説明

端子付き電線および電線加工装置

【課題】圧着端子が電線に対して相対的に位置ずれすることを抑えることのできる技術を提供する。
【解決手段】端子付き電線1は、電線10と圧着端子20とを備える。電線10は、被覆端部16から芯線11が延び出た芯線露出部15と、被覆端部16において、周方向に沿う帯状の被覆溝部161とが形成されている。端子付き電線1は、圧着端子20のインシュレーションバレル81が被覆溝部161に嵌り込んで圧着されており、圧着端子20のワイヤバレル61が芯線露出部15に圧着された構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載される端子付き電線及び端子付き電線を作製するために電線を加工する電線加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、端子付き電線が作製される際には、まず、電線の先端部の被覆が剥がされて、導体である複数の素線によって構成される芯線を剥き出しの状態にする。そして、剥き出しになった芯線に、銅などの材料で構成される圧着端子が加締められる。圧着端子は、被覆電線端部の被覆に圧着される被覆圧着部(インシュレーションバレル)と、被覆電線端部の被覆から延び出ている芯線に圧着される芯線圧着部(ワイヤバレル)と、によって加締められる。このようにして、圧着端子が電線の端部に固定されることによって、端子付き電線が形成される。
【0003】
ところで、近年自動車の軽量化の要求が益々厳しくなっている。従来、車載用のワイヤハーネスに使用される端子付き電線の芯線は銅又は銅合金が用いられてきたが、軽量化を図るため、アルミニウムを主成分とする金属線(アルミニウム線)を芯線に使用することが要求されている。
【0004】
しかしながら、端子付き電線の芯線がアルミニウム線で、圧着端子が銅線である場合、電解質水溶液が圧着端子と芯線との接触部分に付着すると、標準電極電位の差異によって、標準電極電位の小さい金属、この場合はアルミニウム線に腐食(電食)が発生する。
【0005】
この問題を解決するため、特許文献1では、防食剤が端子から露出した芯線と端子の少なくとも一部とを密閉して覆うように塗布されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−108828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、端子付き電線は曲げられたり、引っ張られたりすることによって、インシュレーションバレルに対する電線の相対的な位置ずれを起こす場合がある。この場合、隙間がインシュレーションバレルと電線との間に生じるおそれがある。また、特許文献1に開示されているように、防食剤が導体と端子との接続部に塗布されていると、割れが防食剤に生じるおそれがある。これらの結果、水分が隙間、又は防食剤の割れを通って圧着端子の内側に浸入し、芯線が腐食するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、圧着端子の電線に対する相対的な位置ずれを抑えることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、端子付き電線であって、芯線及びその周囲を覆う絶縁被覆を有し、前記絶縁被覆の端部に周方向に沿う帯状の溝が形成された電線と、前記電線の端部に取り付けられ、前記電線の前記絶縁被覆に対し前記溝に嵌り込んで圧着された被覆圧着部及び前記電線の端部における前記絶縁被覆から延び出た前記芯線に圧着された芯線圧着部を有する圧着端子と、を備える。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に係る端子付き電線であって、前記電線における前記被覆圧着部が圧着された部分から前記芯線の先端までの保護領域、及び前記圧着端子における前記電線の前記保護領域の周囲に位置する部分を覆う防食剤をさらに備える。
【0011】
第3の発明は、第2の発明に係る端子付き電線であって、前記芯線はアルミニウムを主成分とする金属で構成されている。
【0012】
第4の発明は、電線の端部における絶縁被覆を加工する電線加工装置であって、前記電線における端から一定範囲を占める第1加工領域に対し間隔を空けた第2加工領域の前記絶縁被覆を挟んで圧縮しつつ保持する把持部と、前記把持部を加熱する加熱部と、前記把持部により保持された前記電線における前記第1加工領域の前記絶縁被覆を除去する被覆除去部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
