説明

端成分データベース構築方法、端成分データベース構築装置及び端成分データベース構築プログラム

【課題】 複数の物質より成る物体の端成分を格納する端成分データベースを構築する。
【解決手段】 端成分抽出部101は、ハイパースペクトル画像151から入力端成分群153を生成する。照合部103は、入力端成分群153のうちスペクトルライブラリ105にも端成分データベース107にも登録されていない端成分群を新規端成分群155として出力する。入力端成分分布画像生成部111は、入力端成分毎に入力端成分分布画像を生成する。新規端成分分布画像選択部113は、入力端成分分布画像のうちの新規端成分に対応するものを新規端成分分布画像として選択する。ユーザは、新規端成分分布画像、ハイパースペクトル画像及び高分解能画像を基に、各新規端成分がどのような物体に対応するかを認識し、各新規端成分毎に、それを端成分データベース107に登録することについての可否を判断し、それを指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の物質より成る物体の端成分を格納する端成分データベースを構築するための端成分データベース構築方法、端成分データベース構築装置及び端成分データベース構築プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイパースペクトラルイメージング(Hyperspectral Imaging)という技術が登場してきている。かかる技術について以下に簡単に説明する。
【0003】
飛行機又は人工衛星にハイパースペクトラルイメージング用のカメラを搭載し、上空からこのカメラで地上を撮影する。このカメラのレンズの後段にある分光装置は、可視光波長、近赤外線波長及び遠赤外線波長(例えば、300nm乃至2000nm)の光を所定の波長幅毎に分光する。そして、このカメラに複数設けられている撮像素子の各々は各波長毎の画像を出力する。このようにして、各画素毎、各波長毎の画像を得ることができ、このような画像がハイパースペクトラルイメージである。
【0004】
各画素毎・各波長毎の画像がN個(例えば、200個)の波長成分に分光された画像である場合、N個の波長成分より成るN次元のベクトルを形成することができる。従って、各画素にその画素におけるN次元のベクトルを対応させることができる。
【非特許文献1】「ENVIチュートリアル」 発行者:Research Systems Inc. 発行日:2003年9月、 p.373
【非特許文献2】「ENVIチュートリアル」 発行者:Research Systems Inc. 発行日:2003年9月、 pp.329-330
【非特許文献3】「ENVIチュートリアル」 発行者:Research Systems Inc. 発行日:2003年9月、 pp.340-341
【非特許文献4】「地球観測データからの情報抽出」山口芳雄、大内和夫他,(財)資源・環境観測解析センター,2003, pp.118-122
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各画素に単一の物質からの反射光しか含まれていなければ、その画素のスペクトルは単一物質のスペクトルと一致する。そのような単一物質のスペクトルは実験室で求めることができ、そのような単一物質のスペクトルをスペクトルライブラリに蓄積することができる。
【0006】
しかし、上空から撮影した画像の空間分解能はさほど高くなく、各画素のスペクトルは、複数の物質のスペクトルを混合したものとなる。従って、上空から撮影した画像から得られるハイパースペクトラル画像を分析して、各画素毎にこの画素はどの物質を撮影して得られたものであるのかを知ろうとすることは、広域に亘り同一物質が分布する場合を除き、無意味であることが多い。
【0007】
一方、例えば、ある種の船舶を撮影して得た画素のスペクトルと同一種の他の船舶を撮影して得た画素のスペクトルは、その種の船舶間で共通した物質があるため、少なくとも一部において共通していると考えられる。同様に、ある種の自動車を撮影して得た画素のスペクトルとその種の他の自動車を撮影して得た画素のスペクトルも少なくとも一部において共通であり、ある種の鉄道車両を撮影して得た画素のスペクトルとその種の他の鉄道車両を撮影して得た画素のスペクトルも少なくとも一部において共通であり、ある種の家屋を撮影して得た画素のスペクトルとその種の他の家屋を撮影して得た画素のスペクトルも少なくとも一部において共通であると考えられる。
【0008】
そこで、複数の物質より成る物体とスペクトルを対応付けておけば、スペクトルから物体を推測することが可能となると考えられる。そうすると、上空から地上を撮影し、ハイパースペクトラル画像を得れば、そこにどのような物体がどのように分布しているのかを知ることが可能となると考えられる。
【0009】
