説明

端子金具および端子金具を備えるコネクタ

【課題】機械的な強度の低下を防ぐことができ、小型化が図れ、成形性が良く、しかもシール部材を用いる必要がある場合にはシール部材の防水性を確保できる端子金具および端子金具を備えるコネクタを提供する。
【解決手段】端子金具10は、端子収容部102内に逆向きで挿入されるのを防止する逆挿入防止部30と端子ボックス部20を有し、端子ボックス部20は板材を折り曲げて形成され、逆挿入防止部30は、端子ボックス部20の第1端部の第1突起31と、第1端部に突き合わされた第2端部の第2突起32とを重ね合わせて端子ボックス部20から立ち上げることで形成され、逆挿入防止部30は、端子収容部20内へ挿入する挿入方向INに対する直交方向Wに関して、端子ボックス部20の中央位置又は中央位置の近傍に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタのハウジングの端子収容部内に挿入可能な端子金具および端子金具を備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気接続用のコネクタは、端子金具とハウジングを有しており、端子金具は電線の芯線に対して電気的に接続され、端子金具が、コネクタのハウジングの端子収容部内に挿入可能な構造のものが提案されている。この種のコネクタでは、端子金具は、端子収容部内に対して正しい向きとは逆の向きに挿入されるのを防止するために、2つの逆挿入防止部、いわゆるスタビライザを有する。2つのスタビライザは端子金具の幅方向に関して大きな間隔を開けるようにして突出して形成されている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。
【0003】
また、この種のコネクタでは、図19と図20に例示するように、端子金具2は、2つのスタビライザ2a,2aを有しており、スタビライザ2a,2aは、離れた位置において平行に突出して設けられている。スタビライザ2a,2aの間は、大きな開口部になっている。
【0004】
なお、図20に示す端子金具では、ボックス状に形成された部分(以下、ボックス部と称する)の壁面が板材料を折り重ねて形成されている。
【0005】
また、特許文献1には、図21に示すように、1つのスタビライザが端子金具の内側から外側に打ち出し形成されている例も示されている。この場合、端子金具のスタビライザ形成部分の上側は打ち出し加工のため、大きく切り欠き開口された形状とされている。
【特許文献1】特開2000―91022号公報
【特許文献2】特開平11―219744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1と特許文献2および図19と図20に示す従来例のいずれにおいても、端子金具は2つのスタビライザの間に大きな開口部を有しており、しかも2つのスタビライザが、大きく離れた位置に突出して形成されているので、端子金具の機械的な強度が低下してしまう。このために、端子金具は、コネクタのハウジング内に確実に挿入したり、ハウジング内から抜くことができないおそれがある。また、端子金具と電線の接続後、取扱者が持ち運び等、ハンドリングする際、端子金具が変形するおそれが高い。また、図20の従来例では、2枚の板材料を重ね合わせて作られているので、サイズが大きくなってしまい小型化が図れない。
【0007】
また、2つのスタビライザが、離れた位置においてそれぞれ突出して形成されているので、特許文献1に開示されているように、端子金具を防水用のシール部材の小さな穴に圧入することで通す必要がある場合には、スタビライザがシール部材の穴の内面を傷つけやすくなり、シール部材の防水性を低下させるおそれがある。特許文献2に示すように、2つのスタビライザの角部分にR形状を設けたとしても、スタビライザがシール部材の穴の内面を傷つけやすいことにはかわりない。
【0008】
2つのスタビライザが離れた位置においてそれぞれ突出して形成されているので、2つのスタビライザが大きなスペースを占有してしまい、2つのスタビライザを有する端子金具をハウジング内に挿入して収容するためには、ハウジングの内周部分の内径を大きく形成しなければならず、端子金具の小型化とコネクタのハウジングの小型化が図れないという課題がある。
【0009】
