説明

粉体吐出ユニット、粉体吐出装置、粉体吐出方法、及び、粉体噴出装置

【課題】装置の姿勢に拘わらず、粉体を安定して吐出させ易い粉体吐出ユニット、粉体吐出装置、吐出方法、粉体噴出装置を提供する。
【解決手段】粉体及び吐出用気体を収容可能な収容室32と、収容室32内の粉体と吐出用気体とを吐出可能な吐出口37と、収容室32内の吐出口37の近傍に振動可能に配置され、吐出口37の開口より大きい可動駒45と、収容室32内の可動駒45に対して吐出口37側に、吐出用気体を供給可能な第1の気体供給口41と、収容室32内の可動駒45に対して吐出口37とは反対側に、吐出用気体を供給可能な第2の気体供給口42とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉体を吐出させるための粉体吐出ユニットと、粉体吐出ユニットを備えた粉体吐出装置と、粉体吐出ユニットを用いた粉体の吐出方法と、粉体吐出ユニットを備えた粉体噴出装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体を供給するためのユニットを備えた装置は多数知られている。例えば、粉体をホッパ等に収容して重力により下降させて下部の吐出口から吐出する装置、ホッパ等から粉体を吐出させて被処理部に向けて噴出し、被処理面に衝突させることでブラスト加工や吹付加工する装置などである。
【0003】
近年、比較的小型の装置が種々の分野で検討されており、例えば、歯科用の用途では、ハイドロキシアパタイト(HA)、ホワイトアルミナ(WA)、炭化珪素(SiC)、炭化チタン(TiC)、銀(Ag)等の微粒子を用いてターゲットを加工する装置が知られている。微粒子を加圧流体に混合し、ターゲットに吹き付け、付着を繰り返すことでターゲット表面に成膜するパウダージェットデポジション(PJD)加工や、微粒子を加圧流体に混合し、ターゲットに噴出し、微細加工を繰り返すことでターゲット表面をアブレイシブジェットマシニング(AJM)加工などに用いる装置などがある。
【0004】
小型の装置に適した提案としては、例えば下記特許文献1などが知られている。図3にこの装置の概念図を示す。この装置は、吐出用気体供給部71と、吐出用気体供給部71からの吐出用気体が流動する供給用パイプ73及び下流のノズル内管75と、供給用パイプ73とノズル内管75との間に開口77を介して連通する粉体吸入室79と、粉体吸入室79と連続した粉体収容室81と、ノズル内管75の先端が開口する混合室83と、混合室83に噴出用気体を供給する噴出用気体供給部85と、混合室83から粉体を噴出する噴出口87とを備えている。
【0005】
この装置では、吐出用気体供給部71から吐出用気体を供給すると、吐出用気体が供給用パイプ73及びノズル内管75を流動する。このとき、粉体吸入室79ではエジェクター効果で負圧が生じる。この負圧により、粉体収容室81から重力により下降した粉体が開口77から吸引されてノズル内管75に供給され、吐出用気体と共に混合室83に吐出される。混合室83には噴出用気体が供給されており、混合室83に吐出された粉体は噴出用気体により加速されて噴出口87から噴出される。
【0006】
このような装置では、粉体を負圧により吸引して混合室83に吐出するため、吐出用気体の調整により粉体の噴出量等の調整ができ、また、噴出用気体により粉体が加速されて噴出されるため、噴出用気体の調整により粉体の噴出速度等の調整ができる。
【特許文献1】特開2006−224205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、重力を利用して粉体を吐出させたり、その吐出された粉体を噴出させる装置では、ラットホールやアーチング・ブリッジ等の粉体特有の現象が生じ易く、微粒子の場合には、粉体同士の摩擦や静電気の影響による凝集も生じる。粉体を負圧により吸引して吐出させたとしても、これらの現象を十分に解消することはできない。そのため、従来の吐出装置や噴出装置では、安定して粉体を吐出させることが容易でなかった。しかも、重力を利用して粉体を吐出するため、装置の姿勢を傾斜させたり反転させるような場合には、粉体が下降できず、使用することができなかった。
【0008】
