説明

筐体取付構造

【課題】一つの筐体に対して様々なブラケットに対応することができる筐体取付構造を提供することを目的とする。
【解決手段】筐体Kの取付面10に、3つのブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3を受け入れ可能な階段状の溝20を備えた挿入口14と、ブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3の端部を当接させて挿入規制する当接部24,25と、係止部12とを設け、ブラケットB1,B2,B3にフロントホイルハウスに取り付けられる取付部分Tと、挿入部S1,S2,S3と、挿入部S1,S2,S3のストロークエンドで前記係止部12に嵌合する係止孔131,132,133を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両用等の電子機器の筐体取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用電子機器の筐体取付構造としては、例えば、車室のインストルメントパネルに取付金具を固定し、この取付金具にネジを用いることなく電子機器類の筐体を取り付けるものがある。取付金具はスライドレール部を備え、このスライドレール部に筐体のガイド溝を合わせ、筐体をスライドレール部に沿って挿入して、取付金具に設けたロックレバーのロック爪部がガイド溝に設けたロック凹部に嵌合するとロックレバーが揺動してスプリングにより付勢された状態で筐体が取付金具に収容固定される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−316594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、筐体と取付金具とは一対一の関係にあるため一つの筐体は一つの取付金具にしか取り付けることはできず、取付場所との関係で取付金具が様々な形状や大きさになっている場合には、同じ電子機器類を収容するため同じ筐体を取り付ける場合であっても、取付金具に応じて筐体との取付部分が異なる別の筐体を製造する必要があるという課題がある。
【0005】
そこで、この発明は、一つの筐体に対して様々なブラケットに対応することができる筐体取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、少なくとも一つの取付面(例えば、実施形態における取付面10)を有する筐体(例えば、実施形態における筐体K)と、前記筐体を被固定部(例えば、実施形態におけるフロントホイルハウス2)に設置するブラケット(例えば、実施形態におけるブラケットB1,B2,B3)とを備え、前記ブラケットは前記被固定部に取り付けられる取付部分(例えば、実施形態における取付部分T)と矩形で板状の挿入部(例えば、実施形態における挿入部S1,S2,S3)を有し、前記筐体は前記取付面上に前記ブラケットの挿入部が前記取付面に沿って挿入される被挿入部(例えば、実施形態におけるガイド部11)と、前記筐体の取付面上に前記ブラケットの前記挿入部を係止する係止部(例えば、実施形態における係止部12)とを備え、前記ブラケットの前記挿入部は前記筐体の前記係止部と嵌合する被係止部(例えば、実施形態における係止孔131,132,133)を備え、前記被係止部は前記係止部と嵌合することで前記ブラケットの前記挿入部と前記筐体の前記被挿入部が係止する筐体取付構造において、前記筐体の前記被挿入部は、前記ブラケットの前記挿入部を受け入れる挿入口(例えば、実施形態における挿入口14)と、前記ブラケットの前記挿入部を挿入したときに、前記挿入部の挿入方向端部の2つの角部(例えば、実施形態における角部152,152,153、161,162,163)と当接する2つの当接部(例えば、実施形態における24,25)とで構成され、前記挿入口は、前記筐体の前記取付面から離れるにつれて徐々に幅狭となる階段状に形成され、前記当接部の内側の形状は、前記挿入部を前記挿入口に挿入したとき、前記挿入部の異なる幅(例えば、実施形態におけるW1,W2,W3)と前記挿入部の前記被係止部から挿入方向端部までの長さ(例えば、実施形態におけるL1,L2,L3)とに対応して前記挿入部の挿入方向端部が当接規制される形状に形成され、前記ブラケットの前記挿入部を前記筐体の前記挿入口に挿入したときに、前記挿入部の前記挿入方向端部が前記当接部と当接した状態でのみ前記ブラケットの前記被係止部と前記筐体の前記係止部とが嵌合することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明は、前記筐体の2つの当接部と前記挿入口とは離間して設けられ、前記筐体(例えば、実施形態における筐体K’)の前記被挿入部(例えば、実施形態におけるガイド部11’)は、前記挿入口(例えば、実施形態における挿入口14)に対して略垂直方向を向いていると共に前記挿入口の一端部(例えば、実施形態における右端部14R)と前記一方の前記当接部(例えば、実施形態における当接部25)とで構成される別の挿入口(例えば、実施形態における挿入口14’)と、前記別の挿入