説明

端面封止中空構造板の製造方法

【課題】熱可塑性樹脂製の中空構造板の端面を封止して水や塵、埃の浸入を防ぎ、端面をフラットな端面とした端面封止中空構造板を容易に製造する。
【解決手段】中空構造板21の端面21cに、樹脂を軟化可能な温度であるヒートバー22の平面を当てて加熱することにより(a,b)、端面21cの近傍を変形可能な強度に軟化させ(b)、前記端面に対して圧力を掛けて圧縮変形させて、端面に露出するライナ21a間の空間を封止させ(c)、定規23で表面を整えつつ冷却して端面を平らにし(d)、変形により生じる盛上部を切刃で切除して(e)、端面封止中空構造板を得る(f)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラスチック段ボール板などの熱可塑性樹脂製中空構造板の端面を封止して、中空部分への水や塵、埃等の浸入や残留を防ぐ端面封止中空構造板に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンなどの樹脂で製造されたプラスチック段ボールは、紙製の段ボールに比べて耐水性があり、耐久性も高いため、輸送用コンテナのような物流資材として広く用いられている。このプラスチック段ボールは、互いに平行な板状部分である複数のライナと、そのライナ同士を垂直に連結し、互いに平行に複数並んだリブとを熱可塑性樹脂で製造した、ライナ間に空洞を有する中空構造板である。この平行に並んだリブにより、ライナに対して垂直な力に対しても、リブと平行な端面にかかる力に対しても、プラスチック段ボールは高い強度を発揮する。
【0003】
このような強度と再利用性を兼ね備えたプラスチック段ボールを用いた箱は、再利用や洗浄が容易であるため、紙製の段ボールに比べてリユースしやすく、包装用途が拡大している。現在包装する対象は、工業製品のみならず、医薬品や生鮮食料品にも活用する例がある。しかし、プラスチック段ボールは、構造上、リブ間の空間に一旦水が浸入すると、黴が繁殖したりする可能性があるため、収納物が食品、医薬品等である場合には、衛生的に好ましくないという欠点を有している。また、水だけではなく、塵や埃も一旦入り込むと容易には除去できず、汚れが付着しやすかった。このため、リブ間に水や塵、埃等が浸入しないように、端面を封止する方法が検討されている。
【0004】
その方法としては、例えば、特許文献1に記載の方法が挙げられる。この方法は、図8に記載の手順による。まず、図8(a)に記載のように、ライナ1aとリブ1bからなるプラスチック段ボール板1の一方のライナの端部付近に、プラスチック段ボール板1の厚みt以上の幅を有する平板な底部2aを有するヒートバー2を押し当てる。ヒートバー2はプラスチック段ボール板1の素材を軟化できる温度であり、押し当てられたプラスチック段ボール板1は、図8(b)のように、接触した部分1cが溶けて平板状になるまで圧縮される。圧縮し終わったらヒートバー2を離し、この平板状の部分1cを図8(c)から図8(d)のように折り曲げて、圧縮により生じた新たな端面1dを塞ぐ。さらに、図8(e)のように、ライナ面からはみ出した部分1eを切刃4により切除する。以上の手順により、圧縮された平板状の部分1cによって端部を塞いだプラスチック段ボール板を得ることができる。
【0005】
また別の方法として、特許文献2に記載の方法が挙げられる。この方法は、図9に記載の手順による。まず、図9(a)に記載のように、プラスチック段ボール板1の一方のライナの端部付近に、先端が直角に尖っており、先端の断面形状が直角二等辺三角形であるV字ヒートバー5を押し当て、樹脂を軟化させて圧縮する。先端はプラスチック段ボール板1を切断するのではなく、図9(b)のように、分けられた三角柱状の部分1fが、プラスチック段ボール板1の本体と薄く繋がっている。この繋がった部分1gから三角柱状の部分1fを折り曲げて、V字ヒートバー5と接していた面同士をくっつけることで、図9(c)のような状態から図9(d)のような状態にする。これにさらにV字ヒートバー5を押し当てて、図9(e)のようにして、さらに三角柱部分1hを折り曲げ、くっつけて、図9(f)のような状態にする。以上の手順により、二度の折り曲げによって生じた三角柱状の部分によって、端面を塞いだプラスチック段ボール板を得ることができる。この方法は、面の接合を二度行うため、特許文献1に記載の方法よりも、内部の空洞に通じるピンホールが生じにくいという利点がある。