また、各画素にはある物体のみが存在するのではなく、背景となる地面等も含まれているので、各画素のスペクトルは、物体のみのスペクトルとは完全には一致しない。しかし、画像全体から端成分(endmember spectra)を求めれば、端成分を物体に対応付けることが可能となると考えられる。ここで、画像を構成する各画素のスペクトルをN個のバンドに分割し、各バンドのレベルを各次元の大きさとすることにより得られるN次元ベクトルが、画像を構成する大部分の画素(特にN次元空間において雲状に密集する画素)について、M個のN次元ベクトルの線形結合として表すことができる場合に、そのM個のN次元ベクトルの各々のことを端成分という。端成分は、通常は、雲状にベクトルの先端が密集する領域の端に複数分布する。
【0010】
そこで本発明は、複数の物質より成る物体の端成分を格納する端成分データベースを構築するための端成分データベース構築方法、端成分データベース構築装置及び端成分データベース構築プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、複数の物質より成る物体の端成分を格納する端成分データベースを構築するための端成分データベース構築方法において、入力したハイパースペクトル画像から複数の入力端成分を得るステップと、前記複数の入力端成分のうちの各入力端成分と、各物質毎のスペクトルを格納するスペクトルライブラリに格納されている各物質のスペクトルとの間の類似度を計算するステップと、前記ハイパースペクトル画像から得られた前記複数の入力端成分のうちの各入力端成分と、前記端成分データベースに既に格納されている各登録済端成分との間の類似度を計算するステップと、前記複数の入力端成分のうちの前記計算による全ての前記類似度が所定値以下である入力端成分を前記端成分データベースに登録するステップと、を備えることを特徴とする端成分データベース構築方法が提供される。
【0012】
上記の端成分データベース構築方法において、前記類似度は、複数の類似度計算方法により計算された類似度を加重平均して得られたものであってもよい。
【0013】
上記の端成分データベース構築方法は、登録するべき入力端成分に対応する物体名を外部から入力するステップを更に備え、前記登録のステップでは、入力された前記物体名を登録するべき入力端成分と対応付けて前記端成分データベースに登録してもよい。
【0014】
上記の端成分データベース構築方法は、前記複数の入力成分のうちの前記計算による全ての前記類似度が所定値以下である入力端成分を前記データベースに登録するべきであるかの可否を外部から入力するステップを更に備え、前記登録のステップでは、前記複数の入力端成分のうちの前記計算による全ての前記類似度が所定値以下であり、且つ、登録が許可された入力端成分を前記端成分データベースに登録するようにしてもよい。
【0015】
上記の端成分データベース構築方法は、前記ハイパースペクトル画像と前記複数の入力端成分を基に、その各々が前記複数の入力端成分の各々に対応する複数の入力端成分分布画像を生成するステップと、前記ハイパースペクトル画像と各入力端成分毎の前記入力端成分分布画像を表示するステップと、を備えていてもよい。
【0016】
上記の端成分データベース構築方法は、前記ハイパースペクトル画像と被写体領域が重なり、前記ハイパースペクトル画像よりも分解能が高い高分解能画像を表示するステップを更に備えていてもよい。
上記の端成分データベース構築方法は、同一の被写体を同時に撮影することにより、同一の被写体の同一時刻における前記ハイパースペクトル画像と前記高分解能画像を得るステップを更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スペクトルライブラリに登録されておらず、且つ、端成分データベースに登録されていない端成分が新たに端成分データベースに登録されるので、端成分データベースは、成長するにつれて、地上にある物体を広く網羅するようになり、ハイパースペクトル画像を基に、地上の特定の位置にある物体を高い確率をもって特定できるようになり、また、地上にどのような物体がどのように分布しているかを高い確率をもって知ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0019】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1による端成分データベース構築装置の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1を参照すると、本実施形態による端成分データベース構築装置は、端成分抽出部101、スペクトルライブラリ103、端成分データベース105、照合部107、登録部109及び追加付加情報入力部115−1を備える。追加付加情報入力部115−1は、ユーザインターフェース115に含まれる。端成分抽出部101、照合部107、登録部109及び追加付加情報入力部115−1は、ハードウェアによって実現することもできるが、コンピュータをこれらの部分として機能させるためのプログラムをコンピュータが読み込んで実行することによっても実現することができる。
【0021】
ハイパースペクトル画像151は、図2に示すように、ハイパースペクトル画像用カメラ192により領域191を上空から撮影することにより得られたものである。
