説明

管理機

【課題】均平作業と畝立て作業とを容易に切り替えられ、「外盛り」「内盛り」の両畝立て作業が可能な畝立装置の提供を課題とする。
【解決手段】前記ロータリーカバー23の後端部に、着脱可能、かつ、上下回動自在に取り付けられ、左右対称に構成される左右一対の第一成形板52・52と第二成形板53R・53Lとを備え、該第一成形板52・52と第二成形板53R・53Lは、それぞれ左右一側に斜辺を有し、該斜辺にヒンジ部をそれぞれ設けて第一成形板52・52と第二成形板53R・53Lを回動自在に連結し、前記左右の第一成形板52・52を機体左右中央でロータリーカバー23に固定する状態と、前記左右の第一成形板52・52を機体左右両側でロータリーカバー23に固定する状態と、に切り替え可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理機の後部に装着したローター耕耘装置の後部に設ける畝立装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圃場における耕耘作業等においては、複数の耕耘爪からなるロータリーを備えたローター耕耘装置を機体後部に装着し、畝立て作業を行う場合には、該ローター耕耘装置の後部に培土板または畝立装置を装着するようにしている。
このように畝立て作業を行うためには、培土板または畝立装置を装着する必要があるため、連結部をローター耕耘装置の後部に設け、強固に支持するために大型化が避けられない。そこで、簡単な構成で培土器をローター耕耘装置の後部に設ける技術が公知となっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−161122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記「特許文献1」に示すような管理機の場合、外盛り(機体左右両側に畝を形成する方式)の畝立て作業を行う構成となっており、内盛り(機体左右中央に畝を形成する方式)の畝立て作業はできない構成となっている。そのため、一畝の形成に「外盛り」作業を二度行う必要があることから、作業効率が悪かった。
そこで、本発明においては、均平作業と畝立て作業とを容易に切り替えられ、「外盛り」「内盛り」の両畝立て作業が可能な畝立装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、走行部の後部にローター耕耘装置を配設し、該ローター耕耘装置のロータリーの上方を覆うロータリーカバーを備える管理機において、前記ロータリーカバーの後端部に、着脱可能、かつ、上下回動自在に取り付けられ、左右対称に構成される左右一対の第一成形板と第二成形板とを備え、該第一成形板と第二成形板は、それぞれ左右一側に斜辺を有し、該斜辺にヒンジ部をそれぞれ設けて第一成形板と第二成形板を回動自在に連結し、前記左右の第一成形板を機体左右中央でロータリーカバーに固定し、左右の第二成形板を第一成形板に対してヒンジにより回動自在に支持する状態と、前記左右の第一成形板を機体左右両側でロータリーカバーに固定し、左右の第二成形板を第一成形板に対してヒンジにより回動自在に支持する状態と、に切り替え可能に構成したものである。
【0007】
請求項2においては、前記第一成形板、及び第二成形板の左右他側の側辺には、それぞれ縁部を形成し、左右の第一成形板の縁部同士、または、左右の第二成形板の縁部同士を当接させて固定可能に構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、耕耘作業に用いる成形板を用いて、畝立て作業を行うことが可能となる。よって、畝立装置等を別途設ける必要がなく、工具を用いた脱着作業の煩わしさが解消されるばかりか、管理機全体の重量軽減も図られ、作業者が管理機を操作するうえで、操作性が向上する。
また、畝立て作業の際には左右に配置される成形板の取付位置を互いに入れ替えることで、容易に「外盛り」から「内盛り」への切換えを行うことが可能となる。よって一畝ごとの形成が可能となり、畝立て作業時間の短縮化が図られ効率的である。
【0010】
請求項2においては、「外盛り」仕様であっても「内盛り」仕様であっても縁部同士を連結固定することにより、左右の成形板を一枚の板状に一体化して、均平作業が容易にできるようになる。また、連結を解除することにより容易に「外盛り」仕様と「内盛り」仕様に変更可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係る管理機の全体的な構成を示した側面図。
