説明

管継手

【課題】2本の管を管の軸線方向に移動可能に、且つ、継手部分である程度の可撓性がある状態で接続することが出来て、耐熱性が良好で、高温環境下でも継手部分におけるシール性が保持出来る様な管継手の提供。
【解決手段】被接続管(b、c)に遊嵌されたソケット管(d)の両端部内面(テーパ面i、j)と被接続管(b、c)の外周面(bf、cf:管表面)との間にパッキング環(m、n)が挟装され、パッキング環(m、n)は締付環(g、h)によって被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)に圧接させられ、被接続管(b、c)が軸方向(X方向)に摺動可能にシールされる様に構成されており、締付環(g、h)とパッキング環(m、n)との間の領域に断熱手段(α、α1、β)が介装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本の管を接続するための管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
2本の管を接続するに当たって、一般的に求められる性能としては、被接続管の内部を流れる流体が、継手部分から漏出しない程度のシール性が挙げられる。
また、被接続管の向かい合った管端部間の間隔(図1の符号Lで示す長さ)が変動可能であること、すなわち被接続管の軸線方向について摺動可能であることが要請される場合が有る。
さらに、接続箇所で2本の被接続管が形成する角度が多少変動可能であるような可撓性が要求される場合も存在する。
【0003】
その様な要請に対処するべく、シール性、管軸線方向についての摺動可能性、管継手における可撓性を併せ持った管継手が、提供されている(例えば、特許文献1)。
係る管継手は、被接続管の外側に遊嵌されたソケット管が配置され、被接続管の外側に締付環が遊嵌され、ソケット管の両端部内面のテーパ面と被接続管の外周面との間に挟装されたゴム製のパッキング環が、締付環によって被接続管に圧接させられて、被接続管の軸方向に摺動可能にシールしている。
【0004】
管継手に関しては、現在、火災対策が求められている。そして、例えば、所定圧(例えば、16kg/cm)、所定温度(例えば、80℃)の液体を循環させた状態で、所定温度(例えば、800℃)の火炎に所定時間(例えば、30分)耐え、更に、その後、第二の所定圧(例えば、24kg/cm)でリークテストを行うこと、等が求められている。
しかし、上述した従来技術においては、高温環境(例えば、800℃の火炎に晒される環境)では、金属製の締付環を介してゴム製のパッキング環に熱が伝導されてしまい、当該パッキング環が軟化して、溶融して流れ出してしまう。そして、管継手におけるシール性が損なわれてしまう、と言う問題が存在する。
その様な耐熱性に関する問題を解決することが出来る管継手は、未だに存在しない。
【0005】
【特許文献1】特許第2655392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、2本の管を管の軸線方向に移動可能に、且つ、継手部分である程度の可撓性がある状態で接続することが出来て、しかも、耐熱性が良好で、高温環境下でも継手部分におけるシール性が保持出来る様な管継手の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の管継手は、(間隔Lを開けて直列に配置された2本の)被接続管(b、c)に遊嵌されたソケット管(d)が被接続管(b、c)の対向する管端(e、f)に跨って配置され、被接続管(b、c)の各々に遊嵌された締付環(g、h)がソケット管(d)の両側に配置され、締付環(g、h)は複数本の結合ボルト(k)で結合され、ソケット管(d)の両端部内面(テーパ面j、i)と被接続管(b、c)の外周面(bf、cf:管表面)との間にパッキング環(m、n)が挟装され、パッキング環(m、n)は締付環(g、h)によって被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)に圧接させられ、被接続管(b、c)が軸方向(X方向)に摺動可能にシールされる様に構成されており、締付環(g、h)とパッキング環(m、n)との間の領域に断熱手段(α、α1、β)が介装されている事を特徴としている(請求項1)。
【0008】
本発明において、前記断熱手段は、円環状の断熱材(α)で構成されていることが好ましい(請求項2:図2)。
そして、前記円環状の断熱材は、複数を積層して構成しても良い(請求項3:図3)。
【0009】
或いは、本発明において、前記断熱手段は、締付環(h)のパッキング環(n)側の側面(hi)に形成された断熱性材料の被覆層(β)で構成しても良い(請求項4:図4)。
【0010】