口へ前記ブラケットの前記挿入部を挿入したとき該挿入部の一つの角部(例えば、実施形態における角部151’,152’,153)と当接する他方の前記当接部(例えば、実施形態における当接部24)とを備え、前記別の挿入口は、前記筐体の前記取付面から離れるにつれて徐々に幅狭となる階段状に形成され、前記ブラケットの前記挿入部を前記筐体の前記別の挿入口に挿入したとき、前記挿入口の他端部と他方の前記当接部とが前記挿入部の異なる幅(例えば、実施形態における幅W1’,W2’,W3’)と前記挿入部の前記被係止部から挿入方向端部までの長さ(例えば、実施形態における長さL1’、L2’、L3’)とに対応して当接する形状に形成され、前記ブラケットの前記挿入部を前記筐体の前記挿入口または前記別の挿入口に挿入したときに、前記挿入部の挿入方向端部が他方の前記当接部に当接した状態でのみ前記ブラケットの前記被係止部と前記筐体の前記係止部が嵌合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、一つの筐体に複数のブラケットを用いることができるため、被固定部に応じて異なるブラケットを用いる場合でも、筐体を各ブラケットに応じて別個に設ける必要なく、低コストで製造できる。
また、挿入部の被係止部から挿入部の挿入方向端部までの長さが各ブラケットによって違うため、誤って対応していない被挿入部の段差部分にブラケットの挿入部を挿入しても、係止部が被係止部に嵌合しないため、作業者に正しい位置に挿入されているかどうかを認識させることができる。
更に、当接部が二つに分かれているためブラケットの被固定部に対する取付部分を、ブラケットの挿入部に対して挿入方向の手前側に設けるだけではなく、二つに分かれた当接部の間から、挿入方向に向かって延びる側にも設けることができるので、被固定部に対するブラケットの取付部分を反対方向に変更でき、スペースをとらないで、適切な位置や向きで筐体を被固定部に取り付けることができる。
請求項2に記載した発明によれば、請求項1に記載された発明の効果に加え、ブラケットの挿入部を互いに略垂直な2方向から被挿入部に挿入することができるため、結果として被固定部に対するブラケットの取付部分を4カ所に設定できるため、スペースをとらないで、適切な位置や向きで筐体を被固定部に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施形態の車両の斜視図である。
【図2】この発明の第1実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】図2のB矢視図である。
【図5】図2のブラケットの挿入部を示す図である。
【図6】図5とは異なるブラケットの挿入部を示す図である。
【図7】図5、図6とは異なるブラケットの挿入部を示す図である。
【図8】第1実施形態の差し込み不完全状態を示す平面図である。
【図9】この発明の第2実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図10】第2実施形態の筐体の平面図である。
【図11】筐体を含めた図2のC矢視図である。
【図12】筐体を含めた図2のD矢視図である。
【図13】筐体を含めた図2のE矢視図である。
【図14】筐体を含めた図2のF矢視図である。
【図15】第2実施形態のブラケットの挿入状態を示す平面図である。
【図16】第2実施形態の要部拡大斜視図である。
【図17】第2実施形態の要部拡大斜視図である。
【図18】第2実施形態の差し込み不完全状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、この発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、図2に示すように、車両1のフロントホイルハウス2の後壁3の裏面に電子機器が収容される筐体KがブラケットB1を介して取り付けられている。
図2に模式的に示すように、筐体Kは内部に図示しない電子機器が収容される収容部Rを備えている。筐体Kは、一部が開口しているもの、開口している部分がなく全体が閉塞されているもの等様々な形態及び様々な材質のものを用いることができるが、この実施形態は全体が閉塞された直方体形状で樹脂製の筐体Kを例にしている。筐体KはブラケットB1が取り付けられる取付面10を備えている。尚、この実施形態では取付面10は一つであるが、二つ以上の取付面10を備えることもできる。
【0011】
ブラケットB1はフロントホイルハウス2に取り付けられる取付部分Tと、筐体Kの取付面10に沿う方向に挿入される矩形で板状の挿入部S1を有している。尚、取付部分T1にはフロントホイルハウス2に取り付けられる締結具の取付孔9が設けられている。
筐体Kは取付面10上にブラケットB1の挿入部S1が取付面10に沿う方向に挿入される左右一対のガイド部11,11と、筐体Kの取付面10上にブラケットB1の挿入部S1に係止する係止部12とを備えている。
【0012】