また図20や図21に示す従来例の場合、上述のような切り欠き開口を有する部分にスタビライザが形成されており、端子金具の機械的強度が不十分となってしまう。しかも図21に示す従来例の場合はさらに、打ち出し加工の加工精度や打ち出し加工による他の部分の変形なども考慮する必要があり、端子金具を精度良く加工成形することが困難であった。
【0010】
そこで、本発明は上記課題を解消するために、機械的な強度の低下を防ぐことができ、小型化が図れ、成形性が良く、しかもシール部材を用いる必要がある場合にはシール部材の防水性を確保できる端子金具および端子金具を備えるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解消するために、本発明の端子金具は、電線に固定され、コネクタのハウジングの端子収容部内に挿入可能な端子金具であって、
前記端子収容部内に逆向きで挿入されるのを防止するための逆挿入防止部と、前記逆挿入防止部を有する端子ボックス部と、を有しており、
前記端子ボックス部は、板材を折り曲げて形成されており、
前記逆挿入防止部は、前記端子ボックス部の第1端部に形成されている第1突起と、前記第1端部に突き合わされた第2端部に形成されている第2突起と、を重ね合わせて前記端子ボックス部から立ち上げることで形成されており、
前記逆挿入防止部は、前記端子収容部内へ挿入する際の挿入方向に対する直交方向に関して、前記端子ボックス部の中央位置又は中央位置の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の端子金具は、好ましくは前記端子ボックス部は、前記板材を折り曲げて断面矩形状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の端子金具は、好ましくは前記端子ボックス部は、底面部と、前記底面部の一端部と他端部から立ち上げられている第1側面部と第2側面部と、前記第1側面部から前記底面部に対向するように形成されている第1上面部と、前記第2側面部から前記底面部に対向するように形成されている第2上面部と、を有しており、前記第1上面部の前記第1端部から前記第1突起が形成されており、前記第2上面部の前記第2端部から前記第2突起が形成され、前記第1突起と前記第2突起とが、重ね合わせてあることを特徴とする。
【0014】
本発明の端子金具は、好ましくは前記第1バレル付近には、前記電線の前記被覆部分に配置された防水部材が配置され、前記防水部材は、前記ハウジング内に圧入されることを特徴とする。
【0015】
本発明の端子金具を備えるコネクタは、電線に固定するための端子金具と、前記端子金具を端子収容部内に挿入可能なハウジングとを有するコネクタであって、
前記端子金具は、
前記端子収容部内に逆向きで挿入されるのを防止するための逆挿入防止部と、前記逆挿入防止部を有する端子ボックス部と、を有しており、
前記端子ボックス部は、板材を折り曲げて形成されており、
前記逆挿入防止部は、前記端子ボックス部の第1端部に形成されている第1突起と、前記第1端部に突き合わされた第2端部に形成されている第2突起と、を重ね合わせて前記端子ボックス部から立ち上げることで形成されており、
前記逆挿入防止部は、前記端子収容部内へ挿入する際の挿入方向に対する直交方向に関して、前記端子ボックス部の中央位置又は中央位置の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の端子金具を備えるコネクタは、好ましくは前記ハウジングの前記端子収容部内には、前記端子金具が正しい向きで挿入された時に前記端子金具の前記逆挿入防止部が突き当たる第1突き当て部分と、前記端子金具が誤った逆向きで挿入された時に前記端子金具の前記逆挿入防止部が突き当たる第2突き当て部分と、を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の端子金具によれば、機械的な強度の低下を防ぐことができ、小型化が図れ、成形性が良く、しかもシール部材を用いる必要がある場合にはシール部材の防水性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の端子金具の好ましい実施形態を示す斜視図である。図1に示す端子金具10は、雄型の端子金具であり、この端子金具10は電線200に対して機械的にかつ電気的に接続して固定される電気接続端子である。
