管端部の閉塞方法およびシリンダ装置
【課題】蓋部材の板厚を厚くすることなく該蓋部材を管状部材に対して円滑に摩擦撹拌接合できるようにする。
【解決手段】管部材10の一端に蓋部材11を突合せて、その突合せ部Sを回転工具6により摩擦撹拌接合する管端部の閉塞方法において、前記蓋部材11をカップ形状としてその筒状縁部14を管部材10の一端に突合せ、該筒状縁部14に、管部材10に挿入したマンドレル12の一端部の受圧部16を嵌合させる。筒状縁部14の内径を管部材11の内径よりもわずか小径にして、マンドレル12の挿脱時に管部材10の内面に傷が付くのを防止する。また、回転工具6の加圧力をマンドレル12の受圧部16に受圧させて、管部材10および蓋部材11の突合せ端部の変形を防止する。
【解決手段】管部材10の一端に蓋部材11を突合せて、その突合せ部Sを回転工具6により摩擦撹拌接合する管端部の閉塞方法において、前記蓋部材11をカップ形状としてその筒状縁部14を管部材10の一端に突合せ、該筒状縁部14に、管部材10に挿入したマンドレル12の一端部の受圧部16を嵌合させる。筒状縁部14の内径を管部材11の内径よりもわずか小径にして、マンドレル12の挿脱時に管部材10の内面に傷が付くのを防止する。また、回転工具6の加圧力をマンドレル12の受圧部16に受圧させて、管部材10および蓋部材11の突合せ端部の変形を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管部材の一端に蓋部材を突合せて、その突合せ部を摩擦撹拌接合する管端部の閉塞方法および該方法によって製造された有底チューブを備えたシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、モノチューブ式油圧緩衝器(シリンダ装置)に用いられる有底チューブは、図 11に符号1にて示すように、ピストンおよびフリーピストンが摺動するチューブ本体(管部材)2の一端側開口を別体のエンドキャップ(蓋部材)3により閉塞した構造となっている。このような有底チューブ1において、チューブ本体2に対するエンドキャップ3の接合には、一般にアーク溶接が採用されていた(図中、4は溶接部である)。しかし、このような接合構造では、溶接に際して生じたスパッタが異物(コンタミネーション)として有底チューブ1内に入り込む虞れがあることに加え、溶接に際してチューブ本体2が熱変形を起こす虞れがあり、ブラッシングによる清掃作業や歪取り作業などの面倒な後処理が必要になる。なお、同図中、5は、車体への取付けに用いられる取付環(アイ)であり、この取付環5は、別途アーク溶接(溶接部6)によりエンドキャップ3に接合される。
【0003】
そこで最近、上記チューブ本体2に対するエンドキャップ3の接合に摩擦撹拌接合(FSW)を採用することが種々検討されている。この摩擦撹拌接合は、回転工具のピン部を2つの部材の突合せ部に押込み、その時発生する摩擦熱によって材料を軟化および撹拌して接合するもので、上記したスパッタの発生が皆無になることに加え、熱変形も抑えられることから、面倒な後処理が不要になる。
【0004】
ところで、摩擦撹拌接合においては、被接合材の突合せ部に回転工具から大きな加圧力が作用するため、単にチューブ本体2にエンドキャップ3を突合せて摩擦撹拌接合すると、前記加圧力によってチューブ本体2が変形してしまう虞れがある。特にチューブ本体2が薄肉であったり、アルミニウム合金からなる場合に、チューブ本体2に大きな変形が生じ、摩擦撹拌接合の利用は実質断念せざるを得ない状況になる。このため、従来は、図12に示すように、エンドキャップ3を段付き形状として、その小径凸部3aをチューブ本体2に嵌入し、チューブ本体2の先端をエンドキャップ3の段差面3bに突合せて、その突合せ部を摩擦撹拌接合するようにしていた。この場合、回転工具6のピン部7および肩部8から加えられる回転工具6の加圧力は、エンドキャップ3の小径凸部3aによって受圧され、チューブ本体2の変形が防止されるようになる。なお、特許文献1には、パイプ状部材同士またはパイプ状部材と軸状部材との摩擦撹拌接合ではあるが、パイプ状部材の一方または軸状部材に前記と同様の小径凸部を設けている。
【特許文献1】特開2003−236682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したようにエンドキャップ3に小径凸部3aを設ける対策によれば、該小径凸部3aを、回転工具6の肩部8の押圧範囲をバックアップできる十分なる大きさに形成しなければならないため、エンドキャップ3の板厚Tはかなり厚くなり、エンドキャップ3の重量増加牽いては有底チューブ1の重量増加が避けられないようになり、特に、チューブ本体2、エンドキャップ3等を含めた有底チューブ1の全体をアルミ化したものでは、アルミ化によるせっかくの軽量化利点が減殺されてしまう。
【0006】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、蓋部材の板厚を厚くすることなく該蓋部材を管状部材に対して円滑に摩擦撹拌接合できる管端部の閉塞方法を提供し、併せて該閉塞方法により製造された有底チューブを備えたシリンダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る管端部の閉塞方法は、管部材の一端に蓋部材を突合せて、その突合せ部を摩擦撹拌接合する管端部の閉塞方法において、前記蓋部材をカップ形状としてその筒状縁部を前記管部材の一端に突合せると共に、該筒状縁部に、前記管部材に挿入したマンドレルの一端部を嵌合させ、前記マンドレルに回転工具の加圧力を受圧させながら摩擦撹拌接合を行うことを特徴とする。このように行う管端部の閉塞方法においては、内部のマンドレルに回転工具の加圧力を受圧させることで、蓋部材はもとより管部材の変形が抑制され、したがって、蓋部材の板厚を、製品として必要な強度を満足する規定厚さにすることができる。
【0008】