一対のガイド部11,11はブラケットB1のみならず、ブラケットB1の挿入部S1よりも厚く幅の狭い挿入部S2を有しブラケットB1の取付部分Tと同じ取付部分Tを有するブラケットB2と、ブラケットB2の挿入部S2よりも厚く幅の狭い挿入部S3を有しブラケットB2の取付部分Tと同じ取付部分Tを有するブラケットB3をも選択可能に挿入できる構造となっている。ここで、各取付部分TはブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3の挿入方向の手前側に設けられている。取付部分Tは最も幅の狭い挿入部S3を有するブラケットB3の挿入部S3よりも幅が狭くされている。
【0013】
ブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3は筐体Kの係止部12と嵌合する係止孔131,132,133を備え、ブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3の係止孔131,132,133に筐体Kの係止部12が嵌合した状態でのみブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3が筐体Kのガイド部11,11のストロークエンドまで挿入される。ここで、係止部12にはブラケットB1,B2,B3の挿入方向に対向する部分に、ブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3を受け入れるため受け入れ側に高くなるように傾斜する傾斜面19が形成されている。
【0014】
ガイド部11,11はブラケットB1の挿入部S1を受け入れる左端部14Lと右端部14Rからなる挿入口14と、ブラケットB1の挿入部S1を挿入したときに挿入部S1の挿入方向端部の2つの角部151,161と当接する2つの当接部24,25を備えている。当接部24,25は各々当接面171,181を備えている。したがって、左側のガイド部11は左端部14Lから当接部24に至る範囲でブラケットB1の左側縁をガイドし、右側のガイド部11は右端部14Rから当接部25に至る範囲でブラケットB1の右側縁をガイドする。
挿入口14を構成するガイド部11,11の右端部14Rと左端部14Lは、筐体Kの取付面10から離れるにつれて徐々に幅狭となる階段状に形成された溝20を一対対向して備えている。
【0015】
図3に示すように、左端部14L(右端部14Rも同様)の各溝20,20はガイド部11の一番下で幅方向外側にブラケットB1の挿入部S1の側縁がガイドされる第1ガイド溝21と、第1ガイド溝21よりも幅方向内側で上に高さが延びブラケットB2の挿入部S2の側縁がガイドされる第2ガイド溝22と、第2ガイド溝22よりも幅方向内側で上に高さが延びブラケットB3の挿入部S3の側縁がガイドされる第3ガイド溝23とで階段状に構成されている。
【0016】
図4に当接部24のみを拡大して示すように、当接部24、当接部25は、ブラケットB1に対応する2つの当接面171,181と同様に、ブラケットB2に対応してブラケットB2の挿入部S2の挿入方向端部の2つの角部152,162と当接する2つの当接面172,182を備え、更にブラケットB3に対応してブラケットB3の挿入部S3の挿入方向端部の2つの角部153,163と当接する2つの当接面173,183を備えている。
ここで、当接部24,25に対応する当接面171,181、当接面172,182、当接面173,183は、この順にブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3の挿入方向のより奥側に位置しており、この順に高さ寸法が第1ガイド溝21、第2ガイド溝22、第3ガイド溝23に対応して大きくなっている。
【0017】
よって、これら第1ガイド溝21、第2ガイド溝22、第3ガイド溝23のストロークエンドまでブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3を挿入すると、挿入部S1,S2,S3の2つの角部151,152,153、161,162,163が当接部24,25の当接面171,172,172、181,182,183に当接する。
【0018】
図5〜図7に示すように、ブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3の幅寸法はW1,W2,W3と順に幅が小さくなっており、挿入部S1,S2,S3の係止孔131,132,133から挿入方向端部までの長さはL1,L2,L3と徐々に大きくなっている。よって、ブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3を筐体Kの挿入口14に挿入したとき、挿入部S1,S2,S3の異なる幅W1,W2,W3と挿入部S1,S2,S3の係止孔131,132,133から挿入方向端部までの長さL1,L2,L3とに対応して挿入部S1,S2,S3の挿入方向端部が当接面171,172,173、181,182,183に当接して移動規制され、このようにブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3の挿入方向端部が当接面171,172,172、181,182,183と当接した状態でのみブラケットB1,B2,B3の係止孔131,132,133と筐体Kの係止部12とが嵌合する。
