端子金具、端子金具付き電線及び端子金具付き電線の製造方法
【課題】ワイヤバレル片に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる端子金具、端子金具付き電線及び端子金具付き電線の製造方法を提供する。
【解決手段】基板部23の両側に電線の芯線12を圧着抱持する一対のワイヤバレル片26,26を有する端子金具20と、ワイヤバレル片26,26に圧着された電線とからなる端子金具付き電線10であって、端子金具20の基板部23のうち電線を抱持する面とは反対側の面には、電線の圧着前に形成された標識部24と、圧着金型に形成した刻印部31によって電線の圧着時に刻印された基準標識部25とを備え、標識部24と基準標識部25との位置を比較することにより、圧着状態が良好であるか否かを判定する。
【解決手段】基板部23の両側に電線の芯線12を圧着抱持する一対のワイヤバレル片26,26を有する端子金具20と、ワイヤバレル片26,26に圧着された電線とからなる端子金具付き電線10であって、端子金具20の基板部23のうち電線を抱持する面とは反対側の面には、電線の圧着前に形成された標識部24と、圧着金型に形成した刻印部31によって電線の圧着時に刻印された基準標識部25とを備え、標識部24と基準標識部25との位置を比較することにより、圧着状態が良好であるか否かを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具、端子金具付き電線及び端子金具付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被覆電線の端末にいわゆるオープンバレル形の端子金具が圧着されてなる端子金具付き電線が用いられている。
この端子金具は、基板部の左右から一対のワイヤバレル片が立ち上げられており、この端子金具がアンビル上に配されるとともに、被覆電線の端末が芯線を露出させた状態で基板部に載置される。
そして、アンビルの上方に配置されたクリンパを下降させると、一対のワイヤバレル片がその間に配された芯線を両側から抱き込むような形状で芯線を押し潰して圧着される。
【0003】
ところで、端子金具付き電線において、良好な電気接続を保証するためには、一対のワイヤバレル片が芯線内部に均等な深さで食い込む(巻き込む)ことにより良好な圧着状態となっている必要がある。そのため、端子金具付き電線の検査工程において圧着状態が良好であるか否かの判定が行われている。
特許文献1には、ワイヤバレル片の内面側に形成されるセレーションに対して、ワイヤバレル片の外面側におけるセレーションと対応する位置に圧着状態の識別用の溝や目盛りを形成したものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−357901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の構成は、識別用の溝等が、電線の導体に対するセレーションの相対位置を確認することを目的として、セレーションと同様に端子軸方向と直交する方向(ワイヤバレル片の長手方向)に延びる形状に形成されたものである。そのため、端子軸方向におけるセレーションとベルマウスの位置関係についてはわかるけれども、ワイヤバレル片の長手方向(展開方向)における各ワイヤバレル片の食い込みの深さの違い(巻き込み深さのずれ)については判定しづらいという問題があった。
そして、クリンパによる端子圧着後の状態で、ワイヤバレルの圧着断面において一対のワイヤバレルの端部が偏って変形している場合には、外観からのみでは電線と端子との電気接続状態が良好であるかを判断することは困難であった。
また、一対のワイヤバレル片は、圧着の際に強い力で芯線を押し潰すが、このときワイヤバレル片自体も芯線とクリンパとの間に挟まれて強い力を受けており、ワイヤバレル片自体にも延びを生じている。特許文献1の構成では、一対のワイヤバレル片に溝や目盛りを設ける構成であるため、ワイヤバレル片の延びにより溝や目盛り等の位置にずれを生じさせ、圧着状態の正確な判定ができなくなるという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ワイヤバレル片に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる端子金具、端子金具付き電線及び端子金具付き電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基板部の両側から電線の芯線を圧着抱持する一対のワイヤバレル片を有する端子金具において、前記基板部のうち前記電線を抱持する面とは反対側の面に前記電線の圧着前に形成された標識部を備えるところに特徴を有する(手段1)。
手段1の構成によれば、標識部は、基板部のうち電線を抱持する面とは反対側の面に設けられているため、ワイヤバレル片に延びが生じても基板部における標識部の位置が影響を受けにくい。また、一対のワイヤバレル片について食い込みの深さに違い(巻き込み深さのずれ)が生じて圧着状態が良好でない場合には、標識部の位置がずれるため、この標識部の位置に基づいて、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。よって、ワイヤバレル片に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。
【0008】
手段1の構成に加えて、前記標識部は、前記基板部に凹状に刻印して形成されたものであるようにしてもよい(手段2)。
手段2の構成のようにすれば、容易に標識部を形成することができる。また、金属板材から端子金具を成形する工程の際に同時に標識部を形成することが可能になる。
【0009】
手段1又は手段2の構成に加えて、前記ワイヤバレル片は前記基板部上を通る仮想軸線に関して対称に形成されており、前記標識部は前記仮想軸線上に位置して設けられているようにしてもよい(手段3)。
手段3の構成によれば、簡易な構成で圧着状態が良好であるか否かを判別することが可能になる。
【0010】
本発明は、基板部の両側に電線の芯線を圧着抱持する一対のワイヤバレル片を有する端子金具と、前記ワイヤバレル片に圧着された前記電線とからなる端子金具付き電線であって、前記端子金具の前記基板部のうち前記電線を抱持する面とは反対側の面には、前記電線の圧着前に形成された標識部と、圧着金型に形成した刻印部によって前記電線の圧着時に刻印された基準標識部とを備えるところに特徴を有する(手段4)。
手段4の構成によれば、端子金具の基板部のうち電線を抱持する面とは反対側の面に形成される標識部と基準標識部との位置を比較するため、ワイヤバレル片に延びが生じても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。また、一対のワイヤバレル片について食い込みの深さに違い(巻き込み深さのずれ)が生じて圧着状態が良好でない場合には、標識部と基準標識部との位置がずれるため、これらの位置関係に基づいて、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。よって、ワイヤバレル片に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。また、標識部と基準標識部との位置を比較するため、標識部のみにより前記判定を行う場合と比較して、前記判定を、容易かつ確実に行うことができる。
【0011】
手段4の構成に加えて、前記基板部の両側に電線の絶縁被覆の部分をかしめる一対のインシュレーションバレル片を有し、前記標識部は、前記基板部のうち、前記一対のワイヤバレル片と前記一対のインシュレーションバレル片との間に設けられるようにしてもよい(手段5)。
手段5の構成によれば、標識部を基板部のうち、バレル片を有さない部分に設けることで、圧着の際の端子金具の変形(延び)が標識部の部分に及ぼされにくくすることができる。
【0012】
手段4又は手段5の構成に加えて、前記標識部及び前記基準標識部のうちの少なくとも一方は、四角形状であるようにしてもよい(手段6)。
手段6の構成によれば、標識部や基準標識部を金型で形成する場合の金型寿命を長くすることができる。
【0013】
本発明は、基板部の両側に一対のワイヤバレル片を有する端子金具に電線を圧着してなる端子金具付き電線の製造方法において、前記端子金具の前記基板部のうち前記電線を抱持する面とは反対側の面に予め標識部を形成しておいて前記電線を前記ワイヤバレル片によって圧着する圧着工程を行い、その後に、前記標識部の位置を検査する検査工程を行うところに特徴を有する(手段7)。