【0020】
図2は、この端子金具を備えるコネクタの好ましい実施形態を示しており、図2のコネクタ100は、端子金具10とハウジング101を有している。図2は、端子金具10がハウジング101の端子収容部102内に正しい姿勢(正しい向き)で挿入された状態を示している。図3は、端子金具10がハウジング101の端子収容部102内に逆向きの誤った姿勢(誤った向き)で挿入された状態を示している。
【0021】
図4は、端子金具10が挿入されていないハウジング101の内部構造を示している断面図である。
【0022】
図5(A)は、図2のS−S線におけるコネクタ100の断面図であり、図5(B)は、図3のT−T線におけるコネクタ100の断面図である。
【0023】
図6は、図1に示す電線200に固定されている端子金具10の平面図であり、図7は、端子金具10の板材の形状を示す展開図である。図8は、端子金具10の平面図であり、図9は、図8の端子金具10の底面図である。
【0024】
図10は、図8の矢印Pから見た端子金具10の側面図であり、図11は、図8のA−A線における端子金具10の断面図である。図12は、図6における端子ボックス部20のF−F線における断面図である。
【0025】
図13(A)は、図10のV方向から見た正面図であり、図13(B)は、図10のE−E線における断面図である。図13(C)は、図10のB−B線における断面図であり、図13(D)は、図10のC−C線における断面図である。
【0026】
まず、端子金具10の構造について、図1と図2及び図6〜図13を参照して説明する。
【0027】
図1に示す端子金具10は、折り曲げることにより電線200に対して電気的にかつ機械的に固定され、図2に示すように、コネクタ100のハウジング101の端子収容部102内に挿入及び抜き取り可能である。
【0028】
図7に示すように、端子金具10は、導電性を有する金属板を所定形状に打ち抜いた後に、図8〜図11に示すような形状に折り曲げ加工することで作られている。図8〜図11に示す端子金具10の形状は、端子金具10に対して電線200と防水部材99を固定する前の状態を示している。
【0029】
図1と図6に示す端子金具10は、すでに電線200に対して電気的にかつ機械的に固定されている状態を示しているが、端子金具10は、第1バレル11と、第2バレル12と、端子ボックス部20と、逆挿入防止部30と、タブ40とを有している。
【0030】
図7には、第1バレル11と、第2バレル12と、端子ボックス部20と、逆挿入防止部30と、タブ40のそれぞれの展開形状例を示している。端子金具10には、その長手方向Lに沿って第1バレル11と、第2バレル12と、端子ボックス部20と、そしてタブ40が、長手方向Lに沿って順番に連続して形成されている。
【0031】
図8〜図11に示す端子金具10の形状は、端子金具10に対して電線200と防水部材99を固定する前の状態を示しているが、第1バレル11と、第2バレル12は、すでに斜め上方に向けて立ち上げてある。
【0032】
図7の第1バレル11は、帯状部分11R、11Tを有している。図6に示すように帯状部分11Rは、折り曲げることにより防水部材99の外周部分を包むように固定し、帯状部分11Tは折り曲げることにより電線200の被覆部分を包むようにして固定する。
【0033】
防水部材99は、ゴムのような弾性材料から作られており、防水部材99は、図2に示すようにハウジング101の内周面と端子金具10の間の隙間を塞ぐことで、ハウジング101の開口部103から水やホコリなどがハウジング101の内部に侵入するのを防ぐことができる。
【0034】
図7の第2バレル12は帯状に形成されており、第1バレル11と端子ボックス部20の間に配置されている。図1と図6に示すように折り曲げることにより、電線200のワイヤ部分(芯線)21を包むようにして電気的に接続してかつ機械的に固定する。帯状部分11R、11Tと第2バレル12の長手方向は、端子金具10の長手方向Lに対して垂直な方向である。
【0035】