第1ないし第3の発明によれば、電線の被覆に形成された溝と圧着端子の被覆圧着部との嵌め合い構造により、圧着端子に対する電線の相対的な位置ずれが抑えられる。このため、引っ張り及び曲げの外力が端子付き電線に加わった場合でも、電線と被覆圧着部との間に隙間が生じて水分がその隙間から圧着端子と芯線との接触部分に浸入することを抑えられる。その結果、端子付き電線の耐久性が高まる。
【0014】
特に第2の発明によれば、圧着端子と電線との相対的な位置ずれが抑えられるため、割れが防食剤に生じることを抑えられる。このため、水分が割れを介して圧着端子と芯線との接触部分に浸入することを抑えられる。
【0015】
第4の発明によれば、加熱部によって加熱された把持部が、絶縁被覆の除去工程において電線を保持する工程と、電線の絶縁被覆に位置ずれ防止用の溝を形成する工程との両工程を並行して実行する。従って、第4の発明によれば、絶縁被覆に溝を形成する加工が絶縁被覆の除去を行う工程及び装置とは別個の工程及び装置で行われる場合に比べ、電線加工の工程及び装置が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る端子付き電線1の側面図である。
【図2】端子付き電線1を構成する電線10の側面図である。
【図3】端子付き電線1を構成する圧着端子20の斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る端子付き電線1Aの側面図である。
【図5】電線加工装置9の側面図である。
【図6】電線加工装置9による電線の加工の様子を示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0018】
<第1の実施形態>
図1〜図3を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る端子付き電線1について説明する。
【0019】
図1に示される端子付き電線1は、図2に示される電線10と図3に示される圧着端子20とを備える。端子付き電線1が複数本束ねられることによってワイヤハーネスが構成される。
【0020】
図2に示される電線10は、線状の導体である複数の素線が束ねられた芯線11と、その芯線11の周囲を覆う絶縁体である被覆12とを備える。電線10の端部には圧着端子20が取り付けられる。このため、電線10の端部は、被覆12が一定の長さにわたって取り除かれて、芯線11が露出した状態に加工されている。つまり、電線10の端部では、芯線11が被覆12の端部から延び出ている。
【0021】
以下、被覆12の端部から延び出た芯線11の部分を芯線露出部15と称する。電線10の端部の被覆12は機械加工によって剥がされる。このため、芯線露出部15は電線10の端部に予め形成されている。また、以下の説明において、電線10における被覆12の端部の一定範囲を被覆端部16と称する。
【0022】
被覆溝部161は、被覆端部16の周方向に沿って、被覆端部16に形成された帯状の溝の部分である。この被覆溝部161は、被覆端部16の外表面から芯線11に到達しない程度の深さを有する。また、被覆溝部161は、後述する基軸方向におけるインシュレーションバレル81の両縁と被覆溝部161の内側の側面とが接する程度の幅を有する。なお、図1では、被覆溝部161とインシュレーションバレル81の両縁との間に隙間が形成されているが、あくまでも図示の都合である。被覆溝部161は、圧着端子20が電線10に圧着される前に機械加工によって予め形成されている。
【0023】
電線10の芯線11と圧着端子20とは、それぞれ異種の金属で構成されている。具体的に、芯線11は、アルミニウムを主成分とする金属(アルミニウムまたはアルミニウム合金)の線材であるアルミニウム線の部材である。これに対して、圧着端子20は、銅もしくは黄銅などの銅合金の部材、又はそれらの部材に錫(Sn)メッキもしくは錫に銀(Ag)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)などが添加された錫合金のメッキが施された部材である。
【0024】
図3に示される圧着端子20は電線10に圧着される前の状態である。圧着端子20は、相手側の圧着端子と直接接触する接続部21と接続部21に繋がる電線保持部41とを有している。また、電線保持部41は、先端側連結部51、ワイヤバレル61、根元側連結部71及びインシュレーションバレル81の4つの部分で構成されている。接続部21、先端側連結部51、ワイヤバレル61、根元側連結部71及びインシュレーションバレル81は、直線方向に沿って一列に並んでいる。
【0025】
以下、インシュレーションバレル81からワイヤバレル61及び接続部21へ向かう直線方向を基軸方向と称する。基軸方向は、各図に示される座標軸のX軸方向である。また、基軸方向におけるインシュレーションバレル81の側を根元側、その反対側(接続部21の側)を先端側と称する。
