説明

筐体の防排水構造、及び電子機器

【課題】筐体のカバー部材と押しボタンを保持するシート部との間に侵入した水や塵埃などを、効率的に外部に排出できる筐体の防排水構造、及び電子機器の提供を課題とする。
【解決手段】表面に複数の押しボタン16を有する下筐体11の防排水構造である。上記表面を形成し、且つ複数のボタン孔14aが設けられたカバー部材14と、上記複数の押しボタン16、及び複数の押しボタン16を所定の位置に保持するシート部17を有する。シート部17が、カバー部材14の裏面14bに沿って配置されると共に、シート部17の外周部がカバー部材14に密着され、押しボタン16がカバー部材14のボタン孔14cに挿入されたボタンユニット15とを備えている。シート部17には、押しボタン16に対向し、且つ押しボタン16の最大外周内の面積より広い水路部を有する溝状の排水路22が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノート型パソコン、携帯電話機、トランシーバ、電動リール、台所の水回り品、玄関のチャイムなど、押しボタンを有する電子機器などに好適な筐体の防排水構造、及びこれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機やパソコンなどのIT(Information Technology)関連の電子機器に
は、様々な機能が要求されている。その中でもユーザの要求が多いものの一つに、電子機器における押しボタン周囲の防水機能がある。
【0003】
従来、電子機器の押しボタン周囲の防水技術は、各種提案されている。例えば、電子機器における筐体の裏面に貼り付けられるシート部と、このシート部に設けられた複数の押しボタンを保持するキーパッドにおいて、全ての押しボタンを包囲する外郭部と、この外郭部に設けられた排水溝を有する防水機器用キーパッドが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、携帯電話の筐体に、内部に侵入した水などを排出するための排出用穴を設けた技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、キーボタンとシートと接点とを有する携帯電話機であって、キーボタン及びシートからなる外観部と、シートと接点とからなる機能部とに分割し、外観部と機能部とを、それぞれ別々に筐体の外側及び内側から密封する防水技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−180760号公報
【特許文献2】特開2000−307697号公報
【特許文献3】特開2001−148726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の筐体の防水技術では、筐体と押しボタンを保持するシート部との間に侵入した水や塵埃などがシート部の広い範囲に分散して付着するため、これらの水や塵埃などを外部に排出するのが困難であった。
【0007】
水や塵埃などが、筐体とシート部との間に残留しても、内部の電子機器に悪影響を与えることは殆どない。しかし、内部に残留した水によって発生するカビや、塵埃などによって押しボタンのストロークが阻害され、押しボタンの操作性が悪くなるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みなされたもので、筐体のカバー部材と押しボタンを保持するシート部との間に侵入した水や塵埃などを、効率的に外部に排出できる筐体の防排水構造、及び電子機器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
(1)本発明は、
表面に複数の押しボタンを有する筐体の防排水構造において、
前記表面を形成し、且つ複数のボタン孔が設けられたカバー部材と、
前記複数の押しボタン、及び前記複数の押しボタンを所定の位置に保持するシート部を
有し、前記シート部が前記カバー部材の裏面に沿って配置されると共に、前記シート部の外周部が前記カバー部材に密着され、前記押しボタンが前記カバー部材の前記ボタン孔に挿入されたボタンユニットとを備え、
前記シート部には、前記服すの押しボタンにそれぞれ対向し、且つ前記押しボタンの最大外周内の面積より広い水路部を有する溝状の排水路が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明では、押しボタンとカバー部材のボタン孔との隙間から、カバー部材とボタンユニットのシート部との間に侵入した水や塵埃などが、シート部に設けられた溝状の排水路に集められる。これにより、水や塵埃などが排水路を通って流れやすくなる。