【0006】
さらに別の方法として、特許文献3に記載の方法が挙げられる。この方法は、図10に記載の手順による。すなわち、図10(a)に記載のように、プラスチック段ボール板1の端面側から、プラスチック段ボール板の厚みよりやや厚みが小さい楔形ヒートバー6を押し当てる。これにより、図10(b)のように端面が押し込まれるとともに軟化する。この軟化した部分1iを、図10(c)のように冷却バー7で上下から挟んで、図10(d)(e)のように押しつぶして、この潰し綴じた部分1jにより端面を塞いだプラスチック段ボール板を得ることができる。この方法は端面を丸ごと潰して押さえつけるため、端面を塞ぐ樹脂の量が多く、ピンホールが生じにくい。
【0007】
一方、熱可塑性樹脂製の中空構造板としてはプラスチック段ボール板の他にも、複数のキャップ状の突起26bを有するキャップシート26cの一方の面にフラットシート26aを貼り合わせた図3(a)及び(b)に記載のようなプラスチック気泡ボードがある。このような気泡ボードでは、突起26bと突起26bとの間に入った水や塵、埃は比較的除去しやすいが、中空部分として、突起26bが端面に露出して半ばで切られたことで生じるくぼみ26dには水や塵、埃が残存しやすかった。
【0008】
また、それとは逆に、キャップシート26cの突起26b上にフラットシート26aを貼り合わせた図3(c)及び(d)に記載のようなプラスチック気泡ボード26’が挙げられる。このような気泡ボードでは、フラットシート26cに挟まれたボード全体が中空部分となっており、突起26b同士の隙間は全て繋がっており、端面から水や塵、埃が浸入すると容易に奥まで入り込んでしまい、容易に汚れが除去できなくなってしまうことがあった。
【0009】
さらに、キャップシート26cの両面にフラットシート26aを貼り合わせた図4(a)及び(b)に記載のようなプラスチック気泡ボード26”でも、突起26b同士の隙間は同様に繋がっており、同様の問題が生じた。従って、これらの気泡ボードでも、衛生上必要があるときは、端面を封止して、端面にくぼみを残さないようにする処理を行う。
【0010】
【特許文献1】特開2004−82428号公報
【特許文献2】特開2000−177023号公報
【特許文献3】特開2003−312643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、端面を一回折り曲げただけで密封しているので、ライナ面からはみ出した部分を切除する際、ピンホールが生じやすかった。このため、水だけではなく、塵や埃も一旦入り込むと容易には除去できず、かえって汚れが付着しやすく、除去しにくくなってしまった。
【0012】
また、特許文献2に記載の方法では、二度の折り曲げにより密封性は高いものとなるが、V字ヒートバー5が下方のライナ1aを融かし切ってしまうと折り曲げることができないので、V字ヒートバー5の押し込む深度を正確に制御する必要があり、高い注意力と精度を必要とするため、作業効率が悪かった。
【0013】
さらに、特許文献3に記載の方法では、高い密封性を実現できるものの、端部が面ではなく斜めに尖ってしまい、余分な箇所を削り落としたとしても、フラットな端面を得ることが難しかった。このため、得られるプラスチック段ボール板を用いて箱を製造するには不向きであった。
【0014】
一方、プラスチック気泡ボードは一般にプラスチック段ボール板よりも薄いものが多く、上記のいずれの封止方法も適用することが難しかった。
【0015】
