説明

粉体収容容器、粉体収容製品、トナー収容容器、トナー収容製品及び製造方法

【課題】 フィルム状のシール材で開口部のシーリングを行う粉体収容容器で、繰返し使用しても容器本体とシール材との接触個所における溶着強度の劣化や剥離性低下のないリユース対応可能な粉体収容容器を提供する。
【解決手段】 粉体を排出する開口部を有する容器本体と、前記開口部をシールしたシール部材とを有する粉体収容容器で、少なくとも容器本体開口部とシール部材との接触個所に規則性を付与した複数の突起を有することを特徴とする粉体収容容器。該容器に粉体を収容してなる粉体収容製品。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、容器のまま装置に装填して粉体供給を行うことの可能な粉体収容容器と粉体収容製品に関し、詳しくはフィルム状シール材で容器開口部を遮蔽する構成を有し、繰り返し使用可能なリユース対応した粉体収容容器と粉体収容製品、及び複写機等の電子写真画像形成装置に装填してトナー供給するトナー収容容器と該容器内にトナーを収容してなるトナー収容製品に関する。
【0002】
【従来の技術】容器開口部にシール材を貼付して容器内を密閉する粉体収容容器は、蓋を用いて開口部を遮蔽する容器と比較して、安価に開口部の構造を簡易化し、しかも高度な密閉性の確保が可能なことから粉体関係の分野で広く用いられている。例えば電子写真画像形成装置に使用されるトナー収容製品として使用される場合、製品を容器に収納したままの状態で装置に装着し、シール材を剥離してトナー供給を行うので、トナー飛散による汚れ発生を防止し、また保管中は高度な密封性が確保されるので、外部環境の影響を受けずに長期にわたり製品の品質を維持することが可能である。
【0003】開口部をシール材で遮蔽した粉体収容容器は、剥離時におけるフィルム状シール材の容器開口部からの効率よい剥離が要求され、特開昭58−224364号公報にはループ状にしたフィルム状シール部材を牽引部材を用いて容器開口部より剥離する粉体収納容器が開示され、特開平1−280781号公報には粉体製品としてトナーを容器内に封入する技術が開示されている。
【0004】また、特開平10−104922号公報には、スライド蓋と呼ばれるシール材牽引部材上にシボ加工(エンボス加工)処理を行いシール材との剥離性を向上させたトナー補給容器が開示され、シール材とシール牽引部材との摩擦係数を小さくすることで、大きな力を必要とせずにスムーズなシール材の剥離を行っている。
【0005】ところで、近年、コストダウンや環境保護等の視点から資源のリユースが着目され、粉体収容容器の分野でも使用済み容器を回収して、回収した容器に粉体を再充填して出荷、流通を繰り返す物流体制が構築されている。この様なリユース対応した容器は繰返し使用を前提に高耐久性等の性能が要求される。ところが、前述の特開平10−104922号公報のトナー補給容器では、スライド蓋がシボ加工処理してあるために繰返し使用が困難であることが見出された。すなわち、一度シール材を溶着したシボ加工面が粗面化して再度シール材を溶着しても、製品使用可能な接着強度が得られないのである。
【0006】そのため、シボ加工面に加工処理を行ったり、或いは再使用時はシール材の溶着温度を高めに設定してシールを取付けることがなされた。しかしながら、シボ加工面の加工処理はリユース展開に手間のかかる工程を追加するものであり、また、溶着温度の高め設定はエネルギー消費量を増大させて環境負荷とコスト高を招くもので、いずれの対応も容器のリユースによりコストダウンや環境負荷の低減化を図るという目的を逸脱するものだった。また、高い溶着温度でシール材を取付けると容器毎に溶着強度にばらつきが発生し、スムーズな剥離性等の取扱性に関する品質維持が困難になった。
【0007】結局、新品のスライド蓋に交換してリユース展開することが、コスト面での採算性の合うものと判明したが、容器の構成部品を新品に交換してのリユース展開にはまだまだ改善の余地があった。
【0008】さらに、容器の構成部品の数を減少させてコストダウンや省エネ化を図ることも検討されたが、専用のシール材剥離部品を使用してシール材に均一に負荷をかけて剥離することが、ある程度の強度を有して容器本体に溶着しているシール材を破損させずに確実に剥離できるものであったためスライド蓋が粉体収容容器の必須構成となっていた。
【0009】この様に、フィルム状のシール材で開口部を密閉する容器からなる粉体収容製品のリユース展開を進めていく上で、コスト面での採算性や環境への配慮を踏まえた上で効率的にリユース展開を進めるには多くの問題点が山積していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題を解決するためになされた。すなわち、本発明の第1の目的は、リユース対応、すなわち使用済みの容器に粉体を再充填してフィルム状のシール材で開口部のシーリングを繰り返しても、剥離性や気密性を長期にわたり安定して維持することの可能なフィルム状シール材を用いた粉体収容容器及び粉体収容製品を提供することである。
【0011】本発明の第2の目的は、フィルム状シール材を使用する粉体収容容器において従来よりも部品数を低減化させ、シール材剥離部材がなくてもシール材の剥離を容易かつ確実に行える粉体収容容器及び粉体収容製品を提供することである。
【0012】本発明の第3の目的は、使用済みの容器に粉体の充填とシール材によるシーリングを繰り返しても、シール材と容器の隙間から粉体がこぼれず、容器内に収容した粉体の品質を長期間安定維持可能な粉体収容製品を提供することである。
【0013】本発明の第4の目的は、フィルム状のシール材で開口部のシーリングを行う粉体収容容器や粉体収容製品について、これら使用済容器をリユース展開しても容器本体とシール材との接触個所における溶着強度の劣化や剥離性低下のしないリユース対応可能なフィルム状シール材を用いた粉体収容容器の製造方法を提供することである。
