説明

立体駐車装置の屋根補修工法

【課題】 劣化した屋根の補修に要する作業工数、労力を減じることができるようにする。
【解決手段】 建屋1の既設の各ルーフデッキ4からなる屋根の上側に、新規母屋10を載置して、建屋1上端部の大梁2より既設の屋根を貫通させて立設したボルト11に固定する。新規母屋10の上側に、長手方向に沿ってタイトフレーム12を取り付け、その上に新たなルーフデッキ13の単板を幅方向に並べて取り付けて、該各ルーフデッキ13からなる新規屋根を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直循環式やエレベータ式の立体駐車装置の建屋の屋根が経年変化等で劣化した場合に、該屋根を補修するために用いる立体駐車装置の屋根補修工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
限られた敷地に効率よく車両を駐車するための設備として、いわゆるタワーパーキングと云われる垂直循環式の立体駐車装置(たとえば、特許文献1参照)や、エレベータ式の立体駐車装置(たとえば、特許文献2参照)がある。
【0003】
これらの立体駐車装置は、いずれも上下方向に延びる車両格納スペースを形成するために塔状の建屋を有しており、該建屋の屋根は、軽量化を図るために、ルーフデッキ(折板)、瓦棒、キーストンプレートによって構築されていることが多い。
【0004】
図2はルーフデッキ式の屋根の一例の概略を示すもので、建屋1の上端部に水平方向に配設されている大梁2の上側に、複数の母屋3を所要間隔で平行に配置して、該各母屋3が上記大梁2に固定してある。上記各母屋3の上側には、長手方向に沿って折板形状の図示しないタイトフレームを取り付け、該タイトフレームの折板形状に合わせて、ルーフデッキ(折板)4の単板を並べて配置すると共に、該各ルーフデッキ4を上記図示しないタイトフレームに固定することで屋根を構築してある。5は建屋1の支柱、6は建屋1の外壁、7は建屋1の屋根の外周に設けたパラペット8の上端の笠木9と、ルーフデッキ4との間に設けた水切りである。
【0005】
又、図示してないが、瓦棒やキーストンプレートによる屋根の場合は、上記図2に示したと同様に、建屋1の上端部の大梁2の上側に母屋3を取り付け、該母屋3上に、瓦棒や、キーストンプレートを並べて載置して固定するようにしてある。
【0006】
ところで、上記ルーフデッキ4、瓦棒、キーストンプレートは、通常、金属製であるため、経年変化により錆びることがある。このような建屋1の屋根に錆が生じた場合は、放っておくと屋根からの雨漏りにつながる虞があるため、錆の生じた部分をけれんした後、塗装することで補修を行うことが一般的に行われている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−346515号公報
【特許文献2】特開2004−278199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記立体駐車装置の建屋1の屋根に生じた錆がひどい場合は、けれんと塗装による補修のみでは雨漏りを防ぐことが困難になることがある。
【0009】
そのために、上記建屋1の屋根の補修を行うための1つの手法としては、上記錆が発生した建屋1の屋根を交換すること、すなわち、上記錆が生じて劣化した既設の屋根を一旦撤去した後、屋根を新たに構築することが考えられる。
【0010】
しかし、建屋1の屋根の交換を実施する場合は、上記既設の屋根を撤去してから、新規の屋根を構築するまでの間、建屋に屋根のない期間が生じるため、この期間中は建屋内部へ雨水が侵入しないようにするための対策を講じる必要がある。
【0011】
又、新規屋根の構築に先立って既設屋根の撤去を行う必要があり、しかも、上記のような立体駐車装置では、通常、屋根の下面に耐火被覆を設けることが必要とされていることから、既設の屋根の撤去時には、該既設の屋根の下面の耐火被覆を剥がす作業が必要になり、又、新規の屋根の構築後には、新たに構築した屋根の下面に耐火被覆を施工する作業が必要になることから、建屋1の屋根の補修に要する作業工数が嵩むと共に、上記剥離した耐火被覆を含む多くの廃棄物が排出されるというのが実状である。
【0012】
