病、神経細胞腫瘍および非侵襲性腫瘍に含まれる増殖性障害を治療するのに使用され得る。
【0126】
特定の実施態様では、これらの化合物は、種々の組織型から生じる固形腫瘍を治療するのに使用され、これには、骨、乳房、気道、脳、生殖器、消化管、尿路、膀胱、眼、肝臓、皮膚、頭部、頸部、甲状腺、副甲状腺、腎臓、膵臓、血液、卵巣、大腸、胚/前立腺の癌およびそれらの転移性形態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
具体的な増殖性障害には、以下が挙げられる:a)乳房増殖性障害には、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌腫、乳管癌、非浸潤性小葉癌および転移性乳癌が挙げられるが、これらに限定されない;b)皮膚の増殖性障害には、基底細胞腫、扁平上皮癌、悪性黒色腫およびカポジ肉腫が挙げられるが、これらに限定されない;c)気道の増殖性障害には、小細胞および非小細胞肺癌腫、気管支狭窄(adema)、胸膜肺芽細胞腫および悪性中皮腫が挙げられるが、これらに限定されない;d)脳の増殖性障害には、脳幹および視床下部の神経膠腫、小脳および大脳の星細胞腫、髄質芽細胞腫、上衣腫瘍、オリゴデンドログリア髄膜腫、および神経外笂葉性および松果体腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない;e)雄性生殖器の増殖性障害には、前立腺癌、精巣癌および陰茎癌が挙げられるが、これらに限定されない;f)雌性生殖器の増殖性障害には、子宮癌(子宮内膜)子宮頚部、卵巣、膣、産卵口癌、子宮肉腫、卵巣肺細胞腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない;g)消化管の増殖性障害には、肛門、大腸、結腸直腸、食道、胆嚢、胃(胃)、膵臓の癌−島細胞、直腸、小腸および唾液腺の癌が挙げられるが、これらに限定されない;h)肝臓の増殖性障害には、肝臓癌、胆管癌、混合肝細胞性胆管癌および一次肝臓癌が挙げられるが、これらに限定されない;i)眼の増殖性障害には、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫および横紋筋肉腫が挙げられるが、これらに限定されない;j)頭部の増殖性障害および癌には、喉頭、下咽頭、鼻咽頭、中咽頭の癌、および唇および口腔の癌、扁平上皮頸部癌、転移性副鼻腔癌が挙げられるが、これらに限定されない;k)リンパ腫の増殖性障害には、多様なT細胞およびB細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、ホジキン病、および中枢神経系のリンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない;1)白血病には、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病および有毛細胞白血病が挙げられるが、これらに限定されない;m)甲状腺の増殖性障害には、甲状腺癌、胸腺腫および悪性胸腺腫が挙げられる;n)肉腫には、軟組織の肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫および横紋筋肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
増殖性障害の記載は、上記の病気には限定されず、制御できない成長および悪性腫瘍に特徴がある他の障害を包含することが理解できるはずである。さらに、増殖性障害には、本明細書中で記述された種類の腫瘍および癌の転移性形態が挙げられることが理解できる。本発明の化合物は、本明細書中で記述された障害に対する有効性、および定評のある治療的に有効なレジメンについて、試験され得る。有効性には、以下でさらに記述するように、腫瘍の減少または緩解、細胞増殖速度の低下、または細胞の成長に対する細胞増殖抑制効果または細胞毒性効果が挙げられる。
【0129】
(6.6 併用療法)
本明細書中で記述した立体異性的に富んだ化合物は、単独で、または互いに組み合わせて、または他の定評のある抗増殖療法に対する補助剤として、またはそれらと併用して、使用され得る。それゆえ、これらの化合物は、伝統的な癌療法(例えば、γ−線およびX線の形態での電離放射線)と併用され得、放射性化合物の移植により外部または内部に送達され得、そして腫瘍の外科的な除去に対する追跡治療として使用され得る。
【0130】
別の局面では、これらの化合物は、治療する障害または病気に有用な他の化学療法薬と併用され得る。これらの化合物は、同時に、順次に、同じ投与経路により、または異なる経路により、投与され得る。
【0131】
いくつかの実施態様では、本発明の化合物は、他の抗癌剤または細胞毒性剤と併用される。種々の種類の抗癌および抗新生物化合物には、アルキル化剤、代謝拮抗剤、ビンカアルキロイド、タキサン、抗生物質、酵素、サイトカイン、白金配位錯体、置換尿素、チロシンキナーゼ阻害薬、ホルモンおよびホルモンアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアルキル化剤には、限定ではなく例として、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロランブシル、エチレンイミン、メチルメラミン、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)およびカルムスチンが挙げられる。代表的な代謝拮抗剤には、限定ではなく例として、葉酸類似メトトレキセート;ピリミジン類似フルオロウラシル、シトシンアルビノシド(arbinoside);プリン類似メルカプトプリン、チオグアニンおよびアザチオプリンが挙げられる。代表的なビンカアルキロイドには、限定ではなく例として、ビンブラスチン、ビンクリスチン、パクリタキセルおよびコルヒチンが挙げられる。代表的な抗生物質には、限定ではなく例として、アクチノマイシンD、ダウノルビシンおよびブレオマイシンが挙げられる。抗新生物剤として代表的な酵素には、L−アスパラギナーゼが挙げられる。代表的な配位化合物には、限定ではなく例として、シスプラチンおよびカルボプラチンが挙げられる。代表的なホルモンおよびホルモン関連化合物には、限定ではなく例として、副腎皮質ステロイドプレドニゾンおよびデキサメサゾン;芳香化酵素阻害薬アミノグルテチミド、フォルメスタンおよびアナストロゾール;黄体ホルモン化合物ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、メドロキシプロゲステロン;および抗女性ホルモン化合物タモキシフェンが挙げられる。
【0132】
これらのおよび他の有用な抗癌化合物は、Merck Index,13th Ed.(O’Neil M.J.ら著) Merck Publishing Group(2001)およびGoodman and Gilmans The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th Edition,Hardman,J.G.and Limbird,L.E.著、pg.1381−1287,McGraw Hill,(1996)で記載されており、両方の内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0133】
本明細書中で記述した立体異性的に富んだ化合物と併用して有用なさらなる抗増殖性化合物物には、限定ではなく例として、成長因子レセプタに対して向けられた抗体(例えば、抗−Her2);T細胞を活性化する抗体(例えば、抗−CTLA−4 抗体);およびサイトカイン(例えば、インターフェロン−αおよびインターフェロン−γ、インターロイキン−2およびGM−CSF)が挙げられる。
【0134】
(6.7 処方物および投与)
このような疾患を治療または予防するのに使用するとき、これらの活性化合物およびプロドラッグは、単独で、1種またはそれ以上の活性化合物の混合物として、またはこのような疾患および/またはこのような疾患に付随した症状を治療するのに有用な他の薬剤との混合物または配合で、投与され得る。これらの活性化合物およびプロドラッグはまた、他の障害または疾患を治療するのに有用な薬剤(例えば、ステロイド、膜安定化剤)との混合物または配合で、投与され得る。これらの活性化合物またはプロドラッグは、そのまま投与され得るか、もしくは活性化合物またはプロドラッグを含有する薬学的組成物として投与され得る。
【0135】
これらの活性化合物(またはそれらのプロドラッグ)を含有する薬学的組成物は、通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造のすり潰し、乳化、カプセル化、取り込みまたは凍結乾燥プロセスによって、製造され得る。この組成物は、1種またはそれ以上の生理学的に受容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤または補助剤(これらは、これらの活性化合物を医薬として使用できる製剤に加工するのを促進する)を使用して、処方され得る(Remingtons’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Hoover,J.E.ed.,Mack Publishing Co.(2003)を参照のこと)。
【0136】
この活性化合物またはプロドラッグは、先に記述したように、これらの薬学的組成物にそのまま処方され得るか、もしくは水和物、溶媒和物、N−オキシドまたは薬学的に受容可能な塩の形状で処方され得る。典型的には、このような塩は、対応する遊離酸および塩基よりも水溶液中で溶解性が高いが、対応する遊離酸および塩基よりも溶解度が低い塩もまた、形成され得る。
【0137】
本発明の薬学的組成物は、事実上いずれの投与様式(例えば、局所、眼内、経口、口内、全身、経鼻、注射、経皮、直腸、膣内など)にも適当な形態をとり得、もしくは吸入またはガス注入による投与に適当な形態をとり得る。
【0138】
局所投与には、この活性化合物またはプロドラッグは、当該技術分野で周知であるように、溶液、ゲル、軟膏、クリーム、座剤などとして、処方され得る。
【0139】
全身処方には、注射(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内または腹腔内注射)による投与向けのものだけでなく、経皮、経粘膜、経口または肺投与向けのものが挙げられる。
【0140】
有用な注射可能製剤には、この活性化合物の水性または油性ビヒクル無菌懸濁液、溶液または乳濁液が挙げられる。これらの組成物はまた、処方化剤(例えば、懸濁液、安定化剤および/または分散剤)を含有し得る。注射用の処方は、単位剤形(例えば、アンプル)または多用量容器で存在し得、そして追加防腐剤を含有し得る。
【0141】
あるいは、この注射可能処方は、使用前、適当なビヒクルで再構成するための粉末形状で提供され得、これには、無菌で発熱物質のない水、緩衝液、デキストロース溶液などが挙げられるが、これらに限定されない。この目的のために、この活性化合物は、任意の公知技術(例えば、凍結乾燥)で乾燥され得、そして使用前に再構成され得る。