【図2】成形板の全体的な構成を示した背面図。
【図3】成形板の左側部の構成を示した背面図。
【図4】成形板上部の支点軸近傍の断面を示した図であり(a)は図3における矢視A−A’から見た断面側面図、(b)は同じく矢視B−B’から見た断面側面図、(c)は同じく矢視C−C’から見た断面側面図、(d)は同じく矢視D−D’から見た断面側面図、(e)は同じく矢視E−E’から見た断面側面図、(f)は同じく矢視F−F’から見た断面側面図。
【図5】同じく支点軸の摺動状態を示した背面図。
【図6】外盛作業時における成形板の折曲状態を示した背面図。
【図7】左右両成形板の配置を交換した場合の全体的な構成を示した背面図。
【図8】内盛作業時における成形板の折曲状態を示した背面図。
【図9】外盛作業時における耕耘作業部近傍を示した側面図。
【図10】内盛作業時における耕耘作業部近傍を示した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
[管理機1の全体構成]
まず、本実施例に係る管理機1の全体構成について、図1を用いて説明する。
管理機1は前後中央にミッション部2、その前部に原動機部3、その後部にローター耕耘装置5を配設している。ミッション部2は側面視略へ字状に形成され、該ミッション部2の前側下部を走行部4とし、該ミッション部2の前後中央上部からハンドル26が後部上方へ延設されて、該ハンドル26後部を操作部6としている。
【0013】
前記ミッション部2の左側面には入力軸11が突設され、前記ミッション部2内部には変速機構が収納され、原動機部3の駆動力が前記入力軸11に伝えられ、変速機構を介して走行部4やローター耕耘装置5に伝達されるようになっている。
【0014】
前記原動機部3は、ミッション部2の前部に取付けられる原動機載置台12や、該原動機載置台12の上部に載設される原動機13等により構成される。
【0015】
前記走行部4は、ミッション部2の前下部に左右両水平方向に支持される車軸16・16や、該車軸16・16の左右両端部に固設される車輪17・17等により構成される。
【0016】
前記ローター耕耘装置5は、ミッション部2の後下部に左右水平方向に支持される耕耘爪軸18や、該耕耘爪軸18上に植設される複数の耕耘爪20・20・・・や、ロータリーカバー23等により構成される。また、該耕耘爪軸18と複数の耕耘爪20・20・・・とによりロータリー21が構成される。
【0017】
前記ロータリーカバー23は耕耘爪20・20・・・の回動軌跡22の上方を覆い、該ロータリーカバー23の後部には、後述する畝立装置51が配設されている。
【0018】
前記ミッション部2の後部上からは支持ブラケット24が後上方に向かって延設され、該支持ブラケット24に耕深調節バー25が上下位置調節可能に取り付けられている。該耕深調節バー25は、ローター耕耘装置5によって作業を行う時に耕耘深さを調節するためのものであり、また、左右中央部の残耕部分を耕起処理する残耕処理具としての機能をも有している。
【0019】
耕深調節バー25の下端部には、後方に突出する底板19が設けられ、該底板19の後端部には、固定部材56・56が設けられている。該固定部材56・56は、畝立て作業の「外盛り」の際に、畝立装置51の左右中央の下端部を固定するためのものである。
なお、ロータリーカバー23の左右両側面の下部には、後述する固定部材58・58が設けられている。
【0020】
前記操作部6は、前部がミッション部2の前後中央部に固設された平面視略門型状のハンドル26と、該ハンドル26の後端部に取り付けられるクラッチレバー27と、ミッション部2の前後中央部より後上方に突出される変速レバー28等を備える。
【0021】
[畝立装置51]
次に、本発明に係る畝立装置51の詳細について、図2乃至図4を用いて説明する。なお、図4における矢印Zは前方を示すものであり、以下これに基づいて左右方向を規定する。
【0022】
畝立装置51はその前部がロータリーカバー23の後部に上下回動自在に取り付けられる。該畝立装置51は左右一対の第一成形板52・52と第二成形板53R・53Lとにより構成され、畝立て作業を行う場合に、第一成形板52・52、または第二成形板53R・53Lをロータリーカバー23に固定するものである。また、前記右側の成形板(第一成形板52と第二成形板53R)と左側の成形板(第一成形板52と第二成形板53L)は左右対称に構成され、左右に分離可能であり、左右を一体に固定して一枚の均平板として使用することも可能としている。
本実施例では、左右の成形板は左右対称に構成しているので、左側の第一成形板52と第二成形板53Lについて説明する。