そこで、この発明では、装置の姿勢に拘わらず、粉体を安定して吐出させ易い粉体吐出ユニット、粉体吐出装置、又は吐出方法を提供することを課題とし、装置の姿勢に拘わらず、粉体を安定して噴出させ易い粉体噴出装置を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するこの発明の粉体吐出ユニットは、粉体及び吐出用気体を収容可能な収容室と、該収容室内の前記粉体と前記吐出用気体とを吐出可能な吐出口と、前記収容室内の前記吐出口の近傍に振動可能に配置され、前記吐出口の開口より大きい可動駒と、前記収容室内の前記可動駒に対して前記吐出口側に、前記吐出用気体を供給可能な第1の気体供給口と、前記収容室内の前記可動駒に対して前記吐出口とは反対側に、前記吐出用気体を供給可能な第2の気体供給口とを備えることを特徴とする。
【0010】
この発明の粉体吐出方法は、請求項1乃至6の何れか一つに記載の粉体吐出ユニットにより前記粉体を吐出させる方法であり、前記吐出用気体を前記第1及び第2の気体供給口から前記収容室内に断続的に供給すると共に、該吐出用気体により前記可動駒を振動させながら、前記粉体及び前記吐出用気体を前記吐出口から吐出させることを特徴とする。
【0011】
この発明の粉体噴出装置は、請求項7乃至9の何れか一つに記載の粉体吐出装置を備えた粉体噴出装置であり、前記吐出口が前記粉体及び前記吐出用気体を吐出可能に開口された混合室と、該混合室内に噴出用気体を供給可能な噴出用気体供給部と、前記混合室内の前記粉体を前記吐出用気体及び前記噴出用気体と共に噴出可能な噴出口とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明の粉体吐出ユニットによれば、第1及び第2の気体供給口から吐出用気体を収容室に供給すれば、粉体を噴出用気体と共に吐出口から吐出させることができる。その際、収容室内の可動駒に対して吐出口側に吐出用気体を供給可能な第1の気体供給口を備えると共に、可動駒に対して吐出口とは反対側に吐出用気体を供給可能な第2の気体供給口を備えるので、収容室の吐出口側とその反対側との両側から吐出用気体を供給することで、収容室内で吐出用気体が乱流状態で流動し、収容室内の粉体を吐出用気体で攪拌分散させて流動化させることができる。しかも、吐出口の近傍に可動駒が振動可能に配置されているので、振動駒によりより収容室内の吐出用気体の流れを乱すことができると共に振動により攪拌することができる。
【0013】
そのため、粉体吐出ユニットの姿勢に拘わらず吐出させることが可能であり、ラットホールやアーチング・ブリッジ等の粉体特有の現象は起こらず、微粒子の凝集等を十分に防止でき、安定して粉体を吐出させることが可能である。
【0014】
この発明の粉体吐出方法によれば、吐出用気体を第1及び第2の気体供給口から収容室内に断続的に供給すると共に、この吐出用気体により可動駒を振動させながら、粉体及び吐出用気体を吐出口から吐出させるので、吐出用気体を供給することで粉体を安定して定量的に吐出させることができる。しかも、機械的な複雑な構成を設ける必要がないので、粉体吐出ユニットの構成を簡単にできる。
【0015】
この発明の粉体噴出装置によれば、上記のような粉体吐出ユニットが組み込まれていて、吐出口が開口された混合室と、混合室内に噴出用気体を供給可能な噴出用気体供給部と、混合室内の粉体を吐出用気体及び噴出用気体と共に噴出可能な噴出口とを備えているので、吐出用気体とは別に噴出用気体を調整することで、粉体の吐出量などとは別に、粉体の噴出速度などを調整することができ、使い勝手がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態について図1及び図2を用いて説明する。
【0017】
この実施の形態の噴出装置10は、使用者が片手で支持して容易に操作可能な程度の大きさで、ペンに類似した縦長形状を呈し、縦長形状の装置本体11と、装置本体11の後端に着脱可能に装着された蓋体12とを備える。装置本体11には、粉体の吐出ユニット20と、吐出ユニット20から粉体が吐出される混合室13と、混合室13に噴出用気体を供給するための噴出用気体流路15と、先端部に開口して設けられ、混合室13内の粉体を噴出用気体と共に噴出可能な噴出口14とを備える。蓋体12には、吐出ユニット20に吐出用気体を供給するための導入部16、17と、噴出用気体流路15に噴出用気体を供給するための導入部18とを備える。
【0018】
