説明

筋芽細胞又は筋繊維から神経細胞への分化を誘導する化合物、これを含む薬学的組成物、神経細胞への分化を誘導する方法、及び神経細胞への分化を誘導する化合物を同定するスクリーニング方法

本発明は、筋芽細胞又は筋繊維から神経細胞への分化を誘導する化合物、これを含む薬学的組成物、神経分化を誘導する方法、及び神経分化を誘導する付加化合物を同定するスクリーニング方法に関するものである。本発明は、神経分化を誘導する化合物、上記化合物を含み、すべての薬学的に許容可能な異性体、塩、水和物、溶媒和物、及びそれらのプロドラッグを含む薬学的組成物、及び筋芽細胞又は筋繊維を上記化合物と共に培養して筋芽細胞又は筋繊維から神経細胞への分化を誘導する方法、そして筋芽細胞又は筋繊維を調査対象化合物共に培養した後、筋芽細胞又は筋繊維の神経細胞への分化を確認する段階を含む、筋芽細胞又は筋繊維から神経分化を誘導する付加化合物を同定するスクリーニング方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋芽細胞又は筋繊維から神経細胞への分化を誘導する化合物、これを含む薬学的組成物、神経分化を誘導する方法、及び神経分化を誘導する付加化合物を同定するスクリーニング方法に関するものである。より詳しくは、筋芽細胞又は筋繊維の神経分化に用いられるイミダゾール骨格を含む化合物に関するものである。いくつかの実施形態において、イミダゾール誘導体を含む薬学的組成物を提供する。他の実施形態において、筋芽細胞又は筋繊維を神経細胞に分化させる方法を提供する。その他に、筋芽細胞又は筋繊維から神経分化を誘導する化合物を同定するスクリーニング方法をさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物は、神経細胞が損傷すると再生されないが、神経細胞が損傷すると脳卒中、脊髄損傷、パーキンソン病、又はアルツハイマー病(J,Neurochem. 2005,93,1412 及び Neuron 2003,39,889)のような退行性神経疾患が発生する。近年、幹細胞研究の発展で心血管疾患、退行性神経疾患、筋骨格疾患、糖尿病、及び癌のような多数の病気を治療できる可能性が高くなった(Committee on the Biological and Biomedical Applications of Stem Cell Research,Stem Cells and the Future of Regenerative Medicine 2002, the National Academies Press, Washington, D.C)。しかしながら、幹細胞を利用した治療法は、1)移植可能な機能を有する再生可能な細胞源を同定すること、2)正確に幹細胞から目的とする細胞に分化させることができること、3)分化した細胞は患者の免疫系に反応しないこと、4)未分化幹細胞が癌細胞に転換されないこと、などの問題を解決しなければならない(Curr. Top. Med. Chem. 2005, 5, 383及びNat. Biotechnol. 2004,22,833)。
【0003】
なお、他に、神経細胞を得ることができる潜在力の大きい方法は、小分子を用いて筋芽細胞又は筋繊維のように容易に求められる細胞や組織を神経分化させる化学的方法である(Nature2002, 416, 485, Nature 2002, 418, 41及びScience2004, 303, 1669)。近年、小分子を用いて哺乳動物細胞を特定細胞に分化させるいくつかの研究結果が報告されている。例えば、パーモルファミン(Purmorphamine)を用いて中胚葉繊維芽細胞を骨芽細胞に分化させることができ(J. Am. Chem. Soc. 2002,124,14520)、カルディオゲノール及びTWS-119を用いて胚性幹細胞であるP19細胞を各々心筋細胞及び神経細胞に分化させることができる(J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 1590及びProc. Natl. Acad. Sci. USA 2003, 100, 7632)。したがって、神経分化を誘導することができる小分子は、退行性神経疾患の移植治療試験をするための神経細胞を得る際に非常に有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのために、従来技術から容易に求められる細胞や組織を用いて神経細胞に分化させるための組成物及び方法が要求されている。開発された小分子誘導体は、神経分化の分子的作用メカニズムの究明に重要な情報を得る際に利用でき、又、究極的にインビボでの神経再生ができるようにする。本発明はこれのみでなく他の要求を充足させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、筋芽細胞又は筋繊維を神経細胞に分化させることができる新規な化合物及び方法に関するものである。したがって、上記化合物は、退行性神経疾患治療のために筋芽細胞及び筋繊維から神経細胞を産生する際に用いることができる。
【0006】
本発明の第1の目的は、筋芽細胞又は筋繊維を神経分化させることができる化合物を提供することである。
本発明の第2の目的は、損傷神経細胞によって誘発された内科的機能障害又は内科的疾患を治療するために筋芽細胞又は筋繊維を神経分化させることができる活性成分として上記化合物を含む有用な薬学的組成物を提供することである。上記化合物は、全ての薬学的に許容可能な異性体、塩、水和物、溶媒和物及びそれらのプロドラッグを含む。
【0007】
本発明の第3の目的は、筋芽細胞又は筋繊維を神経分化させる方法を提供することである。すなわち、上記化合物を哺乳類の筋芽細胞又は筋繊維と共に培養するとこれらの細胞は神経細胞に分化する。
【0008】
本発明の第4の目的は、筋芽細胞又は筋繊維を神経分化させることができる付加化合物を同定するスクリーニング方法を提供することである。
本発明の他の実施形態は次に述べることから明確である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって開発される小分子は、神経細胞分化の分子的作用メカニズムの究明に重要な情報を得る際に利用でき、又、究極的に神経細胞の再生に利用して退行性神経疾患を治療することができるようにする効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、下記一般式(I)の新規なイミダゾール誘導体を提供する。
【0011】
【化1】

