説明

竪型粉砕機

【課題】内部にセパレータを備えたタイプの竪型粉砕機により原料を微粉砕しようとすれば粉砕機内部に留まる粒径の小さな循環原料の割合が高くなる。そのような場合に、粉砕機内の原料が嵩高く滑りやすい状態になり、粉砕ローラの回転が不規則になって、異常振動が発生するという問題を解決する。
【解決手段】回転テーブル2と分級機構14との間に内部コーン30を配して、該内部コーン30の下端にスクリュコンベヤ部を設けることにより、内部コーン30で捕集した粗粉をスクリュ羽根31で圧密してから回転テーブル2上に供給する。内部コーン30で捕集した粗粉を、スクリュ羽根31で一旦、圧密することにより、脱気して嵩を低くしてから、回転テーブル2上に供給することができる。その結果、回転テーブル2上の原料層は、粉砕ローラで粉砕される際においても、従来技術のような急激な容積変化は起こさないので、異常振動を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に石炭、オイルコークス、スラグ、クリンカー、石灰石、その他の無機原料、又バイオマス等の有機原料を粉砕するに好適な竪型粉砕機に係わり、特に、原料を微粉砕する際に好適な竪型粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、石炭等を粉砕する粉砕機として竪型粉砕機(竪型ミル、或いは竪型ローラミルと称されることもある)と呼ばれる粉砕機が広く用いられている。
ここで、竪型粉砕機は、原料を効率的に微粉砕することができるという優れた特性を有している反面、原料の種類や粉砕条件によっては、粉砕の際に、異常振動が発生するという問題点を有していた。竪型粉砕機に発生する異常振動は、様々な原因によって誘発されるため、その振動原因に応じた様々な対策を講じる必要があり、従来から数多くの異常振動防止対策が提案されている。
【0003】
ここで、異常振動を防止する最も一般的な方法として、回転テーブル上に設置しているダムリングの高さを調整する方法が周知である。
しかし、ダムリングの高さを調整するためには、通常、粉砕機の運転を停止する必要がある。そのため、刻々と変化する原料性状変化に合わせて細かく対応するということが難しく、ある程度まで振動を許容して生産を続けるというのが実情であった。
【0004】
また、その他の先行技術として、特許文献1に開示される従来技術が公知である。
【0005】
特許文献1に示される竪型粉砕機は、補助ローラを用いて回転テーブル上の原料層を、一旦、圧密化することにより、粉砕ローラに原料を効率よく噛み込ませるという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−174946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、原料を微粉砕しようとすれば、竪型粉砕機内で繰り返し粉砕する必要があるが、その場合には、竪型粉砕機内に留まって再度粉砕される、所謂、循環原料の割合が高くなる。
前述した循環原料は、粒径の小さな原料の割合が当然に高い。特に、粉砕機の内部にセパレータ等の分級機構を備えるタイプの竪型粉砕機において、原料を微粉砕しようとすれば、循環原料の中に含まれる粒径の小さな原料の割合が増加する。
【0008】
竪型粉砕機内で粒径の小さな原料の割合が高くなると、回転テーブル上の原料層は、空隙率の高い、所謂、嵩高い状態になる。
この嵩高い原料層は、通常、紛体として流動性の高い状態にあり、また、粉砕ローラで粉砕する場合に急激に容積変化が起こる等する。
そのため、この嵩高い原料層を、粉砕ローラにより一挙に粉砕しようとした場合に、回転テーブルに従動して回転している粉砕ローラは、運転中に原料層上で滑ってスリップし、その結果、粉砕ローラの回転が不規則になって、異常振動が発生するという問題が生じた。
【0009】
原料層に含まれた空気を脱気する技術としては、前述した特許文献1に開示された技術が公知であり、補助ローラで圧密した原料層を粉砕ローラに噛み込ませることについて、粉砕効率の向上という、一定の効果は期待できる。
【0010】
しかしながら、前述の従来方法によれば、補助ローラによって噛み込まれた原料が脱気されて圧密されるのであって、補助ローラに噛み込まれないままに粉砕ローラで粉砕される原料も、回転テーブル上には存在するから、これが、竪型粉砕機の粉砕効率を向上させる上での障害となっていた。
【0011】
本発明は、以上、説明したような問題点に鑑みてなされたものであり、前述した石炭類等を効率よく微粉砕するに好適な竪型粉砕機に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明による竪型粉砕機は、