そこでこの発明は、プラスチック段ボールや気泡ボードなどの、中空部分を有する熱可塑性樹脂製の中空構造板の端面を封止するにあたって、高い密閉性を実現しつつ、端面をフラットな面とし、かつ、高い作業精度を必要とせずに、端面封止中空構造板を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、中空構造板の端面に、樹脂を軟化可能な温度であるヒートバーの平面を当てて加熱することにより、前記端面の近傍を変形可能な強度に軟化させ、前記端面に対して圧力を作用させて圧縮変形させることで、端面に露出する中空部分を封止させ、変形により生じる盛上部を切刃で切除することにより、上記の課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0017】
この発明にかかる製造方法により、平面状のヒートバーにより端部全体を軟化させて圧縮変形させることで、端部全体の軟化した樹脂を押し込むので、閉塞に関わる樹脂量が従来の製造方法よりも多量であり、端部に露出した中空部分を十分に塞ぐことができる。また、端部に圧力をかけるため、フラットな端面とすることができ、箱の製造に適した中空構造板とすることができる。さらに、ヒートバーに向かって端部を押し当てて軟化させるので、軟化、圧縮する位置や幅の制御にあたっては高い精度を必要としないため、容易に製造することができる。
【0018】
また、端面の封止により中空部分を密封したものは、封止した端面の樹脂が厚いのでピンホールが生じにくく、水や塵、埃が浸入、残存しにくいので、衛生的な端部封止中空構造板となる。また、いずれの中空構造板でも、端面にくぼみが残らないので、表面も衛生的なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明について詳細に説明する。この発明は、熱可塑性樹脂製であり、内部に中空部分を有し、端面にその中空部分が露出した中空構造板の端面を封止した、端面封止中空構造板の製造方法である。まず、上記中空構造板として、図1(a)に記載のような、ライナ21a間にリブ21bを設けたプラスチック段ボール板21を例に説明する。
【0020】
図1(a)に記載の実施形態では、プラスチック段ボール板21が長方形となるようにカットしたものであり、その各辺に対応する端面のそれぞれについて下記の封止工程を実行する。
【0021】
なお、この端面21cとは、ライナ21a及びリブ21bの切断面が露出している側の切断面だけではなく、平行に配されたリブ21bに沿った側、すなわち、図1(a)における手前側と奥側の端部にある、ライナ21aの切断面により形成される仮想的な平面も含む。リブ21bの切断面が露出している側の端面は、封止することで、リブ21b間に水や塵、埃(以下、まとめて「水等」と略記する。)が浸入することを防ぐことができる。また、リブ21bに沿った側を封止するとライナ21aの切断面が露出するのを防ぎ、フラットな平面を得ることができ、プラスチックコンテナに用いる際に枠材との間に水等が溜まりにくくなる。このため、全ての端面について行うとよい。
【0022】
この発明にかかる製造方法では、まず、図1(a)の実施形態のように、プラスチック段ボール板21の、封止すべき端面21cにヒートバー22の面を当てる。このヒートバー22は、プラスチック段ボール板21を十分に加熱可能である、熱伝導性のよい物体であり、プラスチック段ボール板21を構成する樹脂を軟化可能な温度である必要がある。このヒートバー22と接触させ、端面21cを加熱させることで、端面21cの近傍の樹脂を変形可能な強度にまで軟化させる。
【0023】
上記のように軟化させることで変形可能な強度とする範囲は、端面21cからの幅Lが、プラスチック段ボール板の厚さtよりも大きいことが好ましい。このように(t+a)に亘って軟化させた状況を図1(b)に示す。この軟化した部分の樹脂を圧縮して、端面21cのライナ21a間の空間を閉塞させるので、厚さtより大きい幅に亘って加熱しないと、端面全体を十分に閉塞できなくなるおそれがある。一方で、加熱しすぎて軟化する幅が広すぎると、最終的に得られる端面封止プラスチック段ボール板の面積が小さくなってしまい、生産効率が低下してしまう。このため、軟化させる幅はt+(3mm)以上、t+(9mm)以下であると好ましい。
【0024】