【0023】
前記第一成形板52と第二成形板53Lはそれぞれ台形に形成して、それぞれの斜辺をヒンジを介して連結することで長方形となる構成としている。つまり、第一成形板52と第二成形板53Lの各左右一側の斜辺の傾斜角は一致させ、左右他側の側辺は上辺及び下辺に対して直角となるように構成している。
【0024】
まず、第一成形板52について、説明する。
第一成形板52は後面視逆台形状に形成される平板材からなる。
第一成形板52の、機体左右方向外側の斜辺の上下中途には、筒状のヒンジ部材(筒状部材)52aが設けられ、第一成形板52の機体左右方向内側の側辺(前後方向の辺)は上方に折り曲げて縁部52dを形成し、該縁部52dには固定孔52e・52e(図10を参照)が複数開口されている。該第一成形板52の上辺には、機体左右中央側に第一成形板側掛止部52bが設けられ、該第一成形板側掛止部52bから所定間隔をあけて第二成形板側掛止部52cが設けられている。
【0025】
ここで、図3、図4(a)に示すように、第一成形板側掛止部52bは、第一成形板52の機体左右中央側の上側辺から矩形片を上方に突出して側面視略U字状に湾曲して折り曲げ形成され、前方が開放する構成とし、その内部空間には後述する支点軸55を収納できる大きさとしている。
つまり、第一成形板側掛止部52bの曲率半径は支点軸55の半径よりも若干大きく構成している。
【0026】
また、第二成形板側掛止部52cは、図4(c)に示すように、第一成形板52の機体左右外側の上辺から矩形片を上方に突出して側面視略L字状に後方に折り曲げ形成されている。この屈曲部の曲率半径は支点軸55の半径よりも若干大きく構成している。
【0027】
このように、第一成形板52の上側辺には、第一成形板側掛止部52bと、第二成形板側掛止部52cとが設けられ、この成形板側掛止部52b・52cの湾曲部(或いは屈曲部)の湾曲中心は、機体左右水平方向に延出する同一直線上となるように配設されている。
【0028】
次に、第二成形板53Lについて説明する。
第二成形板53Lは平板材を平面視略台形状に形成され、機体左右中央側に斜辺を有する構成とし、該斜辺の角度、及び長さは前記第一成形板52の斜辺の角度、及び長さと略一致させて、第一成形板52と第二成形板53Lとを連結した状態で長方形となる形状としている。
【0029】
第二成形板53Lの機体左右方向外側の側辺(前後方向の辺)は、上方に折り曲げて縁部53dを形成し、該縁部53dには固定孔53e・53e(図9を参照)が複数開口されている。
【0030】
前記第二成形板53Lの斜辺の中途には、ヒンジを構成する二個の筒状部材53a・53aが所定間隔をあけて固設される。該筒状部材53a・53aの間隔は前記第一成形板52に設けられる筒状部材52aの両側に位置するように配設されるとともに、該筒状部材53a・53aと筒状部材52aの内径は略同一として同一軸心上に配設して回動軸54を挿入し、第二成形板53Lが第一成形板52に対して回動自在に連結されている。
【0031】
前記回動軸54の両端部(或いは、一方の端部)には、付勢手段としての捻りコイルバネ30・30が、前記回動軸54上に設けられ、該捻りコイルバネ30・30により第二成形板53Lが機体前方に回動するように付勢されている。
【0032】
第二成形板53Lの上側辺の左右中央には、第三成形板側掛止部53cが設けられる。該第三成形板側掛止部53cの左右幅は第一成形板側掛止部52bの左右幅と同じ長さとしている。
そして、前記第三成形板側掛止部53cは、図4(e)に示すように、第二成形板53Lの上辺の左右中央から矩形片を上方に突出して、側面視逆U字状に下方が開放するように湾曲して折り曲げ形成され、その折り曲げ部の曲率半径は、支点軸55の半径よりも若干大きくなるように構成している。
【0033】
また、第三成形板側掛止部53cの湾曲部の湾曲中心は、機体左右水平方向となるようにして設けられ、前記成形板側掛止部52b・52cの湾曲中心と略同一直線上となるように配設される。
【0034】
[畝立装置51の取付構造]
次に、前記畝立装置51の取付構造の詳細について、図2乃至図8を用いて説明する。
ロータリーカバー23の後下部には、長手方向を左右方向とする板部材からなる保持部材57R・57Lが、左右両側にボルト等により着脱可能に固設される。但し、これら保持部材57R・57Lは一体的に構成することも可能であり、更に言えば、ロータリーカバー23に一体的に構成することも可能である。
前記保持部材57R・57Lは、機体中央に対して互いに左右対称となるように形成されるため、以下左側の保持部材57Lについて詳述し、右側の保持部材57Rの説明は省略する。
