説明

粉体切出し装置

【課題】構造が簡単で、粉体の種類に対する汎用性が高く、長期使用に対する耐久性が高い粉体切出し装置を提供することを課題とする。
【解決手段】粉体切出し装置1は、粉体Pを排出する排出口20と、排出口20の口縁に配置される弁座21と、を有する筒体2と、排出口20の下方に配置され、弁座21に対して離間し筒体2から粉体Pを排出する開弁状態と、弁座21に対して接近し筒体2に粉体Pを滞留させる閉弁状態と、に切り替え可能な受け皿状の弁体3と、を備える。閉弁状態において、筒体2と弁体3とは非接触である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ゴムに配合する薬品の計量および払い出しなどに用いられる粉体切出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体切出し装置は、粉体の輸送通路に配置されている。粉体切出し装置は、弁座と弁体とを備えている。粉体切出し装置は、弁体が弁座に着座し粉体の通過を禁止する閉弁状態と、弁体が弁座から離座し粉体の通過を許容する開弁状態と、に切り替え可能である。
【0003】
粉体切出し装置においては、閉弁状態における弁座と弁体との間のシール性の確保が問題になる。すなわち、弁座あるいは弁体に粉体が固着する場合がある。この場合、閉弁状態において、弁座と弁体との間に、粉体が噛み込まれてしまう。このため、閉弁状態におけるシール性が低下する。
【0004】
そこで、特許文献1には、弁座と弁体とからなるシール部が、径方向内外に二重に配置された粉体切出し装置が開示されている。特許文献1の粉体切出し装置によると、閉弁状態において、径方向内側の弁座と弁体との間に粉体が噛み込まれても、径方向外側の弁座に弁体が着座することにより、シール性を確保することができる。
【0005】
また、特許文献2、特許文献3には、弁座にバネ鋼製の弾性変形板が配置された粉体切出し装置が開示されている。特許文献2、特許文献3の粉体切出し装置によると、開弁状態から閉弁状態に切り替える際、弾性変形板は、弁体に押圧され弾性変形する。当該弾性変形により、弁座に付着した粉体を剥離させることができる。このため、閉弁状態におけるシール性を確保することができる。
【特許文献1】実開昭62−133061号公報
【特許文献2】実開昭63−166766号公報
【特許文献3】特開平7−12240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の粉体切出し装置によると、弁座、および弁体を二重に配置する必要があった。このため、粉体切出し装置の構造が複雑だった。また、特許文献2、特許文献3の粉体切出し装置によると、閉弁状態において、いずれも弁座に弁体が接触していた。このため、閉弁状態において、弁座と弁体との間への粉体の噛み込みを、完全に防止することは困難だった。
【0007】
また、噛み込まれた粉体と、弁座あるいは弁体と、が摺動することにより、弁座あるいは弁体が摩耗するおそれがあった。このため、弁座あるいは弁体の、長期使用に対する耐久性が低かった。
【0008】
また、粉体の種類によっては、弁座と弁体との間への粉体の噛み込み、あるいは粉体と弁座あるいは弁体との摺動により、粉体から、水分やオイル分が滲み出る場合があった。この場合、粉体がガム状に凝集し、さらに弁座あるいは弁体に粉体が固着しやすくなっていた。したがって、さらにシール性が低下していた。
【0009】
本発明の粉体切出し装置は、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、構造が簡単で、粉体の種類に対する汎用性が高く、長期使用に対する耐久性が高い粉体切出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の括弧内の番号は、請求項の番号に対応している。
【0011】
(1)上記課題を解決するため、本発明の粉体切出し装置は、粉体を排出する排出口と、該排出口の口縁に配置される弁座と、を有する筒体と、該排出口の下方に配置され、該弁座に対して離間し該筒体から該粉体を排出する開弁状態と、該弁座に対して接近し該筒体に該粉体を滞留させる閉弁状態と、に切り替え可能な受け皿状の弁体と、を備えてなる粉体切出し装置であって、前記閉弁状態において、前記筒体と前記弁体とは非接触であることを特徴とする。
【0012】
