説明

端子連鎖体、及び端子連鎖体の製造方法、並びに該端子連鎖体を圧着するクリンパ

【課題】端子ピッチが狭い端子連鎖体であってもフラット回路体に一括圧着することが可能な端子連鎖体を提供する。
【解決手段】端子連鎖体1は、一対の組立前端子連鎖体1a,1bが重ねられることで形成されている。この一対の組立前端子連鎖体1a,1bは、それぞれ互いに平行に等間隔をあけて並列に配置された端子金具T1,T2を有している。また、この端子金具T1,T2は、フラット回路体2の被覆部22を貫通してかしめる被覆部かしめ片16と、導体21をかしめる導体かしめ片15との間の距離が、端子金具T1のほうが端子金具T2よりも大きく形成されている。このため、端子連鎖体1の互いに隣り合う端子金具T1,T2の被覆部かしめ片16は、端子金具T1,T2の長手方向に沿ってずれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラット回路体などの電線に一括圧着されるとともに互いに平行に間隔をあけて配された端子金具が連ねられて構成された端子連鎖体、及び該端子連鎖体の端子金具を圧着するクリンパ、並びに前記端子連鎖体と前記クリンパとを用いて前記端子金具を前記フラット回路体などの電線に一括圧着する端子圧着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車には、多種多様な電子機器が搭載される。前記自動車は、前記電子機器に電力や制御信号などを伝えるためにワイヤハーネスを配索している。ワイヤハーネスは、複数の電線と、複数のコネクタとを有している。電線は、導電性の芯線(以下、導体と呼ぶ。)を絶縁体からなる被覆部で覆った所謂被覆電線である。
【0003】
コネクタは、互いに嵌合する一対の絶縁性のコネクタハウジングと、これらのハウジングに収容される導電性の端子金具と、を有している。端子金具は、その一端に電線の端部などに取り付けられて前記導体と電気的に接続する電線接続部と、他端に相手方の端子金具と接触する電気接触部とを有している。前記ワイヤハーネスは、前記コネクタハウジング同士がコネクタ結合するなどして、前記電子機器に制御信号などを伝える。
【0004】
近年、前述したワイヤハーネスは、前記自動車に搭載される電子機器の増加に伴い、その配線量が増大する傾向にある。このため、高密度かつ省スペースな配線を可能にするために、互いに間隔をあけて平行に配された複数の導体を被覆部で覆ったフラット回路体に、複数の前記端子金具を圧着する技術が提案されている。
【特許文献1】特開平7−288143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したフラット回路体は、上述したワイヤハーネスの高密度実装の背景を受けて、導体ピッチがさらに狭くなる傾向にある。このため、前記導体に前記端子金具を圧着する際には、当然、端子ピッチの狭い前記端子連鎖体が必要になる。
【0006】
一方、前述したフラット回路体に圧着される端子金具は、電線が重ねられる底壁と、該底壁の両縁から立設して前記電線の被覆部をかしめるかしめ片と、を有して構成されている。そして、該端子金具を前記フラット回路体に圧着する際には、これらの端子金具が互いに平行に間隔をあけて並列に連ねられて構成された端子連鎖体が用いられて、この端子金具が前記フラット回路体の各導体に圧着される。
【0007】
しかしながら、前記端子連鎖体は、一枚の板金を打ち抜き・折り曲げするなどして形成されるため、互いに隣り合う端子金具間の間隔、即ち端子ピッチ、を、ある一定の間隔より狭くできないという問題があった。したがって、前述した狭ピッチ化するフラット回路体に端子金具を一括圧着できる端子連鎖体を製造することが困難であった。
【0008】
また、狭ピッチ化するフラット回路体に対応した狭ピッチ端子連鎖体を仮に製造できたとしても、次のような問題が生じる。図6は、従来の端子連鎖体の端子ピッチと従来のクリンパとの寸法関係を示した図である。
【0009】
