説明

筆記具用水性インキ組成物及びそれを内蔵したインキカートリッジ、筆記具

【課題】インキを視認できるタイプのカートリッジや筆記具において、外部から視認されるインキの色調が退色や褐変を生じて見栄えを損なうことや、筆跡の色調を悪化させることがなく、良好な筆跡を永続して形成することのできる筆記具用水性インキ組成物及びそれを内蔵したインキカートリッジと筆記具を提供する。
【解決手段】外部よりインキを視認できるインキカートリッジ又は筆記具に収容されるインキ組成物であって、前記インキ組成物が、水と、着色剤と、5−メルカプト−3−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオン及び/又はその塩とを少なくとも含有する。前記筆記具用水性インキ組成物を収容してなる透明性を備えたカートリッジと、透明性軸筒内に該カートリッジを内蔵する筆記具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用水性インキ組成物及びそれを内蔵したインキカートリッジと筆記具に関する。更には、透明性を有するインキ収容部に収容される耐光性に優れた筆記具用水性インキ組成物及びそれを内蔵したインキカートリッジと筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸筒やインキ収容管を透明性材料により形成し、内部に種々色調のインキ組成物をそれぞれ収容したカラフルな筆記具が汎用されている。
前記筆記具に収容されたインキ組成物は光に晒されて着色剤が退色や褐変を生じると、該筆記具を透して視認されるインキの色調が著しく変化するため、初期の色調と異なる外観が視認されることにより商品価値が損なわれる。また、退色が進むと筆跡の色調も大きく変わってしまうため、製品性能の悪化にも繋がってしまう。特に、着色剤としてキサンテン系着色剤を用いた場合、退色が顕著に見られる。
前記着色剤の退色の要因として、着色剤や添加剤の適用が光増感作用により活性酸素種を発生させ、該活性酸素種が着色剤を退色させることが考えられる。
前記問題を解消するため、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤をインキ中に添加することが考えられるが(例えば、特許文献1及び2参照)、前記紫外線吸収剤は、媒体に対する溶解性が非常に乏しく、特に水性インキに用いた場合には少量しか添加することができないため、活性酸素種による劣化を抑制できず、収容するインキ組成物に対して充分な耐光性向上効果が得られなかった。
【特許文献1】特開昭62−106971号公報
【特許文献2】特開平9−279080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、インキを視認できるタイプのカートリッジや筆記具において、外部から視認されるインキの色調が退色や褐変を生じて見栄えを損なうことや筆跡の色調を悪化させることがなく、良好な筆跡を永続して形成することのできる筆記具用水性インキ組成物及びそれを内蔵したインキカートリッジと筆記具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、外部よりインキを視認できるインキカートリッジ又は筆記具に収容されるインキ組成物であって、前記インキ組成物が、水と、着色剤と、5−メルカプト−3−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオン及び/又はその塩とを少なくとも含有することを要件とする。
更に、前記着色剤がキサンテン系着色剤であること、前記5−メルカプト−3−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオン及び/又はその塩がインキ組成物全量中に0.05〜5重量%の範囲で含まれることを要件とする。
更には、前記いずれかの筆記具用水性インキ組成物を収容してなる透明性を備えたカートリッジと、透明性軸筒内に該カートリッジを内蔵する筆記具を要件とする。
更には、前記いずれかに記載の筆記具用水性インキ組成物を透明性軸筒内に収容してなる筆記具や、前記いずれかに記載の筆記具用水性インキ組成物を透明性インキ収容管に収容し、更に透明性軸筒内に収容してなる筆記具を要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、インキカートリッジ内や筆記具内のインキを視認できると共に、収容されたインキが退色や褐変を生じて見栄えを損なうことがなく、また、長期的に筆跡の色調を初期と変化させることなく、良好な筆跡を形成することができる商品価値の高い筆記具用水性インキ組成物及びそれを収容したインキカートリッジ、筆記具を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
外側からインキが視認可能な部材(透明部材)の中で生じるインキの退色は、インキ中に含まれる活性酸素種を発生させる物質(例えば、着色剤として用いられる染料、染料を含む樹脂粒子、添加剤として用いられるフェノールやフェノール性水酸基を有する化合物、ナフタレン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体等)が光増感作用により活性酸素種を発生させ、該活性酸素種が染料や染料を含む樹脂粒子を退色させることで生じるものである。そこで本願は、前記活性酸素種を捕獲・除去する働きがある5−メルカプト−3−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオンやその塩をインキ中に添加することで、活性酸素種による着色剤の退色や褐変を抑制するものである。
前記塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩、マグネシウム、アルミニウム等の金属塩、アルカノールアミンやアンモニア等のアミン塩等が例示できる。
尚、前記活性酸素種とは、一重項酸素、スーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、アルキルラジカル、ヒドロペルオキシドラジカル等を示す。