本方法において、上記蓋部材の筒状縁部に対するマンドレルの嵌合クリアランスは、0.01〜0.05mmに設定するのが望ましい。これは、あまりクリアランスが小さいと蓋部材の筒状縁部に対するマンドレルの嵌入が困難になり、逆にクリアランスが大きすぎると、マンドレルとの隙間によって蓋部材および管部材の初期変形が進み、摩擦撹拌接合が不安定になるためである。
【0009】
本方法において、上記蓋部材の筒状縁部の内径は、管部材の内径よりも小さくするのが望ましい。このようにすることで、管部材とマンドレルとの隙間も拡大し、マンドレルを管部材に挿入および離脱させる際、マンドレルが管部材に接触することを防止でき、管部材の内面に傷が付くことがなくなる。前記したモノチューブ式油圧緩衝器のようなシリンダ装置に有底チューブを組込んだ場合、前記管部材の内面はピストンやフリーピストンの摺動面となるので、前記したように内面に傷が付くことがなくなる点は、シリンダ装置の性能確保の上で極めて重要となる。
【0010】
ここで、上記したように蓋部材の筒状縁部の内径を、管部材の内径よりも小さく設定する場合は、該蓋部材の筒状縁部の肉厚を管部材の肉厚と同等にしても、管部材の肉厚よりも厚くしても、あるいは予め管部材の一端部を絞って、その絞り部分の内径を蓋部材の筒状縁部の内径と同等にしてもよい。
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係るシリンダ装置は、上記した方法により管端部が閉塞された、アルミニウム合金製の有底チューブを用いたことを特徴とする。このシリンダ装置においては、有底チューブを構成する蓋部材の板厚が薄くなっているので、アルミ化による軽量化利点を最大限に発揮させることができる。この場合、蓋部材に、被取付部材に取付けるための取付環を摩擦圧接するようにしてもよく、これにより各接合部の強度が高まって強度的な信頼性も向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る管端部の閉塞方法によれば、蓋部材の板厚を厚くすることなく該蓋部材を管状部材に対して円滑に摩擦撹拌接合できるので、得られる有底チューブの重量増加が最小限に抑えられる。また、蓋部材の筒状縁部の内径を管部材の内径よりも小さくした場合は、管部材の内面に傷が付くことがないので、得られる有底チューブは品質的に優れたものとなり、シリンダ装置に向けて有用となる。
【0013】
また、本発明に係るシリンダ装置によれば、アルミ化による軽量化利点が最大限に発揮されることはもちろん、接合部の強度も十分となる。また、蓋部材に、被取付部材に取付けるための取付環を摩擦圧接した場合は、各接合部の強度が高まって強度的な信頼性が著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1〜4は、本発明の第1の実施形態としての管端部の閉塞方法を示したものである。本第1の実施形態は、前記図11に示したモノチューブ式油圧緩衝器の有底チューブ1を摩擦撹拌接合を利用して製造しようとするもので、その製造に際しては、前記チューブ本体2として供される管部材10と前記エンドキャップ3として供される蓋部材11とを用意すると共に、管部材10を通して蓋部材11に嵌合可能なマンドレル12を用意する。
【0016】
本第1の実施形態において、上記管部材10は、製造すべき有底チューブ1のチューブ本体2に要求される規格どおりの寸法形状を有している。一方、上記蓋部材11は、深さの浅いカップ形状をなしており、平板部13の周縁部に前記管部材10に突合される、座高の低い筒状縁部14を有している。この蓋部材11の筒状縁部14は、その肉厚が管部材10の肉厚と同等に設定される一方で、その内径が管部材10の内径よりもわずか小径に設定されている。したがって、蓋部材11の筒状縁部14を管部材10に同心に突合せた状態で、両者の突合せ部Sの内外には、前記内径の差の半分に相当する大きさの段差δ(0.1〜0.5mm)が形成されるようになる(図2)。また、この筒状縁部14の高さは、後述の回転工具6のピン部7の先端径の半分よりもわずか大きく設定されている。なお、蓋部材11の平板部13の背面の中心部には、円錐形状の凸部13aが形成されている。
【0017】
上記管部材10および蓋部材11は、ここではアルミニウム合金からなっている。この場合、仮に、本有底チューブ1が適用されるモノチューブ式油圧緩衝器のピストン径(チューブ本体2の内径)が40mmである場合、前記管部材10の肉厚は3mm程度に、前記蓋部材11の平板部13の板厚(平均板厚)は6mm程度にそれぞれ設定される
【0018】
上記マンドレル12は、断面円形をなす本体部15の先端部に該本体部15よりわずか大径をなす受圧部16を設けている。このマンドレル12の受圧部16は、管部材10に対して所定のクリアランス(0.1〜0.5mm)で挿入できるように、かつ前記蓋部材11の筒状縁部14にわずかのクリアランス(0.01〜0.05mm)で嵌合できるようにその外径が設定されている。マンドレル12の受圧部16はまた、管部材10に突合された蓋部材11の平板部13に先端を当接させた状態で、前記回転工具6の肩部8の押圧範囲をバックアップできる必要最小限の長さに設定されている。
【0019】
本第1の実施形態において、摩擦撹拌接合に用いる回転工具6は、前出図12に示したものと同じものであり、段付きロッド9の先端に前記肩部8を介して小径のピン部7を同心に設けている。回転工具6は、そのロッド9が、図示を略す回転及び昇降ユニットに支持されることで、軸回りに回転および軸方向移動するようになっている。回転工具6は、ここでは管部材10および蓋部材11の材料であるアルミニウム合金よりも十分に硬さの高い硬質材料から形成されており、その耐摩耗性は十分となっている。なお、一例として、回転工具6のピン部7の先端径、根元径はそれぞれ3mm程度、4mm程度に設定され、また、肩部8の直径(ショルダ径)は10mm程度に設定される。
【0020】