そして、前記断熱手段は、円環状の断熱材(α)と、締付環(h)のパッキング環(n)側の側面(hi)に形成された断熱性材料の被覆層(β)とで構成することも出来る(請求項5:図5)。
【0011】
本発明の実施に際して、前記パッキング環(m、n)は、高温でも容易に軟化しないフッ素ゴム(FPMゴム)を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
係る構成を具備する本発明の管継手によれば、締付環(g、h)とパッキング環(m、n)との間の領域に断熱手段(α、α1、β)が介装されているので、高温環境下に晒されても、例えば金属製の締付環(g、h)からの伝熱は、当該断熱手段により遮断されるので、パッキング環(m、n)には伝達されないか、或いは、そのパッキング環(m、n)への熱伝導が小さくなる。
【0013】
また、断熱手段(α、α1、β)の半径方向内方端部と、被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)とを接触させて、両者間に隙間が形成されない様に構成すれば、高音環境下に存在する高温空気が断熱手段(α、α1、β)により遮断され、パッキング環(m、n)に作用してしまうことが防止される。
【0014】
ここで、前記パッキング環(m、n)としてフッ素ゴム(FPMゴム)を用いれば、高温環境下でパッキング環(m、n)が軟化して、流れてしまうと言う問題を防止出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
なお、図示の実施形態において、同様の部材には同様な符号を付して、重複説明を省略している。
先ず、図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
【0016】
図1において、伸縮可撓管継手aは、間隔Lを開けて直列に配置された2本の被接続管b、cを、矢印X方向に変位可能で(伸縮可能)、且つ、矢印Mで示す様に変形可能な(可撓性を有する)様に接続している。
被接続管b、cの外側にソケット管dが遊嵌されており、該ソケット管dは、両被接続管b、cの互いに対向する管端e、fに跨って配置されている。
被接続管b、cの外側には、それぞれ締付環g、hが遊嵌されており、該締付環g、hはソケット管dの両側に配置されており、複数本の結合ボルトkで互いに結合されている。
【0017】
ソケット管dの両端部内面にはテーパ面j、iが形成され、テーパ面j、iと被接続管b、cの外周面bf、cfとの間には、ゴム製のパッキング環m、nが配置されている。
ゴム製のパッキング環m、nは、複数本のボルトkにより締付環g、h同士を押し付けることによって、被接続管b、cの外周面bf、cfに圧接される。そして、ゴム製のパッキング環m、nが被接続管b、cの外周面bf、cfに圧接されることにより、各被接続管b、cがその軸方向Xに摺動可能にシールされている。
【0018】
図1において、符号Zはソケット管dの移動防止用に設けられたボルトである。
なお、被接続管b、cの外周面(管表面)bf、cfに、締付環g、hとパッキング環m、nとが配置されている領域の構造については、詳細は後述する。
【0019】
この伸縮可撓管継手aでは、ソケット管d及び締付環g、hが被接続管b、cに遊嵌されているので、ソケット管d及び締付環g、hと被接続管b、cとの間には、間隙W1、W2が存在している。そのため、伸縮可撓管継手aで接続された被接続管b、cは、パッキング環m、nが管表面bf、cfに圧接させられている部位を支点にして、矢印M、M方向に撓曲可能である。すなわち、可撓性を有している。
【0020】
また、伸縮可撓管継手aでは、締付環g、hによって被接続管b、cの外周面bf、cfに圧接させられたパッキング環m、nが、被接続管b、cの軸方向Xに摺動可能にシールしている。そのため、被接続管b、cは、その管端e、f間の間隔Lの範囲内で、すなわち管端e、fが当接するまで、間隔Lを短くすることが出来る。一方、管端e、fがパッキング環m、nの直下近傍に達するまでの範囲内であれば、シール状態を維持しつつ、間隔Lを長くすることが出来る。
【0021】
以上の構成に加えて、図示の実施形態では、被接続管b、cの外周面(管表面)bf、cfに、締付環g、hとパッキング環m、nとが配置されている領域の構造に特徴を有している。
係る構造について、主として、図2を参照して説明する。
ここで、当該構造は、図1の左右両方に設けられているが、図2においては、図1の左側の箇所、より詳細には、図1の矢印2で示す箇所(図1において、点線で包囲されている箇所と概略対応する)を示している。
【0022】