【0011】
従って、押しボタンとボタン孔との隙間からカバー部材とボタンユニットのシート部との間に侵入した水や塵埃などを、効率的に外部に排出できる。これによって、水によって発生したカビや、塵埃などによって押しボタンのストロークが阻害されるのを防止できるので、押しボタンの操作性が悪くなるのを防止できる。
【0012】
(2)前記排水路は、前記複数の押しボタンにそれぞれ対向し、且つ前記押しボタンの最大外周内の面積より広い拡大水路部と、これらの拡大水路部を接続する接続水路部とを有し、前記拡大水路部と前記接続水路部とを結ぶ経路が、一筆書きとなるように形成できる。
【0013】
この場合は、排水路の途中に行き止まりとなるところがないので、排水路内の水や塵埃などがを更に効率よく外部に排出できる。
【0014】
(3)前記溝状の排水路は、前記シート部上に突出する紐状の突起によって形成できる。この場合は、排水路を簡単に形成できる。なお、排水路は、シート部に凹状の溝を設けることによって形成することもできる。
【0015】
(4)前記シート部には、前記排水路から出た水を外部に排出する排水孔が設けられ、前記排水孔には開閉自在な蓋が設けられているのが好ましい。
【0016】
この場合は、排水路内の水や塵埃などを排水孔から排出するときだけ蓋を開け、水や塵埃などを排出するとき以外は、排水孔を閉じることにより、排水孔から排水路内に水や塵埃などが侵入するのを防止できる。
【0017】
(5)前記排水路には、撥水処理が施されているのが好ましい。撥水処理としては、テフロン(登録商標)やフッ素樹脂のコーティング、ワックス系など各種撥水剤の塗布などを例示できる。この場合は、排水路内の水が撥水処理によって弾かれて排水路内を流れやすくなるので、更に効率的に水などを外部に排出できる。
【0018】
(6)前記排水路を振動させる振動手段を有するのが好ましい。この場合は、排水路内の水や塵埃などを振動させて強制的に流すことができる。
【0019】
(7)前記排水孔に接続されたタンクを有しているのが望ましい。この場合は、排水路から排出され水が排水孔を経てタンクに集められるので、排水孔から排出された水などによって周囲のものが濡れたり汚れたりするのを防止できる。
【0020】
(8)本発明は、
表面に複数の押しボタンが設けられた筐体を有する電子機器において、
前記筐体は、前記表面を形成し、且つ複数のボタン孔が設けられたカバー部材と、
前記複数の押しボタン、及び前記複数の押しボタンを所定の位置に保持するシート部を有し、前記シート部が前記カバー部材の裏面に沿って配置されると共に、前記シート部の外周部が前記カバー部材に密着され、前記押しボタンが前記カバー部材の前記ボタン孔に挿入されるボタンユニットとを備え、
前記シート部には、前記複数の押しボタンにそれぞれ対向し、且つ前記押しボタンの最大外周内の面積より広い水路部を有する溝状の排水路が設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明では、電子機器の筐体に設けられた押しボタンとボタン孔との隙間から内部に侵入した水や塵埃などをを効率的に排出できる。
【0022】
(9)前記筐体内に設けられた発熱部材を有し、前記排水路の壁部分が前記発熱部材に当接していることを特徴とする。
【0023】
この場合は、排水路の壁部分が発熱部に当接しているので、排水路内を流れる水で発熱部材を冷却できる。
【0024】
(10)前記筐体内に設けられた発熱部材と、前記排水路から排出された水を貯めるタンクとを有し、前記タンクが前記発熱部材に当接していることを特徴とする。この場合は、タンクによって発熱部材を冷却できる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、押しボタンとカバー部材のボタン孔との隙間から内部に侵入した水や塵埃などを、各押しボタンと対向する水路部を有する排水路に集めて、効率的に外部に排出できる。
【0026】
従って、カバー部材とボタンユニットとの間に侵入した水によって発生したカビや、塵埃などによって押しボタンのストロークが阻害されるのを防止できるので、押しボタンの操作性が悪くなるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
《第1実施形態》
図1は、本発明に係る第1実施形態の電子機器である携帯電話機1を示す。この携帯電話機1は、ほぼ長方形で扁平状の下筐体11及び上筐体12を有している。これらの下筐体11及び上筐体12は、その長辺側の片端部がヒンジ13によって開閉自在に連結されている。
