説明

筋肉老化抑制剤

【課題】優れた筋肉老化抑制剤の提供。
【解決手段】(a)カテキン類、並びに(b)分岐鎖アミノ酸及びタウリンから選ばれるアミノ酸類を有効成分とする筋肉老化抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老化に伴うヒトその他の動物の筋力低下及び筋萎縮の抑制、運動機能の向上並びに寝たきり予防に有効な筋力低下抑制剤、筋萎縮抑制剤、運動機能向上剤及び寝たきり予防剤とその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
老化は生理学的老化と病的老化に大別される。生理的老化は加齢に伴い必然的に起こる老化であり、毛髪、皮膚、眼、骨、筋肉等に変化が生じ、筋肉の重量及び筋力は低下する。
【0003】
加齢に伴う筋萎縮や筋力の低下は身体機能を低下させ、寝たきり等の原因となる。また、筋萎縮や筋力の低下を基盤とする日常生活動作中の転倒、及びそれに伴う骨折は、高齢者の主要な寝たきり原因であり、その後のQOLに重大な悪影響をもたらすと考えられる。
【0004】
したがって、高齢者の生活機能を改善し健康寿命を延伸するためには、加齢に伴って生じる筋機能の低下を抑制し、運動能力を維持することが重要である。
【0005】
老化は遺伝的要因や環境的要因により進行するが、食事・運動といった生活習慣を始めとする環境的要因を改善することで遅らせることは可能であると考えられている。これまでに運動能力低下を防ぐ手段としては、適度な運動などを実践する、あるいはリハビリテーションを実践する等が挙げられるが、モチベーションの維持の困難さや怪我の恐れもあり、現実的にはなかなか難しく、より効果的な方法が望まれていた。
【0006】
かかる観点から、栄養学的アプローチにより、運動能力を調節しうる成分の探索が行われている。例えば、シスチン及びテアニンによる老化防止(特許文献1)、果実ポリフェノールによる筋萎縮抑制(特許文献2)、リコピンによる筋蛋白分解抑制(特許文献3)、カルボキシル基を2つ以上有する有機酸又はその塩類を有効成分とした運動能力低下抑制(特許文献4)、アスタキサンチン及び/又はそのエステルによる疲労予防剤(特許文献5)、プロアントシアニジンによる筋萎縮抑制剤及び運動能力向上剤(特許文献6、特許文献7)等が開示されている。しかしながら、実際の老化に伴う筋力の低下や筋萎縮に対する効果は検討されていないのが現状である。
【0007】
一方、緑茶、紅茶、カカオ豆等に含まれているカテキン類には、コレステロール上昇抑制作用(特許文献8)、血糖上昇阻害作用(特許文献9)、動脈硬化防止作用(特許文献10)、持久力向上作用(特許文献11)、筋ジストロフィ抑制作用(非特許文献1)等生理作用があることが知られている。
【0008】
分岐鎖アミノ酸であるロイシン、バリン及びイソロイシンは耐糖能異常治療薬剤(特許文献12)、瞬発力・持久的筋力維持剤(特許文献13)、筋肉痛・筋肉のこりとはり解消剤(特許文献14)として有用であることが知られている。中でもロイシンは、インスリン分泌促進作用(非特許文献2)や筋タンパク質合成作用(非特許文献3)等の作用が報告されている。しかしながら、カテキン類とアミノ酸類、また両者の併用が老化に伴う筋重量や筋力の低下抑制に及ぼす作用についてはこれまで全く知られていない。
【特許文献1】国際公開第2005/123058号パンフレット
【特許文献2】特開2001−89387号公報
【特許文献3】特開2004−59518号公報
【特許文献4】特開平10−17585
【特許文献5】特開2006−16409
【特許文献6】特開2002−338464号公報
【特許文献7】特開2005−97273号公報
【特許文献8】特開昭60−156614号公報
【特許文献9】特開平4−253918号公報
【特許文献10】特開平4−352726号公報
【特許文献11】特開2005−89384号公報
【特許文献12】特開2006−28194号公報
【特許文献13】特開2000−26290号公報
【特許文献14】特開2000−26289号公報
【非特許文献1】Dorchies OM et al, Am J Physiol, vol.290, No.2, pp616-25, 2006
【非特許文献2】Brouwer AE et al, Pancreas, vol.6, No.2, pp221-8, 1991
【非特許文献3】Crozier SJ et al, J Nutr, vol. 135, No.3, pp376-82, 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、優れた筋肉老化抑制作用を示し、筋力低下抑制、筋萎縮抑制、運動機能向上又は寝たきり予防に有効であり、食経験が豊富で安全性の高い医薬品、医薬部外品及び飲食品を提供することに関する。