【0014】本発明の第5の目的は、使用済みの容器に静電荷像現像用トナーを再充填しフィルム状のシール材で開口部のシーリングを繰り返しても、剥離性や気密性を長期にわたり安定して維持することの可能なリユース対応可能なトナー収容容器及びトナー収容製品を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】研究者等は、上記課題を解決するべく日々検討と努力を重ねた末、容器本体上のフィルム状のシール材(以下シール部材とも言う)と接触する個所に何らかの規則性を付与した複数の突起を設けて複数の突起を配置した状態でフィルム状のシール材を溶着させると、十分な強度を有して収容粉体を長期間安定に保存するとともに、シール材の剥離時は手で軽く引っ張るだけで容易にシール材の剥離の可能な粉体収容容器を見出した。そして、フィルム状シール材の溶着を繰り返しても、保管時に十分な気密性を維持するとともに手で軽く引っ張るだけで容易にシール材剥離を再現するリユース対応可能な粉体収容容器を見出した。
【0016】特に、本発明では容器本体上のシール材と接触する個所に設ける突起の、形状、高さ、配置間隔、密度、断面形状を特定して、規則性を有する突起を配することで容器本体上のシール材との接着個所に規則的な凹凸を付与することによって、シール材が容器本体に確実に接着されてその接着状態を長期にわたり維持可能で手で軽く引っ張るだけで容易かつ確実に剥離することの可能な粉体収容容器及び粉体収容製品を見出した。
【0017】本発明では、シール材と容器本体との接触個所に凹凸を設けると前述の効果を有することを見出したが、従来技術ではシール材と容器本体との接着個所は極力平滑性を保つことが良好な接着性と確実な剥離性に寄与するものと考えられていたので、本発明は接触個所の平滑性が良好な接着性と確実な剥離性を付与するための必須要件とされた従来の技術思想を根底から覆すものである。
【0018】この様に、本発明は従来の技術思想から全く想到することのできない新規性を有するものであるが、本発明は以下の構成のいずれか1項により達成される。
【0019】請求項1に記載の発明は、「粉体を排出する開口部を有する容器本体と、前記開口部をシールしたシール部材とを有する粉体収容容器であって、前記容器本体の表面は、少なくとも前記開口部と前記シール部材との接触個所に規則性を付与した複数の突起を有することを特徴とする粉体収容容器。」である。
【0020】請求項1に記載の発明によれば、少なくとも容器の開口部周辺に規則性の付与された複数の突起を配することによって、リユースを繰り返しても保管時の気密性を長期にわたり安定して維持するとともに手で引っ張るだけで容易かつ確実にシール材を剥離できる粉体収容容器を見出した。また、従来のフィルム状シール材を使用した容器よりも部品数を低減させて上記課題を達成した。
【0021】請求項2に記載の発明は、「前記開口部をシールしたシール部材を前記開口部より剥離する剥離部材を有することを特徴とする請求項1に記載の粉体収容容器。」である。
【0022】請求項2に記載の発明によれば、シール材の剥離を行う剥離部材を設けることで、シール材に殆ど負荷をかけずに簡便かつ確実な剥離の可能な、しかもシール材に負荷をかけないのでシール材のリユースも可能な粉体収容容器を達成した。
【0023】請求項3に記載の発明は、「前記複数の突起は、島状に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体収容容器。」である。
【0024】請求項4に記載の発明は、「前記複数の突起は、網目状に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体収容容器。」である。
【0025】請求項5に記載の発明は、「前記突起の高さが、30μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体収容容器。」である。
【0026】請求項6に記載の発明は、「前記突起の高さは、前記シール部材の厚みの10%以上70%以下の大きさであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉体収容容器。」である。
【0027】請求項7に記載の発明は、「前記突起が、10μm以上500μm以下の間隔で配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の粉体収容容器。」である。
【0028】請求項8に記載の発明は、「前記突起の密度が、10個/mm2以上1000個/mm2以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の粉体収容容器。」である請求項9に記載の発明は、「前記突起の断面形状が、四角形状であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の粉体収容容器。」である。
【0029】請求項10に記載の発明は、「前記突起の断面形状が、三角形状であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の粉体収容容器。」である。
【0030】請求項11に記載の発明は、「前記突起の断面形状が、半円形状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の粉体収容容器。」である。
【0031】請求項12に記載の発明は、「前記突起の断面形状が、台形形状であることを特徴とする請求項9に記載の粉体収容容器。」である。
【0032】請求項3〜請求項12に記載の発明によれば、突起の配置状態、高さ、配置間隔、密度、断面形状等、突起の各種条件を具体的に特定することにより、請求項1及び請求項2で見出された効果に加えて、容器本体上へのフィルム状のシール材によるシーリングを繰り返しても容器本体とシール材との接触個所における溶着強度も剥離性も低下しないリユース対応した粉体収容容器の提供を達成した。
【0033】請求項13に記載の発明は、「前記複数の突起を有する個所が、ヒートシール面であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の粉体収容容器。」である。