【0028】
なお、図1は、下筐体11におけるカバー部材14の上面部分14a(図2(a)参照)が取り除かれ、ボタンユニット15が露出された状態を示している。
【0029】
下筐体11の内部には、振動部材であるバイブレータ20が設けられている。このバイブレータ20は、ボタンユニット15のシート部17における排水路22の底壁部22b(図2(b)参照)に接触している。
【0030】
また、この下筐体11の内部には、通常の携帯電話機と同様な回路基板及び電子部品などが設けられている。なお、これらの回路基板及び電子部品は、一般的なものを使用できるので、その詳細な説明を省略する。
【0031】
上記下筐体11は、図2(a)に示すように、その外表面を形成する箱状のカバー部材14と、このカバー部材14における上面部分14aの裏面14bに沿って配置されたボ
タンユニット15とを有している。
【0032】
なお、図2(a)中の符号40は基板、41は回路、42は導電性を有するドーム状の金属シート、43はカバー部材14における上面部分14aから内側に突出する支持部である。
【0033】
支持部43は、ボタンユニット15における押しボタン16の側端部に離間自在に当接している。押しボタン16が押されると、押しボタン16の側端部と支持部43との間に隙間が発生する。
【0034】
上記排水路22の内面には、図2(b)に示すように、撥水処理22aが施されている。撥水処理としては、テフロン(登録商標)やフッ素樹脂のコーティング、ワックス系など各種撥水剤の塗布などを例示できる。
【0035】
上記ボタンユニット15は、図3に示すように、所定の位置に配置された複数の押しボタン16と、これらの押しボタン16を保持する略長方形のシート部17とを有している。このシート部17はゴムで形成されている。
【0036】
また、シート部17の形状及び大きさは、下筐体11の形状及び大きさに応じて設定される。押しボタン16は、シート部17上に載置されている。
【0037】
図2(a)に示すように、ボタンユニット15の押しボタン16が押されると、ドーム状の金属シート42が弾性変形して回路41に電気的に接触する。これにより、押しボタン16に応じた動作が行われる。
【0038】
図4は、シート部17上の押しボタン16を除いた状態を示す。このシート部17には、シート部17のボタン載置面上に突出する細長い突起21によって囲まれた排水路22が設けられている。
【0039】
この排水路22は、複数の押しボタン16にそれぞれ対向し、且つ押しボタン16の最大外周内の面積より少し広い水路面積を有する略長円形又は扇形の拡大水路部23と、これらの複数の拡大水路部23を接続する幅の狭い接続水路部24を有している。
【0040】
すなわち、拡大水路部23は、押しボタン16の最大外周を更に拡げた位置に押しボタン16を取り囲む延提状の突起21によって形成されている。拡大水路部23の中心には、押しボタン16を載せる突起25が設けられている。
【0041】
本例では、図5及び図6中に矢印で示すように、上記排水路22に含まれる全ての拡大水路部23及び接続水路部24を結ぶ経路が、一筆書きとなるように形成されている。すなわち、図6に示すように、排水路22の全ての拡大水路部23及び接続水路部24を結ぶ経路が、一本の線Sとなるように連続して接続されている。
【0042】
本例では、シート部17の短辺17aに沿って3個の拡大水路部23が一列n1に配置されている。また、この3個の拡大水路部23からなる列n1,n2・・・が複数段に亘って設けられている。
【0043】
なお、各列n1,n2・・・における拡大水路部23の形状は、押しボタン16の外周縁16a(図2(a)参照)の形状と相似である。
【0044】
更に、図6中で上下の関係を有する2つの列n1及びn2、n2及びn3・・・におけ
る一方の端とその反対の端における拡大水路部23,23が、交互に接続されている。
【0045】
例えば1段目と2段目の列n1及びn2における左端の拡大水路部23,23が接続された場合は、2段目と3段目の列n2及びn3における右端の拡大水路部23,23が接続される。
【0046】
また、3段目と4段目の列n3及びn4における左端の拡大水路部23,23が接続される。以下、同様にして、全ての段の拡大水路部23が一本の線Sで繋がるように接続されている。
【0047】
図7は、シート部17の排水路22における拡大水路部23内に、押しボタン16を配置した状態を示す上面図である。上記排水路22の拡大水路部23は、図2(a)にも示すように、押しボタン16の最大外周である外周縁16aより少し外側に拡がっている。
【0048】