摩擦撹拌接合に際しては、図1に示されるように、管部材10に蓋部材11を同心に突合せて、所定のスラスト力で両者を位置固定した後、管部材10にマンドレル12を挿入し、その先端側の受圧部16を蓋部材11の筒状縁部14に嵌入させると共に、蓋部材11の平板部13に当接させる。この時、マンドレル12は、その本体部15はもちろんその受圧部16も、管部材10の内径より0.2〜1.0mm程度小径になっているので、管部材10の内面に接触することなく(傷を付けることなく)円滑に挿入することができる。
【0021】
回転工具6は、同じく図1に示されるように、管部材10および蓋部材11の突合せ部Sの外側の待機位置に、その軸線Cを、管部材10および蓋部材11の共通の軸線に対して直交させて位置決めされている。上記準備完了後、回転工具6を所定の回転数で回転させながら前記待機位置から突合せ部Sに向けて移動させる。すると、図3に示されるように、ピン部7が回転しながら突合せ部Sに押込まれ、このピン部7の回転、押込みによって摩擦熱が発生する。そして、この摩擦熱により突合せ部Sの材料が軟化および攪拌され、ピン部7は、回転工具6の肩部8が筒状縁部13の外面に当接するまで押込まれる。この時、突合せ部Sの片側の管部材10の端部が、蓋部材11の筒状縁部14より段差δ分だけ盛上がっているので(図2)、該端部は、回転工具6の肩部8に押されて局部的に変形し、マンドレル12の受圧部16に押えられる。一方、蓋部材11の筒状縁部14はマンドレル12の受圧部16にほぼ接する状態となっているので、該筒状縁部14は、ほとんど変形を起こすことなく受圧部16に押えられる。
【0022】
その後、回転工具6の回転を継続しながら、管部材10と、蓋部材11とマンドレル12とを一体的に所定方向へ所定速度で回転させる。すると、回転工具6が、管部材10と蓋部材11との突合せ部Sに沿って相対移動し、この相対移動により回転工具6の移動方向の前側の材料が摩擦熱により流動化すると共に攪拌されてピン部7の移動跡へ流入し、これにより周方向へ延びる摩擦接合部17が形成される。しかしてこの間、突合せ部Sの片側の管部材10の端部は回転工具6の肩部8によって絞り込まれ、これによって回転工具6の加圧力がマンドレル12の受圧部16によって均等に受圧される。この結果、管部材10および蓋部材11の突合せ端部は、変形し易いアルミニウム合金から形成されているにも拘わらず、不必要に変形を起こすことがなく、これにより所望の寸法形状を有するアルミニウム合金製の有底チューブ1(図5)が完成する。本第1の実施形態においては特に、チューブ本体2として提供される管本体10に何らの寸法形状的な変更を加える必要がないので、コスト的に有利である。
【0023】
このようにして完成した有底チューブ1は、図5に示されるように、そのエンドキャップ3として提供される蓋部材11の平板部13の板厚(平均板厚)が、強度上必要とする規定の板厚(ここでは、6mm程度)となっているので、重量増加を来すことはなく、アルミ化による軽量化利点が最大限に発揮される。また、摩擦接合部17は、溶融を伴うことなく形成されるので、強度は十分となり、得られる有底チューブ1は強度的な信頼性も高いものとなる。なお、有底チューブ1の底部側には、回転工具6の肩部8の押えにより絞り形状の縮径部19が形成されるが、この範囲は、ピストン(フリーピストン)の摺動範囲外となっているので、機能が損われることはない。
【0024】
ところで、モノチューブ式油圧緩衝器として完成させるには、前記したように有底チューブ1のエンドキャップ3に取付環5を接合する必要がある(図11)。上記第1実施形態において、エンドキャップ3として提供される蓋部材11の背面に円錐形状の凸部13aを設けたのは、前記取付環5の接合に摩擦圧接を利用することを意図してのことである。摩擦圧接の方式には、ブレーキ式、イナーシャ式、両式を併用するハイブリッド式などがあるが、何れの方式を採用する場合でも、前記円錐形状の凸部13aで集中的に摩擦熱が発生し、エンドキャップ3に取付環5を簡単かつ確実に接合することができる。図6は、摩擦圧接後の状態を示したもので、エンドキャップ3と取付環5との接合部19は、熱影響部の少ない健全な組織となっている。したがって、このように摩擦圧接を利用して取付環5が接合された有底チューブ1は、上記したチューブ本体2に対するエンドキャップ3の摩擦撹拌接合と相俟って、強度的な信頼性が著しく高いものとなる。しかも、アーク溶接を採用する場合のように、コンタミネーションや熱変形の問題が生じることもないので、得られる油圧緩衝器は、品質および機能ともに著しく優れたものとなる。
【0025】
図7および図8は、本発明の第2の実施形態としての管端部の閉塞方法を示したものである。なお、本第2の実施形態の基本形態は上記第1の実施形態と同じであるので、ここでは、同一部部分に同一符号を付し、重複する説明は省略する。本第2の実施形態の特徴とするところは、上記蓋部材11の筒状縁部14の内径に変更を加えることなく、該筒状縁部14の肉厚を管部材10の肉厚よりも厚くし、筒状縁部14の外周面と管部材10の外周面とを面一に合せた点にある(図7)。この場合、管部材10と蓋部材11との突合せ部Sの内側だけに段差δが形成されることになる。
【0026】
本第2の実施形態における摩擦撹拌接合のやり方は第1の実施形態と同じであり、図3に示したように、回転工具6のピン部7を所定の回転数で回転させながら突合せ部Sに押込むとともに、回転工具6の肩部8で突合せ部Sをマンドレル12の受圧部16に押える。この時、筒状縁部14の外周面と管部材10の外周面とが面一になっているので、ピン部7は曲げ力を受けることなく円滑に突合せ部Sに押込まれる。一方、突合せ部Sの片側の管部材10の端部の内側が、段差δ分だけマンドレル12の受圧部16から浮いているので(図7)、該端部は、回転工具6の肩部8に押されて局部的に変形し、マンドレル12の受圧部16に押えられる。一方、蓋部材11の筒状縁部14は厚肉となっているので、回転工具6の肩部8が筒状縁部14に食込み、筒状縁部14の外周面に段差δ´が生じる(図8)。その後は、管部材10と、蓋部材11とマンドレル12とが一体的に回転することで、回転工具6が管部材10と蓋部材11との突合せ部Sに沿って相対移動し、これによって周方向へ延びる摩擦接合部17が形成される。しかしてこの間、マンドレル12の受圧部16によって回転工具6の加圧力が受圧されるので、管部材10および蓋部材11は、第1の実施形態と同様に不必要な変形を起こすことなく摩擦撹拌接合される。なお、得られた有底チューブ1の底部側には、回転工具6の肩部8の食込みにより溝形状の縮径部18´が形成されるが(図8)、この範囲は、ピストン(フリーピストン)の摺動範囲外となっているので、機能が損われることはない。