図6に示す符号100は、端子金具101が互いに平行に間隔をあけて並列に連ねられた端子連鎖体であり、符号102は、クリンパである。同図に示すように、端子連鎖体100のそれぞれの端子金具101は、クリンパ102のそれぞれの凹部104内に位置付けられかつクリンパ102が端子金具101に近づく方向に下降することで、底壁105の両縁から立設したかしめ片103が凹部104の内表面を摺動し、その先端部が底壁105に近づく方向にかしめられて図示しないフラット回路体に一括圧着される。
【0010】
ここで、図6に示すように、端子連鎖体100の端子ピッチが狭くなると、互いに隣り合う端子金具101同士のかしめ片103間の間隔も狭くなる。しかしながら、クリンパ102においては、隣り合う凹部104間に配される隔壁106の薄肉化に強度上の限界がある。このため、図6に示すように、互いに隣り合う端子金具101のかしめ片103同士の間隔が、この隔壁106の限界幅以下である場合、このクリンパ102で端子金具101をかしめることが不可能となってしまう。つまり、端子連鎖体100の互いに隣り合う端子金具101のかしめ片103間の間隔がある一定の間隔以下になると、この端子連鎖体100の端子金具101を一括圧着することが可能なクリンパ102が製造不可能となる。
【0011】
従って、本発明は、端子ピッチが狭い端子連鎖体であってもフラット回路体に一括圧着することが可能な端子連鎖体及びクリンパを提供することを第1の目的とし、導体ピッチが狭いフラット回路体に対応した端子ピッチが狭い端子連鎖体、及び該端子連鎖体の製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した第1の目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、電線が重ねられる底壁と、該底壁の両縁から立設して前記電線の被覆部をかしめるかしめ片と、を有する端子金具が互いに平行に等間隔をあけて並列に配置されているとともに、これらの端子金具が連ねられて構成された端子連鎖体であって、隣り合う前記端子金具の前記かしめ片同士が、前記端子金具の長手方向に沿って互いにずらされていることを特徴とする端子連鎖体である。
【0013】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記電線が、互いに間隔をあけて平行に配された複数の導体を被覆部で覆ったフラット回路体であるとともに、該フラット回路体の導体ピッチと前記端子連鎖体の端子ピッチとが一致していることを特徴とするものである。
【0014】
上述した第1の目的に加え第2の目的を達成するために、請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2に記載された発明において、帯状の連結片と、該連結片に連なりかつ互いに平行に等間隔であるとともに前記連結片からの距離が等しく並列に配置された複数の前記端子金具と、を有した組立前端子連鎖体を複数備え、かつ、前記複数の組立前端子連鎖体同士は、前記連結片と前記端子金具との距離が互いに異なり、かつ、それぞれの端子ピッチが互いに等しく形成され、前記一つの組立前端子連鎖体の互いに隣り合う前記端子金具間に、前記他の組立前端子連鎖体の前記端子金具が位置するとともに、互いに隣り合う前記端子金具間の間隔が等しくなるように、前記連結片同士が重ねられて構成されたことを特徴とするものである。
【0015】
上述した第1の目的を達成するために、請求項4に記載された発明は、電線が重ねられる底壁と該底壁の両縁から立設して前記電線の被覆部をかしめるかしめ片とを有し、かつ、互いに平行に間隔をあけて配置された複数の端子金具各々を、前記電線に一括圧着するクリンパであって、前記かしめ片をかしめるための凹部を複数有しているとともに、前記端子金具の幅方向に沿って隣り合う前記凹部同士が、前記端子金具の長手方向に沿って互いにずらされていることを特徴とするクリンパである。
【0016】
請求項5に記載された発明は、請求項4に記載された発明において、一つ置きに配置された前記凹部が、前記端子金具の幅方向に沿って同列に並ぶことを特徴とするものである。