そこで、本発明は、立体駐車装置の既設の屋根が劣化した場合に、既設の屋根の撤去作業や、上記耐火被覆の剥離作業や、新たな耐火被覆の施工作業を要することなく新たな屋根を構築できて、立体駐車装置の屋根の補修作業に要する作業工数を削減して、労力を軽減できる立体駐車装置の屋根補修工法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して立体駐車装置の建屋の既設屋根の上側に、新たな母屋を所要間隔で平行に載置して、該各新規母屋を、上記建屋の上端部の大梁より上記既設屋根を貫通させて立設したボルトに固定し、次いで、上記新規母屋の上側に、新規屋根を載置して取り付ける工法とする。
【0014】
又、上記構成において、新規母屋の上側に取り付ける新規屋根を、ルーフデッキ、あるいは、瓦棒又はキーストンプレートからなるものとするようにする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の立体駐車装置の屋根補修工法によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)立体駐車装置の建屋の既設屋根の上側に、新たな母屋を所要間隔で平行に載置して、該各新規母屋を、上記建屋の上端部の大梁より上記既設屋根を貫通させて立設したボルトに固定し、次いで、上記新規母屋の上側に、新規屋根を載置して取り付けるようにしてあるので、既設の屋根の上側に、新規屋根を容易に構築することができる。したがって、上記新規屋根を構築する際に、上記既設の屋根の撤去する必要がないため、工事期間中に立体駐車装置の建屋内に雨水が浸入する虞を解消できる。又、既設の屋根の撤去や、既設の屋根の下面側に設けてある耐火被覆の剥離のための作業を不要にでき、更には、上記新たに構築した新規屋根の下面側に耐火被覆を施工するための作業を不要にできることから、立体駐車装置の屋根の補修作業に要する作業工数を削減できて、省力化を図ることができると共に、コストの低減化を図ることが可能になる。又、上記したように耐火被覆の剥離作業が不要なため、排出される廃棄物の量を削減することも可能になる。
(2)新規母屋の上側に取り付ける新規屋根を、ルーフデッキ、あるいは、瓦棒又はキーストンプレートからなる新規屋根とすることにより、新たに建屋の頂部に設ける新規屋根の軽量化を図ることができる。これにより、建屋の構造材に作用する荷重の負担の増加を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1(イ)(ロ)は本発明の立体駐車装置の屋根補修工法の実施の一形態を示すもので、図2に示したと同様の構成としてある立体駐車装置の建屋1の複数のルーフデッキ4からなる既設屋根の上側に、複数の新規母屋10を所要間隔で平行に載置して、該各新規母屋10を、上記建屋1の大梁2より既設のルーフデッキ4の所要個所を貫通させるようにして立設したボルト11に固定する。
【0018】
更に、上記各新規母屋10の上側に、長手方向に沿って折板形状のタイトフレーム12を取り付けると共に、該タイトフレーム12上に、新たなルーフデッキ13の単板を幅方向に並べて配置し、しかる後、上記各ルーフデッキ13の単板を、上記タイトフレーム12に固定して、該各ルーフデッキ13からなる新規屋根を構築するようにする。
【0019】
詳述すると、上記建屋1の大梁2には、各新規母屋10を配列すべき位置と対応する所要個所に、その上方の既設のルーフデッキ4を貫通して上下方向に延びるボルト11を立設して、該各ボルト11の上端部が、上記既設のルーフデッキ4の上方へ所要寸法突出するようにしておく。
【0020】
なお、上記既設のルーフデッキ4における上記各ボルト11の貫通部分には、ルーフデッキ4の上側よりコーキング材14を施工すると共に、ボルト11の上端部より該ボルト11の外周に嵌めたリング状のプレート15によって、上記コーキング材14を上側から抑えることで、上記既設のルーフデッキ4における上記各ボルト11の貫通部分の防水を図るようにしてもよい。
【0021】
上記各新規母屋10は、たとえば、I型鋼製として、下部フランジ10aにおける上記大梁2より立設した各ボルト11と対応する長手方向所要間隔位置に、ボルト孔16を予め穿設しておく。これにより、上記各新規母屋10を、上記既設のルーフデッキ4の上側に所定の配列で載置するときに、該各新規母屋10に設けてあるボルト孔16を、上記大梁2より立設して上端部が既設のルーフデッキ4より上方へ突出するようにしてある上記各ボルト11の突出部に嵌合させ、その後、上記各新規母屋10の下部フランジ10aの上方から上記各ボルト11にナット17を螺着させて締めこむことで、上記各新規母屋10を、上記既設の各ルーフデッキ4からなる屋根の上側に固定する。
