説明

筒状保護被覆体及びその製造方法

【課題】筒状保護被覆体及びその製造方法において、液状の絶縁性シリコーンゴムでより均一に充填された絶縁層を形成することである。
【解決手段】ケーブル接続構造体1を保護する筒状保護被覆体10は、導電性シリコーンゴムで形成される筒状の外部半導電層12と、外部半導電層12の筒内に設けられる内部半導電層14と、外部半導電層12の両端に各々設けられる一対の筒状のストレスコーンと、外部半導電層12と、内部半導電層14と、一対のストレスコーン16、18と、ケーブル挿通孔28とにより囲まれた空間に充填され、液状の絶縁性シリコーンゴムを硬化して形成される絶縁層20と、を備え、一対のストレスコーン16、18の少なくとも1つは、液状の絶縁性シリコーンゴムを注入する注入口24を有し、一対のストレスコーン16、18の少なくとも1つは、空間内のガスを排気する排気口26を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状保護被覆体及びその製造方法に係り、特に、電力ケーブル同士を接続したケーブル接続構造体を保護する筒状保護被覆体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルは、様々な設置場所や外部環境において使用されるため、用途目的に応じて、防水や遮水などの機能をもつ保護被覆を施した多種多様なものが製造されている。そして、電力ケーブル同士を接続したケーブル接続構造体においても、用途目的に応じて、防水や遮水などの保護手段を施すことが行われている。
【0003】
ケーブル接続構造体は、一般的に、筒状に形成された筒状保護被覆体で覆われて保護されている。このような筒状保護被覆体は、例えば、円筒状の外部半導電層と、外部半導電層内に設けられた円筒状の内部半導電層と、外部半導電層の両端に設けられたストレスコーンと、外部半導電層と内部半導電層とストレスコーンとにより囲まれた空間に充填された絶縁層とから構成されている。筒状保護被覆体は、EPゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム等の高分子ゴム材料で成形されており、常温収縮可能に形成されている。
【0004】
特許文献1には、高圧CVケーブル等の電力ケーブルの絶縁接続部に用いられる常温収縮型ゴムユニットとして、解体可能な拡径部材上に拡径支持されており、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム等のゴム材を主体として形成される内部半導電層と、補強絶縁層と、外部半導電層と、補強絶縁層の両端側のストレスコーン部とを備え、内部半導電層、補強絶縁層、外部半導電層及びストレスコーン部を略円筒状にモールド成形してワンピースに形成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−223099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ケーブル接続構造体を被覆保護する筒状保護被覆体には、応力緩和特性等に優れていることからシリコーンゴムで形成された筒状保護被覆体が使用されている。筒状保護被覆体の絶縁層は、例えば、所定の金型に外部半導電層と内部半導電層とストレスコーンとを外部半導電層の軸方向が水平方向となるようにセットした後、外部半導電層と内部半導電層とストレスコーンとにより囲まれた空間に、外部半導電層における軸方向の略中央に設けられた注入口から液状の絶縁性シリコーンゴムを注入して成形される。
【0007】
液状の絶縁性シリコーンゴムは、外部半導電層における軸方向の略中央から軸方向に対して直交方向へ向けて注入されるので、外部半導電層における軸方向の両端部には液状の絶縁性シリコーンゴムが十分に充填されない可能性がある。また、液状の絶縁性シリコーンゴムは、外部半導電層における軸方向の略中央から充填されていくので、外部半導電層における軸方向の両端部では、空気等のガスの巻き込みにより絶縁層中にボイド等が生じる場合がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、より均一に絶縁性シリコーンゴムが充填されて形成された絶縁層を有する筒状保護被覆体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る筒状保護被覆体は、電力ケーブル同士を接続したケーブル接続構造体を保護する筒状保護被覆体であって、導電性シリコーンゴムで形成される筒状の外部半導電層と、前記外部半導電層の筒内に設けられ、導電性シリコーンゴムで形成され、前記ケーブル接続構造体における電力ケーブル同士の外被を剥いで露出した導体線を接続した導体接続部が挿入される筒状の内部半導電層と、前記外部半導電層の両端に各々設けられ、導電性シリコーンゴムで形成される一対の筒状のストレスコーンと、前記外部半導電層の内周面と、前記内部半導電層の外周面と、前記一対のストレスコーンと、前記内部半導電層の筒内と前記一対のストレスコーンの筒内とに連通して前記ケーブル接続構造体の電力ケーブルの外被被覆部が挿通されるケーブル挿通孔と、により囲まれた空間に充填され、液状の絶縁性シリコーンゴムを硬化して形成される絶縁層と、を備え、前記一対のストレスコーンの少なくとも1つは、前記液状の絶縁性シリコーンゴムを注入する注入口を有し、前記一対のストレスコーンの少なくとも1つは、前記空間内のガスを排気する排気口を有していることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る筒状保護被覆体において、前記一対のストレスコーンの各々は、ストレスコーン本体を備え、前記ストレスコーン本体は、前記外部半導電層の一端部に挿入され、前記ストレスコーン本体の基端側から先端側へ順次大径になるテーパ孔を有する立ち上がり部を含み、前記注入口と前記排気口とは、前記立ち上がり部の外周面と前記外部半導電層の内周面との間に連通して形成されることが好ましい。
【0011】
本発明に係る筒状保護被覆体において、前記ストレスコーン本体は、前記ストレスコーン本体の基端側に設けられ、放射方向の外方へ突出して形成される鍔部を有し、前記注入口と前記排気口とは、前記鍔部に設けられることが好ましい。
【0012】
本発明に係る筒状保護被覆体は、前記一対のストレスコーンの各々に、前記注入口と前記排気口とが設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る筒状保護被覆体において、前記排気口は、前記注入口よりも口径が小さいことが好ましい。
【0014】
本発明に係る筒状保護被覆体において、前記外部半導電層と、前記内部半導電層と、前記一対のストレスコーンを形成する導電性シリコーンゴムは、ミラブル型導電性シリコーンゴムであることが好ましい。
