説明

粉体処理装置

【課題】粉体を処理ガスで均一に処理することが可能な粉体処理装置を提供する。
【解決手段】処理容器10内において上昇搬送路60が上下方向に螺旋状に延びる。上昇搬送路60は、粉体が移動するための帯状搬送部61を有する。粉体が粉体供給部3により上昇搬送路60に供給される。上昇搬送路60が振動モータ40により振動されることにより、上昇搬送路60に供給された粉体が上昇搬送路60に沿って移動される。上昇搬送路60内で移動する粉体の高さが高さ規制部材64により規制されるとともに粉体が撹拌される。処理容器10では、上昇搬送路60に供給された粉体が移動中に処理ガスにて処理される。処理された粉体は粉体回収部4で回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理ガスを用いて粉体を処理する粉体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フッ素ガス等の処理ガスを用いて粉体の処理が行われる。処理効率を上げるために、処理ガスと粉体とを効率よく接触させることが求められる。特許文献1に記載される炭素ナノ構造体粉末の処理方法では、処理ガス(反応ガス)として例えばフッ化ガスを用いて炭素ナノ構造体粉末の処理が行われる。この場合、反応器の下段部からフィルタを通して反応器内にキャリアガスが供給されることにより、キャリアガスが上方に向かって流れる流動化領域が反応器内に形成される。その状態で、反応器の下段部からフィルタを通して処理ガスが反応器内に供給される。それにより、流動化領域で、炭素ナノ構造体粉末と処理ガスとを接触させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−1980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らは、上記の処理方法では、炭素ナノ構造体粉末の一部がフィルタに固着し、そのフィルタに固着した炭素ナノ構造体粉末と処理ガスとが過剰に反応することを見出した。そのため、上記の処理方法では、炭素ナノ構造体粉末の全体を均一に処理することが難しい。
【0005】
本発明の目的は、粉体を処理ガスで均一に処理することが可能な粉体処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る粉体処理装置は、処理ガスで粉体を処理する粉体処理装置であって、上下方向に螺旋状に延び、粉体が移動するための帯状搬送部を有する粉体搬送路と、粉体搬送路に粉体を供給するための粉体供給部と、粉体搬送路を振動させることにより粉体搬送路に供給された粉体を帯状搬送部に沿って移動させる振動付与部と、粉体搬送路に供給された粉体が移動中に処理ガスで処理される処理容器と、処理された粉体を回収する粉体回収部と、帯状搬送部を移動する粉体の高さを規制する少なくとも1つの高さ規制部材とを備えるものである。
【0007】
この粉体処理装置においては、粉体搬送路が上下方向に螺旋状に延びる。粉体搬送路は、粉体が移動するための帯状搬送部を有する。粉体が粉体供給部により粉体搬送路に供給される。粉体搬送路が振動付与部により振動されることにより、粉体搬送路に供給された粉体が粉体搬送路に沿って移動される。粉体搬送路内で移動する粉体は、移動中に遠心力により螺旋の外側に偏った状態となる。このような場合でも、高さ規制部材により粉体の高さが規制される。これにより、粉体が偏った状態で固まったまま移動することが防止される。また、高さ規制部材により粉体が撹拌される。したがって、粉体の全体に処理ガスが接触しやすくなる。その結果、粉体を処理ガスで均一に処理することができる。
【0008】
(2)高さ規制部材は、帯状搬送部に対向する下端部を有し、下端部と帯状搬送部との間に隙間が形成されるように配置されてもよい。
【0009】
この場合、粉体搬送路内を移動する粉体は、高さ規制部材の下端部と粉体搬送路の帯状搬送部との間の隙間を通過する。粉体搬送路の帯状搬送部上の粉体が高さ規制部材の下端部よりも高い位置まで盛り上がっている場合、高さ規制部材の下端部で粉体の高さが効率よく規制される。
【0010】