【0026】
圧着端子20の一部を構成するワイヤバレル61は、被覆端部16から延び出た芯線露出部15に対して圧着される部分(芯線圧着部)である。ワイヤバレル61は、底板部612と、その底板部の両側に立設されて対向する一対の起立部611a,611bとを備えている。
【0027】
圧着端子20の一部を構成するインシュレーションバレル81は、電線10の被覆端部16に形成された被覆溝部161に嵌り込んで圧着される部分(被覆圧着部)である。インシュレーションバレル81は、底板部812と、その底板部812の両側に立設されて対向する一対の起立部811a,811bとを備えている。
【0028】
圧着端子20の一部を構成する根元側連結部71は、インシュレーションバレル81とワイヤバレル61とを連結する部分である。根元側連結部71は、底板部712と、その底板部712の両側に立設されて対向する一対の起立部711a,711bとを備えている。
【0029】
圧着端子20の一部を構成する先端側連結部51は、ワイヤバレル61と接続部21とを連結する部分である。先端側連結部51は、底板部512と、その底板部512の両側に立設されて対向する一対の起立部511a,511bとを備えている。
【0030】
電線保持部41における各底板部512,612,712,812は連なって全体として板状に形成されている。また、電線保持部41における各起立部512a,612a,712a,812aは連なって全体として板状に形成されている。同様に、電線保持部41における他方の側の各起立部512b,612b,712b,812bは、連なって全体として板状に形成されている。
【0031】
接続部21は、圧着端子20の接続相手となる相手側の圧着端子と嵌り合うことによって相手側の圧着端子と直接接触し、相手側の圧着端子に接続される。このような接続部21は、相手側の圧着端子が嵌め入れられる端子挿入孔211を有する筒状の部分である。図1に示される例では、接続部21には、相手側の圧着端子との接続の際に、相手側の端子を支持する部材に当接する位置決め用の突起部214が形成されている。また、接続部21における端子挿入孔211の内側には、相手側の圧着端子と接触して弾性変形する接触片213が設けられている。
【0032】
以下において、電線10と圧着端子20とが組み合わされて端子付き電線1が形成される様子について説明する。まず、電線10が圧着端子20に対して特定の位置関係に配置される。具体的に、電線10は、芯線露出部15がワイヤバレル61における一対の起立部611a,611bの間に位置するように配置される。さらに、電線10は、被覆端部16の被覆溝部161がインシュレーションバレル81における一対の起立部811a,811bの間に位置するように配置される。
【0033】
その配置の状態で、インシュレーションバレル81の起立部811a,811bが底板部812側(内側)へ折り曲げられる。さらに、ワイヤバレル61の起立部611a,611bが底板部612側(内側)へ折り曲げられる。これにより、インシュレーションバレル81では、底板部812と2つの起立部811a,811bとが被覆端部16に形成された被覆溝部161に嵌り込んで、被覆端部16を把持する。また、ワイヤバレル61では、底板部612と2つの起立部611a,611bとが芯線露出部15を把持する。
【0034】
被覆溝部161は、基軸方向におけるインシュレーションバレル81の両縁と被覆溝部161の内側の側面とが接する程度の幅を有している。従って、圧着された起立部811a,811bが被覆溝部161に嵌り込むことによって、端子付き電線1の圧着端子20と電線10とが相対的に位置ずれしようとしても、基軸方向における起立部811a,811bの端縁部が被覆溝部161の側面に接触する。つまり、圧着端子20は電線10に対して位置規制される。
【0035】
以上に示したように、第1の実施形態に係る端子付き電線1は、圧着端子20と電線10との相対的な位置ずれを抑えることができる。これによって、インシュレーションバレル81と電線10との間に隙間が生じることを抑えられるため、水分が隙間を通って圧着端子20の内側に浸入することを抑えることができる。
【0036】
<第2の実施形態>
図4には、第2の実施形態に係る端子付き電線1Aが示されている。端子付き電線1Aは、図2に示される電線10と図3に示される圧着端子20とで構成された端子付き電線1と、防食剤30と、を備える。なお、第1の実施形態に開示されているため、電線10、圧着端子20、及び端子付き電線1の説明は省略する。
【0037】