【0019】
尚、この実施形態ではブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3の挿入方向の手前側に取付部分Tを設けた場合について説明したが、ブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3の挿入方向に向かって、二つに分かれた当接部24,25の間から延びる側に取付部分Tを設けても良い(図2鎖線参照)。
【0020】
上記実施形態によれば、一つの筐体Kに3つのブラケットB1,B2,B3を用いることができるので、筐体Kを各ブラケットB1,B2,B3に応じて別個に設けなくても共通の筐体Kを用いることができ、低コストで製造できる。
【0021】
また、ブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3の係止孔131,132,133から挿入部S1,S2,S3の挿入方向端部までの長さL1,L2,L3が各ブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3によって違うため、対応していないガイド部11の段差部分の第1ガイド溝21、第2ガイド溝22、第3ガイド溝23にブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3を誤って挿入しても、係止部12が係止孔131,132,133に嵌合しないため、作業者に正しい位置に挿入されていないことを認識させることができる。
【0022】
更に、図8に示すように、通常はブラケットB2の挿入部S2は、それよりも挿入部S1が薄いブラケットB1の第1ガイド溝21には挿入できないが、ブラケットB2の挿入部S2の角部162がガイド部11の当接面181に当接し、挿入部S2が図8で先端側が右側に回転したよう状態でガイド部11の挿入口14から段差部分に無理矢理押し込まれた場合でも、係止部12が係止孔132に嵌合せず、かつ挿入部S2の挿入方向手前側の右側角部が出っ張ってしまうため、作業者に正しい位置に挿入されていない誤組であることを速やかに認識させることができる。
【0023】
そして、ブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3の挿入方向端部の角部151,152,153、161,162,163が当接する当接部24,25が二つに分かれているため、ブラケットB1,B2,B3をフロントホイルハウス2の後壁3へ取り付ける取付部分としてブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3の挿入方向の手前側の取付部分T,T,Tだけでなく、二つに分かれた当接部24,25の間から、挿入方向に向かって延びる側に取付部分T,T,Tとして設けることができる。よって、フロントホイルハウス2の後壁3に対するブラケットB1,B2,B3の取付部分を反対方向に変更でき、スペースをとらないで、適切な位置や向きで筐体Kをフロントホイルハウス2の後壁3に取り付けることができる。
【0024】
次に、この発明の第2実施形態を図1を援用し図9〜図18に基づいて説明する。尚、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
図9に示すように、この実施形態の筐体K’は第1実施形態における挿入口14と当接部24,25とが離間して設けられたガイド部11’を備えている。ガイド部11’は、ブラケットB1,B2,B3を挿入する挿入口14と、この挿入口14に対して直角方向を向いている共に挿入口14の右端部14Rと一方の当接部25とで構成されるブラケットB1’,B2’,B3’を挿入するための別の挿入口14’とを備え、別の挿入口14’へブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1’,S2’,S3’を挿入したときに挿入部S1’,S2’,S3’の一つの角部161’,162’,163’と他方の当接部24を当接させるようになっている。
【0025】
ここで、ブラケットB1’,B2’,B3’の各々の関係はブラケットB1,B2,B3の各々の関係と同様であり、ブラケットB2’はブラケットB1’の挿入部S1’よりも厚く幅の狭い挿入部S2’を有し、ブラケットB3’は、ブラケットB2’の挿入部S2’よりも厚く幅の狭い挿入部S3’を有している。ここで、ブラケットB3の左側の角部153、ブラケットB3’の右側の角部153’には当接部24において逃げを形成するため矩形の切欠きCが形成されている(図10参照)。尚、取付部分Tについては第1実施形態と同様である。
【0026】
つまり、筐体K’の4つの角部に位置する挿入口14を構成する右端部14Rと左端部14Lと当接部24,25とを有効利用して、挿入口14の右端部14Rと当接部25とで構成された挿入口14’からもブラケットB1’,B2’,B3’を挿入でき、挿入口14の左端部14Lと当接部24とを挿入口14’から挿入されたブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1’,S2’,S3’の当接部として機能させている。
