説明

管腔外側に薬物を送達するためのコーティング付き医療用デバイス

本発明は、患者の体組織に治療薬を送達するための移植可能な医療用デバイス、およびそのような医療用デバイスを作製する方法に関する。特に、本発明は、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素と、そのような材料中の、治療薬を包含する複数のリザーバとを含んでなるコーティングを有する、血管内ステントのような移植可能なステントに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、患者の体組織に治療薬を送達するための移植可能な医療用デバイス、およびそのような医療用デバイスの製造方法に関する。特に、本発明は、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素と、そのような材料中に設けられた、治療薬を包含する複数のリザーバとを含んでなるコーティングを有する、血管内ステントのような移植可能な医療用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用デバイスは、患者の体組織に局所的に治療薬を送達するために使用されてきた。例えば、治療薬を含んでなる血管内ステントは、血管に局所的に治療薬を送達するために使用されてきた。そのような治療薬は多くの場合、再狭窄を予防するために使用されてきた。治療薬を含んでなるステントの例には、血管に送達するための治療薬を含むコーティングを備えたステントが挙げられる。治療薬を含むコーティングを有するステントが再狭窄の治療または予防に有効であることは、研究から示されている。
【0003】
治療薬を含むコーティングを有する医療用デバイスは再狭窄の治療または予防に有効ではあるが、多くのコーティング付き医療用デバイスは、該医療用デバイスを治療薬でコーティングするため、または治療薬の放出速度を制御するために、さらにポリマーを含んでいる。そのようなポリマーの使用により、ある種の制限が生じる場合がある。
【0004】
例えば、ポリマーコーティングの中には、医療用デバイスの表面に実際には付着せず、その代わりに該コーティングがデバイス表面をカプセル式に封入するので、医療用デバイスの装荷、展開および移植の際に該ポリマーコーティングが変形および損傷しやすいものがある。ポリマーコーティングに何らかの損傷があれば薬物放出プロファイルが変化する可能性があり、薬物放出速度の不適当かつ危険な増減をもたらす可能性がある。
【0005】
例えば、バルーン拡張型ステントは、体腔に送達される前に非拡張状態または「圧縮(crimpted)」状態にしなければならない。圧縮処理はコーティングを断裂させる可能性もあれば、コーティングをステントから完全に剥離させる原因となる可能性もある。圧縮状態になると、ポリマーコーティングはストラットのような隣接したステント表面を互いに付着させる可能性がある。さらに、コーティングがステントの内側表面に施される場合、拡張時にバルーンが内側表面と接触する時にコーティングがバルーンに粘着する場合もある。そのような支障により、医療用デバイスの展開配置の成功が妨げられる場合がある。
【0006】
バルーン拡張型ステントと同様に、自己拡張型ステント上のポリマーコーティングも、展開機構を妨害する可能性がある。自己拡張型ステントは通常、シース引き戻しシステムを使用して展開される。該システムがステントを展開させるために駆動されると、シースが引き戻されてステントを露出させ、ステントがひとりでに拡張できるようになる。シースが引き戻されるとき、シースはステントの外側表面の上を摺動する。ステントの外側表面に配置されたポリマーコーティングは、シースが引き戻されるときにシースに付着し、ステントの展開を妨害する可能性がある。
【0007】
多くのポリマーコーティングは医療用デバイスの表面を単にカプセル式に封入するだけなので、そのようなコーティングは変形しやすいだけでなく、医療用デバイスをカプセル式に封入するために医療用デバイスの表面全体を被覆しなければならない。治療薬/ポリマーコーティングで表面全体を被覆することは、過剰量の治療薬が医療用デバイスに付与されるという結果をもたらす可能性がある。ある場合には、医療用デバイスの、体腔と接触する表面だけが治療薬でコーティングされることが望ましい。しかしながら、治療薬がコーティング組成物中で分散状態にあり、該コーティング組成物が医療用デバイスの表面全体に付与される場合は、治療薬も医療用デバイスの表面全体に付与される。そのような過剰な治療薬の使用には費用がかかる。
【0008】
医療用デバイスの表面のコーティングまたはカプセル式封入の代替法は、医療用デバイスの表面に穴部を形成し、この穴部に治療薬を配置することである。穴部に治療薬を配置することにより、治療薬が医療用デバイスの表面全体ではなく必要な場所に配置されるため、過剰量の治療薬で医療用デバイスをコーティングすることに伴う無駄および危険が低減される。しかしながら、医療用デバイスに穴部を形成することは、医療用デバイスの構造上の完全性に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、穴部がステント・ストラットに形成される場合、ステント・ストラットの構造上の完全性が低下し、その結果ストラットが脆弱化する可能性がある。ストラットが脆弱であると、ステントが適切な拡張に失敗することも考えられるし、あるいは一度は移植されても虚脱し、その結果体腔の再閉塞を引き起こすことも考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、医療用デバイスの表面上への治療薬の配置についてより優れた制御を可能にする、医療用デバイスのためのコーティング、ならびに、特に医療用デバイスの装荷、展開または移植の際に容易に変形または破損することのないコーティングが必要とされている。さらに、医療用デバイスの構造上の完全性に影響を及ぼさない、医療用デバイスコーティングおよび該コーティングの付与方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記およびその他の目的は本発明によって成し遂げられる。本発明は、一実施形態では、血管内ステントのような医療用デバイスのためのコーティングを提供する。該コーティングは、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素を含んでなり、その中に複数のリザーバを有することを特徴とする第1のコーティング材料と、該リザーバ内に配置された、治療薬およびポリマーを含んでなる第2のコーティング材料とを含んでなる。
【0011】
該コーティングは、現行の薬物放出コーティングの代替物であり、また正確な量の治療薬を移植可能な医療用デバイスの表面に配置させることを可能にすることによって、現行の薬物放出コーティングの限界を克服する。本発明のコーティングはさらに、医療用デバイス自体の構造上の完全性を低下させることなく医療用デバイスの表面上に治療薬を的確に配置することも可能にする。治療薬が第1のコーティング材料の無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素の中のリザーバに配置されるので、リザーバは医療用デバイスの表面に掘削されるのではなく、従って医療用デバイスの構造上の完全性が維持される。
【0012】
本発明によって企図される一実施形態は、移植可能なステントであって、(a)管腔外側表面および管腔内側表面を有する管状のステント側壁構造;(b)外側表面を有するコーティングであって、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素を含んでなる、ステントの管腔外側表面の少なくとも一部に配置された第1のコーティング材料と;第1のコーティング材料の内部に形成された複数のリザーバと;リザーバ内に配置された、ポリマーおよび第1の治療薬を含んでなる第2のコーティング材料とを含んでなるコーティング、を備えたステントである。ある実施形態では、ステントの管腔内側表面にはコーティングがほとんどない。
【0013】
ステント側壁が側壁構造内に複数のストラットと開口部とを含んでなり、少なくとも1つのストラットが管腔外側表面および管腔外側表面の反対側の管腔内側表面を含んでなることも、本発明によって企図される。ある実施形態では、開口部が維持されるように、コーティングがステント側壁構造に形状一致することができる。
【0014】
本発明に従って使用することができるステントには、バルーン拡張型の血管内ステントおよび自己拡張型の血管内ステントが含まれる。
本発明のステントの管腔外側表面の少なくとも一部をコーティングすることに加えて、第1のコーティング材料が側壁構造の管腔内側表面にさらに配置され、かつ側壁構造の管腔内側表面に配置された第1のコーティング材料が複数のリザーバを含んでなることも可能である。
【0015】
本発明に従って使用される第1のコーティング材料は放射線不透過性であってもよい。本発明のコーティングにおいて使用される無機酸化物またはセラミック酸化物には、金属酸化物が挙げられる。例えば、無機酸化物またはセラミック酸化物はイリジウム酸化物であってもよい。本発明のコーティングにおいて使用される金属には、限定するものではないが、金、白金またはチタンが挙げられる。
【0016】
ある実施形態では、コーティングは厚さ約1マイクロメートル〜約70マイクロメートルである。さらに、第1のコーティング材料は、第1の治療薬とは異なる第2の治療薬をさらに含むことができる。
【0017】
本発明のある実施形態では、リザーバは相互に接続されてもよい。さらに、リザーバはコーティングの外側表面と連通していてもよい。リザーバはさらに、コーティングの外側表面とステントの管腔外側表面との間に伸びていてもよい。リザーバの平均直径は約5マイクロメートル〜約80マイクロメートルであってよい。
【0018】
コーティング中で使用されるポリマーは生物学的に安定であってもよいし、生体吸収性であってもよい。本発明のコーティング中で使用されるポリマーは、スチレン‐イソブチレンコポリマー、ポリ乳酸グリコール酸、およびメチレンビスアクリルアミドであってよい。
