説明

筐体構造、該筐体構造を備えた電子機器、および該筐体構造の製造方法

【課題】外観品位を低下させることなく、被載置面に対するがたつきを抑制することができる筐体構造を提供する。
【解決手段】被載置面3に対するがたつきを抑制する筐体構造は、筐体本体2と、収縮性部材7と、突き当て部品4と、を備える。この態様において、収縮性部材7は、筐体本体2の底面2aの一部に設けられている。突き当て部品4は、収縮性部材7の、底面2aとは反対側の部位に固定され、筐体本体2が被載置面3に載置されたときに被載置面3に突き当てられる。突き当て部品4は、収縮性部材7の収縮により底面2aに対する傾きが変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床や机などの被載置面に載置される面を持つ筐体構造、該筐体構造を備えた電子機器、該筐体構造の製造方法に関する。特に、底面に設けられて被載置面に突き当てられる突き当て部品を備える筐体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や携帯端末機などの電子機器は、カメラモジュールといった、電子機器の筐体から突出している部品を備えていることがある。このような電子機器では、電子機器の、当該部品を有する底面を床や机などの被載置面に向けて当該被載置面に載置した場合、電子機器が被載置面に対してがたつくことがある。
【0003】
底面に部品を備えた電子機器の、被載置面に対するがたつきについて、図5を用いて説明する。
【0004】
図5は、電子機器を被載置面に載置した状態の断面図である。図5に示すように、電子機器1は、中空の略直方体形状を有する筐体本体2と、筐体本体2の底面2aに設けられ、被載置面3に突き当てられる略直方体形状を有する突き当て部品4と、を備えている。
【0005】
電子機器1は、底面2aが鉛直方向下側を向くように被載置面3に載置されている。底面2aには突き当て部品4が設けられているため、底面2aが被載置面3に対して傾いている。具体的には、筐体本体2の一の端部Aが被載置面3に接触しており、端部Aから突き当て部品4が設けられている側へ向かうにつれて底面2aと被載置面3との間の隙間が大きくなっている。
【0006】
突き当て部品4の先端に位置する突き当て面4aは、底面2aと略平行に延びている。したがって、突き当て面4aは、底面2aが被載置面3に対して傾いている方向と同じ方向に、被載置面3に対して傾いている。すなわち、突き当て面4aにおける、底面2aの端部A側の端部Bから、端部Aとは反対側へ向かうにつれて突き当て面4aと被載置面3との間の隙間が大きくなっている。
【0007】
このように載置された電子機器1の、端部Bを通る鉛直線LBよりも端部Aとは反対側に位置する点Pにおいて、鉛直方向下向きの力が電子機器1に加えられた場合、電子機器1は、突き当て面4aが被載置面3へ向かう方向に回転させられる。また、点Pに加えられていた鉛直方向下向きの力が開放されたとき、電子機器1は元の状態(図5に示す状態)に戻る方向に回転させられる。このような電子機器1の回転が、電子機器1の被載置面3に対するがたつきとなっていた。
【0008】
特に、電子機器1が携帯電話機や携帯端末機器の場合、電子機器1の底面2aとは反対側の面にはタッチパネルや操作キーなどの操作部5が配設されている。操作部5は、鉛直線LBに対して端点Aとは反対側の領域に配設されている場合も多い。そのため、電子機器1の使用者が点Pの位置に配置された操作部5を鉛直方向下向きに押圧するたびに電子機器1ががたつくという問題がある。
【0009】
電子機器1のがたつきによって、使用者による操作部5の操作性が低下していた。また、電子機器1に設けられた表示部6に表示された文字や画像の、使用者からの見易さが低下していた。さらに、電子機器1と被載置面3とが衝突して衝突音が発生することがあった。そこで、電子機器1の被載置面3に対するがたつきを抑制する筐体構造が提案されている。
【0010】
特許文献1では、電子機器1の、被載置面3と接触する位置に、収縮性部材を備えた筐体構造が開示されている。図6は、特許文献1に開示されている筐体構造を備えた電子機器1を、被載置面3に載置した状態の断面図である。
【0011】