【0027】
よって、図10、図11に示すように、ブラケットB1,B2,B3を挿入口14から挿入した場合に対応して、当接部24には挿入部S1,S2,S3の角部151,152,153が当接する当接面171,172,173が形成される。尚、当接部25は挿入部S1,S2,S3の角部161,162,163を当接させる部材としては機能しない。
【0028】
また、図10、図13に示すように、ブラケットB1,B2,B3を挿入口14から挿入した場合に対応して、挿入口14を構成する左端部14L,右端部14Rには第1実施形態と同様に溝20を構成する第1ガイド溝21、第2ガイド溝22、第3ガイド溝23が各々階段状に形成されている。
【0029】
つまり、挿入口14は、筐体K’の取付面10から離れるにつれて徐々に幅狭となる階段状に形成された一対の溝20,20を有する右端部14Rと左端部14Lを対向させ、ガイド部11’の一番下で幅方向外側にブラケットB1の挿入部S1の側縁がガイドされる第1ガイド溝21と、第1ガイド溝21よりも幅方向内側で上に高さが延びブラケットB2の挿入部S2の側縁がガイドされる第2ガイド溝22と、第2ガイド溝22よりも幅方向内側で上に高さが延びブラケットB3の挿入部S3の側縁がガイドされる第3ガイド溝23とで構成されている。尚、当接部24では、左端部14Lの第1ガイド溝21、第2ガイド溝22、第3ガイド溝23に対応して、後述する当接面183’,182’,181’が挿入部S1,S2,S3の側縁部をガイドするガイド面として機能する。
【0030】
一方、図10、図14に示すように、ブラケットB1’,B2’,B3’を挿入口14’から挿入した場合に対応して、当接部24には挿入部S1’,S2’,S3’の角部161’,162’,163’が当接する当接面181’,182’,183’が形成されれる。尚、挿入口14を構成する左端部14LはブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1’,S2’,S3’の角部151’,152’,153’を当接させる部材としては機能しない。
【0031】
また、図10、図12に示すように、ブラケットB1’,B2’,B3’を挿入口14’から挿入した場合に対応して、挿入口14を構成する右端部14Rには挿入部S1’,S2’,S3’の側縁部をガイドする第1ガイド溝21’、第2ガイド溝22’、第3ガイド溝23’が設けられている。また、この右端部14Rに対応して当接部25には挿入部S1’,S2’,S3’の側縁部をガイドする第1ガイド溝21’、第2ガイド溝22’、第3ガイド溝23’が形成されている。
【0032】
ここで、前述した当接部24の当接面173,172,171は、当接部25の第1ガイド溝21’、第2ガイド溝22’、第3ガイド溝23’に対応して、挿入部S1’,S2’,S3’の側縁部をガイドするガイド面として機能する。
【0033】
つまり、別の挿入口14’は、筐体K’の取付面10から離れるにつれて徐々に幅狭となる階段状に形成された一対の溝20’,20’を有する右端部14Rと当接部25を対向させ、ガイド部11’の一番下で幅方向外側にブラケットB1’の挿入部S1’の側縁がガイドされる第1ガイド溝21’と、第1ガイド溝21’よりも幅方向内側で上に高さが延びブラケットB2’の挿入部S2’の側縁がガイドされる第2ガイド溝22’と、第2ガイド溝22’よりも幅方向内側で上に高さが延びブラケットB3’の挿入部S3’の側縁がガイドされる第3ガイド溝23’とで構成されている。
【0034】
したがって、図10に示すように、右端部14Rは、挿入口14から挿入されたブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3の側縁部をガイドする第1ガイド溝21、第2ガイド溝22、第3ガイド溝23と、挿入口14’から挿入されたブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1’,S2’,S3’の側縁部をガイドする第1ガイド溝21’、第2ガイド溝22’、第3ガイド溝23’の双方を有している。
【0035】
また、図16に示すように、左端部14Lは、挿入口14から挿入されたブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3の側縁部をガイドする第1ガイド溝21、第2ガイド溝22、第3ガイド溝23を有すると共に挿入口14’から挿入されたブラケットB3’の挿入部S3’の側縁部をガイドするガイド面G(図10も参照)を有している。尚、左端部14Lと勝手反対の当接部25は、挿入口14から挿入されたブラケットB3の挿入部S3の側縁部をガイドするガイド面Gを有している(図10参照)。
【0036】
そして、図17に示すように、当接部24は、ブラケットB1,B2,B3の挿入方向奥側からブラケットB1’,B2’,B3’の挿入方向奥側に向かって階段状に当接面173、当接面181’、当接面172、当接面182’、当接面171、当接面183’が順に形成され、これら階段状に形成された当接面173、当接面181’、当接面172、当接面182’、当接面171、当接面183’の上に隣接して逆の階段状となるブラケットB3とブラケットB3の切欠きC,Cの逃げ部Nが形成される。