【0017】
上述した第2の目的を達成するために、請求項6に記載された発明は、端子金具を互いに平行に間隔をあけて並列に配置しているとともに、これらの端子金具が連ねられて構成される端子連鎖体の製造方法であって、帯状の連結片と、該連結片に連なりかつ互いに平行に等間隔であるとともに前記連結片からの距離が等しく並列に配置された複数の前記端子金具と、を有した複数の組立前端子連鎖体で、かつ、複数の組立前端子連鎖体同士の前記連結片と前記端子金具との距離が互いに異なるとともにそれぞれの端子ピッチが互いに等しく形成された複数の組立前端子連鎖体を製造し、前記一つの組立前端子連鎖体の互いに隣り合う前記端子金具間に、前記他の組立前端子連鎖体の前記端子金具が位置するとともに、互いに隣り合う前記端子金具間の間隔が等しくなるように、前記複数の組立前端子連鎖体の前記連結片同士を重ねて組み立てることを特徴とする端子連鎖体の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載された発明によれば、端子連鎖体の隣り合う端子金具のかしめ片同士が同列に並んでいないので、該端子連鎖体の端子ピッチを狭くしても、前記かしめ片とこのかしめ片に隣接した端子金具との間隔を大きくとることができ、これらのかしめ片をかしめるクリンパが薄肉にならず、強度を確保することができるので、端子ピッチが狭い端子連鎖体に対応したクリンパが製造可能となる。したがって、端子ピッチが狭い端子連鎖体であっても電線に一括圧着することが可能な端子連鎖体を提供することができる。さらに、前記かしめ片とこのかしめ片に隣接した端子金具との間隔を大きくとることができるので、前記かしめ片の形状の自由度が上がり、接続信頼性や作業性を加味した形状にすることが可能となる。
【0019】
請求項2に記載された発明によれば、電線としてのフラット回路体の導体ピッチと前記端子連鎖体の端子ピッチとが一致しているので、前記フラット回路体に前記端子金具を一括圧着することが容易にでき、生産性を著しく向上させることができる。
【0020】
請求項3に記載された発明によれば、複数の組立前端子連鎖体を重ねることで、端子ピッチが狭い端子連鎖体を提供することができる。
【0021】
請求項4に記載された発明によれば、クリンパの隣り合う凹部同士が同列に並んでいないので、該凹部のピッチを狭くしても、薄肉になる部分がなく、強度を確保することができるクリンパが製造可能となる。したがって、端子ピッチが狭い端子連鎖体であってもその端子金具をかしめることが可能なクリンパを供給することができる。
【0022】
請求項5に記載された発明によれば、一つ置きに配置された前記凹部が、前記端子金具の幅方向に沿って同列に並ぶようにしているので、前記クリンパの前記端子金具の長手方向に沿った幅を最小にすることができる。
【0023】
請求項6に記載された発明によれば、複数の組立前端子連鎖体を重ねることで端子ピッチの狭い端子連鎖体を形成することができ、導体ピッチが狭いフラット回路体に対応した狭ピッチの端子連鎖体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態にかかる端子連鎖体1を図1ないし図5を参照して説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る端子連鎖体とクリンパとを示す斜視図である。図2は、図1に示された端子連鎖体の平面図である。図3は、図2に示された端子連鎖体を形成する方法を説明する説明図である。図4は、図1に示された端子連鎖体の後側かしめ片と図1に示されたクリンパの凹部との位置関係を示す説明図である。図5は、図1に示された端子連鎖体の端子金具をフラット回路体に圧着した状態を示す斜視図である。
【0025】