【0142】
経皮投与には、その処方において、バリアを浸透するのに適当な浸透剤が使用される。このような浸透剤は、当該技術分野で公知である。
【0143】
経口投与には、これらの薬学的組成物は、例えば、薬用ドロップ、錠剤またはカプセル剤の形態をとり得、これらは、薬学的に受容可能な賦形剤(例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶メチルセルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはグルコール酸ナトリウムデンプン);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、レシチン))を使う通常の手段によって、調製される。これらの錠剤は、例えば、糖、フィルムまたは腸溶剤皮を使う当該技術分野で周知の方法により、被覆され得る。
【0144】
経口投与用の液状製剤は、例えば、エリキシル剤、溶液、シロップまたは懸濁液の形態をとり得るか、もしくは、使用前に水または他の適当なビヒクルで再構成するための乾燥製品として提供され得る。このような液状製剤は、薬学的に受容可能な添加剤(例えば、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコール、クレモフォアまたは分別した植物油);および防腐剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピル、またはソルビン酸))を使う通常の方法により、調製され得る。これらの製剤はまた、適当なら、緩衝塩、防腐剤、香味料、着色剤および甘味料を含有し得る。
【0145】
経口投与用の製剤は、当該技術分野で周知のように、この活性化合物またはプロドラッグを徐放するように適当に処方され得る。
【0146】
舌下投与には、これらの組成物は、通常の様式で処方された錠剤または薬用ドロップの形態をとり得る。
【0147】
直腸および膣内投与経路には、この活性化合物は、(滞留浣腸用の)溶液、座剤または軟膏として処方され得、これは、ココアバターまたは他のグリセリドのような通常の座剤基剤を含有する。
【0148】
経鼻投与、もしくは吸入またはガス注入による投与には、この活性化合物またはプロドラッグは、好都合には、適当な推進剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、フルオロカーボン、二酸化炭素または他の適当な気体)を使用して、加圧パックからのエアロゾル噴霧剤または噴霧器の形態で、送達できる。加圧エアロゾルの場合、その投薬単位は、計量した量を送達するバルブを提供することにより、決定され得る。吸入器または注入器で使用するカプセルまたはカートリッジ(例えば、ゼラチンから構成されるカプセルおよびカートリッジ)は、この化合物と適当な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)との粉末ミックスを含有して、処方され得る。
【0149】
眼内投与には、この活性化合物またはプロドラッグは、目に投与するのに適当な溶液、乳濁液、懸濁液などとして、処方され得る。化合物を目に投与するのに適当な種々のビヒクルは、当該技術分野で公知である。非限定的な具体例は、米国特許第6,261,547号;米国特許第6,197,934号;米国特許第6,056,950号;米国特許第5,800,807号;米国特許第5,776,445号;米国特許第5,698,219号;米国特許第5,521,222号;米国特許第5,403,841号;米国特許第5,077,033号;米国特許第4,882,150号;および米国特許第4,738,851号で記載されている。
【0150】
長期間にわたる送達には、この活性化合物またはプロドラッグは、移植または筋肉内注射により投与するためのデポー製剤として、処方できる。その活性成分は、適当な高分子または疎水性材料(例えば、適当なオイル中の乳濁液として)またはイオン交換樹脂を使って、または難溶性誘導体(例えば、難溶性塩)として、処方され得る。あるいは、付着性ディスクまたはパッチ(これは、経皮吸収のために、この活性化合物をゆっくりと放出する)として製造された経皮送達系が使用され得る。この目的のために、この活性化合物の経皮浸透を促進するために、浸透向上剤が使用され得る。適当な経皮パッチは、例えば、米国特許第5,407,713.号;米国特許第5,352,456号;米国特許第5,332,213号;米国特許第5,336,168号;米国特許第5,290,561号;米国特許第5,254,346号;米国特許第5,164,189号;米国特許第5,163,899号;米国特許第5,088,977号;米国特許第5,087,240号;米国特許第5,008,110号;および米国特許第4,921,475号で記載されている。
【0151】
あるいは、他の医薬送達系が使用され得る。リポソームおよび乳濁液は、この活性化合物またはプロドラッグを送達するのに使用され得る送達ビヒクルの周知の例である。ある種の有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO))もまた使用され得るが、通常、高い毒性という代償を払うことになる。
【0152】
これらの薬学的組成物は、もし望ましいなら、パックまたはディスペンサー装置で提供され得、これは、この活性化合物を含有する1個またはそれ以上の単位剤形を含み得る。このパックは、例えば、金属またはプラスチック箔(例えば、ブリスター包装)を含み得る。このパックまたはディスペンサー装置には、投与説明書が添付され得る。
【0153】
(6.8 有効投薬量)
これらの活性化合物またはプロドラッグ、もしくはそれらの組成物は、一般に、所期の結果を達成するのに有効な量(例えば、治療する特定の疾患を治療または予防するのに有効な量)で、使用される。この化合物は、治療上の恩恵を得るように、治療的な投与され得る。治療上の恩恵とは、治療する基礎障害の根絶または改善、および/または患者が依然として基礎障害に苦しんでいるにもかかわらず、その基礎障害に関連した1つまたはそれ以上の症状の根絶または改善を意味する。治療上の恩恵には、また、改善が実感されるかどうかとは無関係に、その疾患の進行を停止または遅延することが挙げられる。
【0154】
投与される化合物の量は、種々の要因に依存しており、これには、例えば、治療する特定の適応症、投与様式、治療する適応症の重症度、および患者の年齢および体重、特定の活性化合物のバイオアベイラビリティーなどが挙げられる。有効投薬量の決定は、当業者の能力の範囲内である。
【0155】
有効投薬量は、最初は、インビトロアッセイから概算され得る。例えば、動物に使用する初期投薬量は、インビトロアッセイ(例えば、実施例の項で記述したインビトロアッセイ)で測定される特定化合物のIC50以上である活性化合物の循環血液または血清濃度を達成するように、処方され得る。特定化合物のバイオアベイラビリティーを考慮して、このような循環血液または血清濃度を達成する投薬量を計算することは、当業者の能力の範囲内である。指針として、Fingl & Woodbury,「General Principles」、In:Goodman and Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics,Chapter 1,pp.1−46,最新版,Pergamon Pressおよびその中で引用された参考文献を参照のこと。
【0156】
初期投薬量はまた、インビボデータ(例えば、動物モデル)から概算され得る。化合物が上記種々の疾患を治療または予防する効力を試験するのに有用な動物モデルは、当該技術分野で周知である。投薬量は、典型的には、約0.0001または0.001または0.01mg/kg/日〜約100mg/kg/日の範囲であるが、特に、その化合物の活性、そのバイオアベイラビリティー、投与様式および上述の種々の要因に依存して、これより高くまたは低くされ得る。投薬量および投薬間隔は、治療効果または予防効果を維持するのに十分な血漿レベルの化合物を生じるように、個別に調節され得る。例えば、これらの化合物は、特に、投与様式、治療する特定の適応症および担当医の判断に依存して、1週間に1回、1週間に数回(例えば、1日おき)、1日に1回または1日に複数回で、投与され得る。局所投与または選択的摂取(例えば、局部局所投与)の場合、この活性化合物の有効局部濃度は、血漿濃度には関係し得ない。当業者は、過度の実験をすることなしに、有効局部投薬量を最適化できる。
【0157】
好ましくは、この化合物は、実質的な毒性を引き起こすことなく、治療または予防の恩恵をもたらす。この化合物の毒性は、標準的な医薬手順を使用して、測定され得る。毒性と治療(または予防)効果との用量比(LD50/ED50)は、治療指数である(LD50は、集団の50%を死なせる用量であり、そしてED50は、集団の50%に治療的に有効な用量である)。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0158】
(6.9 キット)
本明細書中で記述した化合物および/またはプロドラッグは、キットの形態で組み立てられ得る。いくつかの実施態様では、このキットは、投与用の組成物を調製する化合物および試薬を提供する。この組成物は、乾燥または凍結乾燥形態、または溶液(特に、無菌溶液)中であり得る。この組成物が乾燥形態であるとき、その試薬は、液状処方を調製する薬学的に受容可能な希釈剤を含有し得る。このキットは、これらの組成物を投与または調剤する装置(これには、注射器、ピペット、経皮パッチまたは吸入剤が挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。
【0159】
これらのキットは、本明細書中で記述した化合物と併用する他の治療化合物を含み得る。いくつかの実施態様では、これらの治療薬は、他の抗癌および抗新生物化合物である。これらの化合物は、別個の形態で提供され得るか、または本発明の化合物と混合され得る。
【0160】
これらのキットは、この組成物の調製および投与、組成物の副作用、および何らかの他の関連情報についての使用説明書を含む。これらの使用説明書は、任意の適当な形式であり得、これには、印刷物、ビデオテープ、コンピューター読み取り可能ディスク、または光ディスクが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0161】
(7.実施例)
本発明は、以下の実施例を参照して、さらに規定されるが、これらは、本明細書中で記述した種々の化合物の調製、それらの生物学的活性をアッセイする方法、およびそれらの使用方法を記述する。物質および方法の両方に対して、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの改良が実行され得ることは、当業者に明らかとなる。
【0162】
(7.1 4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−3−メチルニトロベンゼンの調製)
反応:
【0163】
【化57】