【0015】
本発明に係る筒状保護被覆体の製造方法は、電力ケーブル同士を接続したケーブル接続構造体を保護する筒状保護被覆体の製造方法であって、導電性シリコーンゴムで筒状の外部半導電層を形成する外部半導電層形成工程と、導電性シリコーンゴムで、前記ケーブル接続構造体における電力ケーブル同士の外被を剥いで露出した導体線を接続した導体接続部が挿入される筒状の内部半導電層を形成する内部半導電層形成工程と、導電性シリコーンゴムで一対のストレスコーンを筒状に形成するストレスコーン形成工程と、前記外部半導電層内に前記内部半導電層を配置し、前記外部半導電層の両端に前記一対のストレスコーンを各々配置し、前記内部半導電層の筒内と前記一対のストレスコーンの筒内とに、前記ケーブル接続構造体の電力ケーブルの外被被覆部が挿通されるケーブル挿通孔を形成する中子を挿通して筒状予備成形体を形成する筒状予備成形体形成工程と、前記外部半導電層の内周面と、前記内部半導電層の外周面と、前記一対のストレスコーンと、前記中子とにより囲まれた空間に、液状の絶縁性シリコーンゴムを注入した後、硬化して絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、を備え、前記一対のストレスコーンの少なくとも1つは、前記液状の絶縁性シリコーンゴムを前記空間内へ注入する注入口を有し、前記一対のストレスコーンの少なくとも1つは、前記空間内のガスを排気する排気口を有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る筒状保護被覆体の製造方法において、前記一対のストレスコーンの各々は、ストレスコーン本体を備え、前記ストレスコーン本体は、前記外部半導電層の一端部に挿入され、前記ストレスコーン本体の基端側から先端側へ順次大径になるテーパ孔を有する立ち上がり部を含み、前記注入口と前記排気口とは、前記立ち上がり部の外周面と前記外部半導電層の内周面との間に連通して形成されることが好ましい。
【0017】
本発明に係る筒状保護被覆体の製造方法において、前記ストレスコーン本体は、前記ストレスコーン本体の基端側に設けられ、放射方向の外方へ突出して形成される鍔部を有し、前記注入口と前記排気口とは、前記鍔部に設けられることが好ましい。
【0018】
本発明に係る筒状保護被覆体の製造方法は、前記一対のストレスコーンの各々に、前記注入口と前記排気口とが設けられていることが好ましい。
【0019】
本発明に係る筒状保護被覆体の製造方法において、前記筒状予備成形体形成工程は、前記一対のストレスコーンの各々を、前記注入口が前記筒状予備成形体の鉛直方向下側に位置し、前記排気口が前記筒状予備成形体の鉛直方向上側に位置するように配置することが好ましい。
【0020】
本発明に係る筒状保護被覆体の製造方法において、前記排気口は、前記注入口よりも口径が小さいことが好ましい。
【0021】
本発明に係る筒状保護被覆体の製造方法において、前記外部半導電層と、前記内部半導電層と、前記一対のストレスコーンを形成する導電性シリコーンゴムは、ミラブル型導電性シリコーンゴムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
上記構成の筒状保護被覆体及びその製造方法によれば、外部半導電層における軸方向の両端に設けられた一対のストレスコーンの少なくとも1つに液状の絶縁性シリコーンゴムを注入する注入口が設けられていると共に、一対のストレスコーンの少なくとも1つに空気等のガスを排気する排気口が設けられているので、液状の絶縁性シリコーンゴムが外部半導電層の軸方向に沿って一端側から他端側へ向けて注入口から注入されると共に、空気等のガスが排気口から排気されるので、より均一に絶縁性シリコーンゴムが充填された絶縁層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態において、ケーブル接続構造体を保護する筒状保護被覆体の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態において、筒状保護被覆体ユニットの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態において、ケーブル接続構造体に筒状保護被覆体を装着した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態において、筒状保護被覆体の製造方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態において、ストレスコーンの構成を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態において、他のストレスコーンの構成を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態において、筒状予備成形体の構成を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態において、外部半導電層の外周面とストレスコーンの外周面との間の隙間をシールする他のシール方法を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態において、他の筒状予備成形体の構成を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態において、絶縁層を形成した状態を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態において、外部半導電層の外周面とストレスコーンの外周面との間の隙間をシールする別のシール方法を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態において、電気特性試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、ケーブル接続構造体1を保護する筒状保護被覆体10の構成を示す断面図である。筒状保護被覆体10は、例えば、CVケーブル等の電力ケーブルにおける端部同士を接続したケーブル接続構造体1を被覆して保護するために用いられる。ケーブル接続構造体1は、各電力ケーブル2、4の外被被覆部2a、4aと、各電力ケーブル2、4の外被を剥いで導体線2b、4bを露出させた後、導体線2b、4bをスリーブ6で圧縮して直線接続した導体接続部8とを備えている。
【0025】
筒状保護被覆体10は、外部半導電層12と、内部半導電層14と、一対のストレスコーン16、18と、絶縁層20と、を備えている。
【0026】