基板部のうち前記電線を抱持する面とは反対側の面に予め標識部を形成しておいて圧着する。標識部を基板部に設けることで、圧着の際にワイヤバレル片には延びが生じるが、比較的基板部には延びが生じにくい。そして、圧着後の標識部の位置は、一対のワイヤバレル片によるかしめ強さ(かしめ深さ)の割合に応じて、標識部が形成された面の側から見た際の基板部における標識部の位置が異なる。よって、検査工程においては、標識部の位置に応じた検査結果に基づき、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。よって、ワイヤバレル片に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。
【0014】
手段7の構成に加えて、前記圧着工程の際に前記標識部の位置を判断するための基準となる基準標識部を刻設する基準標識部を刻設するようにしてもよい(手段8)。
手段8の構成によれば、標識部と基準標識部との比較により、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。また、基準標識部の位置は、標識部の近傍であるから、前記比較を容易に行うことができる。
【0015】
手段7の構成に加えて、前記検査工程は、前記電線の圧着後の端子金具を撮影した画像情報から取得した前記標識部の位置情報に基づいて圧着状態が良好であるか否かの判定を行うようにしてもよい(手段9)。
手段9の構成によれば、圧着状態が良好であるか否かの判定を自動化することができる。
【0016】
手段8の構成に加えて、前記検査工程は、前記電線の圧着後の端子金具を撮影した画像情報から取得した前記標識部の位置と前記基準標識部の位置とに基づいて、圧着状態が良好であるか否かの判定を行うようにしてもよい(手段10)。
手段10の構成によれば、圧着状態が良好であるか否かを判定を自動化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ワイヤバレル片に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係る端子金具付き電線を表す上面図
【図2】端子金具付き電線を表す下面図
【図3】端子金具を表す斜視図
【図4】端子金具の電線接続部の部分の裏面側を表す展開図
【図5】アンビルの斜視図
【図6】端子金具が圧着される前の状態を背面側から表す図
【図7】端子金具が圧着される前の状態を側面側から表す図
【図8】圧着状態が不良である場合の端子金具付き電線を表す下面図
【図9】実施形態2に係る端子金具付き電線を表す下面図
【図10】端子金具の電線接続部の部分の裏面側を表す展開図
【図11】アンビルの斜視図
【図12】圧着状態が不良である場合の端子金具付き電線を表す下面図
【図13】実施形態3に係る端子金具付き電線を表す下面図
【図14】端子金具の電線接続部の部分の裏面側を表す展開図
【図15】圧着状態が不良である場合の端子金具付き電線を表す下面図
【図16】実施形態4に係る端子金具付き電線を表す下面図
【図17】端子金具の電線接続部の部分の裏面側を表す展開図
【図18】圧着状態が不良である場合の端子金具付き電線を表す下面図
【図19】実施形態5に係る端子金具付き電線を表す下面図
【図20】圧着状態が不良である場合の端子金具付き電線を表す下面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1の端子金具付き電線10について、図1〜図8を参照して説明する。
実施形態1の端子金具付き電線10は、図1に示すように、被覆電線11の端末部に端子金具20が圧着接続されてなるものであり、例えば電気自動車において走行用の動力源を構成するバッテリ、インバータ、モータなどの装置(図示せず)の間に配索される。なお、以下の説明では、図1の左方を前方とし、右方を後方として説明する。
【0020】
被覆電線11は、銅合金からなる金属素線を螺旋状に撚り合わせてなる芯線12を樹脂製の絶縁被覆13(絶縁層)で被覆したものであり、その端末部においては、絶縁被覆13が剥き取られて芯線12が露出されている。なお、被覆電線11の金属素線は、銅合金のみならず、銅、アルミ、アルミ合金であってもよい。
【0021】
端子金具20は、銅合金製であり、図3に示すように、いわゆるオープンバレル型であって、箱型の端子接続部21と、端子接続部21と連続し被覆電線11が接続される電線接続部22とからなる。なお、端子金具20は、金属板材に打ち抜き加工を施して端子金具の展開形状を形成した後に、この展開形状に曲げ加工を施すことにより形成することができる。
端子接続部21は、箱型の雌端子であって、図示しない相手側端子の雄タブが前端部の挿入孔から挿入されることにより、相手側端子と電気的接続が図られる。
【0022】
電線接続部22は、端子接続部21の底板に連なり後方に延出される基板部23と、基板部23の両側から芯線12を圧着抱持する一対のワイヤバレル片26,26と、一対のワイヤバレル片26,26の後方にて被覆電線11を絶縁被覆13の上から保持する一対のインシュレーションバレル片27,27と、を有する。
一対のワイヤバレル片26,26は、図4に示すように、共に軸方向(前後方向)に所定の長さで形成されており、基板部23の両側縁部からそれぞれ幅方向に延出されている。これにより一対のワイヤバレル片26,26は、基板部23の幅方向の中間部を仮想軸線VPとした場合に、この仮想軸線VPに関して対称に形成されている。
【0023】
一対のインシュレーションバレル片27,27は、一対のワイヤバレル片26,26の後方に配されており、基板部23の両側縁部からそれぞれ幅方向に延出されており、一対のインシュレーションバレル片27,27で被覆電線11を絶縁被覆13の上からかしめることにより被覆電線11が離脱や位置ずれしないように保持される。
【0024】
基板部23は、幅方向の中心部が低くなるようにU字状に湾曲した形状をなし(図6参照)、この基板部23の上に被覆電線11の端末部が配される。
基板部23の裏面(芯線12を圧着抱持する面とは反対側の面)には、図4に示すように、四角形状の標識部24が、基板部23の裏面に対してほぼ一定の深さで凹み形成されている。
【0025】
この標識部24の幅方向における位置は、その中心が基板部23の幅方向における中間部を通る仮想軸線VP上に位置するように形成される。
標識部24の軸方向(前後方向)のおける位置は、基板部23を、左右にワイヤバレル片26,26を有して芯線12のかしめ付けが行われる芯線かしめ領域23Aと、左右にインシュレーションバレル片27,27を有して絶縁被覆13の上からかしめ付けが行われる被覆かしめ領域23Bと、芯線かしめ領域23Aと被覆かしめ領域23Bとの間に配されて、かしめ付けの行われない非かしめ領域23Cとに分けた場合に、非かしめ領域23Cにおける中間部に形成されている。
【0026】
標識部24の形成方法は、標識部24に対応する形状の凸部を有する金型を用いて、例えば、端子金具20の成形時の打ち抜き加工や曲げ加工の際に同時に標識部24を形成することができる。
【0027】
また、基板部23の裏面のうち、芯線かしめ領域23Aには、端子金具20の圧着の際に、基準標識部25が形成されるようになっており、これにより、圧着後の端子金具付き電線10の裏面側には、図2に示すように、基準標識部25が形成されている。
基準標識部25は、芯線かしめ領域23Aのうち、幅方向の中間部であって、軸方向の中間部よりやや後方に形成されるもので、基板部23の湾曲した裏面に対してわずかに(視認可能な程度に)突出した部分である。この基準標識部25は、圧着の際に、後述するアンビル30に設けられている刻印部31によって形成されるものである。
【0028】
端子金具20の圧着は、図6に示すように、端子金具20が載置されるアンビル30(本発明の「圧着金型」に相当)と、アンビル30の上方に配置されるクリンパ32との相対移動により行われる。
アンビル30は、図5に示すように、金属製の金型であり、その上面30Aが端子金具20を載置できるように、基板部23の形状に応じて幅方向について中央部に向けて漸次低くなるように湾曲した形状となっている。
【0029】
アンビル30の上面30Aには、刻印部31が凹設されている。刻印部31は、4角形状の凹部であって、所定の深さで形成されている。
クリンパ32は、図6に示すように、金属製の金型であり、その下面(内面)が一対のバレル部37を包み込むように変形させるように、山形に凹設されており、その頂部は、一対のバレル部に応じて半円形状になっている。
【0030】
次に、端子金具付き電線の製造方法について説明する。