次に、図7に示す端子ボックス部20は、特徴的な構造を有しており、第2バレル12とタブ40の間に配置されている。端子ボックス部20の特徴的な構造としては、逆挿入防止部30を有しており、底面部20Gと、第1側面部20Hと、第2側面部20Jと、第1上面部20Kと、第2上面部20Lと、を有していて、4面が囲まれた箱状の部材になっていることである。
【0036】
図7に示すように、第1側面部20Hと第2側面部20Jは、底面部20Gの一端部と他端部から折り線に沿って直角に立ち上げられている。第1上面部20Kは、第1側面部20Hから折り線に沿って直角に曲げてあり、底面部20Gに対して平行に対向している。第2上面部20Lは、第2側面部20Jから折り線に沿って直角に曲げてあり、底面部20Gに対して平行に対向している。
【0037】
図12は、上述した端子ボックス部20の断面形状例を示しており、端子ボックス部20は矩形断面を有している。
【0038】
図1と図6に示すように、この端子ボックス部20は、第1上面部20Kと第2上面部20Lに逆挿入防止部30を備えている。この逆挿入防止部30は、図2に示すハウジング101の端子収容部102内に端子金具10を挿入して収容する際に、端子金具10が逆方向で挿入されるのを防止するための突起である。逆挿入防止部30は、スタビライザとも呼ぶことができる。
【0039】
図7と図1に示すように、逆挿入防止部30は、1対の突起から構成されている。すなわち、図7と図1の例では、第1突起31が第1上面部20Kの第1端部31Bから立ち上げて形成されており、第2突起32が第2上面部20Lの第2端部32Bから立ち上げて形成されている。図1と図12に示すように、この第1突起31と第2突起32は同じ大きさであり、第1突起31と第2突起32とは、重ね合わせた状態で、長手方向Lに対して垂直方向に立ち上げて形成されている。
【0040】
図1,図6及び図7に示すように、好ましくは、第1上面部20Kの第1端部31Bと第2上面部20Lの第2端部32Bには、切り欠き溝300,300が第1突起31と第2突起32の前側と後側に形成されている。これにより、第1突起31と第2突起32は、切り欠き溝300,300が無い場合に比べて、第1上面部20Kの第1端部31Bと第2上面部20Lの第2端部32Bから容易かつ確実に立ち上げることができる。
【0041】
図1と図6に示す逆挿入防止部30は、端子ボックス部20の上面側において、直交方向Wに関して、端子ボックス部20の中央位置に配置されている。この直交方向Wは、ハウジング101の端子収容部102内へ端子金具10を挿入する際の挿入方向INに対して直交する方向である。しかも、逆挿入防止部30は、端子ボックス部20の上面側において、長手方向Lに関して中間位置に配置されている。
【0042】
これにより、端子ボックス部20では、第1上面部20Kの第1端部31Bと第2上面部20Lの第2端部32Bが密着するように突き合わせてあり、しかも第1突起31と第2突起32を重ね合わせる一体的な構造を有しているので、端子ボックス部20の強度を確保している。すわなち、この端子ボックス部20の4つの面が、底面部20Gと、第1側面部20Hと、第2側面部20Jと、第1上面部20Kと、第2上面部20Lにより形成されて閉じた構造を有しているとともに、第1突起31と第2突起32を互いに接触状態に重ね合わせて、形成されていることにより、端子ボックス部20の機械的な強度を十分に保つことができる。
【0043】
比較例として端子ボックス部が板材を複数枚重ねることで形成されている場合(図20参照)には、端子ボックス部の小型化が図れない。しかし、本発明の実施形態では、上述したように、図7と図12に示すように、端子ボックス部20は、底面部20Gと、第1側面部20Hと、第2側面部20Jと、第1上面部20Kと、第2上面部20Lがそれぞれ板材の1枚構造であるので、従来の端子ボックス部が例えば2枚の板材を重ねた2重構造のものに比べて、本発明の実施形態における端子ボックス部20の小型化と軽量化ができる。端子ボックス部20の小型化と軽量化ができることから、端子ボックス部20を有する端子金具10の小型化と軽量化と、端子金具10を備えるコネクタ100の小型化と軽量化が可能になる。
【0044】
この端子ボックス部20は、図2と図3に示すように、ハウジング101の端子収容部102内に挿入されたり、引き抜かれたりする際に、ハウジング101内の当接部分に当たる部分であるので、機械的な強度が要求される。また、取扱者によるハンドリング時に変形しないようにする意味でも機械的強度が要求される。