【0022】
端成分抽出部101は、ハイパースペクトル画像151から複数の端成分を抽出し、これらを入力端成分群153として出力する。端成分抽出の方法としては、例えば、PPI(Pixel Purity Index)法を利用することができる。PPI法は、純度が最も高い画素又は極端な画素を探し出す方法である。PPI法は、例えば、非特許文献1に記載されており、また、公用技術である。
【0023】
スペクトルライブラリ103は、純粋な物質のスペクトルを複数の純粋な物質について格納する。
【0024】
端成分データベース105は、複数の物質より成る物体のスペクトルである端成分を物体毎に格納する。初期状態においては、端成分データベース105は空である。
【0025】
照合部107は、入力端成分群153に含まれる各入力端成分とスペクトルライブラリ103に含まれる各スペクトルとの間の類似度及び入力端成分群153に含まれる各入力端成分と端成分データベース105に含まれる各端成分との間の類似度を計算し、入力端成分群153に含まれる入力端成分のうちの全ての類似度が所定値以下の入力端成分を含む新規端成分群155を出力する。類似度については後述する。
【0026】
登録部109は、新規端成分群155に含まれる全ての新規端成分155を付加情報157と共に端成分データベース105に登録する。ここで、付加情報157とは、ハイパースペクトル画像の取得日時、ハイパースペクトル画像を撮影した地域、ハイパースペクトル画像151のファイル名、ハイパースペクトル画像の撮影条件(高度、気象状況等)、端成分抽出のアルゴリズム名、新規端成分に対応する物体名等である。
【0027】
追加付加情報入力部115−1は、ユーザから追加付加情報を入力する。追加付加情報は、装置では、特定することが困難な新規端成分に対応する物体名等である。
【0028】
次に、照合部107の動作について図3を参照して説明する。
【0029】
まず、入力端成分群153中の全ての入力端成分(以下「入力端成分A」という。)についてステップS203乃至S217を繰り返す。
【0030】
ステップS203では、スペクトルライブラリ103中の全てのスペクトル(以下「スペクトルB」という。)についてステップS205及びS207を繰り返す。
【0031】
ステップS205では、入力端成分AとスペクトルBとの間の類似度を計算する。類似度としては、SAM(Spectral Angle Mapper)法により計算された類似度及びSFF(Spectral Feature Fitting)法により計算された類似度の加重平均を採用することができる。SAM法とは、2つのスペクトルの間の角度を計算する方法である。SAM法は、例えば、非特許文献2に記載されており、また、公用技術である。SFF法とは、2つのスペクトルの吸収特性の類似度を計算する方法である。SFF法は、例えば、非特許文献3に掲載されており、また、公用技術である。また、SAM法による正規化された類似度をx、SFF法による正規化された類似度をyとした場合、これらの加重平均zは、2つの実数a、bを用いてz=(ax+by)/(a+b)と表すことができる。2つの実数の値a、bは、ユーザにより調整できるものとし、これらは、付加情報157に含まれるべきである。
【0032】
ステップS207では、ステップS205で計算した類似度がしきい値以上であるか否かを判断する。このしきい値もユーザにより調整できるものとし、これも、付加情報157に含まれるべきである。
【0033】
ステップS205で計算した類似度がしきい値以上であれば(ステップS207でYES)、入力端成分Aを新規端成分としない(ステップS217)。ステップS205で計算した類似度がしきい値以上でなければ、ステップS203の繰り返しを続ける。
【0034】
次に、端成分データベース105中の全ての登録済端成分(以下「登録済端成分C」という。)についてステップS211及びS213を繰り返す。
【0035】
ステップS211では、入力端成分Aと登録済端成分Cとの間の類似度をステップS205と同様な方法により計算する。
【0036】
ステップS213では、ステップS211で計算した類似度がしきい値以上であるか否かを判断する。このしきい値もユーザにより調整できるものとし、これも、付加情報157に含まれるべきである。
【0037】
ステップS211で計算した類似度がしきい値以上であれば(ステップS213でYES)、入力端成分Aを新規端成分としない(ステップS217)。ステップS211で計算した類似度がしきい値以上でなければ、ステップS209の繰り返しを続ける。
【0038】
ステップS203の繰返し又はステップS209の繰返しの最中に、ステップS207又はステップS213でステップS217に進まなければ、ステップS215に到達し、ここで、現在の入力端成分Aを新規端成分とする。
【0039】
[実施形態2]