図1及び図2に示すように、本実施形態の端子連鎖体1は、電線としてのフラット回路体2の各導体21に接続される複数の端子金具T1,T2が互い違いに配されかつ互いに平行に等間隔をあけて並列に連ねられたものである。この端子連鎖体1は、一対の組立前端子連鎖体1a,1bを備えて構成されている。なお、前記フラット回路体2は、互いに間隔をあけて平行に配された複数の導体21と該導体21を被覆する絶縁性の被覆部22とを有して扁平な帯状に形成された電線である。また、フラット回路体2は、その端末の被覆部22が除去されて導体21が露出している。
【0026】
上記組立前端子連鎖体1aは、導電性の板金が打ち抜き及び折り曲げ形成され、帯状に形成された連結片10と、複数の端子金具T1と、を有している。連結片10は、この連結片10を貫通したワーク送り孔11を有している。このワーク送り孔11は、端子連鎖体1が端子供給部から圧着装置に向かってワーク送りされる際に、図示しない端子送り装置のピン等が引掛けられる。
【0027】
上記端子金具T1は、相手側の端子金具が接続される電気接触部12と、前述したフラット回路体2が接続される電線接続部13と、を有している。電気接触部12は、角筒状の筒部と、該筒部内に収容された図示しないばね片とを有している。ばね片は、筒部内に侵入した相手側の端子金具の雄タブなどの挿入子を、筒部の内面に向かって付勢して該内面との間に挟む。電気接触部12は、筒部内に相手側の端子金具の雄タブなどの挿入子が挿入され、ばね片が筒部の内面との間に前述した挿入子を挟むことで、相手側の端子金具と電気的及び機械的に接続する。
【0028】
上記電線接続部13は、図2などに示すように、筒部の外壁に連なった底壁14と、一対の導体かしめ片15と、一対の被覆部かしめ片16と、を有している。
【0029】
底壁14は、表面上にフラット回路体2の端末が位置付けられる。即ち、底壁14上には、フラット回路体2の端末で露出した導体21が位置付けられる。
【0030】
上記一対の導体かしめ片15は、底壁14の長手方向の中央でかつ底壁14の幅方向の両端部から立設している。導体かしめ片15は、この先端側が底壁14に近づく方向に曲げられて、底壁14との間にフラット回路体2の導体21を挟む。こうして、導体かしめ片15は、フラット回路体2の導体21をかしめる。
【0031】
上記一対の被覆部かしめ片16は、特許請求の範囲に記載されたかしめ片をなしている。被覆部かしめ片16は、底壁14の長手方向の電気接触部12から離れた側の端部に設けられている。被覆部かしめ片16は、底壁14の幅方向の両端部から立設している。被覆部かしめ片16は、フラット回路体2の被覆部22を突き破るとともに、フラット回路体2を貫通した先端部が底壁14に近づく方向に曲げられて、底壁14との間に被覆部22を挟む。こうして、被覆部かしめ片16は、フラット回路体2の被覆部22をかしめる。また、被覆部かしめ片16は、被覆部22をかしめる前の形状では、先端部が広角に開放されており、前述した導体かしめ片15よりも端子金具T1の外側に張り出している。
【0032】
上記構成の組立前端子連鎖体1aは、複数の端子金具T1が互いに等間隔をあけて並列に配置されているとともに、複数の端子金具T1が並列に連結片10に連ねられている。また、端子金具T1は、電気接触部12から離れた側の端部が連結片10に連なっている。なお、前記隣り合う端子金具T1間の間隔は、端子金具T1の幅よりも広くなっている。また、連結片10から端子金具T1までの距離は全ての端子金具T1において等しく形成されている。
【0033】
上記組立前端子連鎖体1bは、前述した組立前端子連鎖体1aと同様に、導電性の板金が打ち抜き及び折り曲げ形成され、帯状に形成された連結片10と、複数の端子金具T2と、を有している。なお、前述した組立前端子連鎖体1aと同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