図6に示すように、特許文献1に開示されている筐体構造では、突き当て面4aに収縮性部材7が配設されている。電子機器1が被載置面3に載置されたとき、収縮性部材7が電子機器1の自重により鉛直方向に収縮させられ、突き当て部品4と被載置面3との間の隙間が埋められる。
【0012】
図6に示される電子機器1では、収縮性部材7の、端部Aとは反対側に位置する部分は、収縮性部材7の、端部A側に位置する部分よりも収縮されていない。したがって、点Pに鉛直方向下向きの力が電子機器1に加えられた場合、該力は収縮性部材7により吸収される。すなわち、収縮性部材7を備えていない電子機器1(図5)に比べて、収縮性部材7を備える電子機器1の回転は抑制され、がたつきが抑制される。その結果、使用者による、操作部5の操作性や表示部6に表示された文字や画像の見易さが向上する。また、電子機器1と被載置面3との衝突による衝突音が抑制される。
【0013】
さらに特許文献1では、収縮性部材7よる被載置面3への汚れを抑制することができる筐体構造が開示されている。具体的には、収縮性部材7の材質によっては、収縮性部材7が被載置面3に接触したときに、収縮性部材7の痕跡が被載置面に残り、該痕跡が汚れとなることがある。特許文献1では、この汚れを防止するために、収縮性部材7の、被載置面3側の面に、比較的硬い材質からなる弾性部材が設けられている。弾性部材が比較的硬いため、被載置面3に弾性部材が接触しても被載置面3に痕跡が残らないため、被載置面3の汚れが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−349777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1で開示されている筐体構造では収縮性部材7や弾性部材が露出されているため、電子機器1の外観が悪くなる虞がある。具体的には、特許文献1では、収縮性部材7としてエーテル系ポリウレタンが挙げられ、弾性部材として高密度ポリウレタンフォームが挙げられており、筐体本体2を形成する材料(例えば金属や樹脂)と異なっている。
【0016】
そのため、収縮性部材7や弾性部材が露出している部分だけ、他の部分と比べて色彩や光沢が異なり、外観が悪くなっている。また、エーテル系ポリウレタンや高密度ポリウレタンフォームでは、塗布可能な塗料が制限されるため、所望の色彩を得られないという課題もあった。
【0017】
特に、携帯電話機や形態端末機などの携帯型の電子機器1では、使用者が電子機器1を持ち運ぶときに、筐体本体2の底面2aが露出される。そのため、このような電子機器1では、底面2aの外観品位を高めておくことが望ましい。
【0018】
そこで、本発明の目的の一例は、外観品位を低下させることなく、筐体の、被載置面に対するがたつきを抑制することができる筐体構造、および該筐体構造の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様は、被載置面に対するがたつきを抑制する筐体構造であって、筐体本体と、収縮性部材と、突き当て部品と、を備える。この態様において、収縮性部材は、筐体本体の底面の一部に設けられている。突き当て部品は、収縮性部材の、底面とは反対側の部位に固定され、筐体本体が被載置面に載置されたときに該被載置面に突き当てられる。また、突き当て部品は、収縮性部材の収縮により底面に対する傾きが変化する。
【0020】
また、本発明の一つの態様は、筐体本体と、筐体本体の底面から突出し、該筐体本体を載置する際に被載置面に対して突き当たる突き当て部品と、を備える筐体構造の製造方法に係る。この態様において、突き当て部品を、収縮性部材を用いて前記筐体本体に取り付ける。
【発明の効果】
【0021】
本発明の筐体構造によれば、外観品位を低下させることなく、筐体の、被載置面に対するがたつきを抑制することができる。また、本発明の筐体構造の製造方法によれば、外観品位を低下させることなく、筐体の、被載置面に対するがたつきを抑制することができる筐体構造を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る電子機器を底面側から見たときの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電子機器を底面とは反対の側から見たときの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電子機器の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電子機器を、被載置面に載置したときの断面図である。