【0035】
保持部材57Lの下側辺には機体中央から外方に向けて、第四カバー側掛止部57dと、第一カバー側掛止部57aと、第二カバー側掛止部57bと、第三カバー側掛止部57cとが設けられる。
【0036】
前記第一カバー側掛止部57aは、図4(b)に示すように、保持部材57Lの後下側辺の機体左右中央側(図2における右側)において、側面視略U字状に前方が開放するように折り曲げ形成され、この折り曲げ部の曲率半径は支点軸55の半径よりも僅かに大きくなるように形成される。
そして、前記第一カバー側掛止部57aは前記第一成形板側掛止部52bと第二成形板側掛止部52cとの間に配置される。
【0037】
第三カバー側掛止部57cは、保持部材57Lの下側辺の最外側(図2における左側)に配置され、その機体内側に所定間隔をあけて第二カバー側掛止部57bが配置される。つまり、該第二カバー側掛止部57bと第三カバー側掛止部57cの間に前記第三成形板側掛止部53cが配置される。
【0038】
第四カバー側掛止部57dは、前記第三カバー側掛止部57cと左右対称に形成され、第二カバー側掛止部57bと第三カバー側掛止部57cとの間の距離と、第一カバー側掛止部57aと第四カバー側掛止部57dと、の間の距離は同じ長さとしている。
つまり、第二カバー側掛止部57bと第三カバー側掛止部57cとの間に形成される凹部と、第一カバー側掛止部57aと第四カバー側掛止部57dとの間に形成される凹部とを同じ形状として、この凹部に第一成形板側掛止部52b、または第三成形板側掛止部53cを嵌合できる構成としている。
【0039】
第二カバー側掛止部57b、及び第三カバー側掛止部57cは、図4(d)、及び図4(f)に示すように、保持部材57Lの下側辺部から側面視略U状に上方が開放されるように湾曲して折り曲げ形成され、その湾曲部の曲率半径は、支点軸55の半径よりも若干大きくなるように構成している。
【0040】
このように、ロータリーカバー23の後下部の左右両側に設けられる保持部材57R・57Lの下側辺には、第一カバー側掛止部57a・57aと、第二カバー側掛止部57b・57bと、第三カバー側掛止部57c・57cと、第四カバー側掛止部57d・57dとが、機体中央に対して左右対称に各々設けられ、これらカバー側掛止部57a・57a・57b・57b・57c・57c・57d・57dに形成される湾曲部の湾曲中心は、機体左右水平方向に同一直線上に配設される。
【0041】
次に、支点軸55について説明する。
支点軸55は丸棒部材からなり、左右二本の支点軸55が各々カバー側掛止部57a・57b・57c・57dと成形板側掛止部52b・52c・53cの湾曲部の中心を一致させた状態で、その中心部に配設され、保持部材57L(57R)の下部に畝立装置51の上部を枢支する構成としている。そして、保持部材57L(57R)はロータリーカバー23の後下部に固設されており、換言すれば、畝立装置51はその上部において、支点軸55を介して前記ロータリーカバー23の後部に枢支される構成としている。
【0042】
前記支点軸55の長手方向中央部には直角方向に突出する把持部55aが形成され、該把持部55aは取り付け状態において、第二成形板側掛止部52cが配設される部分に位置するように構成される。
【0043】
つまり、ロータリーカバー23の後下側部の左側(或いは、右側)において、保持部材57L(57R)の下側辺に設けられる第三カバー側掛止部57cと、第二カバー側掛止部57bとの間に、第二成形板53L(53R)に設けられる第三成形板側掛止部53cが配設され、第二カバー側掛止部57bと、第一カバー側掛止部57aとの間に、第二成形板側掛止部52cが配設され、第一カバー側掛止部57aと第四カバー側掛止部57dとの間に第一成形板側掛止部52bが配設される。
【0044】
そして、これらカバー側掛止部57a・57b・57c・57dと、成形板側掛止部52b・52c・53cとが、交互に配置されることで、支点軸55によって畝立装置51はロータリーカバー23の後下端部に吊設されるのである。
【0045】
つまり、カバー側掛止部57a・57b・57c・57dと成形板側掛止部52b・52c・53cは従来のパイプを溶接したりネジ等で固定するヒンジを用いることなく、ロータリーカバー23の後下側部の左側(或いは、右側)に固設した保持部材57L(57R)の下端部、及び畝立装置51の上端部に左右方向交互に突片を設けて、該突片を互いに反対方向に略U字状に折り曲げ形成してカバー側掛止部57a・57b・57c・57dと成形板側掛止部52b・52c・53cを形成することで、互いに支点軸55に引っ掛けることとなり、ロータリーカバー23の後下端部に畝立装置51の上端部を揺動自在に係止できるようになるのである。