実施形態1は、照合部107により新規端成分であると判断された端成分は全て無条件に端成分データベース105に登録された。しかし、照合部107により新規端成分であると判断されたからと言って必ずしもその新規端成分が新たな物体の新規端成分であるとは限らない。ことに、端成分データベース105は、端成分と物体名とを対応付け、後に、スペクトルから物体名を求めるために利用されるものであるので、物体名を付さずに端成分のみを端成分データベース105に追加しても無意味である。従って、照合部107により新規端成分であると判断された端成分がどのような物体を表すものであるのかをユーザに認識させ、その端成分を登録するべきであるか否かをユーザに判断させることが好ましい。
【0040】
また、ステップS207及びS213でのしきい値を高くして、新規物体の端成分が端成分データベース105に登録されない誤りが発生する確率を減らすことが考えられるが、そうすると、新規物体の端成分でない端成分が端成分データベース105に登録される誤りが発生する確率が増加する。そこで、しきい値を高くすることにより前者の誤りが発生する確率を減少させ、照合部107により新規端成分であると判断された端成分がどのような物体を表すものであるのかをユーザに認識させ、その端成分を登録するべきであるか否かをユーザに判断させることにより後者の誤りが発生する確率を減少させることが考えられる。
【0041】
更に、新規端成分は、海面の波や地形、雲などに起因している場合もあるが、このような原因による新規端成分は端成分データベース105に登録しないこととするのがよい。
【0042】
そこで、実施形態2は、照合部107により新規端成分であると判断された端成分がどのような物体を表すものであるのかをユーザに認識させ、その端成分を登録するべきであるか否かをユーザに判断させるものである。
【0043】
図4は、本発明の実施形態2による端成分データベース構築装置の構成を示すブロック図である。
【0044】
図4を参照すると、本実施形態による端成分データベース構築装置は、端成分抽出部101、スペクトルライブラリ103、端成分データベース105、照合部107、登録部109、入力端成分分布画像生成部111、新規端成分分布画像選択部113、追加付加情報入力部115−1、ハイパースペクトル画像表示部115−2、新規端成分分布画像表示部115−3及び登録可否入力部115−4を備える。端成分抽出部101、照合部107、登録部109、入力端成分分布画像生成部111、新規端成分分布画像選択部113、追加付加情報入力部115−1、ハイパースペクトル画像表示部115−2、新規端成分分布画像表示部115−3及び登録可否入力部115−4は、ハードウェアによって実現することもできるが、コンピュータをこれらの部分として機能させるためのプログラムをコンピュータが読み込んで実行することによっても実現することができる。
【0045】
端成分抽出部101、スペクトルライブラリ103、端成分データベース105、照合部107、登録部109及び追加付加情報入力部115−1は、実施形態1のものと同様であるので、重複する説明は省略する。
【0046】
入力端成分分布画像生成部111は、ハイパースペクトル画像151及び入力端成分群153を基に入力端成分分布画像群159を生成する。入力端成分群153に含まれる各入力端成分は、入力端成分分布画像群159に含まれる各入力端成分分布画像に対応する。各入力端成分分布画像は、ハイパースペクトル画像151と各入力端成分を基に、MF(Matched Filter)法又はリニアアンミキシング(Linear Unmixing)法等により生成される。MF法及びリニアアンミキシング法は、各画素のスペクトルが入力端成分群の線形結合であると考え、各入力端成分に関する線形結合係数を各入力端成分のレベルとするものである。MF法によれば、各画素のスペクトルをベクトルとみなし、そのベクトルを入力端成分ベクトルに投影して投影ベクトルの大きさを比較することにより線形結合係数を求める。リニアアンミキシング法によれば、連立方程式を解くことにより線形結合係数を求める。MF法及びリニアアンミキシング法は、例えば、非特許文献4に記載されており、また、公用技術である。
【0047】
新規端成分分布画像選択部113は、入力端成分分布画像群159に含まれる入力端成分分布画像のうち新規端成分群155に含まれる新規端成分に対応する入力端成分分布画像のみを新規端成分分布画像として選択して、新規端成分分布画像群を新規端成分分布画像表示部115−3に出力する。
【0048】
ハイパースペクトル画像表示部115−2は、ハイパースペクトル画像151から赤緑青の三原色の成分を抽出し、これらの成分より構成されるカラー画像を表示する。
【0049】
新規端成分分布画像表示部115−3は、新規端成分分布画像群中の各新規端成分分布画像を表示する。
【0050】
登録可否入力部115−4は、新規端成分群155に含まれる各新規端成分を登録して良いか否かをユーザから入力する。
【0051】
登録部109は、新規端成分群155に含まれる新規端成分のうち登録可否入力部115−4が登録してよいことを入力した新規端成分のみを付加情報157と共に端成分データベース105に登録する。
【0052】
次に、ユーザがハイパースペクトル画像表示部115−2が表示するハイパースペクトル画像及び新規端成分分布画像表示部115−3が表示する新規端成分分布画像を基に、当該新規端成分を登録して良いか否かを判断する方法について図5を参照して説明する。
