説明

符号判別回路

【課題】 良好なC/N特性を有すると同時に、再生振幅の変動に対しても安定性を併せ持つ符号判別回路を含む光ディスク再生装置を提供する。
【解決手段】 光ディスク再生装置において、内部に適応型ビタビ復号回路301とスライサ回路6の2種類の復号回路を設け、互いに同じ時刻に同期信号を出力するように遅延の調整を行った上で、通常は適応型ビタビ復号回路301を用いたビタビ復号による復号値を後段で使用し、再生信号もしくはそのA/D変換値に基づく再生領域の欠陥判定結果や基準値の配列の異常を検出したときは、適応型ビタビ復号回路301をリセットするとともに、このリセットの前後の期間においてスライサ回路6の出力を後段の処理で適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク媒体からのレーザ反射光による再生信号を入力として、2値化符号に復号する光ディスク再生装置に関し、特に、高い雑音耐性と振幅変動に対する安定性を併せ持つ符号判別回路を含む光ディスク再生装置の構成に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスクにおいて、記録媒体から再生される再生信号を復号して2値のリードデータを生成する方法としては、スライス方式またはビタビ復号方式が用いられており、従来の光ディスク再生装置では少なくとも一方を有している。
【0003】
このうちのビタビ復号方式は、再生信号のサンプリング波形を波形等化した値を既定の形式による畳み込み符号とみなして複数の振幅基準値と比較した距離をもとに、最尤となるデータパターンを探索する処理であり、スライス方式と比較してC/Nの良くない再生信号に対しても誤り率を小さくできるが、一方で再生信号の振幅と振幅基準値との差が大きいときは誤り率が増加する。
【0004】
これに対して、多くのビタビ復号方式による再生回路では、復号したデータをフィードバックして振幅基準値などの処理パラメータを更新することにより、入力された再生信号に適応する手段を設けている。しかし、再生するディスク上の欠陥などにより正常に復号を行えないほど大きな振幅変動が生じたときには、この間に学習手段自体が誤動作を繰り返し、復号できる状態への復帰に時間がかかる問題がある。更には、この状態から復帰するために初期化を行う場合においても、ビタビ復号方式では初期化直後から復号データを出力するまでに一定の時間を要するため、無効なデータが出力される期間が必ず発生してしまう問題がある。
【0005】
一方のスライス方式は、入力された再生波形に対してその中心値付近をとる単独の閾値との比較を行った判定結果を復号データとして出力する方法である。ビタビ復号方式とは逆に、信号の入力に対して即時に復号値の判定が可能であり、初期化後に無効なデータは出力されない。また、単一の基準値との比較による復号であるため、複数の基準値との比較によるビタビ復号と比較して振幅変動による影響を受けにくいという利点があるが、C/N比に対するエラー率が大きい欠点がある。
【0006】
以上のように、ビタビ復号方式とスライス方式は相補的である。例えば、特許文献1には、このように相補的な関係であるビタビ復号方式とスライス方式(ビットバイビット復号方式と記載)を再生する領域の状態に応じて切り換えて使用する構成が示されているが、ビタビ復号方式とスライス方式でデータの出力されるまでの時間差が考慮されていないため、切り換え前後で後段の処理部へ出力されるデータが連続しておらず、必ず誤りを生じてしまう問題がある。
【特許文献1】特開平10−241296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記のような光ディスク再生装置においては、一般的に再生媒体が交換可能であるため、再生時に欠陥となる媒体表面の傷などが発生しやすい一方、再生信号のC/Nの観点では、特に記録型光ディスクの再生品質において、媒体と記録装置のそれぞれの特性が影響するためにばらつきが大きい。このため、光ディスク再生装置では、高い欠陥耐性と良好なC/N特性が要求される。
【0008】
しかしながら、前記のように光ディスク再生処理において、従来使用されてきた復号方式であるビタビ復号方式もしくはスライス方式のいずれか一方を適用した復号回路では、光ディスク装置のC/N特性と欠陥耐性の両方に対して同時に良好な特性を得ることは困難であった。例えば、ビタビ復号方式による光ディスク再生時、欠陥領域の再生などによる振幅変動により振幅基準値と再生信号レベルが大きく外れる場合においてはエラーが発生する。また、適応型ビタビ復号方式では基準値の更新に異常が発生することがある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、良好なC/N特性を有すると同時に、再生振幅の変動に対しても安定性を併せ持つ符号判別回路を含む光ディスク再生装置を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
