説明

管型白熱ヒータ、定着装置

【課題】白熱電球の外部導入線と給電線との確実な接続を実現しながら、ベース部材を含めたヒータ長を変えることなく発光部を長くする。
【解決手段】管型外囲管の内部に所定の発光分布のコイル状フィラメントおよび不活性ガスが封装され、両端部にピンチシール部を形成するとともに、該ピンチシール部からフィラメントに接続した外部導入線を管軸に沿い導出された白熱電球11のピンチシール部15が遊嵌に挿入可能な嵌合凹部211およびピンチシール部15から導出した外部導入線19が遊挿される導入線挿通孔215を形成した耐熱性電気絶縁体でベース部材21が構成される。ピンチシール部15をベース部材21に保持する前に、電力が供給される給電線23と外部導入線19を圧着端子28により接続し、ピンチシール部15をベース部材21に保持するときに、圧着端子28を導入線挿入孔215に位置させた状態で、ベース部材21にピンチシール部15が挿入された状態を保持する耐熱性の接着剤29を注入し固着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機やプリンターのトナー定着装置に用いられる管型白熱ヒータおよびこのヒータを用いたトナー定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の管型白熱ヒータは、予めピンチシール部から延在された外部導入線に給電線を接続し、この給電線をベース部材(口金)の導通孔に挿通させるとともに、ピンチシール部を円筒型大径部の凹部内に合致挿入させ、ピンチシール部と大径部との間の空隙に無機接着剤をベース部材の外周面に充填注入し硬化させ、管型白熱ヒータをベース部材に支持している。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開平―5−299064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、外部リード線と給電線との接続は、溶接等の手段で直接接続されているが、接続の面積が少ないことから機械的な強度が小さくなる可能性がある。また、ベース部材を長さが短い場合は、外部リード線の軸方向以外の力に対する機械的な作用で断線等の可能性があり、発光部を長く取るには限界があった。
【0004】
この発明の目的は、白熱電球の外部導入線と給電線との確実な接続を実現しながら、ベース部材を含めたヒータ長を変えることなく発光部を長くすることが可能な管型白熱ヒータおよびこれを用いた定着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の管型白熱ヒータは、管型外囲管の内部に所定の発光分布のコイル状フィラメントおよび不活性ガスが封装され、両端部にピンチシール部を形成するとともに、該ピンチシール部からフィラメントに接続した外部導入線を管軸に沿い導出された白熱電球と、前記ピンチシール部が遊嵌に挿入可能な嵌合凹部および各片側の前記ピンチシール部から導出した外部導入線が遊挿される導入線挿通孔が耐熱性電気絶縁体で形成されたベース部材と、前記ピンチシール部を前記ベース部材に保持する前に、電力が供給される給電線を圧着するとともに前記外部導入線を接続し、前記導入線挿入孔に配置された圧着端子と、前記ベース部材に前記ピンチシール部が挿入された状態を保持する耐熱性の接着剤とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、白熱電球の外部導入線と電力を供給するための給電線との確実な接続を実現しながら、ベース部材を含めた白熱ヒータ長を変えることなく発光部を長くすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1〜図6は、この発明の管型白熱ヒータの第1の実施形態について説明するための、図1は一部を切り欠いて示した正面図、図2(a)は図1の要部の正面図、(b)は図1の要部の側面図、図3は図1要部の分解斜視図、図4は図1要部の接続について説明するための説明図、図5は図1要部の接続された状態について説明するための説明図、図6は図1要部の接続状態について説明するための斜視図である。
【0008】