吐出ユニット20は、装置本体11に形成された本体部21と、この本体部21に着脱可能に構成されたカートリッジ部30とを備える。本体部21には、装置本体11の後端に開口し、カートリッジ部30を収容可能な収容配置部22が設けられ、収容配置部22の混合室13側にはカートリッジ部30の先端部を当接支持する端部支持部23が設けられている。この収容配置部22は、カートリッジ部30を挿入して先端部を端部支持部23に当接させると共に蓋体12で後端部を支持させることで、カートリッジ部30が所定位置に固定して配置されるように構成されている。
【0019】
カートリッジ部30は、略円筒形状の筒状部31と、筒状部31の先端側の端部を覆う多孔質体35と、筒状部31の後端側の端部を覆う開閉可能な端部壁33とを備え、これらの内部に、粉体及び吐出用気体を収容可能な収容室32が形成されている。
【0020】
多孔質体35には、多数の微細な貫通路が存在しており、多孔質体35全体で吐出用気体を収容室32内に供給可能な第1の気体供給口41となっている。多孔質体35の略中央には、収容室32内の粉体及び吐出用気体を吐出可能な断面円形の吐出口37が設けられている。ここでは、吐出口37は第1の気体供給口41に囲まれている。
【0021】
一方、端部壁33には、収容室32内に向けて突出する柱状部39が設けられ、柱状部39の端部壁33近傍には、収容室32内に吐出用気体を供給可能な第2の気体供給口42が設けられている。
【0022】
カートリッジ部30の収容室32内の吐出口37の近傍には、柱状部39の先端と多孔質体35とにより可動領域43が区画されており、可動領域43内に可動駒45が移動自在に収容されている。ここでは、可動駒45は収容室32内に供給される吐出用気体により振動可能に構成されている。
【0023】
可動駒45の形状は任意であり、球体、立法体、正多面体、板状体、柱状体等を適宜採用できるが、ここでは、可動駒45を球体としている。可動駒45の大きさは、吐出口の開口より大きい範囲で、可動駒45と収容室32の内周面の間の間隔が適度な範囲となるように設定されている。
【0024】
なお、可動駒45が可動領域43に配置された状態では、多孔質体35の第1の気体供給口41が可動駒45に対して吐出口37側に配置され、第2の気体供給口42が可動駒45に対して吐出口37とは反対側に配置されることになる。
【0025】
更に、この噴出装置10には、図示しない加圧気体供給源からの加圧気体を、供給制御部51、52により制御して導入部16、17に吐出用気体として供給可能な吐出用気体供給部55、56が設けられると共に、加圧気体供給源からの加圧気体を供給制御部53により制御して導入部18に噴出用気体として供給可能な噴出用気体供給部57が設けられている。ここでは、各気体供給部55、56、57の加圧気体供給源はそれぞれ異なるものであってもよく、一部又は全部が同一であってもよい。
【0026】
供給制御部51、52、53は、吐出用気体又は噴出用気体の圧力、流量、時間、供給期間などを制御可能に構成でき、この実施の形態では、供給制御部51、52は吐出用気体を断続的に供給するように構成され、それぞれ独立に吐出用気体の供給期間が制御可能となっている。ここで、断続的に供給するとは、収容室32内への供給量や圧力等が経時的に増減することであり、減少時には必ずしも0となる必要はない。一方、供給制御部53は、噴出用気体を連続的に供給するように構成されている。
【0027】
次に、このような噴出装置10の使用方法について説明する。
【0028】
まず、カートリッジ部30の端部壁33を開いて収容室32に粉体を収容し、端部壁33により閉塞することで、カートリッジ部30の準備を行う。粉体は加工目的に応じて、適宜選択することができる。例えば、ブラスト加工を行うのであれば、砥粒等であってもよく、吹き付け加工を行うのであれば、被処理面に付着可能な粉末等であってもよい。噴出装置10を歯科用の医療器具として用いるのであれば、HA、WA、SiC、TiC、Ag等であってもよく、例えば平均粒径1〜3μm程度の微粒子であってもよい。
【0029】
好ましくは複数本のカートリッジ部30を準備する。加工時に粉体の残量が少なくなった際、カートリッジ部30を交換して加工を継続できるからである。異なる加工を行う場合には、収容する粉体が異なるカートリッジ部30を準備する。また、各カートリッジ部30に収容する粉体の収容量は、一回の加工で使い切る量が好ましい。例えば、HA等のように、吸湿性が高い粉体などでは、加工後に残留した粉体が吸湿し、吐出させ難くなるからである。
