説明

端子の接合方法

【課題】コストアップを招くことなく、複数本の電線を端子へ容易にかつ確実に接合することが可能な端子の接合方法を提供すること。
【解決手段】一端側が開口部12aとされた有底筒状の接合部12を有する金属材料から形成された端子11の接合部12へ、端部において外被23から導体22が露出された複数本の電線21の導体22を束ねて挿入して配置させる挿入配置工程と、接合部12の開口部12aを上方へ向けた状態で接合部12を加熱し、接合部12内の導体22を溶融させる加熱溶融工程と、接合部12に対する導体22の挿入及び接合部12の外側からの加圧の両方またはいずれか一方を行い、接合部12内の溶融金属Sを電線21の外被23の端部よりも上方位置まで上昇させる溶融金属上昇工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の端部に端子を接続する端子の接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線の端部に端子を接合する場合、外被から露出させた電線の導体に、端子の圧着部をかしめるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、電線の芯線部に含侵させた金属鑞を溶融させ、端子と芯線部とを金属鑞を介して接合する方法(例えば、特許文献2参照)、圧着箇所へ導電性接着剤を充填しておくことにより、素線等の隙間へ導電性接着剤を浸透させる方法(特許文献3参照)、端子の圧着部を予熱し、メッキのスズを軟化させた状態でアルミニウム電線の導体に圧着部を圧着する方法(特許文献4参照)もある。
【0004】
また、複数本の電線束のそれぞれの電線の導体を端子に熱圧着する方法も知られている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−110464号公報
【特許文献2】特開平9−82377号公報
【特許文献3】特開2004−200094号公報
【特許文献4】特開2009−152051号公報
【特許文献5】特開平10−199599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数本の電線を一括して端子に接合する場合、特許文献1、5のように、圧着あるいは熱圧着によって接合するだけでは、全ての電線の導体が十分に結合されないおそれがあった。
【0007】
この場合、特許文献2,3のように、金属鑞や導電性接着剤などの結合材を含侵または充填したり、特許文献4のように、メッキしたスズを溶融させて圧着すれば、導体の結合力をある程度高めることができるが、結合材を用いたり、端子の内側にスズをメッキすることにより、コストアップを招くとともに、その接合作業の煩雑化を招いてしまう。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストアップを招くことなく、複数本の電線を端子へ容易にかつ確実に接合することが可能な端子の接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る端子の接合方法は、下記(1)を特徴としている。
(1) 一端側が開口部とされた有底筒状の接合部を有する金属材料から形成された端子の前記接合部へ、端部において外被から導体が露出された複数本の電線の前記導体を束ねて挿入して配置させる挿入配置工程と、前記接合部の前記開口部を上方へ向けて前記接合部を加熱し、前記接合部内の前記導体を溶融させる加熱溶融工程と、前記接合部に対する前記導体の挿入及び前記接合部の外側からの加圧の両方またはいずれか一方を行い、前記接合部内の溶融金属を前記電線の前記外被の端部よりも上方位置まで上昇させる溶融金属上昇工程と、を含むこと。
【0010】
上記(1)の構成の端子の接合方法では、極めて容易に、複数本の電線の導体間に溶融した金属を行きわたらせ、端子の接合部に対して電線の導体を良好に一体化させて確実に接合させることができる。
しかも、高価な接合材を用いたり、接合材となるメッキを予め施しておくことによるコストアップも無くすことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コストアップを招くことなく、複数本の電線を端子へ容易にかつ確実に接合することが可能な端子の接合方法を提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る端子の接合方法によって接合された端子の斜視図である。
【図2】端子及び端子に接合される電線の端部の斜視図である。
【図3】端子の使用状態を示す斜視図である。
【図4】端子の接合方法を説明する図であって、(a)は端子及び電線の端部の斜視図、(b)は端子及びヒータの斜視図、(c)は端子の断面図である。
【図5】参考例の端子の接合方法を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る端子の接合方法によって接合された端子の斜視図、図2は端子及び端子に接合される電線の端部の斜視図、図3は端子の使用状態を示す斜視図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、端子11は、接合部12と接続端子部13とを有しており、銅または銅合金等の金属材料から形成されている。接合部12は、接続端子部13と反対側の端部である一端側が開口部12aとされた有底円筒状に形成されている。また、接続端子部13は、平板状に形成されており、その中央部分には、連結孔13aが形成されている。連結孔13aには、被固定箇所へ接続するための固定ボルト(図示略)が挿通される。