【0027】
図9および図10は、本発明の第3の実施形態としての管端部の閉塞方法を示したものである。なお、本第3の実施形態の基本形態は上記第1の実施形態と同じであるので、ここでは、同一部部分に同一符号を付し、重複する説明は省略する。本第3の実施形態の特徴とするところは、予め上記管部材10の突合せ端部を絞って、その絞り部20を蓋部材11の筒状縁部14に突合せるようにした点にある。
【0028】
本第3の実施形態における摩擦撹拌接合のやり方は第1の実施形態と同じであり、図3に示したように、回転工具6のピン部7を所定の回転数で回転させながら突合せ部Sに押込むとともに、回転工具6の肩部8で突合せ部Sをマンドレル12の受圧部16に押える。この時、管部材10および蓋部材11の突合せ端部は、相互に段差を生じることなくマンドレル12の受圧部16に接しているので(図9)、ピン部7は曲げ力を受けることなく円滑に突合せ部Sに押込まれ、かつ肩部8は、それぞれの突合せ端部を均等にマンドレル12の受圧部16に押える。その後は、管部材10と、蓋部材11とマンドレル12とが一体的に回転することで、回転工具6が管部材10と蓋部材11との突合せ部Sに沿って相対移動し、これによって周方向へ延びる摩擦接合部17が形成される。しかしてこの間、マンドレル12の受圧部16によって回転工具6の加圧力が受圧されるので、管部材10および蓋部材11は、第1の実施形態と同様に不必要な変形を起こすことなく摩擦撹拌接合される。また、管部材10および蓋部材11の突合せ端部は同じ肉厚となっているので、回転工具6に曲げ力が作用することはなく、円滑に摩擦撹拌接合は進行する。なお、得られた有底チューブ1の底部側には、絞り形状の縮径部18″が形成されるが(図10)、この範囲は、ピストン(フリーピストン)の摺動範囲外となっているので、機能が損われることはない。
【0029】
なお、上記した各実施形態では、モノチューブ式油圧緩衝器の有底チューブの製造に適用したが、本発明は、モノチューブ式油圧緩衝器以外の各種シリンダ装置の有底チューブはもとより、エンドキャップを必要とする、各種機器の有底チューブの製造に適用できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る管端部の閉塞方法の第1の実施形態を示したもので、摩擦撹拌接合の準備状態を示す断面図である。
【図2】図1のA部拡大断面図である。
【図3】第1の実施形態における摩擦撹拌接合の実施状態を示す断面図である。
【図4】図3のB部拡大断面図である。
【図5】第1の実施形態で得られた有底チューブの構造を示す断面図である。
【図6】エンドキャップに取付環を摩擦圧接した後の有底チューブの構造を示す断面図である。
【図7】本発明に係る管端部の閉塞方法の第2の実施形態を示したもので、摩擦撹拌接合の準備状態を示す要部断面図である。
【図8】第2の実施形態における摩擦撹拌接合の実施状態を示す要部断面図である。
【図9】本発明に係る管端部の閉塞方法の第3の実施形態を示したもので、摩擦撹拌接合の準備状態を示す要部断面図である。
【図10】第3の実施形態における摩擦撹拌接合の実施状態を示す要部断面図である。
【図11】本管端部の閉塞方法の実施対象であるモノチューブ式油圧緩衝器に用いられる、従来の有底チューブの構造を示す断面図である。
【図12】有底チューブを製造するめの、従来の摩擦撹拌接合の実施状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
6 回転工具
7 ピン部
8 肩部
10 管部材
11 蓋部材
12 マンドレル
14 蓋部材の筒状縁部
16 マンドレルの受圧部
S 突合せ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、管部材の一端に蓋部材を突合せて、その突合せ部を摩擦撹拌接合する管端部の閉塞方法および該方法によって製造された有底チューブを備えたシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、モノチューブ式油圧緩衝器(シリンダ装置)に用いられる有底チューブは、図 11に符号1にて示すように、ピストンおよびフリーピストンが摺動するチューブ本体(管部材)2の一端側開口を別体のエンドキャップ(蓋部材)3により閉塞した構造となっている。このような有底チューブ1において、チューブ本体2に対するエンドキャップ3の接合には、一般にアーク溶接が採用されていた(図中、4は溶接部である)。しかし、このような接合構造では、溶接に際して生じたスパッタが異物(コンタミネーション)として有底チューブ1内に入り込む虞れがあることに加え、溶接に際してチューブ本体2が熱変形を起こす虞れがあり、ブラッシングによる清掃作業や歪取り作業などの面倒な後処理が必要になる。なお、同図中、5は、車体への取付けに用いられる取付環(アイ)であり、この取付環5は、別途アーク溶接(溶接部6)によりエンドキャップ3に接合される。
【0003】
そこで最近、上記チューブ本体2に対するエンドキャップ3の接合に摩擦撹拌接合(FSW)を採用することが種々検討されている。この摩擦撹拌接合は、回転工具のピン部を2つの部材の突合せ部に押込み、その時発生する摩擦熱によって材料を軟化および撹拌して接合するもので、上記したスパッタの発生が皆無になることに加え、熱変形も抑えられることから、面倒な後処理が不要になる。
【0004】