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、カテキン類と分岐鎖アミノ酸及びタウリンから選ばれるアミノ酸類の併用が加齢による筋力低下、筋萎縮抑制作用、運動機能向上及び寝たきり予防を有し、筋肉老化抑制剤等として有用であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、(a)カテキン類、並びに(b)分岐鎖アミノ酸及びタウリンから選ばれるアミノ酸類を有効成分とする筋肉老化抑制剤を提供するものである。
また本発明は、(a)カテキン類、並びに(b)分岐鎖アミノ酸及びタウリンから選ばれるアミノ酸類を有効成分とする運動機能向上剤を提供するものである。
また本発明は、(a)カテキン類、並びに(b)分岐鎖アミノ酸及びタウリンから選ばれるアミノ酸類を有効成分とする寝たきり予防剤を提供するものである。
また本発明は、(a)カテキン類、並びに(b)分岐鎖アミノ酸及びタウリンから選ばれるアミノ酸類を含有する筋力老化抑制用飲食品、運動機能向上用飲食品又は寝たきり予防用飲食品を提供するものである。
更に本発明は、(a)カテキン類、並びに(b)分岐鎖アミノ酸及びタウリンから選ばれるアミノ酸類の筋肉老化抑制剤、運動機能向上剤又は寝たきり予防剤としての使用を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の筋肉老化抑制剤、筋力低下抑制剤、筋萎縮抑制剤又は寝たきり予防剤は、長期間投与又は摂取しても安全性が高いカテキン類及び特定のアミノ酸類を有効成分とするものであり、加齢に伴い生じる筋力の低下や筋萎縮を抑制する効果を発揮する飲食品、医薬品等として有用である。また本発明の運動機能向上剤は筋力等の運動機能を向上させる作用を有する飲食品、医薬品等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、「筋萎縮」とは、筋細胞の減少や縮小により筋量が低下することをいい、長期間の安静臥床や骨折などによるギプス固定、あるいは微小重力暴露によるもの(廃用性筋萎縮という。)、加齢(老化ともいう)に伴うもの(サルコペニアという。)が挙げられる。したがって「筋萎縮の抑制」とは、不活動や加齢に伴う筋量の低下を抑制することを指す。
また、「筋肉老化」とは、加齢に伴って生じる筋肉の衰え、例えば筋機能低下や筋萎縮を指す。「運動機能向上」とは、筋機能(筋力)の低下を抑制させることによって運動能力を維持又は向上することを指す。
また、本発明において、「筋機能低下」とは、筋萎縮に伴って、筋が構造的あるいは質的に変化し、筋力、筋持久力、筋瞬発力が低下することを示す。したがって「筋機能低下の抑制」とは、筋力、筋持久力、筋瞬発力の低下を抑制することを指す。
また、「寝たきり」とは、特に老化、例えば30代以降の中高年においてみられる廃用性筋萎縮とサルコペニアとが複合した症状、例えば、高齢者の脳卒中や骨折等の治療や療養等において運動量が極度に少なくなり、さらに筋機能が低下し、寝かせきり状態からつくられるものを指す。
【0014】
本発明における(a)カテキン類とは、カテキン、カテキンガレート、ガロカテキン及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類並びに、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類の総称であり、これらの一種以上を含有するのが好ましい。また、カテキン類は、非重合体であるのが好ましい。
【0015】
本発明に使用するカテキン類は、一般的には茶葉から直接抽出すること、又はその茶抽出物を濃縮若しくは精製することにより得ることができるが、他の原料由来のもの、カラム精製品及び化学合成品でもあってもよい。
【0016】
当該茶抽出は、Camellia属、例えばC. sinensis、C. assamica、又はそれらの雑種から得られる茶葉から製茶された茶葉に、水又は熱水やこれらに抽出助剤を添加し、攪拌抽出等をすることにより行うことができる。また、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法を併用してもよい。抽出助剤としては、アスコルビン酸ナトリウム等の有機酸、又はこれら有機酸塩類が挙げられる。