端子金具付き電線10の製造は、被覆電線11の端末を端子金具20に圧着する圧着工程と、圧着工程で圧着された端子金具付き電線10の検査工程とからなる。
(圧着工程)
端子原板に曲げ加工を施した端子金具20の基板部23に、図7に示すように、芯線12を露出させた被覆電線11の端末部を載置した状態で、端子金具20をアンビル30上の所定位置(基板部23のうち芯線かしめ領域23A内において幅方向の中間部に刻印部31が位置するように)に載置する。
そして、クリンパ32を下降させる。
【0031】
すると、一対のワイヤバレル片26,26が、クリンパ32の内面形状に応じて芯線12を包み込むような形状に折り返しつつ変形する。そして、一対のワイヤバレル片26,26の先端部が芯線12の外周に突き当たり芯線12を押し潰しつつ芯線12の内部に食い込んでいく。このとき、端子金具20がクリンパ32とアンビル30の強い力で挟まれるため、圧着とともに、アンビル30に凹設された刻印部31が強い力で基板部23の裏面に押し当てられ、基板部23には、アンビル30の刻印部31に押し当てられて形成された基準標識部25が基板部23の裏面から突出(膨出)する。そして、クリンパ32が所定位置まで下降すると、芯線12の圧着(かしめ付け)及び基準標識部2の形成が終了する。
【0032】
なお、説明を省略したが、クリンパ32は、一対のインシュレーションバレル片27,27についてもかしめるようになっており、上記したクリンパ32の下降により、上記したワイヤバレル片26,26による圧着に伴って絶縁被覆13部分がインシュレーションバレル片27,27によってかしめられる。
そして、クリンパ32を元の位置に戻し、端子金具付き電線10をアンビル30の上から取り出す。
【0033】
(検査工程)
検査装置は、圧着完了後の端子金具付き電線10のおける基板部23の裏面の画像を、例えば、CCD等の撮像手段(図示しない)を用いて取り込み制御部に出力する。
制御部は、入力された画像により、幅方向(Y軸方向)における標識部24の位置(標識部24の幅方向の中心)と幅方向(Y軸方向)における基準標識部25(基準標識部25の幅方向の中心)の位置とのそれぞれの位置情報を取得する。
【0034】
次に、制御部は、取得した位置情報により、幅方向における標識部24の位置が、幅方向における基準標識部25の位置に対して所定の範囲内(良品と判定できる許容寸法以下)にあるかどうかを比較する。
図2に示すように、標識部24の位置が基準標識部25の位置に対して所定の範囲内にある場合には、左右のワイヤバレル片26,26によりほぼ均等にかしめつけが行われていると判断できるため、制御部は、圧着状態が良好である良品であると判定する。
【0035】
一方、図8に示すように、幅方向(Y軸方向)における標識部24の位置(VP)が幅方向(Y軸方向)における基準標識部25の位置(VC)に対して所定の範囲内にない場合には、左右のワイヤバレル片26,26のかしめつけの深さ(強さ)が異なるため、制御部は、圧着状態が良好でない不良品であると判定する。
【0036】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態によれば、標識部24は、基板部23の裏面(基板部23のうち被覆電線11(電線)を抱持する面とは反対側の面)に設けられているため、ワイヤバレル片26,26に延びが生じても基板部23における標識部24の位置が影響を受けにくい。また、一対のワイヤバレル片26,26について食い込みの深さに違い(巻き込み深さのずれ)が生じて圧着状態が良好でない場合には、標識部24の位置がずれるため、この標識部24の位置に基づいて、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。よって、ワイヤバレル片26,26に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片26,26の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。
【0037】
(2)標識部24は、基板部23に凹状に刻印して形成されたものであるため、容易に標識部24を形成することができる。また、金属板材から端子金具20を成形する工程に伴って標識部24を形成することができる。
【0038】
(3)ワイヤバレル片26,26は基板部23上を通る仮想軸線VPに関して対称に形成されており、標識部24は仮想軸線VP上に位置して設けられているため、簡易な構成で圧着状態が良好であるか否かを判別することが可能になる。
【0039】
(4)端子金具付き電線10は、端子金具20の基板部23のうち被覆電線11を抱持する面とは反対側の面に形成される標識部24と基準標識部25との位置を比較するため、ワイヤバレル片26,26に延びが生じても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。また、一対のワイヤバレル片26,26について食い込みの深さに違い(巻き込み深さのずれ)が生じて圧着状態が良好でない場合には、標識部24と基準標識部25との位置がずれるため、これらの位置関係に基づいて、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。よって、ワイヤバレル片26,26に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片26,26の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。また、標識部24と基準標識部25との位置を比較するため、標識部24のみにより前記判定を行う場合と比較して、前記判定を、容易かつ確実に行うことができる。
【0040】
(5)標識部24は、基板部23のうち、一対のワイヤバレル片26,26と一対のインシュレーションバレル片27,27との間の非かしめ領域23Cに設けられる。このように標識部24を基板部23のうち、バレル片を有さない部分に設けることで、圧着の際の端子金具20の変形(延び)が標識部24の部分に及ぼされにくくすることができる。
【0041】
(6)標識部24及び基準標識部25は、四角形状であるため、標識部24や基準標識部25を金型で形成する場合の金型寿命を長くすることができる。
【0042】
(7)端子金具付き電線10の製造は、基板部23の裏面に予め標識部24を形成しておいて圧着工程を行う。このように標識部24を基板部23に設けることで、圧着の際にワイヤバレル片26,26には延びが生じるが、比較的基板部23には延びが生じにくい。そして、圧着工程後の標識部24の位置は、一対のワイヤバレル片26,26によるかしめ強さ(かしめ深さ)の割合に応じて、標識部24が形成された面の側から見た際の基板部23における標識部24の位置が異なる。よって、検査工程においては、標識部24の位置に応じた検査結果に基づき、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。よって、ワイヤバレル片26,26に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片26,26の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。
【0043】
(8)標識部24と圧着の際に形成される基準標識部25との比較により、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。また、基準標識部25の位置は、標識部24の近傍であるから、前記比較を容易に行うことができる。
【0044】
(9)検査工程は、被覆電線11の圧着後の端子金具20を撮影した画像情報から取得した標識部24の位置と基準標識部25の位置とに基づいて、圧着状態が良好であるか否かの判定を行うため、圧着状態が良好であるか否かを判定を自動化することができる。
【0045】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図9ないし図12を参照して説明する。実施形態1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
実施形態1の端子金具付き電線10の標識部24及び基準標識部25は共に四角形状であったが、実施形態2の端子金具付き電線40では、図9に示すように、標識部42は三角形状で、基準標識部43は円形状とするものである。
【0046】
端子金具41における標識部42は、ほぼ正三角形状の凹部であって、図10に示すように、その前方(基準標識部25が形成される側)に向く三角形の頂点が仮想軸線VP(基板部23の幅方向における中心部)を通るように形成される。
