説明

端子台

【課題】出力側に接続された電気回路を異常電流から保護可能であり、コンパクト且つ安価な構成で入力電源を分岐して複数の出力電源として出力可能な端子台を提供することを目的とする。
【解決手段】出力側導電金具30に5個の出力端子部としての出力端子ネジ34が設けられているので、出力側導電金具30の各出力端子ネジ34に出力側電線C2を介して接続された電気回路を、定格以上の電流によって溶断するヒューズ40によって異常電流から保護可能であると共に、入力側導電金具20に供給される入力電源を複数の出力端子ネジ34が設けられた出力側導電金具30によってコンパクトなサイズで分岐して複数の出力電源として出力することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は端子台に関し、特に入力側導電金具と出力側導電金具とを導通するヒューズを備えた端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気回路を異常電流から保護するために、ヒューズ付きの端子台が実用に供されている(例えば、特許文献1等参照。)。ここで、図6は、従来例のヒューズ付き端子台101を示す平面図である。従来例のヒューズ付き端子台101は、絶縁性のケース110と、ケース110に固定される入力側導電金具120と、ケース110に入力側導電金具120とは離間して固定される出力側導電金具130と、入力側導電金具120と出力側導電金具130とを導通するヒューズ140とを備えている。入力側導電金具120には、入力側端子部としての1本の入力端子ネジ121が螺合している。同様に、出力側導電金具130には、出力側端子部としての1本の出力端子ネジ134が螺合している。ヒューズ140は、ヒューズ本体141の両端に設けられた一対のタブ端子142をボルト143で締め付けることにより、入力側導電金具120と出力側導電金具130とに電気的に導通するように取り付けられる。そして、入力端子ネジ121には入力側電線が、出力端子ネジ134には出力側電線がそれぞれ接続される。
【特許文献1】特開平11−273545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来例の端子台101では、出力側導電金具130に設けられた端子部(出力端子ネジ134)が1個のみであるため、出力側を2個以上に分岐させることは不可能である。このため、例えば、従来例の端子台101を用いて出力側を4個に分岐させるためには、図7に示すように、5個の端子部(端子ネジ210)を有する銅バー201を設け、さらに出力側導電金具130の端子部(出力端子ネジ134)と銅バー201の1個の端子部(端子ネジ210)とをショートバー301で導通させて使用しなければならない。従って、大きなスペースが必要になると共に、組み付けにも手間がかかり、出力側に多くの導電部材(銅等)が必要となってコストも高くなるという問題があった。さらに、出力側導電金具130にショートバー301及び銅バー201が接続されることにより、接触抵抗が大きくなるため、特に出力側の電気回路から逆流する異常電流に対してヒューズ140の即断性が低下するという問題もあった。
【0004】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、出力側に接続された電気回路を異常電流から保護可能であり、コンパクト且つ安価な構成で入力電源を分岐して複数の出力電源として出力可能な端子台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき、必要に応じて作用効果等を付記しつつ説明する。
【0006】
1.絶縁性の筐体と、前記筐体に固定される入力側導電金具と、前記筐体に前記入力側導電金具とは離間して固定される出力側導電金具と、前記入力側導電金具と前記出力側導電金具とを導通するヒューズとを備えた端子台であって、
前記出力側導電金具に複数の出力端子部が設けられたことを特徴とする端子台。
【0007】
手段1によれば、絶縁性の筐体と、筐体に固定される入力側導電金具と、筐体に入力側導電金具とは離間して固定される出力側導電金具と、入力側導電金具と出力側導電金具とを導通するヒューズとを備える端子台であって、出力側導電金具に複数の出力端子部が設けられているので、出力側導電金具の各端子部に電線を介して接続された電気回路を、定格以上の電流によって溶断するヒューズによって異常電流から保護可能であると共に、入力側導電金具に供給される入力電源を複数の出力端子部が設けられた出力側導電金具によってコンパクトなサイズで分岐して複数の出力電源として出力することができる。
【0008】