当該製茶された茶葉には、(1)煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜煎り茶等の緑茶類;(2)総称して烏龍茶と呼ばれる鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の半発酵茶;(3)紅茶と呼ばれるダージリン、ウバ、キーマン等の発酵茶が含まれる。
【0017】
当該茶抽出物の濃縮は、上記抽出物を濃縮することにより行うことができ、当該茶抽出物の精製は、溶剤やカラムを用いて精製することにより行うことができる。茶抽出物の濃縮物や精製物の形態としては、固体、水溶液、スラリー状等種々のものが挙げられる。
例えば、当該茶抽出物は、特開昭59−219384号、特開平4−20589号、特開平5−260907号、特開平5−306279号等に詳細に例示されている方法で調製することができる。また、市販品を用いることもでき、斯かる市販品としては、三井農林(株)「ポリフェノン」、(株)伊藤園「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」、サントリー(株)「サンウーロン」等が挙げられる。
【0018】
当該茶抽出物中のカテキン類は、非重合体で存在し、かつ液に溶解しているもの又は茶の微細粉末の懸濁物に吸着若しくは包含された固形状のものとして存在する。
また、当該抽出物中のカテキン類の含有量は、30〜98質量%、好ましくは40〜90質量%である。また、これらの総ポリフェノール中のカテキン類の含有率は、製造直後でカテキン量が10質量%以上で、好ましくは20質量%以上である。
【0019】
また、茶葉中のカテキン類の大部分はエピ体カテキン類として存在しており、このエピ
体カテキン類を用いて熱や酸やアルカリ等の処理により立体異性体である非エピ体に変化させることができる。従って、非エピ体カテキン類を使用する場合には、緑茶類、半発酵茶類又は発酵茶類からの抽出液や茶抽出液の濃縮物を水溶液にして、例えば40〜140℃、0.1分〜120時間加熱処理して得ることができる。また非エピカテキン類含有量の高い茶抽出液の濃縮物を使用してもよい。それらは単独又は併用してもよい。
【0020】
本発明に用いる(b)アミノ酸類のうち、分岐鎖アミノ酸とは、構造上に分岐鎖をもつアミノ酸で、このうち、ロイシン、イソロイシン、バリンが好ましい。本発明においてはバリン、ロイシン、イソロイシン、タウリンのうち少なくとも1種をカテキン類と共に使用するのが好ましい。入手方法としては、市販品を用いても良く、公知の方法に基づき製造することも可能である。
【0021】
本発明にかかる有効成分として使用する(b)アミノ酸類の異性体に関しては、L−体、D−体、DL−体のいずれの異性体も使用可能である。しかしながら、天然に存在する観点からL−体が好ましい。
【0022】
本発明の(a)カテキン類及び(b)前記アミノ酸類の組み合せは、後記実施例に示されるように、(a)カテキン類又は(b)前記アミノ酸類をそれぞれ単独の場合に比べて顕著に優れた加齢による筋力低下抑制作用や筋萎縮抑制作用並びに運動機能向上作用を有することから、ベッドレスト者や高齢者、運動不足者における筋力低下抑制剤、筋萎縮抑制剤及び寝たきり予防剤として使用できるのみならず、あらゆる人々の老化に対処するために用いることができる。そして、当該筋肉老化抑制剤、筋力低下抑制剤、筋萎縮抑制剤、運動機能向上剤又は寝たきり予防剤(以下、筋肉老化抑制剤等とする。)は、各効果を発揮する、ヒト若しくは動物用の医薬品、医薬部外品、飲食品として使用可能である。
【0023】
本発明にかかる組成物には、医薬品、医薬部外品、飲食品の形態で使用する場合、本発明の(a)カテキン類及び(b)前記アミノ酸類以外に他の成分を併用、使用することができる。例えば、必要に応じてアルギニン、グリシン、リジン、アラニン、シスチン、システイン、チアニン、メチオニン等のその他のアミノ酸、ビタミン類、カルノシン等のジペプチド類、無機塩類、医薬品や医薬部外品、飲食品に通常含有せしめる補助的成分を任意に添加することができる。
【0024】
本発明にかかる組成物は、医薬品として、錠剤及び粉末のような固形投薬形態、あるいはエリキシロール、シロップ及び懸濁液のような液体投薬形態で経口投与される。経口投与薬として使用する場合の補助剤としては、例えば固形粉末状の担体、グルコース、ラクトース、サッカロースなどの糖、セルロース等が挙げられる。潤滑剤として二酸化珪素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール等、結合剤としてデンプン、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が例示できる。崩壊剤としてはデンプン、寒天等がある。