【0019】
適切な治療薬には、限定するものではないが、抗血栓形成剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、抗生物質、再狭窄抑制剤、成長因子、免疫抑制薬、放射性化学物質、またはこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、治療薬は再狭窄抑制剤を含んでなる。治療薬は、パクリタキセル、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムスまたはエベロリムスを含んでなるものであってよい。
【0020】
本発明はまた、血管内ステントであって、(a)管腔外側表面および管腔内側表面を有する管状のステント側壁構造であって、該構造内に複数の開口部を有する側壁構造;(b)管腔外側表面に配置された、金または白金を含んでなる第1のコーティング材料と;第1のコーティング材料の内部に形成された複数のリザーバと;リザーバの内部に配置された、ポリマーおよび再狭窄抑制剤を含んでなる第2のコーティング材料とを含んでなるコーティング、を含んでなるステントに関する。
【0021】
本発明はさらに、ステントであって、(a)管状のステント側壁構造であって該側壁構造内に複数のストラットおよび開口部を含んでなり、かつ少なくとも1つのストラットが管腔外側表面および管腔外側表面の反対側の管腔内側表面を含んでなることを特徴とする側壁構造;(b)外側表面を有するコーティングであって、金または白金を含んでなる、管腔外側表面の少なくとも一部に配置された第1のコーティング材料と;第1のコーティング材料の内部に形成された複数のリザーバと;リザーバの内部に配置された、ポリマーおよび再狭窄抑制剤を含んでなる第2のコーティング材料とを含んでなるコーティング、を含んでなるステントに関する。
【0022】
本発明はさらに、管腔外側表面および管腔内側表面を有する移植可能なステントをコーティングする方法であって、(a)ステントの管腔外側表面または管腔内側表面の少なくとも一部に第1のコーティング材料を配置する工程であって、第1のコーティングは無機酸化物もしくはセラミック酸化物、不活性炭素または金属を含んでなることを特徴とする工程と;(b)第1のコーティング材料中に複数のリザーバを形成する工程と;(c)リザーバ内に第2のコーティング材料を配置する工程であって、第2のコーティングはポリマーおよび治療薬を含んでなることを特徴とする工程と、からなる方法も企図している。本発明の方法のある実施形態では、ステントの管腔内側表面には第1のコーティングがほとんど無くてもよい。
【0023】
ある実施形態では、リザーバはステントの管腔外側表面にのみ形成されて、ステントの管腔内側にはリザーバがほとんど無いままであってもよい。別例として、リザーバがステントの管腔外側および管腔内側表面に形成されてもよい。リザーバは、掘削、化学エッチングまたはレーザーアブレーションによって形成可能である。
【0024】
本発明に従って使用される第1のコーティング材料は放射線不透過性であってもよい。本発明のコーティングに使用される無機酸化物またはセラミック酸化物は、金属酸化物であってよい。例えば、無機酸化物またはセラミック酸化物はイリジウム酸化物であってよい。本発明のコーティングに使用される金属としては、限定するものではないが、金、白金またはチタンが挙げられる。
【0025】
本発明のコーティングに使用される治療薬は、限定するものではないが、抗血栓形成剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、抗生物質、再狭窄抑制剤、成長因子、免疫抑制薬、放射性化学物質、平滑筋細胞の増殖を抑制する薬剤またはこれらの組み合わせであってよい。ある実施形態では、治療薬は再狭窄抑制剤を含んでなる。治療薬はパクリタキセル、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムスまたはエベロリムスを含むものであってよい。
【0026】
本発明の方法において使用されるポリマーは、生物学的に安定であってもよいし、生体吸収性であってもよい。適切なポリマーの例には、限定するものではないが、スチレン‐イソブチレンコポリマー、ポリ乳酸グリコール酸、およびメチレンビスアクリルアミドが挙げられる。
【0027】
本発明はさらに、管腔外側表面および管腔内側表面を有する移植可能なステントをコーティングする方法であって、(a)ステントの管腔内側表面または管腔外側表面の一部をマスキング材料でマスキングする工程と;(b)管腔内側表面または管腔外側表面のマスキングされていない部分に第1のコーティングを配置する工程であって、第1のコーティングは無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素を含んでなることを特徴とする工程と;(c)複数のリザーバを形成させるためにマスキング材料を除去する工程と;(d)リザーバの内部に第2のコーティング材料を配置する工程であって、第2のコーティングはポリマーおよび治療薬を含んでなることを特徴とする工程と、からなる方法も企図している。
【0028】
ある実施形態では、リザーバはステントの管腔外側表面にのみ形成されて、ステントの管腔内側にはリザーバがほとんど無いままであってもよい。別例として、リザーバは、ステントの管腔外側表面および管腔内側表面に形成されてもよい。リザーバは、掘削、化学エッチングまたはレーザーアブレーションによって形成可能である。
【0029】
本発明に従って使用される第1のコーティング材料は放射線不透過性であってもよい。本発明のコーティングに使用される無機酸化物またはセラミック酸化物は、金属酸化物であってよい。例えば、無機酸化物またはセラミック酸化物はイリジウム酸化物であってよい。本発明のコーティングに使用される金属としては、限定するものではないが、金、白金またはチタンが挙げられる。
【0030】
本発明のコーティングに使用される治療薬は、平滑筋細胞の増殖を抑制する薬剤を含んでなるものであってよい。その他の適切な治療薬には、限定するものではないが、抗血栓形成剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、抗生物質、再狭窄抑制剤、成長因子、免疫抑制薬、放射性化学物質、またはこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、治療薬は再狭窄抑制剤を含んでなる。治療薬はパクリタキセル、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムスまたはエベロリムスを含むものであってよい。
【0031】
本発明の方法において使用されるポリマーは、スチレン‐イソブチレンコポリマー、ポリ乳酸グリコール酸、およびメチレンビスアクリルアミドを含むものであってよい。
本発明について、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明で使用するのに適した医療用デバイスの例を示す図。
【図2】管腔外側表面にコーティングが配置されたステントの実施形態の断面図。
【図3】管腔外側表面にコーティングが配置された医療用デバイスの実施形態の断面図。
【図4】管腔外側表面および管腔内側表面にコーティングが配置された医療用デバイスの実施形態の断面図。
【図5】医療用デバイスの少なくとも一部にコーティングが配置された別の実施形態の断面図。
【図6】医療用デバイスの少なくとも一部にコーティングが配置されたさらに別の実施形態の断面図。
【図7】医療用デバイスの少なくとも一部にコーティングが配置されたさらに別の実施形態の断面図。
【図8】医療用デバイスの少なくとも一部にコーティングが配置されたさらに別の実施形態の断面図。
【図9】医療用デバイスの少なくとも一部にコーティングが配置されたさらに別の実施形態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
一実施形態では、本発明の医療用デバイスは、コーティングが配置された表面を含んでなる。該コーティングは、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素を含んでなる第1のコーティング材料であって、該材料内に複数のリザーバが形成されていることを特徴とする第1のコーティング材料と、該リザーバ内に配置された、治療薬およびポリマーを含んでなる第2のコーティング材料とを含んでなる。
【0034】
コーティングは、医療用デバイスの任意の表面に配置することができる。図1は、本発明で使用するのに適した医療用デバイスの例を示す。この図は、側壁20を含んでなり、側壁20の中に複数のストラット30および少なくとも1つの開口部40を含む移植可能な血管内ステント10を示す。一般に、開口部40は、隣りあったストラット30の間に配置される。さらに、側壁20は、第1の側壁表面22と、図1には示されていない反対側の第2の側壁表面とを有することができる。第1の側壁表面22は、ステントが移植された時に体腔壁に面する外側、すなわち管腔外側の側壁表面であってもよいし、体腔壁から離れた側を向く内側、すなわち管腔内側の側壁表面であってもよい。同様に、第2の側壁表面は、管腔外側の側壁表面であってもよいし、管腔内側の側壁表面であってもよい。
【0035】
ある実施形態では、ステント側壁構造内に開口部を有するステントにおいて、ステントに施されたコーティングがステントの表面に形状一致して、その結果側壁ステント構造の開口部が維持されるように、例えば、開口部がコーティング材料で完全にまたは部分的に閉鎖されることのないようにすることが望ましい。
【0036】
図2は、複数のストラット60を有するステント50の断面図を示す。ストラットはそれぞれ管腔外側表面62および管腔内側表面64を有する。この実施形態では、コーティング70はステント50の管腔外側表面62に配置されている。
【0037】
ある実施形態では、図2に示すように、コーティングは、医療用デバイスの表面のうち体腔と接触する部分である管腔外側表面62に配置される。体腔と接触する表面だけをコーティングすることにより、治療薬のような物質の過剰な使用が低減されることになる。