【0045】
図1と図6に示すタブ40は、端子ボックス部20から連続して形成されており、タブ40は長手方向L沿って突出して形成されている。タブ40は底面41と上面42,42を有している。このタブ40は、図2において一点鎖線で示す雌型の端子金具150に対して挿入することで電気的に接続できる。
【0046】
次に、図2〜図4を参照しながら、ハウジング101の構造例を説明する。
【0047】
図2〜図4に示すハウジング101は、例えば電気絶縁性を有するプラスチックなどにより形成されており、上述した端子金具10を挿入し、あるいは抜き取ることができる。ハウジング101は、端子収容部(端子収容室ともいう)102と、タブ挿入部105と、第1当接部分111と、第2当接部分112を有している。図2と図3では、ハウジング101の1つの端子収容部102を図示している。しかし、実際には、ハウジング101は、複数の端子収容部102を、例えば図2の紙面垂直方向に沿って配列することにより、複数本の端子金具10が各端子収容部102内に挿入できる構造を採用できる。
【0048】
図2に示す端子収容部102は、防水部材99を圧入できる程度の大きさの内径を有しており、端子収容部102の内部には、端子金具10の挿入ガイド部120,121を有している。挿入ガイド部120,121は、挿入方向INに沿って、端子金具10を端子収容部102内にスムーズに収容するためのガイドの役割を果たし、端子金具10を端子収容部102内から抜く時にも、挿入ガイド部120,121沿ってスムーズに抜くことができる。
【0049】
図2に示すようにタブ挿入部105は、穴を有しており、この穴にはタブ40を通すことができる。
【0050】
第1当接部分111は、第2当接部分112に比べて、タブ挿入部105に近い位置であって、しかも挿入ガイド部120側に設けられている。第2当接部分112は、タブ挿入部105から離れた位置であって、挿入ガイド部121側に設けられている。
【0051】
図2では、端子金具10がハウジング101の端子収容部102内に正しい向きで挿入された状態を示し、図3では、端子金具10がハウジング101の端子収容部102内に誤った逆向きで挿入された状態を示している。
【0052】
図2に示すように、端子金具10がハウジング101の端子収容部102内に正しい向きで挿入された状態では、端子金具10の逆挿入防止部30が上向きUに向けられており、逆挿入防止部30が第1当接部分111に突き当たる。これにより、図2では、端子金具10はハウジング101の端子収容部102内に正しい向きで挿入されている。この場合には、防水部材99は、開口部10から入って端子収容部102内に圧着して収容されているので、開口部103から端子収容部102内に水やホコリなどが侵入するのを防げる。また、タブ40がタブ挿入部105においても密着した状態で挿入されているので、タブ挿入部105からも端子収容部102内に水やホコリなどが侵入するのを防げる。
【0053】
これに対して、図3に示すように、端子金具10がハウジング101の端子収容部102内に正しい向きとは異なる逆方向の抜きで挿入された状態では、逆挿入防止部30が下向きDに向けられており、逆挿入防止部30が第2当接部分112に突き当たっている。この状態では、端子金具10は図2の場合に比べて挿入量が不足しており、防水部材99がハウジング101の外側に出てしまっていることから、取扱者は端子金具10をハウジング101に対して、逆に挿入したことが簡単かつ確実に分かる。
【0054】
次に、上述したコネクタ100の端子金具10とハウジング101の使用例について説明する。
【0055】
図1に示すように、端子金具10は、電線2の芯線21に対して機械的にかつ電気的に接続して固定されている。図4に示すハウジング101では、端子金具10が挿入されていない状態を示している。
【0056】
図2と図5(A)に示すように、端子金具10が、挿入方向INに沿ってハウジング101の端子収容部102内に正しい向きで挿入されると、逆挿入防止部30が上向きUに向いており、逆挿入防止部30が第1当接部分111に突き当たる。防水部材99は端子収容部102の内壁部分に圧着されているので、開口部103から水やホコリが端子金具10側に侵入することがない。タブ40は、タブ挿入部105の穴を通じて、ハウジング101のタブ収容部300側に突出しており、タブ40は例えば雌型の端子金具150に挿入される。