本発明は、ビタビ復号方式による復号回路とスライス方式による復号回路の両方を有し、再生信号波形および復号状態に従って後段の処理に適用する復号値を随時切り換える構成とすることにより上記の課題を解決する。
【0013】
すなわち、復号回路として、A/D変換器により所定のタイミングでサンプルされた再生信号もしくはこれを波形等化した信号を入力としたビタビ復号回路と、前記再生信号を入力とし、内部の遅延回路によりビタビ復号回路と同一タイミングで同期信号を出力することを特徴としたスライサ回路の2つを設け、復号手段切換回路により後段へ出力される復号値をいずれかから選択できる構成とする。
【0014】
この構成では、同期信号の復号タイミングが前記2つのビタビ復号回路とスライサ回路との間で同一であり、切り換えタイミングによらず、切り換え前後の復号データの連続性が維持されるため、この前後でデータの破壊無く後段の処理を行える点が特徴である。
【0015】
前記復号手段切換回路の切り換え契機は、ビタビ復号回路、スライサ回路の入力信号振幅から取得される再生状態情報であり、後段の処理への採用に適した復号方式を選択する。さらに、ビタビ復号回路が入力された信号波形に適応して振幅基準値を更新する適応型ビタビ復号回路である場合、入力される再生信号の振る舞いによっては基準値の更新が正しく行えないことがあるが、本発明では、このような状態をビタビ復号回路内の振幅基準値に関する大小関係および後段の処理での同期信号検出状態により判定し、復帰のためのリセットの前後ではスライサ回路を選択することにより、ビタビ復号回路で発生する初期化時および初期化直後の復号値の喪失を回避できる。
【0016】
具体的に、本発明の符号判別回路は、以下のような特徴を有するものである。
【0017】
(1)光ディスク媒体からのレーザ反射光を光ピックアップ回路により光電変換した再生信号に対し、位相同期したタイミングで再生信号をサンプリングするA/D変換器と、A/D変換器のサンプリング波形を等化して既定の形式に畳み込み符号化する波形等化回路と、A/D変換器のサンプル値を入力としたスライサ回路と、波形等化回路の出力波形を入力としたビタビ復号回路と、後段に出力する復号データを生成する、ビタビ復号回路またはスライサ回路を選択する復号手段切換回路と、再生処理を行う領域の欠陥の有無を判定する欠陥検出回路と、欠陥検出回路の判定結果を受けて復号手段切換回路を切り換えるコントローラとを備え、スライサ回路は内部に遅延回路を有し、欠陥の有無の判定による選択結果によらず、後段の処理において同一時刻に同期信号が検出される。
【0018】
(2)前記(1)において、欠陥検出回路により欠陥領域と判定された場所を再生するときは、復号手段切換回路によりスライサ回路による復号値を後段での処理に適用するように選択し、それ以外の領域ではビタビ復号回路による復号値を後段での処理に適用するように選択する。
【0019】
(3)光ディスク媒体からのレーザ反射光を光ピックアップ回路により光電変換した再生信号に対し、位相同期したタイミングで再生信号をサンプリングするA/D変換器と、A/D変換器のサンプリング波形を等化して既定の形式に畳み込み符号化する波形等化回路と、A/D変換器のサンプル値を入力としたスライサ回路と、波形等化回路の出力波形に適応して振幅基準値を更新する適応型ビタビ復号回路と、後段に出力する復号データを生成する、適応型ビタビ復号回路またはスライサ回路を選択する復号手段切換回路と、再生処理を行う領域の欠陥の有無を判定する欠陥検出回路と、欠陥検出回路の判定結果を受けて復号手段切換回路を切り換え、適応型ビタビ復号回路の初期化を行うコントローラとを備え、スライサ回路は内部に遅延回路を有し、欠陥の有無の判定による選択結果によらず、後段の処理において同一時刻に同期信号が検出される。
【0020】
(4)前記(3)において、欠陥検出回路により欠陥領域と判定された場所を再生するときは、復号手段切換回路によりスライサ回路による復号値を後段での処理に適用するように選択するとともに、欠陥領域と判定した個所から欠陥のない領域へ再生個所が移動するときに適応型ビタビ復号回路のリセットを行い、リセット後に復号が可能となるのに十分な期間においてもスライサ回路による復号値を後段での処理に適用するように選択し、それ以外の領域では適応型ビタビ復号回路による復号値を後段での処理に適用する。
【0021】