【0030】
次いで、1本のカートリッジ部30を、装置本体11の収容配置部22に挿入し、カートリッジ部30の吐出口37側の先端部を端部支持部23に当接させた状態で、装置本体11に蓋体12を装着する。これにより、カートリッジ部30は吐出ユニット20の本体部21の所定位置に固定される。
【0031】
この状態で、吐出口37は端部支持部23の吐出口延長管25と気密に連通され、多孔質体35により形成されている第1の気体供給口41は吐出用気体流路27に気密に連通される。また、吐出ユニット20の本体部21の吐出用気体流路27は導入部16の流路16aに気密に連通され、端部壁33の第2の気体供給口42は導入部17の流路17aに気密に連通され、装置本体11の噴出用気体流路15は流路18aに気密に連通される。
【0032】
更に、吐出用気体の導入部16、17に吐出用気体供給部55、56の配管を接続すると共に、噴出用気体の導入部18に噴出用気体供給部57の配管を接続する。これにより、加工準備が完了する。
【0033】
加工を開始するには、使用者が装置本体11を把持し、噴出口14を被処理面に対向させた状態で、例えば図示しない操作スイッチ等を操作する。これにより、図2に示すように、吐出用気体A1、A2及び噴出用気体A3が吐出用気体供給部55、56及び噴出用気体供給部57から各導入部16、17、18に供給される。この吐出用気体A1、A2、噴出用気体A3の加圧気体としては、例えば空気、窒素、アルゴン等の不活性ガスなどを適宜用いることができる。
【0034】
加工を開始すると、供給制御部51により導入部16に吐出用気体A1が供給され、多孔質体35の第1の気体供給口41から収容室32内の可動駒45に対して吐出口37側へ吐出用気体A1が供給される。これにより吐出口37近傍に存在する粉体を吐出口37から離間させる。
【0035】
更に、供給制御部51、52によりそれぞれ独立に供給期間が制御され、多孔質体35の第1の気体供給口41と第2の気体供給口42とに吐出用気体A1、A2を断続的に供給する。このとき、第1の気体供給口41の供給期間と第2の気体供給口42供給期間とがずれていてもよい。
【0036】
収容室32内では、可動駒45に対して吐出口37側から端部壁33側に向かう吐出用気体A1と、可動駒45に対して吐出口37とは反対側の端部壁33側から吐出口37側に向かう吐出用気体A2とが断続的に供給される。これらの吐出用気体A1、A2は収容室32内を顕著な乱流状態で流動する。
【0037】
吐出用気体A1、A2の乱流により、収容室32内の粉体が吐出用気体により攪拌されて分散されることで流動化する。同時に、この吐出用気体A1、A2により、可動駒45が振動させられる。可動駒45は可動領域43内に配置されているので、常に吐出口37近傍で振動する。このとき、可動駒45の吐出方向に沿う方向の振動周期は、特に限定されるものではないが、例えば0.5秒以下としてもよい。
【0038】
そして、収容室32内の粉体が吐出用気体A1、A2と共に流動し、吐出口37から吐出される。その際、吐出口37近傍の可動駒45の振動により、流れが乱されると共に更に攪拌されて吐出口37から粉体及び吐出用気体A1、A2が吐出される。
【0039】
なお、吐出口37の近傍に可動駒45が配置されているため、収容室32内の吐出用気体が直線的な流れで吐出口37に流入することがなく、粉体が偏って存在しても、一時的に粉体が多量に吐出口37から吐出されるようなことはない。
【0040】
吐出口37からの粉体及び吐出用気体A1、A2の吐出と同時に、供給制御部53では噴出用気体A3を噴出装置10の噴出用気体流路15に連続的に供給する。この噴出用気体A3は混合室13に供給される。混合室13には吐出口37からの粉体及び吐出用気体A1、A2が吐出されており、これらの粉体及び吐出用気体A1、A2が噴出用気体A3と共に噴出口14から噴出される。ここでは、吐出口37から吐出された粉体を噴出用気体により加速して噴出させることができる。
【0041】
そして、噴出口14を被処理面と対向配置させているため、噴出口14から噴出された粉体が被処理面に衝突し、所望の加工を実現する。
【0042】