ところで、摩擦撹拌接合においては、被接合材の突合せ部に回転工具から大きな加圧力が作用するため、単にチューブ本体2にエンドキャップ3を突合せて摩擦撹拌接合すると、前記加圧力によってチューブ本体2が変形してしまう虞れがある。特にチューブ本体2が薄肉であったり、アルミニウム合金からなる場合に、チューブ本体2に大きな変形が生じ、摩擦撹拌接合の利用は実質断念せざるを得ない状況になる。このため、従来は、図12に示すように、エンドキャップ3を段付き形状として、その小径凸部3aをチューブ本体2に嵌入し、チューブ本体2の先端をエンドキャップ3の段差面3bに突合せて、その突合せ部を摩擦撹拌接合するようにしていた。この場合、回転工具6のピン部7および肩部8から加えられる回転工具6の加圧力は、エンドキャップ3の小径凸部3aによって受圧され、チューブ本体2の変形が防止されるようになる。なお、特許文献1には、パイプ状部材同士またはパイプ状部材と軸状部材との摩擦撹拌接合ではあるが、パイプ状部材の一方または軸状部材に前記と同様の小径凸部を設けている。
【特許文献1】特開2003−236682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したようにエンドキャップ3に小径凸部3aを設ける対策によれば、該小径凸部3aを、回転工具6の肩部8の押圧範囲をバックアップできる十分なる大きさに形成しなければならないため、エンドキャップ3の板厚Tはかなり厚くなり、エンドキャップ3の重量増加牽いては有底チューブ1の重量増加が避けられないようになり、特に、チューブ本体2、エンドキャップ3等を含めた有底チューブ1の全体をアルミ化したものでは、アルミ化によるせっかくの軽量化利点が減殺されてしまう。
【0006】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、蓋部材の板厚を厚くすることなく該蓋部材を管状部材に対して円滑に摩擦撹拌接合できる管端部の閉塞方法を提供し、併せて該閉塞方法により製造された有底チューブを備えたシリンダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る管端部の閉塞方法は、管部材の一端に蓋部材を突合せて、その突合せ部を摩擦撹拌接合する管端部の閉塞方法において、前記蓋部材をカップ形状としてその筒状縁部を前記管部材の一端に突合せると共に、該筒状縁部に、前記管部材に挿入したマンドレルの一端部を嵌合させ、前記マンドレルに回転工具の加圧力を受圧させながら摩擦撹拌接合を行うことを特徴とする。このように行う管端部の閉塞方法においては、内部のマンドレルに回転工具の加圧力を受圧させることで、蓋部材はもとより管部材の変形が抑制され、したがって、蓋部材の板厚を、製品として必要な強度を満足する規定厚さにすることができる。
【0008】
本方法において、上記蓋部材の筒状縁部に対するマンドレルの嵌合クリアランスは、0.01〜0.05mmに設定するのが望ましい。これは、あまりクリアランスが小さいと蓋部材の筒状縁部に対するマンドレルの嵌入が困難になり、逆にクリアランスが大きすぎると、マンドレルとの隙間によって蓋部材および管部材の初期変形が進み、摩擦撹拌接合が不安定になるためである。
【0009】
本方法において、上記蓋部材の筒状縁部の内径は、管部材の内径よりも小さくするのが望ましい。このようにすることで、管部材とマンドレルとの隙間も拡大し、マンドレルを管部材に挿入および離脱させる際、マンドレルが管部材に接触することを防止でき、管部材の内面に傷が付くことがなくなる。前記したモノチューブ式油圧緩衝器のようなシリンダ装置に有底チューブを組込んだ場合、前記管部材の内面はピストンやフリーピストンの摺動面となるので、前記したように内面に傷が付くことがなくなる点は、シリンダ装置の性能確保の上で極めて重要となる。
【0010】
ここで、上記したように蓋部材の筒状縁部の内径を、管部材の内径よりも小さく設定する場合は、該蓋部材の筒状縁部の肉厚を管部材の肉厚と同等にしても、管部材の肉厚よりも厚くしても、あるいは予め管部材の一端部を絞って、その絞り部分の内径を蓋部材の筒状縁部の内径と同等にしてもよい。
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係るシリンダ装置は、上記した方法により管端部が閉塞された、アルミニウム合金製の有底チューブを用いたことを特徴とする。このシリンダ装置においては、有底チューブを構成する蓋部材の板厚が薄くなっているので、アルミ化による軽量化利点を最大限に発揮させることができる。この場合、蓋部材に、被取付部材に取付けるための取付環を摩擦圧接するようにしてもよく、これにより各接合部の強度が高まって強度的な信頼性も向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る管端部の閉塞方法によれば、蓋部材の板厚を厚くすることなく該蓋部材を管状部材に対して円滑に摩擦撹拌接合できるので、得られる有底チューブの重量増加が最小限に抑えられる。また、蓋部材の筒状縁部の内径を管部材の内径よりも小さくした場合は、管部材の内面に傷が付くことがないので、得られる有底チューブは品質的に優れたものとなり、シリンダ装置に向けて有用となる。
【0013】
また、本発明に係るシリンダ装置によれば、アルミ化による軽量化利点が最大限に発揮されることはもちろん、接合部の強度も十分となる。また、蓋部材に、被取付部材に取付けるための取付環を摩擦圧接した場合は、各接合部の強度が高まって強度的な信頼性が著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1〜4は、本発明の第1の実施形態としての管端部の閉塞方法を示したものである。本第1の実施形態は、前記図11に示したモノチューブ式油圧緩衝器の有底チューブ1を摩擦撹拌接合を利用して製造しようとするもので、その製造に際しては、前記チューブ本体2として供される管部材10と前記エンドキャップ3として供される蓋部材11とを用意すると共に、管部材10を通して蓋部材11に嵌合可能なマンドレル12を用意する。