(5)光ディスク媒体からのレーザ反射光を光ピックアップ回路により光電変換した再生信号に対し、位相同期したタイミングで再生信号をサンプリングするA/D変換器と、A/D変換器のサンプリング波形を等化して既定の形式に畳み込み符号化する波形等化回路と、A/D変換器のサンプル値を入力としたスライサ回路と、波形等化回路の出力波形に適応して振幅基準値を更新する適応型ビタビ復号回路と、適応型ビタビ復号回路の各振幅基準値の大小関係により基準値更新の異常を検出する基準値異常検出回路と、後段に出力する復号データを生成する、適応型ビタビ復号回路またはスライサ回路を選択する復号手段切換回路と、再生処理を行う領域の欠陥の有無を判定する欠陥検出回路と、欠陥検出回路の判定結果を受けて復号手段切換回路を切り換え、適応型ビタビ復号回路の初期化を行うコントローラとを備え、スライサ回路は内部に遅延回路を有し、欠陥の有無の判定による選択結果によらず、後段の処理において同一時刻に同期信号が検出される。
【0022】
(6)前記(5)において、欠陥検出回路により欠陥領域と判定された場所を再生するときは、復号手段切換回路によりスライサ回路による復号値を後段での処理に適用するように選択するとともに、欠陥領域と判定した個所から欠陥のない領域へ再生個所が移動するとき、および基準値異常検出回路により異常が検出されたときに適応型ビタビ復号回路のリセットを行い、リセット後に復号が可能となるのに十分な期間においてもスライサ回路による復号値を後段での処理に適用するように選択し、それ以外の領域では適応型ビタビ復号回路による復号値を後段での処理に適用する。
【0023】
(7)前記(1)〜(6)において、欠陥検出回路は、ピックアップ回路から出力された再生信号に対して、信号の強度の大きい側と小さい側のそれぞれのエンベロープ検波を行い、その差があらかじめ定めた閾値以下となったときを検出して欠陥領域を判定する。
【0024】
(8)前記(1)〜(6)において、欠陥検出回路は、A/D変換器によりサンプリングされた再生信号のサンプル値に対して、信号の強度の大きい側と小さい側のそれぞれのエンベロープ検波を行い、その差があらかじめ定めた閾値以下となったときを検出して欠陥領域を判定する。
【0025】
(9)前記(1)〜(6)において、欠陥検出回路は、波形等化回路から出力された等化値に対して、信号の強度の大きい側と小さい側のそれぞれのエンベロープ検波を行い、その差があらかじめ定めた閾値以下となったときを検出して欠陥領域を判定する。
【発明の効果】
【0026】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0027】
本発明によれば、安定した再生信号が入力されるときにおいてビタビ復号方式によるC/N特性と同等の性能が得られ、かつ欠陥などにより再生信号に振幅変動が発生するときでも誤動作の起きにくい符号判別回路を含む光ディスク再生装置を構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0029】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による符号判別回路を含む光ディスク再生装置について、図1〜図5を用いて説明する。
【0030】
図1は、本発明の実施の形態1による符号判別回路を含む光ディスク再生装置の構成の一例を示す。図1において、本実施の形態1の光ディスク再生装置は、光ディスク媒体1、光ピックアップ回路2、光ディスク媒体1からのレーザ反射光を光ピックアップ回路2により光電変換した再生信号に対し、位相同期したタイミングで再生信号をサンプリングするA/D変換器(ADC)3、A/D変換器3のサンプリング波形を等化して既定の形式に畳み込み符号化する波形等化回路4、波形等化回路4の出力波形を入力としたビタビ復号回路5、A/D変換器3のサンプル値を入力としたスライサ回路6、遅延回路7、閾値比較回路8、後段に出力する復号データを生成する復号回路を選択する復号手段切換回路9、同期信号検出回路10、デコード回路11、再生処理を行う領域の欠陥の有無を判定する欠陥検出回路12、欠陥検出回路12の判定結果を受けて復号手段切換回路9を切り換えるコントローラ13などから構成され、欠陥検出回路12からコントローラ13に対して欠陥検出信号22が出力される。
【0031】
この光ディスク再生装置の構成においては、これに限定されるものではないが、たとえば、光ディスク媒体1、光ピックアップ回路2、同期信号検出回路10、およびデコード回路11を除く、A/D変換器3、波形等化回路4、ビタビ復号回路5、スライサ回路6(遅延回路7、閾値比較回路8)、復号手段切換回路9、欠陥検出回路12、およびコントローラ13の部分は、符号判別回路として1つのLSIで形成される。
【0032】
上記のように構成される光ディスク再生装置では、光ディスク媒体1は、中心から同心円状に刻まれたトラックに沿って配置されたマークおよびスペースと呼ばれる2種類の反射率の異なるピットの長さにより情報が記録された媒体である。情報の読み取りと記録を容易とするためにマークおよびスペースの最低連続長が定められており、たとえばCDやDVDでは3T(Tは単位bitあたりの長さを表す)である。ディスク上のマーク/スペースのパターンは記録されている情報に対してこの制約を満たすように変換されており、再生時にはデコード回路11により復調される。
