説明

簡易ブーム装置

【課題】 鉄塔上などでの高所作業のために工具類収納容器の上げ下ろしを行う際に、これが鉄塔のコロビにおける構成材に引っかからないように、コロビから離隔した位置で昇降索により円滑に上げ下ろし可能とする簡易ブーム装置を提供する。
【解決手段】 工具類収納容器昇降用の機械器具を吊り下げるための吊り具を一端部寄りに備えたアーム材と、該アーム材を鉄塔の構成材に着脱可能に固定するための固定具とからなり、前記アーム材は外方に向けて伸縮自在とされたことを特徴とする簡易ブーム装置。アーム材は、形鋼または鋼管とされる。前記の吊り具は、前記鉄塔の最外側の構成材を通る仮想鉛直線上またはそれよりも外側に配置されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業において、工具類、特に、長尺の工具を収納した工具類収納容器の上げ下ろし作業に用いられる軽量かつ操作の容易な簡易ブーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔などの高所において送電線、支持物、鉄塔構成材などの保守、点検、修理などの作業をする場合、使用する工具および資材などを搬送することが必要となる。図6は、送電鉄塔上への工具などの上げ下ろし状況を示している。この図において、送電鉄塔Tは、主柱材M、水平材Vおよび斜材Rから構成されており、高所作業者HWが鉄塔上の作業場所に待機しており、当該作業場所近辺の構成材には滑車Kが吊り下げられ、これに巻装された昇降索Pが地上に向けて垂下している。地上作業者LW1は、この昇降索Pの一端に工具などを収納した容器(以下、「工具類収納容器」という。)Bを連結した上で、昇降索Pの他端を操作することにより工具類収納容器Bの上げ下ろしを行う。
【0003】
しかし、送電鉄塔Tの下側には、図6に示すように、主柱材Mが上方から下方に向かって外側に広がっている、いわゆるコロビがある。このコロビの部分では、主柱材Mに両端が接合される水平材Vや斜材Rなどの構成材もまた上方から下方に向かうにつれ、鉄塔の外側に広がっている。このため、工具類収納容器Bを鉛直方向に上げ下ろしするのでは、容器B自体やその開口から突出した工具などがコロビにおける構成材に引っかかり、容器Bが傾き、その結果収納されていた工具などが落下し、重大事故が発生する危険性がある。
【0004】
この危険を回避するために、工具類収納容器Bの下部に案内索Hを取り付け、容器Bを上げ下ろしする際に、工具類収納容器Bがコロビにおける構成材に引っかからないように、もう1人の作業者LW2が地上から案内索Hを操作し、鉄塔Tから離隔する方向に容器Bを引っ張って、工具類収納容器Bを作業場所に向かって斜めに上げ下ろしている。しかし、この案内索Hの操作にはある程度熟練と労力を要し、また長尺の工具や資材の一部が工具類収納容器Bの開口から張り出している場合には、地上からの案内索Hの操作のみによって上記の危険を完全に回避することは困難な場合が多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、鉄塔上などでの高所作業のために工具類収納容器の上げ下ろしを行う際の地上作業者の案内作操作の労力を軽減し、容易かつ円滑に工具類収納容器を上げ下ろしできる簡易ブーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、本発明によれば、鉄塔に外方に向けて突出するように着脱自在に設置され、自由端寄りに吊り具を備えており、長手方向において前記鉄塔からの突出長さを調整可能なアーム材からなることを特徴とする簡易ブーム装置によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の簡易ブーム装置は、アーム材の鉄塔外方への突出長さを調整可能としたので、その自由端寄りに設けた吊り具の位置およびこれに吊り下げられる滑車などに巻装される昇降索の位置をアーム材の長手方向に沿って調整でき、工具類収納容器を上げ降ろしする際に、それが鉄塔の構成材に引っかかり、傾いたり逆さになることがない。その結果、地上作業者の案内索操作の労力を軽減でき、また容器内の工具および資材などが容器外へ落下することによる事故発生の危険性を著しく低減することができる。また、アーム材の突出長さを調整可能としたので、本発明の装置を大小種々の鉄塔に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の簡易ブーム装置は、鉄塔に外方に向けて突出するように着脱自在に設置され、自由端寄りに吊り具を備えたアーム材からなる。なお、本発明において、鉄塔とは、送電線の保守、点検および修理や碍子などの高所作業が行われる施設であり、その代表例として、例えば、送電鉄塔などを挙げることができる。