【0016】
本第1の実施形態において、上記管部材10は、製造すべき有底チューブ1のチューブ本体2に要求される規格どおりの寸法形状を有している。一方、上記蓋部材11は、深さの浅いカップ形状をなしており、平板部13の周縁部に前記管部材10に突合される、座高の低い筒状縁部14を有している。この蓋部材11の筒状縁部14は、その肉厚が管部材10の肉厚と同等に設定される一方で、その内径が管部材10の内径よりもわずか小径に設定されている。したがって、蓋部材11の筒状縁部14を管部材10に同心に突合せた状態で、両者の突合せ部Sの内外には、前記内径の差の半分に相当する大きさの段差δ(0.1〜0.5mm)が形成されるようになる(図2)。また、この筒状縁部14の高さは、後述の回転工具6のピン部7の先端径の半分よりもわずか大きく設定されている。なお、蓋部材11の平板部13の背面の中心部には、円錐形状の凸部13aが形成されている。
【0017】
上記管部材10および蓋部材11は、ここではアルミニウム合金からなっている。この場合、仮に、本有底チューブ1が適用されるモノチューブ式油圧緩衝器のピストン径(チューブ本体2の内径)が40mmである場合、前記管部材10の肉厚は3mm程度に、前記蓋部材11の平板部13の板厚(平均板厚)は6mm程度にそれぞれ設定される
【0018】
上記マンドレル12は、断面円形をなす本体部15の先端部に該本体部15よりわずか大径をなす受圧部16を設けている。このマンドレル12の受圧部16は、管部材10に対して所定のクリアランス(0.1〜0.5mm)で挿入できるように、かつ前記蓋部材11の筒状縁部14にわずかのクリアランス(0.01〜0.05mm)で嵌合できるようにその外径が設定されている。マンドレル12の受圧部16はまた、管部材10に突合された蓋部材11の平板部13に先端を当接させた状態で、前記回転工具6の肩部8の押圧範囲をバックアップできる必要最小限の長さに設定されている。
【0019】
本第1の実施形態において、摩擦撹拌接合に用いる回転工具6は、前出図12に示したものと同じものであり、段付きロッド9の先端に前記肩部8を介して小径のピン部7を同心に設けている。回転工具6は、そのロッド9が、図示を略す回転及び昇降ユニットに支持されることで、軸回りに回転および軸方向移動するようになっている。回転工具6は、ここでは管部材10および蓋部材11の材料であるアルミニウム合金よりも十分に硬さの高い硬質材料から形成されており、その耐摩耗性は十分となっている。なお、一例として、回転工具6のピン部7の先端径、根元径はそれぞれ3mm程度、4mm程度に設定され、また、肩部8の直径(ショルダ径)は10mm程度に設定される。
【0020】
摩擦撹拌接合に際しては、図1に示されるように、管部材10に蓋部材11を同心に突合せて、所定のスラスト力で両者を位置固定した後、管部材10にマンドレル12を挿入し、その先端側の受圧部16を蓋部材11の筒状縁部14に嵌入させると共に、蓋部材11の平板部13に当接させる。この時、マンドレル12は、その本体部15はもちろんその受圧部16も、管部材10の内径より0.2〜1.0mm程度小径になっているので、管部材10の内面に接触することなく(傷を付けることなく)円滑に挿入することができる。
【0021】
回転工具6は、同じく図1に示されるように、管部材10および蓋部材11の突合せ部Sの外側の待機位置に、その軸線Cを、管部材10および蓋部材11の共通の軸線に対して直交させて位置決めされている。上記準備完了後、回転工具6を所定の回転数で回転させながら前記待機位置から突合せ部Sに向けて移動させる。すると、図3に示されるように、ピン部7が回転しながら突合せ部Sに押込まれ、このピン部7の回転、押込みによって摩擦熱が発生する。そして、この摩擦熱により突合せ部Sの材料が軟化および攪拌され、ピン部7は、回転工具6の肩部8が筒状縁部13の外面に当接するまで押込まれる。この時、突合せ部Sの片側の管部材10の端部が、蓋部材11の筒状縁部14より段差δ分だけ盛上がっているので(図2)、該端部は、回転工具6の肩部8に押されて局部的に変形し、マンドレル12の受圧部16に押えられる。一方、蓋部材11の筒状縁部14はマンドレル12の受圧部16にほぼ接する状態となっているので、該筒状縁部14は、ほとんど変形を起こすことなく受圧部16に押えられる。
【0022】
その後、回転工具6の回転を継続しながら、管部材10と、蓋部材11とマンドレル12とを一体的に所定方向へ所定速度で回転させる。すると、回転工具6が、管部材10と蓋部材11との突合せ部Sに沿って相対移動し、この相対移動により回転工具6の移動方向の前側の材料が摩擦熱により流動化すると共に攪拌されてピン部7の移動跡へ流入し、これにより周方向へ延びる摩擦接合部17が形成される。しかしてこの間、突合せ部Sの片側の管部材10の端部は回転工具6の肩部8によって絞り込まれ、これによって回転工具6の加圧力がマンドレル12の受圧部16によって均等に受圧される。この結果、管部材10および蓋部材11の突合せ端部は、変形し易いアルミニウム合金から形成されているにも拘わらず、不必要に変形を起こすことがなく、これにより所望の寸法形状を有するアルミニウム合金製の有底チューブ1(図5)が完成する。本第1の実施形態においては特に、チューブ本体2として提供される管本体10に何らの寸法形状的な変更を加える必要がないので、コスト的に有利である。
【0023】
このようにして完成した有底チューブ1は、図5に示されるように、そのエンドキャップ3として提供される蓋部材11の平板部13の板厚(平均板厚)が、強度上必要とする規定の板厚(ここでは、6mm程度)となっているので、重量増加を来すことはなく、アルミ化による軽量化利点が最大限に発揮される。また、摩擦接合部17は、溶融を伴うことなく形成されるので、強度は十分となり、得られる有底チューブ1は強度的な信頼性も高いものとなる。なお、有底チューブ1の底部側には、回転工具6の肩部8の押えにより絞り形状の縮径部19が形成されるが、この範囲は、ピストン(フリーピストン)の摺動範囲外となっているので、機能が損われることはない。