手順:N−メチルピロリドン(NMP)(10mL)中の4−フルオロ−3−メチルニトロベンゼン1(20g、129mmol)およびN−メチルピペラジン3(25.82g、258mmol)の均一混合物を、N下にて、24時間還流した(120℃)。その反応混合物を、室温まで冷却するとすぐに、飽和NaCl溶液(100mL)に注いだ。得られた固形物を約30秒間超音波処理し、濾過し、氷−冷水(2×10mL)で洗浄し、そして高真空下にて乾燥して、4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−3−メチルニトロベンゼン5(28g、92%)を得た。
【0164】
【化58】


【0165】
(7.2 4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−3−メチルアニリンの調製)
反応:
【0166】
【化59】

手順:メタノール(1.2リットル)中の4−(4−メチルピペラジニル)−3−メチルニトロベンゼン5(20g、85mmol)、10%Pd/C(1.3g)の均一混合物を、40 PSIで、3時間にわたって、水素化した[H]。このパラジウム触媒をセライトパッドで濾過し、メタノール(3×50mL)で洗浄し、そして合わせた濾液を濃縮して、4−(4−メチルピペラジニル)−3−メチルアニリン7(15g、86%)を得た。
【0167】
【化60】


【0168】
(7.3 3−アザ−4−オキソ−トリシクロ[4.2.1.0(2,5)]ノナ−7−エンの調製)
反応:
【0169】
【化61】

手順:第1部:2,5−ノルボナジエン47(25.0mL、0.246モル)のCHCl(110mL、フレッシュボトル)溶液を、氷/NaCl浴(−10℃)にて、冷却した。これに、その温度を5℃未満で維持する速度で、CSI(21.4mL、0.246モル)のCHCl(45mL、フレッシュボトル)溶液を滴下する(この添加は、およそ1.25時間かかった)。この添加が完了すると、その反応混合物を、0〜5℃で、1時間撹拌し、次いで、冷却浴から除去し、そして20℃まで温めた。この反応混合物を水(60mL)でクエンチし、そして数分間激しく撹拌した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、そしてNaSOで乾燥した。濃縮すると、淡褐色油状物が得られた。
【0170】
第2部:NaSO(24.5g)、水(70mL)およびCHCl(30mL)の混合物を氷/NaCl浴で冷却した。第1部から得た油状物を、CHClで、100mLまで希釈し、その温度を15℃未満で維持する速度で、上記混合物に滴下した(この添加は、およそ1.75時間かかった)。その反応混合物のpHをpHメーターでモニターし、そして10%NaOH(w/v)(必要に応じて)で調節することにより、塩基性に保った(pH7〜10)。この添加が完了すると、この反応混合物を、5〜10℃で、1時間撹拌した(最終pHは、8.5であった)。この反応混合物を分液漏斗に注ぎ、そしてCHCl層を分離した。この有機相は、濃厚でゲル様の固形懸濁液であった。それを水(およそ400mL)で希釈して、より自由に流動する溶液にした。水層をCHCl(4×100mL)でさらに抽出した。(あるいは、固形物は、遠心分離により、CHClから分離できる。次いで、これらの固形物は、(殆ど全て溶解するまで)、水で希釈でき、そしてCHClで抽出できる)。水層をCHCl(10×100mL)でさらに抽出した。CHCl抽出物を、生成物の存在について、TLCでモニターした。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、そしてセライトで濾過した。溶媒を除去すると、白色固形物(20.5.g、62%)として、所望生成物であるラセミ−2−エキソ−3−エンド 3−アザ−4−オキソ−トリシクロ[4.2.1.0(2,5)]ノナ−7−エン14r1が得られた。
【0171】
【化62】


【0172】
(7.4 4−オキソ−3−第三級ブトキシカルボニルアザ−トリシクロ[4.2.1.0(2,5)]ノナ−7−エンの調製)
反応:
【0173】
【化63】