【0009】
本発明の簡易ブーム装置におけるアーム材としては、それ自体の自重や工具類収納容器、当該容器吊り下げ用の機械器具および昇降索などの外部からこれに加えられる荷重に耐え得る強度を有するものであればよく、鋼材などを好適に使用できる。具体例としては、等辺山形鋼、不等辺山形鋼、I形鋼、T形鋼、(H形鋼)、みぞ形鋼、Z形鋼、玉山形鋼、C形鋼などの形鋼や円形鋼管や角型鋼管などの鋼管が挙げられる。
【0010】
アーム材は、1本のみを単独で用いてもよく、少なくとも2本のアーム材片をその長手方向に連結して用いてもよい。後者の場合、アーム材片は同種のものを使用するのが好ましく、それぞれのアーム材片は、その一部を重ねた状態でボルトやナットなどの公知の連結具を用いて連結される。
【0011】
このアーム材の自由端(先端)寄りには、工具類収納容器昇降用の器具を取り付けられるように吊り具が設置される。このような吊り具は公知のものが使用できる。例えば、吊り具としては、各種フックなどのほか、Uボルト、シャックルなどの連結具が挙げられる。なお、本明細書では、用具「吊り具」に該吊り具を連結する連結具を含めた意味で使用する。
【0012】
吊り具の設置位置は特に限定されない。また、その個数についても1個に限られず、複数個設置することができる。なお、上記工具類収納容器昇降用の器具としては、例えば、滑車、チェンブロックなどが挙げられる。このうち、滑車は、比較的軽量であり取り扱いが容易であることから、より好適に使用できる。
【0013】
上記アーム材は、鉄塔において対向するか、または隣り合う2本の水平材や斜材などに掛け渡すようにして、または水平材の長手方向に平行にその一辺を当接させた状態で固定具を用いて固定することができる。前者の場合、固定具としては、アーム材の断面形状に応じて、例えば、フックボルト、チャンネルボルト、パイプボルトなどの特殊形状のボルトとナットとの組み合わせを好適に使用でき、またはロープなどを用いてアーム材を緊縛することもできる。また、後者の場合には、例えば、ボルト、ナットからなる公知の固定具や水平材およびアーム材の一辺を重ね合わせた状態で挟持して固定できる固定具などを用いることができる。アーム材は、通常、水平に固定されるが、水平方向から上方または下方に傾斜させて固定することもできる。
【0014】
アーム材は、これをそのままの長さでその長手方向に移動させるか、またはアーム材自体の長さを可変とすることにより、鉄塔から外方に向けた突出長さを調整可能とすることができる。
【0015】
前者の具体例としては、アーム材の長手方向に沿って長穴を穿設しておき、鉄塔構成材にアーム材を固定するための固定具を当該長穴に挿通させ、上記の長穴および固定具を介してアーム材を上記鉄塔構成材に摺動自在に固定する構成などが挙げられる。これにより、最大限当該長穴の長さ分だけアーム材をその長手方向に摺動させることができ、その結果、アーム材の鉄塔外方に向けた突出長さを調整できる。
【0016】
また、例えば水平材などにアーム材を重ね合わせて固定する場合には、上記の通りこれらを重ね合わせた状態で密着させるように両側から挟むことができる固定具を使用し、該固定具の固定をわずかに緩めてアーム材を摺動させることで、その鉄塔からの突出長さを調整できる。
【0017】
後者の具体例としては、アーム材を少なくとも2本のアーム材片の連結体とし、それぞれのアーム材片に同様に長穴を穿設しておき、それぞれの長穴が重なるようにアーム材を重ね合わせ、当該長穴に連結具を挿通させてこれらアーム材片を連結する構成が挙げられる。例えば、2本以上の同種の山形鋼を長手方向に連結したもの、2本以上の同種のサイズの異なる鋼管を入れ子状に連結したものなどである。このようにアーム材片に長穴を穿設することで、一方のアーム材片に対して他方を最大限長穴の長さ分だけ伸縮させることができ、それによってアーム材の鉄塔外方に向けた突出長さを調整できる。なお、これらの長穴の長手方向の全長は任意に設定できる。
【0018】