上記式中、Rは水素、C0-4アルキルアリール、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、及び-[(CH)O]0-3-(CH)NHからなる官能基より選択されるいずれか1つであるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
上記式中、Rはアルキル、C3-8シクロアルキル、C0-4アルキルアリール、及びアルケニルアリールからなる官能基より選択されるいずれか1つであるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
上記式中、Rはアルキル、C3-8シクロアルキル、C0-4アルキルアリール、及びアルケニルアリールからなる官能基より選択されるいずれか1つであるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
上記式中、Rはアルキル、C3-8シクロアルキル、C0-4アルキルアリール、及びアルケニルアリールからなる官能基より選択されるいずれか1つであるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
好ましい化合物は、上記Rが下記より選択される官能基を有している誘導体を含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
【化2】

好ましい化合物は、上記Rが下記より選択される官能基を有している誘導体を含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
【化3】

好ましい化合物は、上記RとRが下記より選択される官能基を有している誘導体を含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
【化4】

本発明のさらに好ましい化合物は、下記記載の化合物であるが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0019】
【化5】

上記化合物の中で、特に好ましい化合物は次の構造を有している化合物である。
【0020】
【化6】

又、本発明は、全ての薬学的に許容可能な異性体、塩、水和物、溶媒和物、及びそれらのプロドラッグを提供する。
【0021】
又、本発明は、筋芽細胞又は筋繊維を本発明の化合物で処理し、筋芽細胞又は筋繊維から神経細胞への分化を誘導する方法を提供する。
又、本発明は、筋芽細胞又は筋繊維を本発明の化合物と共に培養した後、筋芽細胞又は筋繊維の神経細胞への分化を確認する段階を含む筋芽細胞又は筋繊維から神経分化を誘導する付加化合物を同定するスクリーニング方法を提供する。
【0022】
筋芽細胞又は筋繊維から神経分化を誘導する方法
本発明に係る化合物は、筋芽細胞又は筋繊維を神経分化させる際に用いることができる。筋芽細胞を多様な濃度の一般式(I)の化合物(或いはその組成物)と共に培養すると、これらの細胞は神経細胞に分化する。又、分離した骨格筋繊維で生成された衛星筋前駆細胞を多様な濃度の一般式(I)の化合物(或いはその組成物)で処理すると、これらの細胞は神経細胞に分化する。又は、骨格筋から分離した筋繊維を先にミオセベリン(Myoseverin)で処理する。ミオセベリンはネズミ科筋芽細胞(C2C12)を筋管に分化させる効果と類似し、筋繊維を過収縮させて繊維周囲に現れる分離した繊維破片、衛星細胞及びその他の分離した細胞になるようにする(Nat. Biotechnol. 2000, 18, 304)。これらの細胞を再塗抹し、多様な濃度の一般式(I)の化合物(或いはその組成物)と共に培養すると、これらの細胞は神経細胞に分化する。
【0023】
上記ニューロダジン(Neurodazine)1〜4のような一般式(I)の化合物濃度は、筋芽細胞又は筋繊維の神経細胞への分化の誘導を促進するために好適に調節することができる。一般に、ニューロダジン1〜4の濃度は0.5μM〜20μMの濃度で細胞と共に培養され、1μMの濃度が最も一般的である。
【0024】
好ましい筋芽細胞は、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウシ、ヤギ、チンパンジー、及びヒトのような任意の哺乳動物から得ることができる。筋芽細胞は、筋肉検体から分離された1次培養セルライン(筋繊維を取り囲む衛星細胞又は筋繊維をミオセベリンで処理して得た筋原細胞)を意味し、又はC2C12細胞のように商業的に購入可能な形質転換されたセルラインを意味する。筋芽細胞は、細胞培養に適した条件で培養させる。この条件とは、37℃、5%二酸化炭素が入っている空気中で培養することを含む。細胞は、本発明の方法により細胞培養用プラスチック皿、培養用フラスコ、又はローラーボトルで培養させる。細胞培養に適した容器はマルチウェルプレート、ペトリ皿、組織培養チューブ、培養用フラスコ及びローラーボトルなどを含む。
【0025】
本発明で用いられる細胞培養液は、あらかじめ混合した粉や滅菌溶液の形態で購入して使用する。一般的に多用されている培養液は、MEM-α、DME、RPMI 1640、DMEM、Ham’s F-10、Iscove’s complete media、又はMcCoy’s培養液である。特に、RPMI 1640、DMEM及びHam’s F-10培養液が本発明の方法で用いられる。細胞培養液は、一般的に熱により不活性化された血清を5〜20%添加して用いる。特に、10%ウシ胎児血清が本発明の方法で用いられる。一般的に細胞培養液は細胞をpH7.2〜7.4に維持させる。通常的に培養液には抗生剤、アミノ酸、糖、成長因子を含む添加剤を用いる。
【0026】
本発明の一態様は、筋芽細胞又は筋繊維を神経細胞に分化させる方法を提供する。一実施形態として、筋芽細胞をニューロダジン1〜4を含む組成物と共に培養するとこれらの細胞は神経細胞に分化する。神経細胞への分化を確認するために、神経細胞特異的蛋白質の発現を調べたり、細胞の形態変化を観察したり、或いは100mM KClの存在下でFM1-43によって処理した後、細胞の蛍光強度を測定するなどの従来から知られている任意の方法を用いる。
【0027】
例えば、神経細胞は、神経特異的エノラーゼ、ニューロフィラメント200及び神経特異的ベータIII−チューブリンのような神経特異的蛋白質を発現する。これら蛋白質の発現はこれら蛋白質の発現レベルを測定して確認する。細胞特異的標識蛋白質の発現レベルは、標識蛋白質に選択的に結合する抗体を用いて免疫細胞化学的解析、ウエスタンブロット解析、ELISAなどのような免疫測定法によって好都合に調べられる。免疫測定法において蛋白質特異的抗体を用いた蛋白質の検出は従来技術に既に公知である(Harlow & Lane, Antibodies: A Laboratory Manual(1998))。
【0028】
神経突起の形成による細胞の形態変化は、神経細胞分化の兆候であり、従来技術に既に公知の任意の方法を用いて検出することができる。一般的に細胞の形態変化は光学顕微鏡を用いて確認する。
【0029】
なお、神経細胞の分化は、100mM KClの存在下でFM1-43と共に培養した後、細胞の蛍光強度を測定することにより確認することができる。高い濃度のK+の存在下で脱分極以後にシナプス小胞が神経細胞に再循環して入り込む時、FM1-43は神経細胞内に入り込む。したがって、分化した神経細胞は強い蛍光信号を有する(Genes & Development 2004, 18, 889)。
【0030】
筋芽細胞又は筋繊維を神経分化させる化合物のスクリーニング方法
本発明の一実施形態は、筋芽細胞又は筋繊維を神経分化させる付加化合物をスクリーニングする方法を提供する。神経分化を誘導すると見込まれる、調査の対象となる化合物を筋芽細胞と共に培養する。筋芽細胞の神経細胞への分化は、光学顕微鏡を用いて化合物で処理された細胞の形態変化(特に神経突起の形成)を観察し、又は100mM KClの存在下でFM1-43によって処理した後、細胞の蛍光強度を測定することにより検出することができる。筋芽細胞が神経細胞に分化されたことを確認するために、筋芽細胞を少なくとも2つの別個の培地で培養した後、それぞれの培地で筋芽細胞が神経細胞に分化するか確認する。筋芽細胞を神経細胞に変えるということが確認された化合物を神経細胞分化誘導化合物(hit)とする。
【0031】
好ましい一実施形態において、ハイスループット・スクリーニング法は、多数の薬品候補物質群を含んだ化合物ライブラリーを提供するものである。次に、上記ライブラリーの中で神経分化誘導活性を有する候補を同定するために、1つ以上の分析方法で上記複合化学物質ライブラリーをスクリーニングする。同定された化合物はリード化合物として用いることができ、又は、有力な治療剤として若しくは実際に治療剤として用いることができる。
【0032】
治療方法
本発明の他の実施形態は、神経細胞に分化された細胞を患者に投与して疾患又は障害を治療する方法を提供する。この実施形態において、筋芽細胞を一般式(I)の化合物(例えば、ニューロダジン1〜4、又はそれらの組成物)と共に培養すると、筋芽細胞は神経細胞に分化する。又は分離した筋繊維から生成された衛星筋前駆細胞を一般式(I)の化合物(例えば、ニューロダジン1〜4、又はそれらの組成物)で処理すれば、前駆細胞は神経細胞に分化する。又は筋繊維をミオセベリンで処理した後、得られた筋前駆細胞を一般式(I)の化合物(例えば、ニューロダジン1〜4又はそれらの組成物)で処理すると前駆細胞は神経細胞に分化する。分化した神経細胞は、治療が必要な患者に移植する。
【0033】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。しかし、本発明の範囲はこれら実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
2-{2-[5-(3-クロロフェニル)]フラニル}-4,5ビス(4-メトキシフェニル)イミダゾール(化合物1すなわちニューロダジン1)の合成
5-(3-クロロフェニル)フルフラール(10mg、0.048mmol)、アンモニウムアセテート(NHOAc)(44mg、0.57mmol)、4,4’-ジメトキシベンジル(13mg、0.048mmol)を、酢酸(CHCOH、500μl)に加えた後、上記懸濁液を100℃に加熱した。6時間振とうした後、上記反応混合液をエチルアセテートで希釈し、飽和NaHCO及び塩水で洗浄した。有機層を減圧濃縮した。得られた化合物はフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
【0035】
【化7】