【0025】
また、本発明にかかる組成物は、適当量の栄養補給が困難な高齢者やベッドレスト状態の病者においては、経腸栄養剤等の栄養組成物の形態で投与される。
【0026】
このような栄養組成物の一例として、蛋白質(蛋白質源としてはアミノ酸バランスのとれた栄養価の高い乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン等の蛋白質が最も広く使用されるが、これらの分解物、卵白のオリゴペプチド、大豆加水分解物等も使用される)、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料等が配合された栄養組成物が挙げられる。本栄養組成物は、原料を適当な溶媒に溶解、混合した後、ホモジナイザー等で均質化し、容器に充填したのちレトルト殺菌等により殺菌することによって、液状の製剤を得ることができる。また、噴霧乾燥等により、これを粉末状の製剤とすることもできる。
【0027】
本発明の有効成分として投与される(a)カテキン類の量は、投与される患者の性別、年齢、体重、症状の程度等によって異なるが、成人に対して1日あたり、100〜3000mg/60kg体重とするのが好ましく、特に250〜2000mg/60kg体重、更に250〜1000mg/60kg体重とするのが好ましい。
【0028】
本発明の有効成分として投与される(b)前記アミノ酸類の総量は、投与される患者の性別、年齢、体重、症状の程度等によって異なるが、成人に対して1日あたり、100〜60000mg/60kg体重とするのが好ましく、特に500〜20000mg/60kg体重、更に1000〜6000mg/60kg体重とするのが好ましい。分岐鎖アミノ酸については、ロイシンは1日当たり300mg〜20000mg含有することが好ましく、500〜4000mg含有するのが更に好ましい。イソロイシンは300mg〜20000mg含有することが好ましく、500〜3000mg含有するのが更に好ましい。バリンは300〜20000mg含有することが好ましく、500〜3000mg含有するのが更に好ましい。タウリンは1日当たり300〜10000mg投与することが好ましく、500〜3000mg投与することが更に好ましい。
【0029】
本発明の有効成分として組成物中に含まれる分岐鎖アミノ酸は、イソロイシン、ロイシン及びバリンの混合物を使用することが好ましい。この場合、イソロイシン:ロイシン:バリンの重量配合比においてイソロイシン/ロイシン/バリン=1〜1.1/1.9〜2.2/1〜1.3となるような組成範囲で使用することがより好ましい。
【0030】
また、本発明の飲食品の形態としては、チーズ(ナチュラル、プロセス)、アイスクリーム、ヨーグルト、その他乳製品、ソース、スープ、ふりかけ、和菓子類(せんべい等)、洋菓子類(ポテトチップス、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、チョコレート、チューインガム等)、焼き菓子類(カステラ、ケーキ、ドーナッツ、ビスケット、クッキー、クラッカー等)、炭酸系飲料、非炭酸系飲料(果汁飲料、ネクター飲料等)、清涼飲料、スポーツ飲料、ニアウォーター、茶、コーヒー、ココアなど非アルコール飲料等の一般食品の形態を挙げることができる。本発明の飲食品は、カテキン類及びアミノ酸類を一般食品の原料とともに配合し、通常の方法により加工製造することができる。
【0031】
例えば、本発明の飲料は、長期摂取できる味及び安定性、並びに効果の点から、カテキン類を、飲料500mL当り合計量50〜2500mg含有するが、好ましくは200〜2500mg、より好ましくは300〜1300mg、更に好ましくは400〜1000mg含有するのが、味の点から好ましい。
また、(a)カテキン類の含有量の30〜98重量%、好ましくは40〜90重量%が、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキン、ガロカテキンから選ばれたものであると、飲料としての呈味が更に優れ、後を引くような収斂性も少なく好ましい。ここでエピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキン、ガロカテキンは1種以上含有するが、通常は全て含有される。
【0032】
また、本発明の飲料は、(a)カテキン類に加え、(b)前記アミノ酸類を、飲料500mL当り合計量100〜60000mg含有するが、500〜20000mgが好ましく、500〜10000mgがより好ましく、1000〜6000mg含有するのが更に好ましい。