すなわち、入力と出力とが1対1で設けられた従来のヒューズ付き端子台では、入力電源を分岐して複数の出力電源として出力するためには、例えば、端子台とは別に複数の端子部を有する銅バーを設けると共に、出力側導電金具と銅バーとをショートバー等を介して接続する必要があった。これに対し、本手段によれば、銅バーやショートバーを設けることなく、よりコンパクトなサイズで出力電源を分岐することができる。
【0009】
また、上述した従来のヒューズ付き端子台では、出力側導電金具にショートバー及び銅バーが接続されることにより、接触抵抗が大きくなるため、特に出力側の電気回路から逆流する異常電流に対してヒューズの即断性が低下するという問題があった。これに対し、本手段では、出力側が出力側導電金具のみからなるため、上述した問題はなく、入力側及び出力側のいずれからの異常電流に対してもヒューズの即断性を確保することができる。さらに、出力側における導電部材の材料(銅等の金属)の使用量が少なくなり、端子台をより安価に製造することが可能となる。
【0010】
2.前記出力側導電金具は、前記各出力端子部が設けられる端子面が段違いに複数形成されたことを特徴とする手段1に記載の端子台。
【0011】
手段2によれば、出力側導電金具は、各出力端子部が設けられる端子面が段違いに複数形成されているので、出力側導電金具並びに筐体のサイズを小さく設定することができ、端子台全体をコンパクト化することが可能となる。また、出力端子部が設けられる各端子面が段違いとなっているため、各出力端子部に接続される電線同士が干渉することがなく、各電線の接続作業を容易に行うことができる。
【0012】
3.前記各端子面に設けられた前記各出力端子部の水平位置は、電線接続方向と交差する方向において互いに異なるように設定されたことを特徴とする手段2に記載の端子台。
【0013】
手段3によれば、各端子面に設けられた各出力端子部の水平位置は、電線接続方向と交差する方向において互いに異なるように設定されているので、メンテナンス時における出力端子部のネジ締め点検等の際に、段違いの他の端子面に設けられた出力端子部に接続された電線にドライバ等の工具が接触することなく、ネジの増す締め作業等を効率的に行うことができる。
【0014】
4.前記ヒューズは、ネジ締め式ヒューズからなり、前記入力側導電金具と前記出力側導電金具とにそれぞれ金属ネジを介して固定されたことを特徴とする手段1乃至3のいずれか1つに記載の端子台。
【0015】
手段4によれば、ネジ締め式ヒューズは、入力側導電金具と出力側導電金具とにそれぞれ金属ネジを介して固定されることにより、入力側導電金具と出力側導電金具とを確実に導通する。
【0016】
5.前記ヒューズは、クリップ式ヒューズからなり、前記入力側導電金具と前記出力側導電金具とにそれぞれ取り付けられた金属ホルダを介して固定されたことを特徴とする手段1乃至3のいずれか1つに記載の端子台。
【0017】
手段5によれば、クリップ式ヒューズは、入力側導電金具と出力側導電金具とにそれぞれ取り付けられた金属ホルダを介して固定されることにより、入力側導電金具と出力側導電金具とを確実に導通する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、出力側導電金具の各端子部に電線を介して接続された電気回路を、定格以上の電流によって溶断するヒューズによって異常電流から保護可能であると共に、入力側導電金具に供給される入力電源を複数の出力端子部が設けられた出力側導電金具によってコンパクトなサイズで分岐して複数の出力電源として出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の端子台を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態の端子台1を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図2は、図1(b)における端子台1のA−A線断面図である。
【0020】
端子台1は、図1,2に示すように、ケース10と、入力側導電金具20と、出力側導電金具30と、ヒューズ40と、記号板50と、透明カバー60とを主要部材として構成されている。
【0021】
ケース10は、合成樹脂材料(例えば、ABS樹脂)からなる上面及び前後面が開放された略箱形を呈する絶縁性の筐体である。ケース10には、前後に延びる台座部11が形成されると共に、台座部11の左右両側には側壁部19が立設されている。
【0022】
台座部11は、後方側の入力側台座部12と、前後方向略中央の中間部13と、前方側の出力側台座部13とからなる。
【0023】
入力側台座部12は、入力側導電金具20を固定するための台座であって、左右に延びる3つの立壁部121,122,123を備えている。後方側の立壁部121には、前面にリブ121aが左右2か所に突設されている。中間の立壁部122には、入力側導電金具20取付け用の雌ネジ金具(図示せず)が埋設されるボス部122aが左右2か所に設けられている。前方側の立壁部123には、後面にリブ123aが左右2か所に突設されている。立壁部121,123は、上端面の高さが同一である。リブ121a、立壁部121、及びリブ123aは、それぞれ高さが同一であって、立壁部121,123上端面の高さよりも入力側導電金具20の厚さ分低く設定されており、これらの上端面にて入力側導電金具20が支持される。