(3)高さ規制部材における帯状搬送部の螺旋の内側方向の側部は、螺旋の外側方向の側部よりも粉体の移動方向について下流側に位置してもよい。
【0011】
粉体搬送路内を移動する粉体は、遠心力により螺旋の外側に偏りやすい。この場合でも、高さ規制部材における帯状搬送部の螺旋の内側方向の部分が螺旋の外側方向の部分よりも下流に位置するので、螺旋の外側方向の部分に偏った粉体は、高さ規制部材の一面に沿って螺旋の内側方向の部分に導かれる。これにより、高さ規制部材の下端部で粉体の高さが効率よく規制される。
【0012】
(4)帯状搬送部における粉体との接触面は、螺旋の内側が螺旋の外側よりも低くなるように傾斜していてもよい。
【0013】
この場合、帯状搬送部を移動する粉体には、重力により傾斜した上面に沿って内側に移動しようとする力が働くとともに、外側に移動しようとする力が働く。これにより、粉体が遠心力により粉体搬送路内の外側に偏ることが防止される。その結果、高さ規制部材の下端部で効率よく粉体の高さが規制される。
【0014】
(5)粉体搬送路は、上下方向に螺旋状に延び、粉体が移動するための第1の帯状搬送部を有する第1の搬送路と、上下方向に螺旋状に延び、粉体が移動するための第2の帯状搬送部を有する第2の搬送路とを含み、第1および第2の帯状搬送部は、一端で互いに接続されるとともに、第2の帯状搬送部の螺旋の巻き方向は、第1の帯状搬送部の螺旋の巻き方向と逆であってもよい。
【0015】
この場合、第1の帯状搬送部に沿って移動した粉体は、第1の帯状搬送部の一端を経て第2の帯状搬送部の一端に導かれる。その後、粉体は、第2の帯状搬送部に沿って移動する。第1の帯状搬送部の螺旋の巻き方向と第2の帯状搬送部の螺旋の巻き方向とが互いに逆であるので、振動付与部により同じ振動が付与されることにより第1の搬送路での粉体の移動方向と第2の搬送路での粉体の移動方向とが互いに逆になる。それにより、処理容器内で上下方向において粉体を往復移動させることができる。
【0016】
したがって、粉体は、第1の帯状搬送部を移動するときのみでなく、第2の帯状搬送部を移動するときにも、処理ガスにより処理される。これにより、処理容器を大型化することなく粉体の処理時間を長くすることができる。その結果、粉体処理装置を小型化することができる。
【0017】
(6)高さ規制部材は、等間隔に複数設けられていてもよい。この場合、第1の搬送路および第2の搬送路を移動する粉体の高さが複数の高さ規制部材により規制される。これにより、長時間にわたって粉体を処理ガスで均一に処理することができる。また、複数の高さ規制部材は等間隔に設けられる。これにより、粉体が偏ることがより解消される。その結果、粉体を処理ガスでより均一に処理することができる。
【0018】
(7)帯状搬送部における粉体との接触面は、金属からなってもよい。この場合、帯状搬送部における粉体との接触面を通して粉体の熱を放出することができる。これにより、粉体をより均一に処理することができる。
【0019】
(8)処理容器は、処理ガスの導入のためのガス導入部、および処理ガスの排出のためのガス排出部を有してもよい。
【0020】
この場合、粉体処理装置に連続的に処理ガスを導入するとともに、連続的に処理ガスを排出することができる。それにより、処理ガスでの処理時における処理容器内の処理ガスの濃度をほぼ一定に保つことができる。その結果、粉体をより均一に処理することができる。
【0021】
(9)処理ガスは、フッ素ガスを含んでもよい。この場合、粉体をフッ素ガスで処理することにより、粉体の表面にフッ素を付加して撥水性を付与することができる。また、酸素ガスおよびフッ素ガスを含む処理ガスが用いられる場合には、酸素ガスおよびフッ素ガスにより粉体の表面における分子末端の基が−CF=Oになった後、加水分解されることによりカルボキシル基等の親水基となる。その結果、粉体の親水性が向上される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、粉体を処理ガスで均一に処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態に係る粉体処理装置の内部の構造を示す側面図である。
【図2】図1の上昇搬送路のA部の拡大断面図である。