1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 12.85 (s, 1 H), 7.96 (s, 1 H), 7.77 (d, 1 H,J = 7.5 Hz), 7.50-7.35 (m, 5 H), 7.28 (d, 1 H, J = 7.5 Hz), 7.17 (s, 1 H), 7.02 (s, 1 H), 6.98-6.83 (m, 4 H), 3.72 (s, 6 H).
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 158.4, 150.9, 146.0, 137.5, 133.9, 131.9, 130.5, 129.5, 128.5, 127.1, 123.0, 122.1, 113.8, 109.3, 108.9, 55.02.
MALDI-TOF-MS calcd for C27H21ClN2O3 (M+H)+457.12, found 457.12
【実施例2】
【0036】
2-{2-[5-(3-クロロフェニル)]フラニル}-4,5-ビスフェニルイミダゾール(化合物3)の合成
5-(3-クロロフェニル)フルフラール(10mg、0.048mmol)、アンモニウムアセテート(NHOAc)(44mg、0.57mmol)、ベンジル(10mg、0.048mmol)を、酢酸(CHCOH、500μl)に加えた後、上記懸濁液を100℃に加熱した。6時間振とうした後、上記反応混合液をエチルアセテートで希釈し、飽和NaHCO及び塩水で洗浄した。有機層を減圧濃縮した。得られた化合物はフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
【0037】
【化8】