各アミノ酸については、ロイシンは飲料500mL当たり100mg〜20000mg含有することが好ましく、500〜4000mg含有するのが更に好ましい。イソロイシンは100mg〜20000mg含有することが好ましく、500〜3000mg含有するのが更に好ましい。バリンは100〜20000mg含有することが好ましく、500
〜3000mg含有するのが更に好ましい。タウリンは100〜10000mg含有することが好ましく、500〜3000mg含有するのが更に好ましい。
【0033】
飲料のpHは、25℃で3〜7、好ましくは4〜7、特に5〜7とするのが、味及びカテキン類の化学的安定性の点で好ましい。
【0034】
本発明の飲料には、茶由来の(a)カテキン類成分及び(b)前記アミノ酸類の他、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、ビタミン類、pH調整剤、品質安定剤等を単独、あるいは併用して配合しても良い。
【0035】
本発明の筋肉老化抑制剤等は果汁などの他の飲料成分と組み合わせることで、例えば茶系飲料、炭酸飲料、果実エキス入り飲料、野菜エキス入りジュースや、ニアウォーター、スポーツ飲料、ダイエット飲料などを提供することが可能である。
また本発明においては、長時間保存時に安定した色調と外観の透明性を呈する飲料に、消費者の嗜好にあわせて茶葉の微粉末のような不溶性化合物をあえて懸濁させた形態の飲料も可能である。尚、本発明の飲料において必ずしも有効成分が溶解している必要はない。
【0036】
飲料として飲用する場合には、使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などの通常の形態で提供することができる。ここでいう飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。
【0037】
また本発明の飲料は、例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で製造される。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度まで冷却して容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。更に、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻すなどの操作も可能である。
【0038】
非飲料製剤中の(a)カテキン類の配合量は、その使用形態により異なるが、食品やペットフード等の場合、通常0.01〜5重量%、更に0.05〜5重量%、特に0.1〜1重量%とするのが好ましい。上記以外の医薬品、例えば錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の経口用固形製剤、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤等の場合、通常0.01〜95重量%、更に5〜90重量%、特に10〜80重量%とするのが好ましい。
【0039】
非飲料製剤中に(a)カテキン類に加えて配合される(b)前記アミノ酸類の量は、その使用形態により異なるが、食品やペットフード等の場合、通常0.01〜5重量%、更に0.1〜5重量%、特に0.2〜2重量%とするのが好ましい。上記以外の医薬品、例えば錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の経口用固形製剤、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤等の場合、通常0.01〜95重量%、更に5〜90重量%、特に10〜80重量%とするのが好ましい。
【0040】
本発明の食品による(a)カテキン類の投与量(有効摂取量)は、一日当り100〜3000mg/60kg体重とするのが好ましく、特に250〜2000mg/60kg体重、更に250〜1000mg/60kg体重とするのが好ましい。投与量は、投与され
る患者の性別、年齢、体重、症状の程度等によって異なることは明らかである。
【0041】
本発明の食品による(b)前記アミノ酸類の投与量(有効摂取量)は、1日あたり、100〜60000mg/60kg体重とするのが好ましく、特に500〜20000mg/60kg体重、更に1000〜6000mg/60kg体重とするのが好ましい。
【0042】
以下、本発明を更に詳しく説明するため、本発明組成物につき行った試験例を挙げ、次いで本発明組成物の調製例を実施例として挙げる。