【図3】図1の上昇搬送路のB部における一例を示す平面図である。
【図4】図1の上昇搬送路のB部における一例を示す拡大断面図である。
【図5】上昇搬送路において粉体が偏った状態を示す断面図である。
【図6】第2の実施の形態に係る粉体処理装置の内部の構造を示す側面図である。
【図7】第3の実施の形態に係る粉体処理装置の内部の構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[1]第1の実施の形態
以下、第1の実施の形態に係る粉体処理装置について図面を参照しながら説明する。
【0025】
(1)粉体処理装置の全体構成
図1は、第1の実施の形態に係る粉体処理装置の内部の構造を示す側面図である。図1に示すように、粉体処理装置100は、処理容器10、複数のばね30、複数の振動モータ40、軸50および上昇搬送路60を含む。処理容器10は、下部筺体10aおよび上部筺体10bにより構成される。
【0026】
下部筺体10aは、4つの側面部、底面部および上面部を有する。下部筺体10aの上面部の一部は開口している。上部筺体10bは、上面部および周面部からなる円筒状を有する。上部筺体10bの底部は開口している。上部筺体10bは、底部が下方向を向く状態で、上下方向に延びるように下部筺体10aの上面部に一体的に設けられる。下部筺体10aの内部空間と上部筺体10bの内部空間とは互いに連通し、処理空間を形成する。
【0027】
下部筺体10aの底面部の下面側には、複数のばね30が設けられる。下部筺体10aの対向する2つの側面部には、それぞれ振動モータ40が設けられる。処理容器10の内部に上下方向に延びるように円柱状の中心軸50が設けられる。また、処理容器10の内部には、中心軸50を中心に螺旋を描きながら上下方向に延びる上昇搬送路60が設けられる。
【0028】
上部筺体10bの周面部の下部には、処理ガスを導入するためのガス導入部1が設けられる。また、上部筺体10bの上面部には、処理ガスを排出するためのガス排出部2が設けられる。この場合、粉体処理装置100の処理容器10に連続的に処理ガスを導入するとともに、連続的に処理ガスを排出することができる。それにより、処理ガスでの処理時における処理容器10内の処理ガスの濃度をほぼ一定に保つことができる。その結果、粉体をより均一に処理することができる。
【0029】
下部筺体10aの1つの側面部の下部には、上昇搬送路60に粉体を供給するための粉体供給部3が設けられる。上昇搬送路60の一端(下端)は粉体供給部3に連通する。また、上部筺体10bの周面部の上部には、上昇搬送路60において処理された粉体を回収するための粉体回収部4が設けられる。上昇搬送路60の他端(上端)は粉体回収部4に連通する。上昇搬送路60への粉体の供給および上昇搬送路60からの粉体の回収は、スクリューフィーダまたはガス輸送法により行われる。
【0030】
上昇搬送路60においては、複数の振動モータ40が駆動されることにより、複数のばね30が伸縮するとともに振動される。これにより、粉体供給部3から供給された粉体が、傾斜した螺旋状の上昇搬送路60上を上昇するように滑りながら搬送される。振動モータ40で上昇搬送路60に上下変位を伴うねじり振動を加えられることにより、粉体が上昇搬送路60に沿って上昇する。この螺旋状の上昇搬送路60を上昇するように粉体を搬送する装置としては、いわゆるスパイラルエレベータが好ましく用いられる。
【0031】
ガス導入部1から処理ガスが供給され、ガス排出部2から処理ガスが排出されることにより、粉体処理装置100の処理容器10の内部に処理ガスが流通する。供給された粉体は、上昇搬送路60の下部から上部まで搬送されている間に処理ガスにより処理される。これにより、粉体の表面を処理ガスで処理することができる。処理ガスで処理された粉体は、粉体回収部4から回収される。粉体回収部4からの粉体の回収は、スクリューフィーダまたはガス輸送法により行われる。また、フッ素ガスを含む処理ガスは、ガス排出部2から排出され、図示しないガス処理設備にて無害化される。
【0032】