1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 13.02 (s, 1 H), 8.01 (s, 1 H), 7.85 (d, 1 H, J = 7.5 Hz), 7.61-7.50 (m, 4 H), 7.49-7.43 (m, 3 H), 7.42-7.20 (m, 6 H), 7.10 (s, 1 H).
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 151.0, 145.7, 138.1, 137.4, 134.7, 133.8, 131.8, 130.8, 130.6, 128.6, 128.1, 127.9, 127.2, 127.0, 126.6, 123.0, 122.2, 109.3.
MALDI-TOF-MS calcd for C25H17ClN2O (M+H)+397.10, found 397.10.
【実施例3】
【0038】
2-(2-フルオレニル)-4,5-ビス(4-フルオロフェニル)イミダゾール(化合物5)の合成
2-フルオレンカルボキシアルデヒド(9mg、0.048mmol)、アンモニウムアセテート(NHOAc)(44mg、0.57mmol)、4,4’-ジフルオロベンジル(12mg、0.048mmol)を、酢酸(500μl)に加えた後、上記懸濁液を100℃に加熱した。6時間振とうした後、上記反応混合液をエチルアセテートで希釈し、飽和NaHCO及び塩水で洗浄した。有機層を減圧濃縮した。得られた化合物はフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
【0039】
【化9】

1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 12.74 (s, 1 H), 8.33 (s, 1 H), 8.14 (d, 1 H, J = 7.5 Hz), 7.98 (d, 1 H, J = 7.5 Hz), 7.91 (d, 1 H, J = 7.0 Hz), 7.64-7.52 (m, 5 H), 7.39 (dd, 1 H, J = 6.5, 7.5 Hz), 7.37-7.12 (m, 5 H), 4.0 (s, 2 H).
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 161.3 (d, 243 Hz), 145.9, 143.4, 143.3, 141.2, 140.7, 136.2, 131.5, 130.3, 129.0, 128.7, 126.9, 126.8, 125.1, 124.0, 121.8, 120.1, 115.3, 36.4.
MALDI-TOF-MS calcd for C28H18F2N2 (M+H)+421.14, found 421.14.
【実施例4】
【0040】
2-(2-フルオレニル)-4,5-ビス(4-メトキシフェニル)イミダゾール(化合物7すなわちニューロダジン3)の合成
2-フルオレンカルボキシアルデヒド(9mg、0.048mmol)、アンモニウムアセテート(NHOAc)(44mg、0.57mmol)、4,4’-ジメトキシベンジル(13mg、0.048mmol)を、酢酸(CHCOH、500μl)に加えた後、上記懸濁液を100℃に加熱した。6時間振とうした後、上記反応混合液をエチルアセテートで希釈し、飽和NaHCO及び塩水で洗浄した。有機層を減圧濃縮した。得られた化合物はフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
【0041】
【化10】

1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 12.53 (s, 1 H), 8.30 (s, 1 H), 8.12 (d, 1 H, J = 7.5 Hz), 7.93 (d, 1 H, J = 7.5 Hz), 7.87 (d, 1 H, J = 6.5 Hz), 7.58-7.48 (m, 3 H), 7.47-7.40 (m, 2 H), 7.35 (dd, 1 H, J = 6.1, 6.7 Hz), 7.31-7.24 (m, 2 H), 6.98 (d, 2 H, J = 7 Hz), 6.86 (d, 2 H, J = 7.5 Hz), 3.97 (s, 2 H), 3.76 (s, 3 H), 3.72 (s, 3 H).
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 159.4, 158.6, 145.9, 144.1, 144.0, 141.5, 141.4, 137.2, 130.3, 129.7, 128.9, 128.6, 127.8, 127.5, 125.7, 124.6, 124.2, 122.3, 120.7, 114.7, 114.2, 55.8, 55.6, 37.1.
MALDI-TOF-MS calcd for C30H24N2O2 (M+H)+445.18, found 445.18.
【実施例5】
【0042】
1-(8-アミノ-3,6-ジオキサオクチル)-2-{2-[5-(3-クロロフェニル)]フラニル}-4,5-ビス(4-メトキシフェニル)イミダゾール(化合物2すなわちニューロダジン2)の合成
CHClに溶かした4-ニトロフェニルクロロフォーメイト(0.8g、4mmol)を、ワンレジン(Wang resin、1mmol)を含んだCHCl(9ml)及びピリジン(3ml)に添加した。12時間振とうした後、上記レジンを10%ジメチルホルムアミド(DMF)を含んだCHCl溶液で洗浄した。DMFに溶かした2,2’-(エチレンジオキシ)ビスエチレンジアミン(1.5g、10mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(0.6g、5mmol)を上記レジンに添加した。12時間振とうした後、上記レジンをDMFで洗浄した。上記レジン(7μmol)、5-(3-クロロフェニル)フルフラール(14mg、0.07mmol)、NHOAc(22mg、0.28mmol)、及び4,4’-ジメトキシベンジル(19mg、0.07mmol)を反応バイアルに入れた後、酢酸(300μl)で懸濁した。上記バイアルを振とう器上に置かれた100℃に加熱したヒートブロックに入れた。上記反応バイアルを5時間振とうした。上記レジンをろ過した後、DMF、MeOH、CHClを用いて数回洗浄した。トリフルオロ酢酸(TFA)を入れて1.5時間処理し、固体支持体から目的とする化合物を分離した。得られた化合物は、直ちに0.1%TFA/水に対して5〜100%CHCNの勾配で、85分以上、分取逆相HPLCで精製した。
【0043】
【化11】