【0034】請求項13に記載の発明によれば、容器本体とシール材との接触個所に凹凸を有する複数の突起を設けヒートシール面とすることで、強固な接着性を有するとともに迅速かつ確実なシール材の剥離性を見出した。そして、ヒートシール面は極力平滑性を付与するものであるという従来技術の思想を根底から覆している発明である。
【0035】請求項14に記載の発明は、「請求項1〜13のいずれか1項に記載の粉体収容容器内に粉体を収容してなることを特徴とする粉体収容製品。」である。
【0036】請求項14に記載の発明によれば、容器本体上のシール材との接触個所に規則性を付与した複数の突起を配する粉体収容容器内に粉体を収容することにより、充填した粉体がシール材と容器の隙間からこぼれたり外部環境の影響を受けることなく収容粉体の品質を長期間安定して維持することが可能であり、シール材を剥離する際に手で引っ張るだけで容易にしかもシール材が破れることなく確実に剥離可能な粉体収容製品を達成した。また、請求項14に記載の発明によれば、使用済の容器を回収しリユースしても容器本体とシール材との接触個所の溶着強度や剥離性が低下しないリユース対応可能な粉体収容製品を達成した。
【0037】請求項15に記載の発明は、「粉体を排出する開口部を有する容器本体の前記開口部にシール部材を溶着させてシールを行う粉体収容容器の製造方法において、前記容器本体の開口部周辺には規則性の付与された複数の突起が存在し、該複数の突起の先端と前記シール部材とを接触させ溶着を行うことを特徴とする粉体収容容器の製造方法。」である。
【0038】請求項16に記載の発明は、「粉体を排出する開口部を有する容器本体の前記開口部にシール部材を溶着させてシールを行う粉体収容容器の製造方法において、前記容器本体の成形に使用される金型が、エッチング加工、サンドブラスト加工及び放電加工の少なくとも1つの加工方法により凹凸形状を付与したもので、該金型を使用して前記容器本体の成形を行うことを特徴とする粉体収容容器の製造方法。」である。
【0039】請求項15と請求項16に記載の発明によれば、充填した粉体がこぼれたり外部の影響を受けることなく収容粉体の品質を長期間安定して維持し、手で引っ張るだけで容易かつ確実にシール材の剥離できる粉体収容容器の製造方法を達成した。また、フィルム状のシール材で開口部のシーリングしてなる粉体収容製品の使用済容器をリユース展開して、容器本体へのシール材の接着を繰り返しても接触個所における溶着強度や剥離性を低下させないリユース対応可能な粉体収容容器の製造方法を見出した。
【0040】請求項17に記載の発明は、「請求項1〜13のいずれか1項に記載の粉体収容容器が、静電荷像現像用トナーを収容する容器であることを特徴とする静電荷像現像用トナー収容容器。」である。
【0041】請求項18に記載の発明は、「請求項17に記載の静電荷像現像用トナー収容容器内に静電荷像現像用トナーを収容してなることを特徴とする静電荷像現像用トナー収容製品。」である。
【0042】請求項17及び18に記載の発明によれば、使用済みの容器に静電荷像現像用トナーを再充填しフィルム状のシール材で開口部のシーリングを繰り返しても、剥離性や気密性を長期にわたり安定して維持することの可能なリユース対応可能なトナー収容容器及びトナー収容製品を提供を可能にした。
【0043】請求項19に記載の発明は、「静電荷像現像用トナーを排出する開口部を有する容器本体の前記開口部にシール部材を溶着させてシールを行う静電荷像現像用トナー収容容器の製造方法において、前記容器本体の開口部周辺には規則性の付与された複数の突起が存在し、該複数の突起の先端と前記シール部材とを接触させ溶着を行うことを特徴とする静電荷像現像用トナー収容容器の製造方法。」である。
【0044】請求項20に記載の発明は、「静電荷像現像用トナーを排出する開口部を有する容器本体の前記開口部にシール部材を溶着させてシールを行う静電荷像現像用トナー収容容器の製造方法において、前記容器本体の成形に使用される金型が、エッチング加工、サンドブラスト加工及び放電加工の少なくとも1つの加工方法により凹凸形状を付与したもので、該金型を使用して前記容器本体の成形を行うことを特徴とする静電荷像現像用トナー収容容器の製造方法。」である。
【0045】請求項19及び請求項20に記載の発明によれば、使用済みの容器に静電荷像現像用トナーを再充填しフィルム状のシール材で開口部のシーリングを繰り返しても、剥離性や気密性を長期にわたり安定して維持することの可能なリユース対応可能なトナー収容容器の製造方法の提供を可能にした。
【0046】なお、本発明に係る粉体収容容器と静電荷像現像用トナー収容容器における容器本体とは、樹脂で成形されて剛性を有する剛体容器からなり、粉体の収容と保存を行う部位で、収容した粉体を排出する開口部を有する。
【0047】本発明におけるシール部材とは、樹脂製のフィルム状のシート状の材料で柔軟な性質を有しながらある程度の引っ張り強度を有している。容器本体と接触する側の面は接着性を有する素材からなる面を形成し、容器本体の開口部のシールを行って容器内の粉体を密封するとともに、開口部からの簡易かつ確実な剥離を可能にしている。
【0048】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に基づいて具体的に説明するが、これにより本発明の実施の形態が限定されるものではないことは言うまでもない。
【0049】図1(a)は、本発明に係る粉体収容容器の斜視図で、その開口部がフィルム状シール材によりシールされている状態を示し、図1(b)は粉体供給のための開口部の断面図(図1(a)のAA断面図)を示す。
【0050】図中1は容器本体で、少なくとも一端が開放された剛体容器で、後述する熱可塑性樹脂を射出成形或いは中空成形して得られる。2は固定蓋で本体1と同系樹脂を用いることが好ましい。固定蓋2は容器本体1とともにプラスチック成形物として一体に成形されるものが、部品数を削減することや容器組立工程を短縮すること、また、容器のリユースの視点から好ましい。