上記のように端面から所定の幅Lを軟化させたら、ヒートバー22を端部に向けて押し込み、圧縮変形させて、変形部21dによりライナ21a間の空間を軟化した樹脂に押し込むことで封止するとともに、新たな端面21eを形成させる。この状況を図1(c)に示す。ただし、ヒートバー22により変形させて端面21eを形成させて、ヒートバー22を離したとしても、新たに生じた端面21eは高温で軟化したままである。このため、端面21eからヒートバー22を離しても、整えた端面21eの平らな形状を保つことができず、そのまま空冷して固化する温度にまで冷えるまでに凹凸が生じやすい。
【0025】
そこで次に、プラスチック段ボール板21からヒートバー22を離し、固まりつつある端面21eに、テーブル25に対して垂直となった定規23を押し当て、樹脂をライナ21a間にさらに押し込んで、密閉性をさらに向上させるとともに、表面が平らな状態で冷却することで平端面21fを形成して固定する。その状況を図1(d)に示す。この定規23は、少なくとも樹脂が固まる温度以下で、プラスチック段ボール板21からの熱を受け取ることができ、フラットな平面を有するものである。この定規23と接触して冷却された端面21eが固まりきる前に、その端面21eをよりフラットな平端面21fに整える。
【0026】
なお、図1の実施形態では、この平端面21fをライナ21aに対して垂直なものとするため、ヒートバー22及び定規23をライナ21aに対して垂直に当てている。前記の定規23を当てる所定の角度は、製造する端面封止プラスチック段ボール板の用途で必要とする角度の端面21eに合わせるとよい。ただし、軟化した樹脂を押し込んで圧縮するため、変形部21dは上下方向に盛り上がることとなる。このため、テーブル25には図1(c)及び(d)のように段差を設けて、盛り上がってもプラスチック段ボール板を押し上げることがないようにすると好ましい。
【0027】
上記の変形部21dが冷却されて固化した後、変形部21dの上下に生じた、プラスチック段ボール板21の厚みtよりも分厚くなった盛上部21gを、切刃24により切除する。この状況を図1(e)に示す。この際、手持ちカッターの切刃24が手振れしたとしても、端部には内部まで樹脂で埋まっているため、ピンホールが生じにくい。また、切除により生じる切除面21hがライナ21aの表面に揃えてあり、平らであるように切除を行うと、最終的に得られる端面封止プラスチック段ボール板の見た目を美しく仕上げることができる。
【0028】
上記の工程を、プラスチック段ボール板21の全ての端面に対して行うことで、全ての端部がフラットな端面21eを有し、内部のライナ間の空間に水等が浸入しうるピンホールの発生を抑え、かつ、端面に水等が溜まる凹み部を無くした、端面封止プラスチック段ボール板を得ることができる。その状態の端面封止プラスチック段ボール板の外観を図1(f)に示す。
【0029】
なお、ヒートバー22で樹脂を押し込まずに加熱のみを行い、軟化した端面21cに対して定規23を押し当てて端面の樹脂を圧縮変形させ、端面を封止するとともに新たな端面として平端面21fを形成させてもよい。ただし、冷却しつつ圧縮変形させるため、端面を確実に封止する前に樹脂が固まらないように注意する必要がある。
【0030】
また、逆に定規23を用いず、ヒートバー22で加熱しつつ樹脂を押し込んで圧縮変形させて端面21eを形成させ、そのままヒートバー22とともに冷却させても、端面の封止は可能である。ただし、端面形成後に冷却されてその端面が固定されるまでに時間がかかり、その間に形成された端面が変形するおそれがあるので、定規23を併用した場合に比べて、端面を平らにするのが難しくなる。
【0031】
この発明で端面を封止するプラスチック段ボール板21の形状は、図1に記載のような、リブ21bがライナ21aに対して垂直に配されたものに限定されず、ライナ21aに対して斜めに配されたものでもよいし、ライナ21aと接合した別個の波板状の部品であってもよい。
【0032】
さらに、上記の図1(c)に示す、定規23を所定の角度で当てて端面21eを生じさせる工程の代わりに、図2(a)又は(b)のように、ライナ21aに対して斜めとなるように定規23を当てて、端面がライナ21aに対して斜めになるように仕上げてもよい。
【0033】