1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.94 (s, 1 H), 7.83 (d, 1 H, J = 8.0 Hz), 7.53 (dd, 1 H, J = 7.5, 8.0 Hz), 7.47-7.39 (m, 5 H), 7.38-7.31 (m, 2 H), 7.12 (d, 2 H, J = 8.0 Hz), 6.89 (d, 2 H, J = 8.5 Hz), 4.38-4.32 (m, 2 H), 3.84 (s, 3 H), 3.72 (s, 3 H), 3.62 (t, 2 H, J = 4.3 Hz), 3.47 (t, 2 H, J = 4.3 Hz), 3.44-3.37 (m, 4 H), 2.92-2.84 (m, 2 H).
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 160.0, 158.9, 153.1, 141.4, 135.7, 133.9, 133.5, 132.8, 131.0, 130.9, 129.8, 128.3, 128.1, 123.4, 122.5, 119.6, 115.2, 114.6, 113.8, 109.5, 69.5, 69.3, 68.5, 66.5, 55.1, 55.0, 45.1, 38.3.
MALDI-TOF-MS calcd for C33H34ClN3O5 (M+H)+588.22, found 588.22.
【実施例6】
【0044】
1-(8-アミノ-3,6-ジオキサオクチル)-2-{2-[5-(3-クロロフェニル)]フラニル}-4,5-ビスフェニルイミダゾール(化合物4)の合成
CHClに溶かした4-ニトロフェニルクロロフォーメイト(0.8g、4mmol)をワンレジン(1mmol)を含んだCHCl(9ml)及びピリジン(3ml)に添加した。12時間振とうした後、上記レジンを10%DMFを含んだCHCl溶液で洗浄した。DMFに溶かした2,2’-(エチレンジオキシ)ビスエチレンジアミン(1.5g、10mmol)及びDIEA(0.6g、5mmol)を上記レジンに添加した。12時間振とうした後、上記レジンをDMFで洗浄した。上記レジン(7μmol)、5-(3-クロロフェニル)フルフラール(14mg、0.07mmol)、NHOAc(22mg、0.28mmol)、及びベンジル(15mg、0.07mmol)を反応バイアルに入れた後、酢酸(300μl)で懸濁した。上記バイアルを振とう器上に置かれた100℃に加熱したヒートブロックに入れた。上記反応バイアルを5時間振とうした。上記レジンをろ過した後、DMF、MeOH、CHClを用いて数回洗浄した。TFAを入れて1.5時間処理し、固体支持体から目的とする化合物を分離した。得られた化合物は、直ちに0.1%TFA/水に対して5〜100%CHCNの勾配で、85分以上、分取逆相HPLCで精製した。
【0045】
【化12】

1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.92 (s, 1 H), 7.81 (d, 1 H, J = 7.5 Hz), 7.61-7.55 (m, 3 H), 7.54-7.47 (m, 3 H), 7.45-7.35 (m, 5 H), 7.31-7.20 (m, 3 H), 4.40-4.32 (m, 2 H), 3.61 (t, 2 H, J = 4.9 Hz), 3.46 (t, 2 H, J = 4.3 Hz), 3.43-3.35 (m, 4 H), 2.92-2.83 (m, 2 H).
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 152.8, 142.7, 136.8, 134.8, 134.0, 131.4, 130.9, 130.8, 129.6, 129.2, 128.6, 128.3, 128.0, 127.5, 126.8, 123.4, 122.4, 114.4, 109.5, 69.6, 69.4, 68.7, 66.6, 45.0, 38.4.
MALDI-TOF-MS calcd for C31H30ClN3O3 (M+H)+528.20, found 528.20.
【実施例7】
【0046】
1-(8-アミノ-3,6-ジオキサオクチル)-2-(2-フルオレニル)-4,5-ビス(4-フルオロフェニル)イミダゾール(化合物6)の合成
CHClに溶かした4-ニトロフェニルクロロフォーメイト(0.8g、4mmol)をワンレジン(1mmol)を含んだCHCl(9ml)及びピリジン(3ml)に添加した。12時間振とうした後、上記レジンを10%DMFを含んだCHCl溶液で洗浄した。DMFに溶かした2,2’-(エチレンジオキシ)ビスエチレンジアミン(1.5g、10mmol)及びDIEA(0.6g、5mmol)を上記レジンに添加した。12時間振とうした後、上記レジンをDMFで洗浄した。上記レジン(7μmol)、2-フルオレンカルボキシアルデヒド(13mg、0.07mmol)、NHOAc(22mg、0.28mmol)、及び4,4’-ジフルオロベンジル(17mg、0.07mmol)を反応バイアルに入れた後、酢酸(300μl)で懸濁した。上記バイアルを振とう器上に置かれた100℃に加熱したヒートブロックに入れた。上記反応バイアルを5時間振とうした。上記レジンをろ過した後、DMF、MeOH、CHClを用いて数回洗浄した。TFAを入れて1.5時間処理し、固体支持体から目的とする化合物を分離した。得られた化合物は、直ちに0.1%TFA/水に対して5〜100%CHCNの勾配で、85分以上、分取逆相HPLCで精製した。
【0047】
【化13】