【図5】底面に部品を備えた電子機器の、被載置面に対するがたつきを説明するための断面図である。
【図6】特許文献1に係る筐体構造を図5に示す電子機器に適用し、被載置面に載置したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る筐体の筐体構造、および該筐体構造を備えた電子機器について図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1および図2は、本発明の実施形態に係る電子機器の斜視図である。本実施形態の説明では、電子機器を携帯電話機として扱うが、本発明は、床や机などの被載置面に載置された状態で使用される電子機器(ノートパソコンやキーボード、電子辞書など)に適用することができる。
【0025】
図1は、電子機器を、筐体本体の底面側から見たときの斜視図であり、図2は、電子機器を該底面とは反対の側から見たときの斜視図である。なお、本説明において、筐体本体の面のうちの、電子機器を被載置面に載置したときに被載置面の方を向く面を底面とする。
【0026】
図1に示すように、電子機器1は、略直方体形状を有する筐体本体2と、筐体本体2に設けられ、電子機器1が被載置面3に載置されたときに被載置面3に突き当てられる突き当て部品4と、を備えている。筐体本体2内には、電子機器1を動作させる電子部品(不図示)が収納されている。
【0027】
突き当て部品4としては、カメラモジュールが挙げられる。突き当て部品4の先端は略平面となっている(該平面を突き当て面4aと称す)。なお、突き当て面4aは平面に限られず、尖った形状でなければよい(例えば凹凸形状でもよい)。
【0028】
図2に示すように、筐体本体2の、底面2aとは反対側に位置する面には、電子機器1を操作するための、タッチパネルや操作キーなどの操作部5が設けられている。また、電子機器1には、文字や画像を表示する表示部6が設けられている。表示部6は、操作部5を操作する使用者から見える位置に配置されている。
【0029】
図3は、電子機器1を、底面2aに垂直で、突き当て部品4を通る面(図1に示すC−C面)で切断したときの断面図である。図3に示すように、筐体本体2と、突き当て部品4との間に、力を加えられたときに変形させられる収縮性部材7が設けられている。収縮性部材7としては、ゴムやクッション、バネが挙げられる。
【0030】
突き当て部品4は、収縮性部材7の、底面2aとは反対側の部位に固定されており、筐体本体2に直接固定されていない。したがって、収縮性部材7の収縮に伴って、突き当て部品4の、底面2aに対する傾きが変化する。収縮性部材7が収縮されていない状態では、突き当て面4aは底面2aとほぼ平行である。
【0031】
本実施形態では、収縮性部材7を電子機器1から露出させないように、底面2aの一部に凹部が形成されており、該凹部に収縮性部材7が配設されている。突き当て部品4を収縮性部材7に取り付けることによって、収縮性部材7が突き当て部品4により覆われる。収縮性部材7の露出面を覆うカバー部材を筐体本体2に設けて、電子機器1からの収縮性部材7の露出を防止してもよい。
【0032】
突き当て部品4がカメラモジュールといった電子部品の場合には、筐体本体2に収納されている電子部品と突き当て部品4とがフレキシブル基板(不図示)を介して電気的に接続される。
【0033】
なお、収縮性部材7および突き当て部品4は底面2aに2箇所以上設けられていてもよい。また、筐体本体2と突き当て部品4との間に2個以上の収縮性部材7を、筐体本体2から突き当て部品4へ向かう方向に重ねて配置しても、当該方向と交わる方向に並べて配置してもよい。
【0034】
次に、本実施形態に係る筐体構造を机や床などの被載置面に載置したときの動作について、図4を用いて説明する。図4(a)は、底面2aを被載置面3の方へ向けて電子機器1を被載置面3に載置させようとする直前の段階における電子機器1の断面図であり、図4(b)は、電子機器1を被載置面3に載置した段階における電子機器1の断面図である。ここでは、筐体本体2の一の端部Aが被載置面3に少なくとも接触した状態で電子機器1が被載置面3に載置されるものとする。