本発明の粉体切出し装置によると、特許文献1のような二重のシール部は不要である。このため、構造が簡単である。また、本発明の粉体切出し装置によると、開弁状態のみならず、閉弁状態においても、弁体と筒体とが非接触である。すなわち、弁座と弁体との間には、隙間が確保されている。閉弁状態において、粉体は、当該隙間を介して、排出口から弁体に流下する。そして、弁体に堆積する。このため、当該隙間は、落下し堆積する粉体自身により封止される。
【0013】
本発明の粉体切出し装置によると、閉弁状態において、弁座と弁体との間に隙間が確保されているため、粉体が噛み込まれにくい。また、粉体が噛み込まれにくいため、閉弁状態において、粉体と、弁座あるいは弁体と、が摺動しにくい。したがって、本発明の粉体切出し装置によると、弁座あるいは弁体の、長期使用に対する耐久性が高い。
【0014】
また、本発明の粉体切出し装置によると、弁座と弁体とが非接触であるため、開弁状態から閉弁状態に切り替える際、粉体が壊れにくい。また、粉体が壊れにくいため、壊れることにより性質が変化するような粉体であっても、取り扱うことができる。すなわち、本発明の粉体切出し装置によると、粉体の種類に対する汎用性が高い。
【0015】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、さらに、前記弁体を移動させることにより、前記閉弁状態における前記弁座と前記弁体との間の隙間を調整する隙間調整部を有する構成とする方がよい。本構成によると、例えば、粉体の種類に応じて、閉弁状態における弁座と弁体との間の隙間を最適化することができる。
【0016】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、さらに、前記弁座と前記弁体とを内部に収容するハウジングと、該弁体が直接あるいは間接的に固定される揺動軸と、該ハウジングの外部に配置され該揺動軸を揺動させることにより前記開弁状態と前記閉弁状態とを切り替え可能な駆動部と、を持つ弁体開閉部と、を有する構成とする方がよい。
【0017】
弁体は、直接揺動軸に固定されていてもよい。あるいは、弁体は、他の部材を介して、揺動軸に固定されていてもよい。すなわち、弁体と揺動軸とが一体となって揺動可能であればよい。本構成によると、駆動部がハウジングの外部に配置されている。このため、駆動部に粉体が侵入するおそれが小さい。
【0018】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、さらに、前記揺動軸を支持する滑り軸受部を有する構成とする方がよい。本構成によると、揺動軸を支持するのに転がり軸受を用いる場合と比較して、粉体による不具合が発生しにくい。
【0019】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記弁体は、前記閉弁状態において上方に開口すると共に、前記粉体の流下方向に対して鋭角に交差する方向に延在する傾斜面を持つ椀状の凹部を有しており、前記弁座は、該閉弁状態において該凹部に収容されている構成とする方がよい。
【0020】
本構成によると、閉弁状態において、弁座が弁体の凹部に収容されている。このため、粉体が弁体からこぼれにくい。したがって、閉弁状態におけるシール性が向上する。また、凹部は傾斜面(平面でも曲面でもよい)を有している。傾斜面は、粉体の流下方向に対して鋭角に交差する方向に延在している。このため、閉弁状態の弁体に衝突した粉体は、凹部の中心方向に跳ね返る。したがって、粉体が凹部の中央に堆積しやすい。すなわち、粉体が凹部の外部にこぼれにくい。この点においても、閉弁状態におけるシール性が向上する。
【0021】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記粉体は、液体滲出性を有する構成とする方がよい。本発明の粉体切出し装置によると、前述したように、弁座と弁体とが非接触であるため、開弁状態から閉弁状態に切り替える際、粉体が壊れにくい。このため、粉体が壊れることにより、オイルや水分や薬剤などの液体が滲み出るような粉体を取り扱う場合であっても、開弁状態から閉弁状態に切り替える際、粉体が壊れにくい。したがって、滲出した液体により粉体の付着性が高くなるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、構造が簡単で、粉体の種類に対する汎用性が高く、長期使用に対する耐久性が高い粉体切出し装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の粉体切出し装置を、ゴムに配合する薬品の計量、調合に用いる場合の実施の形態について説明する。