【0053】
まず、画像の全領域についてステップS223及びS225を繰り返す(ステップS221)。
【0054】
ステップS223では、新規端成分分布画像の現在の領域のレベルが高いか否かを判断する。そうであれば(ステップS223でYES)、ハイパースペクトル画像を基に現在の領域にどのような物体があるのかを判断することにより、物体名を取得する(ステップS225)。
【0055】
ステップS221の繰返しが終了したならば、1回以上行ったステップS225で得た物体名を総合的に判断して、可能ならば、当該新規端成分に対応する物体名を特定する(ステップS227)。
【0056】
次に、物体名を特定できたか否かを判断する(ステップS229)。物体名を特定できたならば(ステップS229でYES)、登録を許可し(ステップS231)、物体名を特定できなければ(ステップS229でNO)、登録を禁止する(ステップS233)。
【0057】
追加付加情報入力部115−1は、ユーザから特定できた物体名を入力する。
【0058】
[実施形態3]
実施形態2は、ユーザが物体名を特定できる程度にハイパースペクトル画像の分解能が高いことを前提としたものである。しかし、現在のハイパースペクトル画像の空間分解能は、撮影高度にも依存するが、5m乃至20m程度であるため、現在のハイパースペクトル画像を基に、ユーザが物体名を特定することは困難である。そこで、実施形態3では、ハイパースペクトル画像よりも空間分解能が高い高分解能画像を利用する。
【0059】
ここで、ハイパースペクトル画像と高分解能画像との関係について説明する。
【0060】
高分解能センサーもハイパースペクトルセンサーも、センサー素子自身の感度は技術的な限界から上限がほぼ決まっている。その中で、センサーに入ってくる光を確実に信号に変換するためには、素子に当たる光のエネルギーを強くする必要がある。この光のエネルギーは主に、素子に入射する光の画角と、素子が得る光の波長の広さで決まる。従って、この光のエネルギーを強くするためには、素子に当たる光の画角を広くして(分解能を荒くして)、センサー素子に当たる光の量を増やすか、センサーのスペクトル分解能を荒くして、センサー素子が得る光の波長域を広くするか、の2通りの方法が主に考えられる。高分解能センサーでは、分解能を高めるためにセンサーの画角を非常に狭くしていることから、スペクトル分解能を荒くする必要がある。一方、ハイパースペクトルセンサーでは、波長分解能を高めるためにセンサー素子が得る波長域を狭くしていることから、画角を広くする必要がある。以上のような理由から、現時点では高い分解能を持ったハイパースペクトルセンサーを作ることが難しいため、現時点では高分解能画像並みの分解能を持ったハイパースペクトル画像を得ることが出来ない。
【0061】
図6は、本発明の実施形態3による端成分データベース構築装置の構成を示すブロック図である。
【0062】
図6を参照すると、本実施形態による端成分データベース構築装置は、端成分抽出部101、スペクトルライブラリ103、端成分データベース105、照合部107、登録部109、入力端成分分布画像生成部111、新規端成分分布画像選択部113、追加付加情報入力部115−1、ハイパースペクトル画像表示部115−2、新規端成分分布画像表示部115−3、登録可否入力部115−4及び高分解能画像表示部115−5を備える。端成分抽出部101、照合部107、登録部109、入力端成分分布画像生成部111、新規端成分分布画像選択部113、追加付加情報入力部115−1、ハイパースペクトル画像表示部115−2、新規端成分分布画像表示部115−3、登録可否入力部115−4及び高分解能画像表示部115−5は、ハードウェアによって実現することもできるが、コンピュータをこれらの部分として機能させるためのプログラムをコンピュータが読み込んで実行することによっても実現することができる。
【0063】
高分解能画像表示部115−5以外の部分は、実施形態2のものと同様であるので、重複する説明は省略する。
【0064】
高分解能画像表示部115−5は、高分解能画像161を表示する。
【0065】
実施形態3においては、ハイパースペクトル画像151及び高分解能画像161は、図7に示すように、ハイパースペクトル画像用カメラ192及び高分解能画像用カメラ193により領域191を上空から撮影することにより得られたものである。但し、ハイパースペクトル画像用カメラ192及び高分解能画像用カメラ193は、同一の飛行物体に搭載されていてもよいし、別々の飛行物体に搭載されていてもよい。また、静止した物体のみが領域191に含まれているのであれば、ハイパースペクトル画像と高分解能画像を異なった日時において撮影してもよいが、例えば、走行している乗り物が領域191に含まれているのであれば、ハイパースペクトル画像と高分解能画像は同時又はほぼ同時に撮影するのが好ましい。
【0066】