手順:CHCl中の3−アザ−4−オキソ−トリシクロ[4.2.1.0(2,5)]ノナ−7−エン(14r1;ラセミ−2−エキソ−3−エキソ;10.0g、74mmol)、(BOC)O(16.1g、74mmol)およびDMAP(1.1g)の均一混合物を、N下にて、室温で、24時間撹拌した。この反応混合物に、EtOAc(100mL)を加え、続いて、HO(100mL)を加え、さらに1時間撹拌した。有機層を分離し、そしてHO(2×100mL)で洗浄した。この有機層を無水NaSOで乾燥し、そして減圧下にて溶媒を除去して、4−オキソ−3−第三級ブトキシカルボニルアザ−トリシクロ[4.2.1.0(2,5)]ノナ−7−エン(16r1;ラセミ−2−エキソ−3−エキソ)(16.5g、70%)を得た;
【0174】
【化64】


【0175】
(7.5 (±)ラセミ(2−エキソ−3−エキソ)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンからの立体異性的に純粋なジアステレオマーの調製および単離)
2−アミノビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−3−カルボキサミドの2−エキソ−3−エキソラセミ化合物から、表題化合物のラセミ混合物を調製した。
【0176】
反応:
【0177】
【化65】

手順:ゴム製隔壁および磁気撹拌棒を備え付けた丸底フラスコに、窒素の正圧下にて、ラセミN−BOC−β−ラクタム16r1(2.0g)を充填した。これに、酢酸エチル(25mL)を加え、続いて、水(25mL)中の30%アンモニアを加え、そして室温で、3時間撹拌した。酢酸エチル層を分離し、NaHCO(20mL)の5%水溶液で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、そして溶媒を蒸発させて、1.10gmのラセミN−BOCカルボキシアミド28r1を得た。
【0178】
反応:
【0179】
【化66】

手順:N入口および磁気撹拌棒を備え付けた丸底フラスコに、ラセミN−BOCラクタム28r1(2.00g、7.9mmol)を充填し、次いで、室温で、2時間にわたって、CHCl中の20%TFAで処理した。得られた溶液を、減圧下にて、濃縮した。高真空下にて、数時間にわたって、TFAの痕跡を除去して、中間体であるTFA塩(30r1、ラセミ)を得た。得られたラセミTFA塩55を、NaHCO(1.33g、15.84mmol)の存在下にて、室温で、48時間にわたって、MeOH:HO(20:10mL)中の2,4−ジクロロ−5−フルオロピリミジン10(1.58g、9.51mM)で処理した。その反応混合物をHO(25mL)で希釈し、NaClで飽和させ、そしてEtOAc(3×50mL)で抽出した。無水NaSOで乾燥するとすぐに、溶媒を蒸発させ、その残渣を(シリカゲル、CHClに次いで、CHCl中の2〜4%2N NH/MeOH)にかけて、1.3gのラセミモノ−SNAr生成物36r1を得た。
【0180】
反応:
【0181】
【化67】

手順:ラセミモノ−SNAr生成物36r1(1.1g、8mmol)、アニリン7(0.90g、4.4mmol)、TFA(0.6mL)およびメタノール(9mL)を充填した封管を、100℃で、24時間撹拌した。得られた粘稠で均一な溶液を濃縮し、その残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、CHClに次いで、CHCl中の2〜5%の2N NH/MeOH)にかけて、予想される2−エキソ−3−エキソラセミ2,4−ピリミジンジアミン誘導体60r1(1.12g;純度:95%)を得た:
鏡像異性体の単離:キラル分取HPLCクロマトグラフィーPhenomenex Chirex 3020 250×10mmカラム(これは、6mL/分の流速で、ヘキサン:ジクロロメタン:メタノールの35:63:2(容量:容量:容量)の混合物で溶出する)により、ラセミ化合物60r1から、ジアステレオマーを分割した。9.44分で溶出する鏡像異性体は、E1鏡像異性体と命名し、そして12.74分で溶出する鏡像異性体は、E2鏡像異性体と命名した。
【0182】
(7.6 Chirazymeを使用する立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの酵素的調製)
(7.6.1 立体異性的に純粋なN−Boc−β−ラクタム反応物の調製)
反応:
【0183】
【化68】

手順:4−オキソ−3−第三級ブトキシカルボニルアザ−トリシクロ[4.2.1.0(2,5)]ノナ−7−エン(16r1;ラセミ−2−エキソ−3−エキソ)(4.0g、17.02mmol)、樹脂結合/固定化キラザイムL−2、B型、c.f.(8.0g、BioCatalytics Inc.,Pasadena,CAから購入した)およびジイソプロピルエーテル(80mL)を充填した乾燥封管を、インキュベーター中にて、60℃で、60時間穏やかに振盪した。(ラセミN−BOC−β−ラクタム16r1の酵素的分割に続いて、プロトンNMRにかけた。鏡像異性的に純粋なN−BOCラクタム16aおよびN−BOCカルボン酸26bの第三級ブチル基の積分は、1:1の比で見られた)。得られた反応混合物を濾過し、そして固形樹脂をジイソプロピルエーテル(2×40mL)で洗浄した。その濾液を濃縮して、鏡像異性的に純粋なN−BOC−p−ラクタム16aおよびN−BOCカルボン酸26bの混合物(全質量:4.0gm)を得た。
【0184】
反応:
【0185】
【化69】

手順:ゴム製隔壁および磁気撹拌棒を備え付けた丸底フラスコに、窒素の正圧下にて、鏡像異性的に純粋なN−BOC−ラクタム16aおよびN−BOCカルボン酸26b(4.0g)の混合物を充填した。これに、酢酸エチル(50mL)を加え、続いて、25%水酸化アンモニウム(50mL)を加え、そして室温で、3時間撹拌した。その反応の進行をTLCでモニターした。酢酸エチル層を分離し、NaHCO(40mL)の5%水溶液で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、そして溶媒を蒸発させて、キラルHPLCで測定したとき、99%より高い鏡像異性過剰で、2.00gm(理論値8.51mmolから7.93mmol;収率93%)の所望の鏡像異性的に純粋なN−BOCカルボキシアミド28aを得た。このN−BOCカルボン酸アンモニウムを含有する水溶液を、冷1N HClで酸性化し、続いて、CHClで抽出すると、N−BOCカルボン酸26b(1.8g、理論値8.51mmolから7.11mmol、収率84%)が再び生じた。
【0186】
【化70】


【0187】
(7.6.2 立体異性的に純粋なモノSNAr生成物の調製)
反応:
【0188】
【化71】

手順:N入口および磁気撹拌棒を備え付けた丸底フラスコに、鏡像異性的に純粋なN−BOC カルボキシアミド28a(2.00g、7.9mmol)を充填し、次いで、室温で、2時間にわたって、CHCl中の20%TFAで処理した。その反応の進行をTLCでモニターした。得られた溶液を、減圧下にて、濃縮した。数時間.高真空下にて、TFAの痕跡を除去して、定量収率で、鏡像異性的に純粋な中間体であるTFA塩30aを得た。
【0189】
【化72】

得られたTFA塩30aを、MeOH:HO(20:10mL)中で、NaHCO(1.33g、15.84mmol)の存在下にて、室温で、48時間にわたって、2,4−ジクロロ−5−フルオロピリミジン34(1.58g、9.51mmol)で処理した。その反応混合物をHO(25mL)で希釈し、NaClで飽和し、そしてEtOAc(3×50mL)で抽出した。無水NaSOで乾燥して溶媒を蒸発させるとすぐに、その残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、CHClに次いで、CHCl中の2〜4%の2N NH/MeOH)にかけて、2.02g(91%)の所望のモノ−SNAr生成物36aを得た。
【0190】
【化73】