【0051】3は口金部で、容器本体1の開放端に設けられ、容器本体1と同系樹脂を用いることが好ましい。なお、容器本体1を口金部3とともに一体的に成形されるものが上記の固定蓋と同様の理由で好ましい。本発明に係る粉体収容容器が後述する図7に示す様なスライド蓋5を有する場合、口金部3はスライド蓋5のスライド部と係合する突出部をスライド方向に対し左右に有する。
【0052】4は、本発明に係るシール部材である口金部3の開口部32をシールするフィルム状シール材であって、開口部32の周面でかつ口金部3の下端面33に剥離可能な様に接着される。口金部3の下端面33には後で詳述する規則性の付与された複数の突起が配置されている。シール材4は例えば接着剤、ヒートシール或いは加圧等の通常よく知られた方法で接着されるが、本発明ではヒートシールによる接着が好ましい。図1(a)に示す様に、フィルム状シール材4の先端は開口部32の一端付近にあたる先端固定部321に強固に接着固定され、フィルム状シール材4は下端面33で剥離可能に接着され、延長部は開口部32の他端付近で折り返されている。この様にフィルム状シール材4の延長部を折り返し、折り返した状態でフィルム状シール部材4の剥離を行うと下端面33における剥離角度が鋭角になり、容易に剥離を行うことが可能になる。
【0053】フィルム状シール材4の材料としてはポリエステルフィルム、ポリエチレンとポリエステルとをラミネートしたもの、ポリプロピレンとポリエステルとをラミネートしたもの、アルミ箔にポリエチレン又はポリプロピレンをラミネートしたもの等可撓性を有しかつ破断等に対して強度を有するものが求められるが、好ましくは何層かの複数種類のフィルム材料からなる層構造を有し、前述の複数の突起を配する下端面33と接触する側の面が通常シーラントと呼ばれる密封性を発揮する材料で形成されるものがよい。
【0054】図4は、本発明に係る容器本体1の開口部に配置した複数の突起とフィルム状シール材4の接触状態を説明する模式図で、(a)はヒートシール実施前で、(b)はヒートシール実施後である。図4(a)に示す様にヒートシール前では容器本体1側に配置された突起先端のみでフィルム状シール材との接触がなされているが、図4(b)のヒートシール後はヒートシールを行った時の加熱により、容器本体側の突起先端は若干溶融してフィルム状シール材と溶着するとともに、フィルム状シール材4側ではシーラント材41の溶融により突起間の隙間をまんべんなく充填し密封性を実現している。なお、本発明ではフィルム状シール材4は多層構造を有するものであるが、図4では簡単のためにシーラント材層のみ示し、他の構成層は省略してある。
【0055】図2(a)は、容器本体1よりフィルム状シール材4を剥離した粉体収容容器の斜視図で、図2(b)は図2(a)のBB断面図を示し、図3は、同状態における下方より見た斜視図を示す。本発明に係る開口部周辺に設けられる複数の突起は開口部32の下端面33に設けられる。
【0056】図1(a)の容器本体1の開口部がフィルム状シール材4でシールされた粉体収容容器のフィルム状シール材4を容器本体とフィルム状シール部材との接触面に対し鋭角方向に引っ張ると、開口部32の下端面33は次第に剥離される。図2(a)の様にフィルム状シール材4を右方向に十分引き出した状態では、開口部32は開口状態となって、容器本体1内の粉体Tは落下補給される。
【0057】本発明に係る粉体収容容器では、容器本体1の下端面33に複数の突起を配することにより、フィルム状シール材4と容器本体との接触個所である下端面33との摩擦係数を小さくし、フィルム状シール材4の下端面33からの剥離をスムーズに行うことを可能にする。
【0058】本発明に係る粉体収容容器の容器本体側に設ける複数の突起について説明する。本発明に係る粉体収容容器に設けられる複数の突起は、その配置状態に規則性を付与することによってフィルム状シール材4と強固な接着状態を発揮するとともに、フィルム状シール材4を容器本体1より剥離する際には大きな力をかけることなくスムーズな剥離を行うことを実現している。
【0059】本願発明では、この様に容器本体側に複数の突起を配置した粉体収容容器を見出すことにより、容器本体とフィルム状シール材間での強固な接着性とスムーズな剥離性を穏やかな条件下で達成したので容器本体にかかる負荷が低減され粉体収容容器のリユースを促進させる効果が得られた。
【0060】また、前述した様に従来技術では、容器本体1とフィルム状シール材4との接触面は少なくとも凹凸差が10μm未満の平滑性が要求されていた。これは両者の接触面に凹凸が形成されていることは容器本体とフィルム状シール材との間に隙間が形成されその隙間より収容した粉体がこぼれ落ちたり、あるいは隙間より容器外の湿気等が侵入して粉体の品質低下を招く原因となるものと考えられていた。ところが、本発明では容器本体とフィルム状シール材との間に突起を設けることで、積極的に凹凸を形成しても収容粉体がこぼれたり、外部環境の影響で容器内の粉体の品質低下の全く発生しないことを見出したのである。このことは従来技術の視点からは全く予期できなかったことであることは言うまでもない。
【0061】本発明に係る容器本体側のフィルム状シール材との接触個所に複数の突起を設けても、粉体がこぼれたり、収容粉体の品質低下を招くことのない理由は明らかではないが、おそらく容器本体側に設けた突起に何らかの規則性を付与することで、仮に容器本体とフィルム状シール材との接触個所に隙間が形成された場合でも隙間付近においては粉体粒子同士がパッキングして隙間からの粉体粒子のこぼれや湿気等の侵入を防止することが可能になったものと推測されるが、実際は定かではない。
【0062】上述の様に、本発明に係る粉体収容容器の容器本体に配置される複数の突起は、何らかの規則性を付与されるものであるが、具体的には、■形状、■高さ、■間隔、■密度、及び■断面形状が挙げられる。以下これらについて詳述する。