【実施例】
【0043】
試験例1 (a)カテキン類及び(b)前記アミノ酸類の筋肉老化抑制効果
(a)カテキン類として、総カテキン量81%の茶抽出物を用いた。また、カテキン類の組成は、ガロカテキン(7%)、ガロカテキンガレート(4%)、エピカテキン(9%)、エピガロカテキン(23%)、エピカテキンガレート(12%)、エピガロカテキンガレート(41%)、その他(4%)であった。また、(b)アミノ酸類として、ロイシンを用いた。
【0044】
10週齢のSAM−P1雄性マウス(老化促進モデルマウス)及びSAM−R1雄性マウス(通常老化マウス)を個別飼育にて5週間予備飼育した後、各系統の体重に差がないようにSAM−R1対照群、SAM−P1対照群、SAM−P1カテキン群、SAM−P1ロイシン群、SAM−P1カテキン/ロイシン併用群に群分けした(各群8匹)。表1に示す配合で調整した食餌を用いて9週間飼育した。尚,各マウスには流水プールを用い、10m/分の速度で3分間の運動を一日に5回、週に4日負荷した。
【0045】
【表1】

【0046】
9週間飼育後に、マウスを解剖に供し、単離したヒラメ筋を37℃のKrebs溶液中(通気条件:95%−酸素,5%−二酸化炭素)で、トランスデューサー(FORT100:World Precision Instruments,Inc.)に固定した。その後、電気刺激(0.5m秒、140Hz)を施し、最大筋力を測定した。筋力の測定結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
表2の結果から、老化促進モデルマウスであるSAM−P1対照群のヒラメ筋の最大筋力は通常老化マウスであるSAM−R1対照群に対して有意に減少しており、老化に伴い最大筋力は低下することがわかる。また、カテキン類あるいはロイシンを配合した飼料を摂取したマウスの最大筋力はSAM−P1対照群に対して有意な差は認められなかったのに対して、カテキン類とロイシンの併用は老化による筋力の低下を有意に抑制したことがわかる。
以上のことから、本発明のカテキン類/アミノ酸類の併用は老化に伴う筋力低下抑制剤として有用である。またSAM−P1対照群と比較し、カテキン/ロイシン併用群では筋力が向上したことから、カテキン/ロイシンの併用は運動機能の向上に有効である。
【0049】
試験例2 カテキン類及びアミノ酸類の筋肉萎縮抑制効果
カテキン類として、総カテキン量81%の茶抽出物を用いた。また、カテキン類の組成は、ガロカテキン(7%)、ガロカテキンガレート(4%)、エピカテキン(9%)、エピガロカテキン(23%)、エピカテキンガレート(12%)、エピガロカテキンガレート(41%)、その他(4%)であった。また、アミノ酸類として、ロイシンを用いた。
【0050】
13週齢のSAM−P1雄性マウス(老化促進モデルマウス)及びSAM−R1雄性マウス(通常老化マウス)を個別飼育にて5週間予備飼育した後、各系統の体重に差がないようにSAM−R1対照群、SAM−P1対照群、SAM−P1カテキン/ロイシン併用群に群分けした(各群8匹)。表3に示す配合で調整した食餌を用いて9週間飼育した。尚,各マウスには流水プールを用い、10m/分の速度で3分間の運動を一日に5回、週に4日負荷した。
【0051】
【表3】

【0052】
9週間飼育後に、マウスを解剖に供し、腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋、長趾伸筋、大腿四頭筋を摘出した後、重量を測定し、総筋肉重量を求めた。体重当たりの総筋肉重量を表4に示す。
【0053】
【表4】

【0054】
表4の結果から、老化促進モデルマウスであるSAM−P1対照群の体重に占める筋肉重量は通常老化マウスであるSAM−R1対照群に対して有意に減少しており、老化に伴い筋肉は萎縮することがわかる。また、カテキン類及びロイシンを配合した飼料を摂取したマウスの筋肉重量はSAM−P1対照群に対して有意に大きいことがわかる。
以上のことから、本発明のカテキン類/アミノ酸類の併用は老化に伴う筋萎縮抑制剤として有用である。
【0055】
調製例1(筋肉老化抑制用茶系飲料)
表5に示した配合及び条件で、本発明の筋肉老化抑制用アミノ酸配合茶系飲料を調製した。本飲料の保存安定性及び風味は良好であった。
【0056】
【表5】

【0057】
調製例2(筋肉老化抑制用非茶系飲料)
表6に示した配合及び条件で、本発明の筋肉老化抑制用アミノ酸配合スポーツ飲料を調製した。本飲料の保存安定性及び風味は良好であった。
【0058】
【表6】

【0059】
調製例3(筋肉老化抑制用経腸栄養剤)
