説明

立体表示装置

【課題】4種類以上の色画素を画素に設けた多眼式立体表示方式または指向性立体表示方式の立体表示装置を提供すること。
【解決手段】立体表示装置1は、行列状に配列された複数の画素17を有する二次元ディスプレイ10と、二次元ディスプレイ10上に設けられて複数のシリンドリカルレンズ21を有するレンチキュラーシート20と、を備える。各シリンドリカルレンズ21は、行方向に互いに隣接する複数の画素17に対応して設けられる。複数の画素17のそれぞれは、互いに異なる単一色を表示する4種類の色画素17R、17G、17B、17Wを備える。複数の画素17ごとに色画素17R、17G、17B、17Wを第1の色画素群および第2の色画素群に分類すると、これら複数の色画素群がそれぞれ異なる行に配置される。行方向に互いに隣接する画素17が有する同一色を表示する色画素同士は、互いに異なる行に、行方向に互いに切れ目なく配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体表示装置に関する。詳しくは、レンチキュラーシートを備える立体表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、三次元画像を表示する立体表示装置がある。
図3は、従来例に係る立体表示装置100の構成を示す図である。この立体表示装置100は、いわゆる多眼式立体表示方式または指向性立体表示方式で三次元画像を表示するものであり、二次元ディスプレイ110と、この二次元ディスプレイ110上に設けられたレンチキュラーシート120と、を備える。
【0003】
二次元ディスプレイ110は、互いに対向して設けられた2つのガラス基板111、112と、これら2つのガラス基板111、112に挟持された液晶層113と、2つのガラス基板111、112の外側に設けられた2つの偏光板114、115と、を備える液晶ディスプレイである。
この二次元ディスプレイ110には、複数の画素117が行列状に配列して設けられる。画素117は、赤(R)を表示するための色画素117Rと、緑(G)を表示するための色画素117Gと、青(B)を表示するための色画素117Bと、を備える。これら色画素117R、117G、117Bのうち互いに隣接するもの同士の間には、遮光部117Xが設けられる。
【0004】
レンチキュラーシート120は、一次元のレンズであるシリンドリカルレンズ121を、レンズ中心軸と略直交する方向に多数配列させたシートである。1つのシリンドリカルレンズ121は、行方向、すなわち水平方向に互いに隣接する複数の画素117に対応する。
【0005】
このため、上述の立体表示装置100が多眼式立体表示方式の場合、空間の水平方向に複数の視点を設定し、それぞれの視点に異なる画像を表示して、三次元画像を表示できる。一方、上述の立体表示装置100が指向性立体表示方式の場合、異なる水平方向に多数の画像を同時に表示して、三次元画像を表示できる。
【0006】
ところで、二次元画像を表示する表示装置では、画素に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類の色画素に加えて、白(W)やシアン(C)といった色画素を設けるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、三次元画像を表示する立体表示装置においても同様に、画素に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類の色画素に加えて、白(W)といった色画素を設けるものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。これらによれば、色画素の種類を4種類以上にしたので、色画素の種類が3種類の場合と比べて色再現性を向上できる。
【特許文献1】特開2006−106659号公報
【特許文献2】特開平9−49986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の表示装置は、二次元画像を表示するものである。また、特許文献2に記載の立体表示装置は、左右の眼に異なる画像を表示して立体感を感じさせる、いわゆる二眼式立体表示方式で三次元画像を表示するものである。このため、多眼式立体表示方式または指向性立体表示方式の立体表示装置において、4種類以上の色画素を画素に設ける技術の開発が要請されている。
【0008】