1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.07-7.93 (m, 3 H), 7.81 (d, 1 H, J = 7.5 Hz), 7.62 (d, 1 H, J = 6.5 Hz), 7.59-7.52 (m, 2 H), 7.48-7.32 (m, 5 H), 7.11-7.03 (m, 2 H), 4.18-4.10 (m, 2 H), 4.02 (s, 2 H), 3.33-3.17 (m, 8 H), 2.55 (t, 2 H, J = 4.3 Hz).
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 162.5 (d, 195 Hz), 160.6 (d, 193 Hz), 147.6, 143.4, 143.2, 141.5, 140.5, 135.9, 133.4, 131.0, 129.3, 128.5, 127.8, 127.6, 127.1, 126.8, 125.8, 125.2, 120.3, 119.9, 116.3, 116.1, 115.0, 114.8, 72.5, 69.7, 69.2, 68.5, 44.2, 41.0, 36.4.
MALDI-TOF-MS calcd for C34H31F2N3O2(M+H)+ 552.24, found 552.24.
【実施例8】
【0048】
1-(8-アミノ-3,6-ジオキサオクチル)-2-(2-フルオレニル)-4,5-ビス(4-メトキシフェニル)イミダゾール(化合物8すなわちニューロダジン4)の合成
CHClに溶かした4-ニトロフェニルクロロフォーメイト(0.8g、4mmol)をワンレジン(1mmol)を含んだCHCl(9ml)及びピリジン(3ml)に添加した。12時間振とうした後、上記レジンを10%DMFを含んだCHCl溶液で洗浄した。DMFに溶かした2,2’-(エチレンジオキシ)ビスエチレンジアミン(1.5g、10mmol)及びDIEA(0.6g、5mmol)を上記レジンに添加した。12時間振とうした後、上記レジンをDMFで洗浄した。上記レジン(7μmol)、2-フルオレンカルボキシアルデヒド(13mg、0.07mmol)、NHOAc(22mg、0.28mmol)、及び4,4’-ジメトキシベンジル(19mg、0.07mmol)を反応バイアルに入れた後、酢酸(300μl)で懸濁した。上記バイアルを振とう器上に置かれた100℃に加熱したヒートブロックに入れた。上記反応バイアルを5時間振とうした。上記レジンをろ過した後、DMF、MeOH、CHClを用いて数回洗浄した。TFAを入れて1.5時間処理し、固体支持体から目的とする化合物を分離した。得られた化合物は、直ちに0.1%TFA/水に対して5〜100%CHCNの勾配で、85分以上、分取逆相HPLCで精製した。
【0049】
【化14】