次に、ユーザがハイパースペクトル画像表示部115−2が表示するハイパースペクトル画像、新規端成分分布画像表示部115−3が表示する新規端成分分布画像及び高分解能画像表示部115−5が表示する高分解能画像を基に、当該新規端成分を登録して良いか否かを判断する方法について図8を参照して説明する。
【0067】
まず、画像の全領域についてステップS243乃至S249を繰り返す(ステップS241)。
【0068】
ステップS243では、新規端成分分布画像の現在の領域のレベルが高いか否かを判断する。そうであれば(ステップS243でYES)、ハイパースペクトル画像の現在の領域の特徴を検出する(ステップS245)。次に、特徴比較により高分解能画像中の現在の領域を探す(ステップS247)。次に、高分解能画像を基に現在の領域にどのような物体があるのかを判断することにより、物体名を取得する(ステップS249)。
【0069】
ステップS241の繰返しが終了したならば、1回以上行ったステップS249で得た物体名を総合的に判断して、可能ならば、当該新規端成分に対応する物体名を特定する(ステップS251)。
【0070】
次に、物体名を特定できたか否かを判断する(ステップS253)。物体名を特定できたならば(ステップS253でYES)、登録を許可し(ステップS255)、物体名を特定できなければ(ステップS253でNO)、登録を禁止する(ステップS257)。
【0071】
追加付加情報入力部115−1は、ユーザから特定できた物体名を入力する。
【0072】
新規端成分分布画像と高分解能画像を直接対比させて、新規端成分分布画像のレベルの高い部分にどのような物体が対応するのかを知ることは困難である。一方、新規端成分分布画像とハイパースペクトル画像は、同一の範囲及び同一の解像度を有するので、画素単位で位置の対応関係をとることができる。また、ハイパースペクトル画像表示部115−2が表示するハイパースペクトル画像をもとにしたカラー画像は、視覚上は通常のカラー画像と同様なものであるため、画像の内容によりハイパースペクトル画像と高分解能画像との間で位置の対応関係をとることができる。従って、ハイパースペクトル画像を介することによって、新規端成分分布画像のレベルの高い部分にどのような物体が対応するのかを新規端成分分布画像と高分解能画像を基に知ることが可能となる。
【0073】
図9は、新規端成分分布画像とハイパースペクトル画像との間で位置の対応関係をとることができること及びハイパースペクトル画像と高分解能画像との間で位置の対応関係をとることができることを示したものである。
【0074】
符号301は、新規端成分分布画像を示し、符号301−1及び301−2は、その部分拡大図を示す。符号302−1及び302−2は、ハイパースペクトル画像を示し、符号303−1及び303−2は高分解能画像を示す。新規端成分分布画像の符号301−1で示す部分は、ハイパースペクトル画像302−1及び高分解能画像303−1に対応する。新規端成分分布画像の符号301−2で示す部分は、ハイパースペクトル画像302−2及び高分解能画像303−2に対応する。
【0075】
新規端成分分布画像の部分301−1及び301−2には、レベルの高い画素がある。位置が対応するハイパースペクトル画像302−1及び302−2では、レベルの高い画素に含まれている物体を認識することができない。しかし、位置が対応する高分解能画像303−1及び303−2を調べることにより、物体が駐車場に駐車されている自動車及び道路を走行している自動車であることが特定できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、複数の物質より成る物体の端成分を格納する端成分データベースを構築するために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態1による端成分データベース構築装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態1によるスペクトラル画像撮影方法を示す図である。
【図3】図1に示す照合部の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態2による端成分データベース構築装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態2によるユーザが新規端成分の登録の可否を判断する方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態3による端成分データベース構築装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態によるスペクトラル画像及び高分解能画像の撮影方法を示す図である。
【図8】本発明の実施形態3によるユーザが新規端成分の登録の可否を判断する方法を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態3による新規端成分分布画像、ハイパースペクトル画像及び高分解能画像を用いた物体の特定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0078】
101 端成分抽出部