【0037】
筐体K’の取付面10はブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3及びブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1’,S2’,S3’を嵌合する係止部12’を備えている。係止部12’にはブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3を受け入れるための受け入れ側に高くなるように傾斜する傾斜面19に加えて、ブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1’,S2’,S3’を受け入れるための受け入れ側に高くなるように傾斜する傾斜面19’が形成されている。
【0038】
ブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3は筐体Kの係止部12’と嵌合する係止孔131,132,133を備え、ブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3の係止孔131,132,133に筐体Kの係止部12’が嵌合した状態でのみブラケットB1,B2,B3の挿入部S1,S2,S3が筐体Kのガイド部11’のストロークエンドまで挿入される。
【0039】
また、ブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1’,S2’,S3’は筐体K’の係止部12’と嵌合する係止孔131’,132’,133’を備え、ブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1’,S2’,S3’の係止孔131’,132’,133’に筐体K’の係止部12’が嵌合した状態でのみブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1’,S2’,S3’が筐体K’のガイド部11’のストロークエンドまで挿入される。係止孔131’,132’,133’の位置を含めたブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1’,S2’,S3’の寸法については第1実施形態と同様である(図9参照)。
【0040】
上記実施形態によれば、一つの筐体K’に3つのブラケットB1,B2,B3とこれに直交する方向から挿入される3つのブラケットB1’,B2’,B3’を用いることができるので、共通の筐体K’で6種類の取り付け形態を選択することができ、低コスト化を図ることができる。
【0041】
また、ブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1’,S2’,S3’の係止孔131’,132’,133’から挿入部S1’,S2’,S3’の挿入方向端部までの長さL1’,L2’,L3’が各ブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1’,S2’,S3’によって違うため、対応していないガイド部11’の段差部分の第1ガイド溝21’、第2ガイド溝22’、第3ガイド溝23’にブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1’,S2’,S3’を誤って挿入しても、係止部12’が係止孔131’,132’,133’に嵌合しないため、作業者に正しい位置に挿入されているかどうかを認識させることができる。このことはブラケットBI,B2,B3についても同様である。
【0042】
更に、図18に示すように、通常はブラケットB2の挿入部S2は、それよりも挿入部S1が薄いブラケットB1の第1ガイド溝21には挿入できないが、ブラケットB2の挿入部S2の角部152がガイド部11’の当接部24の当接面171に当接し、挿入部S2が図8で左側に回転したような状態で挿入口14から段差部分に無理矢理押し込まれた場合でも、係止部12が係止孔132に嵌合せず、かつ挿入部S2の挿入方向手前側の左側角部が出っ張ってしまうため、作業者に正しい位置に挿入されていない誤組であることを速やかに認識させることができる。このことはブラケットB2のみならずブラケットB1,B3、ブラケットB1’,B2’,B3’についても同様である。
【0043】
そして、ブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1’,S2’,S3’の挿入方向端部の角部151’,152’,153’、161’,162’,163’が当接する当接部24と左端部14Lとが二つに分かれているため、ブラケットB1’,B2’,B3’をフロントホイルハウス2の後壁3へ取り付ける取付部分としてブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1’,S2’,S3’の挿入方向の手前側の取付部分T,T,Tだけでなく、二つに分かれた当接部24と左端部14Lの間から、挿入方向に向かって延びる側に取付部分T,T,Tを設けることができる。よって、フロントホイルハウス2の後壁3に対するブラケットB1’,B2’,B3’の取付部分Tを反対方向に変更でき、スペースをとらないで、適切な位置や向きで筐体Kをフロントホイルハウス2の後壁3に取り付けることができる。