従って、図2(a)に示すように、押しボタン16の外周縁16aとカバー部材14のボタン孔14cとの隙間から侵入した水や塵埃などは、排水路22の拡大水路部23内に落下する。
【0049】
また、図7に示すように、排水路22の一方の端部(図7中の下端部)に設けられた拡大水路部23aには、シート部17の外側に向けて開口された水路出口26が設けられている。
【0050】
図8は、下筐体11に設けられたボタンユニット15における上面図である。このボタンユニット15におけるシート部17上には、その外周17bに沿って細長いゴムパッキン28が設けられている。このゴムパッキン28によって、全ての押しボタン16が包囲されている。これにより、排水路22の外側に進入した水や塵埃などがゴムパッキン28より外側に漏れるのを防止できる。
【0051】
また、シート部17に設けられた排水路22の水路出口26は、ゴムパッキン28で囲まれた範囲内に開口されている。
【0052】
このゴムパッキン28によって囲まれた範囲は、下筐体11の一端部側(図8中の下端部側)で絞られている。この絞られた部分28aにおけるシート部17には、排水孔29が設けられている。この排水孔29は、下筐体11のカバー部材14などを取り付けるネジ孔用のボスの一部に設けることができる。また、排水孔29は、適宜な位置に設けることができる。
【0053】
この排水孔29は、図9に示すように、下筐体11の側方における厚肉部分30を貫通して、下筐体11の底面31まで達している。排水孔29には、蓋29aが開閉自在に設けられている。排水孔29の中間部には、下筐体11の内部に着脱自在に設けられた貯水タンク33が接続されている。なお、図9中の符号32は、バッテリカバーである。
【0054】
排水路22の水路出口26から排出された水などは、シート部17上におけるゴムパッキン28の内側を流れて排水孔29から排出される。排水口29から排出された水などは、貯水タンク33に貯められる。
【0055】
この貯水タンク33は、図10に示すように、弾性を有する材料によって筒状に形成されている。
【0056】
なお、弾性を有する材料としては、ポリエステルエラストマ、ポリオレフィンエラスト
マ、ポリクロロプレン、塩素系ポリエチレン、フッ素ゴム、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)などを例示できる。
【0057】
また、薄肉形状にすることによって、弾性を確保できる材料として熱可塑性樹脂がある。この熱可塑製樹脂としては、ABS(アクリルニトリル・ブタジエンスチレン樹脂)、
PC(ポリカーボネート樹脂)、PC−ABS(ポリカーボネート/アクリルニトリル・ブタジエンスチレン樹脂)、PA(ポリアミド樹脂)、POM(ポリオキシメチレン樹脂)、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、PE(ポリエチレン樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、などを例示できる。
【0058】
この貯水タンク33の両端には、排水孔29が接続される入口33a及び出口33bが設けられている。入口33aは、ボタンユニット15側に配置され、出口33bは下筐体11の底面31側に配置されている。
【0059】
この貯水タンク33の入口33a側には、逆支弁35が設けられている。これにより、貯水タンク33内の水などがボタンユニット15側に逆流するのを防止できる。
【0060】
また、貯水タンク33の出口33b側には、防水シート36及び逆止弁37が設けられている。防水シート36は、水を通さず空気のみ通す材料で形成されている。
【0061】
この貯水タンク33は、外部から所定の押圧力Fが加えられると弾性変形し、内部の空気45が圧縮される。この空気45の圧力によって、逆止弁37が開けられ、内部の空気45が出口33bから排出される。
【0062】
このときには、防水シート36によって、貯水タンク33内の水が排出されるのを防止できる。つまり、貯水タンク33内の水や塵埃などは、強制的に排出しない限り、徐々に増えていく。
【0063】
また、図11に示すように、貯水タンク33から上記所定の押圧力Fが取り除かれると、貯水タンク33が弾性復元して内部の空気圧が低下する。そうすると、貯水タンクの入口33aに接続されている排水孔29から、排水路22内の水や塵埃などが、貯水タンク33内に強制的に吸引される。
【0064】
これにより、ボタンユニット15のシート部17とカバー部材14の上面部分14aとの間に侵入した水や塵埃などを、強制的に貯水タンク33内に排出できる。なお、このときには、出口33bの逆止弁37が閉じられている。