また、図1の実施形態で用いたプラスチック段ボール板21の端面21cは、ライナ21aに対して垂直に切断されているが、ライナ21aに対して端面21cが斜めとなる切断面を有するプラスチック段ボール板に対しても、この発明は実施可能である。
【0034】
また、この発明で用いる中空構造板としては、上記のプラスチック段ボール板以外に、図3(a)乃至(d)、及び図4(a),(b)に示すような、プラスチック気泡ボード26,26’、26”が挙げられる。まず、図3(a)に断面を、図3(b)に斜視図を示すプラスチック気泡ボード26は、複数のキャップ状の突起26bを有するキャップシート26cのベースとなる一方の面に、フラットシート26aを貼り合わせたものである。このキャップシート26cの突起26bは密ではなく、ベースとなる方向から押し込まれた形に成形されており、この突起26bの部分が中空部分となる。その製造方法は、例えば、溶融押し出しした一枚のシートを、ベースとなる側の面から複数の円柱状突起により押し込んで形成させてキャップシート26cを形成し、そのベースとなる側の面に平面状のフラットシート26aを熱溶着させる方法や、同じ形状のキャップシート26cを射出成形により形成させて同様にフラットシート26aを熱溶着させる方法などが挙げられる。突起26b同士の間は一面が開放されているため、水等が浸入しても、水は蒸発しやすく、塵や埃による汚れも取れやすいが、突起26bの内部が端面に露出したくぼみ26dには、特に端面が他の部品と接していたりすると水等が付着、残存して汚れやすくなる。
【0035】
また、図3(c)に断面を、図3(d)に斜視図を示すプラスチック気泡ボード26’は、図3(a)(b)に記載のプラスチック気泡ボード26とは逆に、キャップシート26cの突起26bの先端側の一方の面にフラットシート26aを貼り合わせたものである。これは、キャップシート26cのベース部分とフラットシート26aとの間が全て中空部分となっており、その中空部分である突起26b同士の隙間が繋がっているため、端面から水等が浸入すると内部まで到達して容易には汚れが取れない。また、図3(a)(b)に記載の気泡ボード26と同様に端面にはくぼみ26dが露出しており、ここにも水等が残存して汚れやすくなる。
【0036】
さらに、図4(a)に断面を、図4(b)に斜視図を示すプラスチック気泡ボード26”は、前記のキャップシート26cの両方の面にフラットシート26aを貼り合わせたものである。これは、図3(c)(d)に記載の気泡ボード26’よりも高い強度を有するが、同様にフラットシート26aとキャップシート26cとの間が、繋がった中空部分となっており、水等が浸入すると同様に除去しにくい。
【0037】
これらの気泡ボード26、26’、26”としては、具体的にはプラパール(登録商標)の名前で呼ばれる製品がある。これらの気泡ボード26、26’、26”の端面を封止する方法は、上記のプラスチック段ボール21の場合と同様の手順により行うことができる。
【0038】
フラットシート26aがキャップシート26cの一面だけに貼り合わされた気泡ボード26、26’の場合は、フラットシート26aやキャップシート26cが融けて、くぼみ26dを埋めるとともに、突起26bの無い部分にも端面26eを形成されることで、図5(a)、(b)又は(c)、(d)のように端面が封止される。
【0039】
また、キャップシート26cの両面にフラットシート26aが貼り合わされた気泡ボード26”の場合は、くぼみ26dと、その間の隙間の両方を埋めて端面26eを形成することで、図6(a)(b)のように端面が封止されて、突起26b同士の隙間に水等が浸入することを防ぐ。
【0040】
さらに、上記中空構造板としては、上記のプラスチック段ボールや気泡ボードに熱可塑性樹脂製の不織布を貼り合わせたり、熱可塑性樹脂製の発泡層を積層させたりしたものや、それぞれのプラスチック段ボールや気泡ボード同士をさらに積層させたもの、発泡樹脂の層のみからなるものなどが挙げられる。また、上記の気泡ボードのキャップシートは、上記の形状に限られるものではなく、例えば、キャップシートが両面から突起を形成するように押し込まれた形となったものや、突起が円柱以外の任意の形となったものも挙げられる。これらの中空構造板も、板全体が熱可塑性樹脂製で中空構造を有して水等が浸入しやすい構造のものであれば、この発明を適用可能であり、端面を封止することによる効果を得ることができる。ただし、いずれの中空構造板も、自重で変形したりしない程度の強度を持っていることが好ましい。自重で変形する程度に柔らかいものであると、端面の封止が難しく、また、板として使いづらいので端面を封止する意義に乏しくなってしまう。