【0057】
これに対して、図3と図5(B)に示すように、端子金具10が挿入方向INに沿ってハウジング101の端子収容部102内に誤った逆向きで挿入されると、下向きDに逆挿入防止部30が向けられるので、逆挿入防止部30が第2当接部分112に突き当たる。従って、端子金具10は端子収容部102内に完全には収容されることがなく、端子金具10が誤った向きでハウジング101の端子収容部102内に挿入されたことが確実かつ容易に判別でき、端子金具10が逆方向に挿入されるのを確実に防止できる。
【0058】
次に、図14は、本発明の実施形態のおける端子金具の逆挿入防止部を収容するためのハウジングの内径と、比較例の端子金具の逆挿入防止部を収容するためのハウジングの内径を比較して説明する図である。図14(A)は、本発明の実施形態を示し、図14(B)は、本発明の実施形態と比較するための比較例を示している。
【0059】
図14(A)に示すように、端子ボックス部20と、逆挿入防止部30及びハウジング101の端子収容部102を示している。端子ボックス部20の底面部20Gから第1上面部20K、第2上面部20Lまでの高さH1として、端子ボックス部20の底面部20Gから逆挿入防止部30の上端部までの高さH2とする。そして、この場合に端子ボックス部20を収容できる端子収容部102の内径をd1とし、端子収容部102の外径をd2とする。
【0060】
これに対して、図14(B)に示す比較例では、比較例の部分400の底面から上部までの高さをH1として、底面から2つの逆挿入防止部430、430の先端部までの高さをH2とする。この場合に部分400を収容できるハウジング401の端子収容部402の内径をd3とし、端子収容部402の外径をd4とする。
【0061】
図14(B)の比較例における逆挿入防止部430、430の高さH2が、図14(A)に示す逆挿入防止部30の上端部までの高さH2と同じであっても、比較例における2つの逆挿入防止部430、430は部分400の両端部において離れて位置しているので、図14(B)に示すハウジング401の端子収容部402の内径d3は、図14(A)に示すハウジング101の端子収容部102の内径d1に比べて大きくしないと、2つの逆挿入防止部430、430を有する部分400が端子収容部402内に収容できなくなってしまう。
【0062】
従って、本発明の実施形態の端子金具10では、図14(A)に示すように、逆挿入防止部30が端子ボックス部20の上面側において幅方向Wに関して中央位置か、その中央位置の近傍領域に配置されていることから、図14(B)の比較例に比べて端子金具10自体の小型化ができるばかりでなく、ハウジング101自体も小型化できる。従って、コネクタ100の小型化が図れる。
【0063】
図7と図12に示すように、端子ボックス部20は、導電性金属板を曲げた一層構造の断面矩形形状を有し、大きな開口部や切り欠きを有しない箱体であり、しかも逆挿入防止部30の第1突起31と第2突起32が重ね合わされた状態で端子ボックス部20上に形成されている。このため、従来用いられている端子金具では、2つの逆挿入防止部の間隔が離れており、2つの逆挿入防止部の間には大きな開口部が形成されていたり、大きな切り欠き部を有する部分が形成され、そこに逆挿入防止部が形成されているのに比べて、端子ボックス部20の機械的な強度を確保することができ、端子金具10の強度の向上が図れる。
【0064】
図15は、本発明の実施形態のおける端子金具の逆挿入防止部を通すシール部材の状態と、比較例の端子金具の逆挿入防止部を通すシール部材の状態を比較して説明する図である。
【0065】
例えば、コネクタのハウジング101の端子収容部102内に、図15(C)に示すようなシール部材500を配置して、端子金具10を例えば図15に示すシール部材500の円形状の穴501に圧入して通しながら端子収容部102内に挿入する構造を採用する場合には、本発明の実施形態では次のようなメリットがある。すなわち、端子金具10の図15(A)に示す逆挿入防止部30は、矢印で示すようにシール部材500の穴501の内壁において中央位置の1カ所で当たるのに対して、図15(B)に示す従来の比較例の2つの逆挿入防止部430、430は、2つの矢印で示すようにシール部材500の穴501の内壁において離れた2カ所で当たる。従って、本発明の実施形態の端子金具10は、比較例の端子金具に比べて、シール部材500の穴501の内壁部分に与える損傷の程度を軽減でき、シール部材500による防水性を確保できる。