乳カゼイン3.4g、分離大豆タンパク質1.67g、デキストリン14.86g、ショ糖1.3g、大豆油1.75g、シソ油0.18g、大豆リン脂質0.14g、グリセリン脂肪酸エステル0.07g、ミネラル類0.60g、ビタミン類0.06g、テアフラン90s(伊藤園)0.11g、ロイシン0.18g、イソロイシン0.09g、バリン0.09gに精製水を加え、常法に従い、レトルト殺菌し、カテキン類及びアミノ酸類を含有する筋肉老化抑制用経腸栄養剤(100mL)を得た。ミネラル類は、Na、K、Ca、Mg、P、C1、Feなどの有機又は無機塩混合物、ビタミン類は、ビタミンA、D、E、ビタミンB1、B2、B6、B12、C、ナイアシン、パントテン酸などの混合物を
、国民栄養所要量に合致した量を用いた。
【0060】
調製例4(筋肉老化抑制用ゼリー食品)
カラギーナンとローカストビーンガムの混合ゲル化剤0.65%、グレープフルーツの50%の濃縮果汁5.0%、クエン酸0.05%、ビタミンC0.05%、テアビゴ(DSMニュートリショナル・プロダクツ)0.54%、ロイシン0.3%、イソロイシン0.15%、バリン0.15%、タウリン0.5%を混合し、これに水を加えて100%に調整し、65℃で溶解した。更に少量のグレープフルーツフレーバーを添加して85℃で5分間保持して殺菌処理後、100mLの容器に分注した。8時間静置して徐冷しながら5℃に冷却して、ゲル化させ、口に含んだ時に口溶け性が良好で、果実風味を有し食感良好なカテキン類及び分岐鎖アミノ酸を含有する筋肉老化抑制用ゼリー食品を得た。
【0061】
調製例5(筋肉老化抑制用ビタミン内服液)
タウリン800mg、ショ糖2000mg、カラメル50mg、安息香酸ナトリウム30mg、ビタミンB1硝酸塩5mg、ビタミンB2 20mg、ビタミンB6 20mg、ビ
タミンC 2000mg、ビタミンE 100mg、ビタミンD3 2000IU、ニコチン酸アミド20mg、ポリフェノン70S(三井農林)50mg、ロイシン200mg、イソロイシン100mg、バリン100mgを適量の精製水に加えて溶解し、リン酸水溶液でpH3に調節した後、更に精製水を加えて全量を50mLとした。これを80℃で30分滅菌して、カテキン類及びアミノ酸類を含有する筋肉老化抑制用飲料を得た。
【0062】
調製例6(筋肉老化抑制用チュアブル錠剤)
アスコルビン酸180mg、クエン酸50mg、アスパルテーム12mg、ステアリン酸マグネシウム24mg、結晶セルロース120mg、乳糖274mg、テアフラン90S(伊藤園)300mg、ロイシン600mg、イソロイシン300mg、バリン300mgなる処方で、日本薬局方(製剤総則「錠剤」)に準じて錠剤を製造し、カテキン類及びアミノ酸類を含有する筋肉老化抑制用チュアブル錠剤を得た。
【0063】
調製例7(筋肉老化抑制用錠剤)
下記処方に基づいて、常法によりカテキン類及びアミノ酸類を含有する老化抑制用錠剤を調製した。成分配合量(重量%):ポリフェノン70S(三井農林)5、ロイシン10、タウリン5、リンゴ酸ナトリウム20、パラチノース20、アスコルビン酸20、ビタミンミックス5、結晶セルロース5、ショ糖エステル4、二酸化ケイ素1、卵殻カルシウム5。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カテキン類、並びに(b)分岐鎖アミノ酸及びタウリンから選ばれるアミノ酸類を有効成分とする筋肉老化抑制剤。
【請求項2】
筋力低下抑制剤である請求項1記載の筋肉老化抑制剤。
【請求項3】
筋萎縮抑制剤である請求項1記載の筋肉老化抑制剤。
【請求項4】
(a)カテキン類、並びに(b)分岐鎖アミノ酸及びタウリンから選ばれるアミノ酸類を有効成分とする運動機能向上剤。
【請求項5】
筋力向上剤である請求項4記載の運動機能向上剤。
【請求項6】
(a)カテキン類、並びに(b)分岐鎖アミノ酸及びタウリンから選ばれるアミノ酸類を有効成分とする寝たきり予防剤。
【請求項7】
(a)カテキン類、並びに(b)分岐鎖アミノ酸及びタウリンから選ばれるアミノ酸類を含有する筋肉老化抑制用飲食品、運動機能向上用飲食品又は寝たきり予防用飲食品。
【請求項8】
(a)カテキン類、並びに(b)分岐鎖アミノ酸及びタウリンから選ばれるアミノ酸類の筋肉老化抑制剤、運動機能向上剤又は寝たきり予防剤としての使用。

【公開番号】特開2008−63321(P2008−63321A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186743(P2007−186743)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】