103 スペクトルライブラリ
105 端成分データベース
107 照合部
109 登録部
111 入力端成分分布画像生成部
113 新規端成分分布画像選択部
115 ユーザインターフェース
115−1 追加付加情報入力部
115−2 ハイパースペクトル画像表示部
115−3 新規端成分分布画像表示部
115−4 登録可否入力部
115−5 高分解能画像表示部
151 ハイパースペクトル画像
153 入力端成分群
155 新規端成分群
157 付加情報
159 入力端成分分布画像群
161 高分解能画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物質より成る物体の端成分を格納する端成分データベースを構築するための端成分データベース構築方法において、
入力したハイパースペクトル画像から複数の入力端成分を得るステップと、
前記複数の入力端成分のうちの各入力端成分と、各物質毎のスペクトルを格納するスペクトルライブラリに格納されている各物質のスペクトルとの間の類似度を計算するステップと、
前記ハイパースペクトル画像から得られた前記複数の入力端成分のうちの各入力端成分と、前記端成分データベースに既に格納されている各登録済端成分との間の類似度を計算するステップと、
前記複数の入力端成分のうちの前記計算による全ての前記類似度が所定値以下である入力端成分を前記端成分データベースに登録するステップと、
を備えることを特徴とする端成分データベース構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載の端成分データベース構築方法において、
前記類似度は、複数の類似度計算方法により計算された類似度を加重平均して得られたものであることを特徴とする端成分データベース構築方法。
【請求項3】
請求項1に記載の端成分データベース構築方法において、
登録するべき入力端成分に対応する物体名を外部から入力するステップを更に備え、
前記登録のステップでは、入力された前記物体名を登録するべき入力端成分と対応付けて前記端成分データベースに登録することを特徴とする端成分データベース構築方法。
【請求項4】
請求項1に記載の端成分データベース構築方法において、
前記複数の入力成分のうちの前記計算による全ての前記類似度が所定値以下である入力端成分を前記データベースに登録するべきであるかの可否を外部から入力するステップを更に備え、
前記登録のステップでは、前記複数の入力端成分のうちの前記計算による全ての前記類似度が所定値以下であり、且つ、登録が許可された入力端成分を前記端成分データベースに登録することを特徴とする端成分データベース構築方法。
【請求項5】
請求項4に記載の端成分データベース構築方法において、
前記ハイパースペクトル画像と前記複数の入力端成分を基に、その各々が前記複数の入力端成分の各々に対応する複数の入力端成分分布画像を生成するステップと、
前記ハイパースペクトル画像と各入力端成分毎の前記入力端成分分布画像を表示するステップと、
を更に備えることを特徴とする端成分データベース構築方法。
【請求項6】
請求項5に記載の端成分データベース構築方法において、
前記ハイパースペクトル画像と被写体領域が重なり、前記ハイパースペクトル画像よりも分解能が高い高分解能画像を表示するステップを更に備えることを特徴とする端成分データベース構築方法。
【請求項7】
請求項6に記載の端成分データベース構築方法において、
同一の被写体を同時に撮影することにより、同一の被写体の同一時刻における前記ハイパースペクトル画像と前記高分解能画像を得るステップを更に備えることを特徴とする端成分データベース構築方法。
【請求項8】
複数の物質より成る物体の端成分を格納する端成分データベースを構築するための端成分データベース構築装置において、
入力したハイパースペクトル画像から複数の入力端成分を得る手段と、
前記複数の入力端成分のうちの各入力端成分と、各物質毎のスペクトルを格納するスペクトルライブラリに格納されている各物質のスペクトルとの間の類似度を計算する手段と、
前記ハイパースペクトル画像から得られた前記複数の入力端成分のうちの各入力端成分と、前記端成分データベースに既に格納されている各登録済端成分との間の類似度を計算する手段と、
前記複数の入力端成分のうちの前記計算による全ての前記類似度が所定値以下である入力端成分を前記端成分データベースに登録する手段と、
を備えることを特徴とする端成分データベース構築装置。
【請求項9】
請求項8に記載の端成分データベース構築装置において、
前記類似度は、複数の類似度計算方法により計算された類似度を加重平均して得られたものであることを特徴とする端成分データベース構築装置。
【請求項10】
請求項8に記載の端成分データベース構築装置において、
登録するべき入力端成分に対応する物体名を外部から入力する手段を更に備え、
前記登録の手段では、入力された前記物体名を登録するべき入力端成分と対応付けて前記端成分データベースに登録することを特徴とする端成分データベース構築装置。
【請求項11】
請求項8に記載の端成分データベース構築装置において、