本実施の形態において、処理ガスであるフッ素による処理は、粉体の表面に処理ガスを接触させて粉体の表面を改質する表面処理である。処理ガスとして、フッ素ガス、酸素ガスおよび窒素ガスを含む処理ガスを用いた場合には、粉体の表面の官能基に親水性の基を導入することにより親水性を付与することができる。また、粉体の表面にフッ素を付加することにより撥水性を付与することができる。処理ガスは、フッ素ガス、酸素ガスおよび窒素ガスに限定されず、処理の種類に応じて選択することができる。
【0033】
(2)上昇搬送路の構成
図2は、図1の上昇搬送路60のA部の拡大断面図である。図3は、図1の上昇搬送路60のB部における一例を示す平面図である。図4は、図1の上昇搬送路60のB部における一例を示す拡大断面図である。
【0034】
図4に示すように、上昇搬送路60は、上下方向に螺旋状に延びる帯状搬送部61、およびその帯状搬送部61の両側に沿って延びる側面部62,63を有する。帯状搬送部61は、粉体と接触する上面(粉体接触面)61aを有する。側面部62,63は、帯状搬送部61を移動する粉体の落下を防止するガイドである。
【0035】
図2に示すように、上昇搬送路60には、所定の間隔で四辺形の複数の高さ規制部材64が設けられる。図4に示すように、高さ規制部材64は、上昇搬送路60の側面部62,63にそれぞれつながる側部64a,64bを有するとともに、帯状搬送部61に対向する下端部64cを有する。高さ規制部材64の下端部64cは、上昇搬送路60の帯状搬送部61と平行に配置される。下端部64cと上昇搬送路60の帯状搬送部61との間に隙間Sが形成される。図3に示すように、高さ規制部材64は、上昇搬送路60における粉体の移動方向に関して上流側に位置する面64dを有する。
【0036】
上昇搬送路60内を移動する粉体は、高さ規制部材64の下端部64cと上昇搬送路60の帯状搬送部61との間の隙間Sを通過する。ここで、上昇搬送路60の帯状搬送部61上の粉体が高さ規制部材64の下端部64cよりも高い位置まで盛り上がっている場合、高さ規制部材64の下端部64cで粉体の高さが規制される。
【0037】
図3および図4に示すように、側面部62および側部64aは、帯状搬送部61に関して螺旋の内側に位置し、側面部63および側部64bは、帯状搬送部61に関して螺旋の外側に位置する。面64dは、側部64a側の辺64eおよび側部64b側の辺64fを有する。この面64dは、螺旋の接線方向に垂直な方向Wに関して辺64eが辺64fよりも下流側に位置するように傾斜している。図3においては、帯状搬送部61上の矢印の向きが粉体の移動する向きであり、上流から下流への向きである。図3の例では、面64dは、螺旋の接線方向に垂直な方向Wに対して傾き角度θを有する状態で設けられる。傾き角度θは0°よりも大きく90°よりも小さい。
【0038】
上昇搬送路60内を移動する粉体は、遠心力により螺旋の外側に偏りやすい。この場合でも、高さ規制部材64の内側の辺64eが外側の辺64fよりも下流に位置するように面64dが傾斜しているので、辺64fの側に偏った粉体は、高さ規制部材64の面64dに沿って辺64eの側に導かれる。これにより、高さ規制部材64の下端部64cで効率よく粉体の高さが規制される。
【0039】
なお、高さ規制部材64の傾き角度θは、通過する粉体の高さを規制できる限り特に限定されない。
【0040】
また、上昇搬送路60には、高さ規制部材64が複数設けられる。複数の高さ規制部材64は、等間隔に設けられることが好ましい。これにより、粉体が偏ることがより解消される。その結果、粉体を処理ガスでより均一に処理することができる。
【0041】
図5は、上昇搬送路60において粉体が偏った状態を示す断面図である。図5の例では、上昇搬送路60の帯状搬送部61が水平に設けられている。この場合、粉体Pは、遠心力により上面61aの螺旋の外側に位置する部分に偏った状態で帯状搬送部61上を搬送される。このように粉体Pが偏った状態では、上昇搬送路60の側面部63側の粉体Pは厚く積み重なっており、搬送中に粉体Pの内部に埋もれて表面に露出しない部分が存在する。本実施の形態においては、粉体が高さ規制部材64の下部の隙間Sを通過する際に高さ規制部材64が偏った粉体の高さを規制することにより、積み重なった粉体Pの内部に埋もれて表面に露出していない部分が表面に露出する。これにより、粉体の全体が処理ガスと接触する。その結果、粉体をより均一に処理ガスで処理することができる。