【0024】
[粉体切出し装置の配置]
まず、本実施形態の粉体切出し装置の配置について説明する。図1に、本実施形態の粉体切出し装置が配置された計量装置の前後方向断面図を示す。図1に示すように、計量装置9は、ホッパー90と、フランジ91と、四つの粉体切出し装置1と、を備えている。ホッパー90は、布製であって、上方から下方に向かって尖る中空円錐状を呈している。フランジ91は、ステンレス製であって、ホッパー90の下端に固定されている。
【0025】
四つの粉体切出し装置1のうち、三つの粉体切出し装置1は、ホッパー90の上方に配置されている。残りの一つの粉体切出し装置1は、フランジ91の下方に接続されている。四つの粉体切出し装置1は、各々、薬品Pを流下させる開弁状態と、薬品Pを滞留させる開弁状態と、に切り替え可能である。なお、薬品Pは、本発明の粉体に含まれる。
【0026】
上方の三つの粉体切出し装置1のうち、左端と中央の二つの粉体切出し装置1が、開弁状態である。一方、上方の三つの粉体切出し装置1のうち右端の粉体切出し装置1と、下方の粉体切出し装置1と、が閉弁状態である。
【0027】
上方の三つの粉体切出し装置1のさらに上方には、各々、計量用のホッパー(図略)が接続されている。これら三つの粉体切出し装置1からは、各々、異なる種類の薬品Pが、所定量だけホッパー90に投入される。ホッパー90で調合された薬品Pは、下方の粉体切出し装置1から切り出され、袋詰めされる。
【0028】
ここで、上方の三つの粉体切出し装置1からホッパー90に投入される薬品Pのうち、左端の粉体切出し装置1から投入される薬品Pは、オイル滲出性を有している。すなわち、加熱や摺動によりオイル化しやすい性質を有している。このため、ホッパー90で調合された薬品Pも、オイル滲出性を有している。
【0029】
[粉体切出し装置の構成]
次に、本実施形態の粉体切出し装置1の構成について説明する。四つの粉体切出し装置1の構成、動き、作用効果は同じである。したがって、以下、下方の一つの粉体切出し装置1についてのみ説明し、上方の三つの粉体切出し装置1についての説明を兼ねるものとする。
【0030】
図2に、本実施形態の粉体切出し装置の斜視図を示す。図3に、同粉体切出し装置の前後方向断面図を示す。図4に、図3の円IV内の拡大図を示す。なお、図2においては、ハウジング5、シュート2下端を透過して示す。また、図3においては、断面よりも右側に配置された部材を一点鎖線で示す。
【0031】
図2〜図4に示すように、本実施形態の粉体切出し装置1は、シュート2と、弁体3と、一対の隙間調整部4L、4Rと、ハウジング5と、弁体開閉部6と、一対の滑り軸受部と、を備えている。シュート2は、本発明の筒体に含まれる。
【0032】
シュート2は、ステンレス製であって円筒状を呈している。シュート2は、排出口20と、弁座21と、を備えている。シュート2の上端は、フランジ91に接続されている。排出口20は、シュート2の下端に配置されている。弁座21は、排出口20の口縁に配置されている。弁座21は、略真円リング状を呈している。
【0033】
ハウジング5は、天板50と、ハウジング本体51と、ストッパ52と、を備えている。ハウジング本体51は、ステンレス製であって、上端が四角形、下端が円形の筒状を呈している。ストッパ52は、ステンレス製であって、短軸円柱状を呈している。ストッパ52は、ナット520により、ハウジング本体51の前壁に固定されている。ストッパ52の先端は、ハウジング本体51の内部に突出している。
【0034】
天板50は、ステンレス製であって、平板状を呈している。天板50は、ハウジング本体51の上端開口を塞いでいる。天板50には、略真円状のシュート挿入口500が開設されている。シュート挿入口500には、シュート2の下端部分が挿入されている。すなわち、排出口20および弁座21は、ハウジング5の内部に収容されている。
【0035】
一対の隙間調整部4L、4Rは、ハウジング本体51の左右両壁外面に配置されている。一対の隙間調整部4L、4Rの内部には、一対の滑り軸受部が収容されている。一対の隙間調整部4L、4R、および一対の滑り軸受部については、後で詳しく説明する。
【0036】
弁体開閉部6は、揺動軸60と、シリンダ61と、往復ロッド62と、連結アーム63と、一対の弁体支持アーム64R、64Lと、を備えている。シリンダ61は、本発明の駆動部に含まれる。
【0037】