この加工では、噴出口14からの粉体の噴出量、濃度、速度などが加工に応じて調整されている。粉体の噴出量などは、例えば、多孔室体35の第1の気体供給口41と第2の気体供給口42からの吐出用気体A1、A2の供給量、供給期間、収容室32の内周面と可動駒45との間の間隔、可動駒45の振動等により調整可能である。粉体の濃度や噴出速度などは、噴出用気体の供給量等により調整可能である。噴出速度を大きくすることで、加工中に被処理面に蓄積される粉体を風圧でクリーニングするようにしてもよい。これにより被処理面を常に露出させておくことができ、加工効率を向上することが可能である。
【0043】
加工時にカートリッジ部30の収容部32内の粉体の残量が少なくなった場合には、構造基材11の蓋体12を開き、収容配置部22から使用済みカートリッジ部30を抜き取り、粉体が収容されている別のカートリッジ部30を収容配置部22に挿入し、蓋体12を閉じれば、再び、加工を再開することができる。
【0044】
被処理面の加工が終了した後、同じ噴出装置10を使用して別の加工を行う場合には、それまで装着されていたカートリッジ部30を収容配置部22から抜き取り、異なる粉体が収容されている別のカートリッジ部30を装着し、必要に応じて供給制御部51、52、53により吐出用気体A1、A2及び噴出用気体A3の各種の供給条件を調整して、加工を行うことが可能である。例えば、歯科用の医療器具として用いる場合、AJM加工を行った後、同じ噴出装置10を用いてPJD加工を行うことも可能である。
【0045】
全ての加工が完了した後に、カートリッジ部30及び噴出装置10の洗浄や滅菌を行うこともできる。その場合には、加圧気体により各部の動作や噴出を行うため、機械的構造による複雑な形状部分がなく、容易に洗浄や滅菌を行ことができる。
【0046】
以上の噴出装置10に用いたような吐出ユニット20によれば、可動駒45に対して吐出口37側に吐出用気体を供給可能な第1の気体供給口41を備えると共に、可動駒45に対して吐出口37とは反対側に吐出用気体を供給可能な第2の気体供給口42を備えるので、収容室32の吐出口37側とその反対側との両側から吐出用気体を供給することで、収容室32内で吐出用気体が乱流状態で流動し、収容室32内の粉体を吐出用気体で攪拌分散させて流動化させることができる。しかも、吐出口37の近傍に可動駒45が振動可能に配置されているので、振動駒45によりより収容室32内の吐出用気体の流れを乱すことができると共に振動により攪拌することができる。
【0047】
そのため、収容室32内の吐出用気体の内圧で粉体を吐出口37から吐出させることで、吐出ユニット20の姿勢に拘わらず吐出させることが可能であり、吐出ユニット20を傾斜させたり反転させて使用することが可能である。更に、重力により下降させることがないため、ラットホールやアーチング・ブリッジ等の粉体特有の現象は起こらず、また、収容室32内を吐出用気体により攪拌して吐出させるため、微粒子の凝集等を十分に防止できる。そのため、吐出ユニット20の姿勢に拘わらず、安定して粉体を吐出させることが可能である。
【0048】
しかも、粉体を収容室32内で吐出用気体に十分に攪拌して分散した状態で吐出口37から吐出させるので、吐出量の経時的な変化が少なく、吐出期間中に継続して略一定の粉体量を吐出させることができ、定量的な粉体の吐出が可能である。
【0049】
ここでは、収容室32に可動駒45の可動領域43が設けられており、可動駒45がその可動領域43内に移動自在に収容されているので、第1及び第2の気体供給口41、42から吐出用気体が供給されると、吐出用気体により可動駒45が吐出口37の近傍で自在に移動して振動することができ、振動により吐出口37から吐出される粉体をより均一に吐出用気体に攪拌分散させることができる。
【0050】
また、収容室32が筒状で、その一端側の端面に吐出口37が設けられ、しかも、その端面に第1の気体供給口41が設けられているので、第1の気体供給口41からの吐出用気体の流れが、吐出口37から流出される粉体及び吐出用気体の流れと反対向きとなっている。そのため、粉体及び吐出用気体の流れを効率良く乱雑にして攪拌作用を大きくでき、粉体を吐出用気体により分散させ易い。
【0051】
特に、吐出口37が第1の気体供給口41に囲まれているため、収容室32内で吐出口37に向かう粉体及び吐出用気体の流れが偏り難く、より均一な攪拌を行うことができる。
【0052】
また、そのような第1の気体供給口41が多孔質体35から形成されているため、吐出口37の周囲全体から吐出用気体を供給することができ、特に効率よく攪拌を行うことができる。
【0053】