【0038】
図3は、管腔外側表面62および管腔内側表面64を有するステント・ストラット60の断面図を示す。管腔外側表面62の少なくとも一部に配置されるのは、外側表面72を有するコーティング70である。コーティング70は、内部にリザーバ76を有する無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素を含んでなる第1のコーティング材料74と、リザーバ76の中に配置された、ポリマー82および治療薬90を含んでなる第2のコーティング材料80とを含んでなる。本発明に従えば、リザーバ76はストラット60の表面62までは伸びず、従って、医療用デバイスの構造上の完全性を低下させることはない。
【0039】
他の実施形態では、コーティングは、医療用デバイスの表面の、体腔と接触する部分より広い部分を覆うことができる。表面の、体腔と接触する部分より広い部分が覆われているそのような実施形態は、体腔への治療薬の投与に加えて、血流中にも治療薬を導入することが有益な場合に、役立つことができる。例えば、管腔外側表面および管腔内側表面を有する血管内ステントは、管腔外側表面および管腔内側表面の両方に本発明のコーティングを有することができる。管腔外側表面上のコーティングは体腔に治療薬を投与することが可能であり、管腔内側表面上のコーティングは血流中に治療薬を導入することができる。
【0040】
図4は、ステント・ストラット60の断面図を示す。ステント・ストラット60は管腔外側表面62および管腔内側表面64を有する。この実施形態では、外側表面72を有するコーティング70が、管腔外側表面62および管腔内側表面64の少なくとも一部に配置されている。コーティング70は、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素を含んでなり、その中に複数のリザーバ76を有する第1のコーティング材料74と、リザーバ76の中に配置された、ポリマー82および治療薬90を含んでなる第2のコーティング材料80とを含んでなる。
【0041】
コーティングがステントの管腔外側表面および管腔内側表面の両方に配置される場合、管腔外側表面に配置されるコーティングは、ステントの管腔内側表面に配置されるコーティングと同じであってもよいし、異なっていてもよい。同様に、管腔外側および管腔内側のコーティングのリザーバ内に配置される治療薬は、同じであっても異なっていてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、コーティングは医療用デバイスの表面全体に配置されてもよい。別例として、第1のコーティング材料は医療用デバイスの表面全体に配置されて、リザーバは医療用デバイスの体腔と接触する部分にのみ配置されてもよい。
【0042】
図3および図4に示されるように、リザーバ76は第1のコーティング材料74の全体にわたって分布していてもよい。ある実施形態では、リザーバは個別的であってもよいし、パターンをなして配置されてもよい。パターンは無作為であってもよいし、一様であってもよい。
【0043】
図5は、ステント100の断面図を示す。ステント100は、管腔外側表面102および管腔内側表面104、ならびに前端部106および後端部108を有する。管腔外側表面102の少なくとも一部にコーティング110が配置されている。ステントが複数のストラットを含んでなる、ある種の実施形態では、ストラットの管腔外側表面がステントの管腔外側表面を構成し、ストラットの管腔内側表面がステントの管腔内側表面を構成する。管腔外側表面102の少なくとも一部に、外側表面112を有するコーティング110が配置されている。コーティング110は、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素を含んでなり、その中に複数のリザーバ116を有する第1のコーティング材料114と、ポリマー122および治療薬130を含んでなる第2のコーティング材料120とを含んでなる。この実施形態では、リザーバ116は、ステント100の前端部106および後端部108においてコーティング中に配置されている。ステントが複数のストラットを含んでなる実施形態では、リザーバをステントの端部のストラットに配置することができる。
【0044】
さらに、コーティング中のリザーバのうちの一部またはすべてがコーティングの外側表面と連通してもよい。例えば、図3および図4では、リザーバ76はコーティング70の外側表面72と連通している。外側表面とのそのような連通により、医療用デバイスからの治療薬の放出を促進することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、リザーバは、さらに医療用デバイスの表面と接していてもよい。図3のリザーバはコーティング70の外側表面72と連通しているだけでなく、ストラット50の表面62とも接している。
【0046】
別の実施形態では、リザーバは医療用デバイスの表面と接していなくてもよい。図6は、管腔外側表面62および管腔内側表面64を有するストラット60の断面図を示す。管腔外側表面62の少なくとも一部の上にコーティング70が配置されている。コーティング70は、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素を含んでなる第1のコーティング材料74を含んでなり、第1のコーティング材料74はその中に複数のリザーバ76を有し、リザーバ76は様々な大きさであるが、コーティングを通り抜けてストラット62の表面まで伸びることはない。コーティング70はさらに、リザーバ76の内部に配置された、ポリマー82および治療薬90を含んでなる第2のコーティング材料80を含んでなる。
【0047】
さらに、コーティング中のリザーバの一部またはすべてが他のリザーバと相互に連結していてもよい。図7は、管腔外側表面62および管腔内側表面64を有するステント・ストラット60の断面図を示す。コーティング70が、表面62の少なくとも一部の上に配置されている。コーティング70は、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素を含んでなる第1のコーティング材料74を含んでなり、第1のコーティング材料はその中に複数のリザーバ76を有し、リザーバ76は相互に連結している。コーティング70は、リザーバ76の内部に配置された、ポリマー82および治療薬90を含んでなる第2のコーティング材料80をさらに含んでなる。
【0048】
さらに、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素の中のリザーバは任意の形状であってよい。例えば、リザーバは円筒状、円形状または半球状に形作られてもよい。リザーバはさらに、形状が非円形であってもよいし、様々な形状の混合物であってもよい。リザーバはまた、管路、チャネルまたは空洞の経路のように形作られてもよい。この細孔の形状の変更を利用して、医療用デバイスの表面に装荷可能な治療薬の量を最大化または最適化することができる。ある実施形態では、リザーバは上部すなわちコーティングの表面近くでは狭く、次いで医療用デバイスの表面近くでは広くなってもよい。
【0049】
例えば、図8は、管腔外側表面62および管腔内側表面64を有するステント・ストラット60の断面図を示す。管腔外側表面62の少なくとも一部にコーティング70が配置されている。コーティング70は、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素を含んでなる第1のコーティング材料74を含んでなり、第1のコーティング材料74は複数のリザーバ76を有し、リザーバ76はコーティングの表面72の近くでは狭く、ステント・ストラット60の表面62の近くでは広い。コーティング70はさらに、リザーバ76の内部に配置された、ポリマー82および治療薬90を含んでなる第2のコーティング材料80を含んでなる。
【0050】
さらに、第1のコーティング材料の中のリザーバは、任意の大きさまたは大きさの範囲を有することができる。いくつかの例では、リザーバはマイクロサイズのリザーバであってもよいし、ナノサイズのリザーバであってもよい。さらに、一部の実施形態では、リザーバの平均幅または平均直径が約1nm〜約10μmであることが望ましい場合もある。好ましくは、平均幅または平均直径は約3マイクロメートル〜約70マイクロメートルである。
【0051】
リザーバの大きさを、治療薬の放出速度を制御するために使用することができる。例えば、平均幅がより大きなリザーバは、平均幅がより小さなリザーバよりも速く治療薬が放出されるのを可能にする。さらに、第1のコーティング材料の中のリザーバの数を調節して、治療薬の放出速度をより十分に制御することができる。例えば、第1のコーティング材料の単位体積または単位重量あたりに存在するリザーバがより多ければ、より少ないリザーバを有する材料よりも高い治療薬放出速度が可能となる。
【0052】
第1のコーティング材料は、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素であってよい。第1のコーティング材料はさらに、放射線不透過性であるかまたはMRI適合性であるかのうち少なくともいずれかであってもよい。ある実施形態では、第1のコーティング材料は無機酸化物またはセラミック酸化物を含んでなる。無機酸化物またはセラミック酸化物の例には、限定するものではないが、酸化白金、酸化タンタル、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化イリジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化ロジウム、酸化ルテニウム、二酸化ケイ素のようなシリコン酸化物;チタン・ポリ[(オリゴエチレングリコール)ジヒドロキシチタナート]のような無機・有機ハイブリッド、またはこれらの組み合わせが挙げられる。他の実施形態では、無機酸化物またはセラミック酸化物は金属酸化物である。ある実施形態では、好適な無機酸化物またはセラミック酸化物には、限定するものではないが、酸化イリジウムおよび酸化チタンが挙げられる。