【0017】
上記の端子11には、その接合部12に、束ねられた複数本の電線21が接合される。これらの電線21は、導体22と、この導体22の周囲を覆う外被23とから構成されている。この電線21の導体22は、端子11よりも融点の低い、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属材料から形成されている。外被23は、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂等の耐熱性に優れた合成樹脂材から形成されている。
【0018】
上記の端子11は、例えば、車両のアース端子として用いられ、接続端子部13が、例えば、自動車等の車両の車体パネルやエンジンブロックなどに接続される。そして、複数本の電線21に流されるアース電流が、端子11を介して車体パネルやエンジンブロックなどに流される。
【0019】
特に、端子11は、その接合部12に、複数本の電線21が接合されているので、図3に示すように、複数個の端子11の接続端子部13を重ねて連結孔13aを連通させ、この連通させた連結孔13aへ固定ボルトを通して被固定箇所へ固定することにより、多数の電線21を被固定箇所に接続することができる。
【0020】
次に、端子11へ複数本の電線21を接合する場合について、その工程毎に説明する。図4は端子の接合方法を説明する図である。
【0021】
(挿入配置工程)
図4(a)に示すように、端部において外被23から導体22を露出させた複数本の電線21を束ね、これらの電線21の外被23から露出された導体22を束ねて端子11の接合部12へ挿入して配置させる。
【0022】
(加熱溶融工程)
図4(b)に示すように、端子11の接合部12の開口部12aを上方へ向けて接合部12を、その側方(図4(b)中矢印A方向)からヒータ31によって接合部12を加熱し、接合部12内の電線21の導体22を溶融させる。このようにすると、接合部12の内部において、溶融した金属が貯留した状態となる。
【0023】
(溶融金属上昇工程)
図4(c)に示すように、接合部12に対して導体22をさらに挿入させるとともに、接合部12を側方(図4(c)中矢印B方向)から加圧し、接合部12内の溶融金属Sを電線21の外被23の端部よりも上方位置まで上昇させる。接合部12に対して導体22を挿入させるには、電線21を下降させるか端子11を上昇させれば良い。また、電線21の下降及び端子11の上昇の両方を行っても良い。
【0024】
なお、接合部12に対する導体22の挿入または接合部12の外側からの加圧のいずれかを行って溶融金属Sを電線21の外被23の端部よりも上方位置まで上昇させても良い。
【0025】
(冷却固化工程)
その後、端子11を冷却させ、接合部12内で溶融金属Sを硬化させる。
【0026】
上記の工程を行うことにより、極めて容易に、複数本の電線21の導体22間に溶融金属Sを行きわたらせ、端子11の接合部12に対して電線21の導体22を良好に一体化させて確実に接合させることができる。
【0027】
しかも、高価な接合材を用いたり、接合材となるメッキを予め施しておくことによるコストアップも無くすことができる。
【0028】
ここで、本発明の更なる優位性を説明するため、図5に参考例を示す。
【0029】
図5は参考例の端子の接合方法を示す概略断面図である。
【0030】
この参考例は、複数本の電線21の導体22に対して超音波を付与して接合する超音波接合を示すものである。
【0031】
図5に示すように、この接合方法では、導体22の束に対してアンビル1と反対側にホーン(図示略)を配置し、ホーンによって導体22の束へ向かって(図5中矢印C方向へ向かって)超音波振動を付与する。
【0032】
しかし、この超音波接合では、付与した超音波が、付与側の反対側へ十分に到達せず、よって、接合が不十分となることがある。また、導体22が並んでいるため、超音波の強度が分散して弱くなることもある。
【0033】
したがって、この場合、一度超音波振動を付与した後に、導体22の束に対して向きが90°異なる方向(図5中矢印D方向)から再度超音波振動を付与する必要があり、接合作業が煩雑化してしまう。また、導体22の本数や配置によって、それぞれ接合条件を設定しなければならなくなる。
【0034】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0035】
11 端子
12 接合部
12a 開口部
21 電線
22 導体
23 外被
S 溶融金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が開口部とされた有底筒状の接合部を有する金属材料から形成された端子の前記接合部へ、端部において外被から導体が露出された複数本の電線の前記導体を束ねて挿入して配置させる挿入配置工程と、
前記接合部の前記開口部を上方へ向けて前記接合部を加熱し、前記接合部内の前記導体を溶融させる加熱溶融工程と、
前記接合部に対する前記導体の挿入及び前記接合部の外側からの加圧の両方またはいずれか一方を行い、前記接合部内の溶融金属を前記電線の前記外被の端部よりも上方位置まで上昇させる溶融金属上昇工程と、
を含むことを特徴とする端子の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−22891(P2012−22891A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159924(P2010−159924)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】