端子金具T2は、導体かしめ部15から被覆部かしめ部16までの距離が、端子金具T1の導体かしめ部15から被覆部かしめ部16までの距離よりも短く形成されている。またこの端子金具T2を有した組立前端子連鎖体1bは、組立前端子連鎖体1aと同様に、複数の端子金具T2が互いに等間隔をあけて並列に配置されているとともに、複数の端子金具T2が並列に連結片10に連ねられている。また、端子金具T2は、電気接触部12から離れた側の端部が連結片10に連なっている。なお、前記隣り合う端子金具T2間の間隔は、組立前端子連鎖体1aの隣り合う端子金具T1間の間隔と等しく形成されている。また、連結片10から端子金具T2までの距離は全ての端子金具T2において等しく形成されているとともに、組立前端子連鎖体1aの連結片10から端子金具T1までの距離よりも長く形成されている。
【0035】
上記端子連鎖体1は、図3に示すように、組立前端子連鎖体1a,1bをそれぞれ別体で製造し、一方の組立前端子連鎖体1aの互いに隣り合う端子金具T1間に、他方の組立前端子連鎖体1bの端子金具T2が位置するように両者を重ね合わせることで形成される。本実施形態では、前述したワーク送り孔11に位置決め手段の役割も持たせており、一対の組立前端子連鎖体1a,1bのそれぞれのワーク送り孔11を揃えて重ね合わせることで、互いに隣り合う端子金具T1,T2間の間隔が等しくなる。即ちこれらの端子金具T1,T2が等ピッチで配される。なお、この端子連鎖体1の端子ピッチは、フラット回路体2の導体ピッチと一致している。
【0036】
上記のようにして形成された端子連鎖体1は、前述したように、組立前端子連鎖体1aの連結片10から端子金具T1までの距離が、組立前端子連鎖体1bの連結片10から端子金具T2までの距離よりも短く、かつ、端子金具T1の導体かしめ片15から被覆部かしめ片16までの距離が、端子金具T2の導体かしめ片15から被覆部かしめ片16までの距離よりも長く形成されており、このような端子金具T1,T2が互い違いに配されているので、隣り合う端子金具T1,T2の被覆部かしめ片16が、端子金具T1,T2の長手方向に沿って互いにずれて、一つ置きに配置された端子金具T1,T2の被覆部かしめ片16が、端子金具T1,T2の幅方向に沿って同列に並ぶ。前述したように、被覆部かしめ片16は、端子金具T1,T2の幅方向の外側に張り出しているが、このように隣り合う端子金具T1,T2の被覆部かしめ片16が、端子金具T1,T2の長手方向に沿って互いにずれているので、各被覆部かしめ片16と、この被覆部かしめ片16に隣接する端子金具T1,T2との間の間隔は広く取られている。
【0037】
このような端子連鎖体1は、図1に一部を示す圧着装置によって、それぞれの端子金具T1,T2がフラット回路体2の各導体21に圧着される。なお、連結片10は、端子金具T1,T2が圧着されると同時に、図示しない切断刃によって切断されて、各端子金具T1,T2から切り離される。
【0038】
上記圧着装置は、図示しない装置本体と、アンビル4と、クリンパ3とを有している。装置本体は、工場のフロア上などに設置される。アンビル4は、装置本体に固定されており、その載置面41上に端子連鎖体1が位置付けられる。クリンパ3は、アンビル4と間隔をあけて相対し、かつ該アンビル4に接離自在に装置本体に支持されている。即ち、アンビル4とクリンパ3とは、互いに接離自在に設けられている。前記「接離」とは、互いに近づいたり離れたりすることをいう。また、この圧着装置は、アンビル4とクリンパ3とが互いに離れた状態でアンビル4上に端子連鎖体1とフラット回路体2の端末とが位置付けられるとともに、アンビル4とクリンパ3とが互いに近づいて互いの間に端子連鎖体1とフラット回路体2の端末とを挟むことで上述したかしめ片15,16をかしめる。なお、図1には、後述の被覆部かしめ片16をかしめるアンビル4とクリンパ3のみ示している。
【0039】
上記クリンパ3は、アンビル4の載置面41と相対する面から凹の凹部31,32を複数有している。また、この凹部31,32は、載置面41上に載置される端子連鎖体1の複数の被覆部かしめ片16の位置に対応して設けられている。即ち、これらの凹部31,32は、端子金具T1,T2の幅方向に沿って隣り合う凹部31,32同士が、端子金具T1,T2の長手方向に沿って互いにずらされているとともに、一つ置きに配置された凹部31,32が、端子金具T1,T2の幅方向に沿って同列に並んでいる。このため、同列に並んだ凹部31,32間に位置付けられた隔壁33,34は十分な強度が確保されている。