【0022】
次いで、上記各新規母屋10の上部フランジ10bの上面に、それぞれタイトフレーム12を長手方向に沿って配置して溶接等により固定する。しかる後、上記各タイトフレーム12上に、新規のルーフデッキ13の単板を幅方向に並べるよう載置して、該各ルーフデッキ13の単板をタイトフレーム12の対応する個所に固定することで該各ルーフデッキ13からなる新規屋根を構築する。
【0023】
なお、上記各ルーフデッキ13の単板のタイトフレーム12への固定は、従来各ルーフデッキからなる屋根を構築する際に用いられている一般的な手法で固定するようにすればよい。
【0024】
上記のようにして既設の各ルーフデッキ4からなる屋根の上に各ルーフデッキ13からなる新規屋根を構築した後は、屋根の位置が上がることになるため、該各ルーフデッキ13からなる新規屋根の高さに合わせて、屋根外周のパラペット8に設けてある笠木9と、該各ルーフデッキ13からなる新規屋根との間に、水切り18を新設するようにすればよい。
【0025】
このように、本発明の立体駐車装置の屋根補修工法によれば、既設の屋根の上側に、新規母屋10を設けて、該新規母屋10の上側に各ルーフデッキ13からなる新規屋根を構築することができ、これにより、既設屋根が劣化していても、上記各ルーフデッキ13からなる新規屋根によって雨漏りの進行を阻止することができる。
【0026】
したがって、上記各ルーフデッキ13からなる新規屋根を構築する際に、上記既設の屋根の撤去する必要がないため、工事期間中に立体駐車装置の建屋1内に雨水が浸入する虞を解消できる。又、既設の屋根の撤去や、既設の屋根の下面側に設けてある耐火被覆の剥離のための作業を不要にでき、更には、上記新たに構築した各ルーフデッキ13からなる新規屋根の下面側に耐火被覆を施工するための作業を不要にできることから、立体駐車装置の屋根の補修作業に要する作業工数を削減できて、省力化を図ることができると共に、コストの低減化を図ることが可能になる。又、上記したように耐火被覆の剥離作業が不要なため、排出される廃棄物の量を削減することも可能になる。
【0027】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、新規母屋10の上側に、各ルーフデッキ13からなる新規屋根に代えて、瓦棒やキーストンプレートを並べて取り付けることで、瓦棒製やキーストンプレートからなる新規屋根を構築するようにしてもよい。
【0028】
既設の屋根上に設ける新規母屋10の数や配置は、建屋1の屋根形状やサイズ、使用するルーフデッキ13、瓦棒、キーストンプレートのサイズや、建屋1の大梁2の配置等に応じて自在に設定してよい。
【0029】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の立体駐車装置の屋根補修工法の実施の一形態を示すもので、(イ)建屋頂部の概略切断側面図、(ロ)は(イ)のA部を拡大して示す図である。
【図2】立体駐車装置の建屋のルーフデッキ式屋根の一例の概略を示す切断側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 建屋
2 大梁
4 ルーフデッキ(既設屋根)
10 新規母屋
11 ボルト
13 ルーフデッキ(新規屋根)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体駐車装置の建屋の既設屋根の上側に、新たな母屋を所要間隔で平行に載置して、該各新規母屋を、上記建屋の上端部の大梁より上記既設屋根を貫通させて立設したボルトに固定し、次いで、上記新規母屋の上側に、新規屋根を載置して取り付けることを特徴とする立体駐車装置の屋根補修工法。
【請求項2】
新規母屋の上側に取り付ける新規屋根を、ルーフデッキ、あるいは、瓦棒又はキーストンプレートからなるものとする請求項1記載の立体駐車装置の屋根補修工法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−97194(P2009−97194A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268212(P2007−268212)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】