揺動軸60は、ステンレス製であって、長軸円柱状を呈している。揺動軸60は、ハウジング本体51を左右方向に貫通している。揺動軸60の左右両端部は、一対の滑り軸受部により、揺動可能に支持されている。揺動軸60の左右両端は、一対の隙間調整部4L、4Rを貫通して、左右両側に突出している。揺動軸60の左右突出端の外周面には、一対のリング部材600L、600Rが固定されている。
【0038】
一対の弁体支持アーム64R、64Lは、ステンレス製であって、板状を呈している。一対の弁体支持アーム64R、64Lは、左右方向に所定間隔だけ離間して、揺動軸60の略中央に固定されている。一対の弁体支持アーム64R、64Lは、閉弁状態において、揺動軸60から後方に延在している。
【0039】
シリンダ61は、ハウジング5の天板50上面の右後方の角部分に、ブラケット610を介して、揺動可能に装着されている。往復ロッド62は、ステンレス製であって、前後方向に延在する丸棒状を呈している。往復ロッド62の後端は、シリンダ61に出入り可能に接続されている。
【0040】
連結アーム63は、ステンレス製であって、L字状を呈している。連結アーム63のL字一端は、往復ロッド62の前端に、揺動可能に接続されている。一方、連結アーム63のL字他端は、揺動軸60の右端に、固定されている。
【0041】
弁体3は、ステンレス製であって、図2に一点鎖線で示すように、底の浅い椀状を呈している。弁体3は、上方に開口する略真円状の凹部30を有している。凹部30は、傾斜面300を有している。傾斜面300は、曲面状を呈している。傾斜面300(具体的には傾斜面300の接線方向)は、上下方向(薬品Pの流下方向)に対して鋭角に交差する方向に延在している。閉弁状態において、弁体3は、前記弁体支持アーム64R、64Lの上部に固定されている。また、閉弁状態において、弁体3は、シュート2の下方に配置されている。
【0042】
[閉弁状態における弁体とシュートとの位置関係]
次に、閉弁状態における弁体3とシュート2との位置関係について説明する。図3、図4に示すように、シュート2下端の排出口20および弁座21は、弁体3の凹部30内に収容されている。シュート2と弁体3とは、非接触である。すなわち、弁座21と弁体3との間には、隙間Cが設定されている。隙間Cは、排出口20から流下し弁体3の凹部30に堆積した薬品Pにより、封止されている。すなわち、封止対象である薬品P自身により、隙間Cが封止されている。
【0043】
[一対の隙間調整部および一対の滑り軸受部の構成]
次に、一対の隙間調整部4L、4Rおよび一対の滑り軸受部の構成について説明する。なお、左右一対の隙間調整部4L、4Rおよび左右一対の滑り軸受部の構成、動き、作用効果は同じである。また、配置は左右対称である。したがって、以下、右方の隙間調整部4Rおよび滑り軸受部についてのみ説明し、左方の隙間調整部4Lおよび滑り軸受部についての説明を兼ねるものとする。
【0044】
図5に、本実施形態の粉体切出し装置の隙間調整部の斜視図を示す。図6に、同隙間調整部の分解斜視図を示す。図5、図6に示すように、隙間調整部4Rは、可動ブロック40Rと、固定ブロック41Rと、前後調整板42Rと、上下調整板43Rと、四本の固定ボルト412Rと、前後調整ボルト420Rと、前後調整ナット421Rと、二本の上下調整ボルト430Rと、二つの上下調整ナット431Rと、を備えている。
【0045】
可動ブロック40Rは、ステンレス製であって、矩形板状を呈している。可動ブロック40Rの右面略中央には、左右方向に貫通する小径軸挿通孔400Rが穿設されている。可動ブロック40Rの右面四隅には、左右方向に貫通する四つの大径ボルト挿通孔401Rが穿設されている。
【0046】
固定ブロック41Rは、ステンレス製であって、矩形板状を呈している。固定ブロック41Rは、可動ブロック40Rの左方に並設されている。固定ブロック41Rの右面略中央には、左右方向に貫通する大径軸挿通孔410Rが穿設されている。大径軸挿通孔410Rは、小径軸挿通孔400Rの左側に、直列に並んでいる。固定ブロック41Rの右面四隅には、左右方向に貫通する四つの小径ボルト挿通孔411Rが穿設されている。小径ボルト挿通孔411Rは、大径ボルト挿通孔401Rの左側に、直列に並んでいる。
【0047】
滑り軸受部7Rは、青銅ベース金属製であって、右端にフランジ部70Rを有する短軸円筒状を呈している。滑り軸受部7Rは、小径軸挿通孔400Rに右側から圧入されている。滑り軸受部7Rの径方向内側には、揺動軸60が挿通されている。
【0048】