【0033】
光ピックアップ回路2は、レーザ光を集光して光ディスク媒体1上に照射し、その反射光量あるいは偏向を検出して電気信号に変換して光ディスク媒体1上に記録されたデータに対応した再生信号を生成する。A/D変換器3は、このA/D変換器3が再生信号をサンプリングするタイミングの一例を示す図2のように、再生信号と同一の周波数かつゼロクロス点からT/2だけずれた位相のタイミングでサンプリングおよび量子化を行い、後段でデジタル処理による復号回路へ再生信号のサンプル値を出力する。このタイミングでサンプルした再生信号サンプル値を入力とした振幅中心値との比較、すなわちスライス復号を行うことにより光ディスク媒体1上に記録されたデータの復号が可能である。
【0034】
ビタビ復号回路5は、光ディスク媒体1上に記録されたデータパターンに対して光ピックアップ回路2で読み出された再生信号およびそのサンプル値に符号間干渉が与えられる過程を記録データに対する畳み込み符号器に擬したビタビ復号処理を行うことにより、光ディスク媒体1上に記録されたマークおよびスペースのパターンを判別する。このビタビ復号処理では、適用する畳み込み則と記録データのデータパターン制約(たとえばランレングス長)により決まる複数の振幅基準値に対して各時刻入力サンプル値との比較を繰り返した結果に基づき最尤となる復号値パターンを得るため、再生信号振幅が変動してサンプル値の分布がこれらの振幅基準値の配置との不一致量が大きくなると、次第に誤り率が大きくなる。
【0035】
また、このビタビ復号回路5の前段に設けられる波形等化回路4は、A/D変換器3による再生信号サンプル値を入力としたデジタルフィルタ回路であり、再生信号とビタビ復号回路5の対象とする畳み込み符号形式がもつ符号干渉量との間を補償して同等となるように伝達特性を定めて等化することによってビタビ復号回路5の入力サンプル値の分布を各振幅基準値の位置を中心に配置し、より正確なビタビ復号結果を得られるようにするものである。
【0036】
スライサ回路6は、内部に閾値比較回路8と遅延回路7から構成され、A/D変換器3による再生信号サンプル値を閾値比較回路8において再生信号の中心レベル近傍に定めた振幅閾値との大小比較結果により、光ディスク媒体1上に記録されたマークおよびスペースのパターンを判別するスライス復号を行い、その結果を遅延回路7により遅延させて出力する。遅延回路7による遅延量は、波形等化回路4とビタビ復号回路5により復号された符号と同一タイミングで同期信号が出力されるように与える。復号手段切換回路9は、後段の同期信号検出回路10とデコード回路11へ出力する復号データを、コントローラ13によりビタビ復号回路5による復号データとスライサ回路6による復号データのいずれかから選択して切り換える。
【0037】
同期信号検出回路10は、復号手段切換回路9により選択された復号データから同期信号を検出し、その検出タイミングをデコード回路11へ出力する。デコード回路11は、同期信号検出タイミングを基準位置として、復号手段切換回路9から入力された復号データに対し、光ディスク媒体1上のマーク/スペースパターンの形式から記録情報の形式への復調を行う。ここで、スライサ回路6とビタビ復号回路5の出力において同期信号を出力するタイミングが一致していることから、復号手段切換回路9による切り換えのタイミングにかかわらず、その前後で連続して復調処理を行うことが可能である。
【0038】
欠陥検出回路12は、光ピックアップ回路2から出力された再生信号を入力としたアナログ回路により再生領域の欠陥を検出し、欠陥領域を示す欠陥検出信号22をコントローラ13へ出力する。
【0039】
次に、図3は、欠陥検出回路12の構成の一例を示す。図3において、欠陥検出回路12は、上方エンベロープ検波回路14、下方エンベロープ検波回路15、エンベロープ差分検出回路17、欠陥検出用比較回路18などから構成され、欠陥検出用比較回路18から欠陥検出信号22が出力される。
【0040】
上方エンベロープ検波回路14は、光ピックアップ回路2から出力された再生信号波形の振幅値が大きい側の包絡線を波形とする信号(以下では上方エンベロープ信号)を出力する。下方エンベロープ検波回路15は、光ピックアップ回路2から出力された再生信号波形の振幅値が小さい側の包絡線を波形とする信号(以下では下方エンベロープ信号)を出力する。
【0041】
エンベロープ差分検出回路17は、上方エンベロープ信号と下方エンベロープ信号との間の差分信号を出力し、欠陥検出用比較回路18において未記録等の欠陥検出用閾値と比較を行い、欠陥検出用閾値の方が大きいときに1、それ以外で0となる2値の欠陥検出信号22を出力する。これにより、欠陥検出回路12の動作の一例を示す図4のように、欠陥領域における再生信号変動が検出され、正常にデータの再生できない欠陥領域において1、正常な再生信号が得られる領域において0となる欠陥検出信号22が得られる。