【0053】
本発明のある実施形態では、第1のコーティング材料は金属を含んでなる。適切な金属には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、金属合金および半金属が挙げられる。金属の例には、限定するものではないが、チタン、スカンジウム、ステンレス鋼、タンタル、ニッケル、ケイ素、クロム、コバルト、クロム、マンガン、鉄、白金、イリジウム、ニオブ、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、ロジウム、ルテニウム、金、銅、亜鉛、イットリウム、モリブデン、テクネチウム、パラジウム、カドミウム、ハフニウム、レニウムおよびこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、好適な金属として、限定するものではないが、白金、金、チタンおよびステンレス鋼が挙げられる。
【0054】
他の実施形態では、第1のコーティング材料は不活性炭素を含んでなることができる。不活性炭素の適切な形態には、限定するものではないが、熱分解炭素および多孔質ガラス状炭素が挙げられる。多孔質炭素の使用は、血栓症の予防および血管内皮細胞の増殖促進を支援することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素は、コーティングの重量の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%またはそれ以上を占めることができる。好ましくは、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素は、コーティングの重量の約20%〜約70%である。
【0056】
第2のコーティング材料が配置されるリザーバに加えて、第1のコーティング材料は追加の細孔をさらに含むことができる。その追加の細孔の中に、第2の治療薬を配置することができる。例えば、図9は、管腔外側表面62および管腔内側表面64を有するステント・ストラット60の断面図を示す。管腔外側表面62の少なくとも一部にコーティング70が配置されている。該コーティングは第1のコーティング材料74を含んでなり、第1のコーティング材料74はその性質から予めその中に複数の細孔78を有している。例えば、複数の細孔を有した炭素を含んでなる第1のコーティング材料を使用することができる。第1のコーティング材料74の中の細孔78に加えて、複数のリザーバ76を第1のコーティング材料74の中に形成することができる。ポリマー82および第1の治療薬90を含んでなる第2のコーティング材料80は、リザーバ76のうちの少なくともいくつかの中に配置され、第2の治療薬92は細孔78のうちのいくつかの中に配置される。
【0057】
コーティングは任意の厚さであってよい。いくつかの実施形態では、コーティングは約1〜約10マイクロメートルの厚さであることが好ましい。一部の例では、より多数のリザーバおよびより大量の治療薬を包含するように、比較的厚い被膜が好まれる場合もある。
【0058】
A.医療用デバイス
本発明に適した医療用デバイスには、限定するものではないが、ステント、外科用ステープル、移植蝸牛刺激装置、中心静脈カテーテルおよび動脈カテーテルのようなカテーテル、ガイドワイヤ、カニューレ、心臓ペースメーカーのリードまたはリードチップ、除細動器のリードまたはリードチップ、移植可能な血管アクセスポート、血液保存用バッグ、血液回路、血管グラフトまたは他のグラフト、大動脈内バルーンポンプ、心臓弁、心臓血管の縫合材、完全人工心臓および心室補助心臓、体外デバイス、例えば血液酸素付加装置、血液フィルタ、血液透析ユニット、血液灌流ユニットまたは血漿交換ユニット、が挙げられる。
【0059】
本発明に特に適した医療用デバイスには、当業者に周知の、医療目的のための任意のステントが挙げられる。適切なステントには、例えば、自己拡張型ステントおよびバルーン拡張型ステントのような血管内ステントが挙げられる。自己拡張型ステントの例は、ウォルステン(Wallsten)の米国特許番号第4,655,771号および同第4,954,126号、ならびにウォルステン(Wallsten)らの同第5,061,275号明細書に例証されている。適切なバルーン拡張型ステントの例は、ピンチャシク(Pinchasik)らの米国特許第5,449,373号明細書に示されている。好ましい実施形態では、本発明に適したステントはExpressステントである。より好ましくは、Expressステントは、Express(商標)ステント、またはExpress2(商標)ステント(米国マサチューセッツ州ナティック所在のボストン・サイエンティフィック社(Boston Scientific,Inc.))である。
【0060】
適切なステントのフレームワークは、当分野で周知の様々な方法によって形成可能である。フレームワークは、溶接、鋳造、レーザー切削、電鋳されてもよいし、連続的な構造を形成するために相互に巻き付けまたは編組がなされたフィラメントまたはファイバーで構成されてもよい。
【0061】
本発明に適した医療用デバイスは、金属材料、セラミック材料、ポリマー材料もしくは複合材料、またはこれらの組み合わせから製作することができる。好ましくは、該材料は生物学的適合性を有する。金属材料がより好ましい。適切な金属材料には、チタン系の金属および合金(ニチノール、ニッケル‐チタン合金、熱記憶合金材など);ステンレス鋼;タンタル、ニッケル‐クロム;またはElgiloy(登録商標)およびPhynox(登録商標)のようなコバルト‐クロム‐ニッケル合金を含む、ある種のコバルト合金;PERSS(白金強化型ステンレス鋼(Platinum EnRiched Stainless Steel))およびニオブ、が挙げられる。金属材料としてはさらに、国際公開公報第94/16646号パンフレットに開示されているもののようなクラッド複合フィラメントも挙げられる。
【0062】
適切なセラミック材料には、限定するものではないが、チタン、ハフニウム、イリジウム、クロム、アルミニウムおよびジルコニウムのような遷移元素の酸化物、炭化物または窒化物が挙げられる。シリカのようなシリコン系材料を使用することもできる。
【0063】
医療用デバイスの形成に適したポリマーは生物学的に安定であるとよい。さらに、ポリマーは生物分解性であってもよい。適切なポリマーには、限定するものではないが、スチレン‐イソブチレン‐スチレン、ポリエーテルオキシド、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリ‐2‐ヒドロキシブチラート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸グリコール酸、およびTeflon(登録商標)が挙げられる。
【0064】
本発明における医療用デバイスの形成に使用可能なポリマーには、限定するものではないが、イソブチレン系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリアクリラートおよびポリアクリラート誘導体、酢酸ビニル系ポリマーおよびそのコポリマー、ポリウレタンおよびそのコポリマー、シリコーンおよびそのコポリマー、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタラート、熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレンコポリマー、アクリル樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸‐ポリエチレンオキシドコポリマー、セルロース、コラーゲン、ならびにキチンが挙げられる。
【0065】
医療用デバイスの材料として有用な他のポリマーには、限定するものではないが、dacron(登録商標)ポリエステル、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリラート、ポリプロピレン、ポリアルキレンオキサラート、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリシロキサン、ナイロン、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリシアノアクリラート、ポリホスファゼン、ポリ(アミノ酸)、エチレングリコールIジメタクリラート、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(2‐ヒドロキシエチルメタクリラート)、ポリテトラフルオロエチレン ポリ(HEMA)、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリ(グリコリド‐ラクチド)コポリマー、ポリ乳酸、ポリ(γ‐カプロラクトン)、ポリ(γ‐ヒドロキシブチラート)、ポリジオキサノン、ポリ(γ‐エチルグルタメート)、ポリイミノカーボネート、ポリ(オルトエステル)、ポリ無水物、アルギナート、デキストラン、キチン、綿、ポリグリコール酸、ポリウレタン、またはこれらの誘導体、すなわち、例えば結合部位もしくは架橋基(例えばRGD)を含むように修飾されたポリマーであって、細胞およびタンパク質、核酸などのような分子の結合が可能であると同時に該ポリマーの構造上の完全性を維持しているポリマー、が挙げられる。
【0066】