更に、この吐出ユニット20が、カートリッジ部30と、このカートリッジ部30を所定位置に着脱可能な本体部21とからなるため、収容室32の粉体の残量が少なくなったときに、カートリッジ部30を交換するだけで、新たな粉体を供給することができ、使い勝手がよい。
【0054】
また、吐出用気体供給部55、56が吐出用気体を第1及び第2の気体供給口41、42へそれぞれ断続的に供給可能な供給制御部51、52を備えているので、第1及び第2の気体供給口41、42から断続的に吐出用気体を収容室32内に供給することができ、粉体を吐出用気体に分散させ易い。
【0055】
特に、供給制御部51、52が、第1の気体供給口41への吐出用気体の供給期間と、第2の気体供給口42への吐出用気体の供給期間とを、独立して制御可能に構成されているので、それぞれの供給期間を最適なものに調整することが容易であり、より粉体を吐出用気体に分散させ易い。
【0056】
また、上記の粉体吐出方法によれば、吐出用気体を第1及び第2の気体供給口41、42から収容室32内に断続的に供給すると共に、この吐出用気体により可動駒45を振動させながら、粉体及び吐出用気体を吐出口37から吐出させるので、吐出用気体を供給することで粉体を安定して定量的に吐出させることができる上、機械的な複雑な構成を設ける必要がないので、吐出ユニット20の構成を簡単にできる。そのため、装置を軽量に形成し易く、また、粉体や吐出用気体が流動する経路に複雑な構造や形状などが形成されず、洗浄や滅菌などを行い易い。
【0057】
そして、このような噴出装置10では、以上のような吐出ユニット20が組み込まれていて、吐出口37が開口された混合室13と、混合室13内に噴出用気体を供給可能な噴出用気体供給部57と、混合室13内の粉体を吐出用気体及び噴出用気体と共に噴出可能な噴出口14とを備えているので、吐出用気体とは別に噴出用気体を調整することで、粉体の吐出量などとは別に、粉体の噴出速度などを調整することができ、使い勝手がよい。
【0058】
特に、噴出用気体供給部57が噴出用気体を混合室13に連続的に供給可能に構成されているので、噴出用気体の制御が容易であり、噴出装置10の構造を簡単にし易い。
【0059】
なお、上記実施の形態は、この発明の範囲内において適宜変更可能である。例えば、上記では、粉体吐出ユニットとして、粉体噴出装置に設けられたものについて説明したが、特に限定されない。即ち、図2中に破線で示す装置本体11などを設けずに粉体を供給する装置として使用することが可能である。また、粉体吐出ユニット他の各種の粉体装置における粉体の供給部に設けることも可能である。
【0060】
また、上記では、噴出装置10として、ペン等の筆記具に類似した小型の医療器具として使用される装置の例を説明したが、噴出装置10の大きさや用途は何ら限定されるものではなく、各種の分野の種々の大きさの装置に適用可能である。例えば、所定位置に設置されて稼働するブラスト装置、吹き付け装置等であってもよく、各種の粉体を気体により噴出させる装置であれば、この発明を適用可能である。
【0061】
更に、上記では、可動駒45が可動領域43内で自在に移動可能な例について説明したが、揺動或いは振動可能にカートリッジ部30の筒状部31等に支持されたものであってもよい。その場合、可動領域43を設けなくてもよく、収容室32内に柱状部39を設けることなく、カートリッジ部30を構成することも可能である。
【0062】
また、可動駒45が多孔質体35と第2の気体供給口とから供給される吐出用気体により振動するように構成したが、特に限定されるものではなく、可動駒45を機械的或いは電気的に制御することで振動させてもよい。
【0063】
更に、上記では、第1の気体供給口41を多孔質体35により構成したが、この多孔質体35を異なるメッシュのものに交換可能に構成して第1の気体供給口41を調整できるようにしてもよい。また、多孔質体35でなく、第1の気体供給口は収容室32の一端側の端面に、1つ又は複数の貫通孔を設けることで構成することも可能である。更に、第1の気体供給口を吐出口37側の収容室32の側面等に設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の実施の形態の粉体噴出装置の概略断面図である。
【図2】この発明の実施の形態の粉体噴出装置の動作を説明する図である。