【0042】
以上に説明した実施の形態1における光ディスク再生装置の動作の概要の一例を図5(a)(b)に示す。図5において、23は波形等化出力サンプル値、24〜27は振幅基準値をそれぞれ表している。
【0043】
A/D変換器3により再生信号をサンプルするタイミングが位相同期しているため、再生信号のサンプル値はいくつかの帯状の分布を形成するが、さらに波形等化回路4の処理により振幅基準値24〜27を目標として振幅の補正と分散の低減を行ったものが波形等化出力サンプル値23である。
【0044】
波形等化出力サンプル値23は、欠陥領域ではない図左部と図右部では振幅基準値24〜27と重なる4値の分散をもち、欠陥領域である中央部では振幅が0に収束する。また、これらの境界部分では、サンプル値がなだらかに収束・展開している。
【0045】
ビタビ復号回路5では、振幅基準値と波形等化出力サンプル値23の分布中心が一致するときに良好な性能を得ることができるが、この境界部分のように振幅基準値と波形等化出力サンプル値23の分布との間のずれが大きくなるにしたがってエラー率が大きくなる。一方、スライサ回路6では、再生信号の中心値のみを適用するためこの種の振幅変動の影響を受けにくいことから、欠陥部前後の波形等化出力サンプル値23が小さい部分においてもビタビ復号回路5と比較して安定した動作が期待できる。
【0046】
そこで、ビタビ復号回路5でのエラー率よりスライサ回路6のエラー率が小さくなる最大値を欠陥検出用閾値に与えて欠陥検出信号22を生成し、コントローラ13では欠陥検出信号22が0である期間はビタビ復号回路5の出力値を選択し、欠陥検出信号22が1である期間においてはスライサ回路6の出力値を選択するように復号手段切換回路9を制御する。このとき、復号方式はビタビ復号、スライス、ビタビ復号というように切り換わるが、スライサ回路6に構成される遅延回路7により同期信号の生成タイミングは変化しないため、後段のデコーダ回路11は切り換えによるエラーの発生なしに連続して復号処理を行うことができる。
【0047】
以上に詳細に示したように、本実施の形態1の光ディスク再生装置によれば、正常に光ディスク媒体1から再生信号を得られる領域ではビタビ復号回路5を適用することにより良好なC/N特性を有すると同時に、欠陥部分前後の再生振幅の変動に対してはスライサ回路6を適用することにより安定な光ディスク再生装置を実現できる。尚、上述の実施の形態1では、欠陥検出回路12の入力として、光ピックアップ回路2で検出された再生信号を用いたが、本発明ではかかる構成に限定されることはなく、A/D変換器3の出力、すなわち再生信号サンプル値を用いても良い。また、同様に、波形等化回路4の出力を用いても良い。なお、以下には、かかる構成を採用した他の実施の形態について述べる。
【0048】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2による符号判別回路を含む光ディスク再生装置について、図6及び図7を用いて説明する。
【0049】
図6は、本発明の実施の形態2による符号判別回路を含む光ディスク再生装置の構成の一例を示す。図6において、本実施の形態2が前記実施の形態1と異なる点は、欠陥検出回路12の入力信号をA/D変換器3の出力信号とした点にあり、欠陥検出方法は同じである。さらに、別の形態の一例を示す図7は、欠陥検出回路12の入力信号を波形等化回路4の出力信号とした構成である。
【0050】
図6及び図7のいずれの構成でも、欠陥検出処理をデジタル処理で行えるため、前記実施の形態1で示した構成で発生するアナログ回路部品で存在する個体ばらつきや温度等の環境によるドリフトの影響を排除できることに加え、欠陥検出条件をより細かく設定することが可能となる利点がある。
【0051】
以上では、ビタビ復号回路5の振幅基準値があらかじめ設定した値のまま変化しない構成における実施の形態を説明した。これに対して、装置および再生媒体の特性ばらつきにより波形等化回路4の出力の分布とあらかじめ設定した振幅基準値が一致しないことが多いため、波形等化回路4の出力の分布に合わせて振幅基準値を追従させる適応型ビタビ復号回路を適用することがある。以下では、この適応型ビタビ復号回路を適用した場合における実施の形態を説明する。
【0052】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3による符号判別回路を含む光ディスク再生装置について、図8〜図12を用いて説明する。
【0053】