【0063】最初に、本発明に係る複数の突起はその形状に規則性を有するもので、例えば図5(a)に示す島状のものや図5(b)の網目状に配置した突起が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】本発明に係る突起の高さは、30μm以上300μm以下、好ましくは70μm以上200μm以下の値を有するものである。なお、突起の高さとは、図6R>6(a)のhで示される距離を言う。
【0065】本発明に係る突起は、10μm以上500μm以下の間隔で配置され、好ましくは100μm以上300μm以下の間隔である。ここで、突起の間隔とは、図6(b)〜(d)のdで示される様に突起の高さの最も高い位置間の距離を言う。また、突起の断面形状が四角形状の時は図6(d)に示す様に高さの最も高い位置の中点間の距離を言う。
【0066】本発明に係る突起は、その密度が10個/mm2以上1000個/mm2以下で配置することが好ましいことを確認した。
【0067】本発明に係る突起は、その断面形状が図6(a)〜(d)に示す様に四角形状、三角形状、半円形状及び台形形状であることが好ましい。本発明に係る突起はこれらの断面形状を有することにより、ヒートシール時に突起先端が均一に溶着するので、容器のリユースに際しフィルム状シール部材4とのヒートシールを繰り返し行っても、粉体収容製品として流通に支障を来さないレベルの接着強度とスムーズな剥離性能が繰り返し使用でも維持されることが可能である。
【0068】なお、本発明に係る容器本体に設けた上記突起は、ルーペによりその形状や断面形状を定性的に目視確認できるが、光学顕微鏡や電子顕微鏡写真の結果から突起の高さや間隔、密度等の定量的な測定や断面形状の確認が可能である。
【0069】次に、本発明に係る複数の突起とフィルム状シール部材との接触個所における接着について説明する。
【0070】本発明に係る複数の突起を容器本体上に設ける具体的な方法は、例えば金型の容器本体表面に該当する個所にエッチングやサンドブラスト、放電処理により突起を形成したり、或いは金型を切削加工して網目状の突起を設ける様にすることが挙げられる。また、容器本体のフィルム状シール材との接触個所に光反応性樹脂を用いて光学的に写し込みを行い、写し込んだ像を切削、或いはエッチング処理して突起を形成するものでもよい。前述した突起の断面形状や高さ、間隔、密度等の突起の配置特性は、これらの突起作製装置の設定条件を選択、制御することで、目標の突起を得ることが可能である。
【0071】本発明に係る複数の突起とフィルム状シール材との具体的な溶着方法は、特に限定されるものではないが、例えば従来から使用されているゴム状弾性体とテフロン(R)シートからなる押圧部材を使用して溶着する方法が挙げられる。なお、超音波を用いてヒートシールを行う方法も挙げられるが、本願発明に係る粉体収容容器を構成する剛性を有する容器本体と柔軟なフィルム状シール材とをヒートシールして溶着する際は、双方を押し当てて押圧することが確実な溶着を達成する要素となっている。
【0072】本発明に係る粉体収容容器の容器本体とフィルム状シール材とをヒートシールによって溶着する場合は、容器本体を構成する樹脂の融点、もしくは軟化点が、フィルム状シール材を構成するシーラント材の融点、軟化点よりも5〜50℃高くすることで、スムーズな剥離性を維持されるとともに溶着により変形した突起先端の形状が壊れることなく維持されるので好ましい。
【0073】なお、容器本体を構成する樹脂の軟化点測定は、例えばフローテスタによる測定が挙げられ、具体的にはフローテスタCFT500型(島津製作所製)等の測定機内に樹脂試料を所定量投入して軟化点の測定を行う。
【0074】特に突起先端が壊れない様に構成することは、容器のリユースを繰り返してもフィルム状シート材の容器本体への均一、かつ強固な接着性を繰り返し維持、確保する上でも、また、破損により生ずる突起片が容器内への粉体充填時に収容粉体内に混入して粉体収容製品の品質低下を招くことにならないので非常に有効である。
【0075】次に、本発明に係る容器本体1を構成する樹脂材料について説明する。本発明に係る容器本体1を作製する樹脂材料は成形可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではないが、具体的にはポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ABS樹脂、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)等が挙げられるが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びハイインパクトポリスチレンが好ましく使用される。
【0076】本発明に係る容器本体1の成形方法としては、例えば射出成形方法や中空成形方法が挙げられ、これらの成形方法で使用される樹脂は前述のものが挙げられるが、いずれの方法においても全ての材料が使用されるものではなく、特にトナー収容容器として使用される場合、輸送時の衝撃や使用時の衝撃だけでなく、繰返し使用しても破損することのない様に、メルトインデックスや密度等の物性値がある程度の範囲内の値を有するものを使用することが好ましい。
【0077】射出成形方法では、金型の隙間に樹脂を流し込む方法であることから、適度な流れ特性が必要である。このため、メルトインデックスの値が、例えばポリプロピレンの様に1〜30g/10minの範囲内の樹脂材料や、密度がポリエチレンの様に0.94〜0.97g/cm3の範囲内の樹脂材料が好ましく使用される。メルトインデックスがこの範囲よりも小さい場合には流れ特性が不良となり、金型内にムラに充填されて、結果として容器の外壁が不均一となり強度が不足する問題を発生し、メルトインデックスが大きい場合には流れやすいことから、均一性は高くなるものの、熱安定性が低下し、保存特性が低下するので、いずれの場合もリユースを行う容器には不適当なものとなってしまう。