その鏡像異性体純度は、キラルHPLCで測定したとき、99%より高かった;[α]+61.10°(c 1.0、MeOH)。
【0191】
(7.6.3 立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの調製)
反応:
【0192】
【化74】

手順:撹拌棒、還流冷却器およびN入口を備え付けた乾燥反応フラスコに、鏡像異性的に純粋なモノ−SNAr生成物36a(2.25g、8mmol)、アニリン7(1.80g、8.8mmol)、TFA(1.12ml)およびイソプロパノール(18ml)を充填し、そして得られた反応混合物を、還流温度で、8〜10時間撹拌した。この反応混合物を室温まで冷却した後、酢酸エチル(20ml)を加えた。得られた固形物を濾過し、そして酢酸エチル(2×5ml)で洗浄して、酸塩の形状で、化合物60aを得た。次いで、得られた固形物を水に取り入れ、その水性混合物を、NaHCO水溶液で、pH9に調整すると、固形物が沈殿した。この固形物をこの混合物から濾過し、水で洗浄し、そして乾燥して、3.3g(93%)の2,4−ピリミジンジアミン誘導体60aを得た。
【0193】
【化75】

そのキラル分析データ、H NMRおよびLCMS分析により、E1と命名された鏡像異性体と同じであることが分かった。
【0194】
(7.7 Novazyme435酵素を使用する立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの酵素的調製)
(7.7.1 立体異性的に純粋なβ−ラクタムの調製)
反応:
【0195】
【化76】

手順:圧力フラスコ中にて、固定化リポラーゼ(8.0g、Sigma製、製造番号L4777)、β−ラクタム14r1(ラセミ:2−エキソ−3−エキソ)(4.0g、7.4mmol)および水(0.13mL、7.4mmol)をジイソプロピルエーテル250mLに加えた。その混合物を窒素で20分間脱気し、封止し、そして70℃で、14日間インキュベートした。この混合物を室温まで冷却し、セライトで濾過し、そしてジイソプロピルエーテル300mLで洗浄した。合わせた濾液を乾燥状態まで濃縮し、その残渣をジイソプロピルエーテルから結晶化して、無色針状物(1.22g、61%)として、鏡像異性的に純粋なβ−ラクタム14aを得た。この鏡像異性体の純度は、キラルHPLCで測定したとき、99%より高かった。
【0196】
(7.7.2 立体異性的に純粋な2−N−Boc−アミノ−3−アミノカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エンの調製)
反応:
【0197】
【化77】

手順:CHCl中の鏡像異性的に純粋な3−アザ−4−オキソ−トリシクロ[4.2.1.0(2,5)]ノナ−7−エン14a(1.1g、8.2mmol)、(BOC)O(2.76g、12.3mmol)およびDMAP(100mg)の均一混合物を、N下にて、室温で、3時間撹拌して、鏡像異性的に純粋なN−BOCラクタム16aを得、これを、単離することなく、さらに使用した。その反応混合物に、25%水酸化アンモニウム水溶液20mLを加え、そして撹拌をさらに4時間継続した。水を加え、この反応混合物をジクロロメタン(2×50ml)で抽出した。合わせた有機相をHCl水溶液(5%)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧下にて乾燥状態まで減らして、白色固形物として、鏡像異性的に純粋なN−BOCカルボキシアミド28a(2.51g)を得、これを、さらに精製することなく、次の工程で使用した。
【0198】
(7.7.3 立体異性的に純粋なモノSNAr生成物(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノコボニル(Aminocobonyl)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−2−クロロ−5−フルオロ−4−アミノピリジンの調製)
反応:
【0199】
【化78】

手順:鏡像異性的に純粋なN−BOCカルボキシアミド28a(2.51g)をジクロロメタン10mLに溶解し、そしてTFA(10mL)で処理した。その混合物を、室温で、1時間撹拌し、そして減圧下にて、乾燥状態まで濃縮した。その残渣をトルエンに懸濁し、再度、乾燥状態まで濃縮した。得られた固形物をメタノール:水(30mL:3mL)に溶解し、そして炭酸水素ナトリウム1.5gで処理した。5−フルオロ−2,4−ジクロロピリミジン34(3g、17.9mmol)を加え、その混合物を、室温で、2日間撹拌した。真空下にて揮発性物質を除去し、その残渣をブラインに懸濁した。沈殿物を濾過し、乾燥し、そしてカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン−メタノール、20:1)にかけて、白色固形物(1.7g、74%)として、所望の鏡像異性的に純粋なモノ−SNAr生成物36aを得た。
【0200】
(7.7.4 立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの調製)
反応:
【0201】
【化79】

手順:イソプロパノール4mL中のアニリン7(400mg、1.95mmol)、鏡像異性的に純粋なモノ−SNAr生成物36a(400mg、1.41mmol)およびTFA(0.2mL)の均一混合物を、封管中にて、100℃で、20時間撹拌した。この混合物を室温まで冷却し、ジエチルエーテル2mLで希釈し、得られた沈殿物を濾過し、そしてジエチルエーテルで洗浄した。残留している固形物を水に溶解し、そして25%水酸化アンモニウム水溶液で処理した。得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、そして乾燥して、灰白色固形物として、527mg(83%)の所望生成物である2,4−ピリミジンジアミン誘導体60aを得た。LCMSにより、純度を測定したところ、97%より高く、その鏡像異性体の純度は、キラルHPLCで測定したところ、99%より高かった。キラル分析データ、H NMRおよびLCMS分析は、命名したE1である鏡像異性体と同じであった。
【0202】
(7.8 キラル補助剤として(R)−メチル−p−メトキシベンジルアミンを使用する立体異性的に純粋な化合物の調製)
(7.8.1 2−エキソ−3−エキソラセミアミンの調製)
反応:
【0203】
【化80】

手順:乾燥THF(75mL)中の4−オキソ−3−第三級ブトキシカルボニルアザ−トリシクロ[4.2.1.0(2,5)]ノナ−7−エン(16r1;ラセミ−2−エキソ−3−エキソ)(9.2g、40mmol)および(R)−メチル−4−メトキシベンジルアミン13(18、24g、48mmol)の均一混合物を、室温で、48時間撹拌した。その反応混合物を濃縮し、ヘキサン(5mL)に懸濁し、超音波処理し、そして固形物を濾過により分離して、ジアステレオマー20aおよび21bの混合物(12mg)を得た。あるいは、この精製は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサンに次いで、ヘキサン中の5%、10%、20%および50%EtOAc)を使用して、行うことができる。
【0204】
(7.8.2 2−エキソ−3−エキソラセミモノSNAr生成物の調製に続いて結晶化反応による鏡像異性的に純粋な化合物の分離)
反応:
【0205】
【化81】