【図3】従来の粉体噴出装置の概念を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
10 噴出装置
11 構造基体
13 混合室
14 噴出口
20 吐出ユニット
21 本体部
22 収容配置部
30 カートリッジ部
32 収容室
35 多孔質体
37 吐出口
41 第1の気体供給口
42 第2の気体供給口
43 可動領域
45 可動駒
51、52、53 供給制御部
55、56 吐出用気体供給部
57 噴出用気体供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体及び吐出用気体を収容可能な収容室と、
該収容室内の前記粉体と前記吐出用気体とを吐出可能な吐出口と、
前記収容室内の前記吐出口の近傍に振動可能に配置され、前記吐出口の開口より大きい可動駒と、
前記収容室内の前記可動駒に対して前記吐出口側に、前記吐出用気体を供給可能な第1の気体供給口と、
前記収容室内の前記可動駒に対して前記吐出口とは反対側に、前記吐出用気体を供給可能な第2の気体供給口とを備えることを特徴とする粉体吐出ユニット。
【請求項2】
前記収容室は、前記可動駒の可動領域を備え、前記可動駒は、前記可動領域内に移動自在に収容されていることを特徴とする請求項に記載の粉体吐出ユニット。
【請求項3】
前記収容室は筒状に形成され、前記吐出口及び前記第1の気体供給口は、前記収容室の一端側の端面に設けられ、前記第2の気体供給口は前記収容室の他端側に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体吐出ユニット。
【請求項4】
前記吐出口は、前記第1の気体供給口に囲まれていることを特徴とする請求項3に記載の粉体吐出ユニット。
【請求項5】
前記第1の気体供給口は、多孔質体により形成されていることを特徴とする請求項4に記載の粉体吐出ユニット。
【請求項6】
前記収容室、前記吐出口、前記第1の気体供給口、及び前記第2の気体供給口を一体に備えたカートリッジ部と、該カートリッジ部を所定位置に着脱可能な本体部とを備えていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の粉体吐出ユニット。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一つに記載の粉体吐出ユニットと、前記第1及び第2の気体供給口にそれぞれ前記吐出用気体を供給可能な吐出用気体供給部とを備えることを特徴とする粉体吐出装置。
【請求項8】
前記吐出用気体供給部は、前記吐出用気体を前記第1及び第2の気体供給口へそれぞれ断続的に供給可能な供給制御部を備えたことを特徴とする請求項7に記載の粉体吐出装置。
【請求項9】
前記供給制御部は、前記第1の気体供給口への前記吐出用気体の供給期間と、前記第2の気体供給口への前記吐出用気体の供給期間とを独立して制御可能に構成されていることを特徴とする請求項8に記載の粉体吐出装置。
【請求項10】
請求項1乃至6の何れか一つに記載の粉体吐出ユニットにより前記粉体を吐出させる方法であり、
前記吐出用気体を前記第1及び第2の気体供給口から前記収容室内に断続的に供給すると共に、該吐出用気体により前記可動駒を振動させながら、前記粉体及び前記吐出用気体を前記吐出口から吐出させることを特徴とする粉体吐出方法。
【請求項11】
請求項7乃至9の何れか一つに記載の粉体吐出装置を備えた粉体噴出装置であり、
前記吐出口が前記粉体及び前記吐出用気体を吐出可能に開口された混合室と、
該混合室内に噴出用気体を供給可能な噴出用気体供給部と、
前記混合室内の前記粉体を前記吐出用気体及び前記噴出用気体と共に噴出可能な噴出口とを備えたことを特徴とする粉体噴出装置。
【請求項12】
前記噴出用気体供給部は、前記噴出用気体を前記混合室に連続的に供給可能に構成されていることを特徴とする請求項11に記載の粉体噴出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−297623(P2009−297623A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153518(P2008−153518)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(593152661)株式会社仙台ニコン (63)
【Fターム(参考)】