説明

米分解物を粉末化基材とする酸性食品の粉末食品およびその製造方法

【課題】本発明の目的は、近年米の消費が落ち込んでおり、新たな米の使用方法を提供することであり、また米又は玄米分解物を含む食品を提供することである。
【解決手段】米又は玄米の水溶液をアルファーアミラーゼ及びプロテアーゼを用いて加水分解後、噴霧乾燥し単糖類が2%〜15%、2糖類が7%〜30%、3糖類が5%〜25%、4糖類が2%〜10%、5糖類が2%〜15%含む乾燥品とし、その乾燥品を噴霧基材として、乾燥食品に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は米又は玄米を原料として食品に使用可能な米分解物を粉末化基材として使用することが出来る酸性食品の粉末食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、米は大半が米飯などによる主食として消費されているが、近年米の消費が落ち込んでおり、新たな米の利用方法が早急に望まれているのが現状である。
本発明者らは、こうした現状に鑑み、米の利用方法を鋭意研究した結果、米又は玄米をアミラーゼ及びプロテアーゼを用いて作られる米分解物を粉末化基材として食品工業用に提供するものである。
【0003】
今まで粉末化基材としては、デキストリン、分岐デキストリン、可溶性澱粉、マルトデキストリンが主に使用されており、粉末化基材として単糖類、2糖類、3糖類、4糖類、5糖類の含有量が極力少ない製品で構成されている。
今までの考え方では、単糖類、2糖類、3糖類、4糖類、5糖類が多いと、粉末になり難い為粉末化に不向きとされていた。
【0004】
本発明に使用される粉末化基材は、分子量1000以下の糖類が18%〜95%を占めており、一般的な粉末化基材は分子量10000以上の区分が占める割合は、例えば松谷化学工業株式会社から市販されているパインデックス#1は44.3%であり、又市販の分岐デキストリンは分子量10000以上が占める割合は42%である。
【0005】
本発明者らの研究によると、粉末化基材に単糖類、2糖類、3糖類、4糖類、5糖類が多いと甘みがあり、特に酸味の強い食品に使用すると味がマイルドとなり、従来敬遠されがちであった酸味の強い食品でもそのまま食することが可能となるものであることを確認した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−145169号公報
【特許文献2】特開2003−38119号公報
【特許文献3】特開2006−204207号公報
【特許文献4】特開平10−215893号公報
【特許文献5】特開2004−57067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、近年米の消費が落ち込んでおり、新たな米の使用方法を提供して米の消費拡大に寄与することであり、また米又は玄米分解物を含む食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
米又は玄米の水溶液をアルファーアミラーゼ及びプロテアーゼを用いて加水分解後、噴霧乾燥し単糖類が2%〜15%、2糖類が7%〜30%、3糖類が5%〜25%、4糖類が2%〜10%、5糖類が2%〜15%含む乾燥品とし、その乾燥品を噴霧基材として、乾燥食品に使用される。
【発明の効果】
【0009】
米又は玄米の新たなる使用方法であり、米の消費拡大が期待される。
米又は玄米の水溶液をアルファーアミラーゼ及びプロテアーゼを用いて加水分解後、噴霧乾燥し単糖類が2%〜15%、2糖類が7%〜30%、3糖類が5%〜25%、4糖類が2%〜10%、5糖類が2%〜15%含む乾燥品とし、その乾燥品を噴霧基材として、乾燥食品に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を更に詳細に説明する。
本発明に使用される米又は玄米は産地や製造方法に制約はされない。玄米の搗精率については如何なる率でも用いることができる。
【0011】
米又は玄米を予め粉砕した後使用してもいい。この場合製造中の粉砕工程は省くことが出来る。
【0012】
浸漬する際の水の量は米又は玄米に対して1倍から9倍(V/V)の量が使用される。
【0013】
浸漬時間には制限がなく、浸漬直後に次の工程に進んでも良く、24時間浸漬後に次の工程に進んでも良い。5時間から24時間浸漬した後に次の工程に進むほうが好ましい。
【0014】
次に加熱にて米又は玄米をアルファー化する。 加熱温度はアルファー化する温度であればよく90度〜160度、好ましくは95度〜125度で加熱される。加熱時間は10分から120分程度である。
【0015】
上記加熱中にホモミキサーあるいは攪拌により、アルファー化した米を粉砕し、スラリー状とする。こうする事により、次の酵素反応が、進み易くする。
【0016】
予め粉砕した米又は玄米を使用する場合は、1倍から9倍の水を加えた後、直ちに攪拌しながら加熱工程を行う。ホモミキサーはこの場合必要はない。
【0017】
加熱条件は未粉砕の米又は玄米を使用した時と同じような条件で行い、スラリー状の液を得ることができる。
【0018】
次に酵素反応を行う。
米又は玄米をアルファー化しスラリー状となった液は、酵素反応の工程に進む。酵素反応時の温度は、使用するアミラーゼとプロテアーゼにより異なるが耐熱性の酵素を使用する場合は80度〜90度の温度でも可能であるが、耐熱性でない酵素を使用する場合の温度は25度〜60度の範囲で行われる。
【0019】
酵素はアルファーアミラーゼとプロテアーゼを使用する。プロテアーゼはエンドプロテアーゼとエキソプロテアーゼの1種類あるいは2種類を同時に使用することが出来る。
【0020】