【0024】
出力側台座部14は、出力側導電金具30を固定するための台座であって、入力側台座部12と同一の高さを有する上段部15と、上段部15よりも一段低い下段部16とからなる。
【0025】
上段部15は、左右に延びる3つの立壁部151,152,153を備えている。また、立壁部152,153間には前後に延びる立壁部155が中央に設けられている。後方側の立壁部151には、前面にリブ151aが左右2か所に突設されている。中間の立壁部152には、出力側導電金具30取付け用の雌ネジ金具(図示せず)が埋設されるボス部152aが左右2か所に設けられている。立壁部151は、上端面の高さが立壁部123と同一である。また、リブ151a、立壁部152,155及び前方側の立壁部153は、それぞれ上端面の高さが同一であって、立壁部151上端面の高さよりも出力側導電金具30の厚さ分低く設定されており、これらの上端面にて出力側導電金具30の上段端子面31が支持される。
【0026】
下段部16は、左右に延びる立壁部161を前方側に備えると共に、立壁部153と立壁部161との間で前後に延びる2つの立壁部162が等間隔で設けられている。立壁部161上端面の高さは、立壁部153上端面よりも一段低く設定されている。一方、立壁部162上端面は、立壁部161上端面の高さよりも出力側導電金具30の厚さ分低く設定されており、立壁部162上端面にて出力側導電金具30の下段端子面31が支持される。
【0027】
中間部13は、入力側台座部12の立壁部123と出力側台座部14の立壁部151との間でこれらの上端面よりも低い位置で架け渡された水平面を備えている。
【0028】
各側壁部19は、台座部11に取り付けられる各部材の高さよりも高く設定されており、台座部11の中間部13に隣接する前後方向中央部分が一段高くなっている。また、各側壁部19の後端近傍及び前端近傍に透明カバー60取付け用の雌ネジ金具がそれぞれ埋設されている(図示せず)。また、各側壁部19の前後方向中央部分の上面には、記号板50の両端が嵌め込まれる凹部191が形成されている。さらに、各側壁部19における前後の外側面下端には、端子台1を配電盤等に取り付けるための取付け孔195aを有する取付け部195がそれぞれ突設されている。
【0029】
入力側導電金具20は、平面視略矩形状を呈する銅や黄銅等からなる金属板である。入力側導電金具20の後方寄り中央には、入力端子ボルト21が挿通されるボルト挿通孔20aが形成され、下面には入力端子ボルト21と螺合するナット20bがボルト挿通孔20aと同軸的に取り付けられている。入力側導電金具20の前後方向中央には、取付けネジ22が挿通される左右2つの取付け孔20cが形成されている。入力側導電金具20の前方寄り中央には、ヒューズ取付けボルト43が螺合するヒューズ取付け孔が形成されている。そして、2つの取付け孔20cに皿ネジである取付けネジ22をそれぞれ挿通し、ボス部122aに埋設された雌ネジ金具(図示せず)に螺合することにより、入力側導電金具20が入力側台座部12に固定される。
【0030】
一方、出力側導電金具30は、平面視略矩形状を呈する銅や黄銅等からなる金属板に折り曲げ加工を施して、二段曲げ形状に屈曲させたものである。出力側導電金具30は、段違いに2つの端子面、すなわち、上段端子面31及び下段端子面32が形成されている。
【0031】
上段端子面31の後方寄り中央には、ヒューズ取付けボルト43が螺合するヒューズ取付け孔が形成されている。上段端子面31の前後方向中央には、皿ネジである取付けネジ33が挿通される左右2つの取付け孔が形成されている。上段端子面31の前方寄りには、出力端子ネジ34が螺合するネジ孔が左右に2個形成されている。また、下段端子面32には、出力端子ネジ34が螺合する3個のネジ孔が左右に等間隔で形成されている。そして、2つの取付け孔に取付けネジ33をそれぞれ挿通し、ボス部152aに埋設された雌ネジ金具(図示せず)に螺合することにより、出力側導電金具30が出力側台座部13に固定される。尚、出力側導電金具30において上段端子面31及び下段端子面32の各ネジ孔に螺合する各出力端子ネジ34が本発明の出力端子部を構成するものである。
【0032】
ヒューズ40は、公知のネジ締め型ヒューズであって、ヒューズ本体41の両端に一対のタブ端子42が突出して設けられ、各タブ端子42にネジ止め孔が形成されている。ヒューズ40は、両側のタブ端子42のネジ止め孔にヒューズ取付けボルト43をそれぞれ挿通し、その一方を入力側導電金具20前方寄り中央のヒューズ取付け孔に螺合して締付けると共に、他方を出力側導電金具30(上段端子面31)後方寄り中央のヒューズ取付け孔に螺合して締付けることにより、入力側導電金具20と出力側導電金具30とを電気的に導通するように取り付けられる。