【0007】
前記5−メルカプト−3−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオンやその塩は、インキ組成中0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%添加することができる。
0.05重量%以下では所期の退色抑制効果を得ることは困難であり、また、5重量%を越えて配合しても更なる退色抑制効果は得られないので、これ以上の添加を要しない。
【0008】
前記着色剤としては、水性系媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、酸性染料、塩基性染料、直接染料等の各種染料や、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料、予め界面活性剤や樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられる。
更に、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料、二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、天然雲母、合成雲母、アルミナ、ガラス片から選ばれる芯物質の表面を二酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料、コレステリック液晶型光輝性顔料、可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料や、前記可逆熱変色性組成物と共に、染料や顔料を内包したマイクロカプセル顔料等の熱変色性顔料を使用することもできる。
尚、前記染料については、特にハロゲン基を有するキサンテン構造の染料が光増感作用によって活性酸素種を生じ易く、該染料自体が退色して初期の色調を維持でき難く、また、他の染料を併用する場合、活性酸素種が他の染料の退色に作用して更なる退色を生じることになる。
【0009】
前記着色剤のうち、活性酸素種により退色され易いキサンテン系着色剤としては、例えば、アシッドレッド87(エオシン)、アシッドレッド92(フロキシン)、アシッドレッド51(エリスロシン)、アシッドレッド94(ローズベンガル)、アシッドレッド52、アシッドレッド289、アシッドレッド388、アクリジンレッド(C.I.45000)、ローダミン110、ローダミン123、ローダミン6G(C.I.ベーシックレッド1)、ローダミン6Gエキストラ、ローダミン116、ローダミンB(C.I.45170)、テトラメチルローダミン過塩素酸塩、ローダミン3B、ローダミン19、スルホローダミン、ピロニンG(C.I.45005)、ローダミンS(C.I.45050)、ローダミンG(C.I.45150)、エチルローダミンB(C.I.45175)、ローダミン4G(C.I.45166)、ローダミン3GO(C.I.45215)、スルホローダミンG等のキサンテン系染料や、該染料を含む着色樹脂粒子(具体的にはキサンテン系染料を樹脂マトリックス中に固溶体化してなる顔料)や、ローダミンレーキ6G、ローダミンレーキB(C.I.45170:2)、ローダミンレーキY(C.I.45160:1)等の顔料が挙げられる。
前記各着色剤は、一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成中0.1〜15重量%の範囲で添加することができる。
【0010】
溶剤としては、水と必要により水溶性有機溶剤が用いられる。
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
本発明に用いられる水性インキとして具体的には、剪断減粘性付与剤を含む剪断減粘性インキや、水溶性高分子凝集剤により顔料を緩やかな凝集状態に懸濁させた凝集性インキ、粘度が数mPa・s程度の低粘度インキが挙げられる。
【0011】
前記インキ中に高分子凝集剤を添加することによって、前記凝集剤が顔料(染料を含む樹脂粒子)間のゆるい橋かけ作用を生じさせ、ゆるい凝集状態を示す。このようなゆるい凝集状態を示すインキは繊維集束体からなるインキ吸蔵体(中綿)及び繊維の樹脂結束体からなるマーキングペン体の毛管状間隙において顔料の分離が発生しない。
そのため、正立または倒立の放置により顔料が分離し、筆跡の濃色化または淡色化が発生することを抑制し、染料インキを充填したマーキングペンと同等の保存性能を有するマーキングペンが得られる。
前記水溶性高分子凝集剤としては水溶性高分子化合物が用いられ、トラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリン、セルロース誘導体等の水溶性多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。
前記セルロース誘導体の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0012】
前記インキ中に剪断減粘性付与剤を添加することによって、インキを充填するボールペンの不使用時にボールとチップの間隙からのインキ漏れだしを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止したり、顔料の凝集、沈降を防止することができる。
なお、前記剪断減粘性付与剤を添加したインキ組成物の粘度は、20℃でのE型回転粘度計による3.84s−1の剪断速度におけるインキ粘度が200〜3000mPa・sを示し、且つ、剪断減粘指数が0.1〜0.6を示すことが好ましい。
尚、剪断減粘指数(n)は、剪断応力値(T)及び剪断速度値(j)の如き粘度計による流動学測定から得られる実験式T=Kj(Kは非ニュートン粘性係数)にあてはめることによって計算される値である。
前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、アルカガム、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類、N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を例示できる。