外部半導電層12は、円筒状等の筒状に形成される。外部半導電層12は、カーボンブラック等の導電材料を添加した導電性シリコーンゴムで形成されている。
【0027】
内部半導電層14は、外部半導電層12の筒内に設けられ、円筒状等の筒状に形成される。内部半導電層14は、外部半導電層12と軸を揃えて設けられている。内部半導電層14は、例えば、外部半導電層12における軸方向の略中央に設けられる。
【0028】
内部半導電層14は、導電性シリコーンゴムで形成されている。内部半導電層14を形成する導電性シリコーンゴムには、外部半導電層12と同じ導電性シリコーンゴムを用いることが生産性向上の観点から好ましいが、外部半導電層12を形成する導電性シリコーンゴムと異なる導電性シリコーンゴムを用いてもよい。
【0029】
内部半導電層14の筒内には、ケーブル接続構造体1の導体接続部8が挿入される。内部半導電層14における軸方向の一端側と他端側とは、内部半導電層14における軸方向の中央部よりも層厚が厚く形成されており、中央部から一端側及び他端側に向けて大径となるテーパが各々設けられている。
【0030】
一対のストレスコーン16、18は、円筒状等の筒状に形成され、外部半導電層12における軸方向の両端に各々設けられる。ストレスコーン16、18は、外部半導電層12及び内部半導電層14と軸を揃えて設けられている。ストレスコーン16、18の筒内には、ケーブル接続構造体1の電力ケーブル2、4が挿入される。
【0031】
ストレスコーン16、18は、導電性シリコーンゴムで形成される。ストレスコーン16、18を形成する導電性シリコーンゴムには、外部半導電層12または内部半導電層14と同じ導電性シリコーンゴムを用いることが生産性向上の観点から好ましいが、外部半導電層12または内部半導電層14と異なる導電性シリコーンゴムを用いてもよい。
【0032】
一対のストレスコーン16、18の各々は、ストレスコーン本体16a、18aを備えている。ストレスコーン本体16a、18aは、外部半導電層12の各々一端部に挿入される立ち上がり部16b、18bと、鍔部16c、18cと、を有している。
【0033】
立ち上がり部16b、18bは、電界緩和のために、ストレスコーン本体16a、18aの基端側から先端側へ順次大径になるテーパ孔を有している。立ち上がり部16b、18bは、ストレスコーン16、18の軸方向に略同じ外径で形成されている。立ち上がり部16b、18bの外周面と外部半導電層12の内周面との間には環状の隙間22が設けられており、隙間22には絶縁層20が充填されている。
【0034】
鍔部16c、18cは、ストレスコーン本体16a、18aの基端側に、放射方向(例えば、径方向)の外方へ突出して形成されている。鍔部16c、18cは、外部半導電層12の外径と略同じ外径で形成されている。
ストレスコーン本体16a、18aには、電力ケーブル2、4を挿入するために、ストレスコーン本体16a、18aの基端側から後端側へ突出した円筒状のケーブル挿入口16d、18dが設けられている。
【0035】
一対のストレスコーン16、18の少なくとも1つには、絶縁層20を形成するための液状の絶縁性シリコーンゴムを注入する注入口24が設けられている。また、一対のストレスコーン16、18の少なくとも1つには、液状の絶縁性シリコーンゴムの注入時に、空気等のガスを排気する排気口26が設けられている。注入口24と排気口26とは、例えば、ストレスコーン16、18の鍔部16c、18cに形成される。なお、注入口24と排気口26との詳細については後述する。
【0036】
絶縁層20は、外部半導電層12の内周面と、内部半導電層14の外周面と、一対のストレスコーン16、18と、内部半導電層14の筒内と一対のストレスコーン16、18の筒内とに連通し、ケーブル接続構造体1における電力ケーブル2、4の外被被覆部2a、4aが挿通されるケーブル挿通孔28とにより囲まれた空間に、絶縁性シリコーンゴムを充填して形成されている。絶縁層20は、立ち上がり部16b、18bの外周面と外部半導電層12の内周面との間の環状の隙間22にも充填されている。絶縁層20は、注入口24から液状の絶縁性シリコーンゴムを注入した後、液状の絶縁性シリコーンゴムを硬化させて形成される。
【0037】
ストレスコーン16、18の外周面と外部半導電層12の外周面との間は、例えば、金属メッシュテープ等の導電テープ30で巻回されて電気的に接続されている。このように、筒状保護被覆体10は、シリコーンゴムにより一体型(ワンピース)で成形され、常温で収縮可能に形成されている。
【0038】
次に、筒状保護被覆体10の使用方法について説明する。
【0039】
筒状保護被覆体10は、ケーブル接続構造体1に装着するため拡径される。筒状保護被覆体10を拡径するために、筒状保護被覆体10にインナーコアを挿入して筒状保護被覆体ユニットを形成する。図2は、筒状保護被覆体ユニット32の構成を示す断面図である。
【0040】
インナーコア33は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂材料からなるリボンを螺旋状に巻回して円筒状等の筒状に形成されている。インナーコア33には、その筒周に沿って連続する螺旋状ノッチが設けられている。インナーコア33は、その筒外径がケーブル接続構造体1の外径より大きく形成される。インナーコア33の軸方向の一端部には、引出自在に配置されたつまみ部33aが設けられている。インナーコア33は、つまみ部33aを外方へ引き出すに従って、螺旋状のノッチを境目として、軸方向の一端側から他端側に向かって順次解体可能に形成されている。
【0041】
図3は、ケーブル接続構造体1に筒状保護被覆体10を装着した状態を示す断面図である。ケーブル接続構造体1への筒状保護被覆体10の装着は次のような方法で行われる。筒状保護被覆体ユニット32に一方の電力ケーブル2、4を通しておき、両方の電力ケーブル2、4の外被を剥いで導体線2b、4bを露出させる。次に、両方の電力ケーブル2、4の各端部を同軸的な突き合わせ配置にした後、両方の電力ケーブル2、4の導体線2b、4bをスリーブ6で圧縮して直線接続した導体接続部8を形成し、ケーブル接続構造体1を構成する。その後、筒状保護被覆体ユニット32をケーブル接続構造体1を覆うように移動配置する。そして、インナーコア33のつまみ部33aを外側へ引き出すことにより、インナーコア33が順次解体されて筒状保護被覆体10が収縮し、ケーブル接続構造体1が筒状保護被覆体10で覆われて保護される。以上により、ケーブル接続構造体1への筒状保護被覆体10の装着が完了する。
【0042】
次に、筒状保護被覆体10の製造方法について説明する。
【0043】
図4は、筒状保護被覆体10の製造方法を示すフローチャートである。筒状保護被覆体10の製造方法は、外部半導電層形成工程(S10)と、内部半導電層形成工程(S12)と、ストレスコーン形成工程(S14)と、筒状予備成形体形成工程(S16)と、絶縁層形成工程(S18)と、を備えている。