【0024】
ところで、モノチューブ式油圧緩衝器として完成させるには、前記したように有底チューブ1のエンドキャップ3に取付環5を接合する必要がある(図11)。上記第1実施形態において、エンドキャップ3として提供される蓋部材11の背面に円錐形状の凸部13aを設けたのは、前記取付環5の接合に摩擦圧接を利用することを意図してのことである。摩擦圧接の方式には、ブレーキ式、イナーシャ式、両式を併用するハイブリッド式などがあるが、何れの方式を採用する場合でも、前記円錐形状の凸部13aで集中的に摩擦熱が発生し、エンドキャップ3に取付環5を簡単かつ確実に接合することができる。図6は、摩擦圧接後の状態を示したもので、エンドキャップ3と取付環5との接合部19は、熱影響部の少ない健全な組織となっている。したがって、このように摩擦圧接を利用して取付環5が接合された有底チューブ1は、上記したチューブ本体2に対するエンドキャップ3の摩擦撹拌接合と相俟って、強度的な信頼性が著しく高いものとなる。しかも、アーク溶接を採用する場合のように、コンタミネーションや熱変形の問題が生じることもないので、得られる油圧緩衝器は、品質および機能ともに著しく優れたものとなる。
【0025】
図7および図8は、本発明の第2の実施形態としての管端部の閉塞方法を示したものである。なお、本第2の実施形態の基本形態は上記第1の実施形態と同じであるので、ここでは、同一部部分に同一符号を付し、重複する説明は省略する。本第2の実施形態の特徴とするところは、上記蓋部材11の筒状縁部14の内径に変更を加えることなく、該筒状縁部14の肉厚を管部材10の肉厚よりも厚くし、筒状縁部14の外周面と管部材10の外周面とを面一に合せた点にある(図7)。この場合、管部材10と蓋部材11との突合せ部Sの内側だけに段差δが形成されることになる。
【0026】
本第2の実施形態における摩擦撹拌接合のやり方は第1の実施形態と同じであり、図3に示したように、回転工具6のピン部7を所定の回転数で回転させながら突合せ部Sに押込むとともに、回転工具6の肩部8で突合せ部Sをマンドレル12の受圧部16に押える。この時、筒状縁部14の外周面と管部材10の外周面とが面一になっているので、ピン部7は曲げ力を受けることなく円滑に突合せ部Sに押込まれる。一方、突合せ部Sの片側の管部材10の端部の内側が、段差δ分だけマンドレル12の受圧部16から浮いているので(図7)、該端部は、回転工具6の肩部8に押されて局部的に変形し、マンドレル12の受圧部16に押えられる。一方、蓋部材11の筒状縁部14は厚肉となっているので、回転工具6の肩部8が筒状縁部14に食込み、筒状縁部14の外周面に段差δ´が生じる(図8)。その後は、管部材10と、蓋部材11とマンドレル12とが一体的に回転することで、回転工具6が管部材10と蓋部材11との突合せ部Sに沿って相対移動し、これによって周方向へ延びる摩擦接合部17が形成される。しかしてこの間、マンドレル12の受圧部16によって回転工具6の加圧力が受圧されるので、管部材10および蓋部材11は、第1の実施形態と同様に不必要な変形を起こすことなく摩擦撹拌接合される。なお、得られた有底チューブ1の底部側には、回転工具6の肩部8の食込みにより溝形状の縮径部18´が形成されるが(図8)、この範囲は、ピストン(フリーピストン)の摺動範囲外となっているので、機能が損われることはない。
【0027】
図9および図10は、本発明の第3の実施形態としての管端部の閉塞方法を示したものである。なお、本第3の実施形態の基本形態は上記第1の実施形態と同じであるので、ここでは、同一部部分に同一符号を付し、重複する説明は省略する。本第3の実施形態の特徴とするところは、予め上記管部材10の突合せ端部を絞って、その絞り部20を蓋部材11の筒状縁部14に突合せるようにした点にある。
【0028】
本第3の実施形態における摩擦撹拌接合のやり方は第1の実施形態と同じであり、図3に示したように、回転工具6のピン部7を所定の回転数で回転させながら突合せ部Sに押込むとともに、回転工具6の肩部8で突合せ部Sをマンドレル12の受圧部16に押える。この時、管部材10および蓋部材11の突合せ端部は、相互に段差を生じることなくマンドレル12の受圧部16に接しているので(図9)、ピン部7は曲げ力を受けることなく円滑に突合せ部Sに押込まれ、かつ肩部8は、それぞれの突合せ端部を均等にマンドレル12の受圧部16に押える。その後は、管部材10と、蓋部材11とマンドレル12とが一体的に回転することで、回転工具6が管部材10と蓋部材11との突合せ部Sに沿って相対移動し、これによって周方向へ延びる摩擦接合部17が形成される。しかしてこの間、マンドレル12の受圧部16によって回転工具6の加圧力が受圧されるので、管部材10および蓋部材11は、第1の実施形態と同様に不必要な変形を起こすことなく摩擦撹拌接合される。また、管部材10および蓋部材11の突合せ端部は同じ肉厚となっているので、回転工具6に曲げ力が作用することはなく、円滑に摩擦撹拌接合は進行する。なお、得られた有底チューブ1の底部側には、絞り形状の縮径部18″が形成されるが(図10)、この範囲は、ピストン(フリーピストン)の摺動範囲外となっているので、機能が損われることはない。
【0029】
なお、上記した各実施形態では、モノチューブ式油圧緩衝器の有底チューブの製造に適用したが、本発明は、モノチューブ式油圧緩衝器以外の各種シリンダ装置の有底チューブはもとより、エンドキャップを必要とする、各種機器の有底チューブの製造に適用できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る管端部の閉塞方法の第1の実施形態を示したもので、摩擦撹拌接合の準備状態を示す断面図である。
【図2】図1のA部拡大断面図である。
【図3】第1の実施形態における摩擦撹拌接合の実施状態を示す断面図である。
【図4】図3のB部拡大断面図である。