前記複数の入力成分のうちの前記計算による全ての前記類似度が所定値以下である入力端成分を前記データベースに登録するべきであるかの可否を外部から入力する手段を更に備え、
前記登録の手段では、前記複数の入力端成分のうちの前記計算による全ての前記類似度が所定値以下であり、且つ、登録が許可された入力端成分を前記端成分データベースに登録することを特徴とする端成分データベース構築装置。
【請求項12】
請求項11に記載の端成分データベース構築装置において、
前記ハイパースペクトル画像と前記複数の入力端成分を基に、その各々が前記複数の入力端成分の各々に対応する複数の入力端成分分布画像を生成する手段と、
前記ハイパースペクトル画像と各入力端成分毎の前記入力端成分分布画像を表示する手段と、
を更に備えることを特徴とする端成分データベース構築装置。
【請求項13】
請求項12に記載の端成分データベース構築装置において、
前記ハイパースペクトル画像と被写体領域が重なり、前記ハイパースペクトル画像よりも分解能が高い高分解能画像を表示する手段を更に備えることを特徴とする端成分データベース構築装置。
【請求項14】
請求項13に記載の端成分データベース構築装置において、
同一の被写体を同時に撮影することにより、同一の被写体の同一時刻における前記ハイパースペクトル画像と前記高分解能画像を得る手段を更に備えることを特徴とする端成分データベース構築装置。
【請求項15】
複数の物質より成る物体の端成分を格納する端成分データベースを構築するための端成分データベース構築方法において、
入力したハイパースペクトル画像から複数の入力端成分を得るステップと、
前記複数の入力端成分のうちの各入力端成分と、各物質毎のスペクトルを格納するスペクトルライブラリに格納されている各物質のスペクトルとの間の類似度を計算するステップと、
前記ハイパースペクトル画像から得られた前記複数の入力端成分のうちの各入力端成分と、前記端成分データベースに既に格納されている各登録済端成分との間の類似度を計算するステップと、
前記複数の入力端成分のうちの前記計算による全ての前記類似度が所定値以下である入力端成分を前記端成分データベースに登録するステップと、
を備えることを特徴とする端成分データベース構築方法をコンピュータに行わせるための端成分データベース構築プログラム。
【請求項16】
請求項15に記載の端成分データベース構築プログラムにおいて、
前記類似度は、複数の類似度計算方法により計算された類似度を加重平均して得られたものであることを特徴とする端成分データベース構築プログラム。
【請求項17】
請求項15に記載の端成分データベース構築プログラムにおいて、
前記端成分データベース構築方法は、
登録するべき入力端成分に対応する物体名を外部から入力するステップを更に備え、
前記登録のステップでは、入力された前記物体名を登録するべき入力端成分と対応付けて前記端成分データベースに登録することを特徴とする端成分データベース構築プログラム。
【請求項18】
請求項15に記載の端成分データベース構築プログラムにおいて、
前記端成分データベース構築方法は、
前記複数の入力成分のうちの前記計算による全ての前記類似度が所定値以下である入力端成分を前記データベースに登録するべきであるかの可否を外部から入力するステップを更に備え、
前記登録のステップでは、前記複数の入力端成分のうちの前記計算による全ての前記類似度が所定値以下であり、且つ、登録が許可された入力端成分を前記端成分データベースに登録することを特徴とする端成分データベース構築プログラム。
【請求項19】
請求項18に記載の端成分データベース構築プログラムにおいて、
前記端成分データベース構築方法は、
前記ハイパースペクトル画像と前記複数の入力端成分を基に、その各々が前記複数の入力端成分の各々に対応する複数の入力端成分分布画像を生成するステップと、
前記ハイパースペクトル画像と各入力端成分毎の前記入力端成分分布画像を表示するステップと、
を更に備えることを特徴とする端成分データベース構築プログラム。
【請求項20】
請求項19に記載の端成分データベース構築プログラムにおいて、
前記端成分データベース構築方法は、
前記ハイパースペクトル画像と被写体領域が重なり、前記ハイパースペクトル画像よりも分解能が高い高分解能画像を表示するステップを更に備えることを特徴とする端成分データベース構築プログラム。
【請求項21】
請求項20に記載の端成分データベース構築プログラムにおいて、
前記端成分データベース構築方法は、
同一の被写体を同時に撮影することにより、同一の被写体の同一時刻における前記ハイパースペクトル画像と前記高分解能画像を得るステップを更に備えることを特徴とする端成分データベース構築プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−12036(P2006−12036A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191437(P2004−191437)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】