図8は、本発明の実施の形態3による、適応型ビタビ復号回路を適用した符号判別回路を含む光ディスク再生装置の構成の一例を示す。図8において、本実施の形態3が前記実施の形態1,2と異なる点は、ビタビ復号回路5が適応型ビタビ復号回路301に置き換わっていること、基準値異常検出回路302が設けられていること、およびコントローラ13へ入力される信号として基準値異常検出信号306が追加され、コントローラ13から適応型ビタビ復号回路301へビタビ復号回路初期化信号305が入力され、適応型ビタビ復号回路301から基準値異常検出回路302へ振幅基準値303が入力されている点である。
【0054】
適応型ビタビ復号回路301は、入力される信号レベルに応じて振幅基準値を更新することにより、再生媒体および再生装置の特性ばらつきに起因する波形等化回路出力の分布と振幅基準値のずれを修正し、安定して良好なC/N特性を得ることを目的とした回路であり、この適応型ビタビ復号回路301の構成の一例を示す図9のように、フィードバックしたビタビ復号器出力値と波形等化回路出力とを合わせて基準値更新回路308で参照して振幅基準値を更新し、ビタビ復号器307へ出力する。
【0055】
また、図10は、基準値更新回路308の構成の一例を示す。ここでは、ランレングス長2のデータに対して拘束長3の畳み込みを行った畳み込み符号に対する振幅基準値更新を例に説明する。
【0056】
図10において、基準値更新回路308は、レジスタ(D)309,310、選択信号発生回路311、遅延回路312、スイッチ回路313〜318、低域通過フィルタ(LPF)319〜324などから構成される。また、3ビットの連続したデータ{l,m,n}を畳み込む事により得られる符号値の理想値、すなわち振幅基準値をREFlmnと表す。たとえば、1,0,0の順番で並んだ符号値に対する振幅基準値をREF100と表記する。
【0057】
ここで、レジスタ309,310は、ビタビ復号出力をそれぞれ1チャネルクロック周期間と2チャネルクロック周期間遅延させて保持するものであり、ビタビ復号出力と合わせて連続した3ビットの復号データパターンを保持する。ここでは、この3ビットのデータパターンをDET[2:0]と表記している。一方、遅延回路312は、ビタビ復号入力、すなわち波形等化回路出力をビタビ復号の処理に要する時間と同じだけ遅延させることにより、常にDET[2:0]のパターンに対応した波形等化回路の出力値が遅延回路から出力されるようにし、各スイッチ回路313〜318の接点の一端へ出力する。また、選択信号発生回路311は復号データパターンと対応した振幅基準値に対するスイッチをONするように選択信号を生成する。たとえば、DET[2:0]が{0,1,1}となる場合は、スイッチ315をONさせる。
【0058】
このような制御を繰り返すことにより、各低域通過フィルタには、フィルタに対応した振幅基準値に対応した波形等化値が入力される。この値は再生媒体や装置のばらつきを反映させた、振幅基準値の理想値となるものであり、振幅基準値はこの値を目標として低域通過フィルタ319〜324によりこの値を目標と収束させる。以上のようにして、基準値更新回路308は構成できる。
【0059】
また、基準値更新回路308において誤った値に基準値が収束することを検出するために、基準値異常検出回路302を設ける。この基準値異常検出回路302の構成の一例を図11に示す。ここでは、本来あるべき各基準値の大小関係がREF111≧REF110≧REF100≧REF000、かつREF111≧REF011≧REF001≧REF000となるような畳み込み符号形式を想定している。325〜330は基準値比較回路を表しており、この大小関係が成立しないときに1となるような基準値異常検出信号306を出力する。
【0060】
以上に示した適応型ビタビ復号回路301では、適切に振幅基準値が更新されるためにはビタビ復号回路により誤りが少なく復号を行えることが必要であり、たとえば光ディスク媒体1上の欠陥領域などの再生信号の振幅が極めて小さいときは正しく基準値の更新を行えない。これは、欠陥領域の再生から再生信号振幅が通常の振幅に戻る過程において、正しく復号できない状態を初期状態として復号値をフィードバックさせていることにより復号値のエラーと振幅基準値更新の誤動作を繰り返し、再生信号の振幅が正常になったときに不適当な振幅基準値に収束し復号値できない状態に安定することがある。
【0061】
そこで、本実施の形態3では、動作の概要の一例を示す図12のように、欠陥検出信号が1から0に戻るとき、すなわち再生位置が欠陥領域から正常な再生信号が得られる領域へ移動し再生信号の振幅がほぼ0から通常の値に戻る過程と、基準値異常検出信号306が0から1になるとき、つまり振幅基準値の大小関係が異常となった状態が検出されたときにおいて、コントローラ13から適応型ビタビ復号回路301を一度リセットする。
【0062】