本発明は、4種類以上の色画素を画素に設けた多眼式立体表示方式または指向性立体表示方式の立体表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の立体表示装置は、行列状に配列された複数の画素(例えば、実施形態の画素17)を有する表示部(例えば、実施形態の二次元ディスプレイ10)と、前記表示部上に設けられ、所定方向に延在する複数のシリンドリカルレンズ(例えば、実施形態のシリンドリカルレンズ21)を有するレンチキュラーシート(例えば、実施形態のレンチキュラーシート20)と、を備える立体表示装置であって、前記各シリンドリカルレンズは、前記複数の画素のうち行方向に互いに隣接する複数の画素に対応して設けられ、前記複数の画素のそれぞれは、互いに異なる単一色を表示する少なくとも4種類以上の色画素(例えば、実施形態の色画素17R、17G、17B、17W)を備え、前記複数の画素ごとに前記複数の色画素を少なくとも2つ以上の色画素群(例えば、実施形態の第1の色画素群および第2の色画素群)に分類すると、これら複数の色画素群がそれぞれ異なる行に配置され、前記複数の画素のうち行方向に互いに隣接する画素が有する同一色を表示する色画素同士は、互いに異なる行に、行方向に互いに切れ目なく配置されることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、画素に、互いに異なる単一色を表示する少なくとも4種類以上の色画素を設ける。そして、各シリンドリカルレンズを、行方向に互いに隣接する複数の画素に対応して設ける。このため、4種類以上の色画素を画素に設けた多眼式立体表示方式の立体表示装置では、空間の行方向に複数の視点を設定し、それぞれの視点に異なる画像を表示して、三次元画像を表示できる。また、4種類以上の色画素を画素に設けた指向性立体表示方式の立体表示装置では、異なる行方向に多数の画像を同時に表示して、三次元画像を表示できる。
【0011】
互いに隣接する色画素同士の間には、遮光部が形成されることがある。この遮光部によれば、互いに隣接する色画素同士の間での光漏れを防止して、コントラストを向上できる。しかしながら、この遮光部により、光が射出されない領域ができてしまうため、水平方向に光強度むらが生じる場合があった。
そこで、この発明によれば、行方向に互いに隣接する画素が有する同一色を表示する色画素同士を、互いに異なる行に、行方向に互いに切れ目なく配置する。このため、行方向に光強度むらが生じるのを防止できる。
【0012】
この場合、前記複数の色画素群のうち行方向に互いに隣接する色画素群同士の間には、遮光部(例えば、実施形態の遮光部17X)が形成され、前記遮光部の行方向の幅は、少なくとも2種類以上あることが好ましい。
【0013】
この発明によれば、遮光部の行方向の幅を、少なくとも2種類以上に設定する。
このため、シリンドリカルレンズの領域のうち端部近傍の遮光部の行方向の幅を、他の遮光部の行方向の幅と比べて大きくしたり小さくしたりすることで、1つの色画素が2つのシリンドリカルレンズの領域に亘って位置するのを防止して、サイドローブを低減でき、繰り返しの画像の発生を抑制できる。
一方、上述の他の遮光部の行方向の幅を、一定にすることで、各シリンドリカルレンズに対応する複数の画素ごとに、これら複数の画素が備える同一色を表示する色画素の水平ピッチを一定にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、画素に、互いに異なる単一色を表示する少なくとも4種類以上の色画素を設ける。そして、各シリンドリカルレンズを、行方向に互いに隣接する複数の画素に対応して設ける。このため、4種類以上の色画素を画素に設けた多眼式立体表示方式の立体表示装置では、空間の行方向に複数の視点を設定し、それぞれの視点に異なる画像を表示して、三次元画像を表示できる。また、4種類以上の色画素を画素に設けた指向性立体表示方式の立体表示装置では、異なる行方向に多数の画像を同時に表示して、三次元画像を表示できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る立体表示装置1の色画素の配置を示す概略図である。立体表示装置1は、二次元ディスプレイ10と、この二次元ディスプレイ10上に設けられたレンチキュラーシート20と、を備える。
【0017】
二次元ディスプレイ10には、複数の画素17が行列状に配列して設けられる。画素17は、赤(R)を表示するための長方形の色画素17Rと、緑(G)を表示するための長方形の色画素17Gと、青(B)を表示するための長方形の色画素17Bと、白(W)を表示するための長方形の色画素17Wと、を備える。これら色画素17R、17G、17B、17Wのうち互いに隣接するもの同士の間には、遮光部17Xが設けられる。
【0018】
レンチキュラーシート20は、一次元のレンズであるシリンドリカルレンズ21を、レンズ中心軸と略直交する方向に多数配列させたシートである。1つのシリンドリカルレンズ21は、行方向、すなわち水平方向に隣接する16個の画素17に対応する。また、行方向に16個、列方向に4個の16×4個の色画素と、これらの色画素を備える複数の画素17に対応する1つのシリンドリカルレンズ21とで、1つの三次元画素を構成している。
【0019】
以下、色画素17R、17G、17B、17Wの配置について詳述する。