本発明の簡易ブーム装置において、鉄塔外方に向けたアーム材の突出長さは、鉄塔の種類や作業位置の高さなどによって異なり一概に特定することはできないが、例えば0.5〜1m程度、好ましくは0.7〜1m程度に設定できる。この突出長さは、前記の吊り具が、前記鉄塔(コロビ部)の最外側の構成材を通る仮想鉛直線上またはそれよりも外側に配置されるのが好ましい。このように突出長さを設定することで、上記吊り具に滑車などを吊り下げて工具類収納容器Bを挙げ降ろしする場合に、該容器Bがコロビ部の構成材に引っかかったり、容器Bが反転し、収納されている工具などが地上に落下するのを防止、円滑に当該容器Bの上げ下ろしを行うことができる。なお、滑車は1個のみ吊り下げて使用してもよく、複数個を用意し、うち1個を定滑車として、残りを動滑車などとして使用してもよい。後者の場合、使用する滑車の個数によって複数の吊り具をアーム材に設けることができる。
【0019】
以下、本発明を図面に示された実施の形態により、さらに詳細に説明するが、本発明は図面に示された実施の形態に限定されるものではない。なお、以下では、用語「上、下、左、右」は、図面における上、下、向かって左、向かって右を意味するものとする。
【0020】
図1は、本発明の簡易ブーム装置の実施形態の一例の鉄塔への取り付け状態を示す図である。この図において、(a)はその使用状態を示す斜視図、(b)は側面図、(c)は平面図である。また、この図では、鉄塔として、その一部、すなわち所定の同一高さに位置する4本の山形鋼(以下、アングルということもある)からなる水平材V,V,V,Vとこれら水平材のそれぞれの両端が接合された4本の上下方向に延びる4本の等辺山形鋼からなる主柱材M、M、M,Mの一部とを示している。4本の水平材V,V,・・は、上から見て矩形または長方形となるように配置され、主柱材M,M,・・が各頂点に位置している。
【0021】
本実施形態では、簡易ブーム装置1は、長手方向に連結された2本のアーム材片11,12と、当該連結体を水平材V,Vに掛け渡した状態で固定する固定具15,16とから構成される。
【0022】
アーム材片11,12は、いずれもアングルであり、それぞれは同等の長さとしてもよく、異なる長さとしてもよい。各アーム材片11,12には、互いに直交するフランジのうちの一方の長手方向に長穴111、121が穿設されている。この2本のアーム材片11,12は、それぞれ長手方向に一端を重ね合わせ、その重ね代部分の長孔111、121に挿通されたボルト131と、これに螺合するナット132とからなる2組の連結具13、13によって連結されている。
【0023】
本発明の簡易ブーム装置1を水平材V,Vに固定する固定具は、いずれもフックボルト15,16である。各フックボルト15,16の一端のフック部分が水平材V,Vのフランジの下端縁に係止され、他端が各アーム材片11、12の長穴111,121に下から上に挿通されており、当該他端にナットを螺合することで各アーム材片11,12が水平材V,Vの上面に固定されている。各フックボルトを取り外すことで、本発明の装置1は着脱可能となっている。
【0024】
各アーム材片11、12は、フックボルト15、16のナットを緩めることで、両者の長孔の長手方向における全長から連結具13,13の間の間隔を差し引いた長さだけ水平材V,Vの上を相互に摺動可能とされており、これによって、アーム材片11、12を連結した連結体(アーム材)の鉄塔から外方に向けた突出長さが所定の長さに調整される。
【0025】
アーム材12の一端部寄りには、貫通穴が設けられ、そこにUボルトUおよびシャックルSHが装着される。このUボルトUには、滑車などの工具類収納容器昇降用の器具が吊り下げられる。また、シャックルSHには、3個のカラビナC、C、Cが係合され、カラビナC、C、Cには牽引索R、R、Rの一端がそれぞれ連結されている。これら3本の牽引索R,R,Rは、その他端が水平方向両側および上方のそれぞれの方向にある鉄塔の構成材に係止され、それぞれの方向から本発明の簡易ブーム装置1を牽引しており、これによって当該装置1が確実に支持固定される。
【0026】
図2は、本発明の簡易ブーム装置の別の実施形態の例の取り付け状態を示す斜視図である。この図では、上下に延びる主柱材Mと、これに一端がそれぞれ接合される2本の水平材V,Vとが鉄塔の一部を示している。この主柱材Mと水平材Vとは、いずれもアングルである。
【0027】