【0040】
また、図4に示すように、導体かしめ部15から被覆部かしめ片16までの間隔が端子金具T2よりも長く形成された端子金具T1の被覆部かしめ片16が、図1及び図4中の奥側に位置する凹部32内に位置付けられるとともに、端子金具T2の被覆部かしめ片16が、図1及び図4中の手前側に位置する凹部31内に位置付けられる。
【0041】
ここで、仮に、端子金具T1,T2の被覆部かしめ片16が同列に並んでいるとすると、これらの被覆部かしめ片16間に、隔壁33,34を通すことが可能なクリンパ3は成形不可能であるが、本実施形態では、互いに隣り合う被覆部かしめ片16及び凹部31,32がそれぞれ同列に並ばないようにしているので、端子連鎖体1の端子ピッチが狭い場合でも被覆部かしめ片16をかしめることが可能なクリンパ3を製造することが可能になる。
【0042】
上述した端子連鎖体1の端子金具T1,T2は、以下のようにしてフラット回路体2に接続される。まず、図示しない端子供給部から端子連鎖体1が供給されるとともに、所定の端子金具T1,T2の数ごとに端子連鎖体1が切断される。そして切断された端子連鎖体1は、ワーク送り孔11に図示しない搬送装置のピン等が引掛けられて、圧着装置に送られる。圧着装置に送られた端子連鎖体1は、アンビル4の載置面41に底壁14が重ねられる格好で載置される。そして、図示しない搬送装置によってフラット回路体2が圧着装置に送られ、端子連鎖体1の各端子金具T1,T2に導体21が相対するように重ねられる。その後、クリンパ3とアンビル4とが相対的に近づくことで、各端子金具T1,T2がフラット回路体2の各導体21にそれぞれ圧着される。さらに、各端子金具T1,T2が圧着されるのと同時に、これらの端子金具T1,T2を連結していた連結片10が図示しない切断刃によって切断される。こうして端子金具T1,T2がフラット回路体2の各導体21にそれぞれ圧着された端子付きフラット回路体50(図5を参照。)は、端子金具T1,T2の部分が図示しないコネクタハウジング内に収容されて、ワイヤハーネスとなる。
【0043】
本実施形態によれば、端子連鎖体1の隣り合う端子金具T1,T2の被覆部かしめ片16同士が同列に並んでいないので、該端子連鎖体1の端子ピッチを狭くしても、被覆部かしめ片16と被覆部かしめ片16に隣接した端子金具T1,T2との間隔を大きくとることができる。よって、これらの被覆部かしめ片16をかしめるクリンパ3の隔壁33,34などの部分が薄肉にならず、強度を確保することができるので、端子ピッチが狭い端子連鎖体1に対応したクリンパ3が製造可能となる。したがって、端子ピッチが狭い端子連鎖体1であってもフラット回路体2に一括圧着することができる。さらに、被覆部かしめ片16と被覆部かしめ片16に隣接した端子金具T1,T2との間隔を大きくとることができるので、被覆部かしめ片16の形状の自由度が上がり、接続信頼性や作業性を加味した形状にすることが可能となる。さらに、一対の組立前端子連鎖体1a,1bを互いに重ね合わせて端子連鎖体1を形成するようにしているので、狭ピッチ化するフラット回路体2に対応可能な、端子ピッチの狭い端子連鎖体1を形成することができる。
【0044】
また、上述した実施形態では、端子金具T1,T2の電気接触部12が中空角筒状の雌型接触部であるが、本発明では、電気接触部12が、棒状の雄型接触部であっても良いことは勿論である。
【0045】
また、上述した実施形態では、電線は、複数の導体21が平行に配されたフラット回路体2であったが、本発明では、電線は、一本の芯線のみを有した丸型電線であっても良い。その場合は、複数の丸型電線を一括で圧着可能となり、作業性を著しく向上させることができる。
【0046】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態に係る端子連鎖体とクリンパとを示す斜視図である。
【図2】図1に示された端子連鎖体の平面図である。
【図3】図2に示された端子連鎖体を形成する方法を説明する説明図である。