【0047】
基準標識部43は、アンビル44により形成される。
アンビル44は、図11に示すように、その上面44Aにおける幅方向の中間部に形成された刻印部45を有する。刻印部45は、円形状で所定の深さの凹部である。
これにより、圧着状態が良好である場合(ワイヤバレル片26,26による圧着が均等に行われた場合)には、図9に示すように、標識部42の基準標識部43側に向く頂点を通る線(VC)と、基準標識部43の中心がほぼ同じ仮想軸線VPを通る(又はVPとVCが所定寸法以下の範囲に形成される)ため、圧着状態が良好であると判定できる。
【0048】
一方、圧着状態が良好でない場合(ワイヤバレル片26,26による圧着が均等に行われない場合)には、図12に示すように、標識部42の基準標識部43側に向く頂点を通る仮想軸線VPに対して、基準標識部43の中心線(VC)が所定寸法以上離れた位置に形成されるため、圧着状態が不良であると判定できる。
これにより、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。
【0049】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図13ないし図15を参照して説明する。
上記実施形態では、基準標識部25,43は、芯線かしめ領域23Aに設け、標識部24,42は、非かしめ領域23Cに設けることとしたが、実施形態3では、端子金具付き電線50の基準標識部43については、実施形態2と同一の構成であるが、図14に示すように、端子金具51における標識部52を非かしめ領域23Cではなく、芯線かしめ領域23Aに設けるものである。
【0050】
図13,図15に示すように、端子金具付き電線50としては、芯線かしめ領域23Aにおいて、標識部52及び基準標識部43が近傍の位置で軸方向に前後するように形成される。
これにより、標識部52及び基準標識部43の位置が近いため、圧着状態の良否を容易に認識することができる。
【0051】
<実施形態4>
次に、本発明の実施形態4を図16ないし図18を参照して説明する。
実施形態4では、端子金具付き電線60の標識部62及び基準標識部43を共に円形状としたものである。なお、基準標識部43は、実施形態2と同一の構成である。
端子金具61における標識部62は、円筒形状に凹み形成された円筒部を有し、この円筒部の内側は、平坦な内円部64となっている。
標識部62及び基準標識部43は、軸方向における同位置(同心)に形成され、内円部64の径は、基準標識部43の径よりも大きい。
【0052】
そして、圧着状態が良好である場合(ワイヤバレル片26,26による圧着が均等に行われた場合)には、図16に示すように、標識部52と、基準標識部43とが同心(又は中心位置が所定範囲内)に位置するように刻印される。
【0053】
一方、圧着状態が良好でない場合(ワイヤバレル片26,26による圧着が均等に行われない場合)には、図18に示すように、標識部52と、基準標識部43とが同心から所定寸法以上ずれた状態となる。
【0054】
<実施形態5>
次に、本発明の実施形態5を図19及び図20を参照して説明する。
実施形態5は、上記実施形態とは異なり、端子金具付き電線70は、基準標識部25(43)は設けずに、実施形態3と同一構成の標識部52のみにより、圧着状態が良好であるか否かを判定するものである。そのため、アンビルには刻印部31(45)は設けられていない。
【0055】
基準標識部25(43)を有さないために、標識部52と基準標識部25(43)とを比較する上記実施形態とは圧着状態の良否を検査する検査工程が異なる。
【0056】
(検査工程)
圧着完了後の端子金具付き電線10のおける基板部23の裏面の画像を撮像装置(図示しない)で取り込み制御部に出力する。
制御部は、取り込んだ画像により、幅方向(Y軸方向)における標識部52の位置(標識部52の幅方向の中心)の位置情報(及び基板部23の幅方向の端部の位置情報)を取得する。
【0057】
次に、制御部は、取得した位置情報により標識部52の位置と、予め記憶されている基準位置とを比較する。
【0058】
そして、制御部は、図19に示すように、幅方向(Y軸方向)における標識部52の位置が基準位置に対して所定の範囲内にあると判断した場合には、左右のワイヤバレル片26,26により均等にかしめつけが行われているため、圧着状態が良好である良品であると判定する。
【0059】
一方、図20に示すように、標識部52の位置(VP)が基準位置(VC)に対して所定の範囲内にない場合には、左右のワイヤバレル片26,26のかしめつけの深さ(強さ)が異なるため、圧着状態が良好でない不良品であると判定する。
【0060】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)標識部24や基準標識部25の形状は、上記実施形態の四角形、三角形、円形に限られず、他の形状を用いることも可能である。
【0061】
(2)標識部24は基板部23に凹設されることとしたが、これに限られず、凸設するものや、マークを印刷するものでもよい。また、基準標識部25についても、基板部23に凸設されることとしたが、これに限られず、凹設されるものや、マークを印刷するものでもよい。なお、基準標識部25を凹設する場合には、アンビル30形成される刻印部31を凸設するものとすればよい。
【0062】
(3)圧着状態が良好であるかを判定する方法は、上記した画像処理に限らず、他の方法によることも可能である。例えば、作業者が視認により判定することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
10,40,50,60,70…端子金具付き電線
11…被覆電線(電線)
12…芯線
13…絶縁被覆
20,41,51,61…端子金具
22…電線接続部
23…基板部
24,42,52,62…標識部
25,43…基準標識部
26…ワイヤバレル片
27…インシュレーションバレル片
30,44…アンビル(圧着金型)
31,45…刻印部
32…クリンパ
VC…基準標識部の幅方向の中心線
VP…仮想軸線
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具、端子金具付き電線及び端子金具付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被覆電線の端末にいわゆるオープンバレル形の端子金具が圧着されてなる端子金具付き電線が用いられている。
この端子金具は、基板部の左右から一対のワイヤバレル片が立ち上げられており、この端子金具がアンビル上に配されるとともに、被覆電線の端末が芯線を露出させた状態で基板部に載置される。
そして、アンビルの上方に配置されたクリンパを下降させると、一対のワイヤバレル片がその間に配された芯線を両側から抱き込むような形状で芯線を押し潰して圧着される。
【0003】
ところで、端子金具付き電線において、良好な電気接続を保証するためには、一対のワイヤバレル片が芯線内部に均等な深さで食い込む(巻き込む)ことにより良好な圧着状態となっている必要がある。そのため、端子金具付き電線の検査工程において圧着状態が良好であるか否かの判定が行われている。
特許文献1には、ワイヤバレル片の内面側に形成されるセレーションに対して、ワイヤバレル片の外面側におけるセレーションと対応する位置に圧着状態の識別用の溝や目盛りを形成したものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−357901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の構成は、識別用の溝等が、電線の導体に対するセレーションの相対位置を確認することを目的として、セレーションと同様に端子軸方向と直交する方向(ワイヤバレル片の長手方向)に延びる形状に形成されたものである。そのため、端子軸方向におけるセレーションとベルマウスの位置関係についてはわかるけれども、ワイヤバレル片の長手方向(展開方向)における各ワイヤバレル片の食い込みの深さの違い(巻き込み深さのずれ)については判定しづらいという問題があった。
そして、クリンパによる端子圧着後の状態で、ワイヤバレルの圧着断面において一対のワイヤバレルの端部が偏って変形している場合には、外観からのみでは電線と端子との電気接続状態が良好であるかを判断することは困難であった。