【0044】
外部半導電層形成工程(S10)は、導電性シリコーンゴムで筒状の外部半導電層12を形成する工程である。
【0045】
導電性シリコーンゴムには、ミラブル型シリコーンゴムや液状のシリコーンゴムを用いることができる。ミラブル型シリコーンゴムは、高粘度のシリコンポリマに架橋剤を添加して加熱硬化するタイプのシリコーンゴムである。架橋剤には、例えば、ジクミルパーオキサイド(DCP)等の有機過酸化物等が用いられる。液状のシリコーンゴムは、低粘度のシリコンポリマに架橋剤等を添加して硬化するタイプのシリコーンゴムである。液状のシリコーンゴムには、例えば、白金化合物を触媒とする付加反応によって硬化する付加型の液状シリコーンゴム、空気中の湿気と反応して硬化する縮合型の液状シリコーンゴム等がある。白金化合物としては、例えば、白金族の金属単体及びその化合物が用いられる。また、シリコーンゴムに導電性を付与するため導電性材料が添加される。導電性材料には、例えば、グラファイトやカーボンブラック等が用いられる。
【0046】
外部半導電層12は、成形が容易なことからミラブル型の導電性シリコーンゴムで形成されることが好ましい。外部半導電層12を形成する導電性シリコーンゴムには、例えば、HV4840U(東レ・ダウコーニング社製)を用いることができる。
【0047】
外部半導電層12は、一般的な、押出し成形や射出成形等のゴム成形方法で成形される。外部半導電層12は、例えば、筒状金型の中心に芯金を挿入し、筒状金型と芯金との間のキャビティにシリコーンゴム組成物を射出成形して形成される。導電性シリコーンゴムにHV4840U(東レ・ダウコーニング社製)を使用した場合の架橋条件は、架橋温度160℃から180℃、架橋時間10分から20分である。
【0048】
内部半導電層形成工程(S12)は、導電性シリコーンゴムで筒状の内部半導電層14を形成する工程である。
【0049】
導電性シリコーンゴムには、上述したミラブル型シリコーンゴムや液状のシリコーンゴムを用いることができる。内部半導電層14は、成形が容易なこと等からミラブル型の導電性シリコーンゴムで形成されることが好ましい。内部半導電層14を形成する導電性シリコーンゴムには、外部半導電層12と同じ導電性シリコーンゴムを用いることが生産性向上の点から好ましい。内部半導電層14は、外部半導電層12と同様に、一般的な、押出し成形や射出成形等のゴム成形方法で成形される。
【0050】
ストレスコーン形成工程(S14)は、導電性シリコーンゴムで一対の筒状のストレスコーン16、18を形成する工程である。
【0051】
導電性シリコーンゴムには、上述したミラブル型シリコーンゴムや液状のシリコーンゴムを用いることができる。ストレスコーン16、18は、成形が容易なこと等からミラブル型の導電性シリコーンゴムで形成されることが好ましい。ストレスコーン16、18を形成する導電性シリコーンゴムには、外部半導電層12や内部半導電層14と同じ導電性シリコーンゴムを用いることが生産性向上の点から好ましい。ストレスコーン16、18は、外部半導電層12及び内部半導電層14と同様に、一般的な、押出し成形や射出成形等のゴム成形方法で成形される。
【0052】
一対のストレスコーン16、18の少なくとも1つには、絶縁層20を形成するために液状の絶縁性シリコーンゴムを注入する注入口24が設けられる。また、一対のストレスコーン16、18の少なくとも1つには、液状の絶縁性シリコーンゴムの注入時に、空気等のガスを排気する排気口26が設けられる。
【0053】
図5は、ストレスコーン16、18の構成を示す断面図であり、図5(a)は、注入口24が設けられたストレスコーン16の構成を示す断面図であり、図5(b)及び図5(c)は、排気口26が設けられたストレスコーン18の構成を示す断面図である。
【0054】
注入口24は、図5(a)に示すように、ストレスコーンの鍔部16cに設けられることが好ましい。鍔部16c、18cに注入口24を設けることにより、立ち上がり部16bの外周面と外部半導電層12の内周面との間の狭い環状の隙間22にも液状の絶縁性シリコーンゴムを十分に充填することができる。注入口24は、液状の絶縁性シリコーンゴムが注入可能な大きさで形成される。注入口24は、例えば、ストレスコーン16の軸方向と略平行方向に形成される。注入口24は、例えば、8mmから12mmの口径でドリル等で穿孔して形成される。なお、注入口24は1箇所だけでなく、複数箇所に設けてもよい。
【0055】
排気口26は、図5(b)に示すように、ストレスコーン18の鍔部18cに設けられることが好ましい。鍔部18cに排気口26を設けることにより、立ち上がり部18bの外周面と外部半導電層12の内周面との間の隙間22に滞留しやすい空気等のガスを容易に排出することができる。排気口26は、空気等のガスが排気可能であると共に、液状の絶縁性シリコーンゴムが漏れにくい大きさで形成される。排気口26は、例えば、ストレスコーン18の軸方向と略平行方向に形成される。排気口26は、注入口24の口径より小さいことが好ましく、例えば、3mmから5mmの口径でドリル等で穿孔して形成される。
【0056】
排気口26aは、図5(c)に示すように、ストレスコーン18の軸方向に対して傾斜して設けられるようにしてもよい。排気口26aは、立ち上がり部18b側が、ケーブル挿入口18d側よりストレスコーン18の軸心に近接するように傾斜して形成されている。この傾斜方向に傾斜させて排気口26aを形成することにより、排気口26内でのガスの滞留が生じにくいのでより効率よくガスを排気することができる。なお、排気口26、26aは1箇所だけでなく、複数箇所に設けてもよい。
【0057】
図6は、他のストレスコーン50、52の構成を示す断面図であり、図6(a)及び図6(b)は、注入口24と排気口26の両方を設けたストレスコーン50、52の構成を示す断面図である。
【0058】
ストレスコーン50、52には、図6(a)及び図6(b)に示すように、注入口24と排気口26とが1箇所ずつ設けられている。注入口24と排気口26とは、例えば、ストレスコーン50、52の周方向に180度の間隔で設けられる。図6(a)に示すストレスコーン50では、注入口24の形状は、図5(a)に示す注入口24と同じ形状であり、排気口26の形状は、図5(b)に示す排気口26の形状と同じである。図6(b)に示すストレスコーン52では、注入口24の形状は、図5(a)に示す注入口24と同じ形状であり、排気口26aの形状は、図5(c)に示す排気口26aの形状と同じである。
【0059】
ストレスコーンに注入口24と排気口26の両方を設ける場合には、1つの注入口24と複数の排気口26とを設けてもよいし、複数の注入口24と1つの排気口26とを設けてもよいし、複数の注入口24と複数の排気口26とを設けるようにしてもよい。