【0066】
このように、本発明の端子金具の好ましい実施形態は、端子金具の機械的な強度の低下を防ぐことができ、端子金具とコネクタの小型化が図れ、成形性が良く、シール部材の防水性を確保できる。
【0067】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形例を採用できる。
【0068】
例えば、図12に示す端子ボックス部20の断面形状は矩形断面であるが、これに限らず断面矩形以外の多角形状、円形状、楕円形状あるいはその他の形状を採用しても良い。
【0069】
第1突起31と第2突起32は、接着剤や溶着等により固定してもよい。
【0070】
図1と図6の例では、逆挿入防止部30が端子ボックス部20の上面側において、直交方向Wに関して、端子ボックス部20の中央位置に配置されているが、これに限らず、逆挿入防止部3030は、端子ボックス部20の上面側において、直交方向(端子ボックス部の幅方向)Wに関して、端子ボックス部20の中央位置だけでなく、この中央位置の近傍に配置されていても良い。
【0071】
逆挿入防止部30は、端子ボックス部20の上面側において、長手方向Lに関して中間位置に配置されているが、これに限らず、例えば図16に示すように、長手方向Lに関して前方位置に配置するか、図17に示すように、長手方向Lに関して後方位置に配置しても良い。
【0072】
本発明の端子金具としては、雄型の端子金具だけでなく、例えば図18に示すような雌型の端子金具10Aであっても良い。雌型の端子金具10Aは、図1に示す雄型の端子金具10からタブ40を取り除いて、端子ボックス部20には、雄型の端子金具のタブが挿入できるように開口250を有している。雌型の端子金具の形状は、図18に示すだけでなく、種々の形状を採用できる。
【0073】
図1と図6に示す逆挿入防止部30の第1突起31と第2突起32の前端部と後端部の少なくとも一方には、R部分を形成しても良い。
【0074】
本発明は、図示した実施形態に限らず多様な形状のものが採用できる。図示した各実施形態は、任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の端子金具の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1を示す端子金具を有するコネクタの好ましい実施形態を示し、端子金具がハウジングの端子収容部内に正しい向きで挿入された状態を示す図である。
【図3】端子金具がハウジングの端子収容部内に誤った逆向きで挿入された状態を平面図である。
【図4】端子金具が挿入される前のハウジングを示している断面図である。
【図5】コネクタの断面図である。
【図6】図1に示す電線に固定されている端子金具の平面図である。
【図7】端子金具の形状を示す展開図である。
【図8】端子金具の平面図である。
【図9】端子金具の底面図である。
【図10】端子金具の側面図である。
【図11】図8のA−A線における端子金具の断面図である。
【図12】図6のF−F線における端子金具の断面図である。
【図13】端子金具の各部の断面図である。
【図14】本発明の実施形態のおける端子金具の逆挿入防止部を収容するためのハウジングの内径と、比較例の端子金具の逆挿入防止部を収容するためのハウジングの内径を比較して説明する図である。
【図15】本発明の実施形態のおける端子金具の逆挿入防止部を通すシール部材の状態と、比較例の端子金具の逆挿入防止部を通すシール部材の状態を比較して説明する図である。
【図16】本発明の端子金具の好ましい別の実施形態を示す平面図である。
【図17】本発明の端子金具の好ましいさらに別の実施形態を示す平面図である。
【図18】本発明の端子金具の好ましいさらに別の実施形態を示す図である。
【図19】従来の端子金具のスタビライザを示す平面図である。
【図20】従来の別の端子金具のスタビライザを示す平面図である。