また、一対のワイヤバレル片は、圧着の際に強い力で芯線を押し潰すが、このときワイヤバレル片自体も芯線とクリンパとの間に挟まれて強い力を受けており、ワイヤバレル片自体にも延びを生じている。特許文献1の構成では、一対のワイヤバレル片に溝や目盛りを設ける構成であるため、ワイヤバレル片の延びにより溝や目盛り等の位置にずれを生じさせ、圧着状態の正確な判定ができなくなるという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ワイヤバレル片に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる端子金具、端子金具付き電線及び端子金具付き電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基板部の両側から電線の芯線を圧着抱持する一対のワイヤバレル片を有する端子金具において、前記基板部のうち前記電線を抱持する面とは反対側の面に前記電線の圧着前に形成された標識部を備えるところに特徴を有する(手段1)。
手段1の構成によれば、標識部は、基板部のうち電線を抱持する面とは反対側の面に設けられているため、ワイヤバレル片に延びが生じても基板部における標識部の位置が影響を受けにくい。また、一対のワイヤバレル片について食い込みの深さに違い(巻き込み深さのずれ)が生じて圧着状態が良好でない場合には、標識部の位置がずれるため、この標識部の位置に基づいて、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。よって、ワイヤバレル片に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。
【0008】
手段1の構成に加えて、前記標識部は、前記基板部に凹状に刻印して形成されたものであるようにしてもよい(手段2)。
手段2の構成のようにすれば、容易に標識部を形成することができる。また、金属板材から端子金具を成形する工程の際に同時に標識部を形成することが可能になる。
【0009】
手段1又は手段2の構成に加えて、前記ワイヤバレル片は前記基板部上を通る仮想軸線に関して対称に形成されており、前記標識部は前記仮想軸線上に位置して設けられているようにしてもよい(手段3)。
手段3の構成によれば、簡易な構成で圧着状態が良好であるか否かを判別することが可能になる。
【0010】
本発明は、基板部の両側に電線の芯線を圧着抱持する一対のワイヤバレル片を有する端子金具と、前記ワイヤバレル片に圧着された前記電線とからなる端子金具付き電線であって、前記端子金具の前記基板部のうち前記電線を抱持する面とは反対側の面には、前記電線の圧着前に形成された標識部と、圧着金型に形成した刻印部によって前記電線の圧着時に刻印された基準標識部とを備えるところに特徴を有する(手段4)。
手段4の構成によれば、端子金具の基板部のうち電線を抱持する面とは反対側の面に形成される標識部と基準標識部との位置を比較するため、ワイヤバレル片に延びが生じても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。また、一対のワイヤバレル片について食い込みの深さに違い(巻き込み深さのずれ)が生じて圧着状態が良好でない場合には、標識部と基準標識部との位置がずれるため、これらの位置関係に基づいて、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。よって、ワイヤバレル片に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。また、標識部と基準標識部との位置を比較するため、標識部のみにより前記判定を行う場合と比較して、前記判定を、容易かつ確実に行うことができる。
【0011】
手段4の構成に加えて、前記基板部の両側に電線の絶縁被覆の部分をかしめる一対のインシュレーションバレル片を有し、前記標識部は、前記基板部のうち、前記一対のワイヤバレル片と前記一対のインシュレーションバレル片との間に設けられるようにしてもよい(手段5)。
手段5の構成によれば、標識部を基板部のうち、バレル片を有さない部分に設けることで、圧着の際の端子金具の変形(延び)が標識部の部分に及ぼされにくくすることができる。
【0012】
手段4又は手段5の構成に加えて、前記標識部及び前記基準標識部のうちの少なくとも一方は、四角形状であるようにしてもよい(手段6)。
手段6の構成によれば、標識部や基準標識部を金型で形成する場合の金型寿命を長くすることができる。
【0013】
本発明は、基板部の両側に一対のワイヤバレル片を有する端子金具に電線を圧着してなる端子金具付き電線の製造方法において、前記端子金具の前記基板部のうち前記電線を抱持する面とは反対側の面に予め標識部を形成しておいて前記電線を前記ワイヤバレル片によって圧着する圧着工程を行い、その後に、前記標識部の位置を検査する検査工程を行うところに特徴を有する(手段7)。
基板部のうち前記電線を抱持する面とは反対側の面に予め標識部を形成しておいて圧着する。標識部を基板部に設けることで、圧着の際にワイヤバレル片には延びが生じるが、比較的基板部には延びが生じにくい。そして、圧着後の標識部の位置は、一対のワイヤバレル片によるかしめ強さ(かしめ深さ)の割合に応じて、標識部が形成された面の側から見た際の基板部における標識部の位置が異なる。よって、検査工程においては、標識部の位置に応じた検査結果に基づき、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。よって、ワイヤバレル片に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。
【0014】
手段7の構成に加えて、前記圧着工程の際に前記標識部の位置を判断するための基準となる基準標識部を刻設する基準標識部を刻設するようにしてもよい(手段8)。
手段8の構成によれば、標識部と基準標識部との比較により、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。また、基準標識部の位置は、標識部の近傍であるから、前記比較を容易に行うことができる。
【0015】
手段7の構成に加えて、前記検査工程は、前記電線の圧着後の端子金具を撮影した画像情報から取得した前記標識部の位置情報に基づいて圧着状態が良好であるか否かの判定を行うようにしてもよい(手段9)。
手段9の構成によれば、圧着状態が良好であるか否かの判定を自動化することができる。
【0016】
手段8の構成に加えて、前記検査工程は、前記電線の圧着後の端子金具を撮影した画像情報から取得した前記標識部の位置と前記基準標識部の位置とに基づいて、圧着状態が良好であるか否かの判定を行うようにしてもよい(手段10)。
手段10の構成によれば、圧着状態が良好であるか否かを判定を自動化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ワイヤバレル片に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係る端子金具付き電線を表す上面図
【図2】端子金具付き電線を表す下面図
【図3】端子金具を表す斜視図
【図4】端子金具の電線接続部の部分の裏面側を表す展開図
【図5】アンビルの斜視図
【図6】端子金具が圧着される前の状態を背面側から表す図
【図7】端子金具が圧着される前の状態を側面側から表す図
【図8】圧着状態が不良である場合の端子金具付き電線を表す下面図
【図9】実施形態2に係る端子金具付き電線を表す下面図
【図10】端子金具の電線接続部の部分の裏面側を表す展開図
【図11】アンビルの斜視図
【図12】圧着状態が不良である場合の端子金具付き電線を表す下面図
【図13】実施形態3に係る端子金具付き電線を表す下面図
【図14】端子金具の電線接続部の部分の裏面側を表す展開図
【図15】圧着状態が不良である場合の端子金具付き電線を表す下面図
【図16】実施形態4に係る端子金具付き電線を表す下面図
【図17】端子金具の電線接続部の部分の裏面側を表す展開図
【図18】圧着状態が不良である場合の端子金具付き電線を表す下面図
【図19】実施形態5に係る端子金具付き電線を表す下面図
【図20】圧着状態が不良である場合の端子金具付き電線を表す下面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1の端子金具付き電線10について、図1〜図8を参照して説明する。
実施形態1の端子金具付き電線10は、図1に示すように、被覆電線11の端末部に端子金具20が圧着接続されてなるものであり、例えば電気自動車において走行用の動力源を構成するバッテリ、インバータ、モータなどの装置(図示せず)の間に配索される。なお、以下の説明では、図1の左方を前方とし、右方を後方として説明する。
【0020】