色画素17R、17G、17B、17Wは、画素17ごとに列方向に配列される。画素17には、色画素17R、17Gからなる第1の色画素群が設けられた行と、色画素17B、17Wからなる第2の色画素群が設けられた行と、上述の遮光部17Xが設けられた2つの行と、の4つの行がある。
【0020】
例えば、色画素R9、G9、B9、W9を備える画素17に注目すると、1行目には色画素R9および色画素G9が設けられ、3行目には色画素B9および色画素W9が設けられ、2行目および4行目には遮光部17Xが設けられている。
【0021】
また、行方向に互いに隣接する画素17が有する同一色を表示する色画素同士は、互いに異なる行に、行方向に互いに切れ目なく配置される。
【0022】
例えば、赤(R)を表示するための色画素R9、R10に注目すると、色画素R9は、1行目に設けられる。色画素R10は、色画素R9を備える画素と行方向に隣接する画素が備えるものであり、2行目に設けられる。すなわち、色画素R9と色画素R10とは、行方向に互いに隣接する画素17が有する同一色としての赤(R)を表示する色画素であり、互いに異なる行に配置されている。
そして、色画素R9の4辺のうち図1中で右辺を通って列方向に延びる仮想線を想定すると、色画素R10の4辺のうち図1中で左辺は、この仮想線上に位置する。すなわち、色画素R9と色画素R10とは、行方向に互いに切れ目なく配置されている。
【0023】
また、行方向に互いに隣接する色画素同士の間隔は、2種類ある。具体的には、シリンドリカルレンズ21の領域のうち端部近傍での色画素同士の間隔と、シリンドリカルレンズ21の領域のうち端部以外での色画素同士の間隔と、がある。このため、互いに隣接する色画素同士の間に設けられる遮光部17Xの行方向の幅は、2種類ある。
【0024】
シリンドリカルレンズ21の領域のうち端部以外での色画素同士の間隔とは、例えば、色画素R1と色画素B3との間隔や、色画素R2と色画素B4との間隔のことである。この間隔は、画素17が備える色画素17R、17G、17B、17Wの行方向の幅に等しい。
【0025】
シリンドリカルレンズ21の領域のうち端部近傍での色画素同士の間隔とは、例えば、色画素B15と色画素R1との間隔や、色画素B16と色画素R2との間隔のことである。この間隔は、上述のシリンドリカルレンズ21の領域のうち端部以外での色画素同士の間隔に、互いに隣接する2つのシリンドリカルレンズ21の境界線を挟む所定の間隔を加えたものである。
【0026】
さらに、各シリンドリカルレンズ21に対応する複数の画素17ごとに、これら複数の画素17が備える同一色を表示する色画素の水平ピッチが一定である。
【0027】
例えば、赤(R)を表示するための色画素R1、R5、R9、R13は、それぞれ、同一のシリンドリカルレンズ21に対応する複数の画素17が備えるものである。そして、これらの間には、それぞれ、青(B)を表示するための色画素17Bと、上述のシリンドリカルレンズ21の領域のうち端部以外での色画素同士の間隔に設けられた遮光部17Xと、が配置されている。このため、色画素R1、R5、R9、R13の水平ピッチは、一定である。
【0028】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)画素17に、4種類の色画素17R、17G、17B、17Wを設けた。そして、各シリンドリカルレンズ21を、行方向に互いに隣接する複数の画素17に対応して設けた。このため、4種類の色画素17R、17G、17B、17Wを画素17に設けた立体表示装置1が多眼式立体表示方式の場合、空間の行方向に複数の視点を設定し、それぞれの視点に異なる画像を表示して、三次元画像を表示できる。また、4種類の色画素17R、17G、17B、17Wを画素17に設けた立体表示装置1が指向性立体表示方式の場合、異なる行方向に多数の画像を同時に表示して、三次元画像を表示できる。
【0029】
(2)複数の画素17のうち行方向に互いに隣接する画素が有する同一色を表示する色画素同士を、互いに異なる行に、行方向に互いに切れ目なく配置した。このため、行方向に光強度むらが生じるのを防止できる。
【0030】
(3)遮光部17Xの行方向の幅の種類を、2種類に設定した。
このため、互いに隣接する2つのシリンドリカルレンズ21の境界線を挟む所定の間隔を調整して、シリンドリカルレンズ21の領域のうち端部近傍での色画素同士の間隔を調整することで、1つの色画素が2つのシリンドリカルレンズ21の領域に亘って位置するのを防止するとともに、色画素から発せられる光線が、複数のシリンドリカルレンズ21のうち対応するシリンドリカルレンズに隣接するものに入射するのを防止して、繰り返しの画像の発生を抑制できる。
一方、シリンドリカルレンズ21の領域のうち端部以外での色画素同士の間隔を、画素17が備える色画素17R、17G、17B、17Wの行方向の幅に等しく一定とすることで、各シリンドリカルレンズ21に対応する複数の画素17ごとに、これら複数の画素17が備える同一色を表示する色画素の水平ピッチを一定にすることができる。
【0031】
〔第2実施形態〕