【0078】中空成形方法は、樹脂を金型中に流出させ、金型に挟み込んだ状態で樹脂中に圧縮空気を吹き込み、金型に密着する様に膨らませ、冷却し固化させて成形する方法である。この方法では、メルトインデックスの値がポリプロピレンの様に0.1〜4g/10minの範囲内の樹脂材料や、密度がポリエチレンの様に0.94〜0.97g/cm3の範囲の値を有する樹脂材料を使用すると良好な結果が得られる。メルトインデックスが小さいと、溶融状態の樹脂が流れにくいことから、圧縮空気による膨らまし工程の段階で均一に膨らますことが困難で、容器の外壁が不均一となり、容器の衝撃安定性が低下する。また、メルトインデックスが大きいと、流れ易いことから流出状態が不安定になり、特に下端に樹脂が溜まり易くなることから、容器外壁の上部と下部とで厚みが変化し、結果として衝撃安定性が低下する問題を発生させるので、いずれの場合もリユースを行う容器には不適当なものとなってしまう。
【0079】また、容器本体に衝撃が加わった時に破損しないためには特定のアイゾット衝撃値が0.1〜30であることがよい。アイゾット衝撃値が小さい場合には衝撃により容易に破損してしまうのでリユースを行う容器には不適当である。また、アイゾット衝撃値はある範囲以上であれば実用上の衝撃、すなわちリユースを行う物流工程で容器本体が受けると予想される衝撃力に耐え得るので、上記範囲内であればよい。
【0080】例えば、本発明に係る容器本体用の樹脂材料として好ましく使用される一例である高密度ポリエチレンでは、その密度が0.94〜0.97g/cm3の値を有している。密度の測定方法はJIS K 7112に基づいて測定される。特にピクノメータを使用した測定方法が簡便な方法である。
【0081】具体的には、洗浄、乾燥したピクノメータを用意し、その質量を精密に測定する。これをb(g)とする。次いで23±0.1℃の温度でその標線まで正確に浸漬液を満たし、その質量を精密に測定し、これをe(g)とする。次いで、ピクノメータを空にして乾燥した後に試料を1〜5g程度入れて、再度試料を入れた状態でピクノメータの質量を測定し、乾燥したピクノメータの質量を差し引いて試料質量を求める。これをa(g)とする。次いで、試料を入れたピクノメータに浸漬液を加えて、試料が覆われた状態でいったん真空デシケータに入れて、減圧することで浸漬液中の空気を除く。更に浸漬液中の空気を除去したピクノメータへ浸漬液を23±0.1℃の状態で標線まで加え、その質量を測定する。これをc(g)とする。この結果から下記算出式に従って密度を求める。
【0082】密度(g/cm3)={(a)/((e−b)−(c−e))}×ρなお、ここでρは23℃における浸漬液の比重である。
【0083】また、例えばポリプロピレンの物性については、ポリプロピレンの密度は0.90〜0.91g/cm3のものが好ましい。
【0084】アイゾット衝撃値の定義と測定方法は、JIS K 7110に記載の方法、メルトインデックスの定義と測定方法は、JIS K 7210に記載の方法で測定される。なお、ポリプロピレンは230℃/2.16kg、ポリエチレンは190℃/2.16kgの条件で測定される。
【0085】本発明に係る容器本体に使用される樹脂材料はシール温度よりも5℃〜50℃高い融点、或いは軟化点を有することが好ましい。本発明に係る容器本体は、フィルム状シール材との接触個所に複数の突起を配し、容器本体とフィルム状シール材とを押圧してヒートシールで溶着するが、上記温度範囲の時に突起先端は均一かつ規則的につぶれてフィルム状シール材との溶着がなされるため、リユース時にフィルム状シート材の溶着を繰り返し行っても突起部とフィルム状シール材との接触個所では、物流時に受けると予測される衝撃に耐え得る強度での接着が確保されるとともに、剥離時にはスムーズな剥離性が再現されることが確認された。
【0086】また、本発明に係る粉体収容容器は、図7に示す様なスライド蓋5の様なシール材牽引部材を有する粉体収容容器でもよく、フィルム状シール材4をシール材牽引部材を介して剥離することで、更に簡易かつ確実なフィルム状シール材の剥離を達成することに加えて、保存時或いは輸送時におけるフィルム状シール材4の保護を確実に行うことを可能にしている。また、シール材牽引部材を用いてフィルム状シール材の剥離を行うことで、フィルム状シール材に加わる力は小さく、しかも均一に加えるので、フィルム状シール材に剥離による変形や劣化を与えず、フィルム状シール材のリサイクル化も期待される。本発明では、シール材牽引部材も容器本体と同系列の樹脂で構成することが好ましい。図7においてシール材牽引部材であるスライド蓋5を有する粉体収容容器は、口金部3の突出部31と係合したスライド溝51が設けられている。
【0087】本発明では、粉体収容容器を構成する部分の外壁厚みは特に限定されるものではないが、耐久性を維持する観点から1.0mm以上あることが好ましい。また、衝撃が加わった場合に外壁の厚みが不均一であると脆さが出ることから、厚みの触れ幅としては1.0mm以下、好ましくは0.5mm以下であることがよい。この厚みの幅は平均厚みと最小厚みの差を示すものである。なお、平均厚みは屈曲部を除いた部分の厚み10個所をランダムに測定し、その平均値を示す。さらに、最小厚みとは、この10個所のうちの最小値を示した個所の値を示す。
【0088】本発明の粉体収容容器は、容器ごと装置に装填して容器内に収容した粉体を装置内に補充、供給するものであり、該容器に収容される粉体は特に限定されるものではないが、例えば、粉体塗料、でんぷんやきな粉等の食料製粉、おしろい等の化粧品、ラインひきの石灰等の各種粉体製品が具体的な例として挙げられ、電子写真の画像形成に使用される静電荷像現像用トナーの収容容器としても使用可能なものである。
【0089】次に、本発明に係る静電荷像現像用トナー収容容器(以下簡単にトナー収容容器とも言う)について説明する。本発明に係る静電荷像現像用トナー収容容器に充填されるトナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤と必要に応じて使用されるその他の添加剤とを含有した着色粒子から構成される。その平均粒径は体積平均粒径で通常1〜30μm、好ましくは2〜8μmである。着色粒子を構成する結着樹脂としては特に限定されず、従来公知の種々の樹脂が使用される。