【0041】
また、この発明で用いる中空構造板を構成する材料は、熱可塑性樹脂であることが必要であり、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンが挙げられる。この中でも特に、溶融させるために必要な温度上、ポリプロピレン製であると製造しやすい。
【0042】
このようにして得られる端面封止中空構造板は、端面を封止することで、水等の浸入や残存を抑えるだけでなく、端面をフラットな面にすることで、端部を破損しにくくする効果が得られる。特に、上記の端面封止プラスチック段ボール板21’は、端部のライナ間に、厚み以上の幅分の樹脂を押し込んで固めているので、端部の強度が高く、従来のプラスチック段ボール板より端部が破損しにくいものとなる。
【0043】
上記の端面封止中空構造板を用いてプラスチックコンテナを製造するにあたっては、組み立て枠に嵌めて組み立てたり、熱溶着により端面封止中空構造板を接合したりする、一般的な製造方法を用いてよい。例えば、図7(a)に記載のようなプラスチックコンテナの側板などに好適に用いることができる。これは、底盤31の四隅に枠材となる隅柱33を立て、その隅柱33で側板となる端面封止中空構造板21’をガイドし、その上に蓋32を載せたものである。隅柱33が、側板となる端面封止中空構造板21’を支える部分の拡大図を図7(b)に示す。この側板は、端面21eを封止しているため、隅柱33の凹部との間に隙間がほとんどなく、隅柱33との間に水等が溜まりにくい。また、側板自体への水等の浸入も防いでいる。このため、前記のプラスチックコンテナは医薬品や生鮮食料品の梱包用途にも好適に用いることができる。
【0044】
また、側板だけでなく、底盤31と蓋32にも、端面封止中空構造板21’を用いてもよい。これらに、端面を封止していない中空構造板21を用いると、例えば底盤31と隅柱33との間が、図7(c)のように、端面に中空部分が露出してしまい、ここから内部に水等が浸入してしまう。また、蓋32でも中空構造板を用いると同様に露出しうる。そこで、図7(d)のように、端面封止中空構造板を用いることで、これらの内部に水等が浸入することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】(a)この発明で用いるプラスチック段ボール板とヒートバーとの斜視関係図、(b)接触時の状態を示す断面図、(c)ヒートバーによる圧縮時の状態を示す断面図、(d)定規による端面の固定時の状態を示す断面図、(e)盛上部を切除する際の状態を示す断面図、(f)工程を終えた端面封止プラスチック段ボール板の斜視図
【図2】(a)(b)定規を斜めに当てて端面を形成させる際の概念図
【図3】(a)この発明で用いるキャップシートのベース側面にフラットシートを貼り付けた気泡ボードの断面図、(b)(a)の斜視図、(c)キャップシートの突起上にフラットシートを貼り付けた気泡ボードの断面図、(d)(c)の断面図
【図4】(a)この発明で用いるキャップシートの両面にフラットシートを貼り付けた気泡ボードの断面図、(b)(a)の斜視図
【図5】(a)ベース側面にフラットシートを貼り付けた端面封止気泡ボードの断面図、(b)(a)の斜視図、(c)突起上にフラットシートを貼り付けた端面封止気泡ボードの断面図、(d)(c)の斜視図
【図6】(a)両面にフラットシートを貼り付けた端面封止気泡ボードの断面図、(b)(a)の斜視図
【図7】(a)プラスチックコンテナの概念図、(b)プラスチックコンテナの側板の立て方を示す概念図、(c)端面を封止していない底盤を用いた例の拡大図、(d)端面を封止した底盤を用いた例の拡大図