図2は、本発明の第2実施形態に係る立体表示装置1Aの色画素の配置を示す概略図である。
本実施形態では、色画素の配置が第1実施形態と異なる。
【0032】
具体的には、第1実施形態では、遮光部17Xを2つの行に設けたが、本実施形態では、遮光部17Xを3つの行に設けている。
例えば、色画素R16、B16、G16、W16を備える画素17に注目すると、1行目には色画素R16および色画素G16が設けられ、3行目には色画素B16および色画素W16が設けられ、2行目、4行目、および5行目には遮光部17Xが設けられている。
【0033】
また、第1実施形態では、行方向に16個、列方向に4個の16×4個の色画素と、これらの色画素を備える複数の画素17に対応する1つのシリンドリカルレンズ21とで、1つの三次元画素を構成した。これに対して、本実施形態では、行方向に25個、列方向に4個の25×4個の色画素と、これらの色画素を備える複数の画素17に対応する1つのシリンドリカルレンズ21とで、1つの三次元画素を構成している。
【0034】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(4)第1実施形態と比べて、三次元画素が備える色画素の数を増加させた。このため、1つのシリンドリカルレンズ21で異なる視点や水平方向に同時に表示できる画像数が増加するので、より滑らかな運動視差や広い奥行き表示範囲を得ることができ、優れた立体表示を行うことができる。
【0035】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0036】
例えば、1つの三次元画素に、第1実施形態では16×4個の色画素を設け、第2実施形態では25×4個の色画素を設けたが、これに限らない。
【0037】
また、上述の各実施形態では、画素17に、赤(R)を表示するための色画素17Rと、緑(G)を表示するための色画素17Gと、青(B)を表示するための色画素17Bと、に加えて、白(W)を表示するための色画素17Wを設けたが、これに限らない。例えば、白(W)を表示するための色画素に代えて、シアン(C)を表示するための色画素や、黄色(Y)を表示するための色画素を設けてもよい。
【0038】
また、上述の各実施形態では、画素17に、4種類の色画素を設けたが、これに限らず、5種類や6種類の色画素を設けてもよい。
【0039】
また、上述の各実施形態では、色画素の形状を長方形としたが、これに限らず、例えば平行四辺形や台形であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態に係る立体表示装置の色画素の配置を示す概略図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る立体表示装置の色画素の配置を示す概略図である。
【図3】従来例に係る立体表示装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1、1A、100…立体表示装置
10、110…二次元ディスプレイ(表示部)
17、117…画素
17B、17G、17R、17W、117B、117G、117R…色画素
17X、117X…遮光部
20、120…レンチキュラーシート
21、121…シリンドリカルレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
行列状に配列された複数の画素を有する表示部と、
前記表示部上に設けられ、所定方向に延在する複数のシリンドリカルレンズを有するレンチキュラーシートと、を備える立体表示装置であって、
前記各シリンドリカルレンズは、前記複数の画素のうち行方向に互いに隣接する複数の画素に対応して設けられ、
前記複数の画素のそれぞれは、互いに異なる単一色を表示する少なくとも4種類以上の色画素を備え、
前記複数の画素ごとに前記複数の色画素を少なくとも2つ以上の色画素群に分類すると、これら複数の色画素群がそれぞれ異なる行に配置され、
前記複数の画素のうち行方向に互いに隣接する画素が有する同一色を表示する色画素同士は、互いに異なる行に、行方向に互いに切れ目なく配置されることを特徴とする立体表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の立体表示装置において、
前記複数の色画素群のうち行方向に互いに隣接する色画素群同士の間には、遮光部が形成され、
前記遮光部の行方向の幅は、少なくとも2種類以上あることを特徴とする立体表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−48134(P2009−48134A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216647(P2007−216647)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】