【0065】
上記貯水タンク33には、図10に示すように、内部の水などを確認する確認部33cが設けられている。この確認部33cは、透明樹脂で形成されている。本例では、貯水タンク33の一面に全体的に確認部33cが設けられている。この確認部33cは、下筐体11の外側から確認できる位置に配置されている。
【0066】
なお、この確認部33cは、貯水タンク33の一面の一部、又は全面に設けることもできる。また、確認部としては、透明窓に限らず、水量を検知するセンサーを使用することもできる。
【0067】
このように、本発明の携帯電話機1は、押しボタン16を保持するシート部17に、押しボタン16と対向し、且つ押しボタン16の最大外周内の面積より広い拡大水路部23を有する溝状の排水路22を設けたので、カバー部材14の上面部分14aと、シート部
17との間に侵入した水44や塵埃などが、排水路22に集められる。
【0068】
これにより、水44や塵埃などがシート部17上の広い範囲に分散するのを防止できる。また、水44や異物などを排水路22によって効率よく外部に排出できる。従って、水44によって発生したカビや塵埃などによって、押しボタン16のストロークが阻害されるのを防止できる。これにより、押しボタン16の操作性が悪くなるのを防止できる。
【0069】
なお、上記実施形態では 貯水タンク33を下筐体11の内側に設けたが、下筐体11の外側に貯水タンク33を設けることができる。この場合は、排水孔29に蓋をしておき、排水時には蓋を開けて貯水タンク33を排水孔29に接続することができる。
【0070】
また、排水路22は、上記の如く、複数の押しボタン16に対向する拡大水路部23及びこれらの拡大水路部23を接続する接続水路部24を有している。そして、拡大水路部23と接続水路部24とを結ぶ経路が、一筆書きとなるように形成されている。
【0071】
これにより、排水路22の途中に行き止まりとなる部分がないので、排水路22に集められた水44や塵埃などが、排水路22の途中に滞留することなく確実に外部に排出される。
【0072】
なお、上記排水孔29には、開閉自在な蓋を設けるのが好ましい。そして、排水孔29から水44などを排出する場合だけ蓋を開け、これ以外のときには蓋を閉じておく。これにより、排水孔29を介して下筐体11内に水や塵埃などが侵入するのを防止できる。
【0073】
また、上記排水路22には撥水処理が施されているので、排水路22内の水などが撥水処理によって弾かれて、排水路22内を流れやすくなる。従って、更に効率的に水44などを外部に排出できる。
【0074】
更に、下筐体11内には、ボタンユニット15のシート部17における排水路22の底壁部22b(図2(a)参照)に接触するバイブレータ20が設けられている。
【0075】
このバイブレータ20によって排水路22を振動させることにより、排水路22内の水44や塵埃などが更に流れやすくなる。従って、排水路22内の水44や塵埃などを更に効率的に排出できる。
【0076】
なお、バイプレータ20は、着信などを振動によって報知するためのバイブレータを使用できる。この場合は、着信などを報知するための振動の態様と、排水時の振動の態様とを代えるのが好ましい。
【0077】
《第2実施形態》
図12は、本発明に係る第2実施形態のシート部17を示す。なお、ここでは排水路22を線状にモデル化して示した。また、以下の説明では、第1実施形態と同様な部分には同一の符号を付けてその詳細な説明を省略した。
【0078】
このシート部17には、排水孔29が複数設けられている。これらの排水孔29は、ゴムパッキン28で囲まれ範囲内における端部側(図12中の下側))に適宜な間隔で設けられている。また、これらの排水孔29は、全て、接続部47を介して貯水タンク33の一個の入口33aに接続されている。
【0079】
排水路22内の水や塵埃などは、排水孔29からシート部17上のゴムパッキン28で囲まれた範囲に排出される。この排出された水や塵埃などは、複数の排水孔29から貯水
タンク33内に排出される。
【0080】
《第3実施形態》
図13は、本発明に係る第3実施形態のシート部17を示す。このシート部17は、複数の排水路22が設けられている。これらの排水路22は、すべての押しボタン16のうち、一部の押しボタン16に対向する複数の拡大水路部23(図示せず)を有している。また、排水路22は、その拡大水路部23と接続水路部24とを結ぶ経路が、一筆書きとなるように形成されている。
【0081】