【0042】
本実施の形態においては、図4に示すように、螺旋の内側に位置する上面61aの部分が螺旋の外側に位置する上面61aの部分よりも低くなるように上面61aが傾斜されてもよい。この場合、上昇搬送路60内を移動する粉体には、重力により傾斜した上面61aに沿って内側に移動しようとする力が働くとともに、遠心力により外側に移動しようとする力が働く。したがって、粉体が遠心力により上昇搬送路60内の外側に偏ることが緩和される。これにより、高さ規制部材64の下端部64cで効率よく粉体の高さが規制される。その結果、粉体の全体を処理ガスで均一に処理することができる。
【0043】
本実施の形態において、図4に示すように、螺旋の内側に位置する上面61aの部分が螺旋の外側に位置する上面61aの部分よりも低くなるように傾斜されるが、これに限定されない。図5に示すように、上面61aは水平であってもよい。この場合でも、高さ規制部材64により粉体の高さを規制することができる。
【0044】
また、本実施の形態では、高さ規制部材64は、その下端部64cと帯状搬送部61との間に隙間Sを設けた状態で設置された板状の部材である。この下端部64cの形状は特に限定されず、直線状であってもよく、波状等であってもよい。下端部64cが直線状である場合には、粉体を平滑化することができる。下端部64cが波状である場合には、粉体の露出する面積を大きくして処理ガスとの接触面積を増加させることができる。
【0045】
なお、処理ガスでの処理には、時間が大きく影響する。処理時間は、上昇搬送路60における粉体の移動速度を変更することにより調整することができる。また、処理時間は、粉体の搬送距離を変更することにより調整することもできる。
【0046】
本実施の形態では、粉体処理装置100の処理容器10内に処理ガスを流通させながら粉体を処理しているが、処理容器10内に処理ガスを封入した状態で粉体を処理してもよい。
【0047】
本実施の形態では、粉体処理装置100は粉体を上方に搬送する上昇搬送路60を有するが、粉体処理装置100は上昇搬送路60に代えて粉体を下方に搬送する下降搬送路を有してもよい。
【0048】
(3)効果
本実施の形態においては、上昇搬送路60内を移動する粉体が高さ規制部材64と帯状搬送部61との間の隙間Sを通過する際に、高さ規制部材64により粉体の高さが規制される。この粉体の高さの規制により、積み重なった粉体の内部に埋もれた部分が表面に露出される。これにより、粉体の全体が処理ガスと接触する。その結果、粉体の全体を処理ガスで連続して均一に処理することができる。
【0049】
また、粉体は、処理容器10内で空中に散乱することなく上昇搬送路60の帯状搬送部61上を滑りながら搬送される。そのため、粉体の処理の際に発生する熱は、上昇搬送路60の帯状搬送部61および側面部62,63を通して放出される。これにより、粉体の表面が過加熱されることが防止される。その結果、熱による粉体の変質等が防止されるとともに、粉体の表面が焦げることが防止される。さらに、粉体の散乱および熱による粉体の粉塵爆発の発生を防止することができる。帯状搬送部61における粉体との接触面は、金属からなることが好ましい。この場合、帯状搬送部61における粉体との接触面を通して粉体の熱を放出することができる。これにより、粉体をより均一に処理することができる。
【0050】
[2]第2の実施の形態
(1)粉体処理装置の全体構成
第2の実施の形態に係る粉体処理装置100について、第1の実施の形態に係る粉体処理装置100と異なる点を説明する。図6は、第2の実施の形態に係る粉体処理装置100の内部の構造を示す側面図である。図6に示すように、本実施の形態に係る粉体処理装置100は、下降搬送路70をさらに含む。
【0051】
下降搬送路70は、処理容器10の内部において、中心軸50を中心に上昇搬送路60の内側で螺旋状に延びるように上下方向に設けられる。上昇搬送路60の上端と下降搬送路70の上端とは互いに接続される。下降搬送路70の螺旋の巻き方向は、上昇搬送路60の螺旋の巻き方向と逆である。粉体回収部4は、上部筺体10bの周面部の上部に設けられず、下部筺体10aの底面部に設けられる。下降搬送路70の他端は、粉体回収部4に連通する。