揺動軸60は、右方から左方に向かって、可動ブロック40R、固定ブロック41Rを貫通している。具体的には、揺動軸60は、滑り軸受部7Rの径方向内側(つまり小径軸挿通孔400R)、大径軸挿通孔410Rを貫通している。ここで、揺動軸60の外径は、滑り軸受部7Rの内径と略同じである。このため、揺動軸60の外周面は、滑り軸受部7Rの内周面により、揺動可能に支持されている。一方、揺動軸60の外周面と、大径軸挿通孔410Rの内周面と、の間には、隙間が区画されている。また、揺動軸60に固定されたリング部材600Rの左面は、滑り軸受部7Rのフランジ部70R右面に、摺接している。
【0049】
四本の固定ボルト412Rは、各々、右方から左方に向かって、可動ブロック40Rを貫通し、固定ブロック41Rに固定されている。具体的には、固定ボルト412Rは、大径ボルト挿通孔401Rを貫通し、小径ボルト挿通孔411Rに螺着されている。固定ボルト412Rの外周面と、大径ボルト挿通孔401Rの内周面と、の間には、隙間が区画されている。
【0050】
後述するように、揺動軸60の外周面と大径軸挿通孔410Rの内周面との間の隙間、および固定ボルト412Rの外周面と大径ボルト挿通孔401Rの内周面との間の隙間を利用して、揺動軸60つまり弁体3の上下方向および前後方向の位置調整が行われる。
【0051】
前後調整板42Rは、ステンレス製であって、矩形板状を呈している。前後調整板42Rは、可動ブロック40Rの前方に配置されている。前後調整板42Rの前面には、前後方向に貫通するボルト挿通孔422Rが穿設されている。前後調整ボルト420Rは、前後調整ナット421Rを介して、前方から、ボルト挿通孔422Rに挿通されている。前後調整ボルト420Rの先端(後端)は、可動ブロック40Rの前面に当接している。
【0052】
上下調整板43Rは、ステンレス製であって、矩形板状を呈している。上下調整板43Rは、可動ブロック40Rの下方に配置されている。上下調整板43Rの上面には、上下方向に貫通する一対のボルト挿通孔432Rが穿設されている。一対の上下調整ボルト430Rは、一対の上下調整ナット431Rを介して、下方から、一対のボルト挿通孔432Rに挿通されている。一対の上下調整ボルト430Rの先端(上端)は、可動ブロック40Rの下面に当接している。
【0053】
[粉体切出し装置の動き]
次に、本実施形態の粉体切出し装置1の動きについて説明する。図7に、本実施形態の粉体切出し装置の開弁状態における前後方向断面図を示す。図7においては、断面よりも右側に配置された部材を一点鎖線で示す。
【0054】
閉弁状態においては、図3、図4に示すように、弁体3の凹部30は、所定の隙間Cを確保した状態で、シュート2下端の排出口20および弁座21を覆っている。このため、薬品Pはホッパー90、フランジ91、シュート2内に滞留している。
【0055】
図示しないロードセルにより計量されるホッパー90内の薬品Pの量が、袋詰めの所定量に達すると、弁体3は、図3、図4に示す閉弁状態から、図7に示す開弁状態に切り替わる。具体的には、図2に示すように、往復ロッド62が後方に移動し、シリンダ61内に没入する。往復ロッド62の前端には、連結アーム63が揺動可能に接続されている。このため、往復ロッド62が後方に移動すると、連結アーム63が揺動軸60の軸周りに、図3、図7における時計回り方向(上→後→下→前と回る方向)に揺動する。ここで、連結アーム63と、揺動軸60と、一対の弁体支持アーム64R、64Lと、弁体3とは、互いに動かないように固定されている。このため、連結アーム63が揺動すると、揺動軸60も、滑り軸受部7R(図6参照)に支持されながら、揺動する。並びに、一対の弁体支持アーム64R、64Lおよび弁体3も、揺動する。揺動した弁体3は、ストッパ52の先端に当接して、停止する。
【0056】
以上説明したように、シリンダ61の駆動力は、往復ロッド62→連結アーム63→揺動軸60→一対の弁体支持アーム64R、64Lを介して、弁体3に伝達される。当該駆動力により、弁体3は、図3、図7における時計回り方向に揺動する。このようにして、弁体3は、閉弁状態から開弁状態に切り替わる。弁体3が開弁状態になると、シュート2の排出口20から、ホッパー90、フランジ91、シュート2内に滞留していた薬品Pが、排出される。排出された薬品Pは袋詰めされる。
【0057】
薬品Pが排出された後は、弁体3が、開弁状態から再び閉弁状態に切り替わる。そして、図1に示す上方の三つの粉体切出し装置1の弁体が適宜開閉制御されることにより、所定の薬品が、所定量だけ、ホッパー90に投入される。
【0058】
[弁座と弁体との間の隙間の調整方法]
次に、本実施形態の粉体切出し装置1の弁座21と弁体3との間の隙間Cの調整方法について説明する。隙間Cの調整は、ホッパー90に滞留する薬品Pの種類に応じて行われる。