各排水路22の一端には、水路出口26が設けられている。また、シート部17には、各水路出口26に対応する排水孔29が設けられている。上記貯水タンク33には、複数の入口33aが設けられている。そして、複数の排水孔29は、それぞれ貯水タンク33の入口33aの何れかに接続されている。
【0082】
また、貯水タンク33の複数の入口33aには、図14に示すように、それぞれ逆止弁35が設けられている。
【0083】
本発明では、複数の排水路22が設けられているので、排水路22が一個だけの場合に比べて、各排水路22が短くなる。従って、各排水路22内の水や塵埃などが比較的短時間で貯水タンク33内に排出される。また、排水路22内に水や塵埃などが滞留するのを防止できる。
【0084】
《第4実施形態》
図15は、本発明に係る第4実施形態の電子機器50における基板51及びボタンユニット15を示す。この基板51には、CPU(中央演算処理装置)などの発熱部品52が設けられている。この発熱部品52の上には、ボタンユニット15におけるシート部17が配置されている。
【0085】
図16に示すように、発熱部品52の上側に配置されたシート部17には、第1実施形態の排水路22と同様な排水路53が設けられている。すなわち、この排水路53は、シート部17に凹溝状に形成されている。また、この排水路53は、第1実施形態と同様に拡大水路部及び接続水路部を有している。排水路53の底壁部53aは、発熱部品52に当接している。
【0086】
この電子機器50は、発熱部品52が排水路53内を流れる水44によって冷却される。従って、発熱部品52を冷却するために特別な冷却部材を設ける必要がない。これにより、部品点数の低減及びコストダウンが可能になる。
【0087】
《第5実施形態》
図17は、本発明に係る第5実施形態の貯水タンク33を示す。この貯水タンク33は、発熱部品52に当接して配置されている。
【0088】
この第5実施形態では、貯水タンク33に貯められる水44によって発熱部品52が冷却される。従って、部品点数削減及びコストダウンが可能になる。
【0089】
また、本発明の筐体の棒排水構造、及び電子機器は、以下の付記的事項を含むものである。
【0090】
〔その他〕
本発明は、以下のように特定することができる。
【0091】
(付記1)表面に複数の押しボタンを有する筐体の防排水構造において、
前記表面を形成し、且つ複数のボタン孔が設けられたカバー部材と、
前記複数の押しボタン、及び前記複数の押しボタンを所定の位置に保持するシート部を有し、前記シート部が前記カバー部材の裏面に沿って配置されると共に、前記シート部の外周部が前記カバー部材に密着され、前記押しボタンが前記カバー部材の前記ボタン孔に挿入されたボタンユニットとを備え、
前記シート部には、前記複数の押しボタンのそれぞれに対向し、且つ前記押しボタンの最大外周より広い水路部を有する溝状の排水路が設けられていることを特徴とする筐体の防排水構造(1)。
【0092】
(付記2)前記排水路は、前記複数の押しボタンにそれぞれ対向し、且つ前記押しボタンの最大外周より広い拡大水路部と、これらの拡大水路部を接続する接続水路部とを有し、前記拡大水路部と前記接続水路部とが一筆書きとなるように形成されていることを特徴とする付記1に記載の筐体の防排水構造(2)。
【0093】
(付記3)前記溝状の排水路は、前記シート部上に突出する突起によって形成されていることを特徴とする付記1又は2に記載の筐体の防排水構造(3)。
【0094】
(付記4)前記シート部には、前記排水路から出た水を排出する排水孔が設けられ、前記排水孔には開閉自在な蓋が設けられていることを特徴とする付記1から3の何れかに記載の筐体の防排水構造(4)。
【0095】
(付記5)前記排水路には、撥水処理が施されていることを特徴とする付記1から4の何れかに記載の筐体の防排水構造(5)。
【0096】
(付記6)前記排水路を振動させる振動手段を有することを特徴とする付記1から5の何れかに記載の筐体の防排水構造(6)。
【0097】
(付記7)前記排水孔に接続されたタンクを有していることを特徴とする付記1から6の何れかに記載の筐体の防排水構造(7)。
【0098】
(付記8)前記排水孔が複数設けられ、前記複数の排水孔がそれぞれ前記タンクに接続されていることを特徴とする付記7に記載の筐体の防排水構造(8)。
【0099】
(付記9)前記排水路が複数に分けて設けられ、前記複数の排水路における前記拡大水路部と前記接続水路部とを結ぶ経路がそれぞれ一筆書きとなるように形成されると共に、前記複数の排水路がそれぞれ前記タンクに接続されていることを特徴とする付記7又は8に記載の筐体の防排水構造。
【0100】