【0033】
記号板50は、ケース10の左右方向長さに略等しい長さを有する合成樹脂製の細長い長方形板であり、入力側導電金具20又は出力側導電金具30に接続される複数の電線を識別するための数字や記号が上面に記入される。記号板50は、両側壁部19における前後方向中央部分上面の間に架け渡され、透明カバー60下面との間に挟持される。
【0034】
透明カバー60は、ポリカーボネート等の透明樹脂材料からなり、ケース10上面を覆うように着脱可能に取付けられるカバー部材である。透明カバー60は、後部がケース10後端よりも後方側へ突出し且つ前部がケース10前端よりも前方側へ突出している。また、透明カバー60は、左右の側壁部の内面がケース10の両側壁部19に外側から接するように、左右幅がケース10の両側壁部19間の長さよりも若干大きく形成されている。また、ケース10後部には、入力側の電線を通すためにアーチ状に切り欠かれた切り欠き部60aが設けられ、同様に、前部には、出力側の電線を通すためにアーチ状に切り欠かれた切り欠き部60bが設けられている。また、透明カバー60の四隅には、取付けネジ61が挿通される挿通孔60cがそれぞれ形成されている。
【0035】
次に、端子台1における電源入力側及び電源出力側の電線接続例について、図3及び
4を参照しつつ説明する。図3は、端子台1の使用状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図4は、図3(b)における端子台1のB−B線断面図である。端子台1には、電源入力側(600V−250A)に1本の入力側電線C1が接続され、電源出力側(600V−40A)に5本の出力側電線C2がそれぞれ接続される。また、端子台1は、4か所の取付け部195において図示しない取付けボルトを介して配電盤に固定されているものとする。
【0036】
まず、ケース10から透明カバー60及び記号板50を取り外した状態で、入力側電線C1を入力側導電金具20に接続する。すなわち、入力端子ボルト21の足部を入力側電線C1先端の圧着端子CT1の孔に座金を介して挿通し、さらに入力側導電金具20後方寄り中央のボルト挿通孔に挿通し螺合して締付けることにより、圧着端子CT1を入力側導電金具20の端子面に固着する。
【0037】
次に、5本の出力側電線C2のうち3本を、出力側導電金具30の下段端子面32に接続する。すなわち、出力端子ネジ34の足部を、3本の出力側電線C2先端に設けられた圧着端子CT2の孔に座金を介してそれぞれ挿通し、下段端子面32に設けられた3個のネジ孔にそれぞれ螺合して締付けることにより、3個の圧着端子CT2を下段端子面32に固着する。
【0038】
次いで、残り2本の出力側電線C2を出力側導電金具30の上段端子面31に接続する。すなわち、出力端子ネジ34の足部を、2本の出力側電線C2先端に設けられた圧着端子CT2の孔に座金を介して挿通し、上段端子面31に設けられた2個のネジ孔にそれぞれ螺合して締付けることにより、2個の圧着端子CT2を上段端子面31に固着する。
【0039】
このようにして1本の入力側電線C1及び5本の出力側電線C2の接続が完了した後、記号板50を左右に長手方向を向け、ケース10の各側壁部19上面に形成された凹部191に嵌め込む。
【0040】
続いて、透明カバー60をケース10左右両側の側壁部19上に位置合わせしつつ載置し、四隅の各挿通孔に取付けネジ61をそれぞれ挿通して側壁部19上部の各雌ネジ金具にそれぞれ螺合することにより、透明カバー60がケース10上面を覆う状態で固定される。
【0041】
そして、端子台1において、入力側電線C1に入力された600V−250Aの入力電源は、各出力側電線C2によって600V−40Aの5本の出力電源に分岐される。
【0042】
ここで、出力側電線C2に接続された電気回路(インバータ、サーボ、トランス、バッテリ、コンデンサ、UPS等)に異常が生じてヒューズ40に定格以上の電流が流れると、ヒューズ40は、自らを流れる電流によって発生したジュール熱によって溶断する。これによって、定格以上の大電流から電気回路を保護することができる。
【0043】
尚、入力側電線C1に過電流防止用のブレーカーが接続されている場合、理論上、ブレーカーによって過大電流を断つことが可能である。しかしながら、ブレーカーは急激な過大電流の発生に対する作動タイミングが遅く、瞬時に過大電流を遮断できない場合があり得る。本実施形態では、入力側にブレーカーが接続された場合には、端子台1が即断性に優れたヒューズを備えることによって、より安定した保護回路を形成し、二重安全性を確保することができる。
【0044】