【図21】従来のさらに別の端子金具のスタビライザを示す平面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 端子金具
11 第1バレル
12 第2バレル
20 端子ボックス部
20G 底面部
20H 第1側面部
20J 第2側面部
20K 第1上面部
20L 第2上面部
21 電線の芯線(ワイヤー)
30 逆挿入防止部
31 第1突起
32 第2突起
31B 第1上面部の第1端部
32B 第2上面部の第2端部
40 タブ
100 コネクタ
101 ハウジング
102 端子収容部
105 タブ挿入部
111 第1当接部分
112 第2当接部分
200 電線
L 端子金具の長手方向
IN 端子金具の挿入方向
U 上方向
D 下方向
W 長手方向Lに対する直交方向(端子ボックス部の幅方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に固定され、コネクタのハウジングの端子収容部内に挿入可能な端子金具であって、
前記端子収容部内に逆向きで挿入されるのを防止するための逆挿入防止部と、前記逆挿入防止部を有する端子ボックス部と、を有しており、
前記端子ボックス部は、板材を折り曲げて形成されており、
前記逆挿入防止部は、前記端子ボックス部の第1端部に形成されている第1突起と、前記第1端部に突き合わされた第2端部に形成されている第2突起と、を重ね合わせて前記端子ボックス部から立ち上げることで形成されており、
前記逆挿入防止部は、前記端子収容部内へ挿入する際の挿入方向に対する直交方向に関して、前記端子ボックス部の中央位置又は中央位置の近傍に配置されていることを特徴とする端子金具。
【請求項2】
前記端子ボックス部は、前記板材を折り曲げて断面矩形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の端子金具。
【請求項3】
前記端子ボックス部は、
底面部と、前記底面部の一端部と他端部から立ち上げられている第1側面部と第2側面部と、前記第1側面部から前記底面部に対向するように形成されている第1上面部と、前記第2側面部から前記底面部に対向するように形成されている第2上面部と、を有しており、
前記第1上面部の前記第1端部から前記第1突起が形成されており、前記第2上面部の前記第2端部から前記第2突起が形成され、前記第1突起と前記第2突起とが、重ね合わせてあることを特徴とする請求項2に記載の端子金具。
【請求項4】
前記第1バレル付近には、前記電線の前記被覆部分に配置された防水部材が配置され、前記防水部材は、前記ハウジング内に圧入されることを特徴とする請求項2に記載の端子金具。
【請求項5】
電線に固定するための端子金具と、前記端子金具を端子収容部内に挿入可能なハウジングとを有するコネクタであって、
前記端子金具は、
前記端子収容部内に逆向きで挿入されるのを防止するための逆挿入防止部と、前記逆挿入防止部を有する端子ボックス部と、を有しており、
前記端子ボックス部は、板材を折り曲げて形成されており、
前記逆挿入防止部は、前記端子ボックス部の第1端部に形成されている第1突起と、前記第1端部に突き合わされた第2端部に形成されている第2突起と、を重ね合わせて前記端子ボックス部から立ち上げることで形成されており、
前記逆挿入防止部は、前記端子収容部内へ挿入する際の挿入方向に対する直交方向に関して、前記端子ボックス部の中央位置又は中央位置の近傍に配置されていることを特徴とする端子金具を備えるコネクタ。
【請求項6】
前記ハウジングの前記端子収容部内には、前記端子金具が正しい向きで挿入された時に前記端子金具の前記逆挿入防止部が突き当たる第1突き当て部分と、
前記端子金具が誤った逆向きで挿入された時に前記端子金具の前記逆挿入防止部が突き当たる第2突き当て部分と、を有していることを特徴とする請求項5に記載の端子金具を備えるコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−234271(P2007−234271A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51599(P2006−51599)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】