【0059】
図8に、本実施形態の粉体切出し装置の揺動軸付近の左右方向断面図を示す。図8(a)は隙間調整前の状態を、図8(b)は隙間調整後の状態を、それぞれ示す。なお、左側の隙間調整部4Lの断面と、右側の隙間調整部4Rの断面と、は説明の便宜上、切断位置が異なっている。すなわち、左側の隙間調整部4Lの断面は、揺動軸60挿通部分の断面である。これに対して、右側の隙間調整部4Rの断面は、四本の固定ボルト412Rのうち、前方二本の固定ボルト412R挿通部分の断面である。
【0060】
前述したように、揺動軸60と、固定ブロック41Lの大径軸挿通孔410Lと、の間には隙間C1が区画されている。並びに、固定ボルト412Rと、可動ブロック40Rの大径ボルト挿通孔401Rと、の間には隙間C2が区画されている。
【0061】
一例として、弁座21と弁体3との間の隙間Cを狭くする場合について説明する。まず、固定ボルト412R、412Lを緩める。そして、可動ブロック40R、40Lと、固定ブロック41R、41Lと、の圧接状態を解除する。次いで、上下調整ボルト430R、430Lを螺動させ、上方に移動させる。ここで、上下調整ボルト430R、430Lの上端は、可動ブロック40R、40Lの下面に当接している。このため、上下調整ボルト430R、430Lを上方に移動させると、可動ブロック40R、40Lも上方に移動する。具体的には、可動ブロック40R、40Lは、固定ボルト412Rと大径ボルト挿通孔401Rとの間の隙間C2を消費して、上方に移動する。
【0062】
ここで、可動ブロック40R、40Lには、滑り軸受部7Lを介して、揺動軸60が揺動可能に支持されている。並びに、揺動軸60には、一対の弁体支持アーム64R、64L(図2参照)を介して、弁体3が固定されている。このため、可動ブロック40R、40Lを上方に移動させると、揺動軸60および弁体3も上方に移動する。具体的には、揺動軸60および弁体3は、揺動軸60と大径軸挿通孔410Lとの間の隙間C1を消費して、上方に移動する。
【0063】
弁体3が上方に移動すると、その分、弁体3が弁座21に接近する。このため、弁座21と弁体3との間の隙間Cが小さくなる。その後、固定ボルト412R、412Lを締め付ける。そして、可動ブロック40R、40Lと、固定ブロック41R、41Lと、を相対的に動かないように圧接させる。
【0064】
このようにして、隙間Cを小さくする。なお、隙間Cを大きくする場合は、上下調整ボルト430R、430Lを、隙間Cを小さくする場合に対して、逆方向に螺動させる。そして、上下調整ボルト430R、430Lを下方に移動させる。
【0065】
また、隙間調整部4L、4Rは、弁体3の上下方向位置のみならず、前後方向位置も調整可能である。この場合は、固定ボルト412R、412Lを緩めた後、図2、図5、図6に示すように、前後調整ボルト420R、420Lを螺動させ、可動ブロック40R、40Lを、前方あるいは後方に移動させる。そして、揺動軸60および弁体3を、前方あるいは後方に移動させる。弁体3の前後方向位置の調整は、例えば、弁体3とシュート2との調芯の際に行われる。
【0066】
[作用効果]
次に、本実施形態の粉体切出し装置1の作用効果について説明する。本実施形態の粉体切出し装置1によると、開弁状態のみならず、閉弁状態においても、弁体3とシュート2とが非接触である。すなわち、図4に示すように、弁座21と弁体3との間には、隙間Cが確保されている。閉弁状態において、薬品Pは、隙間Cを介して、排出口20から弁体3の凹部30に流下する。そして、薬品Pは、凹部30に堆積する。このため、隙間Cは、堆積する薬品P自身により封止される。
【0067】
本実施形態の粉体切出し装置1によると、閉弁状態において、弁座21と弁体3との間に隙間Cが確保されているため、薬品Pが噛み込まれにくい。また、薬品Pが噛み込まれにくいため、閉弁状態において、薬品Pと、弁座21あるいは弁体3と、が摺動しにくい。したがって、本実施形態の粉体切出し装置1によると、弁座21あるいは弁体3の、長期使用に対する耐久性が高い。
【0068】
また、本実施形態の粉体切出し装置1によると、弁座21と弁体3とが非接触であるため、開弁状態から閉弁状態に切り替える際、薬品Pが壊れにくい。また、薬品Pが壊れにくいため、壊れることにより性質が変化するような薬品Pであっても、取り扱うことができる。すなわち、本実施形態の粉体切出し装置1によると、薬品Pの種類に対する汎用性が高い。このため、あらゆる種類の薬品Pを計量、調合することができる。