端子付き電線1Aは、インシュレーションバレル81が圧着された被覆端部16の根元側の被覆12の部分から、ワイヤバレル61に圧着された芯線露出部15の先端までの電線10の保護領域、及び電線10の保護領域の周囲に位置する圧着端子20の部分に、防食剤30が塗布された構造を有する。防食剤30は、例えば、ポリアミド樹脂又はエポキシ樹脂などが用いられる。これによって、塩水などの電解質水溶液が圧着端子20の内側に浸入することを防ぐことができる。
【0038】
端子付き電線1は圧着端子20と電線10との相対的な位置ずれを抑えられる。このため、端子付き電線1Aは、圧着端子20と電線10との相対的な位置ずれによって、防食剤30に割れが生じることを抑えられる。
【0039】
以上に示したように、第2の実施形態に係る端子付き電線1Aは、圧着端子20と電線10との相対的な位置ずれを抑えられるため、防食剤30に割れが生じることを抑えられる。従って、電解質水溶液の水分が、防食剤30の割れを通って芯線11と圧着端子20との接触部分に付着することを抑えられる。
【0040】
<電線加工装置>
以上に示された端子付き電線1,1Aを作製するために、図2に示される被覆溝部161を備える電線10を作製する必要がある。図5に示される電線加工装置9は加工される前の電線90(以下、加工前電線90とも称する。)を電線10に加工する装置である。また、図6は、加工前電線90の加工を行う一対のカッタ109、一対の固定ブロック105、及びヒータ107を概略的に示した図である。
【0041】
加工前電線90は、芯線11が末端まで被覆12で覆われ、被覆溝部161が被覆端部16に形成される前段階の電線である。前工程にて作製された電線90(加工前電線90)が電線加工装置9に順次送り出されてくるため、電線加工装置9はその都度加工前電線90を電線10に加工していく。
【0042】
電線加工装置9は、電線把持部101、加熱部102、及び被覆除去部103を備える。
【0043】
電線把持部101は、電線加工装置9へと送り出されてきた加工前電線90を固定するとともに、被覆端部16に相当する加工前電線90の位置に被覆溝部161を形成する。電線把持部101は、一対の固定ブロック105及び図示しない駆動機構を主に備える。一対の固定ブロック105は駆動機構によって駆動されて、側方から加工前電線90を挟み込む。
【0044】
一対の固定ブロック105の対向面、即ち加工前電線90を挟み込む面は、加工前電線90の外周部分全体に接触する湾曲した溝状の凹面106である。この凹面106は、挟み込む加工前電線90の延在方向に直交する断面において半円形に形成されている。凹面106の曲率半径は、加工前電線90の外周の半径よりも小さく、芯線11の半径よりも大きい。また、固定ブロック105は、挟み込む加工前電線90の延在方向における幅が、圧着端子20のインシュレーションバレル81の基軸方向の幅と同じ又はそれよりごくわずかに大きい寸法で形成されている。
【0045】
加熱部102は一対のヒータ107及び図示しない電源部を主に備える。本実施形態では、ヒータ107は、一対の固定ブロック105各々の内部に埋め込まれている。電源部が電圧を印加することによって、ヒータ107による加熱が開始され、固定ブロック105が被覆12の融解温度よりも若干低めの軟化温度であるおよそ100度程度まで昇温される。
【0046】
被覆除去部103は、一対のカッタ109及び図示しない駆動機構を主に備える。被覆除去部103は、加工前電線90の被覆12を除去して芯線露出部15を形成する。一対のカッタ109は、Z軸方向に沿って設けられている。駆動機構によって、一対のカッタ109が加工前電線90を挟み込むことによって、被覆12には切れ目が入る。カッタ109には、各々に半円形に凹んだ湾曲刃110が設けられている。湾曲刃110の曲率半径は、加工前電線90の芯線11の半径よりもやや大きい。カッタ109が加工前電線90を挟み込むことによって、一対のカッタ109の湾曲刃110が、芯線11に傷を付けることなくその外側の被覆12のみに切れ目を入れる。
【0047】
一対のカッタ109は、駆動機構の駆動により、Z軸方向に沿って移動するだけでなく、加工前電線90の端部に向けてX軸方向に沿って移動することも可能である。従って、加工前電線90の被覆12を除去するときは、カッタ109が、加工前電線90を挟み込んで被覆12に切れ目を入れた状態で、加工前電線90の先端に向けて移動する。これによって、切れ目の入った被覆12は、カッタ109のX軸方向への移動により、カッタ109の側面に押し当てられて加工前電線90の先端から抜け出る。カッタ109の湾曲刃110が対応するため、取り除かれた被覆12の内側の芯線11はカッタ109に接触しない。従って、取り除かれた被覆12の内側の芯線11は残された状態となる。このように、加工前電線90の先端部における被覆12のみが取り除かれて、芯線露出部15が形成される。
【0048】