【0052】
下降搬送路70は、螺旋の巻き方向を除いて図2〜図4の上昇搬送路60と同じ構成を有する。下降搬送路70には、上昇搬送路60と同様に、複数の高さ規制部材64が設けられる。
【0053】
粉体供給部3から供給された粉体は、傾斜した螺旋状の上昇搬送路60上を上昇するように滑りながら移動する。上昇搬送路60に沿って移動した粉体は、上昇搬送路60の上端を経て下降搬送路70の上端に導かれる。その後、粉体は、下降搬送路70に沿って下降するように滑りながら移動する。
【0054】
上昇搬送路60の螺旋の巻き方向と下降搬送路70の螺旋の巻き方向とが互いに逆であるので、振動モータ40により同じ振動が付与されることにより上昇搬送路60での粉体の移動方向と下降搬送路70での粉体の移動方向とが互いに逆になる。それにより、処理容器10内で上下方向において粉体を往復移動させることができる。粉体は、往復移動中に処理ガスにより処理される。処理ガスで処理された粉体が粉体回収部4から回収される。
【0055】
(2)効果
本実施の形態において、粉体は、上昇搬送路60を移動するときのみでなく、下降搬送路70を移動するときにも、処理ガスにより処理される。これにより、処理容器10を大型化することなく粉体の処理時間を長くすることができる。その結果、粉体処理装置を小型化することができる。
【0056】
また、上昇搬送路60および下降搬送路70には、高さ規制部材64が設けられる。そのため、粉体は上昇搬送路60を移動するときおよび下降搬送路70を移動するときに高さ規制部材64により高さを規制される。これにより、長時間にわたって粉体を処理ガスで均一に処理することができる。
【0057】
[3]第3の実施の形態
図7は、第3の実施の形態に係る粉体処理装置100の内部の構造を示す側面図である。図7に示すように、上昇搬送路60が下降搬送路70の内側に配置される。
【0058】
一般に、重力のため、下降搬送路70での粉体の移動速度は、上昇搬送路60での粉体の移動速度より高い。図7の粉体処理装置100においては、下降搬送路70は上昇搬送路60よりも長い。これにより、下降搬送路70での粉体の移動速度を上昇搬送路60での粉体の移動速度と略等しくすることができる。
【0059】
[4]他の実施の形態
(1)第1の実施の形態に係る粉体処理装置100において、粉体が上昇搬送路60内を下端から上端に向かって移動するが、これに限定されない。粉体が上端から下端に向かって移動するように粉体搬送路を構成してもよい。
【0060】
(2)第2および第3の実施の形態に係る粉体処理装置100において、粉体が上昇搬送路60内を下端から上端に向かって移動した後、下降搬送路70内を上端から下端に向かって移動するが、これに限定されない。粉体が下降搬送路70内を上端から下端に向かって移動した後、上昇搬送路60内を下端から上端に向かって移動するように上昇搬送路60および下降搬送路70を接続してもよい。
【0061】
(3)第2および第3の実施の形態に係る粉体処理装置100において、下降搬送路70の巻き数と上昇搬送路60の巻き数とが等しいが、これに限定されない。下降搬送路70の巻き数は上昇搬送路60の巻き数よりも多くてもよい。この場合、下降搬送路70の勾配が上昇搬送路60の勾配よりも小さくなるとともに、下降搬送路70の長さが上昇搬送路60の長さよりも長くなる。これにより、下降搬送路70での粉体の移動速度を上昇搬送路60での粉体の移動速度と略等しくすることができる。
【0062】
[5]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0063】
粉体処理装置100が粉体処理装置の例であり、処理容器10が処理容器の例であり、上昇搬送路60および下降搬送路70が粉体搬送路の例であり、上昇搬送路60が第1の搬送路の例であり、下降搬送路70が第2の搬送路の例である。ガス導入部1がガス導入部の例であり、ガス排出部2がガス排出部の例であり、粉体供給部3が粉体供給部の例であり、粉体回収部4が粉体回収部の例であり、振動モータ40が振動付与部の例である。