【0060】
例えば、1つの注入口24と3つの排気口26とをストレスコーンの周方向に90度間隔で形成してもよいし、3つの注入口24と1つの排気口26とをストレスコーンの周方向に90度間隔で形成してもよい。また、例えば、2つの注入口24と2つの排気口26とをストレスコーンの周方向に90度間隔で形成してもよい。ストレスコーンの周方向の間隔についても90度に限定されることなく、例えば、45度や60度等の他の間隔としてもよい。
【0061】
一対のストレスコーンの組み合わせとしては、(1)一方のストレスコーンに注入口24のみが設けられ、他方のストレスコーンに排気口26のみが設けられる場合、(2)一方のストレスコーンのみに注入口24と排気口26とが設けられ、他方のストレスコーンには注入口24と排気口26とが設けられていない場合、(3)一方のストレスコーンに注入口24と排気口26とが設けられ、他方のストレスコーンにも注入口24と排気口26とが設けられている場合等がある。液状の絶縁性シリコーンゴムをムラなく効率よく注入するためには、両方のストレスコーンに注入口24と排気口26とが設けられていることが好ましい。
【0062】
筒状予備成形体形成工程(S16)は、外部半導電層12の筒内に内部半導電層14を配置し、外部半導電層12の両側に各々ストレスコーンを配置して筒状予備成形体を形成する工程である。図7は、筒状予備成形体54の構成を示す断面図である。
【0063】
筒状予備成形体54は、所定形状の金型(図示せず)に、外部半導電層12と内部半導電層14と一対のストレスコーン16、18とをセットして形成される。外部半導電層12は、その軸方向が水平方向になるようにしてセットされる。内部半導電層14は、外部半導電層12の筒内に設けられると共に、例えば、外部半導電層12における軸方向の略中央に配置される。内部半導電層14は、外部半導電層12と軸を揃えて配置される。
【0064】
一対のストレスコーン16、18は、外部半導電層12の軸方向の両側に各々配置される。一対のストレスコーン16、18は、外部半導電層12及び内部半導電層14と軸を揃えて配置される。各ストレスコーン16、18の立ち上がり部16b、18bは、外部半導電層12の筒内に挿入される。立ち上がり部16b、18bの外周面と外部半導電層12の内周面との間には、液状の絶縁性シリコーンゴムが注入可能な環状の隙間22が設けられている。
【0065】
一方のストレスコーン16には、注入口24が1箇所設けられ、他方のストレスコーン18には排気口26が1箇所設けられている。注入口24を有するストレスコーン16は、筒状予備成形体54の鉛直方向下側から液状の絶縁性シリコーンゴムを充填するために、注入口24が筒状予備成形体54の鉛直方向下側に位置するようにセットされることが好ましい。排気口26を有するストレスコーン18は、筒状予備成形体54の鉛直方向下側から徐々に液状の絶縁性シリコーンゴムが充填されていくのに伴って、筒状予備成形体54内の空気等のガスが筒状予備成形体54内の鉛直方向上側へ移動するために、排気口26が筒状予備成形体54の鉛直方向上側に位置するようにセットされることが好ましい。
【0066】
筒状予備成形体54には、ケーブル挿通孔28を形成するために、内部半導電層14の筒内と、各ストレスコーン16、18の筒内とに挿通する中子56が設けられる。中子56は、例えば、細長い円柱状で形成され、その表面が離型処理されている。
【0067】
外部半導電層12の外周面と、各ストレスコーン16、18の外周面との間の隙間は、液状の絶縁性シリコーンゴムが漏れないように離型材等のシール材58で巻回されてシールされる。絶縁層20を形成した後、シール材58は除去される。
【0068】
図8は、外部半導電層12の外周面と、ストレスコーン18の外周面との間の隙間をシールする他のシール方法を示す断面図である。なお、図8では、ストレスコーン18側の構成を示しているが、ストレスコーン16側の構成も同様の構成である。外部半導電層12の軸方向の両端と、ストレスコーン18の鍔部18cとに各々筒状突起60、62を設けると共に、これらの筒状突起60、62を突き合わせることにより突合せ部64を形成して、液状の絶縁性シリコーンゴムをシールしてもよい。なお、絶縁層20を形成した後、この突合せ部64は切断等されて除去される。
【0069】
図9は、他の筒状予備成形体70の構成を示す断面図である。筒状予備成形体70は、図7に示す筒状予備成形体54と一対のストレスコーンの構成が相違しており、その他の構成は同じである。
【0070】
筒状予備成形体70では、両方のストレスコーン50に、注入口24と排気口26とが設けられている。注入口24と排気口26とは、各ストレスコーン50の周方向に180度間隔で1箇所ずつ設けられている。各ストレスコーン50は、注入口24が筒状予備成形体70の鉛直方向下側に位置し、排気口26が筒状予備成形体70の鉛直方向上側に位置するようにセットされることが好ましい。筒状予備成形体70によれば、筒状予備成形体70の軸方向の両端部から液状の絶縁性シリコーンゴムが注入されるとともに、筒状予備成形体70の軸方向の両端部から空気等のガスが排気されるのでより効率よく液状の絶縁性シリコーンゴムを充填できる。なお、筒状予備成形体70では、両方のストレスコーン50の注入口24がお互いに対向して配置されている(注入口24の軸方向がお互いに一致している)が、お互いの注入口24の軸方向をずらすようにしてもよい。
【0071】
絶縁層形成工程(S18)は、一対のストレスコーン16、18の少なくとも1つの注入口24から液状の絶縁性シリコーンゴムを注入して絶縁層20を形成する工程である。
【0072】
液状の絶縁性シリコーンゴムには、白金化合物を触媒とする付加反応によって硬化する付加型の液状シリコーンゴムが用いられることが好ましい。空気中の湿気と反応して硬化する縮合型の液状シリコーンゴムの場合には、硬化時間が長くなるからである。液状の絶縁性シリコーンゴムには、例えば、LSR2030J(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社)が用いられる。
【0073】
絶縁層20は、液状の絶縁性シリコーンゴムをストレスコーン16の注入口24から注入して射出成形される。射出成形には、シリコーンゴムの一般的な射出成形装置が用いられる。液状の絶縁性シリコーンゴムの注入時の圧力は、例えば、6.86MPa(70kgf/cm)から8.82MPa(90kgf/cm)である。
【0074】