【図8】(a)特許文献1に記載の従来例におけるプラスチック段ボール板とヒートバーとの斜視関係図、(b)接触時の状態を示す断面図、(c)平板状の部分を形成した状態を示す断面図、(d)折りたたんだ際の状態を示す断面図、(e)はみ出した部分を切除する際の状態を示す断面図
【図9】(a)特許文献2に記載の従来例におけるプラスチック段ボール板とV字ヒートバーとの斜視関係図、(b)接触時の状態を示す断面図、(c)圧縮変形後の状態を示す断面図、(d)折り曲げて接触した状態を示す断面図、(e)2度目のV字ヒートバーによる圧縮後の状態を示す断面図、(f)2度目の折り曲げを終えた後の状態を示す断面図
【図10】(a)特許文献3に記載の従来例におけるプラスチック段ボール板と楔形ヒートバーとの斜視関係図、(b)押し込み時の状態を示す断面図、(c)押し込み後の状態を示す断面図、(d)冷却バーによる押しつぶし時の状態を示す断面図、(e)完成時の状況を示す端面側からの概念図
【符号の説明】
【0046】
1 プラスチック段ボール板
1a ライナ
1b リブ
1c 平板状の部分
1d 新たな端面
1e はみ出した部分
1f 三角柱状の部分
1g 繋がった部分
1h 三角柱部分
1i 軟化した部分
2 ヒートバー
2a 底部
3 台
4 切刃
5 V字ヒートバー
6 楔形ヒートバー
7 冷却バー
21 プラスチック段ボール板
21’ 端面封止プラスチック段ボール板
21a ライナ
21b リブ
21c 端面
21d 変形部
21e 端面
21f 平端面
21g 盛上部
21h 切除面
22 ヒートバー
23 定規
24 切刃
25 テーブル
26 (キャップシートのベース側面にシートを貼り付けた)気泡ボード
26’ (キャップシートの突起上にシートを貼り付けた)気泡ボード
26” (両面にシートを貼り付けた)気泡ボード
26a フラットシート
26b 突起
26c キャップシート
26d くぼみ
26e 端面
31 底盤
32 蓋
33 隅柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製で内部に中空部分を有する中空構造板の端面(21c)に、樹脂を軟化可能な温度であるヒートバー(22)の面を当てて加熱することにより、前記端面の近傍を変形可能な強度に軟化させ、
前記端面に対して圧力を作用させ圧縮変形させ、前記端面に露出する前記中空部分を封止し、変形により生じる盛上部(21g)を切刃(24)で切除する端面封止中空構造板の製造方法。
【請求項2】
上記の軟化がされて変形可能な強度となる範囲の端面からの幅Lが、上記プラスチック段ボール板の厚さtより大きくなるようにした請求項1に記載の端面封止中空構造板の製造方法。
【請求項3】
上記中空構造板が、ライナ(21a)間にリブ(21b)を設けたプラスチック段ボール板(21)であり、上記中空部分が、前記ライナ(21a)間の空間である、請求項1又は2に記載の端面封止中空構造板の製造方法。
【請求項4】
上記中空構造板が、複数のキャップ状の突起(26b)を有するキャップシート(26c)の少なくとも一方の面にフラットシート(26a)を貼り合わせたプラスチック気泡ボード(26)であり、上記中空部分が、前記キャップシートの前記突起(26b)間の空間と、前記キャップシート(26c)の端面に露出した前記突起(26b)の内部であるくぼみ(26d)とである、請求項1又は2に記載の端面封止中空構造板の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法により得られた端面封止中空構造板を用いた、プラスチックコンテナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−200890(P2008−200890A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36710(P2007−36710)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(594126746)西田製凾株式会社 (14)
【Fターム(参考)】