図2に示す本実施形態では、簡易ブーム装置1は、上記水平材Vのうちの1本の水平方向のフランジ外表面(以下、上面という。)に当接するように戴置された1本のアーム材20と、これを該水平材Vに固定する2組の固定具21、21とから構成される。アーム材20としては、水平材Vと同様、アングルが用いられている。アーム材20は、通常、工具類の荷重に耐えるだけの強度を有していればよいので、水平材Vよりも断面寸法(アングルのフランジ幅および厚さ)の小さいものを使用できる。その長さは、携帯性や鉄塔上の作業場所までの上げ降ろしに支障とならず、後述する所定の突出長さを確保できる程度の長さとすることができる。アーム材20の先端には、これを支持する支持索Rを連結するためのUボルトUが上側に取り付けられ、滑車などの器具を吊り下げるためのUボルトUが下側に取り付けられている。なお、上側のUボルトUには1本の牽引索Rの一端が連結され、この牽引索Rによって鉄塔上方の構成材からアーム材20が牽引されている。
【0028】
アーム材20の直交するフランジのうちの一方には、その長手方向に長穴201が設けられ、これにボルト212、212およびナット211、211からなる固定具21,21が挿通され、これらを介してアーム材20は水平材Vの上面に固定される。ボルト212、212は、いずれも水平材Vに穿設された不図示のボルト穴に下方から上方に向けて挿通されたものである。本実施形態では、固定具21、21のナット211、211をわずかに緩めることで、アーム材20を水平材Vの上面に沿ってその長手方向に摺動させることができ、アーム材20を鉄塔外側に引き出しまたは反対方向に押し込むことで、その突出長さが所定の長さに調整される。
【0029】
図3は、本発明の簡易ブーム装置のさらに別の実施形態の例の鉄塔への取り付け状態を示す図である。この図において、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるA−A矢視図であり、図2と同様に、鉄塔の一部として、主柱材Mおよびこれに一端が接合された水平材V,Vが示され、これらの構成材はいずれもアングルである。
【0030】
本実施形態では、簡易ブーム装置1は、1本の水平材V下側に重ね合わせられる所定の長さのアーム材20と、これを水平材Vに固定する固定具3とからなる。
【0031】
アーム材20は、上記図2の実施形態の場合と同様に1本のアングルであり、一方のフランジには長手方向に長穴201が穿設され、他方のフランジの鉄塔外方に向く先端寄りには2個のUボルトU、Uが取り付けられている。1本のアーム材20において、長穴201とUボルトUが異なるフランジに設けられている点で、これらがともに一方のフランジに設けられている図2のアーム材20とは異なっている。アーム材20の長さは、上記図2に示す実施形態の場合と同様に決定できる。なお、一方のUボルトUには、図2に示す実施形態と同様、1本の牽引索Rの一端が連結され、この牽引索Rによって鉄塔上方の構成材からアーム材20が牽引されている。
【0032】
このアーム材20は、その頂角部と水平材Vのそれとを合わせ、該水平材Vの内表面に下側から上記アーム材20の該表面を当接させるようにして重ね合わされる。この状態で、アーム材20の一方のフランジに穿設された長穴201が鉄塔の主柱材Mに水平材Vの一端を接合するためのボルトMBの位置にくるので、当該ボルトMBを一旦外して長穴201に挿通させ、当該長穴201を介して再度元のボルト穴(不図示)に差し込んで固定する。これにより、このボルトMBが、アーム材20の水平材Vに沿った摺動を案内する機能を果たすようになる。
【0033】
アーム材20を水平材Vに重ね合わせた状態で固定するのに、上記図1および図2に示す各種ボルトやナットなどの固定具を用いる代わりに、固定具3が使用される。この固定具3は、2枚のアングル片31,32と、これらのアングル片を締めつけて固定するボルト42およびナット41とからなる。2枚のアングル片31,32は、フランジの幅が水平材Vおよびアーム材20のフランジのそれよりもそれぞれ大きくされ、各フランジには、その端縁寄りにフランジの幅方向に沿って頂角部を挟んで互いに向き合うように長穴31a,31b,32a,32bがそれぞれ穿設されている。
【0034】
アングル片32の両フランジに穿設された長穴32a、32bとこれらに相対するアングル片31の長穴31a、31bとに2本のボルト42,42をそれぞれ挿通させてアングル片31の該表面から突出したボルト先端にナット41,41をそれぞれ螺合し、締め付けてアングル片31、32がアーム材20および水平材Vを挟んだ状態で固定される。