また、一方で、適応型ビタビ復号回路301ではリセットされた状態から有効なデータが出力されるまでの間に、遅延回路312により与えられる遅延と同じだけの期間が必要であり、この間は適応型ビタビ復号回路301からは誤ったデータが出力されることになるため、前記リセットの期間に続けて少なくとも遅延回路312により与えられる遅延だけ加えた間において、コントローラ13から復号手段切換回路9をスライサ回路6の出力が後段へ出力されるように切り換える。
【0063】
以上のようにして、本実施の形態3によれば、適応型ビタビ復号回路301に適宜コントローラ13からリセットを行うことにより、振幅基準値更新の誤動作を防止できることに合わせて、適応型ビタビ復号回路301がリセットによって処理を行えない部分をスライサ回路6の出力値の復号値て補間できるため、C/N特性を有すると同時に欠陥部分前後の再生振幅の変動に対して安定な光ディスク再生装置を実現できる。
【0064】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、高密度に記録されたディスクを再生する場合においても良好なC/N特性を得られるのに加えて、ビタビ復号方式が誤動作し連続的にエラーを発生しやすい欠陥領域の前後においてはスライス方式による復号に切り換えることにより欠陥前後でも安定して再生が可能であり、光ディスク再生装置全般に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態1による符号判別回路を含む光ディスク再生装置の構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1において、A/D変換器が再生信号をサンプリングするタイミングの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1において、欠陥検出回路の構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1において、欠陥検出回路の動作の一例を示す図である。
【図5】(a)(b)は本発明の実施の形態1において、光ディスク再生装置の動作の概要の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2による符号判別回路を含む光ディスク再生装置の構成の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2による別の形態の符号判別回路を含む光ディスク再生装置の構成の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3による、適応型ビタビ復号回路を適用した符号判別回路を含む光ディスク再生装置の構成の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態3において、適応型ビタビ復号回路の構成の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態3において、基準値更新回路の構成の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態3において、基準値異常検出回路の構成の一例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態3において、光ディスク再生装置の動作の概要の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1…光ディスク媒体、2…光ピックアップ回路、3…A/D変換器、4…波形等化回路、5…ビタビ復号回路、6…スライサ回路、7…遅延回路、8…閾値比較回路、9…復号手段切換回路、10…同期信号検出回路、11…デコード回路、12…欠陥検出回路、13…コントローラ、14…上方エンベロープ検波回路、15…下方エンベロープ検波回路、17…エンベロープ差分検出回路、18…欠陥検出用比較回路、22…欠陥検出信号、23…波形等化出力サンプル値、24〜27…振幅基準値、301…適応型ビタビ復号回路、302…基準値異常検出回路、303…振幅基準値、305…ビタビ復号回路初期化信号、306…基準値異常検出信号、307…ビタビ復号器、308…基準値更新回路、309,310…レジスタ、311…選択信号発生回路、312…遅延回路、313〜318…スイッチ回路、319〜324…低域通過フィルタ、325〜330…基準値比較回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスク媒体からのレーザ反射光を光ピックアップ回路により光電変換した再生信号に対し、位相同期したタイミングで再生信号をサンプリングするA/D変換器と、
前記A/D変換器のサンプリング波形を等化して既定の形式に畳み込み符号化する波形等化回路と、