【0013】
更に、前記インキをボールペンに内蔵して実用に供する場合、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗防止効果を付与することが好ましい。
【0014】
その他、必要に応じてベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1,2−ベンズチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等の二糖類、オリゴ糖、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、分散剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を使用してもよい。
また、必要により紙面への固着性や粘性付与のためにアクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合樹脂、ポリビニルアルコール、デキストリン等を用いることもできる。
【0015】
前記インキは、ペン先を筆記先端部に装着した万年筆、ボールペン、マーキングペン、筆ペン等に充填して実用に供される。
万年筆に充填する場合、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を万年筆型ペン先との間に介在させる構造、軸筒内部にインキを内蔵したカートリッジを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を万年筆型ペン先との間に介在させる構造が挙げられる。
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、ペン先(ボールペンチップ)にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材をペン先との間に介在させる構造、ペン先を直接又は接続部材を介して連結した軸筒にインキと逆流防止用の液栓を収容した構造、インキ収容管にインキと逆流防止用の液栓を収容したボールペンレフィルを軸筒内に収容した構造を例示できる。
マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、ペン先(マーキングペンチップ)を筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、ペン先にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材をペン先との間に介在させる構造、軸筒内部に直接インキを収容して、弁機構によりペン先に所定量のインキを供給する構造のマーキングペンが挙げられる。
【0016】
前記万年筆型のペン先として具体的には、ステンレス板、金合金板等の金属板を先細テーパー状に裁断し、屈曲又は湾曲したものや、ペン先形状に樹脂成形したもの等が適用できる。尚、前記万年筆型ペン体には中心にスリットを設けたり、先端に玉部を設けることもできる。
前記ペン先として用いられるボールペンチップについて更に詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、前記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.1〜3mm径程度のものが適用できる。
尚、本発明のインキを充填する筆記具は、ボールと同様の転動作用により筆跡を形成させる、ローラー等の転動機構を筆記先端部に備えたものを含む。
前記ペン先として用いられるマーキングペンチップについて更に詳しく説明すると、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップが挙げられる。
【0017】
インキを収容するインキカートッリッジ、軸筒、インキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる透明性成形体が用いられる。
前記透明性とは着色透明、半透明、着色半透明を含み、インキ色やインキ残量等を確認できるものである。
尚、前記透明性のインキカートッリッジ、軸筒、インキ収容管は全体が透明性を有している他、インキの残量が視認できるように部分的に透明性部分を有するものであってもよい。
【0018】
前記インキ収容管又は軸筒に収容したインキの後端にはインキ逆流防止体を充填することもできる。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
【0019】
前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体には、ゲル化剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物を例示できる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体組成物と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
【0020】
本発明の筆記具形態は前述したものに限らず、相異なる形態のペン先を装着させたり、相異なる色調のインキを導出させるペン先を装着させた両頭式の筆記具であってもよい。
前記両頭式の筆記具としては、軸筒内に仕切り壁を設け、軸筒両端部にそれぞれ直接又は中継部材を介して筆記先端部を固着してなり、前記軸筒内にそれぞれ色調の異なる水性インキを収容してなる筆記具、或いは、軸筒内に、筆記先端部が軸筒両端部に位置するように二本のレフィルを収容してなり、前記二本のレフィル内にそれぞれ色調の異なる水性インキを収容してなる筆記具を例示できる。
【実施例】
【0021】
以下の表に実施例及び比較例のインキ組成を記す。尚、表中の部は重量部を示す。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