(1) 回転テーブル上に回転自在な粉砕ローラを配するとともに、回転テーブル上方に分級機構を配して、該回転テーブルと該粉砕ローラとの間で粉砕した原料を、回転テーブルの下方から導入したガスによって吹き上げて該分級機構により粗粉と細粉と分離し、細粉を製品として取り出す竪型粉砕機において、回転テーブルと分級機構との間に内部コーンを配して、該内部コーンの下端にスクリュコンベヤを設けることにより、該内部コーンで捕集した粗粉をスクリュコンベヤで圧密してから回転テーブル上に供給する。
【0013】
(2) (1)に記載の竪型粉砕機において、前記内部コーンの側面に原料供給管の排出口を配して、新たに機内に投入される原料と前記粗粉とを、スクリュコンベヤで圧密する。
【0014】
(3) (1)又は(2)に記載の竪型粉砕機において、前記スクリュコンベヤが、内部コーンの下端に配したフィード管に圧密機能を有するスクリュ羽根を挿入した構造とした。
【0015】
(4) (1)から(3)までいずれか1項に記載の竪型粉砕機において、前記スクリュ羽根のリードのピッチが、上方から下方に向かって小さくなる構成とした。
【0016】
(5) (1)から(4)までいずれか1項に記載の竪型粉砕機において、前記スクリュ羽根の軸径が、上方から下方に向かって大きくなる構成とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明による竪型粉砕機によれば、回転テーブルと分級機との間に内部コーンを配して粗粉を捕集するとともに、該内部コーンの下端に捕集したスクリュコンベヤにより、原料を圧密して回転テーブルに供給する。
本発明は前述の構成によって、内部コーンで捕集した粗粉を、スクリュコンベヤで一旦、圧密することにより、脱気して、空隙率を減少させてから、回転テーブル上に供給する。その結果、回転テーブル上の原料層は、粉砕ローラで粉砕される際においても、従来技術のような急激な容積変化は起こさないので、異常振動を抑制できる。
【0018】
また、内部コーンの側面に原料供給管の吐出口を配することにより、内部コーンで捕集した前述の粗粉だけではなく、新規に竪型粉砕機に投入する原料まで、スクリュコンベヤで、一旦、圧密してから、回転テーブル上に供給することができるので、さらに、効果的な脱気が可能となり、異常振動の防止効果がさらに向上する。
【0019】
なお、前記スクリュコンベヤについて、内部コーンの下端にフィード管を配して、該フィード管にスクリュ羽根を挿入した構造とすることは、構造が簡単で、清掃等のメンテナンスが容易であるという優れた利点を有する
【0020】
また、スクリュコンベヤに使用するスクリュ羽根の構造について、前記スクリュ羽根のリードのピッチが、上方から下方に向かって小さくなる構成、或いは、前記スクリュ羽根の軸径が、上方から下方に向かって大きくなる構成、とすれば、効果的な圧密が簡易な装置により可能であるという優れた利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係わる竪型粉砕機の全体構成を説明する概念図である。
【図2】本実施形態に係わるスクリュコンベヤの拡大図である。
【図3】本実施形態に係わるスクリュコンベヤに用いたスクリュ羽根の説明図である。
【図4】本実施形態に係わるスクリュコンベヤによる圧密原理を説明する概念図である。
【図5】従来技術による竪型粉砕機の構造を説明する図である。
【図6】原料層、回転テーブル、並びに粉砕ローラの関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面等に基づき本発明の好ましい実施形態の1例について詳細に説明する。
図1〜図4は本実施形態に係わり、図1は竪型粉砕機の全体構成を説明する概念図であり図2は、スクリュコンベヤの拡大図である。図3はスクリュコンベヤに用いたスクリュ羽根の形状を説明する図であり、図4はスクリュコンベヤによる圧密原理を説明する図である。図5は従来技術による竪型粉砕機の構造を説明する図であり、図6は原料層、回転テーブル、並びに粉砕ローラの関係を説明する図である。
【0023】
以下、本発明による竪型粉砕機1の好ましい構成について説明する。
本実施形態に用いた竪型粉砕機1は、図1に示すように竪型粉砕機1の外郭を形成するケーシング22、竪型粉砕機1の下部に設置された駆動機2Mにより駆動される回転テーブル2と、コニカル型の粉砕ローラ3とを備えている。
なお、本実施形態に用いた竪型粉砕機1は、駆動機2Mの駆動用電源としてインバータ電源を備えて、運転中、回転テーブルの回転速度が任意の変更可能な可変速式の竪型粉砕機1である。
【0024】
粉砕ローラ3は、回転テーブル2の上面(回転テーブル上面2Aと称することもある)に複数個(本実施形態においては2個)が配されて、回転テーブル2の方向に押圧されるよう構成されている。なお、粉砕ローラ3は、回転テーブル2が回転することにより、回転テーブル2に対して、原料を介して従動して回転する。