医療用デバイスは非ポリマーで製造されてもよい。有用な非ポリマーの例には、コレステロール、スチグマステロール、β‐シトステロール、およびエストラジオールのようなステロール;ステアリン酸コレステリルのようなコレステリルエステル;C12‐C24脂肪酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、およびリグノセリン酸;C18‐C36のモノ‐、ジ‐およびトリアシルグリセリド、例えばグリセリルモノオレアート、グリセリルモノリノレアート、グリセリルモノラウラート、グリセリルモノドコサノアート、グリセリルモノミリスタート、グリセリルモノデセノアート、グリセリルジパルミタート、グリセリルジドコサノアート、グリセリルジミリスタート、グリセリルジデセノアート、グリセリルトリドコサノアート、グリセリルトリミリスタート、グリセリルトリデセノアート、グリセロールトリステアラートおよびこれらの混合物;スクロースジステアラートおよびスクロースパルミタートのようなスクロース脂肪酸エステル;ソルビタンモノステアラート、ソルビタンモノパルミタートおよびソルビタントリステアラートのようなソルビタン脂肪酸エステル;セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコールおよびセトステアリルアルコールのようなC16‐C18脂肪族アルコール;パルミチン酸セチルおよびパルミチン酸セテアリルのような脂肪族アルコールおよび脂肪酸のエステル;ステアリン酸無水物のような脂肪酸の無水物;ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、およびこれらのリゾ化誘導体を含むリン脂質;スフィンゴシンおよびその誘導体;ステアリル、パルミトイル、およびトリコサニルスフィンゴミエリンのようなスフィンゴミエリン;ステアリルセラミドおよびパルミトイルセラミドのようなセラミド;スフィンゴ糖脂質;ラノリンおよびラノリンアルコール;ならびにこれらの組み合わせおよび混合物、が挙げられる。非ポリマーには、移植に先立って医療用デバイスに播種することが可能な、幹細胞のような生体材料も挙げることができる。好ましい非ポリマーには、コレステロール、グリセリルモノステアラート、グリセロールトリステアラート、ステアリン酸、ステアリン酸無水物、グリセリルモノオレアート、グリセリルモノリノレアート、およびアセチル化モノグリセリドが挙げられる。
【0067】
B.治療薬
本発明で使用される用語「治療薬」は、薬物、遺伝物質および生体物質を包含し、「生物学的活性を有する物質」と互換的に使用することができる。一実施形態では、治療薬は再狭窄抑制剤である。他の実施形態では、治療薬は平滑筋細胞の増殖、収縮、移動または活動過多を抑制する。適切な治療薬の非限定的な例には、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニンクロロメチルケトン(PPack)、エノキサプリン(enoxaprin)、アンギオペプチン、ヒルジン、アセチルサリチル酸、タクロリムス、エベロリムス、ラパマイシン(シロリムス)、ピメクロリムス、アムロジピン、ドキサゾシン、グルココルチコイド、ベタメタゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、スルファサラジン、ロシグリタゾン、ミコフェノール酸、メサラミン、パクリタキセル、5‐フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、メトトレキサート、アザチオプリン、アドリアマイシン、mutamycin(登録商標)、エンドスタチン、アンギオスタチン、チミジンキナーゼ阻害剤、クラドリビン、リドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、D‐Phe‐Pro‐Argクロロメチルケトン、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤、トラピジル、liprostin(TM)、ダニ抗血小板ペプチド、5‐アザシチジン、血管内皮細胞増殖因子、成長因子受容体、転写活性化因子、翻訳プロモーター、抗増殖剤、成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗薬、転写リプレッサー、翻訳リプレッサー、複製阻害剤、遮断抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒とで構成されている二官能分子、抗体と細胞毒とで構成されている二官能分子、コレステロール低下剤、血管拡張剤、内因生の血管作動性機構を阻害する薬剤、酸化防止剤、プロブコール、抗生物質、ペニシリン、セホキシチン、オキサシリン、トブラナイシン(tobranycin)、血管新生物質、繊維芽細胞成長因子、エストロゲン、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、17‐βエストラジオール、ジゴキシン、β遮断薬、カプトプリル、エナロプリル(enalopril)、スタチン、ステロイド、ビタミン、パクリタキセル(ならびにその誘導体、アナログ体またはタンパク質結合型のパクリタキセル(例えばAbraxane(商標))、2’‐スクシニルタキソール、2’‐スクシニルタキソールトリエタノールアミン、2’‐グルタリルタキソール、2’‐グルタリルタキソールトリエタノールアミン塩、N‐(ジメチルアミノエチル)グルタミンとの2’‐O‐エステル、N‐(ジメチルアミノエチル)グルタミド塩酸塩との2’‐O‐エステル、ニトログリセリン、亜酸化窒素、一酸化窒素、抗生物質、アスピリン、ジギタリス、エストロゲン、エストラジオールおよびグリコシド、が挙げられる。一実施形態では、治療薬は平滑筋細胞阻害剤または抗生物質である。好ましい実施形態では、治療薬はタキソール(例えばTaxol(登録商標))またはそのアナログ体もしくは誘導体である。別の好ましい実施形態では、治療薬はパクリタキセルまたはそのアナログ体もしくは誘導体である。さらに別の好ましい実施形態では、治療薬は、エリスロマイシン、アンフォテリシン、ラパマイシン、アドリアマイシンなどのような抗生物質である。
【0068】
用語「遺伝物質」は、限定するものではないが以下に述べる有用タンパク質をコードするDNA/RNAを含むDNAまたはRNAであって、ウイルスベクターおよび非ウイルスベクターを含めて人体に挿入することが意図されたDNAまたはRNAを意味する。
【0069】
用語「生体物質」は、細胞、酵母、細菌、タンパク質、ペプチド、サイトカインおよびホルモンを含む。ペプチドおよびタンパク質の例には、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、形質転換増殖因子(TGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、表皮増殖因子(EGF)、軟骨成長因子(CGF)、神経成長因子(NGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、骨格成長因子(SGF)、骨芽細胞由来成長因子(BDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、サイトカイン成長因子(CGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、低酸素誘導因子1(HIF‐1)、幹細胞由来の因子(SDF)、幹細胞成長因子(SCF)、血管内皮細胞増殖サプリメント(ECGS)、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM‐CSF)、増殖分化因子(GDF)、インテグリン修飾因子(IMF)、カルモデュリン(CaM)、チミジンキナーゼ(TK)、腫瘍壊死因子(TNF)、成長ホルモン(GH)、骨形態形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP‐2、BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5、BMP‐6(Vgr‐1)、BMP‐7(PO‐1)、BMP‐8、BMP‐9、BMP‐10、BMP‐11、BMP‐12、BMP‐14、BMP‐15、BMP‐16など)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、マトリックスメタロプロテアーゼの組織阻害因子(TIMP)、サイトカイン、インターロイキン(例えばIL‐1、IL‐2、IL‐3、IL‐4、IL‐5、IL‐6、IL‐7、IL‐8、IL‐9、IL‐10、IL‐11、IL‐12、IL‐15など)、リンホカイン、インターフェロン、インテグリン、コラーゲン(全種類)、エラスチン、フィブリリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、トランスフェリン、サイトタクチン、細胞結合ドメイン(例えばRGD)、およびテネイシン、が含まれる。現時点で好ましいBMPは、BMP‐2、BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5、BMP‐6、BMP‐7である。これらの二量体タンパク質は、ホモダイマー、ヘテロダイマーまたはこれらの組み合わせとして、単独で、または他の分子と一緒に提供することができる。細胞は、ヒト由来(自己または同種異型)でも、動物供給源由来(異種)でもよく、移植部位に対象タンパク質を送達するために、必要に応じて遺伝子操作されてもよい。送達媒体は、細胞の機能および生存力を維持するための必要に応じて調製することができる。細胞には、前駆細胞(例えば内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば、間充織幹細胞、造血幹細胞、ニューロン幹細胞)、間質細胞、実質細胞、未分化細胞、繊維芽細胞、マクロファージおよび衛星細胞が含まれる。
【0070】
その他の非遺伝子の治療薬には:
・ 抗血栓形成剤、例えばヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼおよびPPack(デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニンクロロメチルケトン);
【0071】
・ 抗増殖剤、例えばエノキサプリン(enoxaprin)、アンギオペプチン、または平滑筋細胞の増殖を阻止することができるモノクローナル抗体、ヒルジン、アセチルサリチル酸、タクロリムス、エベロリムス、アムロジピンおよびドキサゾシン;
【0072】
・ 抗炎症薬、例えばグルココルチコイド、ベタメタゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、ロシグリタゾン、ミコフェノール酸およびメサラミン;