1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.04-7.93 (m, 3 H), 7.80 (d, 1 H, J = 7.0 Hz), 7.62 (d, 1 H, J = 6.5 Hz), 7.45-7.32 (m, 5 H), 7.09 (d, 2 H, J = 7.5 Hz), 6.79 (d, 2 H, J = 8.0 Hz), 4.14-4.07 (m, 2 H), 4.02 (s, 2 H), 3.83 (s, 3 H), 3.69 (s, 3 H), 3.32-3.18 (m, 8 H), 2.58-2.52 (m, 2 H).
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 160.0, 158.3, 147.7, 144.0, 143.8, 141.9, 141.2, 137.1, 133.0, 130.4, 129.2, 128.2, 128.1, 127.8, 127.5, 126.4, 125.8, 123.6, 120.9, 120.5, 115.2, 114.1, 73.1, 70.3, 69.9, 69.2, 55.7, 55.5, 44.7, 41.6, 37.1.
MALDI-TOF-MS calcd for C36H37N3O4 (M+H)+576.28, found 576.28.
【実施例9】
【0050】
細胞培養及び小分子のスクリーニング
ネズミ科筋芽細胞のC2C12細胞は、通常10% FBS、50units/mlのペニシリン、そして50μg/mLのストレプトマイシンが添加されたRPMI 1640、もしくはDMEMの培地で培養され、この時、5%二酸化炭素が提供される37℃培養機で培養される。
【0051】
小分子のスクリーニングのために、培養されたC2C12細胞を96-マイクロウェルプレートの培地にウェル当たり約1000個ずつ入れる。24時間培養後、培地を分化用培地(1%FBS、50units/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシンが含まれたRPMI 1640もしくはDMEM)に取り替える。調査対象の化合物を細胞が入っている96-マイクロウェルに5〜10μMの最終濃度で入れる。96時間後、神経細胞に特徴的な神経突起を確認するために光学顕微鏡(Nikon Eclipse TE2000)で細胞の形態変化を観察する。神経細胞への分化を検証するために細胞をPBSバッファで洗浄した後、100mM KClを含むリンガーバッファに溶けたFM1-43(最終濃度2μM、モレキュラープローブ社)を入れる。常温で5分間処理した後、残っているFM1-43を除去するため細胞をリンガーバッファで3回洗浄する。蛍光マイクロプレート検出機(SpectraMax GeminiEM、モレキュラーデバイス社)を用いて処理された細胞の蛍光強度(励起波長:470nm、発光波長:540nm)を測定する。
【0052】
神経突起を引き起こし、又は100mM KClの存在下でFM1-43によって処理した後、強い蛍光強度を示す化合物を神経分化誘導活性が推定される標的化合物(hit)として選択する。免疫検索法(ウエスタンブロット解析又は免疫細胞化学的解析)を用いて化合物で処理された細胞の神経特異的蛋白質の発現を調べて選択された標的化合物(hit)をさらに確認する。
【0053】
ウエスタンブロット解析:96時間化合物で処理した細胞を細胞溶解バッファ(1mM CaCl、150mM NaCl、10mM Tris(pH 7.4)、1% Triton X-100、1mM PMSF、バッファ20mlにつき1錠の蛋白質分解酵素阻害剤カクテル)を用いて粉砕する。細胞粉砕後、蛋白質を7.5%又は10%SDS-PAGEを用いて分離し、分離した蛋白質をニトロセルロースメンブレンに移す。蛋白質が吸着したメンブレンを神経特異的抗体で処理し、これをHRP(Horseradish Peroxidase)標識二次抗体で処理する。抗体処理されたメンブレンは、増感化学発光キット(アマシャム社)を用いて神経特異的蛋白質の存在有無を確認する。用いた抗体希釈比率: 抗神経特異的ベータIII−チューブリンマウスモノクローナル抗体(1:1000)、抗神経特異的エノラーゼニワトリモノクローナル抗体(1:500)、抗ニューロフィラメント200(リン酸化型及び非リン酸化型)クローンC52マウスモノクローナル抗体(1:500)、抗骨格筋ミオシン(速筋型)クローンMY−32マウスモノクローナル抗体(1:500)、抗s−100(B32.1)マウスモノクローナル抗体(1:1000)、及び抗コリンアセチルトランスフェラーゼヒツジポリクローナル抗体(1:1000)。ウエスタンブロット解析に用いる二次抗体は、HRP標識ヤギ抗−マウスIgG(1:2000)、ウサギ抗ニワトリIgY(1:2000)、及びウサギ抗ヒツジIgG(1:2000)である。
【0054】
免疫細胞化学的解析:96時間化合物で処理した細胞を4%パラホルムアルデヒドと0.1%トリトンX-100が入っているPBSバッファを10分間処理して固定させる。固定された細胞を1%血清が含まれたPBSバッファで希釈した一次抗体と共に1時間培養する。細胞をPBSバッファで5分間3回洗浄した後、1%血清が含まれたPBSバッファで希釈した適切な二次抗体と共に1時間培養する。細胞をPBSで5分間3回洗浄した後、Cy−3標識ストレプトアビジン:PBS=1:100の希釈溶液と共に0.5時間培養する。細胞をPBSバッファで5分間5回洗浄した後、水溶性マウンティング溶液とともにマウントする。用いた抗体希釈比率: 抗神経特異的ベータIII−チューブリンマウスモノクローナル抗体(1:500)、抗神経特異的エノラーゼニワトリモノクローナル抗体(1:200)、抗ニューロフィラメント200(リン酸化型及び非リン酸化型)クローンC52マウスモノクローナル抗体(1:400)。二次抗体としては、ビオチン標識ヤギ抗マウスIgG(1:500)及びウサギ抗ニワトリIgY(1:200)を用いた。細胞は顕微鏡(Nikon Eclipse TE2000 microscope)を用いて観察した。
【実施例10】
【0055】
神経分化を誘導するニューロダジンの同定
約300のイミダゾールライブラリーの中の1のイミダゾール(最終濃度:5〜10μM)を筋芽細胞が入っている96-マイクロウェルプレートに入れる。96時間培養後、神経突起の形成を光学顕微鏡で調べる。調査後、化合物で処理された筋芽細胞をPBSバッファで洗浄した後、FM1-43(最終濃度、2μM)をKCl(100mM)が溶けているリンガーバッファに溶解して加える。常温で5分後、過剰なFM1-43を除去するため細胞をリンガーバッファで3回洗浄する。蛍光マイクロプレート検出機(Spectra Max GeminiEM、モレキュラーデバイス社)を用いて蛍光強度(励起波長:470nm、発光波長:540nm)を測定する。
【0056】
筋芽細胞をニューロダジンで処理すると、ニューロダジン処理細胞と非処理細胞間に顕著な差のある神経突起が観察される。対照細胞群(単にDMSOで処理された細胞群)において変化しない筋芽細胞が観察される。反面、1μMのニューロダジンの処理時に神経突起が観察される。又、ニューロダジンで処理された細胞は100mM KClによって引き起こされた脱分極の存在下でFM1-43を処理すると強い蛍光強度を示す。しかしながら、DMSOのみで処理された細胞は非常に低い蛍光強度を示す。イミダゾールライブラリーにおいて、ニューロダジン1〜4は、ウエスタンブロット解析によると、神経特異的標識蛋白質を最も良好に発現させ、FM1-43染色による測定によると、分極に対するシナプス小胞の再循環特性を最も良好に示す。
【0057】
しかしながら、ニューロダジン1〜4で処理された細胞にはMyoD又はミオシンのような筋原細胞特異的蛋白質が発現しなかった。又、s-100のような星状細胞特異的蛋白質も発現しなかった。これは分化した神経細胞には筋肉細胞及び星状細胞のどちらの特性も含んでいないということを示す。
【実施例11】
【0058】
ニューロダジンによるヒト筋繊維の神経細胞への分化
単一の筋繊維は人間の骨格筋から報告された方法により得る(In Vitro Cell Dev Biol Anim. 2002, 38, 66)。骨格筋検体は母趾外転筋から切り取られる。上記検体を収集し、単一繊維培養培地(10%FBS、2%ニワトリ胚抽出物と1.5μg/mlアンフォテリシンBが入っているHam’s F-10)に入れる。上記筋肉検体を37℃で1時間、50ml FalconTM(ファルコン、登録商標)チューブ内の0.1%コラゲナーゼが含まれた10ml単一繊維培養培地で培養する。筋繊維束を外科用メスで注意しながら切断する。上記筋繊維束を0.1%コラゲナーゼが含まれた10ml培養培地を含むペトリ皿に入れ、37℃で5時間培養する。広口にしたパスツールピペットを用いて処理された筋繊維束を繰り返し粉砕した後、単一筋肉繊維を得る。過収縮を進行しない分離した筋肉繊維を、マトリゲルでコーティングされた6-ウェルプレートにウェル当たり3本ずつ入れる。筋繊維を一滴の単一筋繊維培養培地に塗抹し、6時間後、プレートに固着される。その後、1mlの培養液を培地に入れる。24時間後、培地をアンフォテリシンBのない単一繊維培養培地に取り替える。
【0059】
5日後、衛星筋前駆細胞が筋繊維から遊走し、分裂し始める。筋繊維をパスツールピペットで除去した後、その後の研究のために、細胞を0.25%トリプシンと0.02%EDTAが入っているPBSバッファを用いてトリプシン処理する。化合物の神経分化の効果を確認するために、脱離された細胞をウェル当たり100個の細胞が入り込むように、単独で又はニューロダジン1〜4(最終濃度:1μM、5μM又は20μM)と共に6−ウェルプレートに再塗抹する。96時間後、免疫細胞化学的解析を用いて化合物で処理された細胞の神経細胞特異的蛋白質の発現を調べるか、又は上記の方法によりFM1-43を用いて、化合物で処理された細胞の神経生理学的研究を行う。
【0060】
ミオセベリン及びニューロダジンを用いた2段階の培養によってヒトの単一筋肉繊維を神経細胞に分化させることができる。先ず、プレートに塗抹した筋繊維をミオセベリン(最終濃度:10μM)で20時間処理して筋繊維周囲に筋繊維断片と細胞を生成させる。上記繊維を広口ピペットで繰り返し粉砕し、筋繊維断片と細胞を収集する。その次に、上記繊維を、マトリゲルでコーティングされた6-ウェルプレートにウェル当たり100個の単核筋芽細胞及び筋管断片の密度で再塗抹し、神経分化を誘導するためにニューロダジン1又は2(最終濃度:1μM)で処理する。96時間後、神経細胞の分化を、光学顕微鏡を用いた神経突起の成長、100mM KCl存在下でFM1-43を処理した後の蛍光強度の増加、又は発現された神経特異的標識蛋白質の免疫細胞化学的解析によって確認する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】ニューロダジン1〜4の構造。
【図2】ニューロダジン1によって筋芽細胞から分化した神経細胞。
【図3】ニューロダジン1によって筋繊維から分化した神経細胞。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式を有する一般式(I)の化合物。
【化1】