被覆電線11は、銅合金からなる金属素線を螺旋状に撚り合わせてなる芯線12を樹脂製の絶縁被覆13(絶縁層)で被覆したものであり、その端末部においては、絶縁被覆13が剥き取られて芯線12が露出されている。なお、被覆電線11の金属素線は、銅合金のみならず、銅、アルミ、アルミ合金であってもよい。
【0021】
端子金具20は、銅合金製であり、図3に示すように、いわゆるオープンバレル型であって、箱型の端子接続部21と、端子接続部21と連続し被覆電線11が接続される電線接続部22とからなる。なお、端子金具20は、金属板材に打ち抜き加工を施して端子金具の展開形状を形成した後に、この展開形状に曲げ加工を施すことにより形成することができる。
端子接続部21は、箱型の雌端子であって、図示しない相手側端子の雄タブが前端部の挿入孔から挿入されることにより、相手側端子と電気的接続が図られる。
【0022】
電線接続部22は、端子接続部21の底板に連なり後方に延出される基板部23と、基板部23の両側から芯線12を圧着抱持する一対のワイヤバレル片26,26と、一対のワイヤバレル片26,26の後方にて被覆電線11を絶縁被覆13の上から保持する一対のインシュレーションバレル片27,27と、を有する。
一対のワイヤバレル片26,26は、図4に示すように、共に軸方向(前後方向)に所定の長さで形成されており、基板部23の両側縁部からそれぞれ幅方向に延出されている。これにより一対のワイヤバレル片26,26は、基板部23の幅方向の中間部を仮想軸線VPとした場合に、この仮想軸線VPに関して対称に形成されている。
【0023】
一対のインシュレーションバレル片27,27は、一対のワイヤバレル片26,26の後方に配されており、基板部23の両側縁部からそれぞれ幅方向に延出されており、一対のインシュレーションバレル片27,27で被覆電線11を絶縁被覆13の上からかしめることにより被覆電線11が離脱や位置ずれしないように保持される。
【0024】
基板部23は、幅方向の中心部が低くなるようにU字状に湾曲した形状をなし(図6参照)、この基板部23の上に被覆電線11の端末部が配される。
基板部23の裏面(芯線12を圧着抱持する面とは反対側の面)には、図4に示すように、四角形状の標識部24が、基板部23の裏面に対してほぼ一定の深さで凹み形成されている。
【0025】
この標識部24の幅方向における位置は、その中心が基板部23の幅方向における中間部を通る仮想軸線VP上に位置するように形成される。
標識部24の軸方向(前後方向)のおける位置は、基板部23を、左右にワイヤバレル片26,26を有して芯線12のかしめ付けが行われる芯線かしめ領域23Aと、左右にインシュレーションバレル片27,27を有して絶縁被覆13の上からかしめ付けが行われる被覆かしめ領域23Bと、芯線かしめ領域23Aと被覆かしめ領域23Bとの間に配されて、かしめ付けの行われない非かしめ領域23Cとに分けた場合に、非かしめ領域23Cにおける中間部に形成されている。
【0026】
標識部24の形成方法は、標識部24に対応する形状の凸部を有する金型を用いて、例えば、端子金具20の成形時の打ち抜き加工や曲げ加工の際に同時に標識部24を形成することができる。
【0027】
また、基板部23の裏面のうち、芯線かしめ領域23Aには、端子金具20の圧着の際に、基準標識部25が形成されるようになっており、これにより、圧着後の端子金具付き電線10の裏面側には、図2に示すように、基準標識部25が形成されている。
基準標識部25は、芯線かしめ領域23Aのうち、幅方向の中間部であって、軸方向の中間部よりやや後方に形成されるもので、基板部23の湾曲した裏面に対してわずかに(視認可能な程度に)突出した部分である。この基準標識部25は、圧着の際に、後述するアンビル30に設けられている刻印部31によって形成されるものである。
【0028】
端子金具20の圧着は、図6に示すように、端子金具20が載置されるアンビル30(本発明の「圧着金型」に相当)と、アンビル30の上方に配置されるクリンパ32との相対移動により行われる。
アンビル30は、図5に示すように、金属製の金型であり、その上面30Aが端子金具20を載置できるように、基板部23の形状に応じて幅方向について中央部に向けて漸次低くなるように湾曲した形状となっている。
【0029】
アンビル30の上面30Aには、刻印部31が凹設されている。刻印部31は、4角形状の凹部であって、所定の深さで形成されている。
クリンパ32は、図6に示すように、金属製の金型であり、その下面(内面)が一対のバレル部37を包み込むように変形させるように、山形に凹設されており、その頂部は、一対のバレル部に応じて半円形状になっている。
【0030】
次に、端子金具付き電線の製造方法について説明する。
端子金具付き電線10の製造は、被覆電線11の端末を端子金具20に圧着する圧着工程と、圧着工程で圧着された端子金具付き電線10の検査工程とからなる。
(圧着工程)
端子原板に曲げ加工を施した端子金具20の基板部23に、図7に示すように、芯線12を露出させた被覆電線11の端末部を載置した状態で、端子金具20をアンビル30上の所定位置(基板部23のうち芯線かしめ領域23A内において幅方向の中間部に刻印部31が位置するように)に載置する。
そして、クリンパ32を下降させる。
【0031】
すると、一対のワイヤバレル片26,26が、クリンパ32の内面形状に応じて芯線12を包み込むような形状に折り返しつつ変形する。そして、一対のワイヤバレル片26,26の先端部が芯線12の外周に突き当たり芯線12を押し潰しつつ芯線12の内部に食い込んでいく。このとき、端子金具20がクリンパ32とアンビル30の強い力で挟まれるため、圧着とともに、アンビル30に凹設された刻印部31が強い力で基板部23の裏面に押し当てられ、基板部23には、アンビル30の刻印部31に押し当てられて形成された基準標識部25が基板部23の裏面から突出(膨出)する。そして、クリンパ32が所定位置まで下降すると、芯線12の圧着(かしめ付け)及び基準標識部2の形成が終了する。
【0032】
なお、説明を省略したが、クリンパ32は、一対のインシュレーションバレル片27,27についてもかしめるようになっており、上記したクリンパ32の下降により、上記したワイヤバレル片26,26による圧着に伴って絶縁被覆13部分がインシュレーションバレル片27,27によってかしめられる。
そして、クリンパ32を元の位置に戻し、端子金具付き電線10をアンビル30の上から取り出す。
【0033】
(検査工程)
検査装置は、圧着完了後の端子金具付き電線10のおける基板部23の裏面の画像を、例えば、CCD等の撮像手段(図示しない)を用いて取り込み制御部に出力する。
制御部は、入力された画像により、幅方向(Y軸方向)における標識部24の位置(標識部24の幅方向の中心)と幅方向(Y軸方向)における基準標識部25(基準標識部25の幅方向の中心)の位置とのそれぞれの位置情報を取得する。
【0034】
次に、制御部は、取得した位置情報により、幅方向における標識部24の位置が、幅方向における基準標識部25の位置に対して所定の範囲内(良品と判定できる許容寸法以下)にあるかどうかを比較する。
図2に示すように、標識部24の位置が基準標識部25の位置に対して所定の範囲内にある場合には、左右のワイヤバレル片26,26によりほぼ均等にかしめつけが行われていると判断できるため、制御部は、圧着状態が良好である良品であると判定する。
【0035】
一方、図8に示すように、幅方向(Y軸方向)における標識部24の位置(VP)が幅方向(Y軸方向)における基準標識部25の位置(VC)に対して所定の範囲内にない場合には、左右のワイヤバレル片26,26のかしめつけの深さ(強さ)が異なるため、制御部は、圧着状態が良好でない不良品であると判定する。
【0036】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態によれば、標識部24は、基板部23の裏面(基板部23のうち被覆電線11(電線)を抱持する面とは反対側の面)に設けられているため、ワイヤバレル片26,26に延びが生じても基板部23における標識部24の位置が影響を受けにくい。また、一対のワイヤバレル片26,26について食い込みの深さに違い(巻き込み深さのずれ)が生じて圧着状態が良好でない場合には、標識部24の位置がずれるため、この標識部24の位置に基づいて、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。よって、ワイヤバレル片26,26に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片26,26の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。