【0073】
・ 抗新生物剤/抗増殖剤/抗有糸分裂剤、例えばパクリタキセル、5‐フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、メトトレキサート、アザチオプリン、アドリアマイシンおよびmutamycin(登録商標);エンドスタチン、アンギオスタチンおよびチミジンキナーゼ阻害剤、クラドリビン、タキソールおよびそのアナログ体もしくは誘導体;
【0074】
・ 麻酔薬、例えばリドカイン、ブピバカインおよびロピバカイン;
・ 抗凝血剤、例えばD‐Phe‐Pro‐Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン(アスピリンは鎮痛薬、解熱薬および抗炎症薬としても分類される)、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤、トラピジルもしくはliprostin(TM)のような抗血小板剤ならびにダニの抗血小板ペプチド;
【0075】
・ DNA脱メチル化剤、例えば5‐アザシチジン(5‐アザシチジンは、細胞増殖を阻害し、ある種のがん細胞においてアポトーシスを引き起こすRNAまたはDNA代謝産物としても分類される);
【0076】
・ 血管細胞成長促進物質、例えば成長因子、血管内皮細胞増殖因子(VEGF、VEGF‐2を含む全種類)、成長因子受容体、転写活性化因子および翻訳プロモーター;
・ 血管細胞成長阻害剤、例えば抗増殖剤、成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗薬、転写リプレッサー、翻訳リプレッサー、複製阻害剤、遮断抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒素とで構成される二官能分子、抗体と細胞毒素とで構成される二官能分子;
【0077】
・ コレステロール低下薬、血管拡張剤、および内因性の血管作動性機構を阻害する薬剤;
・ 酸化防止剤、例えばプロブコール;
・ 抗生物質、例えばペニシリン、セホキシチン、オキサシリン、トブラナイシン(tobranycin)、ラパマイシン(シロリムス);
【0078】
・ 抗血管新生物質、例えば酸性および塩基性の線維芽細胞成長因子、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)および17‐βエストラジオールを含むエストロゲン;
【0079】
・ 心不全のための医薬、例えばジゴキシン、β遮断薬、カプトプリルおよびエナラプリルを含むアンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害剤、スタチン類および関連化合物;ならびに
【0080】
・ マクロライド剤、例えばシロリムスまたはエベロリムス、が含まれる。
好ましい生体物質には、ステロイドのような抗増殖剤、ビタミン、および再狭窄抑制剤が挙げられる。好ましい再狭窄抑制剤には、Taxol(登録商標)、パクリタキセル(すなわちパクリタキセル、パクリタキセルアナログまたはパクリタキセル誘導体、およびこれらの混合物)のような微小管安定化剤が挙げられる。例えば、本発明での使用に適した誘導体には、2’‐スクシニル‐タキソール、2’‐スクシニル‐タキソールトリエタノールアミン、2’‐グルタリル‐タキソール、2’‐グルタリル‐タキソールトリエタノールアミン塩、N‐(ジメチルアミノエチル)グルタミンとの2’‐O‐エステル、およびN‐(ジメチルアミノエチル)グルタミド塩酸塩との2’‐O‐エステルが挙げられる。
【0081】
他の適切な治療薬として挙げられるのは、タクロリムス;ハロフジノン;ゲルダナマイシンのようなHSP90熱ショックタンパク質阻害剤;エポチロンDのような微小管安定化剤;クリオスタゾール(cliostazole)のようなホスホジエステラーゼ阻害剤;Barkct阻害剤;ホスホランバン阻害剤;ならびにSerca2遺伝子/タンパク質である。
【0082】
他の好ましい治療薬には、ニトログリセリン、亜酸化窒素、一酸化窒素、アスピリン、ジギタリス、エストラジオールのようなエストロゲン誘導体、およびグリコシドがある。
一実施形態では、治療薬は細胞の代謝を変化させることができるか、またはタンパク質合成、DNA合成、紡錘糸形成、細胞増殖、細胞移動、微小管形成、微小フィラメント形成、細胞外マトリックス合成、細胞外マトリックス分泌、もしくは細胞の体積増大のような細胞活性を抑制することができる。別の実施形態では、治療薬は細胞増殖または細胞移動のうち少なくともいずれか一方を抑制することができる。
【0083】
ある実施形態では、本発明の医療用デバイスにおいて使用される治療薬は、当業者に良く知られた方法によって合成することができる。別例として、治療薬は化学薬品会社および製薬会社から購入することもできる。
【0084】
一部の実施形態では、治療薬は、第2のコーティング材料の重量の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%またはそれ以上を占める。好ましくは、治療薬は第2のコーティング材料の重量の約5〜約15%である。より好ましくは、治療薬は該治療薬を含むコーティングの重量の約8〜約10%である。ある実施形態では、治療薬は該治療薬を含むコーティングの重量の約8.8%である。
【0085】
C.ポリマー
第2のコーティング材料を形成するのに有用なポリマーは、特に体内にデバイスを挿入または移植する間は生体適合性を有し、かつ体組織を刺激しないポリマーでなければならない。そのようなポリマーの例としては、限定するものではないが、ポリウレタン、ポリイソブチレンおよびそのコポリマー、シリコーン、ならびにポリエステルが挙げられる。他の適切なポリマーには、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、エチレン‐αオレフィンコポリマー、アクリルポリマーおよびアクリルコポリマー、ポリ塩化ビニルのようなハロゲン化ビニルのポリマーおよびコポリマー、ポリビニルメチルエーテルのようなポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンのようなポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンのようなポリビニル芳香族、ポリ酢酸ビニルのようなポリビニルエステル;ビニルモノマーのコポリマー、エチレンメチルメタクリラートコポリマーのような、ビニルモノマーとオレフィンとのコポリマー、アクリロニトリル‐スチレンコポリマー、ABS樹脂、エチレン‐酢酸ビニルコポリマー、ナイロン66およびポリカプロラクトンのようなポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシエチレン、ポリイミド、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン‐トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロハン、ニトロセルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、コラーゲン、キチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ならびにポリ乳酸‐ポリエチレンオキシドコポリマーが挙げられる。
【0086】
ある実施形態では、疎水性ポリマーを使用することができる。適切な疎水性のポリマーまたはモノマーの例としては、限定するものではないが、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1‐ブテン)、ポリ(2‐ブテン)、ポリ(1‐ペンテン)、ポリ(2‐ペンテン)、ポリ(3‐メチル‐1‐ペンテン)、ポリ(4‐メチル‐1‐ペンテン)、ポリ(イソプレン)、ポリ(4‐メチル‐1‐ペンテン)、エチレン‐プロピレンコポリマー、エチレン‐プロピレン‐ヘキサジエンコポリマー、エチレン‐酢酸ビニルコポリマー、2以上のポリオレフィンのブレンド、ならびに2以上の異なる不飽和モノマーから調製されたランダムコポリマーおよびブロックコポリマー;スチレンポリマー、例えばポリ(スチレン)、スチレン‐イソブチレンコポリマー、ポリ(2‐メチルスチレン)、約20モルパーセント未満のアクリロニトリルを有するスチレン‐アクリロニトリルコポリマー、およびスチレン‐2,2,3,3,‐テトラフルオロプロピルメタクリラートコポリマー;ハロゲン化炭化水素ポリマー、例えばポリ(クロロトリフルオロエチレン)、クロロトリフルオロエチレン‐テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン‐エチレンコポリマー、ポリ(トリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニル)、およびポリ(フッ化ビニリデン);ビニルポリマー、例えばポリ(酪酸ビニル)、ポリ(デカン酸ビニル)、ポリ(ドデカン酸ビニル)、ポリ(ヘキサデカン酸ビニル)、ポリ(ヘキサン酸ビニル)、ポリ(プロピオン酸ビニル)、ポリ(オクタン酸ビニル)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロポキシエチレン)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロポキシプロピレン)、およびポリ(メタクリロニトリル);アクリルポリマー、例えばポリ(n‐酢酸ブチル)、ポリ(アクリル酸エチル)、ポリ(1‐クロロジフルオロメチル)テトラフルオロエチルアクリラート、ポリジ(クロロフルオロメチル)フルオロメチルアクリラート、ポリ(1,1‐ジヒドロヘプタフルオロブチルアクリラート)、ポリ(1,1‐ジヒドロペンタフルオロイソプロピルアクリラート)、ポリ(1,1‐ジヒドロペンタデカフルオロオクチルアクリラート)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロピルアクリラート)、ポリ5‐(ヘプタフルオロイソプロポキシ)ペンチルアクリラート、ポリ11‐(ヘプタフルオロイソプロポキシ)ウンデシルアクリラート、ポリ2‐(ヘプタフルオロプロポキシ)エチルアクリラート、およびポリ(ノナフルオロイソブチルアクリラート);メタクリル酸ポリマー、例えばポリ(ベンジルメタクリラート)、ポリ(n‐ブチルメタクリラート)、ポリ(イソブチルメタクリラート)、ポリ(t‐ブチルメタクリラート)、ポリ(t‐ブチルアミノエチルメタクリラート)、ポリ(ドデシルメタクリラート)、ポリ(エチルメタクリラート)、ポリ(2‐エチルヘキシルメタクリラート)、ポリ(n‐ヘキシルメタクリラート)、ポリ(フェニルメタクリラート)、ポリ(n‐プロピルメタクリラート)、ポリ(オクタデシルメタクリラート)、ポリ(1,1‐ジヒドロペンタデカフルオロオクチルメタクリラート)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロピルメタクリラート)、ポリ(ヘプタデカフルオロオクチルメタクリラート)、ポリ(1‐ヒドロテトラフルオロエチルメタクリラート)、ポリ(1,1‐ジヒドロテトラフルオロプロピルメタクリラート)、ポリ(1‐ヒドロヘキサフルオロイソプロピルメタクリラート)、およびポリ(t‐ノナフルオロブチルメタクリラート);ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタラート)およびポリ(ブチレンテレフタラート);縮合型ポリマー、例えばポリウレタンおよびシロキサン‐ウレタンコポリマー;ポリオルガノシロキサン、すなわちシロキサン基の繰り返しを特徴とするポリマーであり、代表的なものとしてRaSiO4−a/2(Rは1価の置換または非置換炭化水素基であり、aの値は1または2);ならびにゴムのような天然の疎水性ポリマー、が挙げられる。
【0087】
他の実施形態では、親水性ポリマーを使用することもできる。適切な親水性のポリマーまたはモノマーの例としては、限定するものではないが、(メタ)アクリル酸、またはそのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩;(メタ)アクリルアミド;メチレンビスアクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;ポリ乳酸;ポリグリコール酸;ポリ乳酸グリコール酸;マレイン酸およびフマル酸のような不飽和二塩基酸もしくはこれらの不飽和二塩基酸のハーフエステル、またはこれらの二塩基酸もしくはハーフエステルのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩、が付加されたポリマー;不飽和スルホン酸、例えば2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸、2‐(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、またはこれらのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩、が付加されたポリマー;ならびに2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリルラートおよび2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルラート、が挙げられる。
【0088】
ポリビニルアルコールも親水性ポリマーの一例である。ポリビニルアルコールは、ヒドロキシル、アミド、カルボキシル、アミノ、アンモニウムまたはスルホニル(‐SO3)のような親水基を複数含む場合がある。親水性ポリマーには、限定するものではないが、デンプン、多糖類および関連するセルロースポリマー;ポリアルキレングリコール、およびポリエチレンオキシドのようなポリアルキレンオキシド;アクリル酸、メタクリル酸およびマレイン酸のようなエチレン系不飽和カルボン酸およびこれらの酸に由来する部分エステルならびにアルキレングリコールのような多価アルコールのポリマー;アクリルアミド由来のホモポリマーおよびコポリマー;ならびにビニルピロリドンのホモポリマーおよびコポリマー、が挙げられる。
【0089】
さらなる適切なポリマーには、限定するものではないが、熱可塑性エラストマー全般、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、エチレン‐αオレフィンコポリマー、アクリルポリマーおよびアクリルコポリマー、ポリ塩化ビニルのようなハロゲン化ビニルのポリマーおよびコポリマー、ポリビニルメチルエーテルのようなポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンのようなポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンのようなポリビニル芳香族、ポリ酢酸ビニルのようなポリビニルエステル、ビニルモノマーのコポリマー、エチレンメチルメタクリラートコポリマーのようなビニルモノマーとオレフィンとのコポリマー、アクリロニトリル‐スチレンコポリマー、ABS(アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン)樹脂、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ナイロン66およびポリカプロラクトンのようなポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルブロックアミド、エポキシ樹脂、レーヨン・トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロハン、ニトロセルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、コラーゲン、キチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸‐ポリエチレンオキシドコポリマー、EPDM(エチレン‐プロピレン‐ジエン)ゴム、フルオロポリマー、フルオロシリコーン、ポリエチレングリコール、多糖類、リン脂質、ならびに先述のものの組み合わせ、が挙げられる。
【0090】
使用可能なその他のポリマーには、水または有機溶媒に容易に溶解することができるか、第1のコーティング材料のリザーバ内で硬化または重合させることができるか、比較的低い融点を有するか、治療薬とブレンドすることができるかのうち少なくともいずれかであるポリマーが挙げられる。さらに、ポリマーが身体に吸収されるにつれて治療薬が放出される、生体吸収性ポリマーが使用されてもよい。生体吸収性材料を使用するさらなる利点は、ポリマーが吸収されると、空のリザーバが、血栓症を予防し血管内皮細胞の増殖を促進する助けとなりうることである。
【0091】
ある実施形態では、好適なポリマーには、限定するものではないが、スチレン‐イソブチレンコポリマー、ポリ乳酸グリコール酸、およびメチレンビスアクリルアミドが挙げられる。
【0092】
D.コーティングを作製する方法
本発明の医療用デバイスコーティングは、医療用デバイスの表面の少なくとも一部に、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素を含んでなる第1のコーティング材料を配置することと;第1のコーティング材料の中に複数のリザーバを形成することと;リザーバの中に、ポリマーおよび治療薬を含んでなる第2のコーティングを配置することと、によって作製することができる。
【0093】
第1のコーティング材料は、任意の適切な方法、例えば、限定するものではないが、浸漬法、吹き付け法、塗装、電気めっき、蒸発、プラズマ蒸着、陰極アーク堆積法、スパッタリング、イオン注入、静電的方法、電気めっき、電気化学的方法、上記の組み合わせ、などによって、医療用デバイスの表面の少なくとも一部に配置することができる。
【0094】
第1のコーティング組成物中のリザーバも同様に、当分野で周知の任意の方法によって形成することができる。これらの方法には、限定するものではないが、レーザーアブレーション、掘削、または化学エッチング、マイクロコンタクトプリンティング、インクジェットプリンティング、スクリーン印刷、レプリカモールディング法、マイクロトランスファーモールディング法、キャピラリー中でのマイクロモールディング法、溶媒に支援されたマイクロモールディング法、プロキシマルプローブリソグラフィ、フォトリソグラフィ、走査型プローブリソグラフィ、およびエンボス加工技術が含まれる。
【0095】
さらに、リザーバは第1のコーティング材料から副次材料を除去することにより形成することができる。材料を除去するための技法には、限定するものではないが、脱合金化法または陽極酸化法が挙げられる。本発明のコーティングで医療用デバイスをコーティングするためには、第1のコーティング材料および副次材料を医療用デバイスの表面の一部に配置する。第1のコーティング材料は、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素を含んでなる。副次材料は、第1のコーティング材料から除去可能であれば任意の材料でよい。例えば、副次材料は、第1の金属よりも電気化学的活性が高いものでよい。好ましくは、副次材料は金属である。適切な金属には、限定するものではないが、銀、金、タンタル、白金、ビスマス、イリジウム、ジルコニウム、ヨウ素、チタン、およびバリウムが挙げられる。第1のコーティング組成物および副次材料を医療用デバイスの表面に配置した後、副次材料を除去することにより第1のコーティング組成物中に複数のリザーバを形成させる。
【0096】
副次材料は、副次材料の選択的溶解のような脱合金化処理によって第1のコーティング材料から除去することができる。この方法では、第1のコーティング材料および副次材料を、副次金属を除去する酸に対して曝露する。したがって、第1のコーティング材料は酸に曝露されても溶解しない材料であり、副次金属は溶解する材料であることが好ましい。第2の金属を除去するために任意の適切な酸を使用することができる。当業者であれば、第2の金属の除去に使用するための適切な濃度および反応条件が分かるであろう。