【図4】図1に示された端子連鎖体の後側かしめ片と図1に示されたクリンパの凹部との位置関係を示す説明図である。
【図5】図1に示された端子連鎖体の端子金具をフラット回路体に圧着した状態を示す斜視図である。
【図6】従来の端子連鎖体の端子ピッチと従来のクリンパとの寸法関係を示した図である。
【符号の説明】
【0048】
1 端子連鎖体
1a 組立前端子連鎖体
1b 組立前端子連鎖体
2 フラット回路体(電線)
3 クリンパ
10 連結片
14 底壁
16 被覆部かしめ片(かしめ片)
21 導体
22 被覆部
31,32 凹部
T1,T2 端子金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が重ねられる底壁と、該底壁の両縁から立設して前記電線の被覆部をかしめるかしめ片と、を有する端子金具が互いに平行に等間隔をあけて並列に配置されているとともに、これらの端子金具が連ねられて構成された端子連鎖体であって、
隣り合う前記端子金具の前記かしめ片同士が、前記端子金具の長手方向に沿って互いにずらされていることを特徴とする端子連鎖体。
【請求項2】
前記電線が、互いに間隔をあけて平行に配された複数の導体を被覆部で覆ったフラット回路体であるとともに、該フラット回路体の導体ピッチと前記端子連鎖体の端子ピッチとが一致していることを特徴とする請求項1に記載の端子連鎖体。
【請求項3】
帯状の連結片と、該連結片に連なりかつ互いに平行に等間隔であるとともに前記連結片からの距離が等しく並列に配置された複数の前記端子金具と、を有した組立前端子連鎖体を複数備え、かつ、
前記複数の組立前端子連鎖体同士は、前記連結片と前記端子金具との距離が互いに異なり、かつ、それぞれの端子ピッチが互いに等しく形成され、
前記一つの組立前端子連鎖体の互いに隣り合う前記端子金具間に、前記他の組立前端子連鎖体の前記端子金具が位置するとともに、互いに隣り合う前記端子金具間の間隔が等しくなるように、前記連結片同士が重ねられて構成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の端子連鎖体。
【請求項4】
電線が重ねられる底壁と該底壁の両縁から立設して前記電線の被覆部をかしめるかしめ片とを有し、かつ、互いに平行に間隔をあけて配置された複数の端子金具各々を、前記電線に一括圧着するクリンパであって、
前記かしめ片をかしめるための凹部を複数有しているとともに、前記端子金具の幅方向に沿って隣り合う前記凹部同士が、前記端子金具の長手方向に沿って互いにずらされていることを特徴とするクリンパ。
【請求項5】
一つ置きに配置された前記凹部が、前記端子金具の幅方向に沿って同列に並ぶことを特徴とする請求項4に記載のクリンパ。
【請求項6】
端子金具を互いに平行に間隔をあけて並列に配置しているとともに、これらの端子金具が連ねられて構成される端子連鎖体の製造方法であって、
帯状の連結片と、該連結片に連なりかつ互いに平行に等間隔であるとともに前記連結片からの距離が等しく並列に配置された複数の前記端子金具と、を有した複数の組立前端子連鎖体で、かつ、複数の組立前端子連鎖体同士の前記連結片と前記端子金具との距離が互いに異なるとともにそれぞれの端子ピッチが互いに等しく形成された複数の組立前端子連鎖体を製造し、
前記一つの組立前端子連鎖体の互いに隣り合う前記端子金具間に、前記他の組立前端子連鎖体の前記端子金具が位置するとともに、互いに隣り合う前記端子金具間の間隔が等しくなるように、前記複数の組立前端子連鎖体の前記連結片同士を重ねて組み立てることを特徴とする端子連鎖体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−141657(P2007−141657A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333965(P2005−333965)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】