手順:CHCl中のジアステレオ異性体20aおよび20b(6.0g、17mmol)、TFA(20mL)の不均一混合物を、室温で、2時間撹拌した。TLCを使用して、この反応の進行をモニターした。得られた反応物を乾燥状態まで濃縮し、そして高真空下にて、数時間乾燥して、中間体22aおよび22bのジアステレオ異性体混合物を得た。次いで、この混合物を、NaHCO(5.7g、68mmol)の存在下にて、MeOH:HO(それぞれ50mL)中で、室温で、24時間にわたって、2,4−ジクロロ−5−フルオロピリミジン34(3.4g、20mmol)と反応させた。次いで、この反応混合物をNaCl−飽和水(50mL)で希釈し、そしてCHClで抽出した。抽出物を無水NaSOで乾燥し、続いて、減圧下にて溶媒を除去して、残渣を得、これを、クロマトグラフィー(シリカゲル、CHClに次いで、CHCl中の2%の2N NH/MeOH)にかけた。このクロマトグラフィー精製により、ジアステレオ異性体38aおよび38bの混合物(4.0g)(逆相LCMSにおいて、明らかな分離と共に、1:1の比が見える)が得られた。得られた4.0グラムを、EtOAc:ヘキサン(30:150mL;v/v)を使用して結晶化すると、中間体38aの結晶性物質が得られ、これを、X線結晶構造により、確認した;化学的純度:96%および%de:96%。[α]−36.7°(c、0.18 MeOH)。他の異性体を含有する母液は、%deが低く(70〜80%)、これは、ジアステレオ異性体38bであると推測される。
【0206】
(7.8.3 キラル補助剤を含有する立体異性的に純粋な生成物の調製)
反応:
【0207】
【化82】

手順:MeOH(10mL)中のジアステレオ異性体38a(1.42g、3.4mmol)、アニリン7(0.834g、4.0mmol)およびTFA(700mg)の混合物を、封管中にて、100℃で、24時間加熱した。得られた残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、CHClに次いで、CHCl中の2%の2N NH/MeOH)にかけて、無色固形物(化学的純度:96%)として、生成物40aを得た。
【0208】
(7.8.4 キラル補助剤の開裂)
40aからのキラル補助剤の開裂は、困難であることが分かったので、従って、以下のようにして、中間体化合物38aおよび38bからのキラル補助剤の開裂に続いて、アニリン4との第二SNAr反応を実行した。
【0209】
(7.8.5 立体異性的な純粋な中間体38aからのキラル補助剤の開裂および立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの調製)
反応:
【0210】
【化83】

手順:キラル補助剤38aとのモノ−SNAr生成物を、CHCl:HO中にて、室温で、DDQ(3当量)と反応させて、所望のモノ−SNAr生成物36aを得た。このモノ−SNAr生成物をカラムクロマトグラフィーで精製すると、酵素経路によって得た化合物36aと同じであることが分かり、このことは、キラル分析用HPLC、LCMSおよびH NMRで確認した。さらに、MeOH:TFA中にて、100℃で、封管中にて、24時間にわたって、モノ−SNAr生成物36aとアニリン7とを反応させると、所望生成物60aが得られた。それをカラムクロマトグラフィーで精製し、そしてH NMR、LCMSおよびキラル分析用HPLC、LCMSおよびHNMRで分析した。このキラル分析用HPLC、LCMSおよびHNMR分析により、生成物60aに対するデータがE1と命名した鏡像異性体と一致することが明らかとなった。
【0211】
(7.8.6 中間体38bからのキラル補助剤の開裂および立体異性的に純粋な(1S,2R,3S,4R)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの調製)
反応:
【0212】
【化84】

手順:モノ−SNAr生成物38bを、CHCl:HO中にて、室温で、DDQ(3当量)と反応させて、所望のモノ−SNAr生成物36bを得た。このモノ−SNAr生成物をカラムクロマトグラフィーで精製すると、酵素経路によって得たものと異なることが分かり、このことは、キラル分析用HPLCで確認した。さらに、MeOH:TFA中にて、100℃で、封管中にて、24時間にわたって、モノ−SNAr生成物36bとアニリン7とを反応させると、所望生成物60bが得られた。それをカラムクロマトグラフィーで精製し、そしてH NMR、LCMSおよびキラル分析用HPLC、LCMSおよびHNMRで分析した。このキラル分析用HPLC、LCMSおよびHNMR分析により、生成物60bに対するデータがE2と命名した鏡像異性体と一致することが明らかとなった。[α]−85.9°(c、1.17 MeOH)。
【0213】
(7.9 HCl塩の調製)
下記のようにして、ラセミ化合物60r1および立体異性的に純粋な化合物60aのHCl塩を調製した。
【0214】
(7.9.1 ラセミN4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミン塩化水素塩の調製)
2−エキソ−3−エキソラセミN4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミン(60r1)(0.140g、0.3mmol)のMeOH(3mL)溶液に、0℃で、HCl(4M、ジオキサン、0.170mL、0.681mmol)を滴下し、次いで、0℃で、1時間、そして室温で、15分間撹拌した。その透明な均一溶液を濾過し、濃縮し、そしてEtOHに再溶解した。この含エーテル溶液に酢酸エチルを加えて、所望生成物を沈殿させ、これを単離して、2−エキソ−3−エキソラセミN4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンビス塩化水素塩(化合物60r1・2HCl)を得た。LCMS:純度:98%;MS(m/e):453(MH)。
【0215】
(7.9.2 立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミン塩化水素塩の調製)
同様の様式(上記)で、2当量のHCl(4M、ジオキサン)と、立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミン(60a)とを相互作用させると、立体異性的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンビス塩化水素塩(化合物60a・2HCl)が得られた。LCMS:純度:97%;MS(m/e):453(MH+);[α]+46.3°(c、0.04 MeOH)。
【0216】
(7.10 (1R,2R,3S,4S)N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−(1,3−オキサゾール−2−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの調製)
【0217】
【化85】

上記のようにして、(1R,2R,3S,4S)N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−(1,3−オキサゾール−2−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミン(化合物90a)を調製した。
【0218】
【化86】


【0219】
(7.11 インビトロでの細胞増殖の阻止)
化合物60r1、60r2、60r1・2HCl、60a、60bおよび60a・HClを、標準的なインビトロ抗増殖アッセイを使用して、増殖を阻害する能力について、種々の異なる種類の腫瘍細胞に対して試験した。試験した種々の細胞株としては、以下が挙げられる:A549(肺癌腫);ASPC−1(膵臓腺癌);BXPC−3(膵臓腺癌(pabcreatic adenocarcinoma));CaOV−3(卵巣腺癌);COLO 205(結腸直腸腺癌);DU145(前立腺癌腫);ES−2(卵巣明細胞癌腫);H1299(非小細胞肺癌)H1155(非小細胞肺癌);H460(大細胞肺癌);HELA(子宮頚部腺癌);HL160(前骨髄芽細胞白血病);K562(骨髄慢性骨髄性白血病);L1210(マウスリンパ性白血病);MiaPaCa−2(膵臓癌腫);MOLT4(Tリンパ芽球急性リンパ芽球性白血病);OVCAR−3(卵巣腺癌);MOLT3(Tリンパ芽球急性リンパ芽球性白血病);OVCAR−8(卵巣癌腫);PC3(前立腺腺癌);SK−OV−3(卵巣腺癌);SU86.86(膵臓癌腫);SW620(結腸直腸腺癌);THP−1(単球急性単球性白血病);TOV−21G(卵巣明細胞癌腫);U20S(骨肉腫);ならびにU937(細網肉腫)。
【0220】
これらの化合物を使って得られたIC50値を、以下の表2において提供する。表2において、「+」は1μM以下のIC50値を示し、「++」は20nM以下のIC50値を示し、「+++」は10nM以下のIC50値を示し、そして「−」は1μMを超えるIC50値を示す。空欄は、その特定の細胞株に対して試験しなかったことを示す。
【0221】
【化87】