【0025】
以下、本実施形態における分級機構の構成について説明する
図1に示す実施形態の竪型粉砕機1は、一般的に2段分級型と呼ばれるタイプの分級機構を備えた粉砕機であって、回転テーブル2の上方に、回転式と固定式の分級機構を有する分級機14を備えている。
【0026】
図1に示される回転式の分級機構として、回転テーブル2の上方に配された回転分級羽根14Aが、竪型粉砕機1の上部に設置された駆動モータ14Cにより回転軸14Bを介して駆動され、自在に回転する構成となっている。
また、回転分級羽根14Aは、回転軸14Bを中心として、円を描くように並配されており、さらにその外周側に、固定分級羽根14Dが円を描くようにして並んで配されている。詳細は後述するが、ガスにより吹き上げられた原料の中で、固定分級羽根14Dを通過し、さらに回転分級羽根14Aを通過した原料のみが細粉として製品取出口28より取り出される。
【0027】
また、図1に示す実施形態においては、固定分級羽根14Dの下端部から、下方に向かって延びる内部コーン30が配されている。
内部コーン30の形状は、図1に示すように、上方から下方に向かって径が小さくなる円筒であり、所謂、漏斗状と呼ばれる形状である。
図1に示す実施形態においては、内部コーン30が、回転テーブル2と分級機14の間に配されており、固定式分級羽根14Dを通過して、回転分級羽根14Aを通過できなかった原料が、運転中に落下して、捕集される構造となっている。
【0028】
また、図1に示す実施形態において、内部コーン30の下端には、円筒状のフィード管37が配されており、その中には、スクリュ羽根31が挿入されて、スクリュコンベヤを形成している。
スクリュ羽根31の回転軸の上端は、ギヤケース33内に挿入されて、連結軸35を介して駆動機32により自在に回転させられる構造となっている。
ここで、スクリュ羽根31は、図3(1)に示すような下方に向かって徐々にリードのピッチが小さくなるタイプである。
【0029】
なお、図1に示す実施形態においては、図3(1)に示すような下方に向かって徐々にリードのピッチが小さくなるタイプのスクリュ羽根31により原料を圧密して脱気する構成とした。図3(1)に示した構成のスクリュ羽根31を使用するのは、構成が簡単でメンテナンスがしやすいとい利点を有した好ましい形態である。
また、図3(2)に示すように、スクリュ軸が下方に向かって大きくなっていくタイプのスクリュ羽根について、前述した図3(1)と同様な理由から本発明に使用するに好ましい構成である。
なお、本発明において使用できるスクリュ羽根31の構成が、前述した図3(1)及び(2)に示す構成に限らないことは勿論であり、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない範囲で、圧密が可能な公知のスクリュ羽根等を使用しても良く、例えば、2条タイプや3条タイプの公知のスクリュ羽根等を利用して、原料を圧密して脱気する構成としても良い。
【0030】
また、図1に示した竪型粉砕機1は、所謂、サイドシュート方式と呼ばれる原料投入方式の竪型粉砕機1であって、原料供給管である原料投入シュート20Aの吐出口を内部コーン30の内側まで延ばして設けることによって、原料投入口20から内部コーン30の内側に原料を供給することができるよう構成されている。
【0031】
図1に示す竪型粉砕機1においては、回転テーブル2の下方にガスを導入するためのガス供給口70を設けており、さらに回転テーブル上方に該ガスと共に製品を取り出すための製品取出口28を設けている。
竪型粉砕機1は、運転中に、ガス供給口70よりガス(本実施形態においては空気)を導入することによって、回転テーブル2下方から分級機14を通過して製品取出口28へと流れるガスの気流が生じる構成となっている。
そして、径の小さな原料は、前記ガスに吹き上げられて、固定分級羽根14Dと回転分級羽根14Aを通過して製品取出口28より取り出される。
【0032】
なお、本実施形態に用いることのできる竪型粉砕機1の型式は、前述したものに限らないことは勿論であり、本発明の技術思想を逸脱しないで変更が可能である。
【0033】
以下、本実施形態による竪型粉砕機1の運転方法について、その好ましい1例を説明する。竪型粉砕機1の原料投入口20に投入された原料(本実施形態においては石炭)は、原料投入シュート20Aを介して内部コーン30の内側に投入され、後述する内部コーン30で捕集された粗粉と一緒に、スクリュコンベヤに落下する。
スクリュコンベヤを形成するフィード管37の中に入った原料は、スクリュ羽根31が回転するにつれて、下方側に移動していく。