図1〜図3において、11は、ヒータの役目を果たす直管型の白熱電球である。白熱電球11は、管状石英ガラス製のバルブ12内部に長尺フィラメント13を収容し、相対する方向から金型で押し潰して成形されたピンチシール部14,15がそれぞれ形成されている。バルブ12内には、それぞれ微量のハロゲン物質たとえば臭素Brと塩素Clとの混合物とともに、アルゴンArや窒素Nなどの不活性ガスが、常温25℃で約0.9×10Paの圧力封入してある。
【0009】
フィラメント13は、タングステン素線を巻回して形成された複数のコイル状部131…、これらコイル状部131…間に粗巻き状や直線状の飛び部や両端にレグ部132を備え、中間部において複数のサポート部材133…により支持される。
【0010】
また、ピンチシール部14,15内には、バルブ12と熱膨張率が近似するモリブデン(Mo)箔などの金属箔16,17がそれぞれ気密に封止される。金属箔16,17のそれぞれの一端側にはフィラメント13端部のレグ部132が溶接などの手段で接続されるとともに、他端側には白熱電球11外に管軸にほぼ沿う方向に導出させたモリブデンやタングステン線からなる外部導入線18,19(図3では18を非図示)がそれぞれ溶接などの手段で接続する。
【0011】
20,21は、白熱電球11の両端に配置されるステアタイトなどのセラミックスからなる円筒形状の絶縁性のベース部材である。22,23は、ベース部材20,21内でバルブ12の外部導入線18,19に電気的に一端が接続された給電線である。給電線22,23の他端は、端子24,25に電気的に接続される。26,27は端子24,25と給電線22,23が電気的に接続された箇所を絶縁するための樹脂性の絶縁材である。
【0012】
ここで、ベース部材20,21について説明するが、ベース部材20,21は同様に構成をしており、図2、図3では片側のベース部材21を示している。
【0013】
ベース部材21にはそれぞれ白熱電球11のピンチシール部15を遊嵌して挟持するための嵌合凹部211を形成する。嵌合凹部211の底部212までの対向側面には切欠部213,214を形成する。嵌合凹部211の底部212には、外部導入線19や給電線23の外径より径大で遊びをもって通される導入線挿通孔215が形成されている。
【0014】
ところで、図1に示すようにベース部材20,21と発光部aとの関係は、ベース部材間支持距離b=発光部a+ガラス加工部c×2となっている。発光部aの寸法は、ベース部材間支持距離bとガラス加工部cとに依存している。図2(b)に示すように、ピンチシール部15が支持される支持部寸法eは、例えば8mm程度とする。ベース部材21の支持部寸法dは、嵌合凹部211の深さe+支持部のボトムの厚みgとからなる。厚みgは、嵌合凹部211の深さeに対し30%程度とする。なお、嵌合凹部211や導入線挿通孔215に各コーナーには内側に曲面を有するコーナーCと外側に曲面を有するコーナーRが形成される。
【0015】
次に、ベース部材21を介して給電線23と白熱電球11の外部導入線19の接続について説明する。
先ず、図3に示すように、給電線23をベース部材21の導入線挿通孔215から図中矢印x方向に通し、図4に示すように圧着端子28の一端側に形成された圧着片281,282を図中破線を谷折りにする格好で曲げて圧着片281と282の間に位置させた給電線23を圧着させて保持する。圧着端子28の他端には外部導入線19と溶接を行う接続部283を形成する。
【0016】
圧着端子28に外部導入線19が接続された状態で図5に示すように、ベース部材21を嵌合凹部211の底部212とピンチシール部15が当接する位置まで図中矢印y方向に移動させる。このときピンチシール部15はベース部材21の嵌合凹部211に対し遊嵌された状態にある。また、ピンチシール部15から給電線23の導体231が剥き出しになる位置までの距離hは、導入線挿通孔215の長さfよりも短くなっている。
【0017】
圧着端子28により外部導入線19と給電線23が接続され、ベース部材21の嵌合凹部211にピンチシール部15に遊嵌された状態の嵌合凹部211に図6に示すように接着剤29を注入しベース部材21と白熱電球11を取着する。接着剤29は、例えばアルミナを主成分とするペースト状のもので耐熱セメントである。
【0018】