【0044】
とりわけ、この実施形態ではブラケットB1,B2,B3とブラケットB1’,B2’,B3’の挿入部S1,S2,S3と挿入部S1’,S2’,S3’とを互いに略垂直な2方向から挿入することができるため、結果としてガイド部11’に対するブラケットの取付部分Tを4カ所に設定でき、スペースをとらないで、適切な位置や向きで筐体K’をフロントホイルハウス2に取り付けることができる。
【0045】
尚、この発明は上記実施形態に限れるものではなく、第2実施形態においてブラケットB1,B2,B3とブラケットB1’,B2’,B3’を取り付けられる構造を説明したが、ブラケットB1,B2,B3とブラケットB1’,B2’,B3’とが同じブラケットである場合にも適用できる。この場合にはブラケットB3と、ブラケットB3’との切欠きCの位置が異なるが、一方を裏返して用いればよい。ただし、このように挿入口14にも挿入口14’にも同じブラケットを使用する場合には、ブラケットの挿入部が正方形であって係止部12の位置が対角線の中心であることが必要である。
また、筐体K、K’が取り付けられる車両部位としてフロントホイルハウス2を例に説明したが、車両において取り付けられる場所は限定されず、車両以外のものにも適用できる。
【符号の説明】
【0046】
10 取付面
K,K’筐体
2 フロントホイルハウス(被固定部)
B1,B2,B3 ブラケット
T 取付部分
S1,S2,S3 挿入部
11,11 ガイド部(被挿入部)
12 係止部
131,132,133 係止孔
14,14’ 挿入口
151,152,153,161,162,163 角部
151’,152’,153’ 角部
24,25 当接部
W1,W2,W3,W1’,W2’,W3’ 幅
L1,L2,L3,L1’,L2’,L3’ 長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの取付面を有する筐体と、前記筐体を被固定部に設置するブラケットとを備え、前記ブラケットは前記被固定部に取り付けられる取付部分と矩形で板状の挿入部を有し、前記筐体は前記取付面上に前記ブラケットの挿入部が前記取付面に沿って挿入される被挿入部と、前記筐体の取付面上に前記ブラケットの前記挿入部を係止する係止部とを備え、前記ブラケットの前記挿入部は前記筐体の前記係止部と嵌合する被係止部を備え、前記被係止部は前記係止部と嵌合することで前記ブラケットの前記挿入部と前記筐体の前記被挿入部が係止する筐体取付構造において、前記筐体の前記被挿入部は、前記ブラケットの前記挿入部を受け入れる挿入口と、前記ブラケットの前記挿入部を挿入したときに、前記挿入部の挿入方向端部の2つの角部と当接する2つの当接部とで構成され、前記挿入口は、前記筐体の前記取付面から離れるにつれて徐々に幅狭となる階段状に形成され、前記当接部の内側の形状は、前記挿入部を前記挿入口に挿入したとき、前記挿入部の異なる幅と前記挿入部の前記被係止部から挿入方向端部までの長さとに対応して前記挿入部の挿入方向端部が当接規制される形状に形成され、前記ブラケットの前記挿入部を前記筐体の前記挿入口に挿入したときに、前記挿入部の前記挿入方向端部が前記当接部と当接した状態でのみ前記ブラケットの前記被係止部と前記筐体の前記係止部とが嵌合することを特徴とする筐体取付構造。
【請求項2】
前記筐体の2つの当接部と前記挿入口とは離間して設けられ、前記筐体の前記被挿入部は、前記挿入口に対して略垂直方向を向いていると共に前記挿入口の一端部と前記一方の前記当接部とで構成される別の挿入口と、前記別の挿入口へ前記ブラケットの前記挿入部を挿入したとき該挿入部の一つの角部と当接する他方の前記当接部とを備え、前記別の挿入口は、前記筐体の前記取付面から離れるにつれて徐々に幅狭となる階段状に形成され、前記ブラケットの前記挿入部を前記筐体の前記別の挿入口に挿入したとき、前記挿入口の他端部と他方の前記当接部とが前記挿入部の異なる幅と前記挿入部の前記被係止部から挿入方向端部までの長さとに対応して当接する形状に形成され、前記ブラケットの前記挿入部を前記筐体の前記挿入口または前記別の挿入口に挿入したときに、前記挿入部の挿入方向端部が他方の前記当接部に当接した状態でのみ前記ブラケットの前記被係止部と前記筐体の前記係止部が嵌合することを特徴とする請求項1記載の筐体取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−21544(P2012−21544A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157873(P2010−157873)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】