ストレスコーン16に注入口24が設けられているので、液状の絶縁性シリコーンゴムは、筒状予備成形体54の軸方向の端部から軸方向に沿って(軸方向に対して平行方向)に注入される。更に、注入口24が筒状予備成形体54の鉛直方向下側に位置しているので、液状の絶縁性シリコーンゴムは、筒状予備成形体54の鉛直方向下側から鉛直方向上側へ向けて充填される。また、注入口24がストレスコーン16の鍔部16cに設けられているので、立ち上がり部16bの外周面と外部半導電層12の内周面との間の環状の隙間22にも液状の絶縁性シリコーンゴムが充填される。
【0075】
筒状予備成形体54内の空気等のガスは、ストレスコーン18の排気口26から排気される。排気口26が筒状予備成形体54の鉛直方向上側に位置しているので、液状の絶縁性シリコーンゴムが筒状予備成形体54の鉛直方向下側から鉛直方向上側へ向けて充填されるのに伴って、筒状予備成形体54の鉛直方向下側から鉛直方向上側へ移動した空気等のガスが効率よく排気される。また、排気口26がストレスコーンの鍔部18cに設けられているので、立ち上がり部18bの外周面と外部半導電層12の内周面との間の環状の隙間22に空気等のガスの滞留することが抑制される。
【0076】
筒状予備成形体54内に液状の絶縁性シリコーンゴムを注入して充填した後、筒状予備成形体54を加熱して液状の絶縁性シリコーンゴムを架橋して硬化させる。液状の絶縁性シリコーンゴムの架橋条件は、絶縁性シリコーンゴムの種類により異なるが、例えば、LSR2030J(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社)を使用した場合には、架橋温度110℃から120℃、架橋時間20分から25分である。
【0077】
筒状予備成形体54内に注入された液状の絶縁性シリコーンゴムを加熱硬化した後、中子56が取り出される。図10は、絶縁層20を形成した状態を示す断面図である。外部半導電層12の内周面と、内部半導電層14の外周面と、一対のストレスコーン16、18と、中子56とにより囲まれた空間に絶縁層20が形成される。中子56が入れられた部位には、ケーブル接続構造体1の外被被覆部2a、4aを挿通するケーブル挿通孔28が形成されている。絶縁層20を形成した後、シール材58は除去される。そして、シール材58が除去されたことにより、外部半導電層12の外周面と、ストレスコーン16、18の外周面との間に露出した絶縁層20を覆うために、金属メッシュテープ等の導電テープ30が巻回される。以上により、筒状保護被覆体10の製造が完了する。
【0078】
なお、液状の絶縁性シリコーンゴムの注入時に外部半導電層12の外周面とストレスコーン18の外周面との間の隙間をシールするために、図7、図8に示すシール方法とは別のシール方法を用いてもよい。図11は、外部半導電層の外周面とストレスコーンの外周面との間の隙間をシールする別のシール方法を示す断面図である。なお、図11では、ストレスコーン18側の構成を示しているが、ストレスコーン16側の構成も同じ構成である。
【0079】
図11(a)は、液状の絶縁性シリコーンゴムを注入する前の状態を示す断面図である。ストレスコーン18の筒状突起60aと、外部半導電層12の筒状突起62aとは、絶縁層20が外部半導電層12の外周面とストレスコーン18の外周面とから放射方向(例えば、径方向)の外方へ突出させて形成されるように各々設けられる。そして、液状の絶縁性のシリコーンゴムをシールするために、ストレスコーン18の筒状突起60aと、外部半導電層12の筒状突起62aとが突き合わされて突合わせ部64aが形成されている。
【0080】
図11(b)は、液状の絶縁性シリコーンゴムを注入して硬化させた状態を示す断面図である。ストレスコーン18の筒状突起60aと、外部半導電層12の筒状突起62aとにより囲まれた環状の隙間には、絶縁層20aが外部半導電層12の外周面とストレスコーン18の外周面とから突出して形成される。
【0081】
図11(c)は、突合わせ部64aの一部を切断して、ストレスコーン18の筒状突起60aと、外部半導電層12の筒状突起62aとの間の絶縁層20aを露出させた状態を示す断面図である。突合わせ部64aの切断方法は、絶縁層20aがストレスコーン18の筒状突起60a及び外部半導電層12の筒状突起62aよりも放射方向の外方へ突出するように、円弧状等の凸状に切断される。
【0082】
図11(d)は、筒状保護被覆体10がケーブル接続構造体1へ拡径されて装着されたときにおける絶縁層20a付近の拡大図である。突合わせ部64aを筒状保護被覆体10の軸方向に対して平行方向に切断して絶縁層を露出させた場合には、筒状保護被覆体10がケーブル接続構造体1へ拡径されて装着されたとき、導電性シリコーンゴムと絶縁性シリコーンゴムとの収縮率の違いから絶縁層が放射方向(例えば、径方向)の内方へ凹状に窪む形状になる。これに対して、図11(c)に示すように絶縁層20aがストレスコーン18の筒状突起60a及び外部半導電層12の筒状突起62aよりも放射方向(例えば、径方向)の外方へ突出するように切断されることにより、筒状保護被覆体10が拡径されたとき、図11(d)に示すように、ストレスコーン18の筒状突起60aと、外部半導電層12の筒状突起62aと、絶縁層20aとの端面が略水平に同一面となるので絶縁層20aの窪みを抑えることができる。
【0083】
また、外部半導電層12と、内部半導電層14と、一対のストレスコーン16、18とを形成する導電性シリコーンゴムには有機過酸化物を架橋剤とする導電性シリコーンゴムを使用し、絶縁層20を形成する絶縁性シリコーンゴムには、白金化合物を架橋剤とする絶縁性シリコーンゴムを使用することが好ましい。筒状保護被覆体10をこのシリコーンゴムの組み合わせで成形することにより、外部半導電層12、内部半導電層14及び一対のストレスコーン16、18と、絶縁層20との間の接合強度を、接着剤等を使用しなくても十分確保することができる。
【0084】
上記構成によれば、一対のストレスコーンの少なくとも一方に液状の絶縁性シリコーンゴムを注入する注入口が設けられているので、液状の絶縁性シリコーンゴムを筒状予備成形体の一端側から他端側まで軸方向に沿って注入することができる。また、一対のストレスコーンの少なくとも一方に空気等のガスを排気する排気口が設けられているので、液状の絶縁性シリコーンゴムの注入時に筒状予備成形体内の空気等のガスが排気される。そのため、筒状予備成形体内のガスを排気するための真空装置等を用いる必要がない。以上により、筒状予備成形体内に均一に液状の絶縁性シリコーンゴムを注入して充填することができるので、筒状保護被覆体の絶縁層がより均一に充填されて形成される。
【0085】
上記構成によれば、注入口がストレスコーンの鍔部に設けられているので、立ち上がり部の外周面と外部半導電層の内周面との間の環状の隙間にも液状の絶縁性シリコーンゴムが充填される。また、排気口がストレスコーンの鍔部に設けられているので、立ち上がり部の外周面と外部半導電層の内周面との間の環状の隙間に空気等のガスが滞留することが抑制される。