このように、ベース部材21の導入線挿通孔215内で、外部導入線19と給電線23が圧着端子28を介して接続されたことから、給電線23の軸方向とは異なる方向に、給電線23の力が加わった場合でも圧着端子28が導入線挿通孔215内面に当接する。このため直ぐには圧着端子28と外部導入線19の接続部分には力が作用しないことから、圧着端子28と外部導入線19の接続が外れにくいものとなる。また、外部導入線19を溶接させる接続部283が給電線23の導体231より幅が大きいために確実な接続を実現することができる。
【0019】
さらに、嵌合凹部211や導入線挿通孔215には内側コーナーに曲面を有するコーナーCと外側コーナーに曲面を有するコーナーRが形成されたことにより、ピンチシール部15のクラック発生を抑えることもできる。
【0020】
図7〜図9は、この発明の管型白熱ヒータの第2の実施形態について説明するための、図7は第1の実施形態の図4に相当する説明図、図8は図5に相当する構成図、図9は図8の要部の断面図である。この実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明する。
【0021】
この実施形態は、図7に示すように圧着端子28の接続部283をなくし、圧着片281,282で給電線23を圧着接続し、この接続部分に図9に示すように外部導入線19を溶接したものである。
【0022】
この実施形態の場合、接続部283をなくした分だけピンチシール部15から、図8に示すように給電線23の導体231が剥き出しになった部分までの距離h’を短くすることができる。このため、図1の寸法cを変えることなく発光部aを長くすることが可能となる。
なお、この実施形態では、給電線23とともに圧着片281,282で圧着接続してもよいし、圧着片281と282の裏面側に圧着端子28に外部導入線19を溶接してもよい。
【0023】
上記した第1および第2の実施形態では、白熱電球11が1灯使いのものについて説明したが、図10は異なる配光パターン2灯を使用した変形例を示すものである。
【0024】
図10は、複数本の白熱電球11をベース部材2111に取り付けた場合を示すものである。ベース部材2111は、図3に示すベース部材21を単純に2個合体させた格好になっている。そして、2灯の白熱電球11,11はベース部材2111に遊嵌されていることから、所望の発熱分布が得られるように白熱電球11の軸方向に調整して取り付けることができる。
【0025】
図11は、図10の他の変形例を示すもので、この場合は、ベース部材2111の切欠部213,214をなくしたものである。つまり、白熱電球11のピンチシール部15が嵌合凹部211に挿入されたときにピンチシール部15の四側面を囲む格好となる。
【0026】
この場合は、図10の持つ効果に加え、ピンチシール部15を四面がしっかり支持することができることから、嵌合凹部211の底部212までの深さを浅くしても確実な支持が期待でき、深くした場合には、図1の寸法bがそのままでも発光部aを長くすることが可能となる。
【0027】
図12は、白熱電球を図11のベース部材2111を用いて2灯使いした管型白熱ヒータ装置100を電子複写機200に装着させた場合の、この発明のトナー定着装置の一実施形態について説明するための概略的な構成図である。
【0028】
図中121,122は上下に対向配置された長尺の加熱ローラで、これら加熱ローラ121,122はアルミニウムや鉄製の管状体それぞれの表面に、シリコンゴムやテフロン(登録商標)などの被覆材123,124で被覆されている。
【0029】
また、加熱ローラ121,122のうちのほぼ中心軸上には、2灯の白熱電球11,11で構成される管型白熱ヒータ装置100が図示しない支持部材を介し配設されており、図示しない電源部に接続して通電されると、白熱電球11,11のフィラメントがそれぞれ発熱して加熱ローラ121,122がヒートアップ(昇温)する。
【0030】
図示しない転写ドラムなどからトナーTが所定分布状態に転写された複写紙Pが矢印方向に回転するヒートアップされた加熱ローラ121,122間に送り込ませることで、複写紙Pおよび前の工程で塗布されたトナーT1が上下から加熱され、加熱されたトナーT2が溶融後複写紙P上に定着し、所定の文字や図柄などとして描かれる。
【0031】
この実施形態の場合、複写機に装着されるトナー定着装置200は、2灯点灯させた場合の発光分布の均一化を図ることが可能となり、管型白熱ヒータ装置100に基づくトナー定着の効率の向上を図ることが可能となる。