【0090】例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。着色剤としては特に限定されず、公知の有機顔料、無機顔料が使用される。具体的には、例えば黒トナーとしてはカーボンブラックやニグロシン染料等が使用され、イエロー、マゼンタ、シアントナーに必要な顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー68、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド212、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー154等の顔料を好適に使用することができる。
【0091】その他の添加剤としては、例えばサリチル酸誘導体・アゾ系金属錯体等の荷電制御剤、低分子量ポリオレフィン、カルナウバワックス等の定着性改良剤等が挙げられる。
【0092】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。なお、文中「部」とは「質量部」を表す。
【0093】〈トナー製造例〉スチレン−アクリル樹脂100部に着色剤としてカーボンブラック8部とさらに低分子量ポリプロピレン6部を加え、乾式混合した後に溶融混練、粉砕分級し、その後外添剤として疎水性シリカ0.7部加えて体積平均粒径が8.4μmのトナーを得た。
【0094】〈トナー収容容器の構成〉表1に示す本発明容器1〜5と7、8を図1と図2に示す構成のものを作製し、本発明容器6を図7のシール材牽引部材を有する容器とした。構成する樹脂としてはポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)を使用した。
【0095】本発明容器1〜8には表2に示す条件の突起が設けられている。比較用容器1〜4には突起を設けていない。
【0096】
【表1】


【0097】
【表2】


【0098】〈評価〉上記各容器に前述のトナーを収容し、シールした後に低温低湿(5℃、10%RH)環境下で剥離性の評価を行った。評価は、剥離テストを10回繰り返し、シール部が剥離するために必要な力と剥離時のシール材の破断発生、及び各回の剥離テスト開始前にシール個所からのトナーこぼれの発生有無を評価した。なお、トナーこぼれの発生が確認された時点で剥離テストは行わなかった。結果を表3に示す。
【0099】
【表3】


【0100】本発明容器1〜8は、いずれも条件的にシール面破断の発生し易い低温低湿環境下においても、問題なく剥離可能であり、剥離回数を重ねても安定した剥離性能を維持することが可能であることが確認されたが、比較用の突起を有さない容器では1回目から破断発生し、剥離テストを繰り返すとシール面からのトナーこぼれが発生することが確認された。
【0101】
【発明の効果】請求項1に記載の発明によれば、少なくとも容器の開口部周辺に規則性の付与された複数の突起を配することにより、リユースを繰り返しても保管時の気密性を長期にわたり安定して維持することを可能にし、シール材を手で引っ張るだけで容易かつ確実に剥離可能な粉体収容容器を見出すとともに、容器の部品数低減化を達成した。
【0102】請求項2に記載の発明によれば、シール材の剥離を行う剥離部材を設けることで、シール材に殆ど負荷をかけずに簡便かつ確実な剥離の可能な、しかもシール材に負荷をかけないのでシール材のリユースも可能な粉体収容容器を達成した。
【0103】請求項3〜請求項12に記載の発明によれば、突起の配置状態、高さ、配置間隔、密度、断面形状等、突起の各種条件を具体的に特定することにより、請求項1及び請求項2で見出された効果に加えて、容器本体上へのフィルム状のシール材によるシーリングを繰り返しても容器本体とシール材との接触個所における溶着強度も剥離性も低下しないリユース対応した粉体収容容器の提供を達成した。
【0104】請求項13に記載の発明によれば、容器本体とシール材との接触個所に凹凸を有する複数の突起を設けヒートシール面とすることで、強固な接着性を有するとともに迅速かつ確実なシール材の剥離性を見出した。そして、ヒートシール面は極力平滑性を付与するものであるという従来技術の思想を根底から覆している発明である。
【0105】請求項14に記載の発明によれば、容器本体上のシール材との接触個所に規則性を付与した複数の突起を配する粉体収容容器内に粉体を収容することにより、充填した粉体がシール材と容器の隙間からこぼれたり外部環境の影響を受けることなく収容粉体の品質を長期間安定して維持することが可能であり、シール材を剥離する際に手で引っ張るだけで容易にしかもシール材が破れることなく確実に剥離可能な粉体収容製品を達成した。また、請求項14に記載の発明によれば、使用済の容器を回収しリユースしても容器本体とシール材との接触個所の溶着強度や剥離性が低下しないリユース対応可能な粉体収容製品を達成した。
【0106】請求項15と請求項16に記載の発明によれば、充填した粉体がこぼれたり外部の影響を受けることなく収容粉体の品質を長期間安定して維持し、手で引っ張るだけで容易かつ確実にシール材の剥離できる粉体収容容器の製造方法を達成した。また、フィルム状のシール材で開口部のシーリングしてなる粉体収容製品の使用済容器をリユース展開して、容器本体へのシール材の接着を繰り返しても接触個所における溶着強度や剥離性を低下させないリユース対応可能な粉体収容容器の製造方法を見出した。
【0107】請求項17及び18に記載の発明によれば、使用済みの容器に静電荷像現像用トナーを再充填しフィルム状のシール材で開口部のシーリングを繰り返しても、剥離性や気密性を長期にわたり安定して維持することの可能なリユース対応可能なトナー収容容器及びトナー収容製品を提供を可能にした。
【0108】請求項19及び請求項20に記載の発明によれば、使用済みの容器に静電荷像現像用トナーを再充填しフィルム状のシール材で開口部のシーリングを繰り返しても、剥離性や気密性を長期にわたり安定して維持することの可能なリユース対応可能なトナー収容容器の製造方法の提供を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】開口部がフィルム状シール材によりシールされている状態の粉体収容容器の斜視図と開口部の断面図である。