表中の原料の内容について注番号に沿って説明する。
(1)アイゼン保土谷(株)製、アシッドレッド87、商品名:エオシンGH35%−L
(2)アイゼン保土谷(株)製、アシッドレッド92、商品名:フロキシン
(3)シンロイヒ(株)製、商品名:SF501ピンク、固形分30%
(4)アイゼン保土谷(株)製、アシッドブルー9、商品名:ブリリアントブルーFCF−L
(5)アーチケミカルズジャパン社製、商品名:プロキセルXL−2
(6)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL
(7)5−メルカプト−3−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオン
(8)5−メルカプト−3−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオンカリウム塩
(9)三晶(株)製、商品名:KELZAN
(10)α−トコフェロール
(11)クラリアントジャパン社製、商品名:SANDUVOR 3225 DISP
【0025】
インキカートリッジの作製
実施例1〜4及び比較例1〜4の各組成を混合攪拌した後、25℃でディスパーにて400rpm、1時間攪拌し、濾過することで調製した各インキ組成物を、ポリエチレン製の透明性カートリッジ容器内に収容し、栓を固着してインキカートリッジを作製した。
【0026】
ボールペンの作製
前記実施例5と比較例5の組成物において、水に剪断減粘性付与剤以外を添加し、混合攪拌した後、キサンタンガムを添加して、25℃で、ディスパーにて400rpm、1時間攪拌し、濾過することで各インキを調製した。
また、基油としてポリブテン98.5部中に、増粘剤として脂肪酸アマイド1.5部を添加した後、3本ロールにて混練してインキ逆流防止体を得た。
前記実施例5及び比較例5のインキを直径0.3mmの超硬合金ボールを抱持するステンレススチール製チップが透明ポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたボールペンレフィルに充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、前記ボールペンレフィルを透明軸筒(キャップ式)に組み込み、試料ボールペンを作製した。
【0027】
マーキングペンの作製
前記実施例6及び比較例6の各組成を混合攪拌した後、25℃でディスパーにて400rpm、1時間攪拌し、濾過することで調製した各インキ組成物を、ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体に含浸させて軸筒内に収容し、軸筒先端部にチゼル型繊維ペン体を取り付けてマーキングペンを得た。
【0028】
各インキカートリッジ及び前記ボールペンとボールペンレフィル(軸筒に収容しないもの)、マーキングペンを用いて以下の試験を行った。
耐光性試験
各インキカートリッジ及び前記ボールペンとボールペンレフィル、マーキングペンをキセノン耐光試験機(スガ試験機、キセノンランプ適用)により照射強度180W/mにて20時間光照射した後、外側から透して視認されるインキの色調を初期と比較した(外観試験)。
筆記試験
耐光性試験を行った各インキカートリッジを、透明性軸筒内に内外圧の変化に応じてインキ貯蔵部のインキを一時的に溜める合成樹脂製ペン芯が収容され、ペン芯の先端部には万年筆型ペン先を設けてなり、且つ、ペン芯にはインキ貯蔵部からインキをペン先へ誘導するためのインキ誘導芯が配置されてなる筆記具本体の、前記インキ貯蔵部として装着することで得られた筆記具と、耐光性試験後のボールペンとボールペンレフィル(実施例5と比較例5のインキを収容)とマーキングペンを用いて、紙面に筆記した際の筆跡の色調を確認した。
以下の表に、各試験結果を示す。
【0029】
【表3】

【0030】
尚、表中の試験結果の記号に関する評価は以下の通りである。
耐光性試験
○:初期と比較してインキの色調に変化がみられなかった。
×:初期と比較して黄変(変色)している。
筆記試験
○:初期と比較して筆跡に変化がみられなかった。
×:初期と比較して黄変(変色)している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部よりインキを視認できるインキカートリッジ又は筆記具に収容されるインキ組成物であって、前記インキ組成物が、水と、着色剤と、5−メルカプト−3−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオン及び/又はその塩とを少なくとも含有する筆記具用水性インキ組成物。
【請求項2】
前記着色剤がキサンテン系着色剤である請求項1記載の筆記具用水性インキ組成物。
【請求項3】
前記5−メルカプト−3−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオン及び/又はその塩がインキ組成物全量中に0.05〜5重量%の範囲で含まれる請求項1又は2に記載の筆記具用水性インキ組成物。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具用水性インキ組成物を収容してなる透明性を備えたカートリッジ。
【請求項5】
透明性軸筒内に請求項4のカートリッジを内蔵する筆記具。
【請求項6】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具用水性インキ組成物を透明性軸筒内に収容してなる筆記具。
【請求項7】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具用水性インキ組成物を透明性インキ収容管に収容し、更に透明性軸筒内に収容してなる筆記具。

【公開番号】特開2009−227755(P2009−227755A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72829(P2008−72829)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】