【0222】
【化88】


【0223】
(7.12 機能性細胞アッセイにおけるAuroraキナーゼ類の阻害)
化合物60aおよび60bを、Auroraキナーゼ−Bを阻害する能力について、機能性細胞アッセイ(基質であるヒストンH3のリン酸化を含む)において試験した。このアッセイのために、A549細胞を、1日目の午後遅くにマイクロタイター皿のウェル内に播種した(100μlのF12K培地中で5000細胞/ウェル)。細胞を、一晩増殖させた(37℃、5% CO)。2日目に、50μlのノコダゾール(培地中1μM)を各ウェルに添加し、333nMの終濃度にした。細胞を、同じ条件下で、さらに18時間増殖させた。
【0224】
3日目に、種々の濃度の試験化合物の50μlのアリコートを、ウェルに添加した。試験化合物を、2mMストック溶液(DMSO中)の2倍の連続希釈によって調製した。次いで、DMSO中の希釈した化合物を、培地でさらに1:50に希釈し、4×試験化合物、98%培地、2%DMSOを含む最終溶液を得た。インキュベーション後、この培地/試験化合物を洗浄し、そして細胞を2%パラホルムアルデヒドで固定した(Dulbeccoリン酸緩衝化食塩水「DPBS」中で、25μl/ウェル、20mmを超えるインキュベーション)。固定した細胞を、DPBS(200μl/ウェル)で1回洗浄し、ホスホ−ヒストンH3で染色し(細胞シグナリング技術;DPBS中1:500、10%正常ヤギ血清「NGS」、0.05% Triton X−100;室温で1〜2時間)、そしてDPBS(200μl/ウェル)で2回洗浄した。次いで、この細胞を、蛍光色素で標識された二次抗体(二次抗体ロバ抗マウスAlexFluor 488(Invitrogen Molecular Probes;1:2000))により室温で1時間、そしてDAPI(lmg/mlストック溶液の1:15,000)により室温で1時間染色し、DPBS(200μl/ウェル)で3回洗浄し、そして4℃のDPBS(100μl/ウェル)下で分析の準備が整うまで保存した。
【0225】
Plan−NEOFLUAR 10×対物レンズ、Hamamatsu Lightningcure 200水銀−キセノン光源およびOmega Optical XF57四重フィルターを備えたZeiss Axiovert S100倒立蛍光顕微鏡を、全てのデータ収集に使用した。このシステムは、X/Y/Zコントロール、Ludlフィルターホイール、Zymark TwisterロボットアームおよびQuantixデジタルカメラを備えるLudl Mac2000電動ステージ(Roper Scientific)に備え付けられる。全てのハードウェアを、ImagePro 4.5により、ScopePro/StagePro 4.1モジュール(Media Cybernetics)を用いて、Win2000を実行しているPC上で管理した。ハードウェア管理および画像収集を自動化するため、Visual BasicスクリプトをImageProのために作成した。焦点合わせを、StageProに慣用的に含まれるauto−focusソフトウェアによって実施し、最大局所コントラストを使用して、各ウェルにおいて1回捕捉される焦点のZ系列から得られる最高の面を決定した。一旦適切な焦点が達成された後、画像を3×3グリッドパターン(焦点合わせの位置に隣接するがこれを含まない画像)で捕捉した。画像を、細分化(segmentation)およびImageProソフトウェアパッケージ中に含まれる形態学的慣用手法を用いて、12ビットフォーマットで捕捉しそして分析した。同定された核を計数し、そして実験条件に沿う各細胞について、MySQL 4.0.14を用いてデータベースにピクセルデータを保存した。実験結果およびグラフ作成のその後の分析を、Matlab 6.5を用いて行った。
【0226】
データのホスホ−ヒストンH3分析を、Facsファイルに変換し、そしてFlowJoを用いて分析した。ホスホ−H3細胞の百分率を、各化合物濃度でプロットし、AuroraB阻害についてのEC50を決定した。
【0227】
結果。化合物60aは、このアッセイにおいて、Auroraキナーゼ−Bにより、約7nMのIC50で阻害された。コントロール的に、その鏡像異性体である化合物60bのIC50は、2.49μMであり、約350倍高かった。
【0228】
(7.13 サルにおける化合物E1の薬物動態)
化合物60aをサルに静脈(生理食塩水中で1mg/kg)および経口(生理食塩水中で5mg/kg)投与し、その血漿濃度を、時間の経過と共に、モニターした。静脈内投与したとき、化合物の血漿濃度は、投与に続いて11時間にわたって、7nMのIC50より高いままであった;経口投与したとき、IC50より高い血漿濃度が、20時間にわたって、維持された。
【0229】
(7.14 化合物60aはインビボで腫瘍を縮小する)
化合物60a・2HClの能力を、A549腫瘍およびColo205腫瘍を縮小させる能力について、SCIDマウスの標準的異種移植治療モデルにおいて試験し、ならびに、Colo205腫瘍およびMiaPaCa腫瘍を縮小させる能力について、SCIDマウスの標準的異種移植再発モデルにおいて試験した。明らかな腫瘍が表れ、そして事前に選択した容量(処置モデルにつき約100mm、再発モデルにつき300mmより大)であった場合、以下の表3(処置プロトコール))および表4(再発プロトコール)に特定した量でかつ特定した投薬レジメンに従い、マウスに試験化合物を投与した。
【0230】
【化89】

【0231】
【化90】


【0232】
結果。処置モデルにおける、Colo205腫瘍増殖における化合物60a・2HClの阻害効果を、図1および図2に図示する。毎日の投薬レジメンの結果を、図1に示す;パルス投薬レジメンの結果を、図2に示す。両投薬レジメンは、試験した全ての投薬レベルについてビヒクルコントロールと比較して、腫瘍増殖速度の有意な(p<0.050)低下を示した。549腫瘍は、処置に対しより反応性が低く、5日間投薬/2日間休薬および10mg/kg qd(p>0.05)の用量レベルでの投薬レジメン後に、平均腫瘍容積の約40%の減少を生じた。
【0233】
再発モデルにおけるColo205腫瘍増殖における化合物60a・2HClの阻害効果を、図3に図示する。再発モデルにおけるMiaPaCa腫瘍における化合物60a・2HClの効果を、図4に図示する。腫瘍増殖速度における有意な低下を、両腫瘍系統で観察した。これらの低下は、投与の様式とは独立していた。さらに、MiaPaCa腫瘍において観察された低下は、タキソールによって観察された低下と類似していた(図4を参照)。
【0234】
本発明は、理解し易くするために、ある程度詳細に記述しているものの、添付の請求の範囲内において、ある種の変更および改良が実行され得ることは明らかである。従って、記述した実施態様は、限定ではなく例示と見なされ、本発明は、本明細書中で示した詳細には限定されず、添付の請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内で変更され得る。
【0235】
本願全体にわたって引用した全ての文献および特許の参考文献の内容は、全ての目的について、本願で参考として援用されている。
【図面の簡単な説明】
【0236】
【図1】図1は、標準的な異種移植治療および回帰モデルにおける種々の異なる種類の腫瘍に対する(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンビス塩酸塩(化合物60a・2HCl)の阻害効果を図示している。
【図2】図2は、標準的な異種移植治療および回帰モデルにおける種々の異なる種類の腫瘍に対する(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンビス塩酸塩(化合物60a・2HCl)の阻害効果を図示している。
【図3】図3は、標準的な異種移植治療および回帰モデルにおける種々の異なる種類の腫瘍に対する(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンビス塩酸塩(化合物60a・2HCl)の阻害効果を図示している。
【図4】図4は、標準的な異種移植治療および回帰モデルにおける種々の異なる種類の腫瘍に対する(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンビス塩酸塩(化合物60a・2HCl)の阻害効果を図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I)に従う化合物:
【化1】