【0069】
また、本実施形態の粉体切出し装置1は、一対の隙間調整部4R、4Lを備えている。このため、図8(a)、(b)に示すように、上下調整ボルト430R、430Lを螺動させることにより、弁座21と弁体3との間の隙間Cを調整することができる。したがって、薬品Pの種類に応じて、閉弁状態における隙間Cを最適化することができる。また、隙間調整部4L、4Rは、弁体3の上下方向位置のみならず、前後方向位置も調整可能である。このため、弁体3とシュート2との調芯作業が容易である。
【0070】
また、本実施形態の粉体切出し装置1によると、図2に示すように、シリンダ61がハウジング5の外部に配置されている。このため、シリンダ61に薬品Pが侵入するおそれが小さい。
【0071】
また、本実施形態の粉体切出し装置1は、滑り軸受部7R、7Lを備えている。このため、揺動軸60を支持するのに転がり軸受を用いる場合と比較して、薬品Pの侵入による不具合が発生しにくい。
【0072】
また、本実施形態の粉体切出し装置1によると、図3に示すように、閉弁状態において、弁座21が弁体3の凹部30に収容されている。このため、薬品Pが弁体3の凹部30からこぼれにくい。したがって、閉弁状態におけるシール性が向上する。また、凹部30は傾斜面300を有している。傾斜面300は、薬品Pの流下方向に対して鋭角に交差する方向に延在している。このため、閉弁状態の弁体3に衝突した薬品Pは、凹部30の中心方向に跳ね返る。したがって、薬品Pが凹部30の中央に堆積しやすい。すなわち、薬品Pが凹部30の外部にこぼれにくい。この点においても、閉弁状態におけるシール性が向上する。
【0073】
また、本実施形態の粉体切出し装置1によると、図7に示すように、ハウジング5にストッパ52が配置されている。このため、開弁状態における弁体3の位置を規制することができる。
【0074】
また、薬品Pはオイル滲出性を有している。しかしながら、弁座21と弁体3とは、非接触である。このため、開弁状態から閉弁状態に切り替える際、薬品Pが壊れにくい。したがって、滲出したオイルにより薬品Pの付着性が高くなるのを抑制することができる。
【0075】
[その他]
以上、本発明の粉体切出し装置の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0076】
例えば、シリンダ61の動力は特に限定しない。油圧でも空気圧でもよい。また、駆動部として、モーターやソレノイドなどを用いてもよい。また、上記実施形態においては、椀状の弁体3を用いたが、有底筒状の弁体を用いてもよい。また、略真円状に限らず、多角形状(三角形状、四角形状、五角形状など)の弁体を用いてもよい。
【0077】
また、薬品Pの種類も特に限定しない。例えば、カーボンブラック、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、加工助剤、軟化剤、難燃剤、着色剤、可塑剤を、1種で、あるいは2種以上混合して、用いてもよい。
【0078】
カーボンブラックとしては、SAF級、ISAF級、HAF級、MAF級、FEF級、GPF級、SRF級、FT級、MT級等の種々のグレードのものを用いることができる。また、加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系促進剤、チウラム系促進剤、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)等のスルフェンアミド系促進剤等を用いることができる。また、加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等を用いることができる。また、加工助剤としては、例えば、ステアリン酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、炭化水素系樹脂等を用いることができる。
【0079】
また、老化防止剤としては、例えば、カルバメート系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ジフェニルアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、ワックス類等を用いることができる。特に、本発明の粉体切出し装置は、融点が低く、加熱や摺動によりオイル分が滲出しやすいタイプの老化防止剤を取り扱うのに好適である。
【0080】
