説明

管路連結構造

【課題】ソケット部1の内周面に前後の2条の溝条を設け、奥方溝条にリングシールを、出口側溝条に一部を切り欠いたリング体を装着し、接続管の外周面適宜位置に凹条を周設し、ソケットに接続管を挿入した状態でリング体が凹条と係合して接続管の抜け止めをなす管路の接続構造において、リング体に拡径状態及び縮径状態の維持構造を付与する。
【解決手段】リング体の切り欠き箇所に、外周に突出する係止突部42を設け、リング体装着溝条に、係止部が拡縮双方の状態で収まる開口部13を形成し、開口部の前後縁部の一方に、リング体が拡径状態で係止突部が係止される拡径用引掛段部14を、他方にリング体が縮径状態で係止突部が係止される縮径用引掛段部15を形成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管等の管路構成において、各種の配管管路において、管路を形成するための管路連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の配管路は、その用途に応じて適宜な管径並びに長さの金属管を適宜連結して所望の管路を設置することで実現しているものである。この管路形成に必要な金属管の連結手段として、金属管の端縁近傍に管を一周する浅い凹条を形成しておき、前記凹条に係合する分割リング体を備えた継手との組み合わせによる管路接続が知られている。
【0003】
具体的には、前記継手は、内周面に前後の2条の溝条を設け、奥方溝条にリングシール(ゴム製)を装着し、出口側溝条に、一部を切り欠いたリング体を装着し、前記リング体を拡径して金属管を挿入し、挿入後に弾性力でリング体を縮径させ、外周部分が溝条に係合し、内周部分を金属管凹条に係合して接続管(挿入管)の抜け止めを実現しているものである。
【0004】
特にリング体の拡径手段として、リング体の内周面をテーパー面に形成し、挿入金属管の先端によるテーパー面の押圧で、リング体の拡径を行うことができるが、強い挿入力を必要とするので、予め拡径状態としておくことも提案されている。
【0005】
特許2691507号公報(特許文献1)には、リング体収納溝条の一部外周面を開口し、当該開口箇所にリング体の切り欠きを位置せしめ、拡径ピンを装着して拡径状態を維持し、挿入管の接続に際して当該拡ピンを取り除いて縮径させているものである。
【0006】
【特許文献1】特許2691507号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
切り欠きリング体の拡径状態を維持する拡径ピンを採用した場合には、誤って拡径ピンを管奥方に押圧して離脱させてしまうと、縮径状態に移行してしまい、再度のピン装着が必要となる。
【0008】
またピン装着に際して、リング体を所定位置(切り欠き部分を開口部位置とする)とし、且つピン装着作業のために、開口部はソケット体の先端まで開口することになり、管路形成後に、別形成(ピンの転用ができない)したスペーサーを装着する等の適宜な外観的処置を必要とする。
【0009】
またリング体が縮径状態となった場合に、当該リング体が弾性力で、挿入管の凹条を強く抱持する状態であれば良いが、リング体か緩やかに抱持する状態では、リング体がガタツクことになる。
【0010】
そこで本発明は、特殊形状の切り欠きリング体を採用して、リング体の拡径状態及び縮径状態をリング体自体で維持する構造を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る管路接続構造は、ソケット側の内周面に前後の2条の溝条を設けると共に、奥方溝条にリングシールを装着し、出口側溝条に、所定の弾性を備えると共に一部を切り欠いたリング体を装着し、接続管(挿入管)の外周面適宜位置に凹条を周設し、ソケットに接続管を挿入した状態でリング体が凹条と係合して接続管の抜け止めをなす管路の接続構造において、リング体の切り欠き箇所に、外周に突出する係止突部を設けると共に、リング体装着溝条に、前記係止部が拡縮双方の状態で収まる開口部を形成し、前記開口部の前後縁部の一方に、リング体が拡径状態で係止突部が係止される拡径用引掛段部を、他方にリング体が縮径状態で係止突部が係止される縮径用引掛段部を形成してなることを特徴とするものである。
【0012】
従ってリング体を拡径状態で係止突部を拡径用引掛段部に係止すると、接続管を容易に挿入することができ、接続管を挿入後に、前記係止突部の係止を解除し、弾性力でリング体を縮径させ、更に係止突部を縮径用引掛段部に係止すると、リング体を縮径状態で固定されることになる。
【0013】