【0037】
(2)標識部24は、基板部23に凹状に刻印して形成されたものであるため、容易に標識部24を形成することができる。また、金属板材から端子金具20を成形する工程に伴って標識部24を形成することができる。
【0038】
(3)ワイヤバレル片26,26は基板部23上を通る仮想軸線VPに関して対称に形成されており、標識部24は仮想軸線VP上に位置して設けられているため、簡易な構成で圧着状態が良好であるか否かを判別することが可能になる。
【0039】
(4)端子金具付き電線10は、端子金具20の基板部23のうち被覆電線11を抱持する面とは反対側の面に形成される標識部24と基準標識部25との位置を比較するため、ワイヤバレル片26,26に延びが生じても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。また、一対のワイヤバレル片26,26について食い込みの深さに違い(巻き込み深さのずれ)が生じて圧着状態が良好でない場合には、標識部24と基準標識部25との位置がずれるため、これらの位置関係に基づいて、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。よって、ワイヤバレル片26,26に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片26,26の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。また、標識部24と基準標識部25との位置を比較するため、標識部24のみにより前記判定を行う場合と比較して、前記判定を、容易かつ確実に行うことができる。
【0040】
(5)標識部24は、基板部23のうち、一対のワイヤバレル片26,26と一対のインシュレーションバレル片27,27との間の非かしめ領域23Cに設けられる。このように標識部24を基板部23のうち、バレル片を有さない部分に設けることで、圧着の際の端子金具20の変形(延び)が標識部24の部分に及ぼされにくくすることができる。
【0041】
(6)標識部24及び基準標識部25は、四角形状であるため、標識部24や基準標識部25を金型で形成する場合の金型寿命を長くすることができる。
【0042】
(7)端子金具付き電線10の製造は、基板部23の裏面に予め標識部24を形成しておいて圧着工程を行う。このように標識部24を基板部23に設けることで、圧着の際にワイヤバレル片26,26には延びが生じるが、比較的基板部23には延びが生じにくい。そして、圧着工程後の標識部24の位置は、一対のワイヤバレル片26,26によるかしめ強さ(かしめ深さ)の割合に応じて、標識部24が形成された面の側から見た際の基板部23における標識部24の位置が異なる。よって、検査工程においては、標識部24の位置に応じた検査結果に基づき、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。よって、ワイヤバレル片26,26に延びが生じたり、一対のワイヤバレル片26,26の端部が偏って変形したりしても圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。
【0043】
(8)標識部24と圧着の際に形成される基準標識部25との比較により、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。また、基準標識部25の位置は、標識部24の近傍であるから、前記比較を容易に行うことができる。
【0044】
(9)検査工程は、被覆電線11の圧着後の端子金具20を撮影した画像情報から取得した標識部24の位置と基準標識部25の位置とに基づいて、圧着状態が良好であるか否かの判定を行うため、圧着状態が良好であるか否かを判定を自動化することができる。
【0045】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図9ないし図12を参照して説明する。実施形態1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
実施形態1の端子金具付き電線10の標識部24及び基準標識部25は共に四角形状であったが、実施形態2の端子金具付き電線40では、図9に示すように、標識部42は三角形状で、基準標識部43は円形状とするものである。
【0046】
端子金具41における標識部42は、ほぼ正三角形状の凹部であって、図10に示すように、その前方(基準標識部25が形成される側)に向く三角形の頂点が仮想軸線VP(基板部23の幅方向における中心部)を通るように形成される。
【0047】
基準標識部43は、アンビル44により形成される。
アンビル44は、図11に示すように、その上面44Aにおける幅方向の中間部に形成された刻印部45を有する。刻印部45は、円形状で所定の深さの凹部である。
これにより、圧着状態が良好である場合(ワイヤバレル片26,26による圧着が均等に行われた場合)には、図9に示すように、標識部42の基準標識部43側に向く頂点を通る線(VC)と、基準標識部43の中心がほぼ同じ仮想軸線VPを通る(又はVPとVCが所定寸法以下の範囲に形成される)ため、圧着状態が良好であると判定できる。
【0048】
一方、圧着状態が良好でない場合(ワイヤバレル片26,26による圧着が均等に行われない場合)には、図12に示すように、標識部42の基準標識部43側に向く頂点を通る仮想軸線VPに対して、基準標識部43の中心線(VC)が所定寸法以上離れた位置に形成されるため、圧着状態が不良であると判定できる。
これにより、圧着状態が良好であるか否かを判定することができる。
【0049】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図13ないし図15を参照して説明する。
上記実施形態では、基準標識部25,43は、芯線かしめ領域23Aに設け、標識部24,42は、非かしめ領域23Cに設けることとしたが、実施形態3では、端子金具付き電線50の基準標識部43については、実施形態2と同一の構成であるが、図14に示すように、端子金具51における標識部52を非かしめ領域23Cではなく、芯線かしめ領域23Aに設けるものである。
【0050】
図13,図15に示すように、端子金具付き電線50としては、芯線かしめ領域23Aにおいて、標識部52及び基準標識部43が近傍の位置で軸方向に前後するように形成される。
これにより、標識部52及び基準標識部43の位置が近いため、圧着状態の良否を容易に認識することができる。
【0051】
<実施形態4>
次に、本発明の実施形態4を図16ないし図18を参照して説明する。
実施形態4では、端子金具付き電線60の標識部62及び基準標識部43を共に円形状としたものである。なお、基準標識部43は、実施形態2と同一の構成である。
端子金具61における標識部62は、円筒形状に凹み形成された円筒部を有し、この円筒部の内側は、平坦な内円部64となっている。
標識部62及び基準標識部43は、軸方向における同位置(同心)に形成され、内円部64の径は、基準標識部43の径よりも大きい。
【0052】
そして、圧着状態が良好である場合(ワイヤバレル片26,26による圧着が均等に行われた場合)には、図16に示すように、標識部52と、基準標識部43とが同心(又は中心位置が所定範囲内)に位置するように刻印される。
【0053】
一方、圧着状態が良好でない場合(ワイヤバレル片26,26による圧着が均等に行われない場合)には、図18に示すように、標識部52と、基準標識部43とが同心から所定寸法以上ずれた状態となる。
【0054】
<実施形態5>
次に、本発明の実施形態5を図19及び図20を参照して説明する。
実施形態5は、上記実施形態とは異なり、端子金具付き電線70は、基準標識部25(43)は設けずに、実施形態3と同一構成の標識部52のみにより、圧着状態が良好であるか否かを判定するものである。そのため、アンビルには刻印部31(45)は設けられていない。
【0055】
基準標識部25(43)を有さないために、標識部52と基準標識部25(43)とを比較する上記実施形態とは圧着状態の良否を検査する検査工程が異なる。
【0056】
(検査工程)
圧着完了後の端子金具付き電線10のおける基板部23の裏面の画像を撮像装置(図示しない)で取り込み制御部に出力する。
制御部は、取り込んだ画像により、幅方向(Y軸方向)における標識部52の位置(標識部52の幅方向の中心)の位置情報(及び基板部23の幅方向の端部の位置情報)を取得する。
【0057】
次に、制御部は、取得した位置情報により標識部52の位置と、予め記憶されている基準位置とを比較する。
【0058】
そして、制御部は、図19に示すように、幅方向(Y軸方向)における標識部52の位置が基準位置に対して所定の範囲内にあると判断した場合には、左右のワイヤバレル片26,26により均等にかしめつけが行われているため、圧着状態が良好である良品であると判定する。
【0059】
一方、図20に示すように、標識部52の位置(VP)が基準位置(VC)に対して所定の範囲内にない場合には、左右のワイヤバレル片26,26のかしめつけの深さ(強さ)が異なるため、圧着状態が良好でない不良品であると判定する。
【0060】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)標識部24や基準標識部25の形状は、上記実施形態の四角形、三角形、円形に限られず、他の形状を用いることも可能である。
【0061】
(2)標識部24は基板部23に凹設されることとしたが、これに限られず、凸設するものや、マークを印刷するものでもよい。また、基準標識部25についても、基板部23に凸設されることとしたが、これに限られず、凹設されるものや、マークを印刷するものでもよい。なお、基準標識部25を凹設する場合には、アンビル30形成される刻印部31を凸設するものとすればよい。
【0062】
(3)圧着状態が良好であるかを判定する方法は、上記した画像処理に限らず、他の方法によることも可能である。例えば、作業者が視認により判定することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
10,40,50,60,70…端子金具付き電線
11…被覆電線(電線)
12…芯線
13…絶縁被覆
20,41,51,61…端子金具
22…電線接続部
23…基板部
24,42,52,62…標識部
25,43…基準標識部
26…ワイヤバレル片
27…インシュレーションバレル片
30,44…アンビル(圧着金型)
31,45…刻印部
32…クリンパ
VC…基準標識部の幅方向の中心線
VP…仮想軸線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部の両側から電線の芯線を圧着抱持する一対のワイヤバレル片を有する端子金具において、前記基板部のうち前記電線を抱持する面とは反対側の面に前記電線の圧着前に形成された標識部を備えることを特徴とする端子金具。
【請求項2】
前記標識部は、前記基板部に凹状に刻印して形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の端子金具。
【請求項3】
前記ワイヤバレル片は前記基板部上を通る仮想軸線に関して対称に形成されており、前記標識部は前記仮想軸線上に位置して設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の端子金具。
【請求項4】
基板部の両側に電線の芯線を圧着抱持する一対のワイヤバレル片を有する端子金具と、前記ワイヤバレル片に圧着された前記電線とからなる端子金具付き電線であって、前記端子金具の前記基板部のうち前記電線を抱持する面とは反対側の面には、前記電線の圧着前に形成された標識部と、圧着金型に形成した刻印部によって前記電線の圧着時に刻印された基準標識部とを備える端子金具付き電線。
【請求項5】
前記基板部の両側に電線の絶縁被覆の部分をかしめる一対のインシュレーションバレル片を有し、前記標識部は、前記基板部のうち、前記一対のワイヤバレル片と前記一対のインシュレーションバレル片との間に設けられることを特徴とする請求項4記載の端子金具付き電線。
【請求項6】
前記標識部及び前記基準標識部のうちの少なくとも一方は、四角形状であることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の端子金具付き電線。
【請求項7】
基板部の両側に一対のワイヤバレル片を有する端子金具に電線を圧着してなる端子金具付き電線の製造方法において、前記端子金具の前記基板部のうち前記電線を抱持する面とは反対側の面に予め標識部を形成しておいて前記電線を前記ワイヤバレル片によって圧着する圧着工程を行い、その後に、前記標識部の位置を検査する検査工程を行うことを特徴とする端子金具付き電線の製造方法。
【請求項8】
前記圧着工程の際に前記標識部の位置を判断するための基準となる基準標識部を刻設することを特徴とする請求項7記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項9】
前記検査工程は、前記電線の圧着後の端子金具を撮影した画像情報から取得した前記標識部の位置情報に基づいて圧着状態が良好であるか否かの判定を行うことを特徴とする請求項7記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項10】
前記検査工程は、前記電線の圧着後の端子金具を撮影した画像情報から取得した前記標識部の位置と前記基準標識部の位置とに基づいて、圧着状態が良好であるか否かの判定を行うことを特徴とする請求項8記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項1】
基板部の両側から電線の芯線を圧着抱持する一対のワイヤバレル片を有する端子金具において、前記基板部のうち前記電線を抱持する面とは反対側の面に前記電線の圧着前に形成された標識部を備えることを特徴とする端子金具。
【請求項2】
前記標識部は、前記基板部に凹状に刻印して形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の端子金具。
【請求項3】
前記ワイヤバレル片は前記基板部上を通る仮想軸線に関して対称に形成されており、前記標識部は前記仮想軸線上に位置して設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の端子金具。
【請求項4】
基板部の両側に電線の芯線を圧着抱持する一対のワイヤバレル片を有する端子金具と、前記ワイヤバレル片に圧着された前記電線とからなる端子金具付き電線であって、前記端子金具の前記基板部のうち前記電線を抱持する面とは反対側の面には、前記電線の圧着前に形成された標識部と、圧着金型に形成した刻印部によって前記電線の圧着時に刻印された基準標識部とを備える端子金具付き電線。
【請求項5】
前記基板部の両側に電線の絶縁被覆の部分をかしめる一対のインシュレーションバレル片を有し、前記標識部は、前記基板部のうち、前記一対のワイヤバレル片と前記一対のインシュレーションバレル片との間に設けられることを特徴とする請求項4記載の端子金具付き電線。
【請求項6】
前記標識部及び前記基準標識部のうちの少なくとも一方は、四角形状であることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の端子金具付き電線。
【請求項7】
基板部の両側に一対のワイヤバレル片を有する端子金具に電線を圧着してなる端子金具付き電線の製造方法において、前記端子金具の前記基板部のうち前記電線を抱持する面とは反対側の面に予め標識部を形成しておいて前記電線を前記ワイヤバレル片によって圧着する圧着工程を行い、その後に、前記標識部の位置を検査する検査工程を行うことを特徴とする端子金具付き電線の製造方法。
【請求項8】
前記圧着工程の際に前記標識部の位置を判断するための基準となる基準標識部を刻設することを特徴とする請求項7記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項9】
前記検査工程は、前記電線の圧着後の端子金具を撮影した画像情報から取得した前記標識部の位置情報に基づいて圧着状態が良好であるか否かの判定を行うことを特徴とする請求項7記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項10】
前記検査工程は、前記電線の圧着後の端子金具を撮影した画像情報から取得した前記標識部の位置と前記基準標識部の位置とに基づいて、圧着状態が良好であるか否かの判定を行うことを特徴とする請求項8記載の端子金具付き電線の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−14349(P2011−14349A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156862(P2009−156862)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]