具体的な加工前電線90の加工工程について説明する。図5に示されるように、前加工にて作製された加工前電線90は、電線加工装置9の載置台95の上面に載置されて送り出されてくる。
【0049】
送り出されてきた加工前電線90は、一対の固定ブロック105の間を通って、先端部から一定範囲の部分が、載置台95の近傍に設けられた一対のカッタ109の間を通過する位置まで進行する。加工前電線90における一対のカッタ109よりも先へ通過した先端の領域は、被覆12の除去の対象となる被覆除去領域である。加工前電線90の先端部から一定範囲を占める被覆除去領域が一対のカッタ109の間を通過した段階で、固定ブロック105が加工前電線90を側方から挟み込む。その際、固定ブロック105は、被覆除去領域から間隔を空けた領域、即ち、後工程において、圧着端子20のインシュレーションバレル81が圧着される領域を挟み込んで保持する。
【0050】
そして、カッタ109は、固定ブロック105により位置が固定された加工前電線90の被覆除去領域における被覆12をカット及び除去する。これにより、加工前電線90に芯線露出部15が形成される。
【0051】
固定ブロック105に備え付けられたヒータ107は、事前に昇温が開始されており、固定ブロック105の温度は高まっている。このような昇温された固定ブロック105が加工前電線90の被覆12を挟み込むため、挟み込まれた被覆12の部分は高熱で軟化された状態で圧縮される。従って、挟み込まれた被覆12の部分は元の半径よりも小さい半径の円柱状に成形される。
【0052】
芯線露出部15が形成されると、一対の固定ブロック105は、離隔移動することによって加工前電線90を挟み込む状態を解除する。固定ブロック105の凹面106によって加熱及び圧縮されていた部分が周辺の空気により冷却され、凹面106に挟まれていた被覆12の一部の領域が被覆溝部161となる。このようにして、加工前電線90は電線10に加工される。
【0053】
以上に示したように、電線加工装置9を採用することによって、加熱された固定ブロック105が、被覆12の除去工程において加工前電線90を保持する工程と、加工前電線90の被覆12に位置ずれ防止用の被覆溝部161を形成する工程との両工程を並行して実行する。従って、被覆12に被覆溝部161を形成する加工が、被覆12の除去を行う工程及び装置とは別個の工程及び装置で行われる場合に比べて、電線加工の工程及び装置が簡素化される。
【0054】
なお、電線加工装置9は、加工前電線90を加工して電線10を作製した後で、さらに圧着端子20を電線10に圧着させる圧着端子接続部を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 端子付き電線
9 電線加工装置
10 電線
11 芯線
12 被覆
20 圧着端子
30 防食剤
61 ワイヤバレル(芯線圧着部)
81 インシュレーションバレル(被覆圧着部)
90 電線(加工前電線)
101 把持部
102 加熱部
103 被覆除去部
105 固定ブロック
107 ヒータ
109 カッタ
161 被覆溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線及びその周囲を覆う絶縁被覆を有し、前記絶縁被覆の端部に周方向に沿う帯状の溝が形成された電線と、
前記電線の端部に取り付けられ、前記電線の前記絶縁被覆に対し前記溝に嵌り込んで圧着された被覆圧着部及び前記電線の端部における前記絶縁被覆から延び出た前記芯線に圧着された芯線圧着部を有する圧着端子と、を備える端子付き電線。
【請求項2】
請求項1に記載の端子付き電線であって、
前記電線における前記被覆圧着部が圧着された部分から前記芯線の先端までの保護領域、及び前記圧着端子における前記電線の前記保護領域の周囲に位置する部分を覆う防食剤をさらに備える端子付き電線。
【請求項3】
請求項2に記載の端子付き電線であって、
前記芯線はアルミニウムを主成分とする金属で構成されている、端子付き電線。
【請求項4】
電線の端部における絶縁被覆を加工する電線加工装置であって、
前記電線における端から一定範囲を占める第1加工領域に対し間隔を空けた第2加工領域の前記絶縁被覆を挟んで圧縮しつつ保持する把持部と、
前記把持部を加熱する加熱部と、
前記把持部により保持された前記電線における前記第1加工領域の前記絶縁被覆を除去する被覆除去部と、
を備える電線加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−226871(P2012−226871A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91233(P2011−91233)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】