【図5】第1の実施形態で得られた有底チューブの構造を示す断面図である。
【図6】エンドキャップに取付環を摩擦圧接した後の有底チューブの構造を示す断面図である。
【図7】本発明に係る管端部の閉塞方法の第2の実施形態を示したもので、摩擦撹拌接合の準備状態を示す要部断面図である。
【図8】第2の実施形態における摩擦撹拌接合の実施状態を示す要部断面図である。
【図9】本発明に係る管端部の閉塞方法の第3の実施形態を示したもので、摩擦撹拌接合の準備状態を示す要部断面図である。
【図10】第3の実施形態における摩擦撹拌接合の実施状態を示す要部断面図である。
【図11】本管端部の閉塞方法の実施対象であるモノチューブ式油圧緩衝器に用いられる、従来の有底チューブの構造を示す断面図である。
【図12】有底チューブを製造するめの、従来の摩擦撹拌接合の実施状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
6 回転工具
7 ピン部
8 肩部
10 管部材
11 蓋部材
12 マンドレル
14 蓋部材の筒状縁部
16 マンドレルの受圧部
S 突合せ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管部材の一端に蓋部材を突合せて、その突合せ部を摩擦撹拌接合する管端部の閉塞方法において、前記蓋部材をカップ形状としてその筒状縁部を前記管部材の一端に突合せると共に、該筒状縁部に、前記管部材に挿入したマンドレルの一端部を嵌合させ、前記マンドレルに回転工具の加圧力を受圧させながら摩擦撹拌接合を行うことを特徴とする管端部の閉塞方法。
【請求項2】
蓋部材の縁部に対するマンドレルの嵌合クリアランスを、0.01〜0.05mmに設定することを特徴とする請求項1に記載の管端部の閉塞方法。
【請求項3】
蓋部材の筒状縁部の内径を、管部材の内径よりも小さくすることを特徴とする請求項1または2に記載の管端部の閉塞方法。
【請求項4】
蓋部材の筒状縁部の肉厚を、管部材の肉厚と同等にすることを特徴とする請求項3に記載の管端部の閉塞方法。
【請求項5】
蓋部材の筒状縁部の肉厚を、管部材の肉厚よりも厚くすることを特徴とする請求項3に記載の管端部の閉塞方法。
【請求項6】
予め管部材の一端部を絞って、その絞り部分の内径を蓋部材の筒状縁部の内径と同等にすることを特徴とする請求項3に記載の管端部の閉塞方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法により管端部が閉塞された、アルミニウム合金製の有底チューブを用いたことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項8】
蓋部材に、被取付部材に取付けるための取付環を摩擦圧接したことを特徴とする請求項7に記載のシリンダ装置。
【請求項1】
管部材の一端に蓋部材を突合せて、その突合せ部を摩擦撹拌接合する管端部の閉塞方法において、前記蓋部材をカップ形状としてその筒状縁部を前記管部材の一端に突合せると共に、該筒状縁部に、前記管部材に挿入したマンドレルの一端部を嵌合させ、前記マンドレルに回転工具の加圧力を受圧させながら摩擦撹拌接合を行うことを特徴とする管端部の閉塞方法。
【請求項2】
蓋部材の縁部に対するマンドレルの嵌合クリアランスを、0.01〜0.05mmに設定することを特徴とする請求項1に記載の管端部の閉塞方法。
【請求項3】
蓋部材の筒状縁部の内径を、管部材の内径よりも小さくすることを特徴とする請求項1または2に記載の管端部の閉塞方法。
【請求項4】
蓋部材の筒状縁部の肉厚を、管部材の肉厚と同等にすることを特徴とする請求項3に記載の管端部の閉塞方法。
【請求項5】
蓋部材の筒状縁部の肉厚を、管部材の肉厚よりも厚くすることを特徴とする請求項3に記載の管端部の閉塞方法。
【請求項6】
予め管部材の一端部を絞って、その絞り部分の内径を蓋部材の筒状縁部の内径と同等にすることを特徴とする請求項3に記載の管端部の閉塞方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法により管端部が閉塞された、アルミニウム合金製の有底チューブを用いたことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項8】
蓋部材に、被取付部材に取付けるための取付環を摩擦圧接したことを特徴とする請求項7に記載のシリンダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−205252(P2006−205252A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24244(P2005−24244)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【復代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
【復代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
【復代理人】
【識別番号】100093193
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 壽夫
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【復代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
【復代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
【復代理人】
【識別番号】100093193
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 壽夫
【Fターム(参考)】
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