【0046】
そして、カバー側掛止部57a・57b・57cに支点軸55を係止した状態から、支点軸55を左右摺動させることで、畝立装置51をロータリーカバー23の後部に対して着脱することが可能となる。
例えば左側の成形板を外す場合には、支点軸55を右側へ摺動させて、支点軸55の左端を第三成形板側掛止部53cから抜き、第二成形板53Lを上方へ持ち上げる。その後、支点軸55の把持部55aを固定手段29を避けながら第二カバー側掛止部57bの開放部まで摺動させることで、支点軸55の右端が第一成形板側掛止部52bから外れ、第一成形板52を取り外すことができる。
【0047】
なお、支点軸55の長手方向の寸法は、機体左右中央から畝立装置51の左右両側部までの距離に比べて短く形成されており、詳しくは、支点軸55の一端部を機体左右中央に位置させた場合に、他端部は、前記第二カバー側掛止部57bの機体外方の側部に位置するように形成されている。
【0048】
そして、支点軸55は把持部55aが第二カバー側掛止部57bと第一カバー側掛止部57aとの間の左右幅の範囲で左右摺動可能となっており、外側(図3において左側)に把持部55aを位置させた(図5上段に示す)状態では、支点軸55はカバー側掛止部57a・57b・57cと、成形板側掛止部52b・52c・53cに係止された状態となっており、第一成形板52・52と第二成形板53R・53Lは一体的に前後回動する。
この状態では均平板として作用する。なお、縁部52d・52dに形成した固定孔52e・52eにはボルト31・31が挿入されナットを螺装して第一成形板52・52は連結固定されている。
【0049】
次に、把持部55aを内側(図3において右側)に把持部55aを位置させた(図5下段に示す)状態では、支点軸55は、第三カバー側掛止部57cと第三成形板側掛止部53cから外れ、カバー側掛止部57a・57b・57dと成形板側掛止部52b・52cに係止された状態となっており、第二成形板53R・53Lは回動軸54・54を中心に後方に回動可能となる。
【0050】
そして、保持部材57L(57R)の左右中央において、前記第二成形板側掛止部52cの近傍には、支点軸55がカバー側掛止部57a・57b・57cと成形板側掛止部52b・52c・53cとを係止した位置で前記把持部55aを固定するための固定手段29が設けられている。
【0051】
即ち、図3に示すように、前記固定手段29は、後方に突出する二枚の板部材29a・29aと、ボルトや丸棒部材等からなるロックピン29bと、により構成されており、前記板部材29a・29aには予め機体左右方向に貫通する貫通孔が設けられている。
【0052】
そして、把持部55aを前記板部材29a・29aの間に配設し、該把持部55aの外側の位置でロックピン29bを前記板部材29a・29aに挿入して固定することで、該把持部55aは支点軸55の軸心を中心に回転することができないため固定でき、支点軸55は軸心方向に摺動することができなくなるのである。
【0053】
なお、固定手段29の構成は、本実施例の構成に限定されるものではなく、例えば、クランプ機構等を設けて把持部55aを上方に延出する姿勢に保持するものであってもよく、また、支点軸55の軸方向への摺動動作を保持する機構であればよい。
【0054】
このように、畝立装置51を構成する右側の第一成形板52と、右側の第二成形板53Rとは、支点軸55を介して、右側の保持部材57Rの下部に枢支されるとともに、左側の第一成形板52と、左側の第二成形板53Lとは、支点軸55を介して、左側の保持部材57Lの下部に枢支される。そして、これら左右の保持部材57R・57Lが、ロータリーカバー23の後下部の左右両側に各々固設される。
【0055】
その結果、図6に示すように、畝立装置51全体としては、その平面中央に二本の回動軸54・54が、軸線を逆ハ字状になるようにして配設されることとなり、前記支点軸55・55を各々機体中央に摺動することで、畝立装置51の左右両側部(第二成形板53R・53L)を各々機体後方に回動することができる。
【0056】
つまり、畝立装置51全体としては、第一成形板52・52を残して、背面視にて下方に窄む逆台形状に折り曲げ可能な状態となり、このような状態からなる畝立装置51によって圃場の表層部を均し、整地することで、土壌に押されて捻りコイルバネ30・30・・・の付勢力に抗して第二成形板53L・53Rが後方へと回動され、機体左右両側に畝立て(外盛り)を形成することができるのである。
