説明

端末の電源を入れる方法、メモリ及びその端末

手動操作される電源入キーを有し且つ電源オン時にソフトウェアプログラムを自動的に実行する携帯端末の電源を入れる方法において、a)最初に、上記キーを、上記端末の電源がオフにされるアイドル位置から、上記端末の電源がオンにされるべきアクティブ位置へと移動させるステップ(32)と、b)ステップa)の始めから所定の第1の時間間隔(Δ)が経過する前に、上記端末上でソフトウェアプログラムを実行し始めるステップ(36)であって、上記第1の時間間隔は、キーが誤って移動されなかったことをチェックするために十分な長さである、ステップ(36)と、c)上記第1の時間間隔が経過したときに、上記キーが依然として上記アクティブ位置にある場合には、ソフトウェアプログラムを実行し続け(42)、そうでなければ、上記端末の電源を切る(40)ステップと、を含む方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末の電源を入れる方法、メモリ及びその端末に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯端末は、端末をオンに切り換えるための手動操作される電源入キーを有する。
【0003】
公知の方法の始めにおいて、キーは、端末の電源がオフされるアイドル位置から、端末の電源がオンされるべきアクティブ位置へと移動させられる。例えば、キーは押し下げられる。
【0004】
所定の時間間隔の終わりにおいて、キーが依然としてアクティブ位置にある場合、端末はソフトウェアプログラムを自動的に実行し始める。
【0005】
不注意によるキーとの接触によって携帯端末の電源入が確実に引き起こされるのを回避するため、所定の時間間隔は概して1秒よりも長い。例えば、不注意によるキーとの接触は、多くの場合、携帯端末を持ち運んでいるときに起こる。
【0006】
例えば、キーが押し下げられるときに起こる跳ね返り(バウンス)を終わらせることができるようにするために、キーが押し下げられた後に取られるべき動作を遅延させることが米国特許第US3660826号公報(特許文献1)から知られている。
【0007】
一方では、そのような望ましくない電源入は、エネルギを消費するとともに携帯端末のバッテリ自律性を低下させるため、そのような電源入を可能な限り制限することが重要である。
【0008】
他方では、所定の時間間隔が経過するのを待つことは、端末の電源を入れる方法をユーザにとって非常に長いものにする。確かに、ユーザは、所定の時間間隔を待たなければならず、その後、ソフトウェアプログラムを初期化するために必要な時間だけ待たなければならない。ユーザは、ソフトウェアプログラムの初期化が終了したときにのみ自分の携帯端末を完全に使用することができる。
【特許文献1】米国特許第US3660826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、携帯端末の電源を入れる方法であって、公知の方法よりも高速な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的及び他の目的のため、本発明によれば、
手動操作される電源入キーを有し且つ電源オン時にソフトウェアプログラムを自動的に実行する携帯端末の電源を入れる方法において、
a)最初に、上記キーを、上記端末の電源がオフにされるアイドル位置から、上記端末の電源がオンにされるべきアクティブ位置へと移動させるステップと、
b)ステップa)の始めから所定の第1の時間間隔が経過する前に、上記端末上でソフトウェアプログラムを実行し始めるステップであって、上記第1の時間間隔は、キーが誤って移動されなかったことをチェックするために十分な長さである、ステップと、
c)上記第1の時間間隔が経過したときに、上記キーが依然として上記アクティブ位置にある場合には、ソフトウェアプログラムを実行し続け、そうでなければ、上記端末の電源を切るステップと、
を含む方法が提供される。
【0011】
上記方法において、ソフトウェアプログラムの実行は、所定の第1の時間間隔が終了する前に開始する。従って、ソフトウェアプログラムの初期化は、公知の方法における場合よりも早く開始する。その結果、ユーザは、公知の方法を使用する場合よりも早く自分の端末を完全に使用することができる。また、第1の時間間隔の最後にキーが最早そのアクティブ位置にない場合には、端末の電源が自動的にオフされるため、望ましくない電源入が依然として回避される。
【0012】
携帯端末の電源を入れる方法の実施の形態は、以下の特徴のうちの一つ又は複数を備えているものとするとよい。
【0013】
−上記ステップb)は、第2の時間間隔が経過した後にのみトリガされ、上記第2の時間間隔は、上記第1の時間間隔よりも短く、上記キーが移動されるときに起こる跳ね返りを終わらせるために用いられ、
−上記第2の時間間隔が経過したときに始まり上記第1の時間間隔が経過したときに終わる第3の時間間隔の間、上記キーが上記第3の時間間隔に亘って上記アクティブ位置を保持し続けることをチェックするステップを上記方法が含み、
−上記第1の時間間隔は、500ms(ミリ秒)よりも長く3s(秒)よりも短く、
−上記第2の時間間隔は、5ms(ミリ秒)よりも長く100ms(ミリ秒)よりも短い。
【0014】
上記方法の実施の形態は、以下の利点を与える。
−跳ね返りを終わらせるために第2の時間間隔を使用すると、不注意による端末の電源入の数が制限され、そのため、端末のバッテリ自律性が向上する。