【0086】
上記構成によれば、注入口が筒状予備成形体の鉛直方向下側となるようにストレスコーンを配置することにより、液状の絶縁性シリコーンゴムが筒状予備成形体の鉛直方向下側から鉛直方向上側へ向けて充填されていくので、筒状予備成形体内により均一に液状シリコーンゴムを注入することができる。また、排気口が筒状予備成形体の鉛直方向上側となるようにストレスコーンを配置することにより、液状の絶縁性シリコーンゴムが筒状予備成形体の鉛直方向下側から鉛直方向上側へ向けて充填されるのに伴って、筒状予備成形体の鉛直方向下側から鉛直方向上側へ移動した空気等のガスをより効率よく排気することができる。
【実施例】
【0087】
上記構成の製造方法により、筒状保護被覆体10の製造を行った。
【0088】
外部半導電層12と、内部半導電層14と、一対のストレスコーン16、18とを、導電性シリコーンゴムで成形した。導電性シリコーンゴムには、HV4840U(東レ・ダウコーニング社製)を使用した。HV4840U(東レ・ダウコーニング社製)は、オクタメチルシクロテトラシロキサンと、シリカと、カーボンブラックとを含んでいるミラブル型導電性シリコーンゴムである。
【0089】
外部半導電層12、内部半導電層14及び一対のストレスコーン16、18を各々所定形状の金型を用いて射出成形した。成形条件は、いずれも架橋温度160℃から180℃、架橋時間10分から20分とした。
【0090】
外部半導電層12と、内部半導電層14と、一対のストレスコーン16、18とは、図1に示す形状と略同じ形状で成形した。外部半導電層12については、外径80mm、長さ500mmの円筒状に成形した。内部半導電層14については、外径30mm、長さ250mmの略円筒状に成形した。ストレスコーンについては、ストレスコーン本体16a、18aの立ち上がり部16b、18bの外径を60mmとし、鍔部16c、18cの外径を80mmとした。一方のストレスコーンに注入口24を形成し、他方のストレスコーンに排気口26を形成した。注入口24と排気口26とは、ストレスコーンの鍔部16c、18cにストレスコーンの軸方向と平行方向となるようにドリル加工で形成した。注入口24の口径は10mmとし、排気口26の口径は4mmとした。
【0091】
次に、外部半導電層12と、内部半導電層14と、一対のストレスコーン16、18とを、図7に示す配置と同じ配置で所定形状の金型にセットした。注入口24が形成されたストレスコーン16については、注入口24が鉛直方向下側になるように配置した。排気口26が形成されたストレスコーン18については、排気口26が鉛直方向上側になるように配置した。また、内部半導電層14の筒内と、一対のストレスコーン16、18の筒内とに中子56を入れ、中子56を入れた部位には絶縁層20が形成されないようにした。また、外部半導電層12の外周面とストレスコーン16、18の外周面との間の隙間をシール材58でシールした。
【0092】
ストレスコーン16の注入口24から液状の絶縁性シリコーンゴムを注入して、外部半導電層12と、内部半導電層14と、一対のストレスコーン16、18と、中子56とにより囲まれた空間に絶縁層20を形成した。液状の絶縁性シリコーンゴムには、LSR2030J(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社)を使用した。LSR2030Jは、ポリアルキルアルケニルシロキサンと、シリカと、白金化合物とを含んで構成されている。液状の絶縁性シリコーンゴムを注入口24から注入圧力7.84MPa(80kgf/cm)で注入した。液状の絶縁性シリコーンゴムの硬化条件は、架橋温度110℃から120℃、架橋時間20分から25分とした。絶縁層20を形成した後、シール材58を除去した。
【0093】
以上により、筒状保護被覆体10を製造した。製造した筒状保護被覆体10を切断して目視観察した結果、絶縁層20は均一に充填されて形成されており、未充填部等は認められなかった。また、立ち上がり部16b、18bの外周面と外部半導電層12の内周面との間の環状の隙間22にもボイド等は認められなかった。
【0094】
次に、外部半導電層12、内部半導電層14及びストレスコーン16、18と、絶縁層20との密着性を評価するため密着性試験を行った。密着性試験は、JIS K6854−2「接着剤―はく離接着強さ試験方法―第2部:180度はく離」に準拠して行った。
【0095】
試験片は、導電性シリコーンゴムを架橋させた後、架橋した導電性シリコーンゴムに液状の絶縁性シリコーンゴムを密着させた状態で架橋させて作製した。導電性シリコーンゴムには、外部半導電層12、内部半導電層14及びストレスコーンを成形した材料と同じ材料であるHV4840U(東レ・ダウコーニング社製)を使用した。絶縁性シリコーンゴムには、絶縁層20を成形した材料と同じ材料であるLSR2030J(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社)を使用した。HV4840U(東レ・ダウコーニング社製)とLSR2030J(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社)の硬化条件は、上述した架橋温度、架橋時間と同じである。密着性試験結果によれば、密着力は3kgfから6kgfであり十分な密着力を有していた。
【0096】
次に、電気特性試験を行った。電気特性試験は、JEC 3408「特別高圧(11kVから275kV)架橋ポリエチレンケーブルおよび接続部高電圧試験法」に準拠して行った。試験片は、上述した密着性試験と同様の成形方法、成形条件で作製した。図12は、電気特性試験結果を示す図である。AC耐電圧試験、Imp耐電圧試験、長期課通電試験のいずれの試験も合格であった。
【符号の説明】
【0097】
1 ケーブル接続構造体
2、4 電力ケーブ
2a、4a 外被被覆部
2b、4b 導体線
6 スリーブ
8 導体接続部
10 筒状保護被覆体
12 外部半導電層
14 内部半導電層
16、18 ストレスコーン
20 絶縁層
16a、18a ストレスコーン本体
16b、18b 立ち上がり部
16c、18c 鍔部
22 間隙
16d、18d ケーブル挿入口
24 注入口
26 排気口
28 ケーブル挿通孔
30 導電テープ
32 筒状保護被覆体ユニット
33 インナーコア
33a つまみ部
26a 排気口
50、52 ストレスコーン
54 筒状予備成形体
56 中子
58 シール材
60、62 筒状突起
64 突合わせ部
70 筒状予備成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブル同士を接続したケーブル接続構造体を保護する筒状保護被覆体であって、
導電性シリコーンゴムで形成される筒状の外部半導電層と、
前記外部半導電層の筒内に設けられ、導電性シリコーンゴムで形成され、前記ケーブル接続構造体における電力ケーブル同士の外被を剥いで露出した導体線を接続した導体接続部が挿入される筒状の内部半導電層と、
前記外部半導電層の両端に各々設けられ、導電性シリコーンゴムで形成される一対の筒状のストレスコーンと、
前記外部半導電層の内周面と、前記内部半導電層の外周面と、前記一対のストレスコーンと、前記内部半導電層の筒内と前記一対のストレスコーンの筒内とに連通して前記ケーブル接続構造体の電力ケーブルの外被被覆部が挿通されるケーブル挿通孔と、により囲まれた空間に充填され、液状の絶縁性シリコーンゴムを硬化して形成される絶縁層と、
を備え、
前記一対のストレスコーンの少なくとも1つは、前記液状の絶縁性シリコーンゴムを注入する注入口を有し、
前記一対のストレスコーンの少なくとも1つは、前記空間内のガスを排気する排気口を有していることを特徴とする筒状保護被覆体。
【請求項2】
請求項1に記載の筒状保護被覆体であって、
前記一対のストレスコーンの各々は、ストレスコーン本体を備え、
前記ストレスコーン本体は、前記外部半導電層の一端部に挿入され、前記ストレスコーン本体の基端側から先端側へ順次大径になるテーパ孔を有する立ち上がり部を含み、
前記注入口と前記排気口とは、前記立ち上がり部の外周面と前記外部半導電層の内周面との間に連通して形成されることを特徴とする筒状保護被覆体。
【請求項3】
請求項2に記載の筒状保護被覆体であって、
前記ストレスコーン本体は、前記ストレスコーン本体の基端側に設けられ、放射方向の外方へ突出して形成される鍔部を有し、
前記注入口と前記排気口とは、前記鍔部に設けられることを特徴とする筒状保護被覆体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の筒状保護被覆体であって、
前記一対のストレスコーンの各々に、前記注入口と前記排気口とが設けられていることを特徴とする筒状保護被覆体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の筒状保護被覆体であって、
前記排気口は、前記注入口よりも口径が小さいことを特徴とする筒状保護被覆体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の筒状保護被覆体であって、
前記外部半導電層と、前記内部半導電層と、前記一対のストレスコーンを形成する導電性シリコーンゴムは、ミラブル型導電性シリコーンゴムであることを特徴とする筒状保護被覆体。
【請求項7】
電力ケーブル同士を接続したケーブル接続構造体を保護する筒状保護被覆体の製造方法であって、
導電性シリコーンゴムで筒状の外部半導電層を形成する外部半導電層形成工程と、
導電性シリコーンゴムで、前記ケーブル接続構造体における電力ケーブル同士の外被を剥いで露出した導体線を接続した導体接続部が挿入される筒状の内部半導電層を形成する内部半導電層形成工程と、
導電性シリコーンゴムで一対のストレスコーンを筒状に形成するストレスコーン形成工程と、
前記外部半導電層内に前記内部半導電層を配置し、前記外部半導電層の両端に前記一対のストレスコーンを各々配置し、前記内部半導電層の筒内と前記一対のストレスコーンの筒内とに、前記ケーブル接続構造体の電力ケーブルの外被被覆部が挿通されるケーブル挿通孔を形成する中子を挿通して筒状予備成形体を形成する筒状予備成形体形成工程と、
前記外部半導電層の内周面と、前記内部半導電層の外周面と、前記一対のストレスコーンと、前記中子とにより囲まれた空間に、液状の絶縁性シリコーンゴムを注入した後、硬化して絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
を備え、
前記一対のストレスコーンの少なくとも1つは、前記液状の絶縁性シリコーンゴムを前記空間内へ注入する注入口を有し、
前記一対のストレスコーンの少なくとも1つは、前記空間内のガスを排気する排気口を有することを特徴とする筒状保護被覆体の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の筒状保護被覆体の製造方法であって、
前記一対のストレスコーンの各々は、ストレスコーン本体を備え、
前記ストレスコーン本体は、前記外部半導電層の一端部に挿入され、前記ストレスコーン本体の基端側から先端側へ順次大径になるテーパ孔を有する立ち上がり部を含み、
前記注入口と前記排気口とは、前記立ち上がり部の外周面と前記外部半導電層の内周面との間に連通して形成されることを特徴とする筒状保護被覆体の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の筒状保護被覆体の製造方法であって、
前記ストレスコーン本体は、前記ストレスコーン本体の基端側に設けられ、放射方向の外方へ突出して形成される鍔部を有し、
前記注入口と前記排気口とは、前記鍔部に設けられることを特徴とする筒状保護被覆体の製造方法。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1つに記載の筒状保護被覆体の製造方法であって、
前記一対のストレスコーンの各々に、前記注入口と前記排気口とが設けられていることを特徴とする筒状保護被覆体の製造方法。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか1つに記載の筒状保護被覆体の製造方法であって、
前記筒状予備成形体形成工程は、前記一対のストレスコーンの各々を、前記注入口が前記筒状予備成形体の鉛直方向下側に位置し、前記排気口が前記筒状予備成形体の鉛直方向上側に位置するように配置することを特徴とする筒状保護被覆体の製造方法。
【請求項12】
請求項7から11のいずれか1つに記載の筒状保護被覆体の製造方法であって、
前記排気口は、前記注入口よりも口径が小さいことを特徴とする筒状保護被覆体の製造方法。
【請求項13】
請求項7から12のいずれか1つに記載の筒状保護被覆体の製造方法であって、
前記外部半導電層と、前記内部半導電層と、前記一対のストレスコーンを形成する導電性シリコーンゴムは、ミラブル型導電性シリコーンゴムであることを特徴とする筒状保護被覆体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−157124(P2012−157124A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12910(P2011−12910)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】