【0032】
異なる定格の白熱電球11,11を用いることは、複写機などにおいての露光を必要とするものなどや複写機などにおいての露光用や定着用として用紙の大きさに対応させたり、余熱からの立ち上がりを短時間で行わせたりするなどに活用できる。
【0033】
管型白熱ヒータ装置100の端部に配設するベース部材2111は、少なくとも一端側に備えられていれば熱伸縮に対応できるので片側のみであってもよい。また、管型白熱ヒータ装置100に取り付ける白熱電球は、2灯(本)に限らず、2灯以上の複数灯であってもよく、ベース部材2111の外部導入線の挿通孔数などは灯数に応じて形成すればよい。また、管型白熱ヒータ装置100の保持は、ベース部材や端子部材を活用することにより端子台や取付台などに容易に固定させることができる。
【0034】
なお、加熱ローラ121,122はいずれも加熱ローラである必要はなく、一方は加圧ローラであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の管型白熱ヒータ装置の第1の実施形態について説明するための一部を切り欠いて示した正面図。
【図2】図1の要部の(a)は正面図、(b)は側面図。
【図3】図3は図1要部の分解斜視図。
【図4】図1要部の接続について説明するための説明図。
【図5】図1要部の接続された状態について説明するための説明図。
【図6】図1要部の接続状態について説明するための斜視図。
【図7】この発明の管型白熱ヒータ装置の第2の実施形態するための図4に相当する説明図。
【図8】図5に相当する構成図。
【図9】図8の要部の断面図。
【図10】この発明の管型白熱ヒータ装置のベース部材の変形例について説明するための斜視図。
【図11】この発明の管型白熱ヒータ装置のベース部材の他の変形例について説明するための斜視図。
【図12】この発明のトナー定着装置の一実施形態について説明するための概略的な構成図。
【符号の説明】
【0036】
11 白熱電球
12 バルブ12
13 フィラメント
14,15 ピンチシール部
18,19 外部導入線
20,21 ベース部材
22,23 給電線
211 嵌合凹部
212 底部
213,214 切欠部
215 導入線挿通孔
28 圧着端子
281,282 圧着片
283 接続部
29 接着剤
100 管型白熱ヒータ装置
200 トナー定着装置
121,122 加熱ローラ
123,124 被覆材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管型外囲管の内部に所定の発光分布のコイル状フィラメントおよび不活性ガスが封装され、両端部にピンチシール部を形成するとともに、該ピンチシール部からフィラメントに接続した外部導入線を管軸に沿い導出された白熱電球と、
前記ピンチシール部が遊嵌に挿入可能な嵌合凹部および各片側の前記ピンチシール部から導出した外部導入線が遊挿される導入線挿通孔が耐熱性電気絶縁体で形成されたベース部材と、
前記ピンチシール部を前記ベース部材に保持する前に、電力が供給される給電線を圧着するとともに前記外部導入線を接続し、前記導入線挿入孔に配置された圧着端子と、
前記ベース部材に前記ピンチシール部が挿入された状態を保持する耐熱性の接着剤とを具備したことを特徴とする管型白熱ヒータ。
【請求項2】
前記外部導入線は、前記給電線が圧着接続された位置の前記圧着端子に接続したことを特徴とする請求項1記載の管型白熱ヒータ。
【請求項3】
上下に配置され少なくとも一方は加熱される第1および第2のローラと、
前記第1または第2のローラ内に配置された請求項1記載の管型白熱ヒータと、
予めトナーが転写された複写紙が前記第1および第2のローラとの間を移動させて前記トナーを定着させる手段とを具備したことを特徴とするトナー定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−331952(P2006−331952A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156254(P2005−156254)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】