また特に本発明(請求項2)は、リング体の係止部を拡径用引掛段部又は縮径用引掛段部に係止した状態の何れも維持する形状で、開口部に嵌合挿着としてなるスペーサーを備えてなることを特徴とするもので、同一のスペーサーを拡径状態でも縮径状態のいずれにも使用することができ、スペーサーの装着で、係止突部が段部より不用意に外れることが無い。
【発明の効果】
【0014】
本発明は前記構成を備えた管路接続構造で、係止突部の開閉操作で容易にリング体を拡径状態又は縮径状態に移行することができるので、誤って拡径状態を縮径状態に移行させたとしても、直ぐに復帰させて、管路接続可能状態とすることができ、管路接続操作が容易であり、また縮径状態を維持することができるので、リング体のガタツキを防止できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<第一実施形態>図1乃至図6は、本発明の第一実施形態であり、連結対象は、ソケット部1とソケット部1に挿入する接続管2である。
【0016】
ソケット部1は、連結端の内周面と、接続管2の外周を略一致させ、接続管2の適宜箇所(挿入接続した際の後記するリング体4の装着箇所)に浅い凹条21を設けてなるものである。
【0017】
ソケット部1の内周面には、前後の2条の溝条11,12を設けてなり、更に前方溝条12の適宜箇所には、外周まで貫通する開口部13を設けているものである。尚ソケット部1の連結端の反対側は、別の管を直接(螺合連結、溶接固定)又は適宜な連結構造(本発明の連結構造のような接続)を採用しているものである。
【0018】
奥方溝条11には、周知のリングシール3が装着され挿入される接続管2の外周部とソケット部1の内周部との間を水封状態とするものである。
【0019】
前方溝条12には、リング体4を装着するものでリング体4は、適宜弾性材で形成されたもので、切り欠き部41を備え、切り欠き部41を開拡することで拡径され、閉じることで縮径するもので、切り欠き部41と対面する箇所の外周に係止突部42を突設してなる。
【0020】
また前記のリング体4は、約20度前後切り欠き部41を開拡すると、接続管2の外径よりも大きく拡径し、切り欠き部41を閉じることで接続管2の外径よりも小さく縮径するものである。
【0021】
更にリング体4の係止突部42は前後方向(軸方向)に撓むことが出来るようにしているものである。
【0022】
前記開口部13は、前記係止突部42が所定の開放状態(リング体4の拡径状態)と、所定の閉塞状態(リング体4の縮径状態)が収まる範囲(20度程度)に形成し、特に開口部13の前縁部に、リング体4が拡径状態で係止突部42が係止される拡径用引掛段部14を、後縁部の中央にリング体4が縮径状態(係止突部が互いに当接した状態)で係止突部42が係止される縮径用引掛段部15を形成してなる。
【0023】
またスペーサー5は、開口部13の全体を占める範囲から、係止突部42が拡径用引掛段部14に係止されている状態と、縮径用引掛段部15に係止されている状態の範囲を除いた残余の空間を満たす形状としたものである。
【0024】
而して前記の管路連結構造を採用した管路の構築は、リング体4の係止突部42を開拡状態とし、且つ前方に僅かに撓ませて拡径用引掛段部14に係止し、更にスペーサー5を嵌合装着する。
【0025】
従って前記状態で運搬などを行ってもスペーサー5によって係止突部42と拡径用引掛段部14の係止の解除を阻止するので、リング体4が拡径状態に維持されることになる。
【0026】
そこで前記状態で管路設置現場まで運搬し、現場においてソケット部1に接続管2を挿入し、同時にスペーサー5を取外し、更に係止突部42と拡径用引掛段部14の係止を解除する。
【0027】
係止突部42と拡径用引掛段部14の係止が解除されるとリング体4自体の弾性でリング体4が縮径状態に移行する。そして接続管2の凹条21位置とリング体4が一致する位置でリング体4が最も縮径して、凹条21内にリング体4が密着する。
【0028】
そこで係止突部42を後方に僅かに撓ませて縮径用引掛段部15に係止し、スペーサー5を嵌合装着する。
【0029】
従ってリング体4が前方溝条12と凹条21の双方に引っ掛かり、接続管2がソケット部1から抜け出るのを阻止し、且つリングシール3によって接続箇所の水密性も確保され、管路が構築されるものである。特にスペーサー5によって、係止突部42が誤って開拡されることがない。
【0030】
<第二実施形態>図7乃至図12は、本発明の第二実施形態であり、連結対象のソケット部1とソケット部1に挿入する接続管2及び、リングシール3は、開口部13aの形状を除いて前記第一実施形態と同一である。
【0031】