該化合物は、それらのプロドラッグ、塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含み、構造式(Ia)の対応するジアステレオマーに富んでいる:
【化2】

ここで:
各Rは、別個に、水素、低級アルキル、−(CHOH、−OR、−O−(CH、−O−(CH−R、−C(O)OR、ハロ、−CFおよび−OCFからなる群から選択される;
各Rは、別個に、水素、低級アルキル、−OR、−O(CH−R、−O(CH−R、−NHC(O)R、ハロ、−CF、−OCF
【化3】

からなる群から選択される
各Rは、別個に、水素、低級アルキル、−(CH−OH、−OR、−O(CH−R、−O(CH−R、ハロ、−CF、−OCF
【化4】

からなる群から選択される;
各Rは、別個に、水素、低級アルキル、アリールアルキル、−OR、−NR、−C(O)R、−C(O)ORおよび−C(O)NRからなる群から選択される;
は、水素、ハロ、フルオロ、−CN、−NO、COまたは−CFである;
各nは、別個に、1〜3の整数である;
各Rは、別個に、水素、低級アルキルおよび低級シクロアルキルからなる群から選択される;
各Rは、別個に、−OR、−CF、−OCF、−NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NRおよび−C(O)NRからなる群から選択される;
各Rは、別個に、水素および低級アルキルからなる群から選択されるか、あるいは、2個のR置換基は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、5員〜7員飽和環を形成し得、該環は、必要に応じて、1個〜2個の追加ヘテロ原子基を含み、該追加ヘテロ原子基は、O、NR、NR−C(O)R、NR−C(O)ORおよびNR−C(O)NRからなる群から選択される;そして
各Rは、別個に、低級モノ−ヒドロキシアルキルまたは低級ジ−ヒドロキシアルキルである、
化合物。
【請求項2】
前記構造式(I)に従う化合物が、(2−エキソ−3−エキソ)シスラセミ化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
約60%またはそれ以上の前記構造式(Ia)のジアステレオマーを含有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
約90%またはそれ以上の前記構造式(Ia)のジアステレオマーを含有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
約99%またはそれ以上の前記構造式(Ia)のジアステレオマーを含有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
が、フルオロである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
が、水素である;Rが、
【化5】

である;そしてRが、
【化6】

以外のものである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
が、水素、メチル、メトキシ、トリフルオロメチルまたはクロロである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
が、メチル、−C(O)CH、−C(O)OCHまたは−C(O)OCHCHである、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
が、水素である;Rが、
【化7】

以外のものである;そしてRが、
【化8】

である、請求項6に記載の化合物。
【請求項11】
が、水素、メチル、メトキシ、トリフルオロメチルまたはクロロである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が、メチル、−C(O)CH、−C(O)OCHまたは−C(O)CHCHである、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
が、
【化9】

以外のものである;そしてRが、
【化10】

以外のものである、請求項6に記載の化合物。
【請求項14】
およびRが、それぞれ、水素であり、そしてRが、−OCHNHRである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
、RおよびRが、それぞれ別個に、水素、メチル、メトキシ、トリフルオロメチルおよびクロロからなる群から選択されるが、但し、R、RおよびRの少なくとも2個が、水素以外のものである、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
が、水素である;Rが、水素、
【化11】

からなる群から選択される;そしてRが、水素、低級アルキル、ハロ、−CF
【化12】

からなる群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項17】
が、水素、メチル、クロロ、−CF
【化13】

からなる群から選択される;そしてRが、メチル、−CORまたは−CO(O)Rであり、ここで、Rが、メチルまたはエチルである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
が、水素、
【化14】

からなる群から選択され、そしてRが、水素、低級アルキル、ハロ、−CF
【化15】

からなる群から選択される、請求項16に記載の化合物。
【請求項19】
が、水素、メチル、クロロ、−CF
【化16】

からなる群から選択される;そしてRが、メチル、−CORまたは−CO(O)Rであり、ここで、Rが、メチルまたはエチルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
が、
【化17】

である;そしてRが、−CORであり、ここで、Rが、メチルである;そしてRが、水素である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
が、
【化18】

である;Rが、−CO(O)Rであり、ここで、Rが、エチルである;そしてRが、水素である、請求項19に記載の化合物。
【請求項22】
が、
【化19】

であり、そしてRが、水素である、請求項19に記載の化合物。
【請求項23】
が、水素である;Rが、
【化20】

である;そしてRが、メチル、−CORまたは−CO(O)Rであり、ここで、Rが、メチルまたはエチルである、請求項19に記載の化合物。
【請求項24】
が、
【化21】

である;Rが、メチルである;そしてRが、水素、メチル、クロロおよび−CFからなる群から選択される、請求項19に記載の化合物。
【請求項25】
が、メチルである、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
実質的に純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[(3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)]フェニル−2,4−ピリミジンジアミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
純粋な(1R,2R,3S,4S)−N4−(3−アミノカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)−5−フルオロ−N2−[(3−メチル−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)]フェニル−2,4−ピリミジンジアミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項28】
請求項1に記載の化合物と、キャリア、賦形剤および/または希釈剤とを含有する組成物。
【請求項29】
前記キャリア、賦形剤および/または希釈剤が、薬学的用途に許容可能である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
細胞の増殖を阻止する方法であって、該細胞を、その増殖を阻止するのに有効な量の請求項1に記載の化合物と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項31】
前記細胞が、腫瘍細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記腫瘍細胞が、肺、大腸、乳房、胃、卵巣、子宮頚部、黒色腫、腎臓、前立腺、リンパ腫、神経芽細胞腫、膵臓、膀胱または肝臓の腫瘍細胞である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
Auroraキナーゼの活性を阻害する方法であって、該Auroraキナーゼを、その活性を阻害するのに有効な量の請求項1に記載の化合物と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項34】
単離または部分的に単離されたAuroraキナーゼを使ってインビトロで実行される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
Auroraキナーゼを発現する細胞を使ってインビトロで実行される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
Auroraキナーゼ媒介プロセスを阻害する方法であって、Auroraキナーゼを発現する細胞を、Auroraキナーゼ媒介プロセスを阻害するのに有効な量の請求項1に記載の化合物と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項37】
前記Auroraキナーゼ媒介プロセスが、有糸分裂を阻害する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞が、腫瘍細胞である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞が、インビトロアッセイにおいて測定されるそのIC50に等しいかそれより高い濃度の前記化合物と接触される、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
Auroraキナーゼ媒介疾患を治療する方法であって、それを必要とする被験体に、該疾患を治療するのに有効な量の請求項1に記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項41】
前記Auroraキナーゼ媒介疾患が、増殖性疾患である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記増殖性疾患が、癌である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記癌が、転移性腫瘍である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記癌が、肺癌、大腸癌、乳癌、胃癌、卵巣癌、子宮頚癌、黒色腫、腎臓癌、前立腺癌、リンパ腫、神経芽細胞腫、膵臓癌、膀胱癌および肝臓癌から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記化合物が、薬学的組成物の形態で投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記化合物が、経口投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
前記化合物が、静脈内投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記被験体が、ヒトである、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
前記化合物が、インビトロアッセイで測定したとき、該化合物のIC50またはそれ以上である血清濃度を達成するのに有効な量で、投与される、請求項40に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−520580(P2008−520580A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541442(P2007−541442)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/041359
【国際公開番号】WO2006/055561
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(504294145)ライジェル ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (63)
【Fターム(参考)】