【0035】
図4(a)に示すように、電子機器1が被載置面3に載置される直前の段階では、筐体本体2aの端部Aと、突き当て部品4の突き当て面4aにおける端部A側の端部Bとが被載置面3に接触する。収縮性部材7は、筐体本体2および突き当て部品4から電子機器1の自重による圧縮力を受ける。
【0036】
このとき、収縮性部材7の、端部A側の部分は、収縮性部材7の、端部A側とは反対側の部分に比べてより大きな圧縮力を受ける。すなわち、収縮性部材7の、端部A側の部分は、収縮性部材7の、端部A側とは反対側の部分に比べてより大きく圧縮される。その結果、突き当て部品4は、端点Bを中心に、突き当て面4aが被載置面3に向かう方向に回転する。
【0037】
図4(b)に示すように、突き当て面4aが被載置面3と平行になったところで収縮性部材7の収縮および突き当て部品4の回転が止まり、電子機器1が被載置面3に載置された状態となる。
【0038】
収縮性部材7の、端部Aとは反対側に位置する部分は、収縮性部材7の、端部A側に位置する部分よりも収縮されていない。したがって、電子機器1の、端部Bを通る鉛直線LBよりも端部Aとは反対側に位置する点Pにおいて鉛直方向下向きの力が加えられても、当該力は収縮性部材7により吸収される。
【0039】
すなわち、収縮性部材7を備えていない電子機器1(図5)に比べて、収縮性部材7は、被載置面3aに対する底面2aの傾きが小さくなる方向に回転しにくく、がたつきが抑制される。その結果、使用者は、操作部5を操作しやすくなるとともに、表示部6に表示された文字や画像を見やすくなる。また、電子機器1と被載置面3との衝突による衝突音が抑制される。
【0040】
本実施形態例では、突き当て部品4が収縮性部材7を覆うように配置されているため、収縮性部材7が露出されていない。したがって、電子機器1の露出面を、突き当て部品4の外装や筐体本体2を形成する金属や樹脂材料などで統一することができ、電子機器1の外観品位が高まる。金属や樹脂材料などでは塗料が制限されないため、より外観品位を高めることができる。
【0041】
さらに、突き当て部品4を、カメラモジュールといった、電子機器1の機能を発揮する部品とすることにより、がたつきを抑制するためだけの部品を電子機器1に設ける必要がなくなる。その結果、電子機器1の外観品位の向上および製造コストの削減が可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1 電子機器
2 筐体本体
3 突き当て部品
4 被載置面
7 収縮性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被載置面に対するがたつきを抑制する筐体構造であって、
筐体本体と、
前記筐体本体の底面の一部に設けられた収縮性部材と、
前記収縮性部材の、前記底面とは反対側の部位に固定され、前記筐体本体が被載置面に載置されたときに該被載置面に突き当てられる突き当て部品であって、前記収縮性部材の収縮により前記底面に対する傾きが変化する突き当て部品と、を備えた、筐体の筐体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の筐体構造と、
前記筐体本体に収納された電子部品と、を備えた、電子機器。
【請求項3】
前記突き当て部品がカメラモジュールであり、
前記電子部品と前記カメラモジュールとがフレキシブル基板を介して電気的に接続されている、請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
筐体本体と、
前記筐体本体の底面から突出し、該筐体本体を載置する際に被載置面に対して突き当たる突き当て部品と、を備える筐体構造の製造方法であって、
前記突き当て部品を、収縮性部材を用いて前記筐体本体に取り付ける、筐体構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−199375(P2012−199375A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62296(P2011−62296)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】