【0057】
一方、左右両側の第一成形板52・52と第二成形板53R・53Lは、上述のとおり、左右対称となる形状にて形成されることから、第一成形板52と第二成形板53R、及び、第一成形板52と第二成形板53Lを連結した状態で、前述のように支点軸55を摺動させて外し、左右互いに入れ替えて、図7に示すように取り付ける。こうして工具なしで左右の成形板を付け替えることができる。
【0058】
その結果、図8に示すように、畝立装置51全体としては、その平面中央に二本の回動軸54・54が、軸線をハ字状になるようにして配設されることとなり、前記支点軸55・55を各々機体外方に摺動することで、第三成形板側掛止部53c・53cが支点軸55・55から外れ、畝立装置51の左右中央に位置する第二成形板53R・53Lは各々機体後方に回動することができる。
【0059】
つまり、畝立装置51全体としては、第一成形板52・52を残して、背面視にて台形状に左右中央を開くことが可能となり、このような状態からなる畝立装置51によって圃場の表層部を均し、整地することで、土壌に押されて捻りコイルバネ30・30・・・の付勢力に抗して第二成形板53L・53Rが後方へと回動され、機体左右中央に畝(内盛り)を形成することができるのである。
【0060】
このように、本発明においては、走行部4の後部にローター耕耘装置5を配設し、該ローター耕耘装置5のロータリー21の上方を覆うロータリーカバー23を備える管理機1において、前記ロータリーカバー23の後端部に、着脱可能、かつ、上下回動自在に取り付けられ、左右対称に構成される左右一対の第一成形板52・52と第二成形板53R・53Lとを備え、該第一成形板52・52と第二成形板53R・53Lは、それぞれ左右一側に斜辺を有し、該斜辺に、筒状部材52a・53a・53aや回動軸54等からなるヒンジ部をそれぞれ設けて第一成形板52・52と第二成形板53R・53Lを回動自在に連結し、前記左右の第一成形板52・52を機体左右中央でロータリーカバー23に固定し、左右の第二成形板53R・53Lを第一成形板52・52に対してヒンジにより回動自在に支持する状態と、前記左右の第一成形板52・52を機体左右両側でロータリーカバー23に固定し、左右の第二成形板53R・53Lを第一成形板52・52に対してヒンジにより回動自在に支持する状態と、に切り替え可能に構成することとしている。
【0061】
このような構成とすることで、耕耘作業に用いる畝立装置51によって、畝立て作業を行うことが可能となる。
その結果、畝立て作業機を別途設ける必要がなくなり、工具を用いた脱着作業の煩わしさが解消されるばかりか、管理機1全体の重量軽減も図られ、作業者が管理機1を操作するうえで、操作性が向上する。
また、畝立て作業の際には左右に配置される成形板の取付位置を互いに入れ替えることで、容易に「外盛り」から「内盛り」への切換えを行うことが可能となる。よって一畝ごとの形成が可能となり、畝立て作業時間の短縮化が図られ効率的である。
【0062】
つまり、「外盛り」の場合、一畝を形成するには往復の畝立て作業を必要とするが、「内盛り」の場合には、一回の前進走行作業で一畝を形成することができる。
【0063】
また、本発明においては、前記第一成形板52・52、及び第二成形板53R・53Lの左右他側の側辺には、それぞれ縁部52d・52d・53d・53dを形成し、左右の第一成形板52・52の縁部52d・52d同士、または、左右の第二成形板53R・53Lの縁部53d・53d同士を当接させて固定可能に構成することとしている。
【0064】
このような構成とすることで、「外盛り」仕様であっても「内盛り」仕様であっても縁部52d・52d(53d・53d)同士を連結固定することにより、左右の成形板(第一成形板52・52、及び第二成形板53R・53L)を一枚の板状に一体化して、均平作業が容易にできるようになる。また、連結を解除することにより容易に「外盛り」仕様と「内盛り」仕様に変更可能となる。
【0065】
[畝立装置51の固定構造]
次に、本発明に係る畝立装置51を固定するための固定構造の詳細について、図9、及び図10を用いて説明する。
【0066】
畝立装置51は支点軸55を中心として回動自在としたときは、均平板として作用する。そして、「外盛り」の畝立て作業を行う場合には、第二成形板53R・53Lを回動軸54・54を中心として回動自在として、第一成形板52・52を固定手段により固定して作業を行う。
【0067】