(付記10)前記タンクが弾性を有していることを特徴とする付記7から9の何れかに記載の筐体の防排水構造。
【0101】
(付記11)前記タンクは、前記排水孔に接続される複数の接続口と、前記タンク内の空気を外部に排出する排気口とを有し、
前記複数の接続口及び前記排気口には、それぞれ逆止弁が設けられていることを特徴とする付記7から10の何れかに記載の筐体の防排水構造。
【0102】
(付記12)前記タンクの押圧時には、前記排気口の前記逆止弁が開かれると共に、前記接続口の前記逆止弁が閉じられて、前記タンク内の空気が前記排気口から外部に排気さ
れ、
前記タンクの非押圧時には、前記接続口の前記逆止弁が開かれると共に、前記排気口の前記逆止弁が閉じられて、前記排水路内の水が前記タンク内に吸引されることを特徴とする付記10又は11に記載の筐体の防排水構造。
【0103】
(付記13)前記タンクは前記複数の排水孔にそれぞれ接続される複数の接続口を有し、前記複数の接続口にそれぞれ前記逆止弁が設けられていることを特徴とする付記8から12の何れかに記載の筐体の防排水構造。
【0104】
(付記14)前記タンクは、内部を確認する確認部を有することを特徴とする付記7から13の何れかに記載の筐体の防排水構造。
【0105】
(付記15)前記排気口には、水を通さず空気を通すフィルタが設けられていることを特徴とする付記11から14の何れかに記載の筐体の防排水構造。
【0106】
(付記16)表面に複数の押しボタンが設けられた筐体を有する電子機器において、
前記筐体は、前記表面を形成し、且つ複数のボタン孔が設けられたカバー部材と、
前記複数の押しボタン、及び前記複数の押しボタンを所定の位置に保持するシート部を有し、前記シート部が前記カバー部材の裏面に沿って配置されると共に、前記シート部の外周部が前記カバー部材に密着され、前記押しボタンが前記カバー部材の前記ボタン孔に挿入されるボタンユニットとを備え、
前記シート部には、前記複数の押しボタンにそれぞれ対向し、且つ前記押しボタンの最大外周内の面積より広い水路部を有する溝状の排水路が設けられていることを特徴とする電子機器(8)。
【0107】
(付記17)前記筐体内に設けられた発熱部材を有し、前記排水路の壁部分が前記発熱部材に当接していることを特徴とする電子機器(9)。
【0108】
(付記18)前記筐体内に設けられた発熱部材と、前記排水路から排出された水を貯めるタンクとを有し、前記タンクが前記発熱部材に当接していることを特徴とする電子機器(10)。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明に係る第1実施形態の携帯電話機を示す図である。
【図2】図2(a)は本発明に係る第1実施形態の押しボタン、シート部、排水路を示す図であり、図1のA−A断面図、図2(b)は排水路に施された撥水処理及びバイブレータを示す断面図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態のボタンユニットを示す斜視図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態のシート部及び排水路を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る第1実施形態の排水路の一部分を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る第1実施形態の排水路が一筆書きとなるように形成されていることを説明する図である。
【図7】本発明に係る第1実施形態のボタンユニットを示す平面図である。
【図8】本発明に係る第1実施形態の下筐体における下端部及び排水孔を示す図である。
【図9】本発明に係る第1実施形態の排水孔を示す図であり、図8のB−B断面図である。
【図10】本発明に係る第1実施形態の貯水タンクを示す断面図である。
【図11】本発明に係る第1実施形態の貯水タンクに水が貯められる状態を示す共振器及び超音波接合ヘッドを示す斜視図である。
【図12】本発明に係る第2実施形態の支持部及び開口を示す図である。
【図13】本発明に係る第3実施形態の排水路、排水孔及び貯水タンクを示す図である。
【図14】本発明に係る第4実施形態の貯水タンクを示す断面図である。
【図15】本発明に係る第5実施形態の電子機器における発熱部及びボタンユニットを示す斜視図である。
【図16】本発明に係る第5実施形態の発熱部品及び排水路を示す図であり、図15のC−C断面図である。
【図17】本発明に係る第6実施形態の発熱部品及び排水路を示す断面図である。
【符号の説明】
【0110】
1 携帯電話機
11 下筐体
12 上筐体