−第3の時間間隔に亘ってキーがアクティブ位置を連続的に保持することをチェックすると、一連の短い移動がキーに適用されるときの端末の電源入が回避される。
【0015】
また、本発明は、上記方法を実施するためのメモリ、及び、上記方法を実施するように設計された端末に関する。
【0016】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下の説明、図面、請求項から明確に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、携帯端末2を示す。例えば、携帯端末2は、携帯電話である。図1には、簡略化のため、本発明を理解するために必要な内容だけが示されている。
【0018】
端末2は、端末2の電源がオンにされているときに情報をユーザに対して与えるための液晶ディスプレイ(LCD)4と、端末2の電源がオンにされているときに光るLED(発光ダイオード)インジケータ6と、を有する。
【0019】
また、端末2は、端末2の電源を入れるためにユーザによる手動操作が可能なキー10も有する。例えば、端末2の電源を入れるためには、ユーザによってキー10が押し下げられなければならない。
【0020】
キー10は、キー10がアイドル位置のときに開き、且つ、キー10がアクティブ位置のとき、即ち、押し下げられるときに閉じられる電気スイッチ12に対して機械的に連結されている。
【0021】
スイッチ12は、電子計算器14に対して接続されている。スイッチ12が閉じられると、電流がスイッチ12を完全に通過して端末2の電源をオンにすることができる。電流は、例えばバッテリ15から引き出される。
【0022】
計算器14は、端末2の電源を入れるために、図2の方法を実行するように構成されている。
【0023】
端末2は、電源入キー・デバウンス(debounce)装置16を有する。装置16は、端末2の完全電源供給がトリガされる前に時間間隔Δの間に亘ってキー10が連続的に押し下げられていることをチェックする。装置16は、例えばキー10が押し下げられていない場合でも給電される唯一の構成要素である。
【0024】
計算器14は、端末2の電源がオンにされているときに、例えばオペレーレィングシステム18のようなソフトウェアプログラムを自動的に実行するように構成されている。オペレーティングシステム18は、計算器14に連結されたメモリ20内に記録される。
【0025】
オペレーティングシステム18は、掛かってきた電話を受信するために又は他の電話に掛けるために必要とされる機能等の端末2のハードウェア機能の総てを管理するように設計されている。
【0026】
計算器14は、メモリ20のようなメモリ内に記録された命令を実行することができるプログラマブル計算器を伴って実現される。
【0027】
また、メモリ20は、例えば装置16にも連結されている。
【0028】
また、メモリ20は、所定の時間間隔Δ及び時間間隔Δも記憶している。時間間隔Δの値は、キー10が誤って押し下げられていなかったことをチェックするために十分に長く選択される。例えば、時間間隔Δは、500ms(ミリ秒)よりも長く3s(秒)よりも短い。ここでは、時間間隔Δは、1s(秒)に等しい。
【0029】
時間間隔Δは、キー10が押し下げられるときに起こるスイッチ12の跳ね返りを終わらせるために十分に長く選択される。例えば、時間間隔Δは、5ms(ミリ秒)よりも長く100ms(ミリ秒)よりも短い。ここでは、時間間隔Δは、14ms(ミリ秒)に等しい。
【0030】
ここで、図2を参照して、端末2の動作について説明する。
【0031】
最初に、ステップ30では、端末2の電源がオフにされており、装置16だけが電源オンにされている。
【0032】
その後、ステップ32において、キー10が押し下げられる。スイッチ12が閉じ、装置16がタイマを始動させる。キー10が押し下げられると、これにより、キー10がそのアクティブ位置となる。
【0033】
ステップ33において、装置16は、時間間隔Δに亘ってスイッチ12が連続的に閉じられたままであるのか又は開かれたままであるのかをチェックする。時間間隔Δの終了前にスイッチ12が閉状態から開状態へ切り換わる場合又はその逆の場合には、装置16は、タイマをリセットし、新たな時間間隔Δが始めからカウントされる。
【0034】
ステップ34において、時間間隔Δが経過したとき、スイッチ12が開いている場合には、これはキー10が誤って押し下げられたことを意味しており、そのため、方法がステップ30へ戻る。
【0035】
そうではなく、時間間隔Δの最後にスイッチ12が閉じられている場合には、端末2の電源を入れることが開始される。
【0036】
その後、ステップ36において、計算器14は、オペレーティングシステム18のようなソフトウェアプログラムを実行し始める。ステップ36の間、端末2の電源がオンにされていることについての情報は、何等ユーザに対しては与えられない。例えば、ディスプレイ4及びインジケータ6は、オフに切り換えられている。
【0037】
ステップ36と並行して、ステップ38では、時間間隔Δの最後から時間間隔Δの最後までキー10が連続的に押し下げられていることを計算器14がチェックする。例えば、ステップ36の始めに新たなタイマが始動され、時間間隔Δの最後からの経過時間が測定される。この新たなタイマは、時間間隔Δが終了する時期を決定するために使用される。
【0038】
キー10が連続的に押し下げられていない場合には、計算器14が直ちにステップ40へ進み、このステップの間に、計算器14は、ソフトウェアプログラムの実行を停止して端末2の電源をオフにする。