前記固定手段は耕深調節バー25の下端部に設けられ、前記耕深調節バー25は上下方向に延出する棒状部材より形成され、支持ブラケット24に摺動自在に挿通される。耕深調節バー25の前面部には、側面視半円形状の凹部が一定間隔を有して複数設けられており、該凹部の一部が、支持ブラケット24の側面を左右方向に貫設する固定ピン9によって掛止されることで、耕深調節バー25は支持ブラケット24に固定保持される。
【0068】
耕深調節バー25の下端部には、平板状の底板19が、後方に向かって突設される。前記底板19は平面視にて前方に向かって窄む台形状に形成され、側面視にて耕深調節バー25と略直角方向に溶着されている。
【0069】
底板19の後端部の左右中央には、上方に突設する2本の固定部材56・56が溶着されており(図2を参照)、耕深調節バー25を最下位置から上方に摺動させることで、固定部材56・56も一体となって上方へと移動し、畝立装置51の後面下端部、即ち第一成形板52の後面下端部に前記固定部材56・56が掛止され、畝立装置51が固定保持される。そして、均平作業時や畝立て作業(「外盛り」)時に土壌に押されて、畝立装置51が後上方へと浮上らないような構成となっている。
【0070】
一方、「内盛り」の畝立て作業を行う場合には、図8に示すように畝立装置51の左右中央の第二成形板53R・53Lが後方に回動自在とされ、左右外側の第一成形板52・52が固定手段となる固定部材58・58によって固定保持される。
【0071】
即ち、図10に示すように、第一成形板52の縁部52dに設けた固定孔52eとロータリーカバー23の左右両側板の下部に開口した固定孔23aにロッド等で構成した固定部材58の両端を掛止して第一成形板52を固定する。
【0072】
前記固定部材58は本実施例では、両端部にフック部を有する棒状部材から構成され、該フック部がロータリーカバー23と、畝立装置51とに各々設けられる固定孔23a・52eに挿入して掛止する構成としている。
また、畝立装置51を固定しない場合は、ロータリーカバー23の左右両側板の下部に開口した固定孔23a・23aに掛止して収納する構成とし、紛失を防止する構成とすすることもできる。
【0073】
なお、固定部材58はターンバックルで構成して長さを調節可能に構成することもできる。また、固定部材58・58は、本実施例のような棒状部材に限定されるものではなく、例えば、フック部を有するチェーン等で形成してもよい。
【0074】
このような構成とすることで、他に別途機構を設けることもなく簡単な構造によって、畝立装置51を固定保持することができ経済的である。
【符号の説明】
【0075】
1 管理機
4 走行部
5 ローター耕耘装置
21 ロータリー
23 ロータリーカバー
52 第一成形板
52a 筒状部材
52d 縁部
53R 第二成形板
53L 第二成形板
53a 筒状部材
53d 縁部
54 回動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部の後部にローター耕耘装置を配設し、
該ローター耕耘装置のロータリーの上方を覆うロータリーカバーを備える管理機において、
前記ロータリーカバーの後端部に、着脱可能、かつ、上下回動自在に取り付けられ、左右対称に構成される左右一対の第一成形板と第二成形板とを備え、
該第一成形板と第二成形板は、それぞれ左右一側に斜辺を有し、該斜辺にヒンジ部をそれぞれ設けて第一成形板と第二成形板を回動自在に連結し、
前記左右の第一成形板を機体左右中央でロータリーカバーに固定し、左右の第二成形板を第一成形板に対してヒンジにより回動自在に支持する状態と、
前記左右の第一成形板を機体左右両側でロータリーカバーに固定し、左右の第二成形板を第一成形板に対してヒンジにより回動自在に支持する状態と、
に切り替え可能に構成した
ことを特徴とする管理機。
【請求項2】
前記第一成形板、及び第二成形板の左右他側の側辺には、それぞれ縁部を形成し、左右の第一成形板の縁部同士、または、左右の第二成形板の縁部同士を当接させて固定可能に構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の管理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−172219(P2010−172219A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16007(P2009−16007)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】