13 ヒンジ
14 カバー部材
14a 上面部分
14b 裏面
14c ボタン孔
15 ボタンユニット
16 押しボタン
16a 外周縁
17 シート部
17a 短辺
17b 下端縁
17c 外周縁
20 バイブレータ
21 突起
22 排水路
22a 排水路の庭壁部
23 拡大水路部
24 接続水路部
25 突起
26 水路出口
28 ゴムパッキン
28a 絞られた部分
29 排水孔
30 接続部
31 下筐体の底面
32 バッテリカバー
33 貯水タンク
33a 入口
33b 出口
33c 確認部
35 逆止弁
36 防水シート
37 逆止弁
40 基板
41 回路
42 ドーム状の金属シート
43 支持部
44 水
45 空気
50 電子機器
51 基板
52 発熱部品
53 排水路
53a 底壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の押しボタンを有する筐体の防排水構造において、
前記表面を形成し、且つ複数のボタン孔が設けられたカバー部材と、
前記複数の押しボタン、及び前記複数の押しボタンを所定の位置に保持するシート部を有し、前記シート部が前記カバー部材の裏面に沿って配置されると共に、前記シート部の外周部が前記カバー部材に密着され、前記押しボタンが前記カバー部材の前記ボタン孔に挿入されたボタンユニットとを備え、
前記シート部には、前記複数の押しボタンのそれぞれに対向し、且つ前記押しボタンの最大外周より広い水路部を有する溝状の排水路が設けられていることを特徴とする筐体の防排水構造。
【請求項2】
前記排水路は、前記複数の押しボタンにそれぞれ対向し、且つ前記押しボタンの最大外周内の面積より広い拡大水路部と、これらの拡大水路部を接続する接続水路部とを有し、前記拡大水路部と前記接続水路部とを結ぶ経路が一筆書きとなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の筐体の防排水構造。
【請求項3】
前記溝状の排水路は、前記シート部上に突出する突起によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の筐体の防排水構造。
【請求項4】
前記シート部には、前記排水路から出た水を排出する排水孔が設けられ、前記排水孔には開閉自在な蓋が設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の筐体の防排水構造。
【請求項5】
前記排水路には、撥水処理が施されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の筐体の防排水構造。
【請求項6】
前記排水路を振動させる振動手段を有することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の筐体の防排水構造。
【請求項7】
前記排水孔に接続されたタンクを有していることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の筐体の防排水構造。
【請求項8】
表面に複数の押しボタンが設けられた筐体を有する電子機器において、
前記筐体は、前記表面を形成し、且つ複数のボタン孔が設けられたカバー部材と、
前記複数の押しボタン、及び前記複数の押しボタンを所定の位置に保持するシート部を有し、前記シート部が前記カバー部材の裏面に沿って配置されると共に、前記シート部の外周部が前記カバー部材に密着され、前記押しボタンが前記カバー部材の前記ボタン孔に挿入されるボタンユニットとを備え、
前記シート部には、前記複数の押しボタンにそれぞれ対向し、且つ前記押しボタンの最大外周内の面積より広い水路部を有する溝状の排水路が設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
前記筐体内に設けられた発熱部材を有し、前記排水路の壁部分が前記発熱部材に当接していることを特徴とする請求項8に記載の電子機器。
【請求項10】
前記筐体内に設けられた発熱部材と、前記排水路から排出された水を貯めるタンクとを有し、前記タンクが前記発熱部材に当接していることを特徴とする請求項8に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−66746(P2007−66746A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252363(P2005−252363)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】