ここで、式中、Rは水素、C0-4アルキルアリール、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、及び-[(CH)O]0-3-(CH)NHからなる官能基より選択されるいずれか1つであるが、これらに限定されるものではなく、
はアルキル、C3-8シクロアルキル、C0-4アルキルアリール、及びアルケニルアリールからなる官能基より選択されるいずれか1つであるが、これらに限定されるものではなく、
はアルキル、C3-8シクロアルキル、C0-4アルキルアリール、及びアルケニルアリールからなる官能基より選択されるいずれか1つであるが、これらに限定されるものではなく、
はアルキル、C3-8シクロアルキル、C0-4アルキルアリール、及びアルケニルアリールからなる官能基より選択されるいずれか1つであるが、これらに限定されるものではない。
【請求項2】
上記Rは、下記群より選択されるいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化2】

【請求項3】
上記Rは、下記群より選択されるいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化3】

【請求項4】
上記R及びRは、下記群より選択されるいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化4】

【請求項5】
上記化合物は、下記群より選択されるいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化5】

【請求項6】
上記化合物は、下記の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化6】

【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物を含む薬学的組成物。
【請求項8】
筋芽細胞及び筋繊維を請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物で処理して神経細胞への分化を誘導することを特徴とする筋芽細胞及び筋繊維から神経細胞への分化を誘導する方法。
【請求項9】
筋芽細胞及び筋繊維の神経細胞への分化を確認する段階をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の筋芽細胞及び筋繊維から神経細胞への分化を誘導する方法。
【請求項10】
上記筋芽細胞及び筋繊維の神経細胞への分化を確認する段階は、神経細胞特異的蛋白質の発現を調べることを特徴とする請求項9に記載の筋芽細胞及び筋繊維から神経細胞への分化を誘導する方法。
【請求項11】
上記筋芽細胞及び筋繊維の神経細胞への分化を確認する段階は、細胞の形態変化を観察することを特徴とする請求項9に記載の筋芽細胞及び筋繊維から神経細胞への分化を誘導する方法。
【請求項12】
上記筋芽細胞及び筋繊維の神経細胞への分化を確認する段階は、100mM KClの存在下でFM1-43によって処理した後、細胞の蛍光強度を測定することを特徴とする請求項9に記載の筋芽細胞及び筋繊維から神経細胞への分化を誘導する方法。
【請求項13】
上記筋芽細胞は、マウスから分離することを特徴とする請求項8に記載の筋芽細胞及び筋繊維から神経細胞への分化を誘導する方法。
【請求項14】
上記筋芽細胞は、霊長類から分離することを特徴とする請求項8に記載の筋芽細胞及び筋繊維から神経細胞への分化を誘導する方法。
【請求項15】
上記筋芽細胞は、ヒトから分離することを特徴とする請求項8に記載の筋芽細胞及び筋繊維から神経細胞への分化を誘導する方法。
【請求項16】
筋芽細胞及び筋繊維を請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物と共に培養した後、筋芽細胞及び筋繊維の神経細胞への分化を確認する段階を含むことを特徴とする筋芽細胞及び筋繊維から神経分化を誘導する付加化合物を同定するスクリーニング方法。
【請求項17】
哺乳類の細胞を請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物と共に培養して神経細胞に分化させる段階と、
分化した神経細胞を患者に投与する段階と、を含むことを特徴とする退行性神経疾患の治療方法。
【請求項18】
上記分化した神経細胞を患者に投与する段階は外科的注入によることを特徴とする請求項17に記載の退行性神経疾患の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−517379(P2009−517379A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542216(P2008−542216)
【出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【国際出願番号】PCT/KR2005/004627
【国際公開番号】WO2007/061153
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(507175175)インダストリー−アカデミック コーポレーション ファウンデーション,ヨンセイ ユニバーシティ (18)
【Fターム(参考)】