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態によれば、絶縁性の筐体であるケース10と、ケース10に固定される入力側導電金具20と、ケース10に入力側導電金具20とは離間して固定される出力側導電金具30と、入力側導電金具20と出力側導電金具30とを導通するヒューズ40とを備え、出力側導電金具30に複数(5個)の出力端子部としての出力端子ネジ34が設けられているので、出力側導電金具30の各端子部(出力端子ネジ34)に出力側電線C2を介して接続された電気回路を、定格以上の電流によって溶断するヒューズ40によって異常電流から保護可能であると共に、入力側導電金具20に供給される入力電源を複数の出力端子部(出力端子ネジ34)が設けられた出力側導電金具30によってコンパクトなサイズで分岐して複数の出力電源として出力することができる。
【0045】
すなわち、入力と出力とが1対1で設けられた従来のヒューズ付き端子台では、入力電源を分岐して複数の出力電源として出力するためには、例えば、端子台とは別に複数の端子部を有する銅バーを設けると共に、出力側導電金具と銅バーとをショートバー等を介して接続する必要があった(図6参照)。これに対し、本実施形態によれば、銅バーやショートバーを設けることなく、よりコンパクトなサイズで出力電源を分岐することができる。
【0046】
また、上述した従来のヒューズ付き端子台では、出力側導電金具にショートバー及び銅バーが接続されることにより、接触抵抗が大きくなるため、特に出力側の電気回路から逆流する異常電流に対してヒューズの即断性が低下するという問題があった。これに対し、本実施形態では、出力側が1枚の導電金具(すなわち出力側導電金具30)のみからなるため、上述した問題はなく、入力側及び出力側のいずれからの異常電流に対してもヒューズ40の即断性を確保することができる。さらに、出力側における導電部材の材料(銅等の金属)の使用量が少なくなり、端子台1をより安価に製造することが可能となる。
【0047】
また、出力側導電金具30は、各出力端子ネジ34が設けられる端子面が段違いに複数(二段に)形成されているので、出力側導電金具30並びにケース10のサイズを小さく設定することができ、端子台1全体をコンパクト化することが可能となる。また、出力端子ネジ34が設けられる各端子面が段違いとなっているため、各出力端子ネジ34に接続される出力側電線C2同士が干渉することがなく、各電線C2の接続作業を容易に行うことができる。
【0048】
また、出力側導電金具30の各端子面に設けられた各出力端子ネジ34の水平位置は、出力側電線C2接続方向と交差する方向において互いに異なるように設定されているので、メンテナンス時における出力端子ネジ34のネジ締め点検等の際に、段違いの他の端子面に設けられた出力端子ネジ34に接続された電線C2にドライバ等の工具が接触することなく、ネジの増す締め作業等を効率的に行うことができる。
【0049】
さらに、ケース10の左右両端に側壁部19がそれぞれ立設されると共に、側壁部19に着脱可能に取付けられてケース10上面を覆う透明カバー60を備えているので、作業者が通電中の入力側導電金具20又は出力側導電金具30等に誤って接触して感電する事故等を防止することができると共に、透明カバー60を取付けた状態で入力端子ボルト21や出力端子ネジ34における各電線の接続状態等の目視確認を行うことができる。また、金属片等の異物が、端子台1の導電金具上に落下して入り込むことを防止することができる。
【0050】
尚、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能であることは云うまでもない。
【0051】
例えば、上記実施形態では、ヒューズ40としてネジ締め式のヒューズを採用し、ヒューズ40両端のタブ端子42を入力側導電金具20と出力側導電金具30とにヒューズ取付けボルト43を用いてそれぞれ接続する構成としたが、これには限られない。例えば、ヒューズ40として公知のクリップ式(クリップ型ホルダ固定式)のヒューズを採用してもよい。図5は、クリップ式のヒューズ40’を採用した変形例の端子台1’を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。端子台1’は、ネジ締め式のヒューズ40に代えて、管状のヒューズ本体41’両端に端子部42’を備えたクリップ式のヒューズ40’を備えている。また、ヒューズ取付けボルト43に代えて、入力側導電金具20と出力側導電金具30とにそれぞれヒューズホルダ43’が取り付けられている。ヒューズ40’の両端の端子部42’を、入力側導電金具20及び出力側導電金具30のヒューズホルダ43’にてそれぞれ挟持させることにより、ヒューズ40’が入力側導電金具20と出力側導電金具30とを導通するように取り付けられる。
【0052】