【0064】
高さ規制部材64が高さ規制部材の例であり、下端部64cが下端部の例である。帯状搬送部61が帯状搬送部の例、または第1および第2の帯状搬送部の例である。上面61aが接触面の例であり、隙間Sが隙間の例である。
【0065】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、種々の処理ガスによる粉体の処理に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 ガス導入部
2 ガス排出部
3 粉体供給部
4 粉体回収部
10 処理容器
10a 下部筺体
10b 上部筺体
30 ばね
40 振動モータ
50 中心軸
60 上昇搬送路
61 帯状搬送部
61a 上面
62,63 側面部
64 高さ規制部材
64a,64b 側部
64c 下端部
64d 面
64e,64f 辺
70 下降搬送路
100 粉体処理装置
P 粉体
S 隙間
θ 傾き角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ガスで粉体を処理する粉体処理装置であって、
上下方向に螺旋状に延び、粉体が移動するための帯状搬送部を有する粉体搬送路と、
前記粉体搬送路に粉体を供給するための粉体供給部と、
前記粉体搬送路を振動させることにより前記粉体搬送路に供給された粉体を前記帯状搬送部に沿って移動させる振動付与部と、
前記粉体搬送路に供給された粉体が移動中に処理ガスで処理される処理容器と、
処理された粉体を回収する粉体回収部と、
前記帯状搬送部を移動する粉体の高さを規制する少なくとも1つの高さ規制部材とを備える、粉体処理装置。
【請求項2】
前記高さ規制部材は、前記帯状搬送部に対向する下端部を有し、前記下端部と前記帯状搬送部との間に隙間が形成されるように配置される、請求項1記載の粉体処理装置。
【請求項3】
前記高さ規制部材における帯状搬送部の螺旋の内側方向の側部は、螺旋の外側方向の側部よりも粉体の移動方向について下流側に位置する、請求項1または2記載の粉体処理装置。
【請求項4】
前記帯状搬送部における粉体との接触面は、螺旋の内側が螺旋の外側よりも低くなるように傾斜している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉体処理装置。
【請求項5】
前記粉体搬送路は、
上下方向に螺旋状に延び、粉体が移動するための第1の帯状搬送部を有する第1の搬送路と、
上下方向に螺旋状に延び、粉体が移動するための第2の帯状搬送部を有する第2の搬送路とを含み、
前記第1および第2の帯状搬送部は、一端で互いに接続されるとともに、前記第2の帯状搬送部の螺旋の巻き方向は、前記第1の帯状搬送部の螺旋の巻き方向と逆である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉体処理装置。
【請求項6】
前記高さ規制部材は、等間隔に複数設けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粉体処理装置。
【請求項7】
前記帯状搬送部における粉体との接触面は、金属からなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粉体処理装置。
【請求項8】
前記処理容器は、処理ガスの導入のためのガス導入部、および処理ガスの排出のためのガス排出部を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の粉体処理装置。
【請求項9】
処理ガスは、フッ素ガスを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の粉体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−52344(P2013−52344A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192029(P2011−192029)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】