図2において、締付環hとパッキング環nとソケット管dで挟まれた領域、より詳細には、締付環hの図2中右側面hiと、締付環hのリブhtの図2中下方側面htiと、パッキング環nの図2中左側面noと、ソケット環dの図2中上方面dfとで包囲された領域には、耐熱性材料で構成された断熱材αが介装されている。
断熱材αは、全体が環状に構成されており、その周縁部にリブ部分αtが形成されている。そして断熱材αの半径方向縁部(図2では下方縁部)αeは、被接続管cの外周面(管表面)cfに接触している。
なお、図2において、符号hoは、締付環hの左側面を示す。
【0023】
断熱材αは、断熱性と、組み込みに不自由が無い程度の可撓性とを有する材料であれば適用可能であり、公知の断熱材を利用して形成することが出来る。そして、石綿や、石綿代替品として開発されたガスケット材料を用いることが可能である。
断熱材αとしては、例えば、商品名「ノンアスジョイントシート」(日本バルカ−工業株式会社の製品:ここで「ノンアス」は日本バルカ−工業株式会社の登録商標)なるガスケット材料が利用可能である。
【0024】
ここで、耐熱材αの厚さ寸法(図2において、リブ部分αt以外の部分におけるX方向寸法)は任意に定めることが出来、例えば、5mm〜10mmの範囲にすることが出来る。
但し、余りこの厚さ寸法が小さいと、十分な断熱性能が発揮されない恐れがある。一方、断熱材αの厚さ方向寸法が大き過ぎると、結合ボルトkで締付環g、h間の距離を短くするように締め付けた際に、当該締付力が断熱材αの厚さで吸収されてしまい、その結果、パッキング環m、nによるシール性が悪化してしまう可能性が有る。
【0025】
換言すれば、耐熱材αの厚さ寸法は、シール性に悪影響を与えない範囲内で、且つ、必要な耐熱性を発揮できる範囲内であれば、自由に設定することが出来る。
出願人の行った実験では、耐熱材αの厚さ寸法が3mm位であれば効果が有るが、1mmでは効果は乏しかった。
【0026】
断熱材αを介装させることにより、金属製の締付環hの側面hi及び/又はリブhtの側面htiを介して伝達される熱(伝熱)は、断熱材αによって遮断されるので、パッキング環nに作用しない。従って、パッキング環nが金属製の締付環hからの伝熱により、軟化してしまうことが防止される。
また、締付環hと被接続管cの外周面(管表面)cfとの間の空間W2を経由して高温空気(矢印TFで示す)がパッキング環n側に侵入しようとしても、耐熱材αの半径方向縁部(図2では下方縁部)αeが被接続管cの外周面(管表面)cfに接触しているため、高温空気TFも遮断され、パッキング環nに熱的な損傷を与えてしまうことが防止される。
【0027】
図面では示されていないが、図示の実施形態では、パッキング環m、n(図2ではパッキング環nのみを示す)の材料として、高温でも容易に軟化しないフッ素ゴム(FPMゴム)を用いることが好ましい。フッ素ゴム(FPMゴム)は高温に晒されても容易に軟化しないので、パッキング材が軟化して流れてしまう恐れが無い。その他軟化点の高い材料が好ましい。
但し、本実施形態においても、従来技術と同様に、パッキング環m、nを安価なアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)で構成しても良く、断熱材αを有するので、耐熱性は確保される。NBRを用いることにより、管継手の製造コストを抑えることが可能となる。
なお、フッ素ゴムは高温により硬化するが、その様な硬化は、特に技術的な問題を惹起するものでは無い。
【0028】
第1実施形態の作用を確認する耐熱試験を、次に示す要領で実施した。
図1、図2の第1実施形態について、被接続管b、c内に、80℃の水を16kg/cmの圧力で循環させつつ、外側より、800℃の火炎に30分間晒した。その後、被接続管b、c内に、80℃の水を24kg/cmの圧力で循環させて、液漏れが起こるか否か、確認した。
その結果が、表1に示されている。
【0029】
【表1】

【0030】
表1を参照すれば明らかなように、断熱材αを介装させていない場合は、パッキング材をFPMにしても、NBRにしても、液漏れが発生してしまった(表1における「×」)のに対して、断熱材αを介装させた場合には、液漏れは発生しなかった(表1における「◎」或いは「○」)。
このことから、図示の第1実施形態によれば、上述した耐熱試験に耐える程度の耐熱性及びシール性を有していることが理解される。
【0031】
図3は、本発明の第2実施形態を示している。
図2では、断熱材αはパッキング環nと締付環hとの間の領域に1個のみ介装されていたが、図3の第2実施形態では、リブ部分αtを形成した断熱材α(第1実施形態で設けられているものと同一のタイプの断熱材)と、リブ部分を有していない円環状の断熱材α1とが、積層されて介装されている。
【0032】
ここで、図3では、断熱材αが2層に積層されているが、この積層数については、特に限定条件は無い。