また、上記実施形態では、一つの入力電源を5つの出力電源に分岐する1入力−5出力用の構成例を示したが、これには限られない。例えば、入力数:出力数を、1:3,1:4,1:6,2:3,2:4,2:5,又は2:6のように設定してもよい。また、上記実施形態では、出力側導電金具30を二段曲げ形状としたが、一段の端子面のみでもよく、三段以上の端子面を設ける構成としてもよい。
【0053】
さらに、上記実施形態では、端子台1の極数を1(台座部11が1つのみ)とした例を示したが、これには限られず、2以上の極数を有する構成としてもよい。例えば、端子台1において台座部11を左右に隣接して複数(例えば、2〜6個)配置し、隣接する各台座部11間にそれぞれ隔壁部を立設する構成としてもよい。特に、3相電源を複数に分岐する用途においては、端子台1の極数を3とすることが好ましい。具体的には、端子台1に3個の台座部11を左右に隣接配置し且つ各台座部11間に隔壁部を立設して各台座部11を隔てる構成とすることにより、3相の入力電源の各相をそれぞれ複数(例えば5つ)の出力電源に分岐するようにしてもよい。さらに、ケース10を1極ごとのブロックに分割し、所望数の分割ブロックをシャフト等で一体化して端子台1を形成する構成としてもよい。このように分割ブロック構成を採用することにより、端子台1における極数を自在に増減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、ヒューズ付きの端子台において、コンパクト且つ安価な構成で入力電源を分岐して複数の出力電源として出力することが必要とされる場合に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態の端子台を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図2】図1(b)における端子台のA−A線断面図である。
【図3】端子台の使用状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図4】図3(b)における端子台のB−B線断面図である。
【図5】クリップ式のヒューズを採用した変形例の端子台を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図6】従来例のヒューズ付き端子台を示す平面図である。
【図7】従来例のヒューズ付き端子台を用いて出力側を複数に分岐させるための構成例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1、1’ 端子台
10 ケース(筐体)
20 入力側導電金具
30 出力側導電金具
31 上段端子面
32 下段端子面
34 出力端子ネジ(出力端子部)
40 ヒューズ(ネジ締め式のヒューズ)
40’ ヒューズ(クリップ式ヒューズ)
43 ヒューズ取付けボルト(金属ネジ)
43’ ヒューズホルダ(金属ホルダ)
C1 入力側電線
C2 出力側電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の筐体と、前記筐体に固定される入力側導電金具と、前記筐体に前記入力側導電金具とは離間して固定される出力側導電金具と、前記入力側導電金具と前記出力側導電金具とを導通するヒューズとを備えた端子台であって、
前記出力側導電金具に複数の出力端子部が設けられたことを特徴とする端子台。
【請求項2】
前記出力側導電金具は、前記各出力端子部が設けられる端子面が段違いに複数形成されたことを特徴とする請求項1に記載の端子台。
【請求項3】
前記各端子面に設けられた前記各出力端子部の水平位置は、電線接続方向と交差する方向において互いに異なるように設定されたことを特徴とする請求項2に記載の端子台。
【請求項4】
前記ヒューズは、ネジ締め式ヒューズからなり、前記入力側導電金具と前記出力側導電金具とにそれぞれ金属ネジを介して固定されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の端子台。
【請求項5】
前記ヒューズは、クリップ式ヒューズからなり、前記入力側導電金具と前記出力側導電金具とにそれぞれ取り付けられた金属ホルダを介して固定されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の端子台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−152149(P2009−152149A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330986(P2007−330986)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000128706)株式会社オサダ (11)
【Fターム(参考)】