前記A/D変換器のサンプル値を入力としたスライサ回路と、
前記波形等化回路の出力波形を入力としたビタビ復号回路と、
後段に出力する復号データを生成する、前記ビタビ復号回路または前記スライサ回路を選択する復号手段切換回路と、
再生処理を行う領域の欠陥の有無を判定する欠陥検出回路と、
前記欠陥検出回路の判定結果を受けて前記復号手段切換回路を切り換えるコントローラとを備え、
前記スライサ回路は内部に遅延回路を有し、
前記欠陥の有無の判定による選択結果によらず、後段の処理において同一時刻に同期信号が検出されることを特徴とする符号判別回路。
【請求項2】
請求項1記載の符号判別回路において、
前記欠陥検出回路により欠陥領域と判定された場所を再生するときは、前記復号手段切換回路により前記スライサ回路による復号値を後段での処理に適用するように選択し、それ以外の領域では前記ビタビ復号回路による復号値を後段での処理に適用するように選択することを特徴とする符号判別回路。
【請求項3】
光ディスク媒体からのレーザ反射光を光ピックアップ回路により光電変換した再生信号に対し、位相同期したタイミングで再生信号をサンプリングするA/D変換器と、
前記A/D変換器のサンプリング波形を等化して既定の形式に畳み込み符号化する波形等化回路と、
前記A/D変換器のサンプル値を入力としたスライサ回路と、
前記波形等化回路の出力波形に適応して振幅基準値を更新する適応型ビタビ復号回路と、
後段に出力する復号データを生成する、前記適応型ビタビ復号回路または前記スライサ回路を選択する復号手段切換回路と、
再生処理を行う領域の欠陥の有無を判定する欠陥検出回路と、
前記欠陥検出回路の判定結果を受けて前記復号手段切換回路を切り換え、前記適応型ビタビ復号回路の初期化を行うコントローラとを備え、
前記スライサ回路は内部に遅延回路を有し、
前記欠陥の有無の判定による選択結果によらず、後段の処理において同一時刻に同期信号が検出されることを特徴とする符号判別回路。
【請求項4】
請求項3記載の符号判別回路において、
前記欠陥検出回路により欠陥領域と判定された場所を再生するときは、前記復号手段切換回路により前記スライサ回路による復号値を後段での処理に適用するように選択するとともに、欠陥領域と判定した個所から欠陥のない領域へ再生個所が移動するときに前記適応型ビタビ復号回路のリセットを行い、リセット後に復号が可能となるのに十分な期間においても前記スライサ回路による復号値を後段での処理に適用するように選択し、それ以外の領域では前記適応型ビタビ復号回路による復号値を後段での処理に適用することを特徴とする符号判別回路。
【請求項5】
光ディスク媒体からのレーザ反射光を光ピックアップ回路により光電変換した再生信号に対し、位相同期したタイミングで再生信号をサンプリングするA/D変換器と、
前記A/D変換器のサンプリング波形を等化して既定の形式に畳み込み符号化する波形等化回路と、
前記A/D変換器のサンプル値を入力としたスライサ回路と、
前記波形等化回路の出力波形に適応して振幅基準値を更新する適応型ビタビ復号回路と、
前記適応型ビタビ復号回路の各振幅基準値の大小関係により基準値更新の異常を検出する基準値異常検出回路と、
後段に出力する復号データを生成する、前記適応型ビタビ復号回路または前記スライサ回路を選択する復号手段切換回路と、
再生処理を行う領域の欠陥の有無を判定する欠陥検出回路と、
前記欠陥検出回路の判定結果を受けて前記復号手段切換回路を切り換え、前記適応型ビタビ復号回路の初期化を行うコントローラとを備え、
前記スライサ回路は内部に遅延回路を有し、
前記欠陥の有無の判定による選択結果によらず、後段の処理において同一時刻に同期信号が検出されることを特徴とする符号判別回路。
【請求項6】
請求項5記載の符号判別回路において、
前記欠陥検出回路により欠陥領域と判定された場所を再生するときは、前記復号手段切換回路により前記スライサ回路による復号値を後段での処理に適用するように選択するとともに、欠陥領域と判定した個所から欠陥のない領域へ再生個所が移動するとき、および前記基準値異常検出回路により異常が検出されたときに前記適応型ビタビ復号回路のリセットを行い、リセット後に復号が可能となるのに十分な期間においても前記スライサ回路による復号値を後段での処理に適用するように選択し、それ以外の領域では前記適応型ビタビ復号回路による復号値を後段での処理に適用することを特徴とする符号判別回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−338781(P2006−338781A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162075(P2005−162075)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】