【0097】
別例として、副次材料を陽極処理により除去することもできる。例えば、銀は、陽極をめっきしたステント、陰極を白金として、最大15%の硝酸を含む稀硝酸浴液を用いて陽極処理により除去することができる。最大で10VのDC電圧を両電極にかけることができる。浴液の化学的性質、温度、印加電圧および処理時間を変化させて、コーティング膜の幾何学的形状、分布および深さを変化させることができる。別例では、Technic Envirostrip(登録商標)Ag、929.0304平方センチメートル(1平方フィート)当たり10〜20アンペアを、ステンレス鋼の陰極と共に使用してもよい。
【0098】
第1のコーティング材料中にリザーバが形成されたら、リザーバ内に第2のコーティング材料を配置する。第2のコーティング材料はポリマーおよび治療薬を含んでなる。第2のコーティング材料は、当分野で既知の任意の適切な方法で、第1のコーティング組成物のリザーバ内に配置することができる。そのような方法には、限定するものではないが、インクジェットプリンティングまたは真空含浸法が挙げられる。さらなる方法には、第2のコーティング材料で医療用デバイスをコーティングし、過剰分を除去することが挙げられる。例えば、第2のコーティング材料を、浸漬法、吹き付け法、塗装、ロールコーティングまたはこれらの組み合わせのような方法と、その後の過剰分の除去とによって、医療用デバイスの表面の一部に付与することができる。
【0099】
リザーバ内に第2のコーティング材料を配置しやすくするために、ポリマーおよび治療薬を一緒に予め混合してから付与してもよいし、ポリマーおよび治療薬を有機溶媒または水性溶媒中に溶解または懸濁させることにより該ポリマーおよび治療薬の溶液または懸濁液を形成し、次いで医療用デバイスの表面の一部をコーティングするために使用してもよい。
【0100】
別の実施形態では、治療薬とモノマーとを一緒に混合し、リザーバ内に配置することができる。さらに、このモノマーおよび治療薬に重合開始剤を加えることができる。リザーバ内に配置済みであれば、紫外線または熱への曝露のような方法によってモノマーを重合化させることもできる。使用される重合度、モノマーおよび重合開始剤は、所望の治療薬放出速度によって決定されることになる。
【0101】
別の実施形態では、医療用デバイスをコーティングする方法は、マスキング材料を用いて、ステントのような医療用デバイスの表面の一部をマスキングすることと;医療用デバイスの表面上に、金属、無機酸化物もしくはセラミック酸化物、または不活性炭素を含んでなる第1のコーティングを配置することと;マスキング材料を除去して複数のリザーバを作成することと;リザーバ内に、ポリマーおよび治療薬を含んでなる第2のコーティングを配置することと、からなる。
【0102】
第1のコーティング材料が医療用デバイスの表面の一部に配置される前に、医療用デバイスの表面の一部にポリマーの小滴を付与して、該表面の、リザーバを構成することになる部分をマスキングすることもできる。ポリマーの小滴は、インクジェットプリンティングおよびリソグラフィのような方法によって付与することができる。第1のコーティング材料が医療用デバイスの表面に配置されたら、ポリマーを除去して複数のリザーバを形成させる。上述の方法を用いて第2のコーティング材料をリザーバ内に配置する。
【0103】
本発明の医療用デバイスおよびステントは任意の適切な医学的処置に使用することができる。該医療用デバイスの送達は、当業者に良く知られた方法を用いて行うことができる。
【0104】
本明細書中の記載は例示を目的とするものであり、限定を目的とするものではない。記載の実施形態に対して変更および修正を施すことも可能であり、該変更および修正は依然として本発明の範囲内にある。更に、当業者には、明白な変更、修正または変形が想起されるであろう。また、上記に引用された参照文献はすべて、本開示と関係するすべての目的に関して、該文献全体が本願に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植可能なステントであって、
(a)管腔外側表面および管腔内側表面を有する管状のステント側壁構造;
(b)外側表面を有するコーティングであって、
(i)無機酸化物もしくはセラミック酸化物、金属または不活性炭素を含んでなる、ステントの管腔外側表面の少なくとも一部に配置された第1のコーティング材料と;
(ii)第1のコーティング材料の内部に形成された複数のリザーバと;
(iii)リザーバ内に配置された、ポリマーおよび第1の治療薬を含んでなる第2のコーティング材料と
を含んでなるコーティング、を備えたステント。
【請求項2】
ステントの管腔内側表面にはコーティングがほとんどないことを特徴とする、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
側壁構造は該側壁構造内に複数のストラットと開口部とを含んでなり、少なくとも1つのストラットが管腔外側表面および管腔外側表面の反対側の管腔内側表面を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載のステント。
【請求項4】
開口部が維持されるように、コーティングがステント側壁構造に形状一致していることを特徴とする、請求項1に記載のステント。
【請求項5】
第1のコーティング材料が側壁構造の管腔内側表面にさらに配置され、かつ側壁構造の管腔内側表面に配置された第1のコーティング材料が複数のリザーバを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載のステント。
【請求項6】
無機酸化物またはセラミック酸化物はイリジウム酸化物を含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項7】
金属は、金、白金またはチタンを含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項8】
コーティングは厚さ約1マイクロメートル〜約70マイクロメートルである、請求項1に記載のステント。
【請求項9】
第1のコーティング材料は第2の治療薬をさらに含んでなり、第1の治療薬と第2の治療薬とは異なることを特徴とする、請求項1に記載のステント。
【請求項10】
リザーバは相互に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のステント。
【請求項11】
リザーバはコーティングの外側表面と連通していることを特徴とする、請求項1に記載のステント。
【請求項12】
リザーバはコーティングの外側表面とステントの管腔外側表面との間に伸びていることを特徴とする、請求項1に記載のステント。
【請求項13】
リザーバの平均直径は約5マイクロメートル〜約80マイクロメートルである、請求項1に記載のステント。
【請求項14】
ポリマーは生物学的に安定である、請求項1に記載のステント。
【請求項15】
ポリマーは生体吸収性である、請求項1に記載のステント。
【請求項16】
ポリマーは、スチレン‐イソブチレンコポリマー、ポリ乳酸グリコール酸、およびメチレンビスアクリルアミドを含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項17】
治療薬は、抗血栓形成剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、抗生物質、再狭窄抑制剤、成長因子、免疫抑制薬、または放射性化学物質を含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項18】
治療薬は再狭窄抑制剤を含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項19】
治療薬はパクリタキセルを含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項20】
治療薬は、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムスまたはエベロリムスを含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項21】
血管内ステントであって、
(a)管腔外側表面および管腔内側表面を有する管状のステント側壁構造であって、該構造内に複数の開口部を有する側壁構造;
(b)コーティングであって、
(i)管腔外側表面に配置された、金または白金を含んでなる第1のコーティング材料と;
(ii)第1のコーティング材料の内部に形成された複数のリザーバと;
(iii)リザーバの内部に配置された、ポリマーおよび再狭窄抑制剤を含んでなる第2のコーティング材料と
を含んでなるコーティング、を備えたステント。
【請求項22】
ステントであって、
(a)管状のステント側壁構造であって該側壁構造内に複数のストラットおよび開口部を含んでなり、かつ少なくとも1つのストラットが管腔外側表面および管腔外側表面の反対側の管腔内側表面を含んでなることを特徴とする側壁構造;
(b)外側表面を有するコーティングであって、
(i)金または白金を含んでなる、管腔外側表面の少なくとも一部に配置された第1のコーティング材料と;
(ii)第1のコーティング材料の内部に形成された複数のリザーバと;
(iii)リザーバの内部に配置された、ポリマーおよび再狭窄抑制剤を含んでなる第2のコーティング材料と
を含んでなるコーティング、を備えたステント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−519957(P2010−519957A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551743(P2009−551743)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/002713
【国際公開番号】WO2008/106223
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】