前方溝条12に装着されるリング体4aは、第一実施形態と同様に弾性材で形成されたもので、切り欠き部41aを備え、切り欠き部41aを開拡することで拡径され、閉じることで縮径する構成を備えている他、特に切り欠き部41aに面する箇所の外周に係止突部42aを前後方向にスライド自在に突設してなるものである。
【0032】
即ち切り欠き部41aに面する箇所の外周にスライド溝(好ましくは蟻溝)43を前後方向に穿設し、係止突部42aの底面に前記スライド溝43に嵌合する突部44を設けてなるものである。
【0033】
また開口部13aには、前記第一実施形態と同様に、係止突部42aが係止される拡径用引掛段部14a及び縮径用引掛段部15aを形成し、開口部13aの全体を占める範囲から、係止突部42aが拡径用引掛段部14aに係止されている状態と、縮径用引掛段部15aに係止されている状態の範囲を除いた残余の空間を満たす形状に形成したスペーサー5aを備えてなるものである。
【0034】
而して前記第二実施形態の管路連結構築は、第一実施形態と同様に、リング体4aの係止突部42aを開拡状態とし、且つ前方にスライドさせて拡径用引掛段部14aに係止し、更にスペーサー5aを嵌合装着し、リング体4aが拡径状態を維持しておき、連結に際してスペーサー5aを取外し、係止突部42aと拡径用引掛段部14aの係止を解除し、リング体4aを縮径状態に移行して接続管2の抜け止めを実現する。
【0035】
更に係止突部42aを後方にスライド移動させて縮径用引掛段部15aに係止し、スペーサー5を嵌合装着し、縮径状態(抜け止め構造)を維持するものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第一実施形態のリング体の斜視図。
【図2】同リング体収納箇所の正面図(断面図)。
【図3】同管路接続部位の断面図(接続前)。
【図4】同管路接続部位(ソケット部)の平面図(接続前)。
【図5】同管路接続部位の断面図(接続後)。
【図6】同管路接続部位の平面図(接続後)。
【図7】本発明の第二実施形態のリング体の斜視図。
【図8】同リング体収納箇所の正面図(断面図)。
【図9】同管路接続部位の断面図(接続前)。
【図10】同管路接続部位(ソケット部)の平面図(接続前)。
【図11】同管路接続部位の断面図(接続後)。
【図12】同管路接続部位の平面図(接続後)。
【符号の説明】
【0037】
1 ソケット部
11 奥方溝条
12 前方溝条
13,13a 開口部
14,14a 拡径用引掛段部
15,15a 縮径用引掛段部
2 接続管
21 凹条
3 リングシール
4,4a リング体
41,41a 切り欠き部
42,42a 係止突部
43 スライド溝
44 突部
5,5a スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケット側の内周面に前後の2条の溝条を設けると共に、奥方溝条にリングシールを装着し、出口側溝条に、所定の弾性を備えると共に一部を切り欠いたリング体を装着し、接続管の外周面適宜位置に凹条を周設し、ソケットに接続管を挿入した状態でリング体が凹条と係合して接続管の抜け止めをなす管路の接続構造において、リング体の切り欠き箇所に、外周に突出する係止突部を設けると共に、リング体装着溝条に、前記係止突部が拡縮双方の状態で収まる開口部を形成し、前記開口部の前後縁部の一方に、リング体が拡径状態で係止突部が係止される拡径用引掛段部を、他方にリング体が縮径状態で係止突部が係止される縮径用引掛段部を形成してなることを特徴とする管路連結構造。
【請求項2】
リング体の係止突部を拡径用引掛段部又は縮径用引掛段部に係止した状態のいずれも維持する形状で、開口部に嵌合挿着可能としてなるスペーサーを備えてなる請求項1記載の管路接続構造。
【請求項3】
リング体の係止突部を前後方向に撓ませて拡径用引掛段部又は縮径用引掛段部に係止してなる請求項1又は2記載の管路連結構造。
【請求項4】
リング体の係止突部を前後方向にスライド可能に設けて、拡径用引掛段部又は縮径用引掛段部に係止してなる請求項1又は2記載の管路連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−10031(P2007−10031A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191224(P2005−191224)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(591197633)明和工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】