また、滑り軸受部7R、7Lの材質は、特に限定しない。青銅ベース金属の他、鉄系焼結材、銅、ポリアミド系樹脂などを用いてもよい。また、金属材の表面に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)をコーティングして滑り軸受部7R、7Lを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施形態である粉体切出し装置が配置された計量装置の前後方向断面図である。
【図2】同粉体切出し装置の斜視図である。
【図3】同粉体切出し装置の前後方向断面図である。
【図4】図3の円IV内の拡大図である。
【図5】同粉体切出し装置の隙間調整部の斜視図である。
【図6】同隙間調整部の分解斜視図である。
【図7】同粉体切出し装置の開弁状態における前後方向断面図である。
【図8】(a)は同粉体切出し装置の揺動軸付近の隙間調整前における左右方向断面図である。(b)は同粉体切出し装置の揺動軸付近の隙間調整後における左右方向断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1:粉体切出し装置、2:シュート(筒体)、3:弁体、4L:隙間調整部、4R:隙間調整部、5:ハウジング、6:弁体開閉部、7L:滑り軸受部、7R:滑り軸受部、9:計量装置。
20:排出口、21:弁座、30:凹部、40L:可動ブロック、40R:可動ブロック、41L:固定ブロック、41R:固定ブロック、42R:前後調整板、43R:上下調整板、50:天板、51:ハウジング本体、52:ストッパ、60:揺動軸、61:シリンダ(駆動部)、62:往復ロッド、63:連結アーム、64L:弁体支持アーム、64R:弁体支持アーム、70R:フランジ部、90:ホッパー、91:フランジ。
300:傾斜面、400R:小径軸挿通孔、401R:大径ボルト挿通孔、410L:大径軸挿通孔、410R:大径軸挿通孔、411R:小径ボルト挿通孔、412R:固定ボルト、420L:前後調整ボルト、420R:前後調整ボルト、421R:前後調整ナット、422R:ボルト挿通孔、430L:上下調整ボルト、430R:上下調整ボルト、431R:上下調整ナット、432R:ボルト挿通孔、500:シュート挿入口、520:ナット、600L:リング部材、600R:リング部材、610:ブラケット。
C:隙間、C1:隙間、C2:隙間、P:薬品(粉体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を排出する排出口と、該排出口の口縁に配置される弁座と、を有する筒体と、
該排出口の下方に配置され、該弁座に対して離間し該筒体から該粉体を排出する開弁状態と、該弁座に対して接近し該筒体に該粉体を滞留させる閉弁状態と、に切り替え可能な受け皿状の弁体と、
を備えてなる粉体切出し装置であって、
前記閉弁状態において、前記筒体と前記弁体とは非接触であることを特徴とする粉体切出し装置。
【請求項2】
さらに、前記弁体を移動させることにより、前記閉弁状態における前記弁座と前記弁体との間の隙間を調整する隙間調整部を有する請求項1に記載の粉体切出し装置。
【請求項3】
さらに、前記弁座と前記弁体とを内部に収容するハウジングと、
該弁体が直接あるいは間接的に固定される揺動軸と、該ハウジングの外部に配置され該揺動軸を揺動させることにより前記開弁状態と前記閉弁状態とを切り替え可能な駆動部と、を持つ弁体開閉部と、
を有する請求項1または請求項2に記載の粉体切出し装置。
【請求項4】
さらに、前記揺動軸を支持する滑り軸受部を有する請求項3に記載の粉体切出し装置。
【請求項5】
前記弁体は、前記閉弁状態において上方に開口すると共に、前記粉体の流下方向に対して鋭角に交差する方向に延在する傾斜面を持つ椀状の凹部を有しており、
前記弁座は、該閉弁状態において該凹部に収容されている請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の粉体切出し装置。
【請求項6】
前記粉体は、液体滲出性を有する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の粉体切出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−228836(P2009−228836A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76477(P2008−76477)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】