本実施形態に用いたスクリュ羽根31は、下方に向かうにつれて、リードのピッチが短くなっており、図3(1)に示すようにP1>P2>P3>P4となっているため、下方に向かった原料は徐々に圧縮を受けて圧密される。
そのため、スクリュコンベヤを通過する原料は、圧密されて、脱気されてから、回転テーブル2の中心付近に供給される。
【0034】
回転テーブル2に供給された原料は、渦巻き状の軌跡を描きながら、回転テーブル2の外周側に移動する。
回転テーブル2の外周側に移動して回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕された被粉砕物は、回転テーブル2の外縁部に周設されたダムリングを乗り越えて、回転テーブル上面2の外周部とケーシングとの隙間である環状通路50(環状空間部50と称することもある)へと向かう。
【0035】
なお、環状通路50に達した被粉砕物は、前記ガスにより吹き上げられてケーシング22内を上昇し、固定分級羽根14Dに流れようとするが、径が大きく重量の大きな原料は固定分級羽根14Dまで到達することができず、或いは、通過することができず、落下して、粉砕ローラ3に再度粉砕される。
一方、固定分級羽根14Dに到達して通過した原料は、回転分級羽根14Aと向かうが、径が大きく重量の大きな原料は回転分級羽根14Aまで到達することができず、或いは、通過することができず、内部コーン30内に落下する。なお、これが、前述した内部コーン30で捕集される粗粉である。
さらに、図1に示した竪型粉砕機1は、内部コーン30の側面内側まで原料供給管の排出口延ばして配しているので、新たに機内に投入される原料と前記粗粉とを、スクリュコンベヤで圧密することができるといった点で特に好ましい。
【0036】
スクリュコンベヤに入った粗粉は、新規原料とあわされて、前述の工程を繰り返し、所望の粒度まで細粉となってから、回転分級羽根14Aを通過して、製品取出口28より製品として取り出される。
【0037】
ここで、従来技術のように内部コーン30の下端に原料を圧密できるスクリュコンベヤを設けない場合は、前述したように、原料層の中の空隙率が高くなり、回転テーブルと粉砕ローラとの間に大きな滑りが生じ、粉砕ローラ3の回転が不安定になるので、異常振動を生じる。
本実施形態であれば、回転テーブル2上の供給する原料を効果的に脱気して圧密化でき、その結果、粉砕ローラ3と原料層とのスリップに起因する異常振動を効果的に抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように本願発明に係わる竪型粉砕機は、従来に比較して、微粉砕時に振動が発生しにくいという特徴を有するので、原料を微細化する粉砕等に、特に適した粉砕装置として使用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 竪型粉砕機
2 回転テーブル
3 粉砕ローラ
14 分級機
20 原料投入口
20A 原料投入シュート
22 ケーシング
28 製品取出口
2M 駆動機
30 内部コーン
31 スクリュ羽根
37 フィード管
50 環状通路
70 ガス供給口
14A 回転分級羽根
14B 回転軸
14C 駆動モータ
14D 固定分級羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転テーブル上に回転自在な粉砕ローラを配するとともに、回転テーブル上方に分級機構を配して、
該回転テーブルと該粉砕ローラとの間で粉砕した原料を、回転テーブルの下方から導入したガスによって吹き上げて該分級機構により粗粉と細粉と分離し、細粉を製品として取り出す竪型粉砕機において、
回転テーブルと分級機構との間に内部コーンを配して、該内部コーンの下端にスクリュコンベヤを設けることにより、該内部コーンで捕集した粗粉をスクリュコンベヤで圧密してから回転テーブル上に供給することを特徴とした竪型粉砕機。
【請求項2】
前記内部コーンの側面に原料供給管の排出口を配して、新たに機内に投入される原料と前記粗粉とを、スクリュコンベヤで圧密する請求項1に記載の竪型粉砕機。
【請求項3】
前記スクリュコンベヤが、内部コーンの下端に配したフィード管に圧密機能を有するスクリュ羽根を挿入した構造である請求項1又は請求項2記載の竪型粉砕機。
【請求項4】
前記スクリュ羽根のリードのピッチが、上方から下方に向かって小さくなる請求項1から請求項3までいずれか1項に記載の竪型粉砕機。
【請求項5】
前記スクリュ羽根の軸径が、上方から下方に向かって大きくなる請求項1から請求項4までいずれか1項に記載の竪型粉砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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