【図2】容器本体よりフィルム状シール材を剥離した粉体収容容器の斜視図と開口部の断面図である。
【図3】図2の粉体収容容器を開口部側より見た斜視図である。
【図4】複数の突起とフィルム状シール材との接触状態を示す模式図である。
【図5】複数の突起の各種配置状態を示す模式図である。
【図6】複数の突起の各種断面形状を示す模式図である。
【図7】シール材牽引部材(スライド蓋)を有する粉体収容容器の斜視図である。
【符号の説明】
1 容器本体
3 口金部
4 フィルム状シール材
32 開口部
33 下端面
333 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】 粉体を排出する開口部を有する容器本体と、前記開口部をシールしたシール部材とを有する粉体収容容器であって、前記容器本体の表面は、少なくとも前記開口部と前記シール部材との接触個所に規則性を付与した複数の突起を有することを特徴とする粉体収容容器。
【請求項2】 前記開口部をシールしたシール部材を前記開口部より剥離する剥離部材を有することを特徴とする請求項1に記載の粉体収容容器。
【請求項3】 前記複数の突起は、島状に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体収容容器。
【請求項4】 前記複数の突起は、網目状に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体収容容器。
【請求項5】 前記突起の高さが、30μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体収容容器。
【請求項6】 前記突起の高さは、前記シール部材の厚みの10%以上70%以下の大きさであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉体収容容器。
【請求項7】 前記突起が、10μm以上500μm以下の間隔で配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の粉体収容容器。
【請求項8】 前記突起の密度が、10個/mm2以上1000個/mm2以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の粉体収容容器。
【請求項9】 前記突起の断面形状が、四角形状であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の粉体収容容器。
【請求項10】 前記突起の断面形状が、三角形状であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の粉体収容容器。
【請求項11】 前記突起の断面形状が、半円形状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の粉体収容容器。
【請求項12】 前記突起の断面形状が、台形形状であることを特徴とする請求項9に記載の粉体収容容器。
【請求項13】 前記複数の突起を有する個所が、ヒートシール面であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の粉体収容容器。
【請求項14】 請求項1〜13のいずれか1項に記載の粉体収容容器内に粉体を収容してなることを特徴とする粉体収容製品。
【請求項15】 粉体を排出する開口部を有する容器本体の前記開口部にシール部材を溶着させてシールを行う粉体収容容器の製造方法において、前記容器本体の開口部周辺には規則性の付与された複数の突起が存在し、該複数の突起の先端と前記シール部材とを接触させ溶着を行うことを特徴とする粉体収容容器の製造方法。
【請求項16】 粉体を排出する開口部を有する容器本体の前記開口部にシール部材を溶着させてシールを行う粉体収容容器の製造方法において、前記容器本体の成形に使用される金型が、エッチング加工、サンドブラスト加工及び放電加工の少なくとも1つの加工方法により凹凸形状を付与したもので、該金型を使用して前記容器本体の成形を行うことを特徴とする粉体収容容器の製造方法。
【請求項17】 請求項1〜13のいずれか1項に記載の粉体収容容器が、静電荷像現像用トナーを収容する容器であることを特徴とする静電荷像現像用トナー収容容器。
【請求項18】 請求項17に記載の静電荷像現像用トナー収容容器内に静電荷像現像用トナーを収容してなることを特徴とする静電荷像現像用トナー収容製品。
【請求項19】 静電荷像現像用トナーを排出する開口部を有する容器本体の前記開口部にシール部材を溶着させてシールを行う静電荷像現像用トナー収容容器の製造方法において、前記容器本体の開口部周辺には規則性の付与された複数の突起が存在し、該複数の突起の先端と前記シール部材とを接触させ溶着を行うことを特徴とする静電荷像現像用トナー収容容器の製造方法。
【請求項20】 静電荷像現像用トナーを排出する開口部を有する容器本体の前記開口部にシール部材を溶着させてシールを行う静電荷像現像用トナー収容容器の製造方法において、前記容器本体の成形に使用される金型が、エッチング加工、サンドブラスト加工及び放電加工の少なくとも1つの加工方法により凹凸形状を付与したもので、該金型を使用して前記容器本体の成形を行うことを特徴とする静電荷像現像用トナー収容容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2003−312712(P2003−312712A)
【公開日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−119140(P2002−119140)
【出願日】平成14年4月22日(2002.4.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】