但し、第1実施形態で説明したように、積層された断熱材の厚さ寸法が大き過ぎると、パッキング環m、nによるシール性に悪影響を及ぼす可能性が存在する。また、積層数が大き過ぎると、管同士の接続作業が煩雑化してしまう。従って、断熱材の積層数は管接続作業が煩雑化しない範囲に設定するべきであり、積層された断熱材の厚さ寸法はシール性に悪影響を及ぼさない範囲にするべきである。
図3の第2実施形態におけるその他の構成及び作用構成については、図1、図2の第1実施形態と同様である。
【0033】
図4は、本発明の第3実施形態を示している。
図1〜図3の実施形態では、断熱材α(α1)として、独立した円環状の部材を使用していたが、図4の実施形態では、締付環hのパッキング環n側の側面(図2中右側面)hiに耐熱性のコーティング材料を被覆した被覆層βを形成し、被覆層βが断熱材として作用している。
係る被覆層βが存在すれば、金属製の締付環hが加熱されても、締付環hのパッキング環n側の側面(図2中右側面)hiからの熱が、被覆層βで遮断され、パッキング環nへは伝達されない。従って、パッキング環nが軟化したり或いは熱的な損傷を受けることが防止される。
【0034】
被覆層βを構成するコーティング材料としては、断熱効果を有する材料であれば、例えば、塗料やパテ状の材料が使用可能である。係るコーティング材料の被覆方法としては、例えば、当該材料をスプレー等の吹付手段を用いて、締付環のパッキング環側面へ吹き付けて行うことが可能である。
このコーティング材料の一例として、ノックスドール(アウソン アクチボラグの登録商標)を用いることが出来る。
【0035】
図4の第3実施形態において、被覆層βの厚さ寸法(X方向寸法)については、コーティング材料を積層可能な寸法であれば特に限定はしないが、被覆層βが所望の断熱性が発揮して、パッキング環に熱的損傷を与えてしまうことを防止する程度の厚さ寸法が必要である。
図4の第3実施形態におけるその他の構成及び作用構成については、図1〜図3の各実施形態と同様である。
【0036】
図5は、本発明の第4実施形態を示している。
図5の実施形態では、図1〜図3の第1、第2実施形態で用いられている断熱材αを改装すると共に、締付環hには、図4の第3実施形態における被覆層βを形成している。
ここで、断熱材αについては、複数積層させても良い。
図5の第4実施形態におけるその他の構成及び作用構成については、図1〜図4の各実施形態と同様である。
【0037】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態を一部断面で示す正面図。
【図2】第1実施形態の要部を示す部分拡大図。
【図3】第2実施形態の要部を示す部分拡大図。
【図4】第3実施形態の要部を示す部分拡大図。
【図5】第4実施形態の要部を示す部分拡大図。
【符号の説明】
【0039】
α、α1 断熱材
β 被覆層
a 伸縮可撓管継手
b、c 被接続管
d ソケット管
g、h 締付環
k 結合ボルト
i、j テーパ面
m、n パッキング環

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接続管に遊嵌されたソケット管が被接続管の対向する管端に跨って配置され、被接続管の各々に遊嵌された締付環がソケット管の両側に配置され、締付環は複数本の結合ボルトで結合され、ソケット管の両端部内面と被接続管の外周面との間にパッキング環が挟装され、パッキング環は締付環によって被接続管の外周面に圧接させられ、被接続管が軸方向に摺動可能にシールされる様に構成されており、締付環とパッキング環との間の領域に断熱手段が介装されている事を特徴とする管継手。
【請求項2】
前記断熱手段は、円環状の断熱材で構成されている請求項1の管継手。
【請求項3】
前記円環状の断熱材は、複数を積層して構成されている請求項2の管継手。
【請求項4】
前記断熱手段は、締付環のパッキング環側の側面に形成された断熱性材料の被覆層で構成されている請求項1の管継手。
【請求項5】
前記断熱手段は、円環状の断熱材と、締付環のパッキング環側の側面に形成された断熱性材料の被覆層とで構成されている請求項1の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−112576(P2006−112576A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302407(P2004−302407)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(593130980)理研工機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】