酵素の添加量は本発明を実現する上で必要且つ十分な量であれば、任意の量を採用出来る。
反応時間は単糖類が2%〜15%、2糖類が7%〜30%、3糖類が5%〜25%、4糖類が2%〜10%、5糖類が2%〜15%となる時間であれば、任意の時間を採用することができる
【0021】
次に酵素を失活させる工程に入る。
酵素反応を終えたスラリーを再度加熱することにより、酵素を失活させる。
【0022】
90度〜120度にて、10分から120分加熱することにより、酵素は失活する。
【0023】
酵素が失活されたスラリーを100〜400メッシュの網を通した後、噴霧乾燥させる。
【0024】
こうして製造された乾燥品を粉末化基材として使用する。
【0025】
又、米粉から醗酵原料としてアルファーアミラーゼで分解した製品が上市されているが、単糖類が2%〜15%、2糖類が7%〜30%、3糖類が5%〜25%、4糖類が2%〜10%、5糖類が2%〜15%となる分解物であれば、使用出来る。
【0026】
以下に実施例を挙げて更に本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
玄米120kgを1トンタンクに入れ、水400Lを添加し20時間浸漬する。
次に、ホモミキサーを動かしながら99度で30分加熱し、スラリーを作る。
65度まで冷却し、市販のナガセケムテック株式会社製ネオスピターゼPK−2を420g、ナガセケムテック株式会社製ビオプラーゼSP−4FGを150g加え、2時間攪拌した。
次に95度で1時間加熱し、酵素を失活させた。
次に250メッシュの網にスラリーを通した後、噴霧乾燥機にて乾燥させた。この乾燥物を酸度4.2%のpH3.2の黒酢1000Lに対し、50kg混合し、ノズル式スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥を行った。得られた黒酢粉末は、甘みのある黒酢の風味のある粉末となった。
【実施例2】
【0028】
予め粉砕された米120kgを1トンタンクに入れ、水500Lを添加し、攪拌しながら加熱する。
97度で20分加熱しスラリーを作る。
65度まで冷却し、市販のナガセケムテック株式会社製ネオスピターゼPK−2を420g、ナガセケムテック株式会社製ビオプラーゼSP−4FGを150g加え、2時間攪拌した。
次に95度で1時間加熱し、酵素を失活させた。
次に250メッシュの網にスラリーを通した後、噴霧乾燥機にて乾燥させた。この乾燥物をpH4.5の八丁ミソ500kに対して100kg混合し、ノズル式スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥を行った。得られたミソ粉末は、甘みのあるミソの風味のある粉末となった。
【0029】
実施例1及び実施例2で得られた米又は玄米分解物の分析値を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
米又は玄米の水溶液をアルファーアミラーゼ及びプロテアーゼを用いて加水分解後、噴霧乾燥し、
単糖類が2%〜15%、
2糖類が7%〜30%、
3糖類が5%〜25%、
4糖類が2%〜10%、
5糖類が2%〜15%
含む乾燥品とし、その乾燥品を噴霧基材として、乾燥食品に使用される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
風味の優れた粉末酸性食品の製造を可能にし、又米の消費拡大も期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米又は玄米の水溶液をアルファーアミラーゼ及びプロテアーゼを用いて加水分解後、噴霧乾燥し単糖類が2%〜15%、2糖類が7%〜30%、3糖類が5%〜25%、4糖類が2%〜10%、5糖類が2%〜15%含む乾燥品とし、その乾燥品を噴霧基材として、酸度1.7〜6.7%の黒酢に対して2〜100%使用して黒酢粉末食品を得ることを特徴として製造される米分解物を粉末化基材とする酸性食品の粉末食品。
【請求項2】
米又は玄米の水溶液をアルファーアミラーゼ及びプロテアーゼを用いて加水分解後、噴霧乾燥し単糖類が2%〜15%、2糖類が7%〜30%、3糖類が5%〜25%、4糖類が2%〜10%、5糖類が2%〜15%含む乾燥品とし、その乾燥品を噴霧基材として、酸度1.7〜6.7%の黒酢に対して2〜100%使用して黒酢粉末食品を得ることを特徴として製造される米分解物を粉末化基材とする酸性食品の粉末食品の製造方法。
【請求項3】
米又は玄米の水溶液をアルファーアミラーゼ及びプロテアーゼを用いて加水分解後、噴霧乾燥し単糖類が2%〜15%、2糖類が7%〜30%、3糖類が5%〜25%、4糖類が2%〜10%、5糖類が2%〜15%含む乾燥品とし、その乾燥品を噴霧基材としてPHが4.9以下の食品に使用することを特徴として製造される米分解物を粉末化基材とする酸性食品の粉末食品。
【請求項4】
米又は玄米の水溶液をアルファーアミラーゼ及びプロテアーゼを用いて加水分解後、噴霧乾燥し単糖類が2%〜15%、2糖類が7%〜30%、3糖類が5%〜25%、4糖類が2%〜10%、5糖類が2%〜15%含む乾燥品とし、その乾燥品を噴霧基材としてpHが4.9以下の食品に使用することを特徴する米分解物を粉末化基材とする酸性食品の粉末食品の製造方法。

【公開番号】特開2012−16339(P2012−16339A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165329(P2010−165329)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(307027636)ヤマノ株式会社 (3)
【出願人】(591282205)島根県 (122)
【Fターム(参考)】