【0039】
ステップ40の後、方法は、ステップ30に戻る。
【0040】
キー10が時間間隔Δの最後から時間間隔Δの最後まで連続的に押し下げられていた場合には、時間間隔Δが経過すると、ステップ42において、計算器14は、ステップ36の間に開始されたソフトウェアプログラムを実行し続け、ステップ44において、端末2の電源がオンにされていることについての情報をユーザに対して与える。例えば、ステップ44において、ディスプレイ4がオンに切り換えられるとともに、インジケータ6が光る。
【0041】
時間間隔Δの間、端末2は給電されない。その結果、キー10の非常に短い押し下げ又は跳ね返りは、端末2の電源入を引き起こさない。
【0042】
時間間隔Δの最後に、端末2の電源がオンにされ、ソフトウェアプログラムが実行を開始する。従って、時間間隔Δの最後には、ソフトウェアプログラムが既に初期化されており、ユーザは、端末2を完全に使用し始める前に待つ必要がない。
【0043】
多くの更なる実施の形態が想定し得る。例えば、他の実施の形態において、ステップ38は、キー10が依然として押し下げられていることを時間間隔Δの最後にチェックすることのみからなる。この実施の形態では、時間間隔Δの最後から時間間隔Δの最後までキー10が連続的に押し下げられていることがチェックされない。
【0044】
同様に、他の実施の形態において、時間間隔Δは、最初にスイッチ12が閉じられてしまってリセットされ得ないときからのみカウントされる。この実施の形態において、時間間隔Δは、スイッチの跳ね返りを終わらせることができるようにするために、十分に長く選択される。
【0045】
装置16は、時間間隔Δの最後から時間間隔Δの最後までキー10が連続的に押し下げられていない場合に、時間間隔Δ、Δをカウントしてプロセッサ14をオフに切り換えるように構成されていることが好ましい。
【0046】
単一の装置を形成するために、装置16とスイッチ12とを組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】携帯端末の構造の概略図である。
【図2】図1の携帯端末の電源を入れる方法のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動操作される電源入キーを有し且つ電源オン時にソフトウェアプログラムを自動的に実行する携帯端末の電源を入れる方法において、
a)最初に、前記キーを、前記端末の電源がオフにされるアイドル位置から、前記端末の電源がオンにされるべきアクティブ位置へと移動させるステップと、
b)ステップa)の始めから所定の第1の時間間隔が経過する前に、前記端末上でソフトウェアプログラムを実行し始めるステップであって、前記第1の時間間隔は、キーが誤って移動されなかったことをチェックするために十分な長さである、ステップと、
c)前記第1の時間間隔が経過したときに、前記キーが依然として前記アクティブ位置にある場合には、ソフトウェアプログラムを実行し続け、そうでなければ、前記端末の電源を切るステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップb)は、第2の時間間隔が経過した後にのみトリガされ、前記第2の時間間隔は、前記第1の時間間隔よりも短く、前記キーが移動されるときに起こる跳ね返りを終わらせるために用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の時間間隔が経過したときに始まり前記第1の時間間隔が経過したときに終わる第3の時間間隔の間、前記キーが前記第3の時間間隔に亘って前記アクティブ位置を保持し続けることをチェックするステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の時間間隔は、500ms(ミリ秒)よりも長く3s(秒)よりも短いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の時間間隔は、5ms(ミリ秒)よりも長く100ms(ミリ秒)よりも短いことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
コード命令が電子計算器によって実行されるときに請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法を実行するための前記コード命令を有することを特徴とするメモリ。
【請求項7】
電源オン時にソフトウェアプログラムを自動的に実行する端末であって、
手動操作される電源入キーと、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された計算器と、
を備えることを特徴とする端末。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−541317(P2008−541317A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513002(P2008−513002)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051659
【国際公開番号】WO2006/126170
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(306043703)エヌエックスピー ビー ヴィ (125)
【氏名又は名称原語表記】NXP B.V.
【Fターム(参考)】