【0035】
本実施形態では、2個のナット41をそれぞれ緩めることで、アーム材20を水平材Vの長さ方向に沿って摺動させることができ、これによってアーム材20の鉄塔から外方に向けた突出長さを調整できる。
【0036】
図4は、本発明の簡易ブーム装置のさらに別の実施形態の例の鉄塔への取り付け状態を示す図である。この図において、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるB−B矢視図であり、図2および図3と同様に、鉄塔の一部として、主柱材Mおよびこれに一端が接合された水平材V,Vが示され、これらの構成材はいずれもアングルである。
【0037】
本実施形態では、簡易ブーム装置1は、1本の水平材Vの上面(水平方向の外表面)に戴置される所定の長さのアーム材20と、これを水平材Vに固定する固定具3とからなる。
【0038】
アーム材20は、上記図2および図3の実施形態の場合と同様に1本のアングルであり、一方のフランジの先端寄りには2個のUボルトU、Uが取り付けられているが、長穴は設けられていない点で上記実施形態とは異なる。アーム材20の長さは、上記図2に示す実施形態の場合と同様に決定することができる。このアーム材20は、一方のフランジの外表面を水平材Vの上面に当接するようにして該水平材Vの上に戴置される。なお、上側のUボルトUには、図2に示す実施形態と同様、1本の牽引索Rの一端が連結され、この牽引索Rによって鉄塔上方の構成材からアーム材20が牽引されている。
【0039】
アーム材20を水平材Vに戴置した状態で固定するのに、固定具3が使用される。この固定具3は、2枚のアングル片31,32および1枚の板片33と、これらの部材を相互に締めつけて固定する各3個のボルト42およびナット41とからなる。2枚のアングル片31,32は、フランジの幅が水平材Vおよびアーム材20のフランジのそれよりもそれぞれ大きくされ、各フランジには、その端縁寄りにフランジの幅方向に沿って頂角部を挟んで互いに向き合うように長穴31a,31b,32a,32bがそれぞれ穿設されている。この2個のアングル片のフランジは、図3のそれと同様の大きさのものである。また、板片33は、略矩形を呈しており、その幅が上記アングル片31,32のそれと略同等とされ、その長さがアングル片31、32のそれぞれのフランジの外表面側の幅に水平材Vおよびアーム材20の厚さを加えた長さと略同等とされる。この板片33の長さ方向両端寄りにも長穴が互いに向き合うように穿設されている。
【0040】
アーム材20は、その一方のフランジ外表面を該水平材Vの上面にそれぞれの頂角部を合わせて重ねられる。アングル片31および32をアーム材20および水平材Vの内表面にそれぞれ当接させて挟み込み、アングル片31、32の相対する長穴31b、32bにボルト42を通し、ナット41を螺合するとともに、アーム材20および水平材Vの鉛直方向のフランジに鉄塔内から板片33をあてがい、相対する31aおよび33aと32aおよび33bにそれぞれボルト42を通してナット41を羅合することで、アーム材20を水平材Vに固定する。
【0041】
本実施形態では、3個のナット41をそれぞれ緩めることで、アーム材20を水平材Vの長さ方向に沿って摺動させることができ、これによってアーム材20の鉄塔から外方に向けた突出長さを調整できる。
【0042】
次に、図5を参照して、本発明の簡易ブーム装置1の使用方法について説明する。図5は、図1に示した本発明の簡易ブーム装置1の送電鉄塔Tにおける使用状態を示す図である。この送電鉄塔Tは、主柱材M,M,・・と、該主柱材にそれぞれ両端が接合された水平材V,V,・・・と、上下に隣り合う水平材の間に設けられた不図示の斜材とからなる上層部T1と、主に斜材R、R、・・によって構成される下層部(コロビ部)T2とからなる。
【0043】
送電鉄塔Tの上層部頂上寄りの水平材Vには、本発明の簡易ブーム装置1が設置されている。該簡易ブーム装置1の先端寄りには不図示の吊り具(不図示)が設けられ、この吊り具に滑車2が吊り下げられている。滑車2には、昇降索Pが巻装されており、この昇降索Pが地上に垂下している。図5に示すように、アーム材11の突出長さを調整して吊り具およびこれに吊り下げられる滑車2を少なくとも鉄塔下部(コロビ部)の最外側の主柱材を除く構成材を通る仮想鉛直線よりも外側に配置することで、工具類収納容器Bが構成材に引っかかることがない。その結果、工具類の上げ降ろしを円滑に行えるようになる。
【0044】
昇降索Pの一端には、工具類収納容器Bが連結されており、地上作業者LW1がその他端を操作し、工具類収納容器Bは高所作業者HWが待機する作業場所まで引き上げられる。なお、本発明の装置1その先端から鉄塔頂上まで牽引索S1が張設され、当該装置Bを支持している。
【0045】
一旦作業場所まで引き上げられた工具類収納容器Bは、高所作業者HWが手を伸ばすか、または図5に示すように、先端に鉤のついた作業棒10などを用いて引き寄せることができる。また、本発明の簡易アーム装置1のアーム材に長穴が穿設されている場合には、当該長穴に滑車2を手繰り寄せることで、作業者は上記容器Bから工具類を取り出すことができるようになる。
【0046】
本発明の装置1を使用することにより、工具類収納容器Bは鉄塔のコロビにおける構成材に引っかかることはないが、所定の高さにおいて当該容器Bを水平方向に移動したり、強風などにより当該容器Bが大きく揺動するのを防止するためにこれには粗の下部に案内索Hを連結しておくことが好ましい。この場合、案内索Hは、工具類収納容器B自体に直接連結してもよく、昇降索Pの工具類収納容器Bとの連結部位に連結してもよい。なお、案内索としては、通常、ロープなどが使用される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の簡易ブーム装置は、鉄塔上での高所作業を行う際の工具や資材の上げ降ろしに有効に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の簡易ブーム装置の実施形態の一例の鉄塔への取り付け状態を示す図である。
【図2】本発明の簡易ブーム装置の別の実施形態の例の鉄塔への取り付け状態を示す図である。
【図3】本発明の簡易ブーム装置の別の実施形態の例の鉄塔への取り付け状態を示す図である。
【図4】本発明の簡易ブーム装置の別の実施形態の例の鉄塔への取り付け状態を示す図である。
【図5】鉄塔Tに取り付けられた図1に示す本発明の簡易ブーム装置1を用いた工具などの上げ降ろし状態を示す正面図である。
【図6】従来送電鉄塔上への工具などの上げ下ろし状況を示す正面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 簡易ブーム装置
11、12、20 アーム材
111、121、201 長穴
131、211 ナット
132、212 ボルト
114、124 フックボルト
3 固定具
31,32 アングル片
33 板片
31a、31b,32a,32b,33a,33b 長穴
41 ナット
42 ボルト
H 案内索
HW 高所作業者
LW1、LW2 地上作業者
M 主柱材
R 牽引索
SH シャックル
T 送電鉄塔
U ユーボルト
V 水平材




【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔に外方に向けて突出するように着脱自在に設置され、自由端寄りに吊り具を備えており、長手方向において前記鉄塔からの突出長さを調整可能なアーム材からなることを特徴とする簡易ブーム装置。
【請求項2】
前記アーム材は、長手方向に穿設された長穴を備え、当該長穴およびこれに挿通した固定具を介して前記鉄塔の構成材に摺動自在に固定される請求項1に記載の簡易ブーム装置。
【請求項3】
前記アーム材は、少なくとも2本のアーム材片で構成され、それぞれのアーム材片は長手方向に穿設された長孔をそれぞれ備え、当該長孔に挿通させた連結具を介して互いに摺動可能に連結される請求項2に記載の簡易ブーム装置。
【請求項4】
前記のアーム材またはアーム材片は、形鋼または鋼管である請求項1〜3のいずれか1項に記載の簡易ブーム装置。
【請求項5】
前記の吊り具は、前記鉄塔の最外側の構成材を通る仮想鉛直線上またはそれよりも外側に配置される請求項1〜4のいずれか1項に記載の簡